「暇……」
「だろーな」
向き合う相手とかっちゃかっちゃと陶器製のコーヒーカップとスプーンを打楽器のように鳴らす、それくらい暇としか言いようが無い。
二人の視線は一切重なることなく喫茶店の外の光景に視線を向け続けていた。
何が悲しくて向き合って座ってる相手と会話すらしないでファミレスのガラス窓にマンウォッチングなんかしてるのだろうか。
「……あーなにやってんだろ私」
全くだ、何やってんだ俺らは。
机に寝始めたオレンジ色の髪をツインにした相手方とただ意味も無く時間を潰す、すっげえ暇である。
何の打ち合わせもしないでため息が重なる俺とランスターだった。
ケイスケの機動六課の日々 番外編 とある二名のふつーの一日
さて、時空管理局という組織ってやつは基本的に24時間稼働中なのは言うまでも無い。
しかしながら、内部で働く人間が休まないとかあるわけが無いのだ。
特に六課というやつは一年しか稼動しないため、まもなく全員異動という中々有りえない展開が待っていた。
結果として、解散の時期が近づくにつれて外に対しての仕事は、解散後の身の振り方に集中し始めた。
そうなると、当然内部だけで終る仕事というものは減り、外部の返答を待たないとどうしようもない時間というやつが生まれ始める。
必然的に休みは増え始め、かといって仕事を増やすと解散までに片付かない。
もうすぐ終わりって諦観で、なんとなく週末の予定を組まないでダラダラして。
そんな中、街に出てばったり会ったのがランスターだっただけなのだ。
そもそもJS事件を解決するためだけの結成なんて裏目的を達成した今、事実上六課の存在意義は体面上解散してないようなもの。
それでも次に繋げるための勉強時間として、フォワード組は訓練訓練また訓練という時間が与えられていた。
だが、解散が目前と迫ってきた今、下手に疲労の溜まる訓練よりも、これから先を見据えた活動も増えていく。
スバルのやつは救助隊に研修や負担にならない程度のフィジカルトレーニング。
エリオとキャロは自然保護隊に行くこともあり、よりいっそうの連携と、エリオは特に自然の中でのサバイバル知識と教習。
そしてこれから執務官補佐としてフェイト隊長に引っ付いていく事が決まっているランスターは法務や実務の勉強の比重が増えて来て。
そして、六課フォアードメンバーがそろっている場面も少なくなっていった。
「……ねえケイスケ、何か案出してよ案」
何時もだったらスバルと二人で出てきただろうランスターが一人だったのもそういった背景は無関係じゃないと思う。
別にそれがどうしたと思わないわけじゃないが、何というか終わりを一層感じさせる。
ランスターも特に何所かに行きたいって訳じゃないんだよな。
ただ、黙っているのもつまらないから言い出しただけなんだ。
だから俺も適当に。
「カラオケ」
「二人で?」
「……ゲーセン」
「やーよ、アンタ手加減抜きで始めるから」
「………映画」
「丁度見たい映画が無いのよね……」
「…………ダーツバー」
「アンタ、私にお酒飲ませてどうする気よ、スバルに言いつけるわよ」
「ダメだしばっかしじゃん!!」
せっかくの休日、だというのにファミレスでダラダラしているのはこんな感じで予定すら決まらないからだ。
そもそも、俺とランスターというやつとの性格的な問題もある。
俺もコイツも、用が無いと連絡すらしない性格。
用を思いつかない限り、絶対に年単位でメールすらしないだろう。
そんな二人が突発的に出会ったのだって大した理由があるわけでもない。
外飯にするか、と街に出て。
「おっす」
「あ、何だアンタか」
「メシ?」
「そうよ」
「そこで食うか?」
「いいわよ」
で説明終了だからなあ。
「つかお前、六課から何しに出てきたんだよ」
「ん〜あーそうだ服とか着替え買いに来たんだ」
そかそか。
……
……
……
何故黙る……
黙ってるランスターは完全にこっちに気を回さず、外を見ているだけだ、これ以上何かを語る気も持っていない。
ただ、次に何を要求しているのかが分かっているんだよなあ。
「おっけー荷物持とうじゃないか」
「アリガト、お礼はここの払いでいいわよね」
もっといい物食っときゃよかった。
伝票を取ったランスター、文字通り0円くらいの価値しかないスマイル程度はサービスしてくれた。
ティアナ・ランスター。
機動六課前線メンバー、スターズ小隊所属、コールネームはスターズ4。
ポジションはセンターガード、ただし、その実際の役割は機動六課前線リーダー。
つーより隊長陣が指揮してるの見た事無いとか言ってはいけない。
というか飲んでて洩らしたらどっかの金色がガチ泣きした……
俺とは六課で初めて会ったはずの人間だが、どうも過去に何度かニアミスしているらしい。
とはいえ、互いに覚えている訳でもなし。
ただ、学校やら施設やらで同じような所にいたことがあるってだけだ。
スバルの親友であり、俺とは……なんだろ?
とにかく不思議と気を使わない相手である。
△ △ △
ブティックが並ぶ繁華街ってやつは何時でも人が多いものだけど、こういうところの方がいいものが手に入るから仕方無いか。
私の前の少し先を歩くやつがいるから、ヒールでも前で踏まれる事が無いのは楽かもしれない。
左右の店舗を見て。入りたいと思ったら声をかけて物色する。
「むー」
……
「むー」
……
「むー」
……
「奢らねえぞ」
ち!!
まあ分かってたけどね、逆に
「君に似合いそうだね、そうだ今日の記念にプレゼントしよう」
とかコイツが言い出したら、キモイし。
うわ、鳥肌が立ってきた!!
「なんか……すげえムカつく想像された気がするんだが」
「気のせいよ」
半目で睨んで来るケイスケだけど、ここは何事も無かったかのようにポーカーフェイスを崩さない。
大体コイツだって私達見て変なこと考えた事があるはずだし、お互い様ってことにしてもらおう。
ケイスケ・マツダ。
機動六課事務員でスバルの幼馴染。
出会った時のコイツのプロフィールなんてそんな程度。
そもそもこいつが地上から六課に異動することになったのだって、私達みたいにスカウトされた訳でも自主的に来たわけでもない。
地上部隊かつ本局と聖王教会の影響が強い部隊なんて誰も行きたがらない場所に送り込まれた、文字通りの厄介払い。
そんなやつが、まさか地上や本局の有名人達と深い友諠を結ぶことになろうとは。
まさかJS事件なんてデカイ事件で大騒ぎを起こすとは。
コイツの事を知っていた若干名だけしか思いもしなかったことだろう。
ついでに、コイツのとスバルは私と妙な縁があるようだ。
住んでたところに、通っていた学校、果ては家族の墓。
一学年下になるスバルはともかく、よくもまあ隣のクラスだったり入れ違いで施設入りしたりと。
よく分からない偶然が重なって、六課に入るまで全く名前も知らないでいられたと逆に関心する。
そんなコイツと私の関係は、友達っていうのが一番適当で、且つそれ以外で表現できない。
気があう、って訳でもないのだが、何所かコイツとはシンパシーが通じるところがある。
だけどそれが、親しくなるってベクトルじゃなく、適度な距離を維持させるのだ。
自分でも何故そう感じるのかは分からない、だけど。
こいつとは、絶対的にあるラインを踏み越えると対立するってよく分からない確信もあった。
「ふう、まあこんなところかしら」
一通り商店街は回ったが、特に買いたいものがあったわけじゃない。
ただブラブラと店を見回っただけだ。
兄さんの遺族年金と、局で働くようになって手に入るようになった自分のお金。
それなりの余裕というものも出てきたのだが、どうしても衝動買いというものをする気にはならない。
「なんだよ買わないのかよ」
「買うわよ、でも全部見てからじゃないともっと気に入ったものがあったら悔しいじゃない」
「買おうと思ったら売り切れてましたって展開じゃねえのか?」
う、そ、それはあるかもしれないけど……
取り置きして欲しいほど気に入ったのがなかっただけなのよ。
とか言うと、きっとコイツは「無理に買う必要もねーだろ」って返すだろう。
いいのよ、買うって行為が楽しいんだから。
「ほら、さっきの奢り分があるでしょ、もう一回行くわよ」
さっき通ってきた道は、夕方に近くなったからかさっき以上の混雑を見せている。
それを人目みたケイスケは明らかに嫌そうな顔をしているが、だけど結局コイツだったら。
「ういーっす」
と、やる気の無さそうな返事をするのだ。
「下着売り場までは着いてこないでしょうね」
「行くか!? てか思い出したぞ、お前、なのは隊長の時に何やらてんだよ!!」
「え? ああ、だってアンタだって好みの下着とかのほうが嬉しいでしょう?」
「死ね」
「嫌」
はい会話終了。
ケイスケのやつは外で待たせて、ワゴンから日常用、ちょっと高いお気に入り用を探して。
「流石にこれは持たせたらんないわね」
六課の面子と一緒にいるところを見てると忘れそうだが、あれは結構ケダモノだ。
ケイスケ自身は割と自制が利いてるほうだと思うけど、それが性欲が無いってこととイコールじゃない。
施設にいたヒヒジジイみたいに露骨に隠してるわけではない分まだ可愛いものだが。
レジを済ませて戻るとケイスケ乃やつは缶コーヒー片手に時間を潰しつつ。
あ、今のスタイルのいい女の人を視線だけで追っかけてる。
何だろ、うん。
「馬鹿ね」
かなり間違いない。
△ △ △
「うお、クソ高けえ!? なんで赤くも無いのに通常の三倍!!」
「一枚くらい買っときなさいよ、どうせこれから暑くなる季節だし」
ランスター趣味のTシャツはお高いです。
結構薄くて、体に張り付くタイプ。
そういやコイツの服って結構体のライン出てるよな。
「何よ」
「いや、別に」
肩口とか出てると、そっから下に無意識で視線が進む、これは正常な反応だと胸を張っていいと思うのだ。
「どうでもいいけど、テント張ってるわよ」
「嘘!?」
「嘘よ」
……
コイツ嫌い!!
「くくく、アンタ本当に馬鹿よね」
う、うっせえな、巨大なお世話だっつーの。
「しかし男の服って代わり映えしないわね、いっそレザーとか買う?」
「お前、暑くなるとかいって冬オンリーの品を進めるな」
結局コイツの荷物だけしか持ってねえ。
とはいえ、特別多いわけでも無いが、何だかんだとコイツは倹約家なのだろう、妙なところで俺と共通点がある。
道の途中で缶コーヒーを飲んでるだけだが俺は、なんかこれが好きだ。
道路のガードレールに腰掛けてボケーってしてるだけだが。
どうも喫茶店とかよりこっちの方が俺は好きだった、どうもああいう場所で休憩してるって感じがしない。
缶コーヒーの4倍の値段の飲み物のせいかもしれないが。
ランスターのやつはホットをチビチビと飲んでいて俺が飲み終わったというのに未だに半分程度しか飲んでないようだ。
飲み終わったのはたっぷり俺の倍の時間がかかっていた。
買い物というのは金がかかる、金がかかると言う事は財布が軽くなる。
軽くなった財布を重くするにはお金を入れないといけない。
そしてお金を入れるのに一番手っ取り早いのは銀行に行くことだろう。
「ランスター、ちょっとランスター」
「うっさい、焦らせるな、ええと、何だったかなあ」
ちょっと後ろのオバサンが明らかにいらっついてるんだけど。
銀行のATMの前、そこで手間取っているランスター。
何でまたこんなって、コイツ結構な頻度で暗証番号を変えていたらしい。
そのセキュリティ精神は素晴らしいが、素晴らしいが。
「忘れるくらいだったら変えんなよ」
「だからウッサイって言ってんでしょ、ああもうここまで来てたのにーー!!」
怒られた、既に二回ミスってるからなあ。
後一回ミスったら窓口でロック開放してもらわないといけないんだが、これが面倒くさい。
本人確認のための身分証はいいとして、他にも色々取り揃えないといけないから今日、今って出来るわけじゃないし。
「お前、せめて法則性とかそういうので決めとけよ」
「決めてたの、決めてたのよ、それを間違えちゃったのよ!!」
ダメじゃん。
「もうさー今日は金貸すからまた今度窓口でやってもらえよ」
流石に後ろのオバサンがかなりイラッついてる。
足をドンドンと踏み鳴らすのを愛想笑いで誤魔化すのもいい加減辛い。
誤魔化すように周囲に視線を移す、グルリと見回すと銀行という場所らしく平日にも関わらず人が多い。
大事そうに鞄を抱えているスーツ姿の男性、これから遊びに行くのか少々値の張りそうな服をラフに着た少年。
窓口はその人達を一人一人応答しているため、どうしても待合所としての性格が出ている。
『9月に起きた大規模事件から早くも……』
暇な時間を少しでも慰めるためか、設置されたかなり大きいテレビが流すニュース番組、大人しい印象と華やかさを両立させたニュースキャスターが読み上げているのはJS事件に関する事。
まだ一年も立ってない、飽きるほど毎日のように追加の情報がマスコミに流れ、消費されていく。
『廃棄都市部での大規模戦闘の影響で安全性が……』
一部噛んでる事件がこうしてテレビから流れてきていると背中がムズムズする。
「終わったわよ、何? JS事件?」
「ああ」
ランスターからしたら俺以上に複雑な感情があるだろう。
凡人を自称するこいつのことだ、こんな次元世界中で大騒ぎさせるような大事件の渦中にいたなんて。
しかも解決させた部隊の一員であったなんて冗談としか思えない。
そんなコイツは、こういった話になると。
「行きましょ」
と、若干硬い顔をしてこれ以上の話を拒否し始め、スタスタと行く先も言わないで進みはじめた。
おい、まてよと絶対聞き入れない意見をいい、荷物を持ち上げてゆっさゆっさと揺れるツインテールを追いかけ始める。
……一応、たまに後ろを見て追いかけてるか確認しているのはランスターのやさしさだと思っていいのだろうか?
人ごみを掻き分けながら、常に先に先にと進むランスター、消えそうなほど先には進まず、俺を見失うくらいで立ち止まって待っていてくれた。
だからって感謝とかはしないけどな。
『また、現場からは大量の弾痕が検出され……』
△ △ △
「どうすんだよ」
「帰るのよ、もう」
私の荷物、と言ってもそれほどきつい量じゃない、せいぜい両手に食い込む程度の買い物袋を持ったまま、軽く息を乱すくらいでケイスケは追いついてきた。
その後は、特に会話も無く無言でただひたすらに前に前にと歩き続ける。
別にこれは何か互いに機嫌を損ねたとか、そういうわけじゃない、私達の場合はよくあることだ。
こういう時、スバルがいたりすればアレコレと話題を振りまいてくれるだろう。
何だかんだと言って、スバルが間に入るくらいがコイツと私の場合は丁度いいのかもしれない。
二人だけだとこう……互いに壁がある。
そもそもコイツ、ケイスケは六課の中でも異質なヤツだ。
六課の人間は、八神部隊長の方針か上昇思考というか道徳的というか、そういう面が強い。
かくいう私も執務官を目標にし、六課解散後はフェイト隊長の下で補佐をすることが決まっている。
だけど。
「ねえ、アンタ解散後の異動先決めた?」
「まだだな」
これだ。
行き当たりばったり、先のことなど考えない快楽主義、色んな言い方はあるが一言で言ってしまえば
未来への展望がない。
そんなコイツが私達ともそれなりにやってられるのは、人の良いなのはさん達の気質と何だかんだ言ってコイツのおせっかいな面がかみ合ってのことだろう。
なのはさん達は人が良すぎる、自分の事を後回しにして周りの事を優先してしまう気質の持ち主だ。
そんなあの人達にしたら、ケイスケみたいな無理やり手助けしてくれる人は合うのかもしれない。
だけど。
私の後ろを着かず離れず歩いているケイスケ、両手にビニール袋を食い込ませながら、どっか私としても嫌っている訳ではない、そういう訳ではないが。
……コイツはJS事件に介入した。
コイツは自分の都合、やられたからやり返した。
そうとしか言わない。
そんな誰が聞いても嘘だと分かるような事を言い続ける。
なのはさんが、フェイトさんが、八神部隊長が聞いても、例えスバルが相手でも……自分に対しても。
だから、私が聞いたとしても意味は無い。
本当に、意味は無いのだ……
無いと分かってるのに……
「ケイスケ、あんたさあ」
何となく、だろうか、気分だとしか言いようが無い。
無いのだが。
「なんで……」
「だから……」
同じ、全く持って何時もと同じ回答を返される。
うんざりとした表情と、もういいだろうと会話を終らせようとするニュアンスがひしひしと感じられる声。
そっぽを向き、どうでもいいと嘯く。
……何時もだったらここで流すのが私のはずなんだけどな。
たまにはこんな時があってもいいだろう。
向き返り、悪戯を糾弾された悪ガキのような……なんかコレまんまな表現よね。
そんなケイスケに前から気になってた事をはっきりと放った。
「アンタさあ、ちょっと潔癖症すぎんのよ」
立ち止まる、多少の自覚は、いや本人だってある程度分かっていていること。
「……」
コイツは自分を善者にしたくない、汚れてるだのなんだのじゃない。
例えばコイツは他人が目の前で傷付けられたとしよう。
それに対して、ケイスケはその他人を傷付けた相手に対して守ろうと攻撃したとしよう。
その時点でコイツの中では自分も暴力を振るう”ワルモノ”なのだ。
だけど、そこで助けを呼ぶとしよう。
面倒な事にそれでもケイスケは自分が”ワルモノ”なのだ。
何故ならそこで”体を張れないのは男じゃない”と時代錯誤な感覚を持っているから。
そして、その中にほんの僅かの自己満足、自分は守ることが出来たというササヤカな満足。
他人を自分の満足に利用した、だから”ワルモノ”
そんな精神的判断の中、何を選んでも”ワルモノ”なら自分は”悪い人”で矛盾を解消しようとしてる。
「っていうか疲れない? 素直にヴィヴィオやエリオの良いお兄ちゃんでいいじゃないのよ」
「やだ」
これだ、”イイモノ”に対する潔癖としか言えない崇拝。
「お前だって、そんな事いいながら六課内部の自分の評価が異常に低いだろが」
「私は自戒も兼ねてるの、第一、第三者的評価で私が六課の中で一枚劣るのは事実でしょうが」
「じゃあ、俺も自戒を兼ねてるので今のままでいいな」
「始めっから『ヴィヴィオを助けるんだー』って言えばいいじゃない、恥ずかしいことじゃないでしょ」
「俺は恥ずかしいんだ!!」
あ、認めた、自分で認めた。
所詮コイツはそーいうやつなのだ、ヒーローを下らんと思いながら崇拝する子供染みたところがある。
大人ぶったガキ、ってやつなのだ。
全く持って下らないとしか言いようが無い。
平等で、正しい選択なんか誰ができるというのだろうか?
トンでもないロマンチストの夢想家で潔癖症。
だから”現実的に正しい”ってものも捨てられず。
自分の中で何重も矛盾してる、だから自分は”ワルモノ”と思って無理やりそれを押し込める。
まあ、人間誰しもそういう所はあるものだ。
どっかの誰か達を見てるとそうは思えなくなったりもするけどさ……
はあ、ほっときゃいいのだこんなヤツ。
どうせどっかで野垂れ死にして「ああ、あんなバカがいたねえ」って思い出話になってしまえばいいのだ。
だが。
スバルやエリオ、キャロ。
なのはさん、フェイトさん、八神部隊長達が、そんなのを見過ごすだろうか?
断言しよう、100%、心情的には1億%くらい有りえない。
結局コイツの無茶に付き合わされる、まあ、そうでなくてもコイツが首を突っ込むような自体をみんなが見逃すとも思えない。
だから、コイツに必要なのは行動をとめるための声ではない。
コイツが隊長たちに言うこと、それをそのまま返してやればいいのだ。
「じゃあ、これからJS事件みたいなことがあったら私に言いなさいよ」
「はあ?」
「助けてあげるわよ……格安で」
うわ、ちょ、面白い、今のケイスケの顔は面白い。
私の発言をまるで信じられないというよりも虚を付かれたってままな、鳩が豆鉄砲を食らったような、そんな顔。
いけない、八神部隊長に見せてやりたい。
まったく、スバルといいコイツといい、何故私の友人は面倒なやつばっかりなのだろうか。
まあ、いいわよ、コイツもおんなじような事を考えてるだろうし、おあいこってことで。
気がつくと六課の隊舎にたどり着いていた、JS事件のせいで年二回もリフォームすることになった、ほとんど新築な隊舎。
これとも後ほんの僅かでお別れだ。
「ほれ、荷物」
グイっと押し付けるように私に荷物を手渡すケイスケ、何時もの態度だ、さっき程度のことなど私達にとっては口論にも値しない。
「ありがと、今度アンタの買い物に付き合ってやるわ」
「そしてランスターの買い物の方が多くなるのか」
……その手もありか。
暗くなった道路を歩いて帰り道につくケイスケを見送る。
アイツは振り返りもしない、それでいい、私達にはこのくらいが丁度いいのだから。
さあ寮に戻ろう、明日も訓練だ。
△ △ △
「むにー」
「はいはい、早く降りろ馬鹿」
「やー」
ロングアーチ事務所は何時もの通りまったりとしていた、俺の背中に子泣き少女が張り付いてもみんな生暖かい目でみるだけで全くもって問題にもしない。
「ヴィヴィオちゃん、飴舐める?」
「はーい、ルキノさんありがとうございます」
それどころか通りかかる時に補給物資を提供するほどである。
とても育児環境が充実していますね、育児児童は一人しかいませんが。
「ヴィヴィオ、俺はかなーり忙しい、だから降りろ」
「嘘だー、パパのお仕事後30分くらいで終わるもん」
……何故バレるのだろうか、こやつ俺のやってることを見てるだけで覚えたとでもいうのだろうか?
恐るべき現代の聖王、見るだけ学習能力は脅威としか言えない!!
「ヴィヴィオちゃんは今日はパパさんとなにするのかな?」
仕事しろアルトさん、通りかかる度にヴィヴィオに声かけやがって、つかパパいうなこのメカオタ。
「えっとね、エリオさんとキャロさんと一緒にドカ○ンやるの」
「何故そこで友情破壊ゲーム!?」
マザー、おばさん、こういうガキはどうしたらいいのでしょうか、教えてオラクル的に
△ △ △
まったく持って何時もの通りだ。
ちみっこ達とほとんど同レベルなあの馬鹿。
ロングアーチがどのような状態だったのかは想像が難しくない、すっかりヴィヴィオはここのアイドル的な扱いを受けているのだろう。
訓練から戻って報告書等々のデスクワークを始めようとすると良く見る光景だ。
そろそろザフィーラがやってきてケイスケはヴィヴィオをその背中にパスするだろう。
後はエリオ達が困った時にちょっとサポートする、それがここ最近のパターン。
「うみゅーケイスケー、ティアーたすけてー」
スバルもいたか……
まあ、こういうのももうすぐ終わりだ。
ここが終わったら長いこと続いてきたスバルとの腐れ縁もこれまで。
とはいえ、間違いなくスバルはメールや電話を頻繁にかけてくるだろうからあんまり変わらないだろうけど。
そうなると、ケイスケ、エリオ、キャロ、アルトさん、ルキノさん達ともスバル経由で連絡が付くことだろう。
そういう意味では、当分色んな騒動は続くかもしれない。
「ふー」
「あ、ティア終わった?」
「まだよ、もうちょっと自力でがんばんなさい」
さてっと、とりあえずは未来の展望よりも今の仕事ね。
デスクのキーボードに向かい、今日の仕上げ。
さて、頑張りますか。
後書き
大変お久しぶりでございます。
最近はちょいとスランプ気味が長いこと続いております。
久しぶりのケイスケ番外編、こんな感じのダルダル生活が六課終盤ではあったのではないかと思いながら書いていました。
なのはがV2アサルトバスターになって、いいのかこれと最近のなのはワールドにツッコミを入れたい毎日。
とりあえずリリカルパーティに劇場版のブルーレイ購入は楽しみにしてますが。
早く買いたい、てか当たってくれと祈る。
それでは失礼します。
追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、