よくある傾向として、ほんの少しの年上が大人に見える事がある。

冷静に考えると、年上の方も大人っぽく振る舞ってるからだと思う。

あるだろう? 後輩がそのまた後輩の世話を焼くと自分もこうだったのか……って。

後輩の立場が一年前の自分で、そのまた後輩が二年前の自分で。

つまりまあ、そういう事なんだろう。






ほんの一つの年の差が、凄まじい差に感じるのは、両方とも距離を取るからだって






「ケイスケ、これ今月の経費、課のみんなのもまとめて来たから」

そう言って俺の机にドサッとやってくる請求書とそれを元にした精算書。

見るときちんと個別にクリップで止めてある。

「あー姉さんありが「経費整理のソフトは? それも」いい、やるから」

手を出そうとするのを防いで、自分の課に追い返す。

108部隊、捜査官ギンガ・ナカジマ。

俺にとって姉みたいな頭が上がらない存在。





              ケイスケの機動六課の日々 IFエンド ギンガ








「で、ちったあ……ってかなり慣れたな」

「そりゃあんだけ姉さんが世話を焼いてくれればね」

ゲンヤ・ナカジマ、この部隊の部隊長にして、スバル、ギン姉さんのお父さん。

普段だったらおじさんと呼ぶ間柄、親父と言えば俺にとってはこの人。

その人と







現在将棋中。





穴熊でガッチガッチに固める布陣を取るのはおじさん。

レジアス中将が地上の矛役なら盾は正におじさんだった。

おじさんの指揮する防衛線は一切ガジェットを受け付けなかったらしい。

本人はなのはさんの教え子がいたからって言うけど、それを的確に運用したのはおじさんだ。

押し返したりはしないが、絶対に防衛ラインを崩さずガジェットを止めていた。

レジアス中将みたいな武力派でも、本局派でもない、中道をのらりくらりと通すのが、はやてさんやクロノ提督の信頼の根源だろう。

ようするに、







今も崩せないで八連敗。






「また負けたー」

部隊長室の深いソファーにひっくり返ってクッションを楽しむ、ゲームは得意なんだがおじさんに将棋で勝った試しがない。

「へ、まだまだあめーな、小僧っ子が」

ぶっちゃけ、今三提督を除けばミッド地上のトップ的立場の人とは思えない、今の昼休みの将棋といいべらんめえ口調といい。

実はここは大工部隊なんだぜ、とか言われて、おじさんは棟梁と言われても違和感が無い。

となると、姉さんは棟梁の娘さん、しっかりものポジションか、不覚にもピッタリ。

「で、どうよ? 最近は」

「金がねーっす、とにかく金がねーっす、首が回んないっす」

事件で持ち出した装備一式、軍用品と言うやつはとにかく高い。

サラッと一式揃えられるのは、はやてさんぐらいだ。

おかげで生活費が雀の涙、泣く泣くパチスロ屋に行っても俺悪くない。

「ほう、いい店見つけたか?」

パチスロってのはギャンブルだが、その中では割りと公平だ。

基本、機種の知識と店が振る1〜6(例外有)の設定を読めば、後は目押しで出目の無駄を無くすだけ。

勿論最後は勘だが、データを集めて、キッチリ打てばいいだけだ。

おじさんも嫌いじゃないから、結局姉さんに大目玉もらうまでギャンブルトークが続いた。
















安いアパート特有の鉄板張りは、進入者対策かと言うくらいうるさい。

鞄から取り出した鍵でドアを開けたら、西日の入るベランダに面したベッド。

その上に皺だらけの布団と脱ぎっ放しのジーンズやシャツ。

最近面倒だったからな……

買い込んだ雑誌に広告が床を覆って箒もかけられない。








「……疲れたー」

流石にジャケットとパンツはハンガーに吊したが、そこで力尽きてベッドにダイブ。

夕日は眩しいけど疲れた身体が食事や娯楽より睡眠を求めてる。

体温が移って程よい温もりになったと思うと……


















ギンガ視点

仕事の引き続ぎが済んだ、最近は台風一過というかなんというか、少し余裕がある生活ができている。

とはいえ、これも一時の事、もうすぐ我が家には特大の台風がやってくる。

ナンバーズの行き先に父さんが立候補した。

教会に行く予定のメンバー以外全員がナカジマを名乗る事になる。

私の家という、仲間が、私とスバルのいる環境がいいだろうと考えた末らしい。

話を初めて聞いた時は……













思わず母さんに説得してもらおうと父さんをそっちに送りかけたけど……










し、仕方ないのよ、チンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディの四人を、母さんのいない父さんが引き取るなんて言い出すから……

「よっと」

懐に抱えた買い物袋を抱え直す、都市部の若干高い物価に眉をひそめながら購入した食材。

復興が後回しになっている地区らしく、ガジェットの残骸がたまに見える。

ネコの食べ残しのように中身が無い、周辺の人が持って行ったからだそうだ。

「ふう、いい加減引っ越してくればいいのに」










やっと到着した、ケイスケのアパート。

更生施設から六課に戻って、今度は108に来る事になったのに……

ケイスケは、ナカジマの家に帰るのを断った。

こっちは、もう当然と思って部屋まで用意したっていうのに。

そりゃ、部隊長と同じ家っていうのが、ちょっと心証よくないのは分かるけど……

だからって、もうちょっと住むところをどうにかして欲しい。

しかもあの子はだらしない。

見張る人がいないと直ぐに散らかすんだから。

しかも食べ物も偏るのが目に見えている、姉代わりの勤めとして、たまには様子を見ないと母さんにおば様に申し訳が立たない。

ポケットからキーホルダーに付いた合鍵でドアを開けて中に入ると、予想通り……予想通り……












「あれ?」

食材を置くべく回ったキッチンには水を切っている食器。

足元に缶も雑誌も無い、服も下着も無い。

ケイスケは寝てるけど……

「……なんだ」

ちゃんとしてるんじゃない、いつもこうだといいのに。

「あれ? ギンガやん、お久し〜」














……よし落ち着きましょう。

小柄な身体と丸っこい顔つきが可愛らしい関西弁、だったっけ?

長身の私からすると羨ましいくらいの可愛さを持つ、元機動六課八神部隊長が……













何で……ケイスケの部屋で……洗濯機の前で……








そう、そういう事……さあ、ギムレット起動。





そう、ケイスケ、よく見たら、下着ね。








「ん? あれ? 姉さん? はやてさん?」

「ちっす、逃げた方がええで」

さあ、おば様に詫びに逝ってらっしゃい……

スピナーが鋭く激しく、鳴り響いた。


























目が覚めたらそこに穴が開いていた。

姉さんが勘違いしたそーです。

部屋の中で下着の俺が寝ていて、はやてさんが洗濯してたからだそーです。







「あー、ケイスケ君の周りはいつも笑いの風やなぁ」

「つか、はやてさんは何時からいた」

本当に気が付いたらいたよこの人、いつもの事だが、入れた記憶が無いぞ。

「こう、合鍵でちょちょいっと」

「ヒドくね? 俺のプライバシーは?」

「……」








……何故黙る、そして何故引く。

驚愕した表情から出るのは

「そんなんあったん!?」

「殴るよ?」

「いやん、ドメスティックバイオレンスや、家庭崩壊や」

誰と誰が家庭だっつーの。









じゃあ紙の便箋に……ええっと……離縁状っと。

「捨てられたー」

「ええい、人聞きの悪い!!」

「……もういいかしら?」

呆れた姉さん、二人揃ってその正面に回って整列。

全くタイミングを測らずに二人そろって。

「「やりとげました」」

姉さんのたっぷりなため息が部屋に木霊した。















「ん、私が掃除したよ? 後洗濯途中ー」

やはりか、俺が寝る前までと部屋の様子が変わり過ぎる。

何があったと聞いてみたらこれだよ。

取りあえずズボン履かせてくれ、さっきまで下着だけだったよ。

「もう、着替えは「はいこれ」」

迷わずクリアボックスからソフトジーンズを出してくれたはやてさん。

トイレ前まで行って着替える。

しっかりジックリ観察されたのが容易く予想できるのがいや。

戻ったら姉さんが何とも言えない表情だった。













「……八神部隊長、よく知ってますね」

「ん、週に一度は顔を出すからな、もうこの部屋で私に分からん事は無いで」

こわ、怖いよこの元上司!?

いつの間にか俺の部屋ははやてさんに浸食されていたのか!!

「……その、あの……余りよろしくないかと……」

姉さん? 俺の方をチラチラ見てどうしたんだ?

身体自体ははやてさん側を向いていて何か言いたいのか?

「その、ケイスケも男の子ですから、もしも、もしもの間違いが……」











……は!? 今一瞬意識が飛んだ。

え? 何? 俺一応オス種に判別されてたの!?

最近もう、完全安全牌くらいに思われてると!!

「アッハッハ、平気平気、そんな子やったら私らにとっくに吹っ飛ばされとるって」

んな!? な、舐めんなよ? 本気でやるぞ本気で!?

「ほら、今もケダモノのような目で八神部隊長の事を」

はやてさんの認識も嫌だが姉さんの認識も極めて嫌です。

一度姉さんと六課メンバーにある温度差に付いて調べたい。










「大体私だけや無いし」

「あー、だよねー」

えっと一昨日にスバルだろ? その前日にヴィヴィオが来てなのはさんが向えに来て、更にその前はウェンディが……

「……」

おお、冷静に計算すると俺ん家に誰かいない日のが珍しいぞオイ。

たまにしか出没しないのはランスターとフェイトさんだな、船暮らしだから滅多に来ない。

「ふむふむ、大体こんなんで……」

「はやてさーん何書いてるんですか〜」

ホワイトボードに六課メンバーの名前を書込みを始めて。

過去の部分は本日の登場怪獣と分かるが、何故明日以降も記述が進む。

「ん? ケイスケ君の所有権を明確に書いとこうと」

待てい。

肩をグッと押さえて記述を阻む、このままでは済し崩しで俺がホストする日を確定されてしまう。

「いやんギンガが見とる」

イヤンイヤンをかますはやてさんに、オデコ摩りチョップをお見舞いした。

「ケイスケ……」

は!! 姉さん!?

絶対零度なオーラの姉さん、背中に般若の像まで作っている。

ニコニコ笑顔なのが某、笑顔とは本来(ryを連想させる。







「あのね、姉さん別にあなたがどなたとお付き合いしても祝福してあげると思うの」

いや付き合う云々以前の問題でして、とは言え無い。

そんな主張なぞ、何それ美味しいの? と言わんばかりである。

「でもね、きちんと、誠実なお付き合いしないのはお姉ちゃん感心しないかなー」









少し少し近付く足音がヒタヒタと変換されるほどの気配、絶対に逆らえないと本能が告げる。

ここがお前のエンディングだ、さあ逝こう教えてポンポコ教室に。

思わず心の中で色々な走馬灯が「なあギンガ」

そんな空気を打破ったのが、誰であろうかつての部隊長八神はやて。

「何です八神部隊長」

あくまでも敬語を崩さない姉さんに一切怯まないはやてさん、ちょっとだけ女神に見える。

「私らいけなくてギンガいいん?」

と、口火を切った。




















ドゥーエ視点

ええっと……何がどうしたというのかしら……

脱ぎ散らかした服を部屋の隅に隠して場所を確保する。

お茶を近くの子供に用意するように指示。

騎士カリムとコネが出来てから金回りがよくなって出涸しを出さないですむ。

片付ける間も座って微動だにしないギンガ・ナカジマ。

そもそも根本的に

何故私のところに来る……














「それでですね、私はお姉ちゃんだからって言ったんですよ、そしたら……」

「はいはい、昔そうだっただけで、最近のあの子については私らと変わらんやろ。でしょ」

角砂糖、お酒に漬けてたっけ?

出した緑茶に砂糖とミルクを入れた時点で驚愕ものだったけど、それでクダ巻き始めるのにはもっとびっくりだわよ。

「それで……」







はいはい、じゃあ好みの食べ物知ってる言われて、ケイスケが今ははやてちゃんが上げた料理のが好みってね。

いやー美少女がこんなに愚痴こぼすのはこれはこれで圧巻かも、傍で見てれば。

側で見てるとただの酔っ払いの愚痴ね。








「あんなに、あんなに面倒見て来たのに!! アッサリ『んこっち』ですよ!!」

何この、嫁と喧嘩した姑みたいな会話。

あ、今日の夕飯何にしよう、手伝い当番の得意料理にすれば色々楽なのよね。

「聞いてるんですかドゥーエさん!!」

はいはいと半ば投げやりに十五回目の返事を返して。

18歳の乙女がこれでいいのか若干不安になる。

あーゲンヤさんとこ電話するようかなー、帰りそうも無いんだけどこの人。

時計の針がいい加減料理を始めないといけない時間になってきた。

洗濯は流石にチビ共がやってくれたみたい、こういう時に私の教育は間違って無いと確信する。

「あー、ギンガ? いい加減夕飯の支度が……」

「それです」

はい?

「こちらの教会の味付けを教えてください」










……落ち着け、落ち着くのよドゥーエ!! 最初っから言えとかそういう理屈は通じないの。

負けない、十年以上雌伏のスパイ生活したのは伊達じゃないわ!!










鬼気迫る表情で料理されて、食べられたらちょっと気分が微妙だったけど……

お土産にあの子が好きそうな参考書渡して帰すまでちと微妙な緊張感が施設を支配していたわ。









「シスター、何だったの?」

比較的年長の子がそう呟く、まあそのうち分かるわと誤魔化した。

まあ主な被害はケイスケに行きそうだし、まいっかぁ。



















ケイスケ視点

「という訳だよワトソン君」

「ワトソンって誰さ」

ノリの悪い返事を返すのはスバル、仕事明けらしくフォーマルな印象を受ける私服だった。

いや、いくらなんでもほら、姉さんの相談なんかスバルぐらいしか……









「うーん、大体ケイスケの好みなんか分かりそうなものだけどなー」

辛いのでしょ、しょっぱいものでしょ、と次々スバルは上げていく。

思わずご飯やお酒が欲しくなるようなラインナップである。

何故姉さんは、甘い物を上げたのだろうか。









「それはいいがスバルや、好物上げるついでに食い物出して開けるな」

「いいでしょ、アタシの差し入れだってあるんだし」

まー何だかんだとヴィヴィオ以外の客なら何か持って来るんだよな。

昨日の姉さんも食材置いてったし。

それを見て流石に悪かったと思ったからスバルに相談してるんだが。












「でも前のケイスケだったらギンねえのが当たりだよねー」

パリパリとポテトチップスを食べながらそう言うスバル。

確かにケーキとか好きだったな、今でも嫌いでは無いが、沢山食べたいとは思わん。

あーそう言う事かとスバルがコッソリと呟いた。

「ん? 何だ?」

「あー、うんでもなー」

スバルにしてはハッキリと口にしない、奥歯に何かが詰まったような言い方だ。

何だよと続きを促すと観念したように

「えーっと、ギンねえのさ、中じゃまだケイスケって昔のままなんじゃ……」

「……何か違うか? 今の俺?」

「あー、うん、なんて言うかなー、うーん……ちょっとギンねえとアタシは違うというか……」

本当に珍しいスバルだった、まあ自分でも変わったと言えば変わったとは思うが、明確に何で変わると姉さんがショックうけるのさ













点けっ放しのテレビがスバルの家の近くを映す。

ビルになってる元公園のところとか映ると微妙な気持ちになる。

「……八神部隊長さ、なんでそんなのしたのかな?」

「知らんよ、秘密ーとか言ってたし」

あははと笑みがスバルに浮かぶ、何か妙に納得したような、違うような微妙な感じ。

「ねえ、ケイスケにとってギンねえって、お姉ちゃん?」

不意に少し真面目な感じに変わった口調。

「そりゃ姉さんは姉さ「うん、ギンねえも弟って言うと思う」」

? スバルが何を言いたいのかがよくわからんのだが。

「ギンねえはお姉ちゃんだよ、これからはチンク達にも」

ウンウンと頷いて先を促す、それが何かあるのか?

「アタシはね、ケイスケと同じだと思ってる、多分八神部隊長も」

だからだよ、とよく分からない結論を勝手にスバルはつけた。













スバルが来て大体いい時間になった、はやてさんが作っていった煮込み、それを暖め直して。

モグモグと、あくまでガツガツにならないレベルとはいえ、ガツっと消費するのがスバルだ。

「別にいいが、家は?」

面倒だから布団の無いコタツに鍋敷きを引いて鍋ごと置いている。

そこから丼飯の上に煮物を置いて汁をつけ、かっ込む。

俺は「おかわり」と元気よく差し出される丼に米を盛る。

「んーお米おいしー、何だっけ?」

「いや、おじさんは?」

今日呑むんだって、とはスバルの返事。








そーいやランスター以外が来ると必ず飯が米だな……俺もナカジマ家で刷り込まれたし。

なんか食いたくなるんだよなあ、これ。

俺も味噌汁を啜りながらテレビを点けて。

「あ、ケイスケ、お味噌汁の出汁を手抜きしたでしよ!!」

「ケチ付けるなら食うな!!」

く、居候では無いが三杯目はそっと出しではないのか?

とか言うと、三杯目だけ遠慮するのが予想できる。

……おじさん、ヤバい借金してないよな? 主に食費の問題で














そんな事をしてるとピンポーンと呼鈴が鳴る……誰だ?

「はいはーい」

「お前が出るなよ!!」

お茶碗持って、箸を咥えて行儀が悪い!!

てか待てよ? この展開から予想されるに客は姉さんか!?













いかん、取りあえずスバルを座らせて……

「はーい、こんばんはーどちらさまですかー」

「こんばんは、ヴィヴィオです」

ちょ!? 予想外過ぎる!!


















「お前ね、アイナさんが旅行で、なのはさんが急な出張、うん分かった」

取りあえず言える事は一つしかないな。

そうなのと頷く小学生、それに掛ける言葉。

はい。







「海鳴帰れ」

「パパ――学校はサボっちゃダメなんだよ!!」

「もっともらしい正論吹いてんじゃねーよ!!」

大体なのはさんもなのはさんだ、何で俺んちに行かせんだよ!!

いーだろ別に教会でセインあたりに泊めて貰えよ!!

「あはは、ケイスケ信頼されてるんだよ」

「スバルさん、分かってたけど優しい……スバルママと「おしテメエ、簀巻きにしてマジ沈めるぞ」」

あらん限りのドスを効かせたガン付けをすればヴィヴィオはスバルの後ろに隠れる。

つーかドタンバタン走るな!!ボ ロイんだから!! うちのアパート!!

ゆっくり追いかける俺、逃げるヴィヴィオ、しょうがないと呆れるスバル。

まあ騒がしいがこれも日常と――「ケイスケ!! いる!!」

その時、時が止まったと後に全員が口を揃えた。















バタンと開く扉、スッと入って来る足、この段階で違和感しかない。






足は生足だった、ストッキングとかに包まれない生々しさがそこにある。







そこから上に視線を上げるとスカート意味あるの? と言わんばかりの高さからやっと布地が覆う。








フリフリだった、容赦無くフリフリだった。







(なあスバル、俺熱で脳が焼けたみたいだ)

(ははは、ごめんケイスケ、アタシもオーバーヒートしたみたい)

(ふ、二人とも落ち着いて、多分現実……)

異常事態に置ける六課特性謎通信は健在である。










そのまま上に上にと視線が上がると谷間を強調するように服の真ん中にスリットが入る。








ドレスとかの華麗さというのは欠片も無い、何か悪い冗談としか言えなかった。








肩パーツもまたフリフリだった、何? それに何かコダワリでもあるの?










そして頭部、ここだけ普段と変わらない、変わらないがカンザシのようなものが豊かな髪に刺さっている、が、やはり装飾多価で…









まあ総括すると、堕天使エロメイド?








「どうしたの三人とも?」

認めたくない、これが三人共通する気持ちに違いない。










……クケー!! クククックケー!!

「ちょケイスケ落ち着いて、深呼吸、深呼吸だよ!!」

「にぃ、落ち着こう!! 気持ちは分かるけど退化してまで現実から逃げないで!!」

クケークケー、ワンワン、ニャーニャー。

「ああより訳の分からない領域に!?」

「ケ、ケイスケ何が……」

「「いいからギン(ねえ)ガさんは着替えて来て!!」」

……クケー……












……は? ここは、俺ん家か……

「ケイスケ大丈夫?」

目覚めるとそこに姉さんが……ズキリと頭が痛む、何か思い出してはいけないものを見たような……

「もう少し横になった方がいいわよ」

そう言って起き上がろうとした俺は制止され、

「お粥食べる?」

「いやさっきメシ食ったし」

ちょっと寂しそうな姉さんに罪悪感が芽生えるが、食ったし。

周囲を見回すがさっきまでスバルとヴィヴィオがいたような……

「ケイスケが倒れたからヴィヴィオはウチに連れて行ったの」

何で倒れたんだ俺?

うっ、思い出そうとすると頭が……

何かが忘れろと囁いてくる。

「えーっと、姉さん?」

「ごめんなさいケイスケ……」

な、なにを姉さんに謝られたんだろう?

「スバルが言ってたわ、ケイスケも昔のままじゃないよって」









……

「そうよね、ケイスケだって何時までも干渉されたく無いわよね、ごめんなさいケイスケ」

え? え?

「鍵ここに置くから、それじゃ」

「はあ? ちょっと待った!!」

姉さん何暴走してんだよ? 何故こんな極端から極端に走るんだよ!?

立ち上がろうとするのを引き止めるが、逆に何を言ったらいいのか分からない。

ここは黙っているのが得策か?









「――痛い」

「おわ、ごめん!!」

鍵みたいなギザギザしたものを握った手、それを更に強く握ればそれは痛い。

というか、今、姉さんの手を握っていたのか!?

ちょっと感触を味わえばよかった……いや違うだろ俺!!

しかし、ここで何かを言わなくてはいけない、いけないのに……










(な、何も思いつかん!!)









でも小さかったな、姉さんの手。

こう、握ったらスッポリ全部が俺の手の平に入るって……

小さい、か……













姉さん、ギンガ・ナカジマ。

初めて会った時から年上だからって姉ちゃんって呼んで、再会したから姉さんって呼んで。

「ケイスケ?」

「姉さん、ちょっと立って」

中腰だった姉さんが立ち上がるとサラサラした髪が肩から前にこぼれる。

かき上げる仕草が妙に大人っぽく感じた。

スラッと背が高い――高いけど。










立ち上がった俺は、もっと高かった。

「あ……」

……そっか、俺ずーっと姉さんの背を抜いてたのか。

ここ一年くらいでそんなに伸びて無かった筈だ、六課に来たとき位から。

「ケイスケ……」

「姉さん、やっぱ昔とは違うや」
















思い出すのは一緒の時間、姉さんが一番でスバルが最後、丁度真ん中が俺。

姉さんはやっぱり俺達の姉さんで、だけど……もう越してしまった。

身長の話だけじゃなくて、昔の場所は昔の場所で、今からそこに戻るなんて無理だから。








「おっきく、なったのね」

「うん、姉さんよりおっきい」

手の平を合わせても二回りくらい俺が上だ。

うん、そうだ。

「姉さん、俺やっぱ昔のままじゃないよ、小さくて、姉さんを追いかけた俺じゃないから」

「……うん」

胸に触れる手の平が温かい、髪から漂う香りは女の子じゃなくて女の人。

抱き締めたら包めるくらいの細い身体、年上だけどたった一つしか違わない、隊長達よりもっと近い。











……変わった、姉さんも変わった。

手が届かないくらい遠く感じた姉が、今はほとんど変わらないように近く、そして。

綺麗になった。














「……ねえ、ケイスケ……話、聞いてもいい? 私の知らない貴方の話」

「ああ、だから姉さんも話してくれるか?」











そっか、そうだった。

スバルの奴とはよく話した、エリオやランスター、キャロと一緒だったけど。

だから、姉さんとも話さなくちゃ、変わった俺、変わって無い俺。

それを少し少し知って貰わなくちゃ、今のギンガ・ナカジマと俺の関係を作らないと。

小さい俺と小さい姉さん、それとは違う絆、それを作る事から始めよう。















その晩は、どっちが先か分からないけど、倒れるまで話して、笑って、知らない互いをトコトン知り合った。

翌日、一緒に出かけた時には色々ツっこまれて、そんな時間を作り直し。

もう一回、絆を作り直そう。














「ケイスケ!! この書類は何!!」

「うわ、ごめーん!?」

……一部変わらないけど。





後書き

まずは申し訳ない、そういう関係まで一話で行くのは無理でした。

姉弟という関係はそこで終結しているので一度関係を崩さないとだめだなってなり。

さらにそこから関係を築くのはこの話の中では性急すぎるだろとここで落としどころとなりました。

ということでギンガIFはこんな感じにお互いを見つめなおす話です。

それでは拍手返信はいつものように次の話でまとめて行わせていただきます。







追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。

作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。