自分のアパートの家具に積もった埃、ポストに大量に詰まった郵便物。
自分の部屋と言っていいか、少し疑問が出て来た。
使っちゃいないが、開けた時間と正比例できちゃなくなった水場を掃除する。
ついさっきまで、その、アレだ、なのはさんとこいたから風呂はいらないんだ……
多分フェイトさんが来なかったら今日も泊まったと思うし……
爛れてるなぁとは思うが直す気になるほど真面目な自分じゃない。
公共料金支払いと家賃の引き落とし明細を見るともったいないとは思うんだが……
だからと言って、その……隊長相手だとあっちに転がり込む気にはならない。
なんつーかこう、認めたくない?
そもそも、どうして付き合い始めたんだったか……
まあ明確にその流れができたのは、隊長に連れられて移動した教導隊に入ってからだった。
ケイスケの機動六課の日々 IFEND なのは2 こうして二人は付き合った
六課解散、元々が一年の短期運用だったから予定された解散だ。
とはいえ一つの部署を解散させるとなると手間が大変。
裏方組の修羅場モードの中、なのは隊長に誘われた、らしいのだが……
「ごめん、なんて返事したのか忘れてた」
「はい、了解って即答だったからおかしいなーって思ってたんだよ……」
ブスーッとする隊長に必死で謝る。
「すんません、本当すんません」
各人の異動先に引き継ぎ文書を送る最中、はて? 俺は?
って時に気がつくくらいテンパってたんだよ。
ご一緒なヴィータ元副隊長と一緒になのは元隊長に教導隊持ち車両に詰められている現状。
早速他人の振りしてくれる副隊長が妬ましい。
「そもそもヴィータ副隊長はともかく何で俺誘ったの?」
「おいケイスケ、アタシはもう副隊長じゃねーよ」
「じゃあヴィータ様と呼ぶ、ヴィータ様ヴィータ様ヴィータ様」
「やめろ本気で!!」
他人の振りなど許さん!! けっけっけ、当分色々共有してもらうぜ。
主に苦労とか苦労とか苦労とか苦労とか苦労とか。
「うーん、ヴィヴィオの件もあるんだけど、私も秘書欲しいなーって」
まあ、なのはさんは作成書類が鬼だからな。
とはいえ、秘書作ってもいいですか? むしろ作れと言われる尉官も珍しい。
「実は佐官断ったの根に持ってたりして、主に広報が」
「う、まさか佐官待遇の仕事振られるとか」
個人的に断ったとはいえ、信賞必罰を破らされたわけだし。
しかも有名人が破った訳だし。
「つかオメー、それを手伝うとか、頑張れよ〜」
!?
結論からすると……別に嫌がらせでも何でも無かった。
「はい、高町の予定は三か月先まで、はい、その先になります」
電話いや、依頼教導のスケジュール調整。
主にこれだった。
何この状況?
一時間しねーで別部隊から依頼くるって?
内線を転送できる端末を借りてなのはさんの尻に引っ付いて予定を伝える。
何このまんま秘書?
「モグモグ、そりゃオメー、ゆりかご落とした教導官、しかも美人と来たら人気いっぱいだろ」
「まあ、そーなんですがねぇ」
食堂でヴィータとメシを喰いながら愚痴タイム。
結局、階級で呼ぶのが違和感だーって呼捨てに行き着いた。
六課の食堂と教導隊の食堂はそれほど違いは無い。
敢えていえばリフォームしてる六課と違って壁やらに油染みがあるくらいだろう。
「真面目にオメーは来てよかったと思うぜ、なのはにノー言えるヒラなんかオメーくらいだよ」
まあなぁ、目を疑ったわ、相手の言うままに月間予定を埋めていく姿に。
だから……だから……
だから何百も休みがたまんだよ、休めよ、頑張るなよ、つか帰れよ家に!!
なのはさんの予定を電話でそっこら中に頭下げて人並に修正したら事務組から拍手喝采ってドンだけー!!
あ、チャイムが鳴った、休憩終わり。
研修を行なうヴィータと別れて移動する。
本日はなのはさん自身のトレーニング。
隊舎の外にはホログラフ訓練施設がある。
そう、六課のアレだ。
あんなもん造るのよくOKしたと思ったら解散後にこっちに移設するのを約束してたからだそうな。
他にも色々六課で造った道具はここに来ている。
だからあんなにガシガシ新アイテム造れたのね、納得。
「じゃあ、シューティングコントロール、200からお願いします」
……はい?
なのはさんの要望通り、周囲の局員数名から飛び出る大量の魔力スフィア。
その全てに色とりどりな光が浮かぶ。
それをなのはさんもスフィアを浮かべ迎撃。
うわーすっげえ。
流石に何発かは外すが、それでも大多数を迎撃していく。
その後、超遠距離からの精密砲撃、相手の攻撃判断によるバリア、シールドの選択。
見た目は派手だけど……確かこれってランスターがやってたのと同じだよな。
「集束砲撃行きます!!」
最後は……ってちょっとまてぃ!!
「やめんかアホー!!」
その辺の石を拾って投石。
見事な放物線を描いてゴツンと的中する。
「いたーい!! 何するのケイスケ君」
「何するの? じゃねーよ、シャマル先生に禁止されてただろーが!!」
集束砲撃は自分の魔力値を超える事すらできる技だ。
取り込んでる訳では無いが、負担はデカい。
ゆりかごの時の傷は年単位に治さないといけないらしい。
下手を打てば一生付き合うそうな。
「シャマル先生の許可が下りるまでスターライト禁止!! 忘れたか!!」
「うっ、だって本格的な自分の訓練なんか久し振りで……」
「だっても、さっても無し!! ヴィヴィオの親やんだったら危ないの禁止!!」
ったく……何にしたって進歩するのが楽しいのは分かるが……Mだな、ドMと勝手に定義してやる。
「貴方、何様ですか?」
あ? 何か知らん顔が声かけて来た。
さっきなのはさんにスフィア撃ってた一人。
航空の青と白の制服を来た女だ。
「貴方、三士でしょ、高町一等空尉に対して失礼でしょう」
……あーそうだったそうだった、ここ六課じゃないんでした。
しかしながらこの子以外は別に気にして無い様子。
なんだろうこの差?
「あの、ケイスケ君には私が」
「いや、オレが悪い、失礼いたしました、高町空尉」
踵を揃えて、キッチリ45°でお辞儀する。
ここは六課じゃねえ、こんな事もある。
ついついいつものノリでやっちまった、失敗だ
「っ……」
? なんだ?
「つきましては高町一尉、終業時間近いので仕度をお願いします」
「え? でも……」
何故チラチラ女と俺を見る。
「ヴィヴィオも学校が終わっています、しばらくは定時で上がるべきかと」
「あ、ごめんなさい、みんな、今日はここまでで」
なのはさんの言葉で解散になり、俺は片付けの手伝いだ。
女が最後に睨んでたような気がするが
まあ大した事ねーよ。
「終わりました、高町一尉」
「あ、うん……」
……何なんだ?
とにかく帰るんだよ、俺は仕事より余暇が大切なんだよ。
なのはさんに先導してもらい隊舎を出る。
「あー、終わったー、なのはさん、ヴィヴィオ待ってんだからサッサといこーぜ」
「あ……よかった……」
よかった?
「えっと、嫌な思いさせちゃったかなって」
ああ、アレ?
少し吹いた。
「な、何で笑うの!?」
「いや、だって俺があの手の風紀委員系と相性悪いの何か判り切ってるだろ」
あの手の類を回避するなんかいつもの事いつもの事。
「何かアイツ、オーリス三佐とランスターを足して割ったような感じじゃない?」
頭硬くて、規則に柔順で、それを他人にもってタイプ。
そのくせ上司とかを自分の幻想でみる。
別にいいんじゃね?
みんながみんな俺みたいな適当タイプじゃ仕事まわんねーし。
「えっと、そうじゃなくて……嫌われたかなって……」
「はあ?」
それこそねーよ、アホちゃう?
「今更その程度で縁切る人間に見られていたとは……鬱だ死のう」
「ちょ、ちょっと待って、そんな事無い、無いから!! 何で都合よく縄持ってて丁度いい木の枝が!?」
「ああ、なのはさん、姉さん達には一年間付き合って信頼が築けない愚弟は世をはかなんだと……」
「ちょっだめー」
ひとしきりなのはさんで遊んでヴィヴィオを回収。
いやーこの反応、サイコー。
スバルだとできねーんだよなー、手の内バレていて。
無限書庫にも行ったが噂のユーノ司書長とは会えなかった。
なんか知らんが俺が行くといない。
あまりにも会えないから避けられてるかと心配して予定を確認してしまうくらいだ。
別にそんな事は無かった。
一月前から決まってるユーノ司書長の予定と噛み合って無いだけだ。
これが波長が合わないということか……
「ヴィヴィオー、またケイスケ君が苛めた〜」
「ママ、こうなったら弄ばれた〜って言えば」
「くぉら」
けしからん提案をする幼女の鼻を上に引っ張る。
「ふがふがふが」
ハッハッハ、見ろよ豚のようだ。
「もう、子供の冗談じゃない」
「コイツは明らかに実行する!!」
ええい、なのはさんは天然なのか分かってるのかボケなのか分からん!!
そんなん言ってるうちになのはさんのマンション前、さて俺は帰る。
「えー、ご飯食べていきなよ」
「ご飯一緒しよー」
食費は浮く、浮くが……
「だめだ、今日は通販で頼んだ格ゲーが届く日なんだ」
俺はこの日を一日千秋の思いで焦がれていたんだ、早く帰ってパッケージを開けたいんだ!!
「だいじょーぶ」
は? 唐突に何を言い出すヴィヴィオ。
妙に自信たっぷりに腰に手を当ててふん反り返ってるが……
「いいからいいから」
「お、おいヴィヴィオ?」
後ろに周ってグイグイ俺を押していく。
「ちょっと待ってよ二人ともー」
ぐおお、俺は早く帰りたいんだー。
「お帰りなさいませ、こちらが本日の郵便物です」
……ちょっと待とう、うん……
手渡された物は確かにいつも使ってる通販会社の梱包だ。
開けて確認した中身も間違いなく俺の注文したものだ。
ああ、そこまでは問題無い、うん。
「ディードお疲れ様ー」
「あ、ディードこんばんは」
「はい、お嬢様になのはさんもお疲れ様です」
な、な、な……
「あ、そんな上着を持って行くとかそんなのしなくても」
「いえ、これも社会勉強です、是非やらせてください」
「何でいるとか、何で持ってるとか、色々あっだろ!! 何でスルー? 何スルー? 俺か? 俺がおかしいのか?」
青年の主張はこうして無視されていく……
……ふつーにここのゲーム機でプレイしてしまった。
ふふふ、自宅に持ってくセーブデータ用USBもバッチリ常備しちゃってるぜ。
アイナさんのしょうがないわねーって視線が何とも言えない。
ディード? 配達がくる時間に『手渡し』で受け取ったそうだよ……
ふふふ、俺、アパートに帰ったら大家のおばちゃんになんて噂されてるんだろ……
手遅れDEATHって電波は無視る。
ご飯をテーブルで一緒しつつ、ヴィヴィオの今日の話を聞いてしまっている。
アイナさんをディードは送っていった。
何か陰謀の香りがするのは気のせいだと思いたい。
あ、忘れないうちに。
「あーなのはさん、明日明後日休みだから」
「はい? 私取ったっけ?」
「取って無いよ、俺が勝手に予定組んだ」
ほい、と今月の予定表を渡す。
普通に土日と祝日休暇、どーせ教導受ける部隊だって期間中は平日業務だし。
「ちょ、ちょ、困るよ!? 勝手に!!」
「わーい、ママと休み一緒ー」
ほらヴィヴィオ喜んでる。
「だ、だって熱心な子は休日だって指導受けに」
「その場合は予め予約しろと通知した、手の空いてる教導隊の人にどうしてもって人を見てくれとお願いした、何か文句あっかあ?」
うう、と唸りつつ睨んでくるなのはさんだが。
こちとら少しでも休日消化しろと人事にせっつかれてるんだ、容赦しない。
「ほうほう、ヴィヴィオ、なのはさんはお前より熱心な生徒を選ぶんだそうだ、可哀相に……」
「うう、パパーヴィヴィオ捨てられちゃうの?」
パパじゃないけどね?
なのはさんはこの手の良心に攻めるタイプにめっきり弱い。
ほらあっと三秒。
「わ、分かった、分かったから、もう……ヴィヴィオ、明日明後日は一緒にいようね」
勝った!! 所詮は善人、ここを突けば崩れると予想していた!!
ハッハッハこれで俺も休日ゲット!!
「ケイスケ君もね?」
「へ?」
な、何故に? ホワイ? お、俺はこれから誰かに奪取される前にゲームをコンプするという使命が……
「だって……無理矢理私に休み取らせて……ま さ か、自分がゲームやりたいから取らせたとかじゃ……」
「め、滅相もない……」
……グッバイ、俺の廃人休日……
「えー、こちらがブレンドコーヒーとナポリタンになります」
トレー片手に食器をテーブルに並べる。
こ、この客聞こえたぞ、何だカッコいい店員じゃないって!!
その後ろで恭也さんが女の子にメルアドを聞かれてる!!
ちくしょう、何だかとってもムカつく!!
「ほら、ケイスケ君スマイルスマイル」
「にぃがんばれー」
ふふふ、ヴィヴィオここで発言しないようになったのは褒めるべきなのか?
地球の魔都、つーか地獄の一丁目? いやむしろ最終のジュデッカ? な海鳴市。
またしても来てしまった、平行世界も含めたら〜
……俺、何言ってんだろ?
まあいい、とにかく筋肉星並に超人だらけな街。
そこで過ごすとか言い出すなのはさん達に付いて来た訳だ。
別に、もう何回も来たし、別に驚かない。
何回も何でも? 無いから士郎さんや恭也さんも慣れてくれたし。
「……何だかケイスケ君やさぐれてる?」
「別に、普通ですよ普通」
俺が来る意味あるの? とか思って無いよ? うん。
「すみませーん」
「はーい、ただいまー」
なのはさんレジ行った。
普通にウェイターをやり。
休憩中、ヴィヴィオに封鎖結界を張って貰って大声だした。
大丈夫、まだ大丈夫。
地球の高町家か……
毎回思うが広い。
広過ぎだろ、こうして人が集まるにはいいんだろうが、三人家族が住む面積じゃない。
「けいすけー遊んでー」
む、雫ちゃんか。
以前会った恭也さんと忍さんの子供にして超絶スペック少女。
ヴィヴィオと仲が良い、分野は違うが互いのスペックで引かれあったのか?
ハッハッハ、ヴィヴィオのスフィア回避とか付き合わないぞ。
しかしいかに高いスペックだろうが所詮はガキ。
ヴィヴィオが頭うっつらうっつら、お寝むタイムだ。
なのはさんの部屋に行ってご就寝。
その頃になって恭也さん、美由希さん、士郎さん、雫ちゃんはランニングに出かけた。
幼女に深夜ランニングはどうかと思います。
で、現在。
忍さん、桃子さん、なのはさん。
見事に女しかいない中に俺……
寝るか? 俺も。
「でー、なのはちゃんはー付き合ったんでしょーかー」
忍さん、酔ってるな?
「? 付き合って貰ったからケイスケ君ここにいるんでしょ?」
なのはさーん、多分違う意味だぞー。
撤退したいが気が付いたら左右を桃子さん、忍さんに固められている。
……寝るかイスで!!
目を瞑り、思考を落とし、意識を落とす!!
……おお、夢の世界の光を感じ……っ!?
「ケイスケ君? 眠いなら布団で」
「なのは……そんなストレートな誘い……なわけないわね」
「全然大丈夫よね? ケイスケ君」
あ、足が……骨折並に膨れてんだけど……
特に忍さん側。
「ケイスケ君の方はいないの? 恋人」
……思春期の男に何を聞くんだ桃子さんは……
「……いません、忙しいし」
痛い、自尊心に針を刺されるように痛い!!
六課みてーなとこにいて……とか言われたら立ち直れない!!
「へえ」
な、なんだ? 今桃子さんと忍さんの視線が交わった瞬間凄まじい意思を感じた。
なにが凄まじいって恐ろしい程圧縮された情報量!!
それが交互に……
はて? 俺何を考えてるんだ? 思考なんか分かる訳ないだろ?
「ねえねえ、なのは、今付き合う人いないのよね?」
「ケイスケ君も別にいないんだよね?」
臨海公園ね、海が汚いってよく言うらしいけど、別にゴミなんか浮いて無いな。
恭也さんに服を借りたが地味に袖とかが余る。
あの人見た目は細いが中身がかなりマッシブだった。
俺も筋肉ある方のはずなのに……
つーか、おせー。
待つのは野郎のお約束だが何でこんなかかるんだよ。
先に出て四十分は経過したぞ、他人の服じゃなかったらとっくに横になって寝る。
「えー、おまちどうさま……」
「おそ……なのはさん? なしてそげな服……?」
そしてこれは何弁というの脳内会議の皆さん。
桃子さん忍さん連合の攻撃。
「じゃあ明日試しに付き合ってみたら?」
何で乗ってまったのかなー。
なんかなのはさんが軽く別にいっかあって言ったのが、変なとこにカチンと来たんだよ。
で、恭也さんに秘密で忍さんから貸し出された服を来て、海浜公園で待てと。
大体こんな流れだったはず。
「うう、こ、こういうの流行ってるのかな……」
えっと、キャミソールってやつか?
胸元が見えるやつ……下もカットジーンズだし。
前屈みで隠そうとするから谷間が……
暑い陽気のせいか、肌に浮かんだ汗まで見える。
グビっと唾を飲んでしまう、くそ、これは罠だ!!
落ち着け、落ち着いて感想を、ふつーの感想を
「大丈夫、最後の時のフェイトさんより大分まし!!」
ホッペがヒリヒリするいいビンタ貰いました。
プリプリ怒るなのはさんをなだめつつ歩きで移動を始める。
「いやさ、仕方が無いと思ってください、本当」
「フーン、そうだよね、ケイスケ君はちょっとエッチなお年頃だもんねー!!」
いやさ、しょうがないじゃん、共通の知り合いの女性比率が高過ぎるんだよ。
発言そのものがNGなのは分かってるんだが。
というかフェイトさんの真ソニックがアレなのは認めるのね?
「むー、どうせフェイトちゃんに比べて貧相ですよー」
「いや、充分だと思いますよスタイル」
ああ、間違いない、間違いないから
「だから……その」
「だから?」
「前歩くのちょっと自重してもらえると……つい目が」
「目?」
……言いたくないんだが……
「そのジーンズ、ヒップラインが……」
ああ、地雷だ、分かっているんだ、分かっているが黙って観賞するともっと酷いんだ。
だからヒールで足を踏まれたのは我慢しよう。
「……複雑……」
出だし最悪だが帰るまで数時間、その間なんもしないのは退屈極まる。
でも
「何でそんな格好なんだよ、思いっきり強調してるじゃないか……」
「忍さんに進められたんだよ、この位は普通って」
だからってまんま着るなよ、だけど似合ってはいると思う。
何だかんだとなのはさんスタイルいいし。
出るとこ出て引っ込んでいる、これを普段意識しないのは純粋にそういったアピールと無縁な人だからだろう。
そこは好感を正直持ってる、何より話しやすい。
ふと気が付くと、なのはさんが立ち止まっていた。
海岸に突出した桟橋、その桟橋をジッと眺めている。
横顔から何か、特別な感情を懐かしむような、そんな感じ。
「……ごめんね、懐かしくて」
「ん、いや別に」
何か文句がある訳じゃない。
ここはなのはさんの故郷だ、俺ならミッドに思い出の場所があるように、なのはさんならここにある。
「ここはね、フェイトちゃんと友達なった場所なんだ」
そういえば、ずっと前に見せさせられたな。
「あー、凄いよね、友達になりたいからって本気の全力全開で戦うんだから」
そ、それは……いわゆる殴り合って友になるシステムでは。
何ともコメントに困る思い出だ。
「他にも、アースラ、ミッドと繋がったのも、ここじゃないけどはやてちゃんと友達になったのもここから見える」
なのはさんに取っては大切な、本当に大切場所なんだろう。
「もう十一年前か……」
時間、絶対に乗り越えられない時間。
少し分かった、その十一年が造ったのが六課で
所詮俺みたいな会って一年には立ち入れない領域であると。
「ま、俺とスバル達も一緒か……」
「え? どうしたの?」
思い出ってのは人の中にしかないからな、隊長達の思い出、俺達の思い出。
そいつは絶対に乗り越えられない、乗り越えられないけど。
「いや、あれだよ、そういう場所巡りってダメ? 今日」
昔は昔、今じゃない、昔は変わらない、でも今はこれからだから。
だから、今のなのはさんと話していく。
ただ、それだけの話。
「ここ、ここが初めて魔法使ったんだよ」
「初使用がこんな住宅街……何人殺った!?」
「そんな事してない!!……逃げたけど……」
初めての魔法使用の場所。
「私達の通った小学校、バスで通ったんだよ」
「取りあえずなのはさんのジャケットの根源が分かった」
未だ小学校制服カスタムとは……
「実にランスター、スバルに教えたい」
「え? 何で」
「お前らのジャケットは小学校制服カスタムだと!!」
「原型ほぼ無いよ!?」
なのはさん達の通った学校。
「この公園でユーノ君を拾って、それが魔法の切っ掛けかな」
「……拾った?」
「フェレットだったの」
……ああ!!
「変身ね、変身魔法ね? うん」
びびったー、実は動物だったかと思ったよ。
魔法と初めて出会った公園。
「ここでよく魔法の練習したんだ……」
高台の街が一望できる丘、空の蒼と海の蒼がとても綺麗だ……
「なー、なのはさん」
ふっと口から出た言葉。
「何でミッドに来たんだ?」
「ほえ?」
俺が地球贔屓なのを除いてもここはいい世界だと思う。
別に治安が悪いとは思えない。
だけど、なのはさんはミッドに来た。
フェイトさんはミッド人、はやてさんは家族に守護騎士がいる。
じゃあなのはさんは?
別に深い意味は無い単純に疑問を持っただけなんだが。
「あれ? 話した事無かったっけ? 実は…「あー、なのは!!」」
む?
後ろからかかった声は聞き覚えがある。
勝気な印象と強い意思を他人に抱かせる。
地球のなのはさん達の友人、アリサ・バニングスさん。
手の犬を繋いだリードから見るに散歩中の偶然と見れる。
「何よ、来たんだったら連絡寄越しなさいよ」
「にゃはは、ごめーん、急に決まったから」
彼女に対するなのはさんの態度はフェイトさん達に近い。
俺に対して若干固いのは俺が年下だからだろう。
ようするに、しっかりしようとする分声質が少し違う。
まー容赦無くツッコミ入れてるが。
ふっと俺に目をやったアリサさん。
俺となのはさんを交互に見る、金色のボブカットが首に釣られて動いている。
無言で首を頷くとなのはさんの肩を抱いた。
「ごめんなのは!! お邪魔した!!」
スゲーぜ、流石だぜなのはさん!!
俺でなくても読めるアリサさんのセリフにクエスチョンマークを浮かべているぜ!!
「あ、あ、アンタ……違うの? 違ったの!?」
「へ? だから何が?」
あ、アリサさんがうちひしがれた、それでもリードは手放さない、飼い主の鏡だね。
「そ、そんな……今までの鈍さは年下趣味に覚醒していたからかと思ったのに……」
「いや、その疑惑はどっちかっつーとフェイトさんだろ」
この人は天然だよ天然、ほらまだキョトーンとしてる。
ジロリと釣目気味な瞳が俺を捕らえた、いや、なんか怖い。
「アンタは?」
「はい?」
「アンタはどうなの!? こう、なんか無いの!?」
な、何かと言われましても……
なのはさんにヘルプ目線をやるが「さあ?」と返された。
「無いの!! 無いの? こんなスタイルで見せてんのよ、誘ってんのよ、声かけなさいよな格好みて!!」
「落ち着いて、なんかヤバい、ヤバいっす発言!!」
なにその反応しなかったら人じゃねぇ的発言!?
いや俺もそう思うが。
「いいのか、そんなダチ売るような発言!!」
「ほっといたら売れ残るから友達として叩き売るのよ!!」
むう、なんというスパルタ友情!!
拙者感動したでござる。
「あのーアリサちゃん、私だって人並な結婚願望くらいあるよ」
「「嘘だ!!」」
ペルソナ、嘘だをマスターできるくらいの発言だった。
気が付いたらいい時間になって、アリサさんと別れてヴィヴィオを迎えに行って帰る時間だ。
山を降りてる最中、ふっと気になった。
アリサさんが来る前に話してた事。
「ねえ、なのはさん、ミッドに来た理由」
聞きたい。と告げる。
「あーでも日が……うん、いっか」
日? 今太陽は落ちるところだ、それが理由と関係あるのか?
「ケイスケ君、手出して」
言われた通りに出した手になのはさんの手が重なる、少しタコがある以外やたらとスベスベしてるんですが。
「レイジングハート、結界お願い」
? っと疑問に思った瞬間、引かれた手に、空に連れていかれた。
「ちょ、ちょっとー!!」
「危ないから暴れないで」
んな事言っても俺は魔法の基礎の基礎、浮遊落下も出来ないんだって!!
うお、地面が、地面が遠い!?
というか、肩が痛い!! 全体重が肩にかかってー!!
「下見ないで前を見て」
んな余裕……
紅い、紅い世界だ。
夕日が海と街を染めている。
地面に足を付けていない浮遊感が不思議で
世界が広がったような錯覚を感じる。
空と海が左右見渡す限り広がって、そんな中心が自分で
「これにやられちゃったんだ」
「ああ、なんか判る」
言葉に出来ない感覚だ。
そう、知らない土地や場所にバイクで行った時の快感に近い。
眩しそうに光景を見つめるなのはさんは、何処か遠くを見ている。
綺麗だな……
(アンタはどうなの? 何か無いの!?)
ふいにアリサさんの言葉が頭を過ぎった。
……うん、好きかもしんない、女の子として……
「じゃ失礼しまーす」
ミッドに帰ってなのはさんのマンションまで送っていく。
あの後は特に何も無い。
高町の家で服を返して着替えて、ヴィヴィオを連れてハラオウンの家からミッドに帰っただけだ。
そうかもと思ったぐらいで態度は変わらない。
単にそういう対象に見るようになったくらいだし。
明日から普段の生活に……
なーんて事にはしないがな!!
今できる事を明日とかに回したら絶対にその明日はこない。
ヴィヴィオが寝てるだろう時間まで待って再度訪問。
ふつーに鍵持ってるし、堂々と正面から行く。
部屋の前に立つと流石にちょっと緊張してきた……
スーハー、うん、行くか!!
あーあーそんなんだったわ。
リビングでポケーッとしてたなのはさんに
言いたい事がある!! ってやったんだったか。
まあ、正確に伝えるのが大変苦労しましたが……
というか、物理的行動に出ましたが……
まあいいか、成功したし。
その、アレだし、うん。
よし寝る!!
ベッドの冷たさが寂しいとか無いぞ、全然無いぞ。
誰に言い訳してんだ俺は!!
とにかく寝る!! おやすみ!!
zzzzz
後書き
これを書こうと思ったのは単純です。
どういう経緯でこの二人が!?という意見を前から貰っていたことです。
この二人はこんな感じで付き合いはじめました、ご満足いただけましたでしょうか?
拍手については教会編のように次回のHOME_REHOMEにてまとめて返信させていただきます。
追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、