……目が覚めて一番に入るもの。

胸元にある金糸。

そこから響く定期的な寝息。

そして寝床の隣にある木製のベッド……

今さらだが、こいつが夢かなんかで、目が覚めたらミッドのオンボロアパートでって今でも考える。

フェイト・T・ハラオウン。

元機動六課フォワード部隊ライトニング隊長、そして執務官。

で、まあ、嫁さんというか、俺が婿というか……

まあそういう関係。







                   ケイスケの機動六課の日々  IFEND フェイト編2












フェイト視点

……むー、朝?

朝一番に感じたのは背中と頭を抱いてくれる手の平。

この数年でスッカリ馴染んだ感触だった。

ケイスケを起こさないようにゆっくりと身体を回して視界に入るベビーベッド。

朝一番から自分が世界で一番幸せのような気になる。

この幸せをみんなに分けたいような独り占めしたいような。










先ずは起きよう。

朝ご飯くらいは私が作って、それでケイスケを起こして、娘に、アリシアにご飯をあげて……

そうして、私の二度目の一番幸せな日々が始まるんだ。

「おはよう母さん、義姉さん」

「おはよう、フェイト」

「や、新婚さんなんだから旦那の胸にもっと甘えてくればいいのに」

も、もうエイミィは!!

何だか既婚同士になってからは、やたらとからかわれる気がする。
















そうケイスケとは、ケイスケが18になった年に直ぐに籍をいれた。

我ながら……関係にけじめをつけるでも、子供が出来たからでもなく、

子供を作るから、結婚するなんて理由でするなんて変わってる。

ああ、でもする前とか出来た直後の事は忘れたい。

プロジェクトFを母体にした始めての子供。

機能としてはある事は分かっていても実働のデータが無い以上、不確定要素は無くならない。

出来るまで不安になったり、妊娠中色々不安定になったりで、

うん、よくケイスケは一緒にいてくれたと思う。

実家にハラオウンの家に行こうと言い出したのはケイスケだった。














ケイスケのご両親は……いない。

ある意味、ドゥーエやナカジマ三佐がその代わりみたいなものだけど……

ドゥーエのところ、ナカジマ三佐のところじゃ私が安心出来ないだろうということ。

何より義姉さんや母さん、桃子さんと母親経験者が多いということで地球に来た。

後々だけど正しかったと思う。

もう当時は何を考えていたのか分からない。

とにかく味覚は変わるしちょっとしたことでイライラするし直ぐに不安になるしで……

うう、今更ながら当時の記憶を封印したい……














まあ、ケイスケ自身も恭也さんやクロノに色々相談してたらしいけど。

あんなに仲が悪かったのに私と結婚すると伝えてから、急激に恭也さんとケイスケは仲良くなった。

たまに三人でご飯食べたりしてるらしいし。

……でもお酒の匂いをさせてクロノと一緒に恭也さんに送ってきてもらうのはどうにかして欲しい。






























まあ、それはともかく。

「じゃあ私お味噌汁作るね」

エイミィ達から場所を借りて。

私はその……お、奥さんだから、ご飯は作ってあげなくちゃ。

うん!! 頑張る!!

























ケイスケ視点

ふっと胸元が寒くなって目が覚めた。

フェイトは……キッチンか。

「オッス、起きたか」

ベビーベッドに寄り掛かって娘を見つめる犬耳幼女。

アルフさんだった。














「おはよう、アリシアは?」

「まだ寝てるぞ、ほれ」

アリシア、フェイトの姉の名前を継いだ俺の娘。

ヴィヴィオは自分の妹と主張して学校明けに様子をよく見に来る。

ベッドに広がる「白」の髪。

母体内にいた時から、いや、妊娠前から心配された問題は免疫が弱いという形で現われた。

おかげ様で出産直後以降この娘を抱くのは、三か月も待たされたものだ。

今後の検査次第では分からないが、視力等の五感リンカーコア等には特に障害が見られないのがせめてもの救い。

まあ、後は……うん。






















おとーさん共通の悩みというか何と言うか……

嫁さんの時間が子供に取られてちょっと寂しいのが問題だ……

子沢山の恭也さん、いきなり二人で手間が倍のクロノ提督。

取りあえずさみしーので三人で遊んで奥さんズに冷たく見られてしまった。

士郎さんが、





















「俺は……事故のせいか、桃子が付きっきりでなぁ」

と抜かした瞬間三人掛かりでリンチしたのは俺達悪くない。













よくわかる。

結婚は幸せだが、同時に人生の墓場であると。

三人でグリフィスさん、ヴァイスさん、ロッサさんを仲間にしようと画策しても俺達悪くないと断言しよう。











ユーノ司書長? ありゃダメだ、後十年以上かかる。

アリシアの髪を撫でて、着替え、リビングに。

「おはよう、ケイスケ」

……エプロンした嫁さんが迎えてくれるって……いいなあ。





































「と、思うのですよ提督」

「それは三日帰れていない僕への当て付けかい?」

はっはっは、ズバリその通り!!

必死こいて取った執務官補佐資格。

しかしながらフェイトが復帰するまで意味の無いものと化した。
















いや、最初は違ったんだ。

フェイトの産休前は丁度執務官に合格したランスターをシャーリーさんとって、フェイトから話が来ていたんだ……

うん、甘かった。

俺達みんな甘かった。

身体的バランスが崩れた時期の女性のヒステリーに理屈は通用しない。

管理局の身内人事をこれ程有り難いと思った事はなかった。

一月でクロノ提督の船に異動した。

提督には悪いが、そこで定時出勤を行っている。

一緒に上がれる事は滅多に無い。

「く!! 何故だ!! 何故艦長職はここまで忙しい!!」

そりゃあーた、普通階級上げれば上げる程忙しいだろ常識で。

提督の場合は、単純に部下に任せる比率が少ないのも原因だが。












「エイミィー、カレルー、リエラー!!」

「ふ、三人同盟で一人だけ嫁さんより稼ぎがいい自分を呪え」

「いや、君達は自業自得じゃないか」

う、うるさいやい!!

Sランク魔導師やらどっか配線逝ってる天才科学者に勝てるか!!










恭也さんと俺の共通の悩み……

ぶっちゃけ俺達って稼ぎ的にいらなくね?











恭也さんの場合……

「……俺、ひょっとしなくてもボディーガードと言う名の紐では……」








俺の場合……

「ふ、どうやっったとしても!! 喧嘩の場所を選ぶ俺が切り札になれるとでも?」

これは男尊女卑ではない!!

そう、男としてのプライドの問題だ!!

「しかし現実はこんなはずじゃなかったの連続さ」

「著しく心を傷つけられたのでいつも通り、定時で帰ります」

提督の怨み節を背中で受けつつハラオウン家のポートに向う俺だった。















帰った俺に攻撃してくる影二つ。

「兄さん遊んで〜」

「遊べまんねん低収入〜」

カレル、リエラ誰がそんな単語教えた?

アリサさんだな、そーなんだな、あの後は卒業するだけ大学生。

素直に事業の勉強しろと言いたいが、既に幾つか会社経営してる(しかも大学で自分で人間集めてだ)ので何も言えん!!

今さらだが嫁さんの交友範囲のハイスペックに泣くしかない。

俺の交友範囲のハイスペックはハイスペックと一緒に何か捨てた(主に人間性)やつばっかりだから格差が……

「あ、ケイスケお帰り」

「あ、ああ、ただいまフェイト……」










こ、この呼捨てにいたるまで俺がどれだけ苦悩したか!!

かつ!! 美人の嫁さんしかも年上ゲットした事でいくつヤッカミ受けたか!!

……空しくなるから忘れよう。

「お、帰ってきたね色男」

「……義姉さん、いーかげんそれ勘弁して欲しいんだが……」

後自分の旦那と比較するの止めて。

帰ってくるの多くていいなーとか。

収入の差に俺は悲しくなるから……












































「ねぇ、次の連休休めそう?」

食後のまったりタイムにフェイトからかかる言葉。

彼女の方が艦の仕事には詳しい。

提督は今が普通の状況だが、事件が起これば俺だってシャレにならないくらい忙しい。

が、今は特に事件を受け持って無い訳で。

「ん〜平気」

「よかった、エリオ達からね、来ないかって」

エリオ達は現在自然保護区での駐在官をしついる。

キャロは、自然保護区での動物研究を始めたらしい。

エリオは……強くなる事にご執心。

でもちょっとキャロを見て焦り始めてる。

騎士志望は変わらないらしいが……何と言うか、そう、建設的な事をしたいらしい。















「……ほら、マリアージュの時は私達、手伝えなかったし、その……」

はあ、ようするに、最近会って無いから寂しいと一言言えば言いのに……

「アリシアは?」

「環境保護フィールド貼る!!」

「身体は?」

「先月の健康診断でも異常無しだよ!!」

んじゃあ。

「行こうか?」

「うん!!」











































フェイト視点

久し振りにケイスケとエリオ達のところに。

前に会ったのって……うわ、もう半年近い。

最近は日が過ぎるのが早い。

赤ん坊のお世話は……大変だ。

エイミィの時で自信があったけど、それも何かの勘違いだったように。

結局、私のしていたのはお手伝いで、本当に大変なのは本じゃ分からない。

エリオやキャロ、ヴィヴィオなんかは本当に大変な時期を飛ばしているから……

ふっとその時期を振り返ると……

やっぱりエイミィや母さんに凄く助けて貰って、そして




















「ふう、やっとついた」

胸元にアリシアを抱く、この人が側にいてくれた。

ケイスケだって大変だったはずなのに。

私の、つまらない嫉妬。

そんな事無いのに……苦しくて、大変で、つまらない事考えちゃって。

配置変えをさせちゃって……

「どうかした?」

ううん。

「楽しもうね、ケイスケ」






























何度か来た事あったけど……

「本気で何にもねぇよなぁ」

第61管理世界スプールス、その空港からエリオ達のいる自然保護区の最寄りの街に。

だけど、当然保護区に大きい街なんかある訳ない。

精々小さい現地商店があるくらいだ。












「ケイスケ、エリオ達のところまでの車本当に要らないの?」

「ああ、なんかここで待っててーって連絡がな」

どうする気なんだろう……

エリオ達のところには電気は発電機しかないから、

端末代わりにデバイスを使ってるはずだ。

魔力が続けば補充が効くデバイスが無かったら……

ひょっとしたらここでも反対したかもしれない。




















「で、アイツらどーせいと?」

「飛ぼうか? 私が」

確かこの世界に飛行に許可はいらなかったはず。

まあミッドみたいにヘリコプターやら何やらも無いし。

簡単な魔力トレーニングなら臨月中の気分転換も兼ねて欠かしてない。

「あー多分いいわ、来た」

来た? でも何かそれっぽいものは……

ケイスケの視線は……上?あ。

「フェイトさーん、ケイスケー」

私達を覆う大きな影。

翼を広げた、フリードと

「エリオ」







































ケイスケ視点

「いらっしゃい、けーさんフェイトさん、アリシアちゃんも」

「うん、よろしくねキャロ」

俺達を迎えに来たのはフリードに乗ったエリオ。

フリードタクシーだなあれは。

「エリオ、フリードご苦労様」

「うん!!」

キュー、ではなくグオと返事をされる。

ご飯時以外はこの世界ならフルサイズでいられるらしい。

目下この辺のボスを目指して特訓中らしいが……

ドラゴンの特訓ってなんだ?


















「あ、いらっしゃいお二人さん」

「どもっす」

タントさんとミラさん。

この保護区の元々の駐在員で、エリオ達の責任者。

しかし夫婦という話を聞かない以上特にそのへんに突込むのは止めた方がいいのだろう。

「お昼ですからご飯食べませんか? 私の作ったスープと」

「僕の焼いたパンです」

おおう、二人の手作りか……って事は……



















「フェイト〜フェイト〜?」

反応無し。やはりか……

「あの〜大丈夫なんですか?」

「大丈夫です、少々感激屋なだけですから」

慣れたよな、俺……
























キャロのスープは野菜の甘さと何かの出汁がよく出てる。

エリオのパンもバターのいい味が。

……バターか……

「エリオ、慣れるまで大変だったろ」

「あ、あはは、分かる?」

まあなあ、世話したもんアレされるからなあ。

出汁の正体はフェイトには秘密にしよう。

多分後で触るし、出汁の元に。













エリキャロのここでの生活は、一次産業に従事すると言っても過言ではないらしい。

密猟の摘発なんか滅多に無い、いやあったらあったで大変だが。

牧畜の世話、観察対象のチェック、日々の糧(ようするにご飯)の確保。

ようするに、お休みなんか無いのだ基本的に。

「じゃあエリオ君とキャロちゃんは二人と話すといいよ」

という話をふられれば何をするのか分かるよーなもんだ。


































「ケイスケーその干し草お願い」

「あいよー」

フォークで干し草の山を突き刺し、取れる草を運ぶ。

大きくはフリードにやってもらい、細くては人の手で。

エリオも龍騎士を名乗るだけあってフリードとの仲も良好だ。

「ねえ、ケイスケいいの? フェイトさん」

「ん? いいのいいの、何でもかんでも仕事させない方が悪いって」

お手伝いなんか俺のガラじゃないんだがな。

まあ、フェイトやらエリオ、キャロがハイ分かりましたと休む訳ねーし。

何より。

「フェイトの気分転換にはちょうどいいって」

育児休暇って言っても、育児が大変だから休暇がでるんだ。

休みというが休みじゃない

たまには別の事をしてくれるのは精神的にプラスのはず。

基本いい人だしな、フェイト。

「……何だか、ケイスケ少し変わった?」

「そか?」






























フェイト視点

「はい、そこで一旦切ってください」

はーい、とキャロに教わりながら何かの毛を糸にしていく。

ケイスケは外でエリオの手伝い。

アリシアは籠に入れて目の届くところに。

ああ、なんだかいいな、こんな風にケイスケを待つの。

まあケイスケに言ったら。









「あのなフェイト、エリオ達はこれとは別に局から金貰ってんの、これだけで生活できるか」

なんて夢の無い事言い出すんだろうな。

「ふふふ」

「どうかしました?」

ああ、思わず口に出ちゃった。

「ううん、こんな生活もいいなあって」

「フェイトさん、これもこれで大変なんですよ」

ピンと指を立てて講義する先生みたいなキャロ。

「クスクス」

「な、何で笑うんですか!!」

ごめんごめん、と謝って仕事に戻ると
















「うぎゃーうぎゃー」

あれ、アリシア、どうしたのかな。

「フェイトさんアリシアちゃんが!!」

はいはい、と慌てるキャロからアリシアを受け取る。

オムツかな? っと調べるけど……これはご飯だね。

「キャロ、落ち着いて、ただお腹が空いただけだよ」

服の上だけを脱いで胸を当てれば直ぐに飲んでくれる。

それをキャロは、何か感心するように眺めてるけど。







「これはこれで痛いんだよ? 胸が張っちゃってね」

あんまり飲まなかった時は自分で絞ったり、脇の下を冷やしたり。

本当に、慣れるまで大変だった。

それも後数ヶ月もしたら、歯が生えて離乳食になったら終わり。

本当に、すっごく忙しい変化がある。

子供って。

「……なんだかフェイトさん、綺麗になりました」

「綺麗って、それは無いよきっと」

もうお腹は太くなっちゃったし、胸はおっきくなったけど、

ダイエットなんか離乳が始まらないと出来ないし……

「いえ、何だか変わりました」

そうかな?

そうですよと力強く肯定するキャロだった。




























「ごっそうさまっしたー」

パンと両手をケイスケが叩く。

「はい、どうだった?」

「ん〜旨かったじゃ」

「だめ」

ちっと舌打ちをするケイスケ。

キャロと一緒に作った夕飯。

お土産に持って来た調味料を

キャロとあーでもないこーでもないと

相談しながら作った自信作なんだから。
















「んー、即興の割に味が好みだった」

「うん」

伊達に奥さんしてませんから。

ケイスケの好みに合わせちゃったけど、みんな都会の味覚に飢えてたから好評だった。

私の方も始めて扱う食材が多くてどれがいいかはよく分からなかったけど。

さて、ご飯食べてテレビ……は無いから













「さて、エリオ男同士のお話し合いといくか」

ふーん、いいよ。

「じゃあキャロ、女の子同士のお話し合いしよ」

ああ困らないでエリオ、キャロ別に喧嘩じゃないから。

























ケイスケ視点

エリオの部屋とやらに行き。

「ま、取りあえず学校関係がこんだけな」

ドサーっと持ち込んだパンフレットを

「……こ、こんなにどうするのさ」

どうするって。

「逆に俺がききてえよ、お前が何したいのかが」

うーんと悩み始める。

まあ、そんな事だろうとは思ったがよ。









「じゃあ、教会の騎士団に稽古にいく話でもつけるか?」

そっちもあるぞ〜、高ランクの騎士の得意技とかまとめたリスト。

「……ねえ、ケイスケ……」

「何だ? 腹割って話そうぜ」

「……僕、それでいいのかな……」


















……はあ、いやいやなんだろな? なんか嬉しいよーなさみしーような。

「僕強くなったと思うよ、六課の時より、でもさ……」

「キャロとルーテシアは研究、ヴィヴィオは司書、じゃあ僕は?か?」

うつむき、さみしーような目をはじめた。

「いや、エリオ、お前の悩みは正常だぜ」

思春期だなおい。

エリオの強くなりたい欲求は、まあ、フェイトへの恩返しの意味。

強くなりたいって野郎の本能の二つだったんだろう。

「……よく、分かんないんだ、何かをしないとって思うんだけど……」

でも何をしたら……か……

どうしたもんかなこれ。


























フェイト視点

キャロの部屋で見せてくれたのは、この世界の動植物についての観察レポート。

内容もかなり詳しいし、専門的な用語も使われてるし、正直半分くらいしか分からない。

それでも楽しそうにこうだった、ああだったって解説してくれるキャロを見ているだけで

「……フェイトさん?」

「うん、ちゃんと聞いてる、今は樹木からでる免疫酵素の動物への影響なんだよね」

キャロは、それを本当に楽しんでるんだと思う。

こうなると、研究機関の案内とか紹介を準備すればよかったかも。


















私達、なのは、はやてとは違った道。

寂しい気持ちもある。

けど、何より嬉しい気持ちが大きい。























「そういえばフェイトさん、最近エリオ君がおかしいんです」

……いや、正常です。

キャロ、なのはの鈍感は受け継がなくていいよ。

ああ、でも、指摘しても反応が手に取るように分かるんだよね。

はぁ、きっとエリオってこっちの相談私にはしてくれないんだろうな。

キャロは……無いだろうし。

そういえば私も結局リンディ母さんにはしてなかったな。

……アリシア、貴女は……大丈夫だよ、ね?

赤ん坊が返事をするはずも無く、夜の闇は深くなっていく。

























翌日、と言ってもまだ暗いけど。

キャロ達はこの時間には起きだしている。

私はキャロの、ケイスケはエリオの部屋で泊まった。

うん、ちょこっと隣りにいないのが寂しいなぁとか

朝いないのが寝床が冷たいなあとか、

ま、まさかね、こ、こんなその……二人で寝るわけにも……

アリシアにはフィールドをずっと張らないといけないし。

「フェイトさん何で頭押さえて……頭痛ですか? 薬草有りますよ?」

「何でもないよキャロ何でも」

取りあえず、こんな事考えちゃうのは全てケイスケが悪いんだ。

だから私が起こす時に寝顔を観察されても仕方ないんだ。

うん完璧な理由だね。





















エリオが起きたのに起き出さないケイスケを起こして……

「ねみー、さみー、暖めてー」

……落ち着こう、ケイスケも落ち着かせよう。





























ケイスケ視点

まだ暗いうちから動き出すのは辛い……

睡眠が至極と言い張る俺と違って早寝早起きな人ばっかりな人しかいないのが辛い。

くそう、フェイトめ。

二人の時は思いっ切り朝弱いくせに……

エリオとキャロ、フェイトと観察動物のチェックに向う事になった。

今はアリシアはフェイトの背中だ。

寝るのと泣くのが仕事の赤ん坊、フェイトのフィールド魔法と背中に包まれてお寝むである。

フェイトに背負われたいとは思わないが、羨ましい……























樹海とかジャングルとか言うべきところを迷わないで切り開きながら歩いていく。

先頭はエリオだ。

無言なのは、不用意に動物を刺激しないため。

六課の時より大きく、肉も付いてきた背中は、逞しさすら感じる。

「エリオ、変わったよね」

フェイトも同意見らしい。

「ああ、成長期なんだな……」

俺もだったが、この時期はガンガン変わる。

いや、俺やフェイトだってまだまだ青年期なんだが、少年期と青年期の過渡期。

コイツの時期の変化は、凄いから。

エリオは焦ってるが、シッカリ変わっている。

まあこういうのは大体自覚なんか無いんだろうがな。



















? エリオが止まった。

何だ?足元をジッと、四つん這いになってまで食い入るように。

「靴のサイズは26、歩幅は60センチ、明らかなジャングルブーツ……」

足跡!? 足跡から分析してんのかよ!!

ダッと飛び出すように走り出す、身体を縮こませて樹々の間を縫うように。

「エリオ!?」

「フェイトさん達はキャロに!!」

キャロ!?

「多分……密猟だと思います」

マジか!? 「たまに」って言ったじゃねえか!!

「キャロ私も!!」

「「だめだ(です)!!」」

思わずキャロと被るようにフェイトをたしなめる。

「フェイトさんエリオ君がどう進むか分かるんですか!?」

「アリシアどーすんだよアリシア!!」

でも……っと続かない。





















気持ちは分かるがキャロにアリシア任す気かよ、俺は魔法は相変わらずだし。

「私はフリードと空からエリオ君を追います、先行を追う形で遅れますけど」

それに付いて行くのが賢いやり方か……

「ケイスケ……」

……あーもう分かったよちくしょう!!

困ったような顔と声で頼まれて嫌と言えない俺がなさけねー!!

「すまんキャロ俺が追っかける!!」

「って、けーさん!?」








































エリオの進んだ方向は大体見れば分かる。

一歩一歩で踏み込みが強い、その分形跡が顕著だ。

これなら不馴れな俺でも……




















走り出して十分くらい。

エリオの奴、早いのは分かってたが……

植生が濃いって事は障害物が多いって事だ。

思いっ切り直線を走るのとはわけが違う。

そこをピョンピョン跳ねるように進んでいくエリオの痕跡。

これは……素直にキャロと一緒の方が早かったかもしれないと、噴出す汗を拭いながら考える。

方向に間違いは無いはずだ。

そうは思っても背中すら見えないと不安になってくる。

大体俺はきちんと真直ぐ走ってるのか?

まだか、まだかと思いながら走り続けると、急に前が開けて。





























グイッと茂みから足を引かれた。

「ケイスケ、何やってるの」

エリオだ。

隠れてたのか、しまった、迂闊、気がつかなかった。

開けた場所は川、いや河と言うべきか。

かなり広く開けている。

って事は、そのくらい雨や何かの時は増水するのか……

額から流れる汗を拭うが、エリオの方は殆ど汗をかいていない。

「見て、ケイスケ」

エリオが控え目に指を指す方向には、




















「船かよ」

河川用だろう。

えらく吃水が浅い船の上には檻が複数見える。

木製桟橋にタラップが掛かって、そこから動物を入れて檻を運搬してる。

多分あれで街まで出るつもりだろう。

動物はカサがはるからああやって輸送をするのが楽だ。














「……よかった、みんな生け捕りだ」

牙とか毛皮だと、その場で……になるのだろうか?

多分そうなんだろう、肉や骨の分軽くなるから。

連中の装備は……

デバイス持ちとアサルトライフル持ちの混合編成。

デバイス持ちが高ランクだと流行のAMF使いの可能性もあるが……

それだと厄介だな……
















「アイツら、またか!!」

「知ってるのか?」

返事は何回か捕まえたグループらしい。

判断基準は装備だそうだ。

密猟のグループ。

中々上層部が捕まらないらしい。

とはいえ、この手の犯罪グループは難しいんだろう。

レア素材の装飾品を購入できるのは基本富豪層、またはそれにあこがれる中間層。

動物愛護だ、環境保護だと抜かしながらそういうのを身に着けるのがステータス。

根本的に、その連中の意識が変わらない限り意味が無い。

まあ、実行連中を一人一人再起不能以上にすればいずれいなくなるかもしれんが……

局員だからな、コイツ……






















「さて、どうすんだエリオ」

いくらなんでも行きなり突撃なんて。

「直ぐに捕まえる!!」

ってオイ!?

止める間も無く突込んで行くエリオ。

だあああ、変なとこスバルに似やがってー!!

交戦経験からか、はたまた俺達がいるせいか。

クソったれ!! 連中の船はかなり見通しがいい。

この条件で考えられる可能性、俺が出来るであろう事、自分達の戦力。

結論が大変遺憾だが、それを実行するべく走り出した。





































エリオ視点

懲りない、本当に懲りない。

大体僕がきてからのペースだと三週間に一度くらいだろうか。

だけどよりによって今日なんて……

フェイトさんが、ケイスケがせっかく遊びに来てくれたのに……

直ぐに終わらせる。
















何人か気がついたけど……もう遅い!!

一気に相手の船に乗り込み、

「時空管理局だ、保護動物の密猟で、逮捕する!!」

大声で最初に威嚇する、同時に僕に銃口を反射で向けた人。

それを見定めてストラーダで銃をはたき落とす。

「があ!!」

手を押さえて蹲るのを確認、もう一度。

「及び、殺傷武器の使用未遂だおとなしくしろ!!」

なるだけ怒りを感じさせるように声を荒げる。

こうやって、最初に場を支配するのが集団戦闘のコツだったはず。






















この中で一番トップらしき人物。

帽子を被った髭の男。

落ち着きから、この集団のリーダーだと思う。

「武器を捨てて、こちらの指示に」

「元気だねぇ坊や」

降参は無いと判断できる、一気に叩きこんで。

一撃で終わらせる



















「今だぁ!!」

!? 考えるより早く身体が動く。

男が手をあげた瞬間、全身が重くなり、僕がいたところには風切り音が、

この感覚、覚えがある、AMF!!

「よく避けたねぇ、僕」

嫌らしい笑みを浮かべる男の脇にはデバイスを持った別の男がいる。

この人、高ランクの結界魔導師!!

「君達の噂は知っていたよ、元機動六課のフォワード員がこのあたりの保護官だとね」

さっきの狙撃、多分実体弾だった。

結界魔導師のフィールドは船全体を覆っている。

ガジェットみたいな魔導師の代わりじゃない。

それに特化した専門技能者だ。


















「だけど不用意に突撃は良くないね、相方はどうしたのかね?」

調子に乗ってる、スキだらけだ。

でも、さっきの狙撃。

AMFでバリアが張れない環境で実体弾は……

「……聞いているのかね君」

今顔を出したら確実に殺られる。

ひょっとしたら殺す気は無いのかもしれないけど、

フリードやヴォルテールじゃ船ごとやっちゃう。

キャロの遠距離魔法はそれほど強くない。


















これは……僕たちへの……罠?

「さて、忙しいので、大人しくしてもらうよ」

あの手が合図なのは分かる、さっきと同じ、今度は、不味い!!

身体能力がフルに出せればいくらでも何とかなる、何度も訓練したこんなので!!

パンと渇いた音が……

振り下ろす前に響いた。

え?

「何だ、何をしている!!」

? 状況が変わった!!

銃音は響き続ける、でも、それは茂みと茂みでの撃ち合い……まさか

































ケイスケ視点

うお!! バチンバチンと盾にしてる樹から響く音と横を抜けて行く弾丸の風切り音。

弾幕はゲームだけで十分だぞ。

地面とキスしてるやつから奪った狙撃銃で樹の影から顔も出さずに牽制する。

狙撃の可能性、こいつが俺の予想だったが見事に当った。

激しく嬉しくないが。



















まず船を起点にして狙撃に適したポイントに当りをつけた。

普通チームだと狙撃主以外に観測要員がいるもんだが、

魔法全盛のこのご時世、実体弾使い自体がドレアな中、魔法抜きのスナイパーのプロなんか滅多にいない。

太陽を見て、樹々の発育、線上の障害物、伏せ撃ち可能な高さから三点を予想。

狙撃手だけなのを見つけた時は一発ツモかと思った時期が俺にもありました。

三か所配置するなら一か所に観測員くらい置けよな!!



















一名シバいて武器を奪ったはいいが、フル、セミオートが無いタイプだからこっちから弾膜が張れん。

頭出したら撃たれるし、移動出来ないし。

このまま狙撃角度を確保されたらデッドエンド。

降伏勧告くらいしてくれや密猟者。

「まだるっこしい!! 誘導魔法を使え!!」











!? なんだとお!!

光球が迫るのが影で分かる、これをくらったら……

「密猟者バリアーー!!」

「うんぎゃあああああ!!」

ふう、危ないところだったぜ……



























おお、きちんと非殺傷だったな、アングラ住人の割に常識的なやつ。

『……き、君はそれでも人間か!!』

む、無線機か?

色々ヤバくなってる盾からマイクをぶんどる。

「やかーしい!! 俺の命優先、緊急避難だ!!」

『それでいいのかね君は!! 局員だろう!?』

「残念でしたー、俺は武装隊免許ありませーん、自分の身を守る事になんも問題ありませーん」
















……そろそろかな……

「あーあー、つかテメエラ、さっさと全面無条件降伏したほうがいいぞオイ」

『……何を言っているのかね、むしろそれは君の方だろう』

「あー、だってテメエラの予定では俺なんかいねぇんだろ、準備した手が狂ってんだ」

そうだ、始めっからエリオ達を排除する気じゃなきゃ狙撃手なんか置かない。

「分かるか? テメエラの運は下り坂だ、こんな時は大人しくベッドで寝るのを推奨するぜ」









……おし、ナイスタイミング。

『……ほう、どうやら君には口の聞き方というものを教育する必要があるようだ』

「じゃあ俺からも教育してやるぜ」












目測でタイミングを測る、三……

「テメエラに」
















「年貢の」


















「納め時ってやつをな!!」

「トライデント、スマッシャー!!」





































エリオ視点

目の前が真っ白に染まる、さっき響いたトリガーワード。

フェイトさんの砲撃魔法!?

船全体を覆うAMF内部には届いていないけど完全に目が……

タラップを駆けるのと船に重いものが落ちるような音と、間髪を入れずに響く打撃音と骨折り音。

「と、こう言う訳よ」

船に乗り込んできたケイスケ。

フェイトさんの砲撃のタイミングに完全に合わせて来たんだ。

AMF内部の、銃火器装備者を狙って。























「ああああ」

「ふご、ふご」

容赦が無い、本当に容赦がない。

蹲った密猟者達。

腕や足が曲がってるのはまだいい。

鼻を、股間を押さえてる手から漏れる血……

「……さて、まだやる?」

まだ数人しか倒れてないけど……

空に舞うフリードと、リミッター無しのフェイトさん、そして拳を紅く染めるケイスケ……

これが完全に、勝負を決めていた。















































管轄の治安部隊を呼ぶ間、僕は……

情けなくて仕方が無い。

フェイトさんが、ケイスケが……

いたのに、いたのに……

僕は……

引き渡しと事情聴取、ケイスケのが少しやり過ぎだと担当官とフェイトさんに言われている。
























そこから少し離れて……

……強くなったはずなのに……

マリアージュ事件でだって、何体も相手に出来た。

あいつらとマリアージュ達、あいつらの方が数段劣る。

なのに、なのに……

「だーやっと開放されたー」

ケイスケ……

僕は……僕は……























「悔しいか?」

「え……」

もしも鏡があれば、凄く間の抜けた顔が写っただろう。

よっこいしょっと、僕の隣りに腰を下ろす。

そのまま無言の時間が過ぎる。

ケイスケの何時ものやり方。

何時でも、何時でも相手から喋らせる。

吐き出したいんだって分かってるみたいに。

今はそれが……腹立たしく感じる。
















分かってるって態度が、僕を分かってなんか!!

「エリオよー、お前勘違いしただろ」

「へ!?」

機先を制するように響く気の抜けた声。

思わず口に出たのがこんな。

「誰だって負ける時は負けるぜー、ほら大抵負けるじゃん俺」

なに、何を

「さっきはどうなのさ!!」

声が荒くなる。

さっき、助けに入った人がそうなら、僕は!!

















「ある意味俺の負けなんだがな……」

「だけど!!」

「フェイトを戦わせちまった、悔しい」

……

でも、

「フェイトさんの方が強いんだから……」

悔しいけど、分かり切った事じゃないか……

「エリオよ、お前の強いって基準って何よ?」

強さの基準?

ランク……じゃない。

それは六課の時に否定された。

「じゃあ……えっと……」

「ゲームじゃねぇんだ、ステなんかねぇよ、パッと分からないのが普通だ」

マゾキャラで勝つのも楽しいがなとケイスケ。































あ、えっと、でも……

「じゃあ、何が」

「強さの証明?」

うん、と素直に頷ける。

ケイスケの口元がニヤって

「勝つ、それ以外に証明はねぇ、強いから勝つんじゃねえ、勝ったから強いって証明されんだよ」

え……うん、そうだよね、チャンピオンとかだって、勝ったからチャンピオンなんだし。

「でもな、戦い続けるやつは何時か必ず負ける、休まない弦は切れる、歳をとれば衰える、それも分かり切った事だ……」

















あ……う……

分かるけど……分かるけど……

「じゃあ訓練は……強くなるためじゃ……ない?」

「まあ、そのへんは言葉のあやだが、より正確には勝つためにやるものだな」

でも、うん、じゃあ僕は弱くなったの?

分からない、何が正しいの?

勝たないと強くない、強くないから負けない。

でも勝ち続けるのは無理で……
















「じゃあ、エリオ、俺って強くなる意味ってあると思うか?」

ピョンと腰をあげて正拳、それは……ちゃんとしてる、してるけど。

「全然遅いし、弱い、だろ?」

「……うん」

遅かった、僕達と比べて。

僕の全力ならさっきの倍は早い。

「でもな、俺は多分こんな事がまた闘う、そして勝つぜ」

「それは……無茶だよ……」

弱いんだ、ケイスケは、それは間違いない、間違いないのに。

「俺は、守られる、守ってもらうのを受けるだけじゃ我慢出来ねぇだからよ」

それは……僕が、キャロが……フェイトさんに……












「本当に大事なら、絶対無くしたくないなら、自分の手で守りたい、弱くてもな、そんなもんだろ」

僕が……僕が……

「キャロだってな」

「え?」

キャロが?

「フェイトだってそう思ってる、それだけじゃねぇ、スバルもランスターも、なのはさんも、みんながそう思うだろ」

あ、う、う。

じゃあ、じゃあ、じゃあ

「誰かが、なんて事はねぇ、誰もがだ、特別な理由なんかじゃねえよ、だから……」

「だから……」


















……ケイスケ?

「やっぱ止めた」

へえ!?

「や、止めるってなんで!?」

「こいつは俺の理由だ、色んなもんを、俺が見て感じたからの理由だ、お前の理由じゃねぇ」

??!!

「何それ? 訳が分からないよ僕はどうすればいいのさ!!」

「精々悩め、自分でああ、これだ!! ってのが思い付くまで」

ちょ、何行こうとしてるの?ケイスケーケイスケー
































ケイスケ視点

やれやれ……

「お疲れ様」

フェイトか……

背中には、さっきの砲撃からずっとアリシアを背負ってる。

うーん、やっぱ荒ごとだと頼っちまうな、何も出来ない方が辛いと言ってくれるんだが、

それでも、な。







「エリオどうだったの? 大丈夫? 苛めて無い?」

「おいおい、何故そうなる」

「だってケイスケ意地悪だもん」

し、信頼無いのか俺?

「とはいえ、口じゃあどうにもならんよアレは」

アリシアをフェイトから受け取るが、まるで泣かない。

女の子なのに肝が座ってるのか鈍いのか?
















「ありゃあ、一過性のビョーキだ、変に世界だなんだ考えちまうな」

「……えっと……どういう……」

「世の中の事を知らないのに答えをだそうとしてんだよ、数学の中間式を公式無しで解いてんようなもんだ」

そのうち、その中間式が埋まった時に、エリオの悩みも終わるだろ。

まあ、その中間式ってのは色々勉強しないと使えないもんでして。





















「エリオの問題って事?」

フェイトもこの辺で暴走しなくなったのはスッゲー嬉しいなー。

六課の時は……あー、うん、アレもいい思い出だよね? うん。

「ねえ、何か変な事考えなかった?」

「そんな事ないよ? おーアリシアーよしよーし」

頬を抓る手は痛いが、このまま誤魔化させていただいた。


























フェイト視点

大変名残惜しいけと、ケイスケの仕事もあるから帰る時間だ。

「それじゃあお世話になりました、エリオとキャロ、よろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ、お世話になってますし」

ミラさん達に話して、

お二人からすると自然保護隊に来てくれる実戦経験有りの魔導師は滅多にいないから助かってるそうだ。

ならいいんだけど……

例え過保護と言われても昨日みたいな事があると心配。













「フェイトさん、空港まで送ります」

そういってフリードに鞍を用意してくれていたキャロ。

エリオは……まだちょっと難しそうな顔。

本当に大丈夫なのかな? ケイスケのことを信頼してないわけじゃない。

でも、自分で何にもしないとどうしても不安になる。

アリシアをあやしながら器用にフリードにまたがるケイスケは、特にもう気にしてない感じだ。













手綱をエリオが握り、悠然と空に舞うフリード。

下で手を大きく振るお二人に答え、空港に向けて飛び立つ。

空を飛べる私だけど、こういうゆっくりと飛ぶってことは中々無い。

だからだろうか、周りをゆっくり見渡せる余裕がある分、綺麗な風景を楽しむ余裕がある。

私の前にケイスケ、その前にキャロ。

明らかに定員オーバーだけど、フリードはそれくらいなんとも無いように飛んでくれる。

こうしてみると、浮島という、魔法使いな私が言うのもなんだが、ファンタジーな光景は綺麗だ。


















なんだかエリオをケイスケの肩から覗くと、やっぱり何かもやもやしてる感じ。

なんとかしてあげたい気持ちになる。

……つんつんとケイスケを叩いてみる。

「ん?」

「ねえ、エリオ、なんとか元気に出来ないかな?」

「いや、言っただろ? 自分で」

「でも……」

やっぱり心配になるよ……

ねえ、ダメかな?

「……はあ、結局甘いんだよな、まあそこも気に入ってるけど」

ごめんね。














「おい、エリオ」

って、ちょっと!?

「何? ケイス、うわああ!!」

キャロの上を通り、振り返ったエリオの手の中に渡される、アリシア。

「ちょ、ちょっとケイスケ!!」

何考えてるの!!

あ、危ないでしょ!!

「いや、大丈夫だって、もしもがあったらフェイトがフォローしてくれるだろ?」

いや、そういう問題じゃないでしょ。

もう、そういうのは相談して……

「ケイスケ?」

「エリオ、それが、俺の理由だ」


















本当なら、すごく肌を冷やすような風の中。

まるで時間が止まったように静かな時間。

みんなの視線が、エリオの手の中のアリシアに集まっている。

「……ちっちゃい……でも重い……」

「指、手に当ててみな」

片手で綱を、片手でアリシアを。

「フリード、ゆっくり飛んで」

キャロの言葉に、さっき以上にゆれを感じないようにするフリードと

それで綱から完全に手を放したエリオ。

「あ……」

握ってる、アリシアが、エリオの指を。

小さい、本当に小さいその手では、エリオの指一本でいっぱいだ。

「……あったかい、小さい……」


















しばらく、そうしていると、エリオはケイスケにアリシアを返す。

「フェイトさん、キャロ、ケイスケ、しっかり捕まって!!」

エリオの顔が……明るい。

「ひゃ!! エリオ君!?」

「フリード、全速力!!」

急激に、フリードの速力が上がる、同時にかかる風からアリシアを守る魔法を強化する。

「うおっと、ひゅー!!」

少々バランスを崩しながらも、抱き方を変えて安定させるケイスケ。

エリオの顔は、少しだけしっかりと前を向いていた。















































ケイスケ視点

「ただいま〜」

「お疲れ様〜」

荷物を肩から下ろし、アリシアをベッドへ移す。

ポートを乗り継いでようやく帰ってきました、地球のハラオウン家。

? はて義理母さん達は?

「あ、メモがあるよ」

翠屋に遊びに行っているそうだ。

あーこりゃあアルフも含めて夜になるまで帰ってこねえな。

「ふー」

おもわずリビングのソファーに倒れこむ。

なんだか結局疲れたような……まあ遊びに行くってこんなもんか。

「はいこれ」

フェイトが差し出してくれたお茶を一杯飲むと、ふっと気が付く。









お、二人っきりじゃん。

「ケイスケ? きゃ」

フェイトの手を引いて、壁を背に当てさせて、そこに……







「……もう、お風呂にも入ってないのに……」

「だって、うん、一日なんも無かったしさ」

「……チャンスはあったのに気が付かなかっただけだよ……」

「ん? 何?」

「何でもないよ、うん、しょうがないんだから」

そう言って答えてくれるところも好きだなうん、本当。

長い睫毛が綺麗な目を隠し、若干赤く頬を染めて……もう少しもう少し















「おぎゃー、おぎゃー」

……ばっちりと開けた目と目、どちらからともなく苦笑して、可愛い娘のご機嫌を取ることに。

全く、まあこれもそうだな、うん。

夫婦らしいといえばそうだな。

「残念がらないの、後で、ね」

………………うん期待しよう。































エリオ視点

「え? 本?」

ケイスケ達を送り届け、一日の仕事が終わり。

そんな時間、僕はキャロの部屋を訪ねた。

こんな時間にっていうのにドキドキもしたけど、キャロはそんなことを気にも留めずに迎え入れてくれる。

「えっと、今ある中でそんなに難しくないのは……」

キャロにそういう遠慮をしてもらわないといけない。

そのくらい、今の僕とキャロには隔たりがあるという事。








「えっと、これとこれと、これくらいかな」

そうして渡されたのは、みんなハードカバーの分厚い本。

見るからに難しそうだけど……

まずは見よう、見て感じて、覚えていこう。

僕の知らないことが、本当に沢山あるのだから。

そしていつか、うん、いつか、誰にでも胸を張れる何かが見つかると思う。

だから、まずはその第一歩。

「ありがとう、キャロ、読んだら次のも貸してくれる?」

「? うん勿論だよ」

部屋に帰って重たい表紙を開けば、やっぱり難しそうなはじまりが目に映る。

それでも頑張ってみよう。

変わってみよう、僕も、少しずつ、少しずつ、すこしずつ。





















後書き

フェイトIF2楽しんでいただけたでしょうか。

始めは、STSサウンドステージベストのエリオ、キャロ、フェイトの絵を見て

あ、ケイスケいたらどうなるかな? で書き始めましたが。

フェイトの甘い部分が欲しいという話があったことで、フェイトIFの続きとして書きましたところ。

気が付いたら、エリオの思春期話に変質していきましたw

いやいいんです。STSのフェイトはある意味、エリオキャロとセットで話が出来ている子ですから。

そんなんで過去最長です、なげえよ、読みにくいよ等批判等も歓迎します。




拍手返信



>鬼丸さんへ 
>なんかもう、士朗さん親バカを通り越して、只の危ない人だな。

あ、まだやりすぎていましたか、申し訳ない。
一応指摘されていて、一部カットしていたのですが。

不快に思われましたら申し訳ありません。


>鬼丸さんへ
>今度是非、各IFENDのケイスケを集めた座談会などを書いてみませんか?

ふむ、俺の嫁自慢ですね分かりますw


>鬼丸さんへ ギンガのえちぃ話をハリーハリーハリー。

ソーリー、待たせた割りにフェイトですたい。


>鬼丸さんへ
>スバル、似合わないから結婚しちゃ駄目何て言うのはヒドイと思うぞ。
>むしろこの二人はお似合いだと思うし、ヴィヴィオも大喜びだ。

うん、しかし社会的地位は三隊長誰とくっ付いても釣り合わないのはお約束であります。
戦力(収入)差は圧倒的であります。



>鬼丸さんへ
>風の噂を聞いて読んでみました。 ( ゜д゜) ・・・(つд⊂)ゴシゴシ(;゜д゜)
>・・・(つд⊂)ゴシゴシゴシ    _, ._(;゜ Д゜) …!?
>そして一言、なのはが、なのはが女の子らしくなってて可愛い!?

どれだけ魔王が浸透してるんでしょうね? なのは。
もはやとらハの「なのちゃん」時代そのものがギャグになるくらい?


>鬼丸さんへ
>このあと更にヴィヴィオの子供とか来たら、もうトドメですね。

もう笑うしかないですね。
ロリコン扱いで生きていくことにwwwwww


>鬼丸さんへ
>ケイスケが六課前の海で、木でできた緑色のお面(マスク)を拾いました。
>みたいなはなしを観てみたい(笑)

マスクでひーろー!? 詳しくは見てなかったりします、申し訳ない。


>鬼丸さんへ
>なんか物凄くドラえもんの話を思い出した。
>あの未来の自分たちに勉強手伝わせるやつ。
>しかしキャロifか、デッカイキャロで良いから観てみたい気がするな

あ、あははは、いや、うん、どうなってるんでしょうね?
とりあえず一回限りのギャグだと思ってください。



>鬼丸さんへ
>いや〜今回みたいな番外編も面白いですね。
>特に並行世界とかでありとあらゆる女性と結ばれている所が特に
>…ってことはなのはENDやフェイトENDで出来た子供も来たということになるのか?
>さらに考えて見れば同じ人の子供でも男の子や女の子だったり年齢が違ってたり
>で重なってきている可能性も…。

勿論ありますよ!!
ありとあらゆる可能性、螺旋宇宙の並行世界並に。


>鬼丸さんへ
>そろそろフェイトENDのギャグバージョンをお願いします。

ギャグかどうかは分かりませんがお届けします。


>鬼丸さんへ 
>まさかキャロの子供が来るとはw なにげにキャロがあっさり納得して、現実的
>だったのが印象に残りましたねー。 
>なにげに積極的で、ケイスケと子供や将来の事で話し合う気満々でしたしw      
>今回の事でキャロが将来の事を考えて、
>今後ケイスケと色々話し合って異性として意識した結果、最後まで押し切るんですね?わかりますw   
>最後のルーちゃんの子供らしき人物……次回に出てきたりしませんか?w 
>今回キャロ(の子供)のSSだったので、ルーちゃんも期待しちゃいますぜ、こんちくせぅw

あっはっは、いや続きませんよ? これ以上続くと収集がつきませんよ?


>鬼丸さんへ きっと紫髪の娘の後には金髪の娘がくるに違いない。

ヴィヴィオか!? それともまさかカリ(ここから先はかすれていて読めない)


>鬼丸さんへ
>何故だろう、ケイスケがキャロに手を出したというよりキャロが発情してケイスケを襲ったと
>聞くとすんなり納得してしまう自分がいる…

どんだけ受け専なんですかケイスケ?


>鬼丸さんへ
>赤毛の娘と聞いてロストロギアで性転換したケイスケをエリオが襲ってできた子
>供だと思ってしまった。

ちょっと待ってええええええええ!?
え? 何? 不幸体質まで継承!? というかなんでそこで薔薇!?


>鬼丸さんへ
>赤毛の娘… まさかロストロギアで女体化したエリオとそれに手を出してしまった
>ケイスケの子供だなと予想したが、外れてしまった。
>エリオENDはこうなりそうで怖い…

ケイスケ「んなわけあるくあああああああああああ!!」

エリオ「大体なんでそうなるのさ!!」

はやて「ん? うーんここでもカプ闘争が……よし参戦せな!!」

「「まてい!!」」



>鬼丸さんへ
>そしてそれからも訪れる未来からのしきゃく達…
>最後に来たのはやはりヴィヴィオ(17歳ver.)だった。
>ケイスケの起動六課の日々 続最大のしきゃく 私はこうしてパパをゲットしまし
>た。 始まります?




>鬼丸さんへ
>いずれは、なのは似、シャマル似、シグナム似、ヴィータ似、ヴィヴィオ似、リイン似、
>アギト似、ディード・オットー似、リンディ似の娘達がくるんですね。
>わかります。

どんだけ〜、とりあえず前述のようにお話として切りがなくなるのですよ。


>鬼丸さんへ
>もし、ロストロギアか事故かでケイスケとなのはのが精神が入れ換わってしまったら‥‥


さて、どうしようかね、これは。

「どうしよう……ス、スバル達の教導はまだいいけど、近くに外回りが」

「そっちかい!! ……あ、やべ」

「へ?」

「トイレ行ってき、何?」

「ダメダメダメ!!それ私の、私の身体なんだよ!!」

「って、じゃあ漏らせと?」

「それはもっとダメーーーーーーーー!!」

「っていうか風呂とかどうすんだ?」

「あ、ああああああああ、目隠し、目隠しして!!」

「俺のは見られるままか」

「にゃにゃにゃにゃnyukubaune」



カオスだ……



>鬼丸さんへ
>もし、ケイスケの初体験の相手がU番の姐御という噂が六課と更正施設に流れた
>らどんな喜劇になりますかね?

うーん、普通に大騒ぎしてスバルに本当というまで(え? 
詰問されるだけな気が


>宛、鬼丸さん。 ププっと笑いましたw

光栄でございます。


>鬼丸さんへ
>フェイトが冷静だと!?出演作品を間違えたんだろう ユーノは……
>下手に出すより出さないほうがネタになるな って『何故うちの男性陣〜』のと
>ころ、
>ヴァイス・グリフィスにシグナム混ざってないですか?

ええ、ユーノについて気が付いたんです、彼は……影が薄くなるほど輝くタイプだと!!
後シグナムではなく残念ザフィーラですよ。


>鬼丸さんへ       
>何回読んでも笑ってしまう。           
>次はヴィヴィオバージョンを希望。

いや、いやいや、マジでやると本気でオチないのですよ。


>鬼丸さんへ 
>笑い死ぬかと思ったじゃないか、今回みたいなネタはいいね次は本当にキャロで
>行こう!(え

え?


>鬼丸さんへ 
>とらハ×なのはの平行世界ネタで恭也がリインにおじいさんって呼ばれてるんだ
>からケイスケがお父さん、パパでも全然OKw

あの大御所ですか!? ちょっと比べることも恐れ多いのですが!!(ガクガクブルブル)


>鬼丸さんへ 
>今回カオス過ぎて笑いがあははははっははははは 
>平行世界かタイムスリップなのか分からないところがいい

分かるわけないですよね、当事者が。


>鬼丸さんへ 次はエリオエンドですねw

ある意味そうかも知れない話でした。


>鬼丸さんへ
>裏版IFキャロENDがあるかと探しちまったぜ……orz

ごめんなさい、今回も作ってないです。
いやー長くなりすぎた。


>鬼丸さんへ 
>これ、14回は未来の可能性を知った上でキャロとの子をつくったってことですよね?
>……言い逃れできなくない?特にこの手紙を送ったケイスケ  
>あとユーノってなのはへの恋愛感情って公式で醒めてませんでしたっけ?

……よく気が付いた!!ご褒美に……なーんもありませんw
とりあえず、なのはがそういうのに全くっていうのはありましたが。
ユーノの感情は、そんなんありましたっけ?


>鬼丸さんへというかケイスケへ
>君も漢(おとこ)ならば
>覚えておきたまえ世の中には熟女ではなく幼女を
>選んでしまうような
>とどのつまりは
>我々(ロリコン)の様な
>どうしょうもない人間が
>いるということを
>byヘ○シング少佐風

ケイスケ「だがそれに反逆する!!」

なのは「けいくーん、って紛らわしい!!」

というかこの時点でカオスである。



>鬼丸様へ 
>ケイスケの最大のしきゃく読ませていただきました。
>最低でも14回ループしている時点でケイスケは十分にロリコン 
>いいじゃないか「幼な妻」ある意味勝ち組ですよ? 
>ルー似のお嬢さんは意表をついてメガーヌさんとの子供だと人間関係イロイロ荒れそう 
>きっとこの娘も手紙を持っていてきっと十数回はループしてる 
>その場合ケイスケは「マダムキラー」もしくは「広大なストライクゾーンをもつ
>漢」の称号を与えられそう。

く、そこまでありえる可能性を把握されるなんて!?
も、もはやここまで……


>鬼丸さんへ
>母親そっくりなツンデレ娘や成長したヴィヴィオが弟、
>妹を引き連れてやってくる展開もみてみたかったです。

……ティアナですか?


>鬼丸さんへ
>なぜだろう、どうしてもキャロがケイスケを襲って出来た子供だというイメージ
>しか出来ない‥‥

いや、だからどれだけ受け属性なんですケイスケ!?
いやむしろキャロが攻め属性!?


>鬼丸さんへ
>もし、ケイスケがこの未来を回避するためにヴィヴィオのパパになるのを了承し
>なのはに告白したら…

ある意味最低な理由ですが。
とりあえず、こんにちは、なのはIFENDは間違いありません。


>鬼丸さんへ
>ギンガやティアナ、オットー・ディードのEROはまだですか?

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


>鬼丸さんへ、
>今回も笑わせてもらいました。未来の、それも平行世界からの干渉とは....。
>ケイスケの未来が案じられてなりません(涙)。彼の未来に幸あれ。

大丈夫ですよ、きっと「それなり」に幸せです。


>鬼丸さんへ 
>最新話最大のしきゃく読ませていただきました。うん、なんというか頑張れケイスケ。
>それにケイスケなら実際にキャロやルーに惚れたら「愛さえ有れば歳の差なんて
>カンケーねえ!」とかいって突っ走りそうですよね。
>さて話は変わりますが最近アニメStrikerSを見直したんですが
>7話ホテル・アグスタのヴォルケンズの変身シーンを見て
>「あれ?シグナムよかシャマルの胸デカくね?」と思ったんですが。
>その辺りおっぱい大好きご主人様のはやてさんの意見はどうなんでしょう・

はやて「うん、シグナムの陰に隠れとるが、シャマルはなかなかのナイスバディや。
   シグナムがボンキュキュっと張りで楽しませてくれるタイプやけど、シャマルは柔らかさで勝負するタイプ。
    実はかつて私がうっかり卵を落とした時、ふっとひらめいた、そして実行したんや!!」
    
「シグナムーちょっと受け止めてー」  ぽよん

「シャマルーちょっと受け止めてー」  まにょん

はやて「これがこたえやああああああ!!」

ケイスケ「はいはい(スパーン)失礼しましたー」



追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。

拍手はリョウさんの手で切り分けられています。

作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。