時間は過ぎる、何してようがどうしようが。
祭は終わる、何があっても。
そして続くのは何時もの毎日。
だけど……
ケイスケの機動六課の日々 IF外伝
パチパチとボードをタイプする音、空間パネルでエミュした音じゃない。
実の所、場所は取るけどこっちの方が俺は好みだ。
打ってる実感ってやつがある。
そして今ある仕事が終わり、時間に
「お疲れ様っしたー」
うーい、とかお疲れーとアンタらが疲れてるだろって返事が届く。
前なら気にしなかったが妙に気になる。
仕方が無い、ここは違う場所だから、
外はまだまだ日が高かい。
定時っていいなーとも、物足りない感じもする。
祭の熱は、まだ胸に。
今は七月、六課解散から二月ちょっと経っていた。
遺失物管理部機動六課。
実働、訓練、捜査、補給、開発、輸送。
ほぼ全ての部隊機能を自部隊のみで完結させた実験部隊にして
カリム・グラシア理事管の管理局崩壊予言の対策部隊。
それは四月の終わりに、丁度一年で全て終わった。
みんな順風満帆に次の部隊に移り、そして俺は地上部隊に移った。
レジアス派の解体、スカリエッティの逮捕と共に中将との繋がりがぶちまけられ。
結果としては地上派閥は衰退。
本局派が完全にミッド地上の主流になって、六課にいた俺への評価は本局の急先鋒。
「おっと」
いかんな、考え事しすぎだ、洗剤を二つ買うところだった。
買い物を済して外に出るともう日が落ちている。
いかんね、ちょっと急ご。
向かう先は以前のアパートではなく平の一軒屋。
入る時にただいまと言っても返事が無い。
荷物を整理し、風呂を沸し、メシの支度。
仕込みは昨日のうちに済んでいる。
煮込みは便利だ。
そうしていれば「ただいま」と声が響く。
だっだっと響く音から、というか予定からして
「ケイスケ、ただいまー」
「お帰り、スバル」
取りあえず走るんじゃねぇ、埃がたつだろが。
スバルEND
六課解散後の移動に伴って、以前から誘われていたナカジマ家に居候になった。
いずれルーテシアも刑期が終わればおばさんと近所に越して来る予定だ。
ぶっ壊れた昔、それの、供養のようなもの。
「ふへー、お風呂気持ちいー」
食器を並べてるところに登場する風呂上がりスバル。
しかし、一年で随分成長するな、コイツは……
いや、解散すぐから住んでるから慣れたと言えば慣れたんだが、
タンクトップと単パンは止めてくれと何度も言ったんだが……
「ギンねえと父さんは？」
「今日は泊まりだとよ」
煮物に焼き魚、味噌汁と麦飯とトロロ、日本食だ
煮物は明日の昼にも食え、だから際限無く食うな！！
スバルのやつの生活は三交代、丸一日働いて次の日の午後から翌日までの休み。
こいつは午後いっぱい訓練するから実質二日働いて一日休む生活だ。
それでも毎日元気なのは流石と言うべきか。
食事が終わり、食器を二人で洗えば後はすることが無くなるのが普通だが、
ガッシャーンと音が響く、まあ何時もの事何時もの事。
「今日は遅かったね」
「大方バレて監視強化されたんだろ」
裏にまわり音の元に
「アホ二号ー平気かー」
「うええ、何っすかこれはー」
木の間に宙吊りのアホ二号ことウェンディ。
ゲットだぜ、と言うべきか？
「ヒドい目にあったっす……」
シャワーを浴びたアホ二号、全く。
「来るなら普通に来い、普通に」
「八神さんは狙うのが芸人魂と言ったっす！！」
「捨ててしまえそんな魂！！」
まあ、来るのをデフォで待つ俺達も俺達だが……
「ギンねえとチンクに怒られないの？」
そー、この馬鹿刑期終わってねーのにやってきてやがる。
しかもギン姉さんが不在の日を調べて。
いっぺんバレて素晴らしいお仕置を貰ったはずなんだが……
「はっはっは、あの程度で懲りるウェンディ様じゃ無いっす！！」
流石はアホ二号、もう忘れてやがる。
「つか、あれは何っすか？ 急に空中で引っ掛かったんすけど」
「ああ、あれね、キャロが捕まえた蜘蛛だ」
「それをルーちゃんが仕付けたらしいよ」
いやはや、恐ろしいコンビだよあの二人は……
「げげげ、気持ち悪いと思ったら……なんであんなとこに巣張らせるっすか！！」
「お前が毎回人の部屋漁るからだろうが！！」
ええい、この部隊長二号め、部隊長があっちこっち妙な風習垂れ流すからこんなの増えて困る。
「ところで兄ちゃん、またマンガ貸してくれっす」
はいはい、まあ、害はないし……
守衛さん達も早く帰りなよ〜って感じだし……
それでいいのか、ミッドチルダ？
適当に見繕い貸す、いいのかな〜
「というかウェンディ、いい加減兄ちゃん止めろよ」
「えー、姉の弟は兄も同然って！！」
「誰がいっ……いい！！ 分かったから誰か分かったから！！」
「あはは、元気だよねあの人も」
「元気すぎだ……」
俺はどこの水瓶ですか？ あの無理のある設定……
元気に手を振って去って行くウェンディ、さて……
「チンクにチクる」
「容赦ないね、ケイスケ」
容赦？ そんなもんオフクロの腹の中に捨ててきたわ。
リビングにてテレビ見ながら茶でも飲むか。
「あ、大福あるぜ」
「食べる食べる」
ソファーに座ってテレビオン、もうすぐ映画時間のはず。
映ったのはその前のニュースだ。
先日の船舶遭難事故の話が
「スバル、お前も？」
「あ、うん、こう沈む船に入ってね、ばーっと助けてきた」
……まあいいんだがね、危ないといえば危ないが
ニュースが次に写したのは密輸の摘発の話、
ああ、やっぱ部隊長か……
「……心配？」
「そりゃな」
複雑そうな目で俺を見るスバル。
「八神部隊長なら」
「平気じゃない」
捜査官なんてのは犯罪者に喧嘩を売って歩くような仕事だ。
「前に言っただろ？ 無敵なんて有り得ねえって」
部隊長は一人じゃない、リイン曹長にシグナム元副隊長、シャマル先生にザフィーラさん
今はヴィータ元副隊長が教導隊に行っちまったらしいが、
変わりにアギトがいる。
だけどそれでも、血がでれば、毒を飲めば、死ぬ事に変らない。
黒社会を真っ向から敵に回せば必ず……
しかも半端にあの人達潔癖だから……
「行けばよかったじゃない」
「ん、そうもいかんだろ」
実のところ解散後は色々誘われてはいた。
部隊長にもだ。
だけどかなり前からナカジマ家に居候するのは誘われてたし、
ルー子達にナンバーズにヴィヴィオの奴の件もある。
結論としてここに残るのを決めたんだ。
「……ケイスケ、最近つまらなそうだよ……」
「ん、まあ六課に比べればな」
「ため息多いよ」
「そうかもな」
「ちがーう、何か違う！！」
なんなんだよ……
スバル視点
ケイスケがウチに来る、そう決まった時は普通に嬉しかった。
私も特救に入って実家通いになるし、
みんなと離れる、寂しい気持ちも少しよくなって。
最初は、うちの味をケイスケが勉強したり、
ヴィヴィオやルーちゃんが泊まりに来たりと大忙しで、
でも……
最近になって、ケイスケは遠くを見てる事が多い。
ふっと、何処かに行っちゃいそうで、
ナカジマの家が嫌なのか、
そんな事考えて、今日は二人だっていうから、
絶対に聞くんだって。
そう思って……
「うー！！ ケイスケはどうしたいのさ！！」
「だからなんなんだ？あれか、やっぱ一緒に住むのは不味いとか？」
「違う！！」
だめだ、ちょっと聞き方変えなくちゃ、
落ち着いて落ち着いて。
「……ケイスケ、今悩みがある？」
「ん、まあな」
ほら、正解。
「話してよ、絶対力になるから」
話し合わなくちゃ分かんない、
六課の時、ティアと私の時、ケイスケがやってくれた事。
だから、今度は私が聞くんだ。
「別にさ、無いものねだりってやつだよ」
「？ 無いもの？」
「……ハッキリ言ってさ、俺に元六課って名前が重いのよ」
「重い？」
「大抵のやつは、あの六課、にいたやつって俺を見るけど、別に大した事無いだろ俺？」
「そんな事無いよ」
「そう言えるのは、お前らだけだよ、魔力は無い、特技だって超人じゃねえ」
それは……そうかもしれないけど……
私も少し感じてた、奇跡の部隊、エース達が作った若年エリート部隊。
それが六課の評価だと思う。
移動になって、周りからそんな風に見られてるのが分かって、
なのはさんの生徒として、恥ずかしくないように頑張って、
私はそうしてきたけど……
「でもケイスケだって、みんなの力になった、間違いないよ」
そうだよ、でなかったら隊長達だって誘わないし、
ウェンディ達だってあんなに気軽く来たりしない。
それは……ケイスケだからだ。
「でもな、それは俺にしかできない事じゃねえ、上手くやれるやつはいくらでも管理局にいるんだよ」
……何さそれ……
「なんかね、疲れるのさ、あの六課の人間なのにってのが」
……それは……
目に付いたクッション、振りかぶって、投げた。
ケイスケ視点
ぶ。
いきなりスバルにクッション投げ付けられて
「いきなり何すん、イテ」
次はリモコンだ。
それかは菓子やらスプーンやら、
クッション盾にしてガード。
このやろう、いい加減に って。
「おいおい、待て、待てよおい！！」
「むむむむ！！」
テ、テーブルはやり過ぎだろ、おい。
「落ち着けって、すまん悪かった」
「……ケイスケの代わりなんかいないよ」
ん、だがよ。
「私は、ティアも、エリオも、キャロも、なのはさん達だって、そう思って……」
あ、ん。
「六課で、ケイスケの仕事の代わりができる人はいるよ……
でも、ケイスケの代わりなんて……」
あ、スバル、泣いて。
「お、おい泣くような事じゃないだろ？」
「泣いてない！！」
う、あ、ぐ、どどうしろってんだよ……
「そんな事言ってるんなら、八神部隊長のとこでも、なのはさんのとこでも行っちゃえ！！」
「だから、俺は」
「どうせ私は心配無いんでしょ！！ だったら！！」
あ、こっちもカチンときた。
「うるせぇな！！ 俺は！！ 自分で！！ ここって決めたんだよ！！」
「だったらそんな事言うな馬鹿！！」
「たまに愚痴るぐらいいいだろうが！！」
はあ、はあ、はあ、クソ、コイツは……
「いいじゃない、今からだって、
みんな呼んでくれるよ、
別にウチみたいにうるさくないよ」
なんだよ、前の話し合いの時みたいになりやがってよ……
クソ。
「俺がお前の近くがいいんだよ……」
「……はい？」
って力抜くなそんな物もって！！
大惨事は免れた……まあ掃除は必要だけどさ。
……スバルが無言だ……やりにくい……
一分
二分
三分
二人して床に座り込んで無言で、馬鹿みたいだよ。
「……あのさ、それって、幼馴染みだから？」
「それと別」
「じゃあ仲間……」
「お前わざと間違えるだろ」
……すまん、このタイミングは無いと自分でも思う。
コイツといると楽だ、何がどうとかじゃなくて、
そう自然にいられる。
さっきみたいな事だって、コイツだから言える。
だから、コイツ、スバルといたいと思う。
沢山地上に残る理由はあるけど、多分これが一番の……
「な、何で私なのさ、ほら、なのはさんとかフェイト隊長とか」
「お前がいい」
正直、ガラじゃない事言ってる。
……いいか、どうせこれっきりだ。
赤く、本当に赤い顔してうつむいたスバル、やべ、ちょっとヤバイ。
床に付いた手を見たら、自分の手、重ねてた。
あ、ダメだ、止まんないや……
ゆっくり、ゆっくり、近付いて、そのまま。
スバルがどう思ったのかは、分からないけど。
自分では、極めて自然に、
口を、重ねた。
時計を見ると大体一時間くらい過ぎていた。
もっと経ってる気がしてたのに。
「膝がいてえ」
床でやるものじゃないな、うん。
「……もっと痛いんだけど」
「いや、そりゃ仕方なくない？」
まあ、なんだ、お約束の会話だよな……
今さらながら、さっきまでのセリフを思い出すと、
「……やべえ、死にたいくらい恥ずい」
「本人の前で言うかな普通？ 私だからいいけど」
「だからお前じゃなきゃやらねえよ」
あかん、またスバルが黙ってしまった。
くそ、間が持たない、ヤニが吸いたい。
ああ、ドラマとかで事後に吸うのってそういう訳か。
ぴぴっと音がした。
ビクッとしたよ、うん
スバルなんか服抱えてソファーに隠れて。
俺の端末？ 部隊長から
悪い、部隊長。
端末は電源を落として、
投げた。
「いいの？」
いいの、今はお前優先。
「え、えっと、さ、さっきの無いものねだりって何？」
ああ、それ？
「いや、俺の移動先候補でミッド常駐って今のとこだけで」
「で？」
「まあ、コネ関係なら仕事に不満は無いが、いないだろ？」
「なにが？」
お、お前……ここまでの流れで察しろよ！？
言うのか？ 言わなくてはいかんのか！？
「……スバルが……」
ぐあああ、死にたい、死んでしまいたい！！
そしてお前もツマるなスバル！！ やりにくいだろうが！！
また音が響いた。
「あ、今度私だ」
下着着たのか……
ぶっちゃけさっきまであれだったから……
ダメだ、どう見てもあれだ……状況バレバレ……
「あれ？ 八神部隊長？」
？ スバルにも？
いつものヘルプ呼び出しじゃねえの？
「もしもしー八神部隊長ー部隊長ー」
サウンドオンリーか、適切な判断だ。
「ん？ 切れてる？」
「ううん？ 繋ってる」
ふっと嫌なイメージ、さっき話した事。
「スバル！？」
「うん！！」
配置検索、みんなの端末は居場所検索を出来る。
ヴィヴィオの時を教訓にやっておこうと部内毎、全員で登録した。
部隊長は特別に内勤外勤両方に。
「近い、すぐ……そこ……」
……あれー？ なんか別の意味で嫌な予感ビンビンですよ？
振り向きたくない、すっごく振り向きたくない！！
だってスバルが悪さをギン姉さんに見つかった俺みたいな顔してるもん。
でも、手遅れ？
ぐぐって首を動かすと、
窓越しにフリーズした……
うん、カーテンくらい閉めようぜ俺達。
部隊長にしばしスバルの部屋に待機してもらい片付ける。
あ、血痕……
はい落ち着け、俺切りないよ。
掃除が済んで部隊長に降りて来てもらう。
うわ、気まずい。
「え、えっと、お邪魔やった？」
「い、いえいえ、そんな！？」
「うん」
「ケイスケ！！」
いや事実やん。
「ま、まああれやね、おめでとう言うべき？」
ういうい、存分に御祝儀よこせ、主に俺に。
「なんかケイスケ八神部隊長といるとノリノリだよね」
「ん、漫才好きだよ俺」
まーそれでもスバルが良いと言うが。
「はいはーい、惚気んでくれん？ 寂しい一人身苛める気？」
「イエス！！」
「！！ ノーとしか言わないはず」
「時々付いて行けないな〜」
よしスバル、今度洗脳してやるぜ。
「で、本題なんやけど」
あ、真面目モード、スバルもパッと変る。
部隊長は鞄から一枚のファイルを取り出した。
「六課再建？」
「ほ、本当ですか？」
「マジマジや」
おいおい、まだ一年も経ってねえぞ。
あ、でもこれ。
「前のメンバーじゃないですね、設立も……三年後！？」
つまりは、前の六課を更に試験するという形。
部隊長も今回はバックから設立支援のみ。
「今回は緊急性ないし、何より前のメンバー集めるまでやないから」
何でも前のやつは結構大急ぎだったそうだ。
部隊長本人は四年間準備したが、それはあくまでも個人。
今回は組織的に、それも大規模にやるらしい。
「つか、イメージ対策だろこれ……」
「まあ、な……」
「？？」
スバル用に解説すると、
六課がテロを潰しました、
お偉いさんが後ろにいました、
だからやっつけた六課を続けましょう。
こんなとこだろ、ああ、だから部隊長も乗り気じゃないのね。
「でな、ケイスケは色々関わってるし、
スバルも教官資格取ってたまに稽古つけるいうの頼みたいんよ」
……つまり部隊長の補佐ってことか……
どうする……悪い話じゃない、当然地上の勤務だし……
突然手に暖かいものが触れた。
スバルの手だ、でも柔らかく、がんばれって言ってるような。
………
よし決めた。
こうして祭りはまた始まる。
上が何考えてようと、俺たちの場所をまた作る。
そんなお祭りが。
一人で突っ張らなくても、きっと回りは、手を貸してくれるだろう。
隣の奴も。
後書き
初めてラブい物書いてみました。
以前、感想板でカップリングアンケをやっていただいた時に
なのは 1
シグナム 1
ヴィータ １
はやて １
ギンガ １
ハーレム １
スバル ２
だったので書きました、はっはっはびっくりしたでしょう。
途中唐突に切った部分はRなのでメールのみ配信です。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、