筆にインクを湿らせ、瓶の縁で余分な分を取る。

持ち上げても黒い液が垂れない事を確認して×が書いてある部分をペタペタと黒く塗る。

「ねーちゃーん、眠いー」

「ああ寝ろ!!終わったら!!」

相変わらず真雪は殺気だったように、雪児はバテて原稿を作っている。

ベタ塗りが出来た原稿用紙は凧糸にハサミで干し吊していく。

何冊か寮の本を読んでみたけど、こんな大変な思いで作られているって凄いと思う。

取りあえず真雪がペン入れっていうの終わらせるか、雪児が背景を終わらせるまですることが無い。

手持ちぶたな感じで少し暇。

雪児と向かい合うテーブルには数本のペンが立っている。

自由帳に落書きでもしてみようかな?

インクを付けたペンで紙に線を引いて、あれ?太さが変わっちゃった。

筆みたいに強さで線が決まるんだ、これ。

強く引いて弱く引いて……面白いかも……

ピンポーン。

「げ、もう来やがった!?」

「ねーちゃんどーすんだよ!?」

「フェイト、お前ちょっと待ってもらって来い!!」

はーいと返事をして玄関先まで来てる編集さんにはリビングでちょっと待ってもらう。

早く終らないかなあ。









今日のお手伝いが終ると雪児は真っ先にリビングの床で横になった。

ペタペタと久遠が近づいて来て雪児の懐を開けて侵入すると、疲労に満ちた雪児の顔が幸せそうに変化する。

私も今日は疲れた、夕日が差し込む窓でお昼寝してるアルフ。

モフモフな毛皮がどうしようもなく魅力的に見える。

たまにはいいよね?

アルフの隣、お腹のところに頭を乗せておやすみなさい……




             HOME_REHOME 16話







ここの、地球の生活で一つだけ不満な事がある。

仕方が無い、しょうがないことだって分かってるんだけど、感情と理解は別のものだってよく分かる。

「はーはーは」

「だ、大丈夫? フェイトちゃん」

「う、うん大丈夫……」

「はい、フェイトお水」

「大変だよね、バス停まで遠いと」

なんで地球って空を飛んじゃいけないんだろう……








朝、寮から学校や仕事に出かける人は大体3通りに分けられる、車やバイクを使う人、自転車などを使う人、そしてバス組。

だけど私の場合は学校の通学バスっていう特殊なものになるので、山を降りないといけない。

帰りは自分の好きに帰っていいから寮の近くまで来てくれるバスを使えるのに、なんで通学だけこれを使わないといけないんだろう。
特に今日は鞄が重いから……

「こ、今度アルフに乗せてもらおうかな……」

「それはそれで目立つって」




すずかに汗を拭いてもらって、なのはに下敷きで扇いでもらって、アリサにジュースを貰ってようやく一息つけた。

教室で机を枕にすると息苦しいのに落ち着く……

バス通学が推奨される聖称だと大体決まった時間にはほとんど教室に人が集まってくる。

「というか、なんで今日はそんなに疲れてるの?」

あ、そうだった、なのは達に見てほしいものがあったんだ。

重たい思いして持ってきたこれを、なのは達に。

鞄の体積の大半を占めるそれ、とても厚くて重たい。

それをがんばって鞄から出して。

「ちょ、それは来週発売の本じゃない!!」

「ど、どうしたのフェイトちゃんそれ!?」

「うん、編集さんが持ってきてくれたから」

この本から私が手伝った部分が載ってる、黒く塗っただけなんだけど。

みんなにこれを見て欲しくてがんばって持ってきたんだ。

こういう、自分のやったものが本になるって凄いと思う。

パラパラと自分の塗ったページを出して。

あ、見つけた。








「ほら、ここ私が塗ったんだよ!!」

「って、その漫画……ま、まさか」

? アリサ?

どうしたのか聞こうとしたところで私の手元の本が後ろから取り上げられる。

誰? 見たいなら見せてあげるから黙って取り上げたりしないで欲しい。

そう思って後ろを。

「テスタロッサさん、学校に関係の無いものを持ってきてはいけません」

え? 先生?

「放課後まで預かっておきますので、終ったら取りに来てください」

え? え? えええええええええええ!?













叱られた……職員室で叱られた……

「げ、元気だしてフェイトちゃん」

うん、でも持ってきちゃいけないなんて知らなかったんだよ。

雪児の鞄には何時も漫画本が入ってるから大丈夫だと思ってたんだ。

……そう、これもみんな雪児のせいだ。

今日怒られたのも、昨日フライパン焦がしたのも、ポストが赤いのも寮についてないのにお腹が空いたのも。

ぜーんぶ雪児のせいだああああ!!

「何やってんのよフェイト」

「あう、ごめん」

アリサに怒られた。今日は何故かアリサがウチの寮に用があるとかでみんなで寮で遊ぶことに。

そういえばアリサも今日は漫画を読んでから様子が変だ。

どこか落ち着きがないというかそわそわしているというか。

一体どうしたのだろうか? そういう意味ではすずかも落ち着きがない。

何でだか寮に来るという時のすずかは元気があるようですぐに元気がなくなる不思議な感じになる。

何時もと変わらないのはなのはくらい。

二人で不思議に思いながら、学校のバスで駅前まで出てそこから寮に向かうバスに乗り換えた。










バスの後ろの方の広い椅子に四人で座るとバスが発車して風景が流れ始める。

寮のある山の中腹まで行くバスの終点は山奥の公園。

海の方に向かって開けた場所で夕日とかがすっごく綺麗だ。

そこまでじゃないけど、バスの窓から見える海鳴の街も十分に魅力的だと思う。

以前、ジュエルシードを探していた時は何も感じたりしなかったけど、今は違う。

なんでだろう? 何が私の中で変わったんだろう。

答えの出ない疑問に耽っているうちに最寄のバス停についてしまった。

「行こ、フェイトちゃん」

「うん」

なのはの手を握りながら、バスを降りる。

何が変わったのかは分からないけど、きっと良い変わり方なんだと思う。

だって、楽しいっていえるから。






ペタペタペタ、ぐいーーー、ペタペタペタ、ぐいーーーー。

なのはは言葉を失った。

アリサは言葉を失った。

すずかは言葉を失った。

私も言葉を失った。






端的に今視界に入ったものを思い出して整理してみよう。

寮に入った、リビングに入った。




赤いモコモコと蒼いモコモコの間に足が生えていた。

はやてがペタペタと這ってそこに入ろうとして足にぐいーーーって邪魔されていた。

足に押しやられて、またペタペタって、またぐいーーーって。

何があったのか、私には分からない。

「あーフェイトちゃんやっと帰ってきたー」

バッテンの髪留めの髪飾りが可愛いはやてだけど、今は床に擦ったせいか少し髪が乱れている。

私達が来る前からやっていたのか、はやての額には一筋の汗が伝っていた。

なのは達に気がついたはやてはみんなにも挨拶をする。

すずかとアリサとは初対面だけど、初対面がこれかあ……

「なーなーフェイトちゃん聞いてくれん? 酷いんやで雪児さんが」

「雪児がどうかしたの?」

まあ大体もう予想が付いてるんだけど。










二つのもふもふを指差すはやて。

ああ、うん、やっぱりなあ。

「雪児さん、わたしが料理勉強しとる間にモフモフ独占したんやで!! これは許せんやろ!!」

赤い毛並みはアルフ、蒼いのはザフィーラ、その間に挟まってるのは雪児。

よく見ると雪児の懐には久遠の姿もあった。

雪児は、本当に幸せそうに顔を崩して眠っている。

恐らくはやてにキックしていたのは無意識なのだろう。

それは本当に気持ちよさそうに、時々「もふもふ」なんて寝言まで言って。

「くううう!! モフモフ独占禁止法違反や!! わたしのモフモフー!!」

再び雪児を引っ張り出そうとするはやて、今度は足を掴むことに成功したはいいんだけど。

「うーん、うーん、うーん」

足で踏ん張れないことを差し引いても、はやてで雪児を動かすのは無謀。

私でも胸の辺りまでしか届かないくらい身長も高いし、それに加えて異常なまでに重い雪児。

魔法を覚えていないはやてにできる訳が無い。










はあ、仕方ないなあ。

アルフ側から回り込んで雪児の頭のところに移動、はやての引っ張ってるのもまるで感じていないように寝続けてる。

ちょっと髪をかきあげて雪児の額に手を乗せる。

「フェイトちゃん?」

「はやて、ちょっと待っててね」

さて、起きようか雪児、そのまま雪児の額に。

「電気」






「最近フェイトちゃんはオレの扱いが悪い気がするんだ」

頭がポンポンに膨れ上がった雪児、自業自得だと思うんだけど。

「どうせ雪児だから治るんじゃないの」

「お、おかしいな、俺フェイトちゃんが来たから寮の底辺じゃなくなったはずなのに……」

そ、そんなこと思ってたんだ……まあいいや、雪児に真雪を呼んできてもらおう。

アリサたちが会ってみたいらしいってことで。








「別にいいが、ねーちゃんだぞ?」

「そうだよ?」

「今日は締め切りだったんだぞ?」

うん、分かってるよ勿論。だから雪児にお願いしてるんだよ。

何のこと?ってアリサが聞いてくるけど、ごめんね、説明するとすっごく長くなりそうだから。

背中に哀愁を漂わせた雪児がリビングから二階の真雪の部屋に行くのを見守って。









それからしばらく、ゴン!! って凄い音がして。

「な、なになになに!?」

「落ち着いてアリサ、おきたから」

多分ね。少しは慣れているなのはやはやては苦笑いだ。

そうするとドタドタって足音を立てて近づいてくる足音。

ちょっと大きいタンコブを頭に作った雪児、その後ろからやってくる前を開けたワイシャツとズボンだけの人。

漫画家で寮の主(雪児が言ってた)である仁村真雪がやってきた。









「んで? アタシは眠いんだけど」

あれ? 真雪機嫌悪い? あ、そうか今日は真雪朝まで書いていたんだ!!

「ごめん真雪眠かった?」

「まあな、いいけどさもう夕方だし、わり風呂入った後でいいか?」

というか今まで寝てたんだ真雪。

じゃあ最後まで付き合ったっていう雪児は……よく学校いけたなあ。

「えっと……あれが草薙まゆこ先生、なの?」

「えっと、あれだ、今日は締切明けだからさ、機嫌が悪いんだよ」

「悪い時に来ちゃったのかな?」

あう、ごめんねみんな、先に雪児に聞いておけばよかったよ。

アリサとすずか、なのはとはやてと雪児、それと出てくる真雪の分のお茶を入れておく。

大体70度くらいにして、急須に入れて、わたしのも入れて7個の湯のみにゆっくりゆっくりと交互にお茶を入れる。

「お茶入ったよー」

お盆に全部は載せられないから3杯ずつ運ぼう。

さあ、みんな飲んで待ってて。






        △△△











「ほれ? これでいいか?」

「あ、ありがとうございます!!」

ぺこりと90度で礼をするアリサちゃん、本当に真雪ねーちゃんの本が好きなんだなあ。

ねーちゃんが無駄に気合を入れた絵を書いたサイン色紙を本当に大事そうに抱くアリサちゃん。

ねーちゃんもそれが何処かくすぐったいみたいで後頭部をガシガシと掻いていた。







「まゆこ先生の本は全部持ってます!!」

「そ、そうなのか?」

「え? 夏とかのも?」

「アホか!!」

ガチンと目から星が飛び出すような衝撃がはしる。

殴られた、まあいくらなんでも小学校三年生にあっちの領域の話はNGだったか。







「? とにかく、みんなどんなことがあっても最後には笑っていられるのが心に残るんです」

「ま、あたしゃ悲しい話が大嫌いだからな」

「ええ、それと登場人物の……」

これは時間かかりそうだなあ、アリサちゃん凄い興奮してるみたいだし。

あ、フェイトちゃんの容れたお茶美味しい。

さて、寝てる久遠をゆっくりと抱いてテレビでも見るか。

チャンネルを適当にあさると旅行番組が見つかったけど、これでいいか。

あ、旅行番組場所が京都か、楓ねーちゃん映らないかなあ。

「なあなあ、雪児さん。真雪さんって漫画家さんなん?」

「ああ、はやてちゃん知らないんだっけ?」

「うん、初めて聞いたわ、どんなん描いてるの?」

どんなって言われてもなあ。

メンドクサイから実物を読んで貰いましょうか。

うちの寮の二階にはちっちゃい書庫がある、そこには寮のアルバムや真雪ねーちゃんの漫画が全部置いてある。

流石に雑誌はかさばるのでコミックスだけになってしまったが。

「でも雪児さん、はやてちゃんの車椅子は?」

なのはちゃんがそんなこと聞いてくるが。

んなもんオレがはやてちゃん持てば問題無かろう。

ひょいっと持ち上げると「ひゃい」ってびっくりした声をはやてちゃんが上げる。

軽い軽い、オレが異常に重いだけかもしれないけど。

このまま歩くのだって楽勝楽勝、ひょいひょいひょいって階段を2段飛ばしで二階に上がって。








「つか雪児さん、ふつーこういう場合ってお姫様抱っこでドキドキイベント違う?」

ちなみに今の持ち方。

両膝の裏を持って後ろから抱き上げてます。

いわゆるしー「考えるの禁止!!」

はやてちゃんからはアッパー、書庫についてはやてちゃんを降ろしてからすずかちゃんとフェイトちゃんからローキックを貰いました。


















「おお、凄いわ!!」

寮の角にある書庫、といっても真雪ねーちゃんの本が大多数を占めている。

「漫画ばっかり……」

まあね。

椅子と机もあるのでそこにはやてちゃんを座らせて、オレは座布団でも「わたし、クッション持ってくるね」




……フェイトちゃんが先に行ってしまった。




じゃあ、本でもとってあげ「はやてちゃん、これとか私も読んでるよ」「あ、お姉ちゃんがこれ持ってた」

「おお、ありがとう。なのはちゃん、すずかちゃん」




……部屋にすっこんでようかな……




その後もちょっと疎外感、まあ男がオレだけってのもあるけど。

「なーなのはちゃんユーノは?」

「お留守番してるよ」




……下に下りて久遠と遊んでこようかなあ……





「くーん」

「おお、久遠!!」

我が癒し、心の心友!!

抱き上げてモフモフすると少しだけ嫌そうな声を上げるけど、すぐにこっちのホッペも舐め返してくれる。

ああ癒される……

なのはちゃんが羨ましそうに見ているがまだ渡さん!!

「久遠ちゃん?」

「くん?」

声をかけてきたのはすずかちゃんだった、正直珍しい。

オレはさっぱり何を忘れているのか思い出せないのが申し訳ない。

すずかちゃんが久遠に手を出そうとするが、甘いぞすずかちゃん。

久遠は「ペロ」!?




……









「ねえ三人とも、雪児どうしたの?」

くすん……







△△△










な、何があったのだろうか?

私がクッションとかを持ってくる間に何が……

まあ、いいか雪児だし。

ここの漫画は私も全部はまだ読んだこと無いんだよね。

手が汚れない、包み紙に入ったお菓子を中心に円になってみんなで読書。

久遠は私の膝の上、モコモコ気持ちいいなあ。

今度アルフに枕になってもらってお昼寝もいいなあ。

「なのは、これなんて読むの?」

「え、えっと、(龍闘気)どらごにっく?」

なのは達が読み方教えてくれるから安心だ、正直まだ日本語は自由に読み書きできるってレベルじゃないし。

御架月がまだ教えてくれるけど、どうしてもまだまだ自信もって出来ないなあ。






「フェイトちゃん、ごめん続きとってくれる?」

「うん、いいよ」

えっと、次の巻次の巻。

本棚の前ではやてが読んでいた本と続きの本を差し替えておく。

この本は長い、続きがまだ20巻くらいあるし。

ゆっくり読んでくれればいいや、そう思って3巻くらいまとめてとると、その下に何か気になるものが。

なんだろうこれ、茶色くて太い本。

引き出そうとすると重い、ズシって手にしっかりとした重量が帰ってきた。

「あれ? フェイトちゃんそれひょっとしてアルバム?」

「? そうなの雪児」

「んーそうだよー」

へー、見ても良いのかを一応聞いて開いてみると「いいよー」って。








ずっしりとした表紙をめくると最初に目に入ってくるのは黒髪の少女が元気に木に登っているところ。

美緒だろうか? 今の私と同じくらいの年齢ぐらいの美緒、木からピースサインを送る写真。

真雪に愛、知ってる人はそれくらいで、後は知らない人の写真が続く。

庭で竹刀を振り回す人、なんだか元気そうな大人の人、ちょっと大人しそうな子。

「うわー愛さんが可愛いー!!」

「そこで禁止ワードを言わないところ、なのはちゃん隙が無いで……」

うわ!? みんななんで私の後ろから見てるの!?

というかはやてまで、這って私のところまで移動したの!?

「ややなあ、気になるやん人の家のアルバムとか」

「そ、そういうものなんだ」

私やっぱり知らなかったよ……次々めくるページには次第に耕介、リスティ、那美達が写り始め、写真の年号は現代に近づいていく。

すずかもこっちに来たから、実質全員がこのアルバムに釘付けされていることになる。

一枚一枚に泣いてる顔もあれば笑った顔もある。

「ちょ!? SEINA!? なんで写っとるん!?」

「ん? 寮生だったから」

はやてが大声でびっくりして、そうやってページをめくっていくとみんな大きくなっていく。








「あ、これ雪児さんでしょ」

なのはが指差した写真には大人しそうな子と手をつないだ雪児らしい子供の写真。

大体今の私達くらいだろうか? ここから雪児の写った写真が多くなっていく。

ほとんど雪児と誰かの組み合わせの写真になっていき、特に最初に写っていた人とのショットが多い。

その中には小柄な女の子が二人、大柄でだけど可愛らしい感じの子が写っていたりする。

何か違和感がある、那美や雪児が私達が知っている姿に近づく。

何だろうか? 明確に何ってわけじゃないんだけど……

モヤモヤするのに答えが出ないのがなんだか気持ち悪い

後ちょっと、喉の先まで来ているのに





「あ、あかんそろそろ迎え来る時間や!!」

はやてが時計を見てハッとしたのと同時に玄関のチャイムが鳴る。

はやては車椅子なのでいつも誰か八神家のひとが迎えに来る、昨日はシグナムだったから多分今日は

ビュンと私達の前を風が通り抜ける、書庫の扉が外側にバンと当たり階段を駆け降りるドタバタとした音が響く。

当然だが風が巻き起こった場所にはどっかの誰かが消えていた。

思わず湧きあがる頭痛に頭を抑えざるを得ない。

「あ、あれ? 雪児さんは?」

「えっと、うん、何というか……」

何故だろう、すずかには正直に話すと面倒なことになるような予感がする。

でも友達に嘘はつきたくないし、何でこんな事まで私が考えないといけないのだろう……










リビングには妙な緊張感が漂っていた。

その空気を作り出すのは長い髪を後ろにまとめた、クールな容貌のカッコいいと言うべき人だ。

その前に何故か正座して後ろに斜線を引きそうな雪児がいるのだろうか……

「あれ? シグナム? シャマルはどないしたん?」

「シャマルは翠屋が混んでいて少しかかるそうなので、槙原は私を見るなりガックリきたのでどういうつもりだと」

ああ、雪児シグナムが苦手だからね、シャマルには対象的にやたらと懐いているけど。

「で、なんで雪児は正座?」

「いや、こう、条件反射でつい……」

どういう条件反射なんだろう……シグナムからしたらよく聞く姿勢にみえるから歓迎らしけど。

「神咲姉みたいだな……」

「神咲姉?」

二人を見ていると真雪が唐突に呟く名前は知らない名前だった。

多分アルバムにいた誰かなのだろうとは分かるけど、半分近く知らない人だったし。

「ああ、那美のねーちゃんでな、会ったこと無かったっけ?」

「ああ、あの時の幽霊の時の人ですよね!?」

ああ、あの時なのはと雪児と一緒に逃げ回った時の人?

私はあの時は直ぐに逃げちゃったけど……

「そーそー、すげー堅物なやつだったぜ剣道部やっててさー」

へー、何となく聞いている話だけでシグナムに似ている人なのかもと想像できる。

それで雪児はその人が苦手なんだろう。

雪児いい加減だし、キチっとした人は苦手なんだ。

「幽霊……うーん」

「ああ、アリサちゃんあんまり真面目に考え無い方がいいよ、きっと多分」

「「うんうん」」

すずかの意見に全力で肯定する私となのはだった。














もぐもぐ、うあ……

もぐもぐ、うへえ……

もぐもぐ、あううう。

「フェイトちゃん、美味しいの?」

「うんとっても!!」

なのは達も帰宅すると直ぐに夕飯の時間。

リスティ達が帰ってきてからリビングのテーブルに食器を並べて全員でいただきます。

アルフと久遠は日によって人型だったり動物だったりする。

人型だとたまねぎとかでも大丈夫らしい、美味しそうにお替りまでするくらいに。

相変わらず耕介のご飯は美味しすぎる、

「おかわり!!」

「相変わらず美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」

私の出したお茶碗に耕介がよそってくれる、元々食が細い方だと思ってたんだけど、どうも耕介のご飯は食べたくなってしまう。

「ふう、若いっていいなあ……」

「さとみ何歳なの?」

「ぐは!? じゅ、純粋な瞳が痛い!!」

わ、私なにか悪いこと言った? 悪いこと言った!?

「ふう、フェイトちゃん。何時か分かるよ」

「何だか雪児に言われると不安になる」

「な、なんかフェイトちゃんの中のオレの信頼度が凄い落ちてね!?」

だって……雪児だし……







ああ、そうだ聞いてみたかったんだ。

「ねえ、上にあったアルバムだけど」

「んーああ読んでたな」

そうそう、気になってたんだ、雪児の写真に赤ん坊とかの時の写真が無い事が

「ん? ああオレ拾われっ子だし」












……あれ?

思わず聞いたらいけないことを聞いてしまったような気もするけど全然雪児が普通のことみたいに言ってるんだけど。

反応に困るよ!?

「いやほら、ねーちゃん達は寮生だけどねーちゃんで、とーちゃんはとーちゃんなのだ」

「息子!!」

「とーちゃん!!」

唐突に抱擁する雪児と耕介、少し引いた。

こ、こんなんでいいのかなあ。






後書き

フェイトちゃんの変な日常、寮での生活は異常です編その一。

とらハシリーズを知らない方、ここはもっと異常です。

執筆が遅くなって大変申し訳ありません。

何とかもうちょっと早くなるようがんばりますので。

それでは失礼します。




拍手レス

>※鬼丸さんへ
>そういやなのは達とヴォルケンズが仲良くなってる!?雪児君はどんだけ緩和剤の役割してるさ!?www
>そして雪児君の好きな人ってもしかしてあの方…?

ちらっとちらっと出していますよ。
気がつく人は気がつくでしょう、3に出番が無い人です。


>※鬼丸氏へ
>早く続きがみたい

時間が開いて申し訳ない、本当ごめんなさい。


>※鬼丸さんへ
>相変わらず海鳴市民な恭也は強いなー。でも神速使ってないあたりまだ切り札温存ってとこか?
>ゆうひと薫の早めの登場を期待。ゆうひなんかフェイトに素晴らしい影響与えるだろうに

ゆうひさんは海外を飛び回っております、でも海鳴には来るでしょう。
寮生にとって寮は第二の家ですから。


>※鬼丸さんへ、
>15話面白かったです。雪児の意外な好み。那美かな? 
>一瞬十六夜かとも思いましたが幼い感じだと彼女なのだろうか? 
>シャマルのポジションも珍しいw 
>しかしファリンには反応しないのかな? 似てると思う。
>シグナムと恭也の対決、やはり魔法対剣は厳しいですよね。しかし恭也に強化フラグが立ったw 
>神速はそう言えば使ったのでしょうか?

うーん惜しい。
もっと昔から寮にいた人です。
ファリンもいいですが、もうちょっと包容力もある人なのです。
シグナム戦は恭也は神速も剣以外の武器も使用してません。
対してシグナムも遠距離系も必殺技も使っていません。

いきなり手の内全部見せあうなんてできないですよ。

    以下なのはイフの拍手です。


>※鬼丸さんへ
>てっきりヴィヴィオが二人の寝てるところをカメラで撮って配布するのかと思ったが…
>純心だったころが懐かし、ってもともと純黒だったか…

え? 気のせいですよ、ヴィヴィオちゃん純真純真。
ほーらそんな気になってくるwww


>※鬼丸さんへ
>今回もケイなのは甘々な話だったため、隠しのほうに突撃した私は間違ってなんかいませんよね?

残念ながら今回のはそういうのは作っていないのですよ。


>※ 鬼丸さんへ
>ヴィヴィオよ兄弟が欲しいなら近藤さんに穴を空けるより、使用済みを回収して
>フェイトに渡し人工受精した方が確実だぞ。

ちょ、それは確実にアウト展開ですよ!? 欝展開まっしぐらじゃないですか!!


>※ 鬼丸さんへ
>今回の話は何と言うか身分なんか関係ないと言う平民と立場や周りの目を気にし
>てしまうお嬢様の恋みたいなものでしたね。
>ライバルとして貴族のボンボン(ユーノとか)出てきそうな…などとネタを振ってみる。

半分アイドル的にスバルが慕ってるのでいいのでは!?
とりあえずそんな人からすりゃあ面白くないと思って。


>※鬼丸さんへ
>うん、何と言う凸凹夫婦。

凸凹ですよ? 書いてたらガッチリはまってこりゃ参った。


>※ 鬼丸さん>>
>なのはエンドバージョン3見ました。なのはさんが犬になってケイスケクンに
>マーキングとな……ごめん、すっげぇ悶えた。てか、ほんとすっげぇ似合っていて、
>我が妄想の中で何度も繰り返し映像が流されているよ。それにしても、
>フローラ曹長、もしかしてケイスケのこと好きだったの!?いわゆるツンデレだったのか!?
>まぁ、そういうツンデレキャラって言うのは
>実際自身からはっきり言わないと相手に好きだということは8割がた伝わらないけどな。
>むしろ、その態度は相手に嫌っているのだという風に勘違いされる結果となるだろう。
>ま、やっぱりなのはさんみたいに恋一直線みたいな感じが私は好きですね。
>そして、自分のものが相手にとられないようにマーキングと。次回も楽しみにしています!

いえ純粋にケイスケの事は嫌ってますよ?
ただそれ自体がなのはを煽っていることには気がつかないエンドレスエイト。


>※鬼丸さんへ
>なのはIFバージョンスリー読みました♪久しぶりに可愛いなのはを見れて感動しました(泣)
>なのは分は補給出来たので次はデート話ではやて分を(笑)

読んでくれてあざーす。
次の話がこんなんで申し訳ないです。


>※鬼丸さんへ 
>ケイスケIF待ってましたー!ヴィヴィオ…君はほんとに変わらないね、そのままの君でいて(性格的な意味で)
>あとフローラ曹長はこのケイスケのなのはに対しての直球な告白に胸打たれたから
>なのはの機嫌が悪くなるようなアピールをしだしたんでしょうか?w

ヴィヴィオは変わってないよ、ほんとだよ嘘じゃないよwww
フローラは負のデフレスパイラルですがな。



>※鬼丸さんへ
>嫉妬するなのはが可愛すぐるwwwwwやはりにゃーにゃー言ってるから猫属性かwww

なのは属性だ!!


>※鬼丸さんへ 
>いつの間にかほんとになのはがメインになっちゃってますねぇ…… そろそろIF
>取っちゃっていいんじゃないかなぁ……とおもうのでした。

ま、まだだ、まだ終らんよ!!







追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。

作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。