お、落ち着け、落ち着け。

心臓がバクバクして頭が混乱する、一歩歩くのに一分くらいかかってるんじゃないか。

かと思えば一秒で三歩くらい歩いてる気もする。

頭の中はグチャグチャで何が何なのか判らない。

「フェイトさん、同じ手足が出てますよ」

「え……す、すみません!!」

「あやまるような事じゃないんだけど、落ち着いてね」

うう、いかにも困ったような顔をされてしまった。

ゴム引きの靴底が床に擦れるキュキュッと鳴る音が随分大きく聞こえる。

同じような部屋が並び、その中からは何十人もの人の話す声が聞こえて。

控えめに言って真雪とリスティがお酒を飲んだ時位騒がしい。

コツンと何かが当たり、見上げると前を歩く人は足を止めていた。

つまりここが……





「いい? フェイトさん」

「は、はい!!」

何が『いい』なんだろう、ガラガラと引き戸が開き、視線がグワって私に集まる。

えっとえっとえっと……儀式魔法の呪文は――って、雷落としてどうするの私!?

えっとえっとえっと……あ……

視線を向ける中に、別の意思が混じってる。

三つの視線は、私に対して優しく、見守るように向けられて。

声が聞こえ無くても、念話で無くても分かる。

頑張れと、ようこそって歓迎の。

……うん、大丈夫。

相変わらず心臓は全力疾走気味、気を抜くとあっと言う間に顔がほてる。

一段高い足場に上がるスロープを登り、全ての視線に向かい合い。

「今日からみんなのお友達になるフェイトさんです。みんな、仲良くお勉強して下さい」

「フェイト・テスタロッサです、よろしくお願いします」









           HOME_REHOME 14話








「はーやっと一息付けたわ」

「凄かったねー」

あう、疲れた。

心なしか髪の毛にも元気が無い気がする。

「大丈夫? フェイトちゃん」

そういって髪を梳いてくれるなのは、これは気持ちいい……

お昼休みって時間、なのは達がいつもご飯を食べるって場所。

学校の屋上のベンチ、空がすっきり見えて気持ちいい……

とにかく休み時間の度に凄かった、クラスの大半の人が私の席に集まって話を聞くのだ。

こんな経験初めてだし、もうすぐにパニックになってしまって。









「ありがとう、アリサ」

アリサが順番とかつけてくれたから何とかできた、私だけだと混乱して変なこと言ったかも。

「ふん、当然よ、あたしに事情を教えておいてよかったでしょ」

「うん、本当にありがとうアリサ」

「うっ……だ、だから当然だって」

? 何故アリサが焦るのだろうか、なのは達は気にしないでいいと言うし。

判らない。

「あー、取り合えずご飯食べちゃわない?お昼休みが終わっちゃうし」

なのはの意見に反対なんかない、それどころか待ち遠しくてたまらない。

お弁当、そうお弁当だ。

作ってくれたのは勿論耕介、雪児曰くめっちゃ美味い!!

まあ、家族の事になると雪児は結構大袈裟だけど美味しいのは毎日食べてるから分かる。

三人もお弁当の包みを解いて蓋を開けた、どれも色んな色がついた美味しそうなお弁当だ。

私のは……箱の半分にご飯と梅干し、ポテトサラダにから揚げ、キュウリの漬物に卵焼き。

後薄いトンカツも入ってる。









「フェイトちゃんのお弁当、美味しそう」

「管理人さんが作ってくれるんだっけ」

「うん、でもみんなも美味しそうだよ」

なのはのはお母さんが、すずかはノエルってメイドさんが。

アリサは執事さんがいるような家だから料理人さんかと思ったら。

「うちもママよ、パパなんか完全に餌付けされてるし」

意外だった、何でも料理人さんもいるそうだが、アリサのお母さんはその人達に習って作るそうだ。








なのはのお母さんもお店をやってるだけあって料理上手。

三人と少しだけ交換して食べたけど、すずかのも凄く美味しくて。

耕介のはそれらと比べてもいい位美味しかった。

「んー管理人さんって洋食得意なの? 味がそんな感じ」

「えっと、確か実家が洋食屋さんだって言ってた」

それが分かるアリサも凄いと思う。

でもそんな中に入って負けないアリサのお母さんも凄いんじゃないだろうか。

そういえば愛も上手なのだろうか、少し興味が沸く。







△△△△△△△





「は!?」

「ど、どうした雪児!?」

「いや、唐突にフェイトちゃんが死亡フラグを設立したような」

勘違いだといいのだが……

おっといけない、飯の最中だ。

いつもとーちゃん美味しいお弁当をありがとう。

から揚げの鳥、お前は味わって食べるから成仏してね。

さあ、我が箸はから揚げに――カツ――








から揚げに――カツ――








視点を上げる。

向かいの席の竹下の口が上下に。

弁当箱には無い、から揚げがあるべき場所は空だ、から揚げだけに。

「てめえ!! 竹下!!」

「いいのか、油断は命を縮めるぜ」

な、何だと!? 弁当箱の中、メインとも言うべきカツ。

その姿は無惨に半ばちぎれて。

「す、杉並、お前まで」

モグモグと無表情を貼付けている奴だが、口元にこびりつく衣が。

「すまんな雪児、君はいいお友達だが、お父様の料理が悪いのだよ」

お、オノレ!? ならば遠慮はいらぬな、杉並、竹下の弁当、焼肉弁当と海苔弁当の海老と肉を。







「ま、槙原!?」

「何という!! お前に慈悲は無いのか!!」

うるへーお前らが言うことか!!

モグモグと動く口に憎悪の視線をよこす奴らに鼻で笑ってやる。

ザマァ。







それに反応したのか、竹下と杉並から妙な威圧感が漂ってきた。

その力は背後に妙な像が見える程に、上等だ。

残りの弁当を一気に口に、一粒たりとも貴重なご飯を残すわけにはいかない。

二人のボルテージがマックスに至る瞬間、最後の一粒を口に放り込み。

「上等だちくしょー!!」

仁義無き闘いは幕を開けた。











後にこの戦争を目撃した人々はこう語った。

「阿呆や」








尚、この件は第三者(唯子ちゃん投げ)によって鎮圧された。







△△△△△△△










放課後、全ての授業が終わった後の余暇をそういうらしい。

この後は、クラブに入った人はクラブに、遊びに行く人は一旦帰ってから。

なのは達は塾って勉強を教えてくれるところに所属するらしい。

何を勉強してるのかと聞いたら苦笑いされた、何かおかしい事を聞いただろうか?

「うーん、おかしいというか」

「学校の勉強の予習と復習なんだ」

「? 先生に教えてってやればいいのに」

不思議だ、そう答えると同意はしてくれたが、そういうものだと思ってくれとの事。











アリサ、すずかと別れるとなのはと二人になってしまった。

帰ってもいいのだけど、せっかくだからなのはとも遊びたい。

「だめ?」

「ううん、私もフェイトちゃんと遊びたいよ」

よかった、そうなるとどうしようかって話し合い。

そういえばもう一人あてがあったな、電話してみよう。









△△△△△△△












「ザフィーラ、頼めるか」

「承知した」

蒼き狼たる盾の守護獣ザフィーラ、例え守護獣の枠に入ろうと野生の気殺は健在だ。

いざと言うとき、武器に頼らず戦闘可能、護衛という面においては最優と言っていいだろう。






「シャマルは射程内に入り次第結界を張れ。言うまでも無いが」

「機密性優先ね」

湖の騎士シャマル。悠久の過去から私達ヴォルケンリッターの後方支援を司る。

彼女がいなければ私達はとうの昔に滅んでいたことだろう。







カナズチだが。

湖の騎士だがカナズチだが。









「ヴィータ、お前は主の側を離れるな」

「ああ、言われるまでもねー」

鉄槌の騎士ヴィータ。外見こそ幼いが私、剣の騎士シグナムと共にヴォルケンリッターのツートップを担う一流の騎士。

近接一本槍な私に比べ、オールラウンドに力を発揮、特に堅さに至っては私をも上回る。










「よし、私がまず様子を見る、何はともあれ主の身を最優先だ」

闇の書、管理局が言うところのロストロギア、それにはあるシステムが付随している。

守護騎士システム。

プログラムとしてベルカの騎士を保存し、マスターの守護に当たらせる。

我々ヴォルケンリッターはその守護騎士であり、当代の闇の書の主である八神はやてを守護するもの。

ここ、地球において転生を果たした闇の書が選んだ主。

あの方は闇の書の完成を望まれなかった。

魔法が無い文明であるからか、平和な国に生まれ育ったからか。

主はやてが私達に望んだのは「家族」。

正直な話、私達は戸惑った。

数百年に渡り、闘い続けてきたのだ。唐突にそんな事を望まれたのだから。

しかし、主は本気でそれを望んでおられた。










争わない、傷つけ無くてもよい生活。

私本人としては少々緊張感が足りないというか、物足りないというか。

そんな生活ではあるが、かつて無い静かな日常。

一番に馴染んだのはシャマル、続けてヴィータ。

ザフィーラは……長年の仲間ながらよく分からん。










ともかく、今では皆、主を慕っているのは間違いない。

主だからではなく、一人の八神はやてとして。

しかし。

「なぁシャマルー、本当に魔導師だったのかよ」

「間違いないって言ってるでしょ、どうして信じてくれないのよー」

「仕方があるまい、このような管理外世界では」

そう、魔導師。

主はやてが知り合ったという友達、シャマルが言うには主と同年代程度の年齢らしい。

その少女は、先ほど主に対して来訪を告げていた。









我々の過去、闇の書の蒐集活動はリンカーコアを闇の書に食わせる事で成立する。

そのために幾多の魔導師と闘ってきた、その中には管理局の魔導師も少なくない。

魔導師を見かけたからといって管理局関係者だと断定するのは早計かもしれん。

しかし、次元世界そのものを認識していない世界、管理外世界に在住している以上関係者である可能性は高い。

もしも管理局関係者だとしたら我々に対する心象は最悪と言っていいだろう。

管理局からすれば突然襲い掛かる暴漢のようなものだ、迷惑この上ないだろう。

現在の主も過去の主達と同じく思われる可能性は十分にある、なるべく隠れるに越した事は無い。

「シグナム、範囲内に魔導師が……二人!?」










な、なんだと!?

く、仲間を連れてきたと言うのか!!

やはり管理局と繋がりがあるのか、いやまだ早計だ。

単に仲間を連れてきただけの可能性は。

やはり主だけでも避難を

ピンポーン

フェイトちゃんかーちとまってなー。

「いけません主!!」

不自由な足の代わりを勤める車椅子、初めての友人を待ちきれないのか玄関で待ち構えていたのか。

迂闊、ご心配をかけまいと話さなかったのが裏目に出た。

急ぎ向かわねば、いざとなればこの身を盾に!!











「こんにちは〜」

「お、お邪魔します」

「いらっしゃいフェイトちゃん、えっと」

「高町なのはです、よろしく」

な、何という……高町とやらの魔力は尋常ではない。

フェイトという金髪の少女もリミッターが掛かっているような違和感がある。

だというのに海の武装隊に勝るとも劣らない。

管理外世界に何故このような……

主といい眼前の二人といい、どうなっているのだ。

観察する高町の表情に緊張の色が浮かぶ、ヴィータ達の空気も慣れ親しんだのものに。

待機状態のレヴァンティンの固い手応えが忘れかけた戦場の空気を思い出させる。

「フェイトちゃん!!」

来るか!?

「じゃあ何して遊ぶ?」

「取り合えず私の部屋行かん?お茶出すから」







…………








「あ、みんな丁度いいから紹介するなシグナムにシャマルにヴィータにザフィーラや」

「こんにちは、シャマルさんはこの間お会いしましたよね」

「え、ええ。こんにちは……」






………






「ほな上がって、いやー友達を上げるなんて久しぶりやわー」

「はは、私はなのはの部屋以外初めてだよ」

二人は談笑しながら私とすれ違い……って。

……何と声をかけたらいいのだ。









まさか、自分達を気にしなくていいのかなどと言い出すのか?

いやいやいや、有り得ん、今まで闇の書に宿って数百年ここまで対応に迷った事は無い。

「フェ、フェイトちゃん、この人たち」

高町の発言にもフェイトはポカンとしている、何を言っているのかが分からないといった風に。

シャマル達にも怪訝な雰囲気が伝染を始める。

なんだこのカオスな空気は、さっきまで我々はもっと真面目な事を話していたはずだ。

ほんの少しだけ、やっと本来の働きが出来ると考えた不敬が悪かったのか?










「? どうかしたの。なのは」

「シグナム達もどうしたん?」

「魔導師!! 魔導師でしょ!?」

いや騎士なんだが、そう訂正したいが言葉を挟めない、というより何を言ったらいいのか判断が……

「そうだね」

「ってそうじゃなくって〜〜」

額に指を置き、何やら悩んでいるようだ。

むしろこちらが悩みたいのだが。

熟考の末に











「珍しいの? 魔導師って」

色々ぶっ飛んだ発言が飛び出した。






△△△△△△△






そっかあ、ここって管理外世界なんだよね。

シグナム達がいたら驚かなくちゃいけないんだ。

私としては、いるんだ〜ぐらいに思っていたよ。

何しろ寮には幽霊な御架月に、狐の久遠に猫な美緒。

この間遊びに来たさくらは狼だし。

羽の生える人も三人ほどいるし。

「てっきり魔導師くらい驚くようなものじゃないかと」

移動したリビング、シグナムって人達は止まってるしなのはも。

「うう、フェイトちゃんが雪児さんに侵食されてる〜〜」

なんて、テーブルに頭を当てている。









だって……この町にはなのはにユーノ、この間まではクロノ達アースラの人たち。

こんなに沢山いたんだから今更魔導師が何人か増えたって珍しくもなんともないと思うんだけどなあ。

「いやーびっくりしたわ、外にはシグナム達みたいなの沢山おるん?」

「はやてちゃん、違う……のかなあ?」

私がおかしいのかなあってなのはは遠くを見つめるようになってしまった。

わ、私何か間違っていたのだろうか……










シグナム達の要求は管理局には自分達の事を秘密にしてくれ。

簡単に言うとそういう事だった、日記に書かないでデバイスにはお願いして記録を消去。

「これでいいですか?」

「すまんな」

なんでもはやては魔法関連とか、雪児たちみたいな不思議なのは知らなかったそうだ。

「なんやーそんなんやったらシグナム達を紹介……する人いなかったんや……」

寂しいなあってはやてが車椅子の上で器用に打ちひしがれる。

orzって言うんだっけ? 合ってるか自信ないけど。

でもそう考えると不思議だ、偶然最初の友達が私で、連れて来たのがなのは何て。

運命っていう、言葉、私の名前でもあるそれを信じてしまいそう。











友達か……正直私もなのはが初めての友達だ。

アルフやリニス、それに母さん、私の世界はそれだけだった。

それが、この世界に来てから友達に、新しい家に。

母さんともようやく少しだけど話すことができた。

まるで、急に世界が開けてきたみたい。

はやては、学校に通っていない、身体の不調が出てから休学中。

もしも私にアルフも、魔法の先生で母さんの使い魔だったリニスもいなければ……

辛いの一言では済まない。だけれどそれしか言いようが無いだろう。









「わたしな、ずっと一人でおって……シグナム達が来てほんま楽しいんよ」

「うん、分かるよ」

「私も」

アリシアの記憶にある、まだ使い魔にもなってないリニスが来る前の記憶。

父さんはいなかったし、母さんは忙しかったから。

ずっと一人ぼっち、母さんはご飯を作ったらすぐに仕事に戻って。

ああ、駄目だ。私はどうしようも無くはやてに味方したくなってる。

きっとなのはもだ、話してはいないけど痛いくらい気持ちを感じる。

人に言えば大した事無いと言われるかもしれない

だけど……








耕介、愛、雪児、リスティ、真雪、さとみ、那美、久遠。

アルフ、ユーノ、アリサ、すずか。

――なのは。






寂しいは消せない。だけど、新しい楽しいなら見つかると思う。

みんなに貰った私の今、だから今度は……








△△△△△△△










駅前というのは大抵栄える。

駅を使う人が必ず足を運ぶからだ。

人が増えればお店が出来て、お店が出来れば人が来る。

そう上手くいかない場合もあるけど、ここ海鳴駅は上手くいったパターンだ。

駅と一体のデパートには大抵の物が売っていて、食材関係が揃った商店街がすぐ近くに。

大きい買い物はデパートに、日々の買い物は商店街に。

割りと大きいけど落ち着いたベッドタウン。こんな評価が適当だと思う。









「とまあ、オレらが遊ぶのは大抵駅前なのだよ」

「はあ」

身長の小さな年下の少年、ユーノ・スクライア。

華奢な身体と優しげな風貌でどちらかと言うと中性的な外見をした少年。

「遅いなアイツラ……」

「あのー雪児さん……何で僕を呼んだんです?」

あれ? 話して無かったっけ?

学校終わって美由希さんと那美さんと高町家に、ユーノを美由希さんから受けとって。






「何にも説明受けてません……」

……そういえばそうだっけ。







「ほら、フェイトちゃんとなのはちゃんが組んでてユーノ寂しいかなーって」

「そ、そうだったんですか、すみません気を使わせて……」

いちいち頭を下げる、相変わらず真面目だな、ユーノは。

こっちはそんな気を使わなくていいのに。

竹下と杉並と組んでブラブラしようと思っていたのだが、待ち合わせを30分程過ぎてる。

30分、たかがというな、中学生の放課後の30分は地球より重いのだ。

「何してんだあいつら……」

「あ、あれじゃないんですか?」

駅のロータリーの先、道路を挟んで手を振っている人、竹下だ。

「おおぃ」

振りながら来るなよ恥ずかしいから。

そのまま道に一歩踏み出した竹下が。









撥ねられた。









「ちょ!?」

派手に跳んだ、宙に二メートルくらい飛び上がり、そのまま頭から落下。

道路には血が模様のように拡がり……










「ゆ、雪児さん……」

「ああ……」

轢き逃げだな、これは、かなりスピードが出ていたはずだ。普通なら即死だ。

アスファルトに削られた制服はボロボロで、そこから擦りむいた傷が覗いている








「あー死ぬかと思った」

「どーする、救急車呼ぶ?」

「いや、また悪戯とか言われるからいいや」

ん? ユーノが竹下を有り得ないもののように。

ああ、ヤバ周囲の視線が集まってる。

フリーズしてるユーノを抱えて路地裏にダッシュ。





















「相変わらず何故か不死身だなお前」

「いやー照れるぜ」

歯を光らせるな、斜め四十五度でこっち向くな。

全然似合って無いから。

「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!!」

焦り気味に竹下の頭部を診察するユーノの表情、それが心配から驚愕にシフトする。

慣れた手つきで頭や擦りむいたはずの手足を診察して。

「何で無傷……いや服破けましたよね? 確かに血も出ましたよね!?」

竹下の衣服はいつものようにくたびれている、ただそれだけ。

流れた筈の血も、かさぶたも、何一つ痕跡が無い。

諦めろユーノ、こいつはこういう生物として認識するんだ。

何しろオレと杉並やフェイフェイと晶先輩の喧嘩に巻き込まれても無傷なんだから。

「なあ、頻繁に激突してるのに食パン加えた転校生とぶつからないのは何故だと思う?」

「そりゃあお前、車が人間になる訳ねーべ」

「いいやおれは諦めない、何時かおれに運命の女の子が降ってくるまで!! 車が化けても化!!」

「その何時かは一万年と二千年だな分かるよ」

「死んでるわ!!」

またまたそんな冗談を。











「……」

ユーノ、どうした?そんな自分の常識を木っ端微塵にされたような顔をして。

「くそーおれもフラグほしー!!」

竹下はガッついてるのが嫌らしいがな。

本当杉並と何で友達出来るのだろうか。

「そういや杉並は?」

「……忘れてた」


















路地裏で不良に絡まれた女の子を助けてた〜?

「は、早く行きましょう!!」

「落ち着けユーノ、何時もの事だ」

またフラグか、奴の引きはどうなっているんだ……

「そうだ急ぐぞ!!」

竹下……お前……

「一応言って置くがお前に間違ってフラグが立ったりはしないぞ」

「何を言うんだ友人を見捨てる訳にはいかないだろ」

……










何か悪いものでも食ったか竹下……

「竹下……」

「竹下さん……」

ああ、ユーノが騙されている!?

オレに対してはしょうがないなこの人って視線で竹下になんて友情に厚い人だって見てる。

いかん、早く幻想を壊してやらないと……






……待てよ……











「竹下よ」

「何だ、時間は無いぞ、今にも仁は」

「ユーノは男だ」

……










「ち、早く言えよ」

だあああとユーノが倒れてしまう、よかった、早めに気が付いて。

「あーじゃあ仁とこゆっくり行こうぜ」

どうせ加勢いらないしなー。

ほらユーノ何時までこけてるんだ、早く立て。

頭の上にトンボが飛ぶようにほうけるユーノ、それを持ち上げ杉並のとこに。

アスファルトのクレーターに沈む世紀末にいそうな不良の図。

その中心で見知らぬ美少女に抱きつかれてるとこでした。

やっぱコイツ死ねばいいのに。

「……いやここまで可愛ければ……」

訂正、コイツラ死ぬ。




後書き

ということでヴォルケンとエンカウントしました。
しかし寮で揉まれたフェイトに隙は無かったwww
雪児は何時ものように空気化進行中であります。
大丈夫いつか活躍する主役です、多分……




拍手返信

>※鬼丸さんへ 
>>他人の幸福砒素の味 
>爆笑しました。

懐かしいネタでした……
というかあのクラスはえらい好きですよ。



>※鬼丸さんへ 
>フェイトちゃんのネガティブスパイラルは相変わらず面白いですねw

どうもです、しかし少し少し毒されていくフェイトちゃんでした。



>※鬼丸さんへ
>とらハはやったことないのでHOME_REHOME を最初は楽しめないと思っていましたが、読んでみたら大変楽しめました。
>WIKI程度の知識しかありませんが、これからも楽しみにしております。

とらハファンでなくても読めるようにはしているつもりではありますがそう言っていただけると安心できます。
楽しんでいただいてありがとうございます。



>※鬼丸さんへ耕介はこんなにシリアス出来るのに何故に雪児は出来ない…。
>誰に似たのかな?愛さん?はっ!まさかさざなみの住人達に洗脳された!?(笑)

両方が理由とだけ言っておきましょうww
いろんな意味で寮の遺伝子を受け継いでいる雪児くんでした。



>※鬼丸さんへ いいですね。決して表立って目立つわけではないですが、
>耕介の想い、と考えがすごく大好きです。とらハ2の耕介の一歩引いたところから見守っていくスタンスが、
>すごく共感できました。

耕介はある意味完成しているキャラですから。
引いた位置から個人を尊重してお手伝いをする人として出しました。



※鬼丸さんへ原作キャラとラブラブになるだけじゃない、こういう位置づけを待ってました。

いくらなんでもロリコンジャイアント過ぎるでしょ耕介はwwww
こんな立ち位置もできるから耕介のいる寮を出したのですよ。



> ※鬼丸さんへフェイトとプレシアが切なすぎる…別れが来たとしても何かしらの救いがあってほしい。
>さざなみ寮の人達に期待します。

どうなるかは今後で書いていきます。
ただ寮の人たちは勝手に不幸ぶってエンドを迎えるのは嫌いな人がいるのです。



2009クリスマスSSに対しての返信です。

>※鬼丸さんへ これってヴィヴィオENDなんじゃ・・・

いいえ、あくまで誰ともくっついてない翌年でございます。
ヴィヴィオはよく懐いております。



>※鬼丸さんへGWをインフルエンザで寝込んでた私が通りますよっと…ケイスケの見舞いに来たのはヴィヴィオだけですか。
>てっきり、なのはママとヴィヴィオへのプレゼントはこれにサインでいいの、つ婚姻届 なオチかと思っていました。

いやいやいや、さすがになのはさんがサインしてないと無効ですぜ!?
いやうちのVIVIOなら執筆を完全コピーして……



>※鬼丸さんへ今年も来ましたクリスマスというわけで、鬼丸さんの「すでに来年の話!? 
>というか来年もケイスケ書いてるんですか自分!?」という台詞が懐かしいですねwということで今回も、
>次は是非なのはとの話でヴィヴィオに弟か妹をお願いします等と言ってみる。

いつの間にか書いていました……
というか本当になのは人気だ……
一昨年くらいだと魔王魔王と弄られていたはずなのに



>※鬼丸さんへ
>キャー!?ヴィヴィオが何だか黒いわー!?!?だがそこがまた良し!!(マテ
>フェイトさん暴走し過ぎってレヴェルじゃねえwwwあんた何口走ってるよwwww?

いいのか黒くて!?
フェイトさんの暴走は久しぶり過ぎてついつい……







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