無機質な艦のブリッジ、そこの空間ディスプレイに映っているのは学校。
それをエイミィが見ているのを咎める気は無い。
今頃フェイトの編入試験が学園内で行われている事だろう。
彼女には監視とリミッターが掛けられている。これは本人も同意している事だ。
とはいえ、実際エイミィがたまに様子を見るだけで、要所要所で監視停止だってしてる。
さて、僕はクロノはやるべき事はある。なるべく公開したく無い資料作製だが……
槙原雪児
現地能力名ＨＧＳ高機能性遺伝子障害Ｄ―101
能力は念動、伝心、引寄せ、これは同様の能力者が複数確認されている。
能力使用時に背部から羽が生えるが、これはイメージ体なので触れられないらしい。
第９７管理外世界において三十年ほど前から確認された疾患。
一般的には単なる遺伝子疾患として発表、特殊能力は研究家、親族、一部社会的地位を持つもの以外には秘蔵されている。
これは彼等に魔女狩りのような目に会わさないための配慮であり。
現地世界出身のギル・グレアム提督によれば、社会的地位と言っても人格優先で打ち明けるかは判断されるそうだ。
我々の魔法との最大の違いは、我々は学問で彼等は手足の延長であることだろう。
使用に関して、何故出来るか？ ではなく出来るから出来る。
そこには手足を使うのに疑問を持たないように、力を使う事に疑問はない。
だが時空管理局から見た彼等の最大の特長は、虚数空間内の能力使用と言わざるを得ない。
っと、ここまでまとめたところで少し息を付いた。
そう、虚数空間内において雪児は飛んだ。これは僕達魔法文明からすると有り得ない事なんだ。
下手に公開でもされれば善くないものをこの世界に呼び寄せかねない。だから狙われる可能性を即座に提示できるようにしておく。
海の執務官ならこういった情報は幾つか溜め込むものだそうだ。
「お、クロノ君も休憩？」
後ろから急に首を突っ込んで来たエイミィ。
「フェイトの試験、終わったのか、どうだ？」
「あー、問題より問題文が大変そうだったねー」
なるほど、確か彼女の思考はミッド語が基本だったな。
思考というやつは言葉で決まる、頭の中では言葉を使って考えるからだ。
通常会話なら多少の声の雰囲気とかでも分かるだろうが、テスト問題ともなれば細かい記述で点を落とす事も……
「うーん、ひらがなって字が多かったね、回答に」
つまりこうか、名前の部分に「ふえいとてすたろっさ」か。
まあ仕方ないと言えば仕方ないのだろう。
まだこれから色々慣れていく時期だ、焦るような状態ではない。
「気になるなら見に行けばいいじゃない」
「何を言ってるんだ、仕事中だろ」
そうだ、当分有り得ないが今後PT事件と呼称される本事件の裁判資料、艦内定期チェック、前の事件のまとめ、戦闘訓練他……
いくら時間があっても足りないのだから。
よし、続きをやるか。と思ったら通信が来た事をS2Uが教えてくれ――切断。
よし、続きを――切断。
よし今後こそ――「はーいエイミィさんでーす」「あ、雪児っすクロ助いますー？」
エイミィー！！
「なんだ雪児、今日は」
背後で友達は大切にしないといけないぞー、等と囁くエイミィを黙らせる。
大体コイツなんでS2U直通アドレスを知ってるんだ。
「ああクロノか、ヒドいぞいきなり着信切るなんて、緊急だったらどうすんだ」
む……それを言われると……確かに短慮だったかもしれない。
「済まない、じゃあ何の用が」
「暇だから来い」
…………切断、着信拒否。
「はーいコチラアースラでーす、クロノくんに変わりまーす」
エイミィーー！！
「ヒドいぞ親友いきなり切るなんて」
「誰が親友だ！！ 大体僕は仕事中で！！」
「大丈夫だって、俺もホラ宿題してないぞ心友」
勝手にランクを上げるな！！ というかやれよ宿題！！
「宿題は終わったらやるって、まあ来いよお前好みのちっちゃい女の子もいるから」
「なんだそれ！！ 僕の好みは……」
エイミィの大きくなった耳が……
よし落ち着いて反論を「えーエイミィがクロノくんの好みはなのはちゃんみたいな「えー！！」」
いるのか！？ というかエイミィ犯人か！！
「クククククロノくん！？」
「ご、誤解だ！！ これはエイミィが勝手に言ってるだけで」
「なのはちゃんは可愛くないって」
ちがーう、そうは言ってないだろーーー！！
「はあ、もういい、行けばいいんだろ行けば……」
誤解とかも面向かった方が解けるだろまったく……
後ろでハンカチ噛んでるエイミィ、もうほっとくからな。
転送ゲート起動目標……
……雪児の頭の上で。
足元でギャーと叫ぶ声が心地よい、執務官にあるまじきセリフだが……
「ざまあみろ」
HOME_REHOME １１話
……はあ……
……はあ……
うーん、うーん。
「くーん」
フェイトだいじょうぶ？ と言っているのだろうか？
鞄の中から頭を出した久遠の頭を撫でておく。
……はあ……
「なんなんだよフェイトちゃんは……」
だって……試験が……
「はあ……自信ないよー」
聖祥の校門前、雪児がお休みの日曜日だから久遠と出迎えてくれた。
だけど……はあ……
「そんなに分かんなかったの？」
「ううん、大体埋めたよ」
特に算数はすぐに終わったし。
他の教科も英語はミッド語に似てるし。
「じゃあなんで」
「それでも不安なんだよ！！」
間違ってたらどうしようとか、誤字とか誤字とか誤字とか……
もしもそれで……
（そっか、フェイトちゃんと一緒に学校……行きたかったな……）
「なのはー！！ ごめんなさい！！ ごめんなさい！！」
「アホか君は」
頭殴った……ヒドいよ雪児……
非難の視線で抗議しても何にも堪えてないみたいに歩いて行っちゃう。
あれ？ 久遠は？
いつの間にか雪児の頭に乗ってる。
そのままドンドン進んで――ま、待ってよー。
バスに乗ってもやっぱり自信がない、あ、名前書いたっけ？
――覚えて無い――
「やっぱりダメだー」
「おーい降りるぞー」
「くん」
ううう、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
涙が出て来ちゃいそう、目の前が滲んで。
なのはの幻影まで……
「あー、雪児さんフェイトちゃん泣かせたー！！」
「いや勝手な妄想で自爆しただけだ」
「ちょ、ちょっと平気なのその子！？」
「……」
あれ？……なのは？
つい足が後ろを向いてしまう、なのはに合わせる顔が……
「ごめ――！？」
アレ？足が地面から離れて、え？ え？ え？
「逃げるなよ……」
雪児！？ 襟、襟持たないで、心の準備がー！！
「落ち着こう、マジで」
△△△
何故まあそこまでネガティブぶっちぎりで妄想するんだこの子は……
裏山の野良猫みたいに首根っこ掴んでなのはちゃん達に合流させる。
パタパタ足を動かすが抵抗にならん。
なのはちゃん達を促して寮に戻る。
何がどうしたのかと三人に教えると。
「馬鹿じゃないの！！ ちょっと、フェイトだっけ！！ もう終わっちゃったんだから考えても無駄よ！！」
うわこの子怖い……
初対面だよな？ ここまでよくズケズケと……
「えっと……」
「ル○ズだっけ？」
「誰よそれ！！ アリサ、アリサ・バニングス！！ 危険なネタは止めなさいよ！！」
なんと電波なツッコミだろうか、まあこんな話だから問題なかろう。
リビングに全員を上げてお茶だけは用意する。
なのはちゃん達はフェイトちゃんのテストの見直しと採点中。
しかし、居辛いなあ、小学生だけだし。
さて、これ以上ここに混じっててもな、リビングは譲って部屋で寝るか……
久遠は見物するみたいでベランダに陣取っている。
はて、なんか忘れて無いだろうか？
部屋のドアをガチャっと開けると背後に気配が。
ここに来てからずっと無言だった子、黒く長い髪にヘアバンドを付けた大人しそうな子。
忍さんの妹である月村すずかちゃんがここにいた。
「……」
いや、いたと言うよりジッとオレを見ていた。
そういやなんか知らんが逃げられていたのを思い出す。
忍さんは理由を知ってるらしいが教えてくれなかったんだよな。
「えっと……」
「本当に覚えて無いんですか？」
覚えて、か。
どうすれば言いのだろうか？ ハッキリ言えば会った事は覚えてるが何をしたのかは覚えて無い。
「秘密、とか言っても思い出しません？」
秘密ね、オレの秘密つーと……
「これ？」
リアーフィン、これ絡みの事だよな？
真っ黒い羽が背中に生える、それを見るすずかちゃんは期待するように。
いや、でもごめん……
「えっと、これがどうしたんだっけ？」
ぶっちゃけばらす事は大した事ねーんだよオレ！！
後はなんだ？すずかちゃん本人の夜の一族云々か？
人には話したりしてねーよオレ。
「……もういいです……」
ペタペタとしょげた感じに三人のところに戻るすずかちゃん。
いつの間にか久遠が足元に来ていた。
「なあ久遠……」
「くーん」
「これは一応フォローしないといけないのかな？」
「くん」
だよなー、小学生の遊びに加わる中学生……
ああ……すっげー嫌な響き。
人数はオレを加えると五人、つまり奇数。
取りあえず、友達を呼んで混じっていいかを聞いた。
フェイトがアッサリとＯＫを出したのにはかなり感謝する。
取りあえずクロノでいいや、携帯でヤツを呼びだす。
後はまあ、頭の上に出るのばかりは予想外です。
△△△
……ど、どうしたらいいんだろう？
すずかちゃんと雪児さんに何かあるのは何となく察してたけど。
それが何かトラブルを起こしたのも分かる。
それでもフェイトちゃん、すずかちゃんが元気になるならと思った。
雪児さんは何だかんだとフェイトちゃんとも仲良しだから、むしろ参加して欲しいんだけど。
そこで端数を補うためにもう一人呼ぶのもいいんだけど……
取りあえず二人の電話の会話は頭の隅に置いておきたい。
な、なんでよりにもよって人目に付く所で魔法を……
「あれは……」
アリサちゃんの呟きが良く聞こえます。
余りの事に考えがまとまりません。
クロノくんも顔を真っ青にして、雪児さんも。
「早くどけー」
だああああ。
「なんでまだマイペースなんですかー！！」
「え？なのはが何でツッコミ入れるの？」
あ……
「あれ？ なのはちゃんの友達だよな？」
はい？
「何で話してねーの？」
いや、そんな連絡漏れを聞くような軽さで聞かれても……
魔法の事は秘密ですって話してたじゃないですか。
「あの、そこの人「クロノな」クロノさん」
苦虫を噛み潰したように悔しさに滲むクロノくん、執務官って仕事をしてるクロノくんからしたら痛恨の失敗なんでしょう。
「リスティさんのお知り合いですか？」
……は？
「あれ？ ねーちゃん知ってんの？」
「ねーちゃんって……そう言えば名字が」
「槙原雪児な」
……なんだろう、なんなんだろう。
この町の住人で私だけハブされてるような錯覚は……
いいもん、フェイトちゃんとクロノくんが仲間だもん！！
「くーん」
くーちゃんの声、何故か私の胸には空しく響きます……
△△△
「まあアレだ、秘密の一つや二つ大した事無いよね」
うんうん、大した事無い大した事無い。
「多分そう言えるのって、雪児だからだと思うよ？」
フェイトちゃんからツッコミ入れられるが気にしない気にしない。
細かい事はいいんだよ。
いや、本音を言うと細かいどころかそれが何？ってくらいしか考えて無いけど。
いや、一応知ってはいるんだ、秘密にするくらいなんだから気にしてるって。
だけどさ……
そんなの持ってる人ばっかりな環境じゃあなあ！！
「僕、悪くない、社会が悪い」
「いや社会関係無いだろ」
ふっ……まったく持ってその通り！！
「あーもー、いい加減にしなさいよ！！ グダグタグダグタ、展開が進まないじゃない！！」
ちょ、アリサちゃんなんつー事を！？
取りあえず、魔法関係の説明。
クロノはそっちの世界の知り合いで、フェイトはそっちなんだけど。
「なのはちゃんに惚れ込んでうちの寮に」
「「……」」
アリサちゃんとすずかちゃんは五メートルほど平行移動。
「雪児さーん……」
なのはちゃんのいい加減にしてくれと、諦めと抗議が半々な声。
しかしフェイトちゃんはよく分かって無いぜ。
「魔法ね、あたしも使える？」
ああ、是非とも炎の翼とか付けて欲しいね、アリサちゃんには。
武器は刀だな、何となく……
「……一応、管理外世界で不用意な魔法の教授は禁止されている、受け入れられないな」
あらら、クロノが明確にダメだししてしまった。
だけどそれに満足するタイプに見えないのがアリサちゃん。
「なんでよ、なのはは良くて私はダメな訳！？」
「やめた方がいいよアリサちゃん……」
「すずか？」
はて？ その空気に水を指したのが意外な人物……でも無いか。
すずかちゃん家がアレだからな。
うん。
「流石、太○炉隠してる家の子は言う事違う」
「なんでそうなるんですか！？」
ち、違ったのか？ 思いっきり心からってツッコミを返して来たのが意外。
「……でもチョッピリ否定出来ないでしょ」
「……うちの電気代の領収書、プラスなんですよね……売ってるんですよね……」
何と……流石に予想外だぜ……
すずかちゃん苦労してそうだなぁ。
俯いた彼女の頭をポンポンと慰める、家族が凄いとアレだよなあ、貴重な体験らしいが。
「強く生きようぜ！！」
「はい……って雪児さんが言うんですか！？」
誤魔化されませんよって振り払われた、オレが何をした……
「ものすっごい事忘れました！！」
「いや、うんごめんなさい」
恭也さん、聞いてもニヤニヤして教えてくれないんだよなあ。
表情は変わって無いが、お肌の触れ合い回線を持ってるオレには分かる。
あれは――――――――――――
真雪ねーちゃんと同類だ。
そんな兄を持ってるなのはちゃんか……
きっと色々されてるんだろうなぁ。
取りあえずアリサちゃんに、人と違うってろくなもんじゃないとすずかちゃんが似合わぬ熱弁。
それ以前に、何か冷めたらしく諦めてくれた。
よかったよかった。
「あれ？ じゃあなのはちゃん、休んでた期間って……」
「ああ、えっと、何と言いますか……」
ん、アースラにいた期間か……オレは……恋を求めて旅に出たらしいが……
自分の問題が出てフェイトちゃんが少し暗く……
「蛙の御祓いじゃなかったの！？ 恭也さんの嘘！？」
ああ、もうどうしょも無いわ……
アリサちゃんは山籠もりで体育の特訓だの、なのはちゃんは兄に対して恨み言言って。
クロノは口が出せないわ。
いやもうグッダグダ。
そう言えばフェイトちゃんは……
「ねえ、雪児……御祓いって何？」
ああ、なんだろう、地味に癒えるなあ。
取りあえず六人いるので庭のバスケコートでスリーでもやろうとなって。
すずかちゃんとなのはちゃんとクロノが何故か連盟した。
「雪児さん覚悟ー！！ いたっ」
なぜ何もしないうちにコケる……
「積年の恨みを思い知れー！！」
いやクロノと会ってまだ三週間くらいだって。
「……」
無言で凄むすずかちゃんが怖すぎる！？
しかし……こんなコートがある家に住んでて小学生や今日初めてやる奴に負ける訳にはいかない。
「ほい、アリサちゃん」
無難にパスするくらいよゆーよゆー。
こっちはフェイトちゃんもアリサちゃんも戦力高いし、向こうはなのはちゃんが地味に足を引っ張ってしまう。
かなりのワンサイドゲームになりそう。
「おやー？ 珍しい、雪児くんがやってるよ」
突然口を挟んで来た美人さん、実に今日いるのは珍しい人。
背中まである黒髪を後ろで束ねて、かなりご立派な膨みを白いシャツで隠し、下の長い足はジャージで覆われている。
「あ、さとみ」
「や、フェイトちゃんただいまー」
岡本みなみねーちゃんの部屋に入ってて、現風校のバスケ部コーチ。
んで。
「どーもどーも、ここの寮生の桂木っていいますー」
△△△
さとみ、ご飯の後とかには話すけど、あんまり知らない人だ。
元気だし、親切だしでいい人なんだけど……
「よし、私も混じるよ」
「あ、うん」
さとみって朝によくバスケットやってる上手な人だし、いいよね？
なのはも、アリサも、すずかとクロノも、雪児も……？
え？ あれ？ 何だか雪児は嫌そうだ……
「手加減してよ？……」
この言葉の深い意味は即座に知れ渡った。
肩で息を付きながら目を皿のようにし隙を探る。
さとみの全身を見ながらボールにアタックを――
ボールに届いたと確信した瞬間――その確信が裏切る。
「また！？」
「はい、フェイトちゃん集中するのはいいけど最後まできちんと私を見てねー」
余裕のドリブルを続けるさとみと……
「はあ、はあ、はあ……ウップ！？」
「ゼーゼーゼーゼー」
全身の力を振り絞って擦切れて吐き出したってくらいのクロノと雪児。
地面に仰向けに、汗がシャツにベットリと張り付いてる、多分私も。
「ふあ……」
「いや半端無さすぎでしょ」
「……まあ、こんなんだよね……」
すずかだけが当たり前みたいな反応。
全然だ、さとみもシュートはしてないけど私達は一度もカットできてない。
「うーん、雪児くんは、なまりすぎだねこれは」
さっきから三十分くらい全力で動いてるんだけど、鈍ってるって言われてるよ……
「はー、はー……お、オレ別にバスケ部じゃないもーん」
いや、そういう問題じゃないと思うんだけど……
アリサ達に交代してベランダにズルズルと這いずる雪児とクロノ。
なのはと久遠（キツネ）アルフが用意してくれたタオルで身体を。
「このー！！」
「がむしゃらじゃダメだよアリサちゃん」
真直ぐ向うアリサを、隙を伺うすずかをヒョイヒョイと交わす。
無理じゃないかと思う、実は始めて直ぐに雪児から。
「魔法使え、いや攻撃じゃないぞ、それ以外のやつ」
と言われて色々やったんだけど、クロノも私も……
最初は渋ったクロノも五分くらいで使用に踏切ったんだけど。
いやそれ以前に私達の魔法って、こういうのにまるで役に立たない。
魔法で動き回るには、このバスケットってスポーツはまるで不向きだ。
かと言って筋力とか強化も意味が無い、シュートになれば使えるだろうけど、相手からボールを取るのにどう使えと……
「そもそも触れないし……」
「そうだ、おかしいぞ雪児、いくらなんでも圧倒的過ぎるだろ！！」
そうだ、クロノの言う通りだ、私だってリニスの訓練を受けてるんだ。
運動神経には多少の自信があるのに……
「しょうがないだろ、さとみさんって選抜だぞ選抜……ぶっちゃけ日本のトップクラス選手なんだよ」
えっと、それって……魔導師なら母さんくらい凄いのかな？
「オイ、部活のコーチじゃなかったのか」
「今はコーチなの、アメリカってバスケの本場も経験済み」
早々に諦めたなのはが感嘆のため息を漏らす。
良く分からないけど、凄過ぎるのは分かった。
結構最後はシュートのコツみたいなものをなのはも含めて教えて貰って。
ドムドムドムと雪児だけドリブルしながらダッシュ練習をしてた。
「ゼーゼーゼーゼー、もう死ぬ、いい加減死ぬ〜〜」
えっと……
「大丈夫だって、雪児くん頑丈だから」
いや、それは……何か違う。
終わったらみんな汗だく、私もこんなに汗かいたのは久し振りだ。
「うーシャツが気持ち悪ーい」
「じゃあみんなでシャワー浴びよっか」
さざなみ寮のお風呂は広い、何人も一緒に入れるくらいに。
アリサとすずかの分の着替えは私のを貸そう。
なのはは……いらないか。
バシャーって熱いお湯が頭からかかって、汗を全部洗い流してくれる。
「うりゃーくらえなのはー」
「にっゃ、うにゃー、うにゃー」
ああ、裏山の銀河とかをお風呂に入れたらあんな感じだろうか……
「しっかり温まってねー」
そう言ってるさとみもしっかりシャワーを浴びている。
でもやっぱり……
なのはもアリサもすずかも私と同じくらい、さとみは一人だけ色々大きい……
何がどうなったらあんなに大きくなるんだろうか……謎だ……
「雪児くんおまちどうさまー」
上がったら入れ違いに雪児とクロノが、なのはが、
「そうだよね、普通交代だよね……」
って言ってたけど当たり前だよ。
アリサの覗いてないでしょうね。って答えに生返事する雪児とクロノ。
「ああ、無いわ」
無いね、確実に……そんな体力は残ってないだろう……
そう思ってたら雪児が何かを……
「って雪児！？ 何で久遠連れてくの！！」
上半身を裸に、隣りのクロノと比べてハッキリした身体付きだ。
その腕に抱かれたキツネモードの久遠が。
「何ってしゃわー」
いやいや、そうじゃないと思うんだよ、何で久遠も？ な感じで首をかしげるの！？
「だって久遠は……」
は、アリサとすずかに話して無い！？
いや、すずかは何だか不機嫌なような気配を感じるような……
「しめんぞー」
ああ、そのままお風呂に……
アリサが、どっかで見たようなって、なのはが何やら唸って。
さとみはマイペースに牛乳を飲んで。
「？ 雪児……何で久遠もいるんだ……」
「洗うからだぞ」
「くん」
なんて会話が耳に届いた。
しっかり渇いた後でアリサの家の迎えに乗ってみんなが帰り。
「まあ、元気にやれそうで安心だ」
とクロノが転送で帰る……
「あ、クロ助、リンディさんにお土産買ってけ」
その前になのはの家に寄ったみたい。
耕介のご飯を食べて、アルフに今日の事を部屋で。
「へー、まあアタシらからすると普段が裸なんだけどね」
そう言えばそうか……なんて納得出来ないよ。
はあ、今度から私が久遠をお風呂に入れてあげよう。
「でもフェイト楽しいかい？」
むう、どうだろう……
この寮は好きになりそう、いやもうなっているだろう。
クロノも言っていたが、なんというか、自然でいられるというのが私の感想だ。
そう言えば試験の事忘れてた……これが狙いだったのかな？
だとしたら、少しは雪児に御礼をいうべきなんだろうか？
アルフに少し出ると言って外に。
「おーフェイトちゃんどうした……」
「ゆ、雪児！？ 何だかやつれてるよ」
すぐ廊下にいた雪児、何か変だ。
服は何か汚れてるし、黒い染みに何かの切れ端。
何より何故か手に定規を……
「あーうん、フェイトちゃん暇？」
若干断定口調のまま返事も聞かないで手を引かれる。
放してくれとも言う事も何故か出来ないまま引きずられた先は……
「ようこそ、地獄の一丁目に……」
真雪の？ そんな疑問が頭を過ぎり。
「おっせーぞ雪児！！ ほれ、四、五ページ目！！ キャラベタ、背景！！」
ま、真雪！？ いつもと違う、まるで殺気立ってるように。
「今月はカラーイラスト三枚あんだよ、来月は夏の締切あるし、GW進行休んでんだからその分やれ！！」
部屋の中心にある机に雪児が座り、紙に何かを……
「これ、×のとここれで塗って……」
ペンを渡されて……
次の日になるくらいで開放されたけど……
「うおお、時間時間時間！？」
「寝てー！！」
「アタシは二日目だー！！」
二人は朝一緒だった……何だったんだろう……
これを知るのはまた、もうちょっと先だった……
おまけ
「いいんだどうせ僕なんか……」
「げ、元気出してユーノくん。わ、わざとじゃないんだよ？」
高町家一角、流石に人と分かってからはなのはの部屋ではない場所でユーノが丸くなっている。
とはいえ、未だに地球環境に体が慣れずフェレットモードのまま。
これで人間用の布団などに眠ったらそのまま遭難しそうなため、結局ザルのようなものを寝床に使用しているのだが。
「ふふふ、どうせシリーズが進んでもフェレット以外でOPにも出たことが無いんだよ、いつの間にかフェードアウトするんだ」
「お、落ち着いて、今度。今度は誘うから」
そんななのはの励ましも効果が見込まれず、部屋の隅で御神流もびっくりなほど気配を消すユーノ。
サイズの問題もあるのか、壁に向かって話しかけているように見えるなのは。
夕食の時に悩みを聞かれてしまったのは地味に二人の子供心にショックであった。
後書き
ユーノは悪気は無かったんです、無かったんですが何故か……
ただなんとなく混じれなかったのです。
とりあえずフェイトINさざなみ寮２回目はこのようになりました。
こうして徐々に寮に染まっていくんだ……
拍手返信
＞鬼丸さんへ
＞IFギンガ読みました。なんかもう、ケイスケは近所の奥様方には毎晩毎晩、
＞女を連れ込む(時々複数)あげく、子供まで作ってるくせに認知しない男
＞っていう感じに認識されてそうですねｗｗｗ
＞ヴィヴィオが道で奥様方にどういう関係なのか聞かれた時の反応が少し気になりますね。
＞きっと純粋に黒いんだろうなぁ…
＞いつもの如く「パパって呼んじゃあダメだからいつもは、にぃって呼んでるのっ。」
＞とかなんとか。
なんという世間崩壊の序曲ｗｗ
ヴィヴィオからすれば良いカモですなあ。
いえ、ここまでくるとヴィヴィオ的にはケイスケとのコミュニケーションですよ？
＞鬼丸さんへ
＞ギンガIFですか。なにげにヴィヴィオがスバルの事までママと呼ぼうとしてましたね。
＞もし、呼ばれるようになったらなのは、はやて、ギンガ、フェイトとの御話死愛になりそうですねぇ。
なのはとはやてはある程度冗談で済ましてくれるかもしれませんが
ギンガとフェイトで最終戦争勃発しかねませんねｗｗｗ
＞鬼丸さんへ
＞やっと、やっと来ましたギンガEND。まず最初に隠しの確認をした俺は間違ってませんよね？
＞それにしてもヴィヴィオ。スバルまでママと呼ぼうとするっ…！？
＞まさか、これはケイスケパパ化計画第二弾。ママを増やせば家族も増える、
＞弟、妹いっぱい出来るだからパパは夜のお勤め頑張ってね。
＞その名もヴィヴィオの明るい大家族計画。
それケイスケ主役にならないじゃないか家族計画。
そうかエリオが主役ですね分かります。
＞鬼丸さんへ
＞今回はギンガですね。ふと思ったのですが、ギンガとはやての会話って昼ドラ的に解釈すると
＞はやて「今のあの人を知らない昔の女のくせに、偉そうなこと言わないでっ。」
＞ギンガ「私はあの人の特別なんです。貴女みたいなポッと出の女一緒にしないでください。」
＞みたいな感じに聞こえてしまいました。
＞後、昼ドラと考えてたらこんなかんじにもなりましたね。
＞なのは「ケイスケ君この子のことを認知してくれないかな？」
＞ヴィヴィオ「パパー。」
＞フェイト「なのは、どうして、どうしてケイスケなのっ！！」スバル「ケイスケ…」
＞フェイト「こうなったら。」 スバル「いっそのこと。」
＞フェイト・スバル「ケイスケを殺してなのは
＞と結婚する(私も死ぬ)！！」なんて感じに。
昼ドラ風味は意識しましたが、なのは達に派生するまでは想像外でしたぜ。
というか密かにフェイトがあっちがわですがな。
まあどろどろとして、ハッピーになりそうもないですが。
＞鬼丸さんへのIF END ギンガ編の感想です。
＞やっぱりケイスケシリーズは面白いです。これまで幾つかのIF ENDを書かれていますが、
＞実はティアナ編を待っていたりします。
＞これからも鬼丸さんの作品を楽しみにしています。
なんと……ティアナも結構要望あるんですよね。
多少考えて見ます。
余り期待はしないでくださいね？ティアナは。
＞(鬼丸さんへ)
＞ギンガIF編、読ませてもらいました。ケイスケとギンガの関係が変わったことを
＞二人が自覚する件なんて特に良かったです。
＞そういえば今回のIFは保管庫の方に作品がありませんでしたがギンガ編ではエロネタの方は書かないんですか？
さあどうでしょう？（ﾆﾀｱ）
＞鬼丸さんへ
＞ケイスケの家（というか本人）は皆の共通財産なんですねwww分かりますwww
ケイスケ本人も溜まり場になることに違和感を覚えていない罠。
一人暮らしって訪問に遠慮がなくなりますよね。
＞鬼丸さんへ。ギンガifEND感想
＞いやー、何時もはカッコイイ姉さんドゥーエの可愛い一面を見て萌えたｗ
＞確かにギン姉とケイスケをいきなりくっつけるのは難しいかも知れないですね、でも
＞堕天使エロメイドは吹いたｗ次は大精霊チラメイドですね。分かりますｗ
ギンガさんは日々進化するのです。
そのうち日本の 正しい 魔法少女に走りかねない。
＞鬼丸さんへ
＞おおおにまああるさああああん！お待ちしておりましたよギンガエンドぉぉぉ！
楽しんでいただけましたら何よりです。
＞鬼丸さんへ
＞今回も楽しませてもらいました。呑む、吸う、打つの三拍子揃ったケイスケとは
＞絶対サイコーのダチになれそうだ！
＞私自身はＡＲＴ重視になってからスロは打ってませんがｗ４号機とは言わんが、
＞せめてＢＩＧで４００枚は・・・
機種にもよりますが、今はBIG200いかないのもありますねえ。
そういった機種は必ずといっていいほどART中にストックを貯めるスペック。
昔の即連チャンほど爆発はしなくなりました。
＞「「やりとげました」」ってこの場合、どっちがオリベでどっちがマルコになるんだかｗ
＞ムリヤリにでもでてくる聖王様に感服ｗｗ
＞そして、これはホントに「あの」堕天使エロメイドなんでしょうか
＞確かに、ロングでオパーイなところは一致しますがｗ
＞とにかくほのぼのおもしろかったですｗ
＞PS:超今更ですが風神剣と魔王剣どっちの時点なのでしょう？（歳がばれる
では修行後とあえて言ってみる。
どんな姿だったかは各自の脳内で補完をお願いしたします。
＞鬼丸さんへ
＞いいですね〜ギンガエンド、
＞ではギンガエンド３部作が終了したら次はティアナエンド前後編あたりをお願いします！
＞もしくはケイスケの教会編その２でカリムエンドを！！
いや、もうどこからツッコミいれたらいいのやら。
どんどん容量が増えている罠。
エンドは基本電波次第なのであまり期待しないでください。
＞鬼丸さんへ
＞もしケイスケが何らかの切っ掛けで魔力とかそんな感じのエネルギーで弾幕を張
＞れるようになったらどうなるんでしょうね？
しばらくは特訓でしょう。
何しろ魔法関係の練習のれの字をするのが精一杯だったんですから。
＞鬼丸さんへ＜
＞ケイスケとギンガは……まぁ、どうやっても変わりそうにないなぁ。
＞ギンガルート行ってこうなっても、やはりお節介だが嫌いになれない良い姉とその弟って感じだ。
＞この二人はずっとこのままでいてほしいなぁ。・・・・・・
＞ケイスケが結婚して、それでもギンガが来たらそれはそれで面白いことになりそうだけどｗｗｗ
ある意味立場というか力関係は永遠にこのままでしょう。
ギンガは既にDNAレベルで逆らってはいけない人と刻み込まれております。
＞鬼丸さん、いつも「ケイスケの機動六課の日々」を読んでいます。
＞友達に勧めてるくらいとてもおもしろいです。いま、雑誌で第四期が二つ連載されていますが、
＞もし書かれるとしたらケイスケは独身ですか。ところで、URLの場所が分かりません。
＞おしえてください。サイト内のメールができないので、こちらにメールを頂けませんか。
＞→@jewel.ocn.ne.jp 消しております。
送信しました。
今のところ4期に関しては何も考えていない状態です。
誰かと墓に入る約束は、フェイトエンドだったら確実ですね。
あれではかなり速攻で人生決まりましたから。
追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、