あの巨大樹木事件、この忍者が国家試験なトンデモ国家といえど大事だ。

テレビは来るはどっかの学者は来るは、何がどうしてその結論になるか分からんトンデモ団体は来るは。

まあとにかくひっちゃかめっちゃか。

一応怪我人が出ないし、怪獣みたいに暴れた訳でもなかった。

だけど……ちょっと非日常に足を突込んでいる人間なら、これがアッチの人の言う自然の警告でも無く。

学者さんのいうあくまでイレギュラーな突然変異でもなく。

ネットに流れる放射能怪獣でもない。

何かが絡んだ、普通に当てはまらない事態であるのは予想では無く確信だった。




              HOME_REHOME 03話


















「……無駄にでけぇ……」

「くーん……」

懐の久遠の体温がとても心強い。

国守山のオレんちの外。

うちからだと一度街に降りないとたどり着けない場所にそれはある。

三メートルはある鉄柵、ぐわあああってくらい先まである芝生の庭、アーチみたいな門。

そして日本らしさ皆無な洋風の家ではなく屋敷。

周囲には何年も時間を紡いだ樹々が森になっている。

もしも屋敷がボロボロならドラキュラがいてもおかしくない。
















……いや、親戚なんだっけ、しかも現役らしいな、ドラキュラ……

月村邸。

国内の夜の一族でもかなりの名門らしい。

そう考えると、こんな屋敷に住んでても違和感が無いかもしれない。

たとえ歩いて三分のふもとにコンビニがあったとしても……

「ええい、びびってどうする!!」

別に口に出すことではないが、気合を入れ直して呼び鈴を押す。

ピンポーン。

……極めてふつーの家の呼び鈴の音だった。




















今回の目的。

ズバリあのビームだ。

晶先輩に追っかけ回され許して貰ったはいいが、例の石は誰かが拾ったのか発見できず。

それについては何も出来ない。

リスティねーちゃんが拾得物で洗うのを待つしかない。

さいこめとらーな事が出来る能力者は知り合いにいないし。

何よりそんな人は忙しいらしい。

ともあれ能力を制限されてもピンチになるためリミッターは外してもらえた。

しかし……根本的にオレの能力が巨大物体に対して非力なのは変わってない。








そこで忍さんである。

あのバスターでトランザムなビーム砲を借りればその問題は解決されるのだ!!

「あ、アレ私じゃないよ」

えー!!

「そ、そんな……ついにノエルさんがノエルライザーになったとワクテカしたのに……」

海鳴の誇るマッドサイエンティストの業じゃないとは……ショック!!

「いやあ、まさか私以外にもあんなの作る人がいるとはねー」

全くだ。











月村邸の地下、まさにオカルトの無い遠野家地下帝国なカオスフィールドにオレはいる。

周囲には工具引き出しにサーバー用自作パソコンが所狭しとひしめき、油の匂いがまるでガレージを連想させる。

その奥、何処からかスーパー1のメンテマシンと聞こえそうな場所に二人の女の人。






しかもメイド、しかもメイド、大事な事なので二回言いました。

眠っているように見える二人は、姉妹のようによく似ている。

紫かかったシルバーブロンド、ショートの人は眠っていてもいかにも出来る女なオーラが

ロングの人はかわいらしい印象をうける。

シュートの方がノエル・輝堂・エーアリヒカイト。

ロングがファリン・輝堂・エーアリヒカイト。

よく見ると、ベッドから伸びる電源コードがある。

二人はいわゆるロボットだ。

ちなみに量産型メカノエルとかはない。












でもロケットパンチはあったりする。






















「ちぇー、ああそういや……えっと……えっと……すずね? ちゃんのやつって」

「すずか、ね……それは……」

し、深刻なのか?

……と、一瞬でも思ったオレが馬鹿でした。

忍さんが口を噤んだのは……












ウケてやがる。

しかもツボシュートレベルで……

「あははは、ごめんごめん、いやうん、自力でお願い、くくく」

うわ生涯わすれてー。

だって真雪ねーちゃんとかの顔だ、ろくなもんじゃねえ!!

「あー、でも青い石かー」

そうそう、勿論話してますよ? 例の件。

というか、忍さんみたいな人に隠すのは意味ないし。

「現物調べたらドラ○ンレーダー作れた?」

「あはは、まあ調べないと分かんないけど無理じゃない? だってまず〜〜〜」















(五分経過………)















「と言う事よ、分かった?」

……えっと……








「石から波紋がゲッターでセッターでドラゴンが持ち帰って……」

「えっとね、ここですよーって教えてくれるのがあれば作れるよって事」

……始めからそう言ってくれ……

「や、目がグルグルで面白かったし」

……やっぱりこの人嫌い……














地下室から外に上がると丁度客が来たらしい。

一応忍さんも石には気を付けてと言って帰ろうと……あれ?

「? くおーん」

油臭いのが嫌って入口で待ってたのに……どこ行った?

高そうな絨毯の上でチョコンと座ってたのに……

「どうかなさいましたか雪児様」

後からかかるよく通る声、ノエルさん。

「ま、まって下さいお姉さま〜〜あ!?」

がらがしゃーんってコケたファリンさん。

ドジっ子なのに忍さんのお約束魂を感じる。








「久遠様ですね、少々お待ちください」

そう言って、ノエルさんが止まる。

?? って思ってるオレにファリンさんが

「今屋敷のカメラにアクセスしてるんですよ」

っと解説。

ハイテクだ……

「見つけました」

はや!?

何処にいるのか聞こうとするが

「後三十秒程でいらっしゃいます」

ノエルさんとファリンさんを見比べると、どうしてもノエルさんよりソフトの方はファリンさんって気になる。

実際は違いはないそーなんだが……

そう思ってると本当に久遠が来た。













……

? 来たっていうか、走って来てる?







………ド………







まるで何かに







……ド………ド……






追われてる







「くーーん、くーーん!!」








……ドドドド………






ような……






って!! なんだあ? ドドドドって!!

その答えは直ぐに出る、久遠の後から迫る。

猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫

「な、何じゃこりゃー!?」

あっけに取られる間も無く、器用にオレの服をかけ上がる久遠。

にゃーにゃーにゃーにゃーと喚く猫が足元にはいっぱいだ。

「く、くおん?」

「くーーんくーーんくーーんくーーん」

懐の定位置で震えて動きやしない。

猫の群もオレに登ろうとしてくる。

「ちょ、ちょっと爪立てるな、こら、いた、やめろー」

久遠、三百年も生きてるキツネの妖怪。

弱点:猫












「キツネさーん、何処ー」

ん? 猫達が来た方向から歩いて来るのは……

「あ……」

すずかちゃんだった。

















すずかちゃんとノエルさん達の協力で、猫は足元からいなくなったが久遠が出てこない。

首だけ出して周囲をキョロキョロとしている。

「……」

すずかちゃんの視線が胸元の久遠にロックオンしているのを感じる。

撫でたいのか?

街中で懐の久遠を見ると大抵の人がする目だ。

すーっと伸びる手。

「!!」

ズルっと服の更に奥に潜り込む久遠。

「あ……」

「ごめんね、人見知りするんだよ久遠って」

知らない人に撫でさせた事がない。

オレだって久遠が初めて来た時はダメだったし。

残念そうだな、だけど久遠の意思を尊重するべきだろ。

むむむって感じでこっちを見てもな。

えっと……こっちは那美さんが薫ねーちゃんや楓さんに会いに来た頃からだし……















「あの……思い出しました?」

は? ああ、何か話した件ね、うん。












「ごめん、本当なんだっけ?」

顔の表情だけでもがーんって感情が伝わってくる。

ていうか、よく覚えてるよな、当時まだ幼稚園くらいだろこの子。

「ほ、本当に忘れて……え、でもさくらさんが寮の人にはしてないって……」

何なんだろ? いやひょっとしたら寮以外では重要な要件な可能性も……










「すずかー、なのはちゃん達来たよー」

と、忍さんの呼び出し。

少し迷ったようだけど友達の方に行くようだ。

オレらみたいなのにふつーの友人は貴重だ……と思う。

確かオレの能力教えた奴等だって片手くらいだし。

さて、これからどうするかと思っているとノエルさんから別室に行けとの指示。

「こちらでお待ちください」

そう言って通された部屋はさっきのカオス部屋と違いそれなり、いやすげー広い。

何となく格差というものを感じる。

うちは土地はあっても金は無いのだ。
















「じゃあ恭也、ここねー」

「む、君は……」

そう言って忍さんと入って来た男の人。

一言で言うと……黒い。

真っ黒だ、顔と手以外。

「えっと、知ってるかな? 槇原雪児くん」

「槇原? ああ病院の、先日はなのはが世話になった、高町恭也だ」

挨拶の間もニコリともしない。

鋭いような視線が変わらないのが印象的だ。

懐の久遠がモゾモゾと這い出してくる。

「きょうや、こんにちは」

ポンと飛び出ると同時に子供形態になって挨拶を

「ああ、久遠、こんにちは」

え? 久遠とも知り合い?

はて?

「ゆきじ、ゆきじあってないよ、いなかった」

あ、そうなの。

「はじめまして槇原雪児です」

チラッと妙な視線を感じた、なんか身体を見通すような感じの。

なんなんだろ?











あれ? 高町?

「あの……ひょっとしたら高町せ、美由希先輩の」

「……」

いきなり黙った!! な、なんかタブーだったか?

「いやすまない、あの馬鹿弟子が先輩などと呼ばれるのに絶句した」

「弟子?」

「美由希ちゃん、恭也のお弟子さんで妹だから」

へー、世間って狭いな。

……高町先輩の兄貴、ぶっちょう顔だけど美形……見えた!!
















「那美さん振ったって人?」

「む」

「ゆきじ、そういうのはっきり言う、だめ!!」

久遠にまで怒られた……

「そーそー私勝者ー」

忍さんは軽かった。









「あのー、お邪魔でした?」

恋人同士って事だよね?だったら。

「いや、俺が最近の事件について聞いて置きたくてな」

ああ、なるほど。

と言ってもこっちだって分かってることなんか無い状況だけど。

「……つまり刀では解決しない関係か」

「はあ、まあ多分……」

巨大化現象だからなぁ。

「……」









「あの、また何か?」

「流石は薫さんの関係者だな、普通は今のは突込むところだ」

「ボケだったんですか!!」

「ボケだったんだ!!」

分かりにくいな、それ!!

「恭也……おかしい自覚あったんだね」

忍さん、そこ!?











「ああ、そういえば君も何かあるのかい?」

んー、まあ久遠の知り合いだし、別にいっか。

「HGSって言って分かります?」

「ああ、フィリス先生と同じ」

「フィリスねーちゃんも知り合いですか」

恭也さんもねーちゃんの部分にびっくり。

いやあ、マジで狭いわ世間が。

「ねーちゃん優しいけど怖いですよね」

「ああ、主治医をして貰っているのだが……その、サボるとな」

ああ、分かる分かる、怒るとわざと痛い整体するんだよな。







「恭也……」

「それ、きょうやがわるい」

まあそうなんだけど、うっかりってあるじゃん。

そんな話を恭也さんと続けていく。

どうも恭也さんも女性が強い環境らしく話が合う。

最近の悩みは末妹が何か自分に秘密にしている事らしい。

「へー、あメール」

後ポケットの携帯電話が震えて着信を伝える。

那美さんかな?

開いて見ると……







「ゆきじ?」







ゴシゴシ〜ゴシゴシ。

えー、えー、えー。

「どうしたの?」

心配してくれた忍さん。

向ける画面に映るのは







    差出人 フィリス矢沢

    件名 今日は何日かな?

    本文 O(`ヘ´#)"O








恭也さんが辛そうに顔をそむけた。

真っ青になったオレ。

ノエルさんに海鳴大病院に送ってもらう最中、気分はドナドナ〜。

「雪児くん、女性との約束は忘れない方がいい」

周りに聞こえる部分は聞こえがいいが、耳元でこっそり小さく。

(……後が怖い……)

とか言われると素晴らしく台無しです。

経験ありますね? あるんですね、何か忘れた経験!!














久遠をどうしようと悩んだが、屋敷は断固いやと言われては連れてくしかない。

賢いからそんな事しないと思ったが、リムジンの後部シートに爪立てないか不安だった。

そんなこんなで到着した海鳴大病院。

街中ではなく少し離れているから病棟から縫うように青空が覗く景観が見えるのが清々しい……が、

「み、みえる、フィリスねーちゃんのオーラを感じる!!」

まるで澱んだ魔界みたいに感じる。

「くーんくーんくーん!!」

ああ、久遠付き合わなくてもいいのに、流石は我がソウルフレンド。

まるでどっかの蟻の円のように近付き難い。

「それでは失礼します」

ノエルさんはサラッとUターンしていく。

い、今からでもブッチしたいけど……やったら死ぬな。
















覚悟を決めてロビーで名前を告げる。

看護士さんのまたー?って顔は完全に笑ってる。

行き先は病院でもかなりの奥。

懐の久遠をそのまま連れてきてしまったが、まあ別に構わないだろ、多分。

大人しくしてれば。

HGS用の研究棟、昔は香港のおじさん達が追ってるマフィアの連中が入り込んだらしい。

かなりド派手に捕物したらしく、壁に張ってある四角い紙とか捲ると凄く後悔する。

通路の、診察服に着替える部屋の前に……ぎんのおにがいました……
















久遠は中庭で待機命令。

固い診察用のベッドに横になって全身に冷たい心電図みたいな吸盤が付けられる。

「……ぷ」

「わ、笑うなー」

ごめんなさいと言いながら女の先生の目はほっぺたの抓り跡のガン見を止めない。

ガラスの先にいるフィリスねーちゃんはまだプリプリと怒っているのが余計笑いを誘うのだろう。

「はーい、採血しますよー」

笑って注射ミスらないでね先生。











HGSは一応病気の扱いを受ける。

超能力は遺伝子疾患の副産物というのが現在の認識だ。

オレは何にも不自由は無いけど知佳ねーちゃんやリスティねーちゃんは色々大変だったそうだ。

チクリと注射針が刺さり血が吸い出される。

それを検査用に回し、今度は健康診断用の採血。

月に一回のペースでも注射は慣れない。

早く注射もいらなくなるといいのに……

この後がまた暇なんだ。

一時間ばかり脳波やら血圧やらの検査が続く。

それをじーっと微動だにしないでいると……眠くなった……

『雪児くん、退屈だろうけど我慢して』

矢沢のおじさんの注意入りましたー。

ガラス向こうで一番人が良さそうなおじさん。

フィリスねーちゃんの養父でHGS研究ではよくわからんけど凄いらしい。

取りあえず優しい人。

奥さんとよくご飯奢ってくれるし。















沢山グラフがついた紙を手にあっちこっちと先生達が動き回る。

それを見ながら退屈な時間が過ぎて行く。

『雪くん、最後だよ』

マイク越しにフィリスねーちゃんの指示、最後っていうのはリアーフィンの発動。

少しだけ念力で浮いてから発現させる。

別に浮く必要は無いんだけど、後ろに物があるとなんだかやりにくい。

この辺はあくまでリアーフィンがイメージだからかもしれない。

『はい、いいよー、相変わらず安定してるね』

ふう、終わった……

後はフィリスねーちゃんの診察室に移動して話を聞くだけ。























「全く、あの機械動かすの大変なんだから!!きちんと予約通りに来なさい!!」

うわ、いきなりお説教。

小柄な身体にリスティねーちゃんそっくりな銀髪。

リスティねーちゃんの妹なフィリス・矢沢。

つまりオレにとっては姉になるはずなんだが、この通り名字が違う。

リスティねーちゃんの妹は後一人、シェリーねーちゃん。

シェリーは愛称で正確にはセルフィ・アルバレットってねーちゃんもいる。

こっちはアメリカで能力使った救助隊をやってる。

その影響か知佳ねーちゃんもそっち目指してる。

姓が違ってあっちこっちにいるのは色々面倒な理由があるらしいがこの辺はややっこしいらしくてやっぱり詳しく教えてくれない。

しかし……










「? 何ですか、まだお説教は」

「えっと、勝ったなーって」

「!? どうせリスティともシェリーとも違います!!」

ちっちゃいんだよなー、うん色々ー。

取りあえず身長は勝った!!

「これで後は引きはがすだけだね」

「ちょ、ちょっと前まで私より小さかったのに!!」

それはこっちはこれから成長期だからね、ガンガン伸びるぜ。

フィリスねーちゃんは超えた次はシェリーねーちゃん、最後にリスティねーちゃんを超える!!

「は、話を変えようとしてもそうはいかないから!!」

ちぇ、ダメだったか。

「もう、はい、今日の結果からね」

うーっす。
















「体調も安定、やっぱり私達って生活で決まる割合が大きいの」

うん見れば分かる。

でも言わない、気にしてるっぽいし、姉妹との身体的な差を。

具体的に、リスティねーちゃん〉シェリーねーちゃん〉〉〉〉(超えられない壁)〉〉フィリスねーちゃんだし。

「後は、やっぱり熱吸収によるエネルギー補填率は高いけどその分消費が早いね、この辺も変わらないよ」

「ああ、勢いはあるけど早くて、直ぐに元に戻るってのでしょ?」

ぶ、っとフィリスねーちゃんが吹いた、唾が……

「な、な、何言ってるの雪くん!?」

「え? 前に真雪ねーちゃんがそんな事言ってたんだけど」

「ああ、もう真雪さんはー」

? なんか変なのか? そのまんまだと思うんだけど。

「変な意味あるの?」

「いいの!! まだ知らなくて!!」

? 何故怒るんだろ?












「ふあああ、ようするにいつもと変わんないってこと?」

一時間弱もジッとしてたから眠い……

「雪くん、自分の身体の事なんだからしっかり聞く!!」

だって今日は薬の注射無かったから注意事項とかないんでしょ?

それに難しい話は嫌い。

「もう、後はきちんと予約の日に来る事、次は来月の同じ日だからね」

「うーっす」

時間を見るともういい時間だった。

帰れば丁度夕ご飯だと思う。

「んじゃ帰る、あんがとー」

「ちょっとストップ」









な、何?と いうか痛い、捕まれた肩のツボに当たったねーちゃんの指が!!

「最近、色々忙しいんだって?」

「いや、痛い、痛いよねーちゃん!!」

そう言っても力を弱めてくれない。

痛い、だから痛いって!!

「痛いのかー、疲れてるんだね、フィリスお姉ちゃんがマッサージで疲れを取ってあげる」

「ね、ねーちゃんのマッサージ!? いい、大丈夫!! 全然疲れてない、元気元気!!」

「ダメだよー、そう言って身体に負担をかける患者さん知ってるんだから」

何故か脳裏に走る恭也さんの憐憫の表情。

「ちょ、怒ってる? 忘れてたのまだ怒ってる!?」

「怒ってないよ〜はい、横になって〜」

「いい、本当にいいって……ギャー!!」













リスティねーちゃんがテレポートで迎えに来て横になって動けないオレを見て一言。

「雪児、赤飯?」

「いりません!!」

なんで赤飯なんだろう?



















「ううう、酷い目にあった」

フィリスねーちゃんのマッサージにて轟沈したため、深夜の探索はお休み。

久遠と那美さんを見送り、オレは電気を切った自室でマグロ化。

いや、これで明日は身体が軽いのは実体験から分かってるんだけど。

しかし……眠れない。

最近は十時くらいに帰って、お風呂入ってって習慣だったから、まだ八時だよ。











「ひまー」

と呟いても何かある訳でも無し。

念力で机の上にある三角定規をクルクル回すくらい暇。

この程度の力なら布団で上がる体温と等比できるからいくらでも続けられる。

はい一回転二回転三回転……むなすぃ。

身体が妙にほてる、別に薬は飲んで無いからマッサージと布団の熱の相乗効果なんだろう。

パソコンでネットサーフィンでもしようかな。

動くの面倒くさいから念力で机からノートパソコンをベッドに運び込む。

無線LANはこんな時に便利。

指も面倒くさいんだけど、十の同時念力のが面倒だ。

結局膝に置いて機動させて。











『オウ、カモンカモン』

ガシャンとノートに頭を打った。

「何だこの起動音はー!!」

知らない、こんな設定!!

デスクトップ画像は何故か着替え中なフィリスねーちゃん……犯人が明確に分かる。










「どうだ? フィリスは、それに比べて成長してたか?」

「突然でてこないでくれ!? というか、いつの間にやった!!」

「雪児が痛々しくお風呂に入ってた時さ」

「パスワードは!?」

「お前の考えなんか覗くまでもないね!!」

な、何でハイフン区切りの円周率なんか考え付くのこの人……というか何考えてこんなもん設定するの?












「? 嬉しくないか? お前くらいの年なら元気になるだろ?」

「……ノーコメント」

「照れるなって」

「照れるよふつー!!」

なんなんこのセクハラ姉!? なんか方向激しく間違えてるよ!!

「元気になったじゃないか」

「余計疲れるよ!!」

「そうか、疲れるのか、うんじゃお姉ちゃんはテッシュを差入れて引っ込むな、頑張れ」

「ちょっとまてぇぇ」

……本当に引っ込みやがった……

こんな画像消去して……消去して……

何故か出来なかった、だって男の子だもん……
























オマケ

雪児くんが出て行きノエルさんが送りに行く。

なのは達が遊び終えるまで忍と一緒なのだが……

いかんな、こうなると俺、高町恭也には話題が少ない。

以前自慢の盆栽について熱く語ったらやたらと生暖かく見守られた。

自覚はしているつもりだが、剣と釣り、盆栽以外には余り話題がない。

ここで腕たてふせをするほど常識知らずというわけでもないからな。

他の共通の話題というと……そういえば、















「忍、すずかちゃんに何かあったのか?」

「へ?」

「なのはが気にしていた」

バタンと倒れた忍、ネタなので助けない。








「……いとしー恋人を助けようとは思わないわけ?」

「ろくでもない理由なのは分かった」

こいつは八割方ふざけるが、その八割に家族は入っていない。

つまり、余り大した事でもないな。








「うん、それは私がまだ汚れを知らない純粋な乙女だったころ」

「俺が生まれる前か?」

「そうそう、ざっと三百年くらい……ってどんだけよ!?」

ああ、ついつい。






いや汚したのは誰とか言われると何も言えないが。

「そう、まだ私がおとなしい深窓の令嬢的な時期「その時点で嘘臭い」黙って聞く」

すまん。











「さくらがまだ高校生だった時よ、よく様子を見に来てくれたの、友達も連れてね」

ああ、さくらさんなら分かる。

「となると、時期的に薫さん達か?」

「そうそう、その友達って那美のお姉ちゃんなの、それに付いて来てたのよ、雪児も」

ほう、なるほどな。

しかし……何故か俺が幼少期、とーさんと旅をしていた時期が脳裏を過ぎる。




















「それでどーもすずか、バレてたみたいでねー」

「む、それは……不味くないか?」

俺は忍と結んだが、夜の一族は正体がバレた時ある契約を結ぶ。

今後、永遠に友もしくは、恋人になると。

幼少期とはいえ……

「……ふ……甘いわね、幼少期を舐めてるわ恭也」

そう言って忍が持ち出したのは……今は懐かしきテープラジカセ。

「何故ある」

「直したから」

いや……二点ほどツッコミしたいが話が進まん。
















おもむろにスイッチが入り流れる内容。

『おお、お前もなんかあるんだ』

『ゆきじくんも?』

『おう、ほれ』

『わ、わ、わたしういてる、ういてるよ』

『すげーだろ』










サラッとHGSを曝したな、彼。

「軽いよねー、やっぱり環境?」

ああ、何だか納得するなその言葉。

すずかちゃんもすごいすごいと連呼している。

ああ、なのはのあんな時期……あったか?

む? むむむ?













『あのね、わたしのおうちはよるのいちぞくっていうんだよ』

『へー、薫ねーちゃんは神咲の一族で一番強いぞ、とーちゃんも一番おっきいのだ!!』

おいおい、ちょっとばかり軽過ぎないか彼?

「何年前だ?」

「んっと、五年くらいかな」

今のなのは達くらいか。

いや、このくらいが年相応と言えばそうかもしれんが。












『んとね、おしえたらやくそくするんだって』

『何をだ?』

む、これか……雪児くん、忘れているのは感心……俺は人の事を言えんな。















『えっと、えっと……こんにゃく?』

「ブッ!!?」

吹いたじゃないか!!

いかんこれは……

忍は悶絶してる。

『? こんにゃく食えばいいのか?』

『えっと……たぶん』

『じゃあ取って来るか』










カチッとスイッチが切れる。

……なんだ? なんと言えばいいんだ俺は……

「もう不憫で不憫で、とても真実の記憶をすずかに告げられないの私」

「いや、前半嘘だろ」

明らかに楽しそうだぞ忍。

「だって恭也、これがなのはちゃんだったら」

「よし殺ろう」

まだ裏道を走れば間に合うはず。

「ちょ、ごめん訂正!! 美由希ちゃんなら!?」

ふむ美由希か……美由希なら……



















「取りあえず結婚式で上演する、相手が誰でも」

「前から思っていたけど、扱い違い過ぎない?」

「何を言う、弟子に厳しくするのは師匠として当然だ」

何が問題だ全く、当然じゃないか。

「本音は?」

「なのはは泣くかもしれんが美由希は楽しそうじゃないか」

ああ、あの修行でも何でも打てば響くのは才能だな、素直に響き返してくれる。

「はあ、美由希ちゃん可哀相……」

「すずかちゃんもな」

結局俺達似たもの同士という事だ。

例えこの後ばらす時の同席を約束させたのは間違いでは無いと確信する。




後書き

かなりどーしょもない事実でした。
幼少時なんてこんなもんじゃありません?

覚えていても前後が入れ替わっていたりなんだったり。

そして思いっきりすれ違う原作主人公と雪児。
こいつらいつになったら会うんでしょう?

とりあえず久遠でしばらくは癒されてくださいwww




作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。