学校はサボらない事。
那美さんの手伝いを許可された時に厳命された条件だ。
でも……寝るなとは言われてないんだよね。
タオルを机にひいて、おやすみなさい。
「アホや、アホがおる、猿よりアホや……」
む、フェイフェイか。
「よう、そしておやすみ……zzzzz」
「寝るのはいいけど次の授業テストやで」
……ふ、それでもオレのやる事は一つさ。
「鳳-さま、どうかお馬鹿で無能なわたくしめにノートをお見せ下さいませ」
ジャンピング土下座でお願いしました。
HOME_REHOME 第二話
眠い……ペタペタと音が聞こえるような足で学校最大のお楽しみ、お弁当タイム。
いつもなら教室でとーちゃん作の絶品弁当を高レートで交換してるんだが。
校舎裏、ここでやらないといけない事がある。
「……くおーん」
ガサガサと茂みを揺らして出て来る子狐。
何でまた学校でまで一緒なのか。
青い石を手に入れた日の翌日、かーちゃんの診療所が荒らされた。
いや、正確には襲撃されていた。
ガラスは荒れて、植木がボッキリとへし折れて。
何より道路はまるで知佳ねーちゃんとリスティねーちゃんがガチ喧嘩したかのような有様。
不幸中の幸いは動物は無事だった事だ。
一匹だけ、フェレットが行方不明になったけど連れて来たって子が保護してたらしい。
取りあえず、思ったより物騒な話になりそうなので
オミソなオレ、ガチが苦手な那美さんの護衛役を久遠がしてくれる事になった。
オレがテレポート出来ればいいんだけど、アポートはともかく自分が動くのは苦手だ。
情けないけど、久遠に頼るハメになる。
「どーすりゃいいんだろうなー」
「くん?」
何でも無いよと箸で唐揚げを久遠に食べさせる。
HGS能力は筋肉みたいに鍛えればとはいかない。
精度とかはそりゃ訓練すればいいけど威力向上っていうと……
投薬くらいかなー。
「やって」なーんて主治医してくれるフィリスねーちゃんに言ったら……
泣くなーねーちゃん。
何だかんだで劇薬だし。
「ほんと、どうしよ」
しばらくして来た那美さんは友達だって高町先輩と一緒。
高町先輩は眼鏡にお下げに読書家という絶滅危惧種。
不意に最近物騒だねーって話をしたらフェレットを保護したのは高町先輩の妹さんだったそうだ。
世の中狭いなー。
放課後になって那美さんはお化けに聞いてまわり、それに付いて歩く。
久遠は最近めっきり定位置な俺の胸元。
海中は風ヶ丘と一体になってから制服が選択式になっている。
入った時に取りあえず学ランを選んだ、真雪ねーちゃん的に中坊は学ランらしいし。
カラーは苦しいから嫌い、抜いた。
見つけた宝石は三つ。
警察への届出も含めてるんだけどまだあるかもしれない。
そもそも何でこんなもんがあるのか。
海鳴だからで納得してしまう自分がいる……
「見つかんなーい」
「見つからなかったねー」
「くーん」
海浜公園でタコ焼き、たい焼きのセレクトはタコに軍配。
とーちゃんのご飯が待ってるから一皿を二人と一匹で食べる。
熱いけど美味しい熱いけど美味しい。
「はふはふ、あひたはほようひだからひっふりさはほうか」
「はひさんなひいいっへるはわひゃんひゃい」
食べるの優先しよう。
「明日は土曜日だから、隣り町も行こうか」
那美さんの提案には何も問題無い。
久遠は嫌そう。
電車に乗って移動するとケージに入らないといけないから、嫌いなんだよね。
夕日が海岸線に沈んで行く。
知佳ねーちゃんが通っていた聖祥の小学生が横切った。
ゆっくりした時間をバスが出るまで過ごしていた。
寮とバス停は結構近い。
街灯は少ないけどそもそも人が少ない山の中。
バスも無い時間まで街に出てるのは運転できる大人組と那美さんぐらいだから不満が出たことはない。
那美さんは御祓いで遅くなるけど、そういう時は警察の人が送ってくれる。
大抵依頼主さんは警察だったりする。
神咲って家は相当古いらしいから、多分お偉い人には顔が利くんだろう。
それとも海鳴限定なんだろうか?
リスティねーちゃんも警察だし……
うーん有り得そう。
香港のおじさんみたいに馬鹿みたいに強い警察署長とか……
「「ただいまー」」
「くーん」
靴を見ると大体みんないるみたいだ。
かーちゃんも診療所の片付けが終わったからいつもの時間に帰ってきてる。
ご飯を食べて、焦ったって見つからないから今日は休む。
おやすみなさい………zzzzz
「……ないねー」
「ないねー」
「くーん」
最初の二つがまぐれ当たりだったのか、それとも三つで打止めなのか。
隣り町を歩けど歩けど見つからない。
春先で暖かいけど朝八時から散策してもうお昼だ。
「那美さーん」
「……」
「那美さーん」
何かフラフラしてる。
あ、進行方向に電柱が……
ゴチンといい音、流石は階段で落ちて恋を始めた昭和人。
フラれたらしいが……
「那美さーん、腹減った」
「へ? あ、お昼? うん、じゃあどこかで……」
もち奢ってもらいました。
ゴチ!!
「くーん!!」
お昼からまた散策。
オレには見えないし聞こえないが、残念してるけど悪さはしない幽霊に話を聞いている那美さん。
傍から見ると危ない人なので見張りをしながら。
どうもこっちには動物が放射能汚染されたみたいな事件は無いみたい。
やっぱり海鳴だけなんだ。
大した収穫もなく帰りの電車に乗った。
駅前ターミナルはオレが寮入る随分前に工事したからデパートとかと一緒。
あ、和菓子食べたい。
唐突に欲求が沸き上がる。
財布確認……残金31円……
終わった……
我慢しよ。
「それで今日も空振り?」
「うん」
「多分、海鳴の中だけだと思うんです」
寮のダイニングでご飯タイム。
今日この時間に帰っていたのはかーちゃんとリスティねーちゃん。
真雪ねーちゃんは出てこない、美緒ねーちゃんはバイトで遅い。
勿論那美さんと久遠もいる。
久遠の食事スペースは床だったりするけど。
この場を借りて今日の成果報告中。
とーちゃんは和洋中何でもいけるけど、やっぱりじーちゃん譲りの洋が一番だ。
箸だけどな、摘んでるの。
オムレツうめー!!
「で? デートの感想は?」
「? で、でででででデートォォォ!?」
ニヤニヤしてるリスティねーちゃん。
テンパる那美さん。
箸持ったままバンザイしないでよ。
ねーちゃん、昔はこうじゃなかったのに。
ドンドン真雪ねーちゃんに染められて……
「んーサ店のコーヒーとナポリタンが美味かった、でもとーちゃんのがもっと美味い」
「だって雪くんは耕介さんの料理が一番だもんね」
「おう!!」
「息子!!」
「とーちゃん!!」
ひし!!
「ち、つまらん、親子愛はご飯後に温めてくれ」
あ、ねーちゃんが拗ねた。
那美さんも何時までハワワしてんだか。
「あー私もー」
かーちゃんもハグ追加。
ジーっとリスティねーちゃん……
「やらないからな」
ち、槇原の絆を深めようとは思わんのか。
結局最後まで真雪さんは降りてこなかった。
確か今月はカラーがあったからヤバいのかな?
本気でヤバかったらオレも拉致られてるだろうからまだまだ余裕はあるんだと思う。
ところ変わって浴場。
メシが終わったので風呂タイム。
とーちゃんと一緒だ。
基本オレととーちゃんの風呂は最終便、何しろ女の人多いから。
真雪ねーちゃんは……多分朝。
毎日毎日朝ご飯、朝風呂用意しているとーちゃんには尊敬の念しかない。
「ふー、一日の疲れが抜けるー」
「ふへえ」
温泉の源泉引いてるうちの風呂は自慢だ。
沢山寮生がいるから大浴場だし。
足を伸ばせない風呂なんか考えらんない。
今日はよく歩いたから足を揉んどく。
ふへえ、気持ちいい……
「雪児どうだ? 那美さん手伝って」
「んー、探すのは大変だよ」
「そうか、気をつけるんだぞ、二人とも女の子なんだからお前が頑張るんだ」
おう!!
しかしとーちゃんの背中の筋肉は凄いぜ。
二メートル近い背丈に刀を振り回すからムキっとしてる。
うーん、オレもとーちゃんくらいでかくなりたい。
風呂上がりに牛乳一気で目指せ、とーちゃん超え!!
「ごめんねー」
朝一番に那美さんから貰った言葉。
本業の方が仕事らしい。
昨日は今日も歩くと思って早めに寝たんだが……
「それで、久遠も連れてくから……」
ソロプレイ禁止例なオレはつまり今日は出てはいけないと!?
警察の人の車に乗って手を振る那美さんと久遠を見送るオレ……
「じゃあ雪児……」
ポンと肩を叩くリスティねーちゃん。
冷や汗をかくというレベルではないプレッシャーであった。
「ぐんがー!!」
力いっぱい腕のバンクルを引っ張る。
残念ながらビクともしない。
流石は矢沢先生ご自慢の特殊リミッター。
ロードローラーでも歪まないと言ってたっけ……
ねーちゃんが仕事に行くにあたりかけられた強力リミッター。
体重制御ギリギリまでしか力が出ない。
ううう、信用ゼロだなオレ……
(いいか、帰って外れてたら……ふふ)
こ、怖い!! シャレにならない!!
仕方ないから今日は大人しく……
「なんてするわけないけど」
スニーカーを履いて外に抜け出す。
とーちゃんには置手紙で『旅に出ます』と伝えてある。
完璧な理由だぜ!!
ようするに一人だからいけないんだろ?
だったら仲魔を探そう。
海鳴だからいくらでもいるさ、暇な達人が!!
「うし、行くかー!!」
まず当てにしたのは那美さんの親友高町先輩。
あの那美さんの親友ならきっと超人に違いない。
やって来たのは駅前商店街の翠屋。
ケーキとシュークリーム、焙煎コーヒーが美味しい店……らしい。
実は入った事が無いのだ。
何せ店内は女性だらけ。
甘味が多い分仕方ないんだろうが男には入りにくい。
しかし今日は勝手が違うようだ。
ガヤガヤという擬音がピッタリ。
テラスをに小学生らしきちみっ子でいっぱい。
「……」
……コッソリ中を覗くとやっぱり中もいっぱい。
「…き…」
「むう……」
「…じ…」
高町先輩は……あー忙しそうだな……
「……ん!!」
仕方が無い次を「雪児さん!!」
!? んだあ?
声の元はテラスの一グループ。
はて小学生しかいないような……
俺小学生の知り合いはいなかったような?
「……お久し振りです雪児さん」
……誰だっけ?
テーブルにいるのは三人、何故か金髪な気が強そうな子。
栗色をした特徴的な頭をした子。
後一人……
黒い髪を伸ばしたヘヤバンドをした……
「ちょっとすずか、本当に知り合い?」
「全く分からないって顔してるよあの人」
んーどっかで見覚えあるような無いような……
特に髪の毛の特徴が……
「……あの、槇原雪児さんですよね?さざなみ寮の……」
何故か栗色の子がビクっとしたが、どうやら間違いないらしい。
誰? 寮関係もしくはとーちゃん達関係なんだろうが……
「んー?」
女の子は絶句したように目を見開いているが本気で思い出せない。
ごめんね、うんマジごめん。
「……これで分かります?」
? 髪を横にまとめて……
なんだろう、何か脳がリミッターかけて記憶を封印してるような思いが……
そう……あれは……
飛ん……で来るグーパンチメイ……ドって!?
「月村さん? また変なもん作って今度は小さくなったか!?」
「すずかです!! そっちは姉の忍お姉ちゃん!!」
……あーあーあーいたいた……
ずーっと前、何時会ったのかすら覚えて無いけど……
左右の子と机の上の変な生き物、多分高町先輩の妹が連れてきたってやつまでびっくりしてる。
すずか、ちゃん?何かすっごく不機嫌だぞ?
? そりゃ忘れてたのは悪かったが、いっぺん会ったっきりだし……
なんだ?
「すずかー、何大声だして、お、雪児じゃないこんちわー」
カウベルを鳴らして出て来た今度は大人の女性。
人なつっこい笑顔を浮かべて、リスティねーちゃん並のボディを包む店員服。
今度こそ月村忍さん。
かつて那美さんがバイトしていたお屋敷のお嬢さん。
兼マッドサイエンティスト(主に二足歩行ロボ)
確かなんとかの一族とかいう吸血鬼みたいな人……だったと思う。
三人とオレを交互に見比べた忍さんが自分の頭をコンコンと叩く。
多分テレパシーを使えという意味。
それに対してバンクルをコンコンと叩いて見せる。
通じたかな? 使えませんって。
はあ、っとため息をされた。
「あれ? すずかって雪児と知り合いだっけ?」
らしいです、忍さんも覚えて無いか。
そもそも月村の家関係は付き合いが浅いにも程がある。
オレから見れば、
知佳ねーちゃん(寮生)の親友南ねーちゃん(寮生)の友達(同級生の真一郎さんグループ)の後輩(さくらさん)の親戚(忍さん達)。
殆ど赤の他人だぞ。
そもそも去年那美さんが月村の家でバイトするまで、忍さんですらスッカリ忘れてたんだし。
「お、お姉ちゃんまで……」
……えっと何か不味い?
何かショック受けてるし。
「……塾行く!!」
「あ、ちょっと!!」
走ってっちゃった……
「すずか、ちょっと!! 失礼します」
「アリサちゃんもすずかちゃんも待ってよー、ユーノ君行くよ」
行っちゃった……
「忍さん……オレってあの子と接点あったっけ?」
「さあ? あったんじゃない?」
……忍さんち行ったのだってまだ知佳ねーちゃん達が高校のころ一回っきりだったし……
「まあ、後でノエルに聞いておくよ」
「よろしくお願いします」
理由が分からないと謝る事も出来ないからなぁ。
「そういえば何の用だったの? 買い物?」
あーあーそうだったそうだった。
「今お店忙しいよね?」
「見れば分かるでしょうに」
うん、周りの敵意が物理的になるくらい人口密度高いや。
結果、翠屋関係者。
全滅。
次、フェイフェイ家。
フェイフェイも去年入院したりしたが日々校庭で三年の先輩と高度な喧嘩をよくやるトンデモ人間である。
忍さんに聞いたが、さくらさんも海鳴にいない以上、いきなり二つ目で最後の当てだ!!
「フェイフェイ、ひまかー」
「昼時が暇でたまるかアホウ!!」
オタマが返って来た。ちくしょう。
中華料理屋なフェイフェイ宅、学校帰りによくお世話になっております。
「なんの用や全く」
「今日町内を徘徊する強い仲魔を募集中、入ってくれ」
「ヒマ人はメシ代払って帰れ」
ニベにも無く断られた。
これでも真面目なのに……
メシ屋に来たらメシを食えと注文する前にご飯が来た。
大変美味しくいただきました。
「お代はオマケして四百円にしたる」
チャイナ服なフェイフェイ。
さっき見たのがご立派な月村忍さんなせいで色々物足りないな。
「何や自分、何その目喧嘩売っとる?」
「滅相もない、四百円だな……」
うーん。
「鳳さま、どうか10円にまけて下さい、もしくはツケ」
十九円しかありません。
……ニッコリ布巾を渡された。
現在三時半、二時間半でやっと開放。
疲れたー。
もう今日は諦めようかな……
かと言って何か予定もあるわけじゃない。
美緒ねーちゃんはバイトだし、リスティねーちゃんは付いて来るなと突っ返されてる。
とーちゃんは管理人の仕事を休めないしよ。
……はあ。
帰るか、金も無いし……
現在地点から駅前に近いコースを頭に浮かべて歩きだしたその時だった。
サッカーのユニホームを着た小学生と、その友達らしき女の子。
別に珍しい訳でもないが、女の子が持ってるそれ……
手のひらから光を放つ蒼い菱形の石。
「あ、めっけた」
さて、状況を確認しよう。
女の子が持ってる石。
それがフラッシュみたいに眩いたと思ったら、目の前に現れた木の根っこ。
それが寮に隠されたエロ漫画の触手みたいにウニョウニョ広がって……
つまりうん。
捕まっちゃったZe☆
……某ソードマスター編集みたいに行っても胴に巻き付く根っこは緩まない。
バンクルを外せば能力解禁なのに……
「うぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……はあはあはあ」
ビクともしない、腕の方がもげそうだ。
そういえば最近HGS犯罪者が出た時用のリミッター作るとかフィリスねーちゃんが言ってたっけ……
「ぐあああ、どうせなら携帯で能力解禁とかねーのかこれー!!」
ええい、忍さんなら間違い無くノリノリで導入するあのシステムが入っていないとは!!
他に、他に何か無いか、逃げる方法!!
改めて周りを見回して考えるんだ!!
どうも捕まったのはオレだけではないようだ。
町中だったせいか多くの人が……
オレみたいに胴を捕まれた人、捕まって無いけど根っこで脱出出来ない人、手を万歳みたいに捕まれてる人、宙吊りでなんかが全開の……
「わーわー、何んだこれ、何んだよこれー!!」
……よし、もうちょっとジックリ腰を据えて観察しないと危ないな、うん。
右から左に首を回して観察しよう……薄い緑……
今度は左から右に……レース……
「こらー、誰か知らないけど見るなー!!」
み、見てない、見てないぞ!!
視界に入ってしまうから仕方ないじゃないか!!
決して立派なお尻とかを見ている訳では無い!!
しかし締め付けられる訳でも毒が出るでも吸われる訳でもない。
脱出不可能なだけ。
こんな大騒ぎならそのうちリスティねーちゃん達が来るだろう。
その時外してもらえるだろうか?
いや……
周囲に人が多すぎるからダメかもしれない。
HGS能力は開示されない方針だ。
寮にいると忘れそうだが基本秘密。
知佳ねーちゃんやリスティねーちゃんみたいに使って仕事に付く人もいる。
というか、基本能力を使って仕事をしてる。
あくまでオレの感覚だけど、力を使う事は手足を使うのと変わらない。
「どうやって?」と聞かれても「できるから」としか答えが無い。
そしてHGSとしての力は、無い人の方が沢山いる。
医学書にだって記述されない。
本当に、海鳴大病院の担当課や一部の人にしか知らされていない。
人が手に入れた新しい力、でもそれはオレ達が受け入れられるかとは別の問題なんだ。
……つまり、目立つ使い方しか無いねーちゃんは助けてくれない?
ダラダラと汗が垂れてきた……
と、とーちゃんと御袈月だってかなり目立つし……
美緒ねーちゃんはこんな大規模なのに対応できるか?
……ヤバい……
実はめっちゃくちゃヤバい?
「うおおお」
身体の自由な部分を思いっ切り振り回す。
自力で脱出できるならしたい。
くそー、何か無いかマジでー!!
能力が無かったらオレは人より重いぐらいしか特徴が……
あ。
ゆっくりとだけど根っこが地面に向けて下がると同時に緩んでいく。
そっか、今五メートルくらい持ち上がってたけど所詮は根っこ。
下から延ばしてるなら、下がれば緩むな。
ふっふっふ、まさかオレが人間を超える体重の持ち主とは思うまい。
多少胴体が根っこに食い込んで痛いが我慢だ我慢。
ようするに、能力を完全に切れば160をほこる体重を根っこごときが支えられる訳がない。
「よっと」
完全に緩んだのを確認して飛び下り同時に体重を念動で支える。
さてと、自由になったのはいいがこれまたどうしよう。
女の子から石をぶんどればいいんだが……
何処の樹木ダンジョンだよってくらい生茂る根っこ根っこ根っこ。
「うーん、撤退してリミッター外してもらうべきかなー」
もしくは重機持ってくるとか。
とにかく人力だけで進むのは無理だよ。
「仕方ない、携帯で報告でも」
取り出したその瞬間だった。
耳に入ってきたのはズガンとしか表現できない。
上空の、飛ばないと絶対に届かないところに走る光。
今は縄文杉なんかと比べ物にならない巨大樹木。
ピンクの光はその中間に突き刺さっている。
続いて響き渡るズルズルと樹木の触れる音。
何回か見た、あの石で巨大化したものが縮むのはゆっくりだ。
捕まった人達もゆっくりと降りてくる。
光の発生点を確かめるために先を見つめる。
……何もない、街のビル群と山だけだ……
つまり……
つまり……
「すげぇ!! ノエルさんついに光学兵器を!?」
間違いない!!
山の方からこう、トラ○ザムライザー!! な一撃だ!!
さ、流石は忍さん……なんとロマン溢れる発明を……
いや、下手をすればノエルさんとファリンさんでツイン○ライブくらいやってないか?
「やっべー見にいこ」
手持ちできるなら燃費の悪過ぎな能力の代わりに使おう。
これで俺もまともに戦力に!!
まあそれはともかく。
スッカリ縮んだ木の中心、そこにいる気絶した二人。
コイツらを運んで、石を回収しておかないと
「おい」
はい?
唐突に肩が捕まれた。
振り返るとそこには……
「さっきはよくもジロジロと……」
青筋を立てたうちの制服を来た……
「よくもまあ、珍しくいいの履いてる時に……」
勝気と全身で表現して、かつ中性的な。
どっちかっつーと男っぽい、だけど身体付きは完全に女性。
そして三年をしめす青のスカーフ、うちのクラスでは一番有名な……
「じ、城島先輩……」
「おう」
城島晶、名前まで男っぽいがれっきとした女性、兼フェイフェイとガチバトルを繰り広げる有名人。
「なんであんなん履いてるのー!?」
あれ? 何を口走ってるのオレ?
普通はごめんなさいだろJK、今からでも遅くない……かなあ?
「乙女の口封じパーンチ!!」
「はうわぁ!?」
風を切る音が左耳を抜けた。
耳はおろか顔全部がまっかっか。
「つか口封じってなんですか? どれですか、ちみっと食い込んで」
「死ねー!!」
ぎゃーマジ切れしたー!!
三十六計逃げるが勝ちー!!
「まてコラァ、逃げるなー」
不可抗力何ですー信じてー。
フェイフェイとガチ喧嘩できる人に勝てる訳がない鬼ごっこ。
後で回収忘れてたので家でも怒られた……
死にたい……
後書き
雪児、なのは組とニアミスする。
いえ、とらハ側の視点では、まさかなのはがあんな極太ビーム出すとは思わないでしょう!!
なのは側もジュエルシードを東北に送ってしまった雪児側には気がつかず。
合流ならずです。
いや、封印とかできそうなとらハ勢って葉弓さんか雪さんくらいじゃありません?
すずかとの邂逅をスコンと忘れている雪児ですが、何があったのかは次回で。
それでは失礼します。
>※鬼丸さんへ
>新作読ませていただきました。私もとらハ2大好きです
>ケイスケの執筆もがんばってください。後、気になったのですが
>真雪さんのPNのまゆこはひらがなだったと思いましたが、私の勘違いですかね?
……ごめんなさい間違いました。
とらハは全部プレイしましたが2の環境が一番すきなんですよ。
>鬼丸さんへ
>くーちゃんファンとしてくーちゃんに出番があるだけで感動……
>まあくーちゃんは実質(本気なら)とらハ3最強だからジュエルシード集め楽だろうなー ……
>淫獣はいらない(前にも言った人)
久遠にはうちの癒し要素としてがんばってもらいます。
とにかくもふもふですよ? もふもふですよ? 大事なことなので二回書きました。
>鬼丸さんへ
>虫みたいな羽…、封○演義の雷○子みたいな?
リスティの黒いのをイメージして書いてます。
かぶと虫の中の羽的なです。熱吸収の特性があるので真っ黒ですね。
>鬼丸さんへ
>HOME_REHOME 1話目の感想
>とらハ2がらみなのは、1からのファンな私としては嬉しいかぎりです。
>とらハSSだと扱いの難しいHGSな主人公もリリなのだと違和感無く溶け込んでくれそうですね。
>とらハお馴染みの暴露イベント(雪児くんのケース、種別、パターンにもよりますが心が読める等)
>なんかも有るのなら楽しみです。
HGSは魔力軍団に混じっても問題ありませんからねw
霊力主人公はいくらでもいるのになんでHGSがいねーんだ? が始まりでした。
>鬼丸さんへ
>とっても面白かったです、次回作orIFシリーズ期待しています。
>ちなみに行為が見つけられませんもっとヒントをお願いします!!
どうもです、ヒントですか……ソー○。
これ以上はメールで……
>※鬼丸さんへ
>ケイスケ連載中から読んでましたが、初感想です。
>自分とらハ2が好きなのでこれは期待大。
>なのは達と久遠が仲良くなって、
>久遠が温泉イベントで淫獣の正体を看破→淫獣的BADエンドwってどうでしょうw
>続き待ってます
さーせん温泉参加は無いです。
そこまでコネクションが強くありませんので。
追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、