薄暗い部屋の中で、ガジェットの残骸を前にたたずむ白衣を羽織った2人の男がいた。
そして右側の男はめがねをかけ、残骸を見て何かを考えているようだった。
・・・ふむ、なるほど・・な。
何かを考えそして一人で納得する。そんな男に対して、視線を動かさずもう一人の男が話しかけた。
「副主任・・・ガジェットは初めてご覧に?」
副主任と呼ばれた男もまた視線を残骸から話すことはない。
「うん?まぁ、そうなるね。映像では何度か見たことはあるんだが・・・にしても君はこれを見てどう思うね?」
「ただ命令されたことを忠実に遂行する人形・・・。といったところでしょうか?」
「ふむ・・・。だがね、それをいってしまえばストレージデバイスをはじめとする局のデバイスも、結局同じことだね。」
なぜここでデバイスの話が出てくるのか・・・。よくわからないという顔をする相手を尻目に副主任はこう続けた。
「・・私はね、これからの戦場はこういったものが戦ったほうがいいと思うんだけどな。」
そういい残しきびすを返す。部屋にはますますわけがわからないという顔の男と残骸だけが残された。
●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第7話 〈2人の上司は密会中〜前編〜〉●
・・・・まったく、なんでこんなことに・・・・。
いやねそりゃ僕も悪かったですよ・・・。
ただここまで・・・
ねぇ・・・怒るとは思わなかった。
僕は今朝レイナさんに言われたことを思い出す。
『ライアに見惚れた罰として今日は、あたしの仕事分も含めて少年君が全部担当ね!』
言い返すにも、一方的に指示だけされた挙句、言い返せないほど怒気を含んだ声だったからなぁ・・・。
何度も言うが・・あれは僕が健全な男の子だという証拠だからね!!・・・・まぁ説得力は・・・無いと思うけど・・
で、だ。今僕はミッドの首都クラナガンにある地上本部の技術開発部へ来ている。
正確には開発部の建物の前だ。
以前回収したガジェットについて、色々聞きたい事があるそうで、本来はレイナさんが来るはずだったんだけど・・。
上記の理由で僕が来ています・・。ホントにいいのだろうか。呼び出された人間が行かなくて・・。
一応、ここに車でレールウェイの中でレイナさんに渡された、資料には目を通したが。
ひょっとすると、レイナさん・・・。ただ単に押しつけたかっただけなのかな。いきなり怒ってた割にはこういう資料もあるし・・
そう考えると、色々作為的な物を感じなくもない。まぁだが今は怒っている怒っていないは関係ない
ここまで来たら仕方ないだろう。何より人を待たせているという事が、僕を少し急がせた。
時間はまだ余裕があるけど・・。まぁ遅れるよりはましだろう。僕は気持を切り替えて開発部の中へ入った。
受付で「特観ですけど・・」と言ったら意外にもすんなりと通してくれた。もう少し、何かあると思ったんだけど。
僕は、受付の人に先導され応接室に通された。12畳ほどのそこそこ広い応接室だ。大理石でできたと思われる高そうなテーブルを挟むように2人がけで黒い革製の
ソファが2つ置かれていた。
ふと、僕はそのソファに先に腰掛ける1人の男性に気がついた。腕と足を組み綺麗な青い髪の毛を持った――――――。
「スタークさん!?」
「・・ん?なんだお前か。」
僕の驚きの声に、チラッと流し眼でこちらを確認する形で反応したスタークさんは、いつも通り落ち着いた声で話した。
そんな事を気にする様子も無く、案内してくれた受付の人は「では、もうしばらくお待ちください」と言って出て行ってしまった。
じゃ、若干気まずい・・・。スタークさんと会うのは先日の高原以来。あの日からもう数日たっている。正直スタークさんにお前呼ばわりされたり、睨まれたりと
良い思い出が無い僕にとってこの場の空気は少し嫌だった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言の時間が凄く苦しい・・。
スタークさんは最初チラッと僕の方を見たものの、それからまた腕をくみなおして目をつむっている。
部屋に響くのは、服が革のソファと擦れる音だけ・・。
・・・・何分流れただろうか。
時計を見る・・。っげ・・。まだ10分も経ってない・・。
1人で苦笑いなんぞしてしまいそうになるほど、ホントに場が苦しい・・。
大体なんで・・・
「・・・まさかお前が来るとはな。正直意外だった。」
え?思いもよらない向こうからの会話だった。正直この空気をどうにかできるなら、何でもしてやる!と思っていた僕にとってそれは最高の救いだった。
この期を逃してはいけない。逃してしまえばまたあの空気に逆戻りだ。
「まぁ、そうですよね。実はあの後レイナさんとちょっと色々あって・・今日1日は全部の仕事押し付けられちゃいました。アハハ・・」
「ん?お前もか・・。」
スタークさんの顔が若干驚きの色に変わる。ん、僕もかって言うと・・・???
「いや・・俺もも小隊長に難癖付けられて・・・・今日の隊の仕事を小隊長分全部任された・・・。」
に、似た者同士だなぁ・・。まさかタイミングまで一緒だとは。僕は心の中で苦笑い。
スタークさんもため息をついている。
「・・・あのー」
「なんだ?」
「苦労・・されてるんですね・・」
「・・・やかましい」
スタークさんはそう言い捨てるとまた、目をつむってしまった。でもさっきの「やかましい」っていうのは、誰が聞いても怒っているようには聞こえなかったな。
そんな話をしていると、不意にドアが開き白衣の女性が現れた。
んん〜〜〜〜〜〜っ!
あたしは、座りながらだけど思いっきり指の先から足の先まで伸びをした。
いや〜少年君に全部任せたから、今日は1日場所は観測課だけど羽根を伸ばせるよ〜・・・・・というわけにはいかないんだよなぁこれが。
あたしは壁掛け時計を見る。もうそろそろ・・・。
あたしが耳をすませると、玄関のベルが鳴る音がした。
うん!時間ぴったり〜。
あたしはパタパタと階段を下りると、玄関のドアを思い切り押した!
ガチャリという音とゴン!っという鈍い音がしたのはほぼ同時ぐらいだったかな?
あたしはかまわずに外を見やる・・・・・っておや?誰もいない??
なんだイタズラか〜。まったく・・・ピンポンダッシュとか何年前のイタズ
「下だよ・・・馬鹿やろう!!」
あたしの声を遮るように顎の下あたりからドスの聞いた低い声・・・何!?お化け!?そう言えば怪奇現象って昼間にも起こると聞いた事が・・・。
「・・てぇめぇ・・・・このドアどう見ても引き戸だろ!!んで開き戸なんだよこのデザインで!!」
そこには、尻もちをついたままこっちを睨んで玄関のドアノブを指さす私服のライアがいた。左手で覆っている鼻がしらが赤い。痛そうだけど・・・どうしたのかな。
とりあえずやかましいから・・・。
「ほ〜れ、もいっちょう!」
「あでッ!」
これぞドアパンチだね。
いまからちょっと密会です。
応接室に入ってきた女性は、優しそうな顔つきで、髪の毛と目の色は共に深緑。やわらかい物腰の女性だった。
「今日は、わざわざお呼びだでしましてすいませんでした。私、第2技術開発部副主任のハイランド・ジムニーと申します。」
「・・・スターク・ルシュフェンドです。よろしく。」
「ラウル・スカッフです。よろしくお願いします。」
ジムニーさんは優しい目で僕たちの自己紹介を聞くと、僕たちを呼んだ理由を話し始めた。
「今日お呼びしたのは、他でもありません。ガジェットについてです。」
そう言うとジムニーさんは複数の空間モニターを操作し、ガジェットの映像を流し始めた。
「ご存じのとおり、ガジェットはロストロギアを狙って行動する、AMF展開能力を持った質量兵器です。」
僕たちは淡々と話すジムニーさんの言葉に耳を傾けた。
「これまで確認されたガジェットはこのT型と呼ばれるカプセル型の物と、あなたたちが遭遇した丸い球体型の新型この2体。これは間違いありませんか?」
その問いはスタークさんに向けられた。
「はい、間違いありません。」
スタークさんは静かに答えた。
「その、特徴を教えていただけますか?」
これもスタークさんへだ。
「とにかく、固い。それが最大の特徴でしょう。機動力は一応多脚型の歩行ユニットをつけてはいましたが、それほど高いとは言えません。
AMFもおそらく強化はされていたのでしょうが、相手が使用したのが最期の最期でしたから・・。はっきりとは申し上げられませんが・・。」
ジムニーさんはそれを細かくメモに取っていく。
そして小声でなるほど・・・とつぶやくといきなりこんな事を聞いてきた。
「あなた方は・・・・ガジェットと、いうものをどうお考えになります?」
この質問には2人そろって「え?」と声を漏らしてしまった。
「え、えと・・・どう、とは・・そのどういった意味でしょうか?」
もらした声を聞かれ、そのまま黙りこむのも不自然だと思い、僕はそれに強引に言葉を付け足した。
「あぁ、ごめんなさい・・いきなり変な質問でしたわね・・。」
ジムニーさんは微笑すると、こう聞きなおしてきた。
「ガジェットを、兵器としてではなく、ただの道具として見た場合あなた方は、あれは使えると思いますか?」
僕はかすかに、スタークさんの眉が動いたのが分かった。
ふ〜ん、ここがレイナの職場ね。
外見は一戸建ての普通の家だけど、2階中にゃいろいろ機材が詰め込まれてやがんな。
ってかよく、床が抜けねぇな・・。
「お前ら、ここに住み込みなのか?」
「ん?そうだよ、観測課なんて、場合によっちゃ何日も観測気に張り付けだからね。いちいち帰ってなんていられないでしょ。」
・・・なるほどな。ま、そりゃそうか。ってかあいつこの前もジャージだったけど・・今日もかよ・・。
あいつそれ以外に服持っていやがんのかね。上はタンクトップに半そでの上着を羽織って、下はタイトジーンズっていうラフな格好ではあるが、
それでも一応はヨソいきの服ではある。言っちゃあ悪いがあたしはレイナにとって客なわけだし、もうちっと・・・なんていうか格好に気を使えよ。
そんな事気にも留めないといったレイナを見ていると、なんだか気を使ってそれなりに選んで着てきたあたしが馬鹿見てぇだと思えてきちまう。
なんて事を考えながらコーヒーを用意しているレイナの後ろ姿を見つつ、近くにあった椅子にドカッと腰を下ろす。
にしても・・。
「思春期の男が、てめぇみてぇな奴とはいえ女と一緒にねぇ・・」
「ん〜なになに〜?気になるの?色々おしえてあげようかぁ〜??」
「ふん、馬鹿言ってねぇでコーヒー早くよこせ。」
あたしはレイナにコーヒーをねだると、その後に「あ、砂糖は2つな」と付け加えた。
レイナはあたしの近くの台にコーヒーを置き、イタズラッぽい笑みを浮かべて言った。
「それに、少年君は思春期って言うにはまだ少し早いよ、まだ12だよ?」
あたしは一口コーヒーを口に含むと、ジト目でレイナを見返した。
「ば〜か、そういう時期っていうのは意外としらねぇところで成長してくんだよ。・・・・・身体も精神的にもな」
ふ〜んと言ってレイナも自分のデスクに腰掛けた。分かってんのかね。
「そういえば、ライア今日はスターク君をなんて言って出したの?」
ふとレイナがそんな事を聞いてきた。
「お前は?」と質問を質問で返す。
あたしの対応に少し「えっ?」となったがレイナはすぐに答えた。
「あぁ、少年君なら、今日は技術部に行かせたよ。ライアの事を理由にね〜」
あたしの事だと?気になったがあえて聞かないでおこう。どうせまた、こっちがため息つくような理由だろうし。
そんなことより・・・・。
「なんだあいつも行ってんのか。スタークも同じところに行かせてる。前のあたしへの色々な・・・まぁ失言とかを理由にな・・・」
「え!そうなの。」
あたしも少し驚いたが、レイナも驚いたようだ。
「まぁ、資料は渡してあるんだ。大丈夫だろ」
「まぁね、あたしもそれは心配してないけど・・っていうか、失言って。冗談の域なのに・・・かわいそうだなぁ〜」
冗談だってのは分かってんだよ・・。しかたねぇだろ、それ以外に理由が無かったんだから。
そんなたわいもない話をして、コーヒーを飲み終わる。そろそろ・・本題に入ろうか。
「さぁて、色々聞かせてもらうぜ?あのチビすけの事もな。」
「こっちこそ、あのスタークって補佐官の事とか色々聞かせてもらおうかな。」
互いにイタズラっぽい笑顔を浮かべてあたし達は向き合っていた。
「・・・・道具として・・見る?」
あいつが声をあげて頭に疑問符を浮かべている。
俺はそれをチラリと見やると少し思案して彼女が何を言いたいのか少し分かった気がした。
だが確信は持てない。もう少し探ってみるか。
「道具・・つまり、武器として、質量兵器としてではなくという意味でしょうか?」
彼女は頭をゆっくり縦に降った。
俺はもう少し探りを入れてみるつもりだったが、その考えはもうやめた。さっきの問いで、あらかた何を言いたいのかが分かったからだ。
「つまり、あなたは・・・あれを使いたい・・と?」
「・・・・・。」
彼女は若干うつむき押し黙る。・・・・否定はしないのか。
そして俺は若干怒気をはらませ、相手を睨む。
「・・・・あなたは何を仰っているのか・・本当におわかりなのですか?」
「・・・・・・えぇ、分かっているわ。それはつまり・・そう言う事よ。」
不意に話し方が変わった。雰囲気も少し違って見える。
「自分には、あれを使うという事自体がなかなか納得のできる話ではないのですが?」
「そうかしら。人間が金づちで釘を打つようにあれもまた使い方さえ変えれば道具になる。ね、簡単な事じゃない?」
「あれは、兵器だ。人を殺す事のできる。殺める事の出来る兵器なんだ。はじめからそうやって作られた!
命令されたままに忠実に動くただの人形でしかない!少なくとも俺にはそうとしか取れない・・。他の奴らだってそう言うはずだ・・」
「でも、それを言ってしまえば、デバイスだってそうよ?何が違うのかしら?」
「な、何?」
デバイスも・・だと?俺は自分の愛機を思い浮かべる。確かにデバイスも命令に背く事は無いが・・。
「だが、目的のために奴らは手段を選ばないだろう!」
「最善の策を合理的に判断しているとも取れるわね。」
・・・くそっ!何なんだこの人は!
やりづらい。
「それで、どうなのかしら?あれについて・・どう思うか。ラウル君はどうかしらね?」
俺はやつの方を見る。あいつはこの状況に少し驚いているものの、目だけは彼女をしっかりと見ていた。
いきなりの事で少し、掴み切れていないところもあるけど、スタークさんとのやり取りで何を聞かれているのかは分かった気がした。
さっき、スタークさんはガジェットを兵器と呼んだ。そうとしか取れないと。
それは前線で、ガジェットと戦ってきた者だからこその重みも感じられた。
ただ・・・正直な事を言えば僕には、ガジェットを、もし仮に他の事に使えるのならとふと思うこともある。
初めてガジェットを生で見た時、大変不謹慎だが、微妙にちょっと可愛いかもとか感じてしまった。
カプセル状の機体が群れでゴワーッと草原を駆ける姿を、思い浮かべるとそのなんとも間の抜けた動きに笑みがこぼれてしまう。
こう言う考えはおそらく僕が前線で戦っていないから、目の前で大切な人たちがガジェットに傷つけられていないからそう思うのかもしれない。
でも・・・。僕は色々思考を巡らし言いたい事をまとめてジムニーさんを見た。
「・・・僕は、ちょっとアリかもしれないと思いますけど・・・。」
「ッ!?お前!」
スタークさんが驚いたように声をあげキッと睨んでくる。
それに内心びくつきつつ、言葉をつづけた。
「い、いや、例えば・・例えばの話ですですけど・・・。他の・・・そうあれだけの大きさがあれば工事とかにも使えるし救助だってやろうと思えばできそうだし・・。
そ、それにAMFの展開能力があるなら普通に局員の防御にも使えそうだし・・・それで・・そのありかなと・・思って・・・。」
「・・・うぅむ・・・・いやそれは・・確かにそうかもしれないが・・・。」
スタークさんは、言葉に詰まりながら、若干の関心を示してくれた。
そして、聞いたジムニーさんはというと・・。
「フフっ、意外な答えだったわ・・工事・・救助ね・・・フフフッ、あなたとはどうもお話が合いそうね。」
笑っていた。んでもって、いやその・・・あ、合いそうなの??
僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。
その後もしばらく色々とガジェットの話をして、解散という流れになった。
「今日はありがとう。おかげで良い意見が聞けたわ。」
「い、いえ。こちらこそ、参考になったかどうか正直微妙な気持ちでしたし・・・。そう言っていただけてすこし気が楽になりました。」
「・・・・こちらも、非常に興味深いお話でした・・。それでは自分はこれで、失礼します。」
席を立つと、応接室のドアに向かて歩きだすスタークさん。
しかしドアノブに手をかけたところで、その動きが止まった。
「・・・その、途中で話し方が変わりましたが・・・・そっちが普段ですか?」
「・・・・えぇ、そうよ。いっつもいっつもあんな堅苦しい話し方なんて出来るわけないでしょ?」
スタークさんはその返事を聞き「そうですか」とだけ返して部屋を出て行った。
僕も出ようとした時、ふと一つ思い出した事があった。
・・・・デバイスどうしようかな。
僕のS3Uはあのスバルさんとの模擬戦の時に壊れてから、仕事に追われていたからまだ修理していなかったのだ。
ここにはプロもいるし・・・。何か壊れにくくするアドバイスが貰えるかもしれない。
「すいません、ジムニーさん。ちょっとお願いがあるんですが・・。」
声をかけられたジムニーさんはキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「んでさ、少年君はここに配属されたっていうわけ。分かった??」
「ふ〜む・・・まぁなんだな。一応それなりには苦労はしてやがんだな。あいつなりに」
まぁそれが周りから見れば、ちょっと軽く見られちゃうのがかわいそうな事なんだけどね・・。
「それで、次はスターク君の事だよ。」
「分かってるよ、で、何がき聞きてぇんだ、あいつのよ?」
あたしは少し思案すると、こう切り出した。
「彼・・・砲撃魔道師だよね。ライアが面倒みてるの?」
「まぁな、あいつ3年前からあたしの補佐官になったんだけどよ。まぁ無口な奴でさ。」
それはライアがしゃべりすぎなんじゃないのと思うあたし・・。でも無口という割には・・・。
「こないだあった時には、結構しゃべってたじゃない。」
「最近なんだっての、ああなってきたのも。ほんともう初めのころは、諸連絡とか、通例的な報告ぐらいしかあいつと話さなかったんだ。
だからよ、あたしが・・・・」
そこでライアは言葉を区切る。あたしが・・・・何?
「あたしが・・・・その・・・無理や・・・・・話しかけたりとかでようやくな。」
ライア完全にいま無理やりって言おうとしなかった?
まぁライアはなんだかんだ言って面倒見がいい。姉後はだとでも言うのだろうか。それはパートナーを組んでいたあたしだからはっきりと分かる。
口は悪いが根は凄く良い人だから、そう言うのが気になったんだろうね。
フフッ、無理やり話題を探してスターク君に話しかけているライアの姿が目に浮かんで、噴き出してしまった。
「何笑ってんだよ?」
怪訝な顔で見てくるライアに「別に〜」と軽く返す。
そして話は少年君とスターク君の魔法の話へと移った。
その話の移行は、ライアの「あのチビすけはどうやって鍛えたんだ?」っていうなんとも分かりやすい切り出しからだった。
「そうだねぇ。少年君は、一応長物使いとしてかな。間合いの取り方とか身体の使い方とかの基礎から教えてるけど。」
「長物?そういやぁ、あいつのデバイスまだ見てねぇな・・・。」
確かに・・・それにライア達に会った時少年君のデバイス壊れてたし・・。
「で、長物っていうのは?槍か、刀か・・そんなもんかよ?」
「うんにゃ、言ってみれば大鎌かな。」
「・・・・サイズか。」
ライアが『また、変わった物を・・』って顔でこっちを見てる。
ライアは基本的に戦闘においては合理的な考え方をする。
ライアがフィンガーレスグローブ形状のデバイスを愛用するのにも訳があるのだ。
あのデバイス「イグナイト」は特注品で、魔法の起動時間や詠唱時間、また発動に伴うタイムロス等を極限にまで減らした、ストレージデバイスだ。
今はどうか知らないが、昔パートナーだった時はストレージデバイスの容量はまだまだ余裕があるにもかかわらず、頻度の高い魔法だけをプログラミングして
デバイスの動作をとにかく早くしていた記憶がある。そうすることでユニゾンデバイス程ではないが、処理能力という面で大きく他のデバイスを引き離していた。
そして形状をグローブ状の腕に直接はめ込む′`のデバイスにすることで、S2Uなどの杖状のものよりもより身体の近いところで魔法を行使できる。
近いという事はそれだけ、魔力のインプット、アウトプットの時の感触がダイレクトに伝わりやすい。
より正確に、より早く、直感的に魔法を行使したいライアにとって武器形状のデバイスやインテリジェントデバイス等ははあまり好まれたものではないらしい。
「それで、どんな感じなんだよ、実際。」
「一番最近だと・・・。六課の娘とやって・・・勝ちかけた・・かな。」
少し歯切れの悪いあたしに、ライアはまゆをすこし細める。
「勝ちかけた?んだよその表現は・・・。普通は勝ったか負けたかだろ?」
「う〜んなんていうか・・・そのデバイスの故障で勝てる戦いを逃したというべきか・・・。まぁそんな感じ。」
あたしは大まかな事実だけをライアに伝えた。ライアは一瞬何かに反応したけど、すぐに・・・
「そりゃ・・・何とも残念だな」
と、目をそらして言った。
あたしは、話題を変えるように今度はスターク君について聞いてみた。
「あいつか・・。あいつはよなんつっても高い砲撃センスがあるんだ。」
ライアはそう切り出すと、次々に自分の部下の事を話し始めた。
「それに良い目を持ってるしな。立場上あいつの本来のポジションはセンターガードなんだが・・・。」
センターガード。その部隊の指揮を出すべき人間がい就くポジションだ。いやライア普通ならあんたでしょう、センターガードは・・・。
「スキルや適性を考えると、現状ではフルバックの位置においてるんだ。」
フルバックといえば主に支援のポジションだ。ふつう砲撃魔道師をそんなところに・・・?
「その適正ってのは?」
「あいつの最大の持ち味は正確な射撃もそうだが、あいつのデバイスヘリオスの持つ圧倒的な射程なんだ。遮蔽物のなにもないところだったら、
1人で戦闘エリアをカバーしちまうほどな。それに何より・・。」
「何より?」
「あいつをセンターガードにおいたら、フルバックとそんなに位置が変わらねぇことに気がついてな・・・。」
そ、そうなんだ・・・。やっぱり経験あるけど難しいよね指揮する側って・・。
にしても、ライア気づいているかどうかわからないけど、スターク君の話をする時凄く良い顔をしてる。あたしもそうだったのかなと少し気になりもしたが
それだけ、互いに少年君もスターク君も大切に思っているからこそなのだろうとあたしは勝手に決め付けた。
あたし達はまたしゃべり足りない。まだまだ密会は続きそうだ。
〜あとがき〜
どうも、しるくです。
お読みいただきまして誠にありがとうございます。
さて、前編はどうだったでしょうか・・・というか書いてるうちに
伸びていったっていうのが理由ですが・・(汗
何気に自分で書いておいてですが、ドアのネタは好きです(爆w
僕もあるんですよね〜
地元のうどん屋の出口、取っ手があるので開き戸かと思ったら引き戸だったっていう経験が・・
1人でドアをガンガン・・!・・今考えると恥ずかしい・・ッ!!
そんな感じでゆる〜く生きてますw
それでは?またお会いしましょう!失礼しますん!