うぅ〜ん・・・ファイルの山が〜・・・。

ファイルの山が襲ってくるぅ〜〜・・・・・・。




誰か〜〜・・・・助け・・・て・・。

























●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第5話 〈似た者同士はケンカする?〉●



・・・・。
流し眼で朝日差し込む部屋でファイルの山に埋もれる少年君を見る。

・・・ちょっとやりすぎたかなぁ〜・・・。あはは・・流石に3日続けて徹夜はきつかったか・・・。


まぁそれでもしっかり、仕上げてるところは流石かね。

ほんじゃあまぁ、あたしもボチボチファイルのチェックをー・・・って、ん?

ドサッと自分の椅子に座った途端に文書通信が・・。

宛名は・・・・機動六課・・?おや珍しい。

ふむふむ、なるほどね今朝がた起きた戦闘で破壊されたガジェットの残骸のサンプル回収ね。

観測課は、こもって観測が基本だけどまれにこういう出張任務が来るんだよなぁ

まぁあたしはこっちの方が好きだけどね。

・・・で、場所はー・・・。意外と遠いなぁ。

今から出ても着くのは昼ごろかな。

ま、正式な要請だから行かないとね。

あたしは、デスクから愛車のカギを取りだす。そしてファイルの山に埋もれた部下を叩き起こす。

「ほら少年君、起きなよ。今からちょっと出るからさ」

「・・・うにゅ〜・・」

寝ぼけ眼でファイルの山から顔をゆっくり上げる少年君。・・・やば・・ちょっと可愛い・・。

ちょっと、可愛すぎて・・。

ファイルをこう・・頭に。

「ゴスッとーーー!!!」

「あいたーーーーーーーッ!!!!!」

目が覚めたみたいだし、ほら行くよ!
























気がついたら、僕はレイナさんの車のナビシートでした。

っていうか、リアルに目の前に星が見えた・・・。漫画とかで星が回ってるけどあれって、別に表現方法とかじゃなかったんだ・・。

まぁそんな事を、体験なんてしたくも無い・・。

殴った本人をジト目で見る。

当の本人はその視線に気づいたのか笑い返してきたけど・・。ホント絶対いつか、ぎゃふんって言わせてやる。

「で、どこ向かってるんですか?」

若干不機嫌混じった声で、レイナさんに質問する。

「んん?何やら不機嫌だねぇ。カルシウム足りてるぅ〜?」

「多分本当にカルシウム分が不足してたら今頃、レイナさんにかみついてますよ・・・。」

「きゃーケダモノ〜・・・なんちって。」

全然反省してない!それにちっとも会話が前に進まない!

僕のいら立ちレベルが上がってるのを感じ取ったのか「あはは、ごめんごめん」と軽く左手をあげて謝るレイナさん。はぁ・・もういいや・・。

「で、本当にどこ向かってるんですか?」

「あぁ、そうだったね。今から行くところはあたしらの観測所から車で2時間!人里離れた高原で〜す。

そこにガジェットが現れたってんでその残骸のサンプル回収にね〜」

高原・・・か。ん?でもなんでそんなところにガジェットが?

あの時スバルさんと談笑してるときにガジェットの話は聞いていたけど、あれって何かのロストロギアを目当てに動いてるんじゃなかったのかな・・。

「まさか、その高原にロストロギアが・・?」

「う〜んどうだろうね、ただ局内でもそれほど騒ぎになってる様子は無いし、それにそういうの関係だったら、六課が動くでしょ。
今回戦闘にあたったのは陸士108部隊ってことだから、まぁただ単に出てきただけってことなんじゃないの?」

出てきただけって・・また適当な・・。

「まぁさ、あたしらがやることは、そういうことを考える事じゃないし。あたしらがやるべき事はサンプルの回収とそれをしっかり六課まで持っていく事だからね。」

「まぁそれは・・そうですけど。」

僕はそう言うと、ふと窓の外を見る。車は今、ハイウェイを走っている。ハイウェイの防音壁の周りの景色は湾岸地区の青い海から緑がきれいな山岳部に入ろうとしていた。

このあたりは、ハイウェイが山を突っ切っているために短い間隔でトンネルがやってくる。

僕は人工的なコンクリートの壁と緑豊かな自然の2つの風景を見ながら、まだ若干覚めきらない頭でこれから行くところや、ガジェットのことを考えていた。

この先、色んな意味で大きな出会いがある事を、この時の僕は知る由も無かった。






















〜同刻・高原〜 武装局員たちが、忙しく動き回って事後処理に追われている。

それを見守る青年と女性がいた。

青年の方は、空間モニターで他の局員と連絡を取り合い、手際良く支持を出して現状を女性の方に報告する。

「小隊長、ポイント2214の残骸回収は終わったようです。後別ポイントで、また新たなガジェットの残骸が見つかったとの報告が・・・って聞いてます?」

小隊長と呼ばれた女性、赤いツンツンしたセミロングの髪型で目つきは、鋭く長身でプロポーションも抜群だ。服装はバリアジャケットを展開しており、

黒のピタッとした上下一体型のインナーに青を基調としたロングコート、そしてそのロングコートの腰部左右に保護用の甲冑がついていた。

ただ足もとは、シューズの先端にボルトが2本付いているかなりゴツゴツしたシューズを履いている。
「ん?あぁ聞いてるよ、はぁ・・なんでこうもまた、広範囲に散らばっちまったのか・・。」

女性は、荒っぽい口調で毒づく。

「なんで・・ってれは小隊長が加減も無く色々ぶっ放すからこんなことになったんでしょうに・・・。」

「おい、スターク?てめぇあたしのせいだって言いたいのか?」

スタークと呼ばれた青年は青く長いストレートヘアに、整った顔立ちで身長は小隊長と呼ばれた女性よりも若干低い。

彼もまたバリアジャケットを展開しており、ブラウンを基調とした上半身丈のコートを羽織りその下にはもう1枚紺色の上着。

下は、一般的な丈夫な素材でできた長ズボンで、その裾を甲冑の付いたブーツの中に入れ込んでいる。
「じゃあ、誰のせいだっておっしゃるんですか・・。まったく、大体ガジェットドローン1機倒すだけにあんな派手にぶっ放すのは私の知る限りでは、第6小隊小隊長、
ライア陸曹しか知りませんけどね。」

スタークはそう言うとライアをジト目で見る。ライアはケッとばつの悪そうな顔をするとと視線を残骸回収にあたる陸士の方へ向けた。そしてそれを見ながらスタークに話しかける。

「そういやぁよ、スターク。この残骸回収しに来んだろ、誰がいつごろ来んだよ?」

「誰・・とまでは。ただ特定地域観測課の局員が今向かっていると六課の方から連絡は入っていますからもうそろそろ着くころでしょう。」

「ふ〜ん・・・特観ね・・。ま、だれでもい〜わな。要はあたしらはこの残骸を引きわたしゃ良いんだからよ。」

ライアは偶然足もとに落ちていた残骸の一部をひょいっと拾い上げると、それをスタークに向かって放り投げ「後は任せた〜」と言いながらベースキャンプへ向かって行った。

スタークはやれやれといった表情でライアを見送る。ただこの時スタークは知る由も無かった。自分にとってそして小隊長にとっても大きな出会いがある事を。。






















あの後しばらくして、ハイウェイを降りた僕たちは、ずーっと山道をひたすら上っている。

いまさらだが、レイナさんの車は今にしては古いガソリンエンジンの4WDだ。

この前、なんか自慢げに話してたのを思いだした。結構探すのに苦労してようやく見つけた代物らしい。

SUVとかいうボディ形状で、悪路もなんのそのだとか言ってたっけ。

まぁそのおかげか、山道はそんなに苦も無く登れてるわけだけど・・。

しばらく道なりに進むと、簡易的なゲートが見えてきた。その両脇に局員が立っている。

レイナさんが車を止めて窓を開け近寄ってきた局員の人と何やら話をしている。

「・・あぁちょっと待ってください、少年君IDカードの提示がいるんだって。」

「IDカードですか・・えぇと・・・あ、はい。」
僕は差し出されたレイナさんの手に自分のIDカードを渡す。

レイナさんは自分のを含めたIDカードを局員の人に渡して局員の人がIDカードを専用端末でチェック。

ほどなくして、通行の許可が下りた。

また、レイナさんは車を発進させる。

車は更に山奥へ。本当に人里離れたところだなぁ。ただ、緑は豊かだ。

・・・あれ?そう言えばIDカード返してもらってないけど・・。

「レイナさん、僕のIDカードは・・・」

そう話を振った僕に、レイナさんはいたずらっぽい笑顔で、こっちを見ていた。

「へぇ〜これが少年君のIDカードねぇ・・・。」

「な、なんですか・・。なんか・・いつも通り嫌な予感しかしないんですけど・・・。」

「嫌な予感〜。どうしてぇ〜?」

その顔見たら誰だってそう思うよ!知らない人が見ても絶対この顔からは良い予感なんてしないと思うけど・・。

「このIDカードあたしが預かるよ。」

は!?何を言ってるのこの人!馬鹿じゃないの!?いやむしろ馬鹿なの?局員が自分の事を示すためのIDカードを持ってなかったら、どうやって自分を証明すればいいの!?

「いきなり何を言い出すんですか!?」

「いやいや〜。これを持ってれば少年君は、もう逃げられない。まさに首輪をされたワンコ同然!」

「わ、ワンコ???」

「何やるにも必要なこのIDカード、これを盾に脅せば・・・あたしの仕事量がグッと減る!」

こ、こ、この・・・馬鹿上司!!!

な、なんて事を!

「それに加えて、必要な時にIDカードをねだってくる少年君・・・・やば・・・可愛い・・」

さ、最近レイナさんが僕を見る目が変わったような気がするのは多分気のせいじゃない…っていうか!

「何馬鹿なこと言ってんですか!良いから返してください!ぼくのIDカード!」

「あッ!」

ヒラヒラと余裕かましていた左手から、IDカードをひったくる。すると勢いよくまとめて引っ張ったからレイナさんのIDカードまで一緒にひったくってしまった。

うわ〜若い・・これ写真は使いまわしして・・・ん?

ふとIDカードの記載に目がとまる。それは前所属の項目。・・・108部隊・・・・?108っていえば、今日これからサンプル回収に行くのも・・・って。

「もぅ、まったく人のIDカードジロジロ見ないの!」

などと考えていると素早い動作で取り返されてしまった・・・。っていうかあなたがそれを言いますか・・。

にしても・・・108部隊所属だったのか・・。武装局員だったってことだけしか聞いてなかったけど。

「な、何かな、今度はじっとあたしの顔を見ちゃって・・。あ、写真よりもきれいすぎて見とれちゃった?」

「あ、いえそれは無いで・・・・・すっ!!!!!」

ど、どっからファイルを・・。今日2回目のお星さまを見ました。

そんなやり取りをしている間に、緑の芝生で覆われた高原にあまり似合わない少し薄汚れたテントが見えてきた。

多分あれがベースキャンプかな、周りで色々大勢の人が動いているし。

僕たちは、ベースキャンプの近くに車を止めてここの責任者に会うべく本部へと足を進めた。






















ん?見慣れない車だな・・・一般車?

俺は、ゲートの局員に連絡をつなぐ。

「一般車を入れたのか、何者だ?」

『あ、サンプル回収の観測課の人間です。IDも確認しました、間違いありません。』

あぁ・・ようやく。俺は「分かった」と言ってモニターを閉じると、車から降りてきた2人の方へ歩み寄る。

女性と・・・・・・チビか。

「お待ちしておりました。自分は108部隊第6小隊補佐官スターク・ルシュフェンド二等陸士です。自分の事はスタークとお呼びください。名前では長いですので・・。」

「どうも、特観の責任者レイナ・リーンバーンと・・・」

「同じく、特観の観測員のラウル・スカッフです。」

「それでは、まず小隊長のところへ、お連れします、こちらへ。」

互いに通例的な挨拶を交わし、2人をベースキャンプへ案内する。

確か、小隊長はベースキャンプへお戻りになられたはずだったな。






















スタークさんの後ろをついてベースキャンプの中へ入っていく。2等陸尉か・・僕よりも一つ上の階級の人だ。年齢は・・・僕とそんなに変わらなさそうだけど


「15だ。」

「え?」

「年齢の事だ。」

「あ、あぁ・・」

す、鋭い・・・というか・・なんで分かったんだろ・・まさか・・エスパー?

「顔に出やすいな・・お前は。」

そ、そんなに・・

「まぁ、そこが少年君の良いところなんだけどね〜」

えぇ!?レイナさんまで・・・。それにそれが良い所って・・。あぁ殴りやすいってことか・・。なんか言ってって凄い落ち込むなぁ・・このままじゃへこんで、

立ち直れなくなりそうだったから別の事を考えることにした。

何か別の事〜別の事〜・・・あ、そう言えば今から会うっていう小隊長・・・。

どんな人だろう。やっぱり・・こう・・・。

怖い感じの人なのかな・・。がたいの良い感じの・・。

―――って・・あの人?セミロングの・・・・・女性!?

「こちらが、第6小隊小隊長ライ・・・って!?」

スタークさんが小隊長さんを紹介するより早く、その小隊長さんがレイナさんの胸倉をつかんでいた。

「・・・てめぇ・・」

「・・・ライア・・・」

え?・・え!?何知り合い??

お互いに・・なんか・・凄いアレな剣幕なんですが・・・。

僕と同じようにスタークさんも固まっている・・。ただ・・うん怖そうな人っていう予想は当たりだな・・。がたいが良いっていうのは・・

まぁ、女性だからプロポーションが良いっていうのかな、この場合は・・。正直黒いインナーのバリアジャケットにロングコートを着ているとはいえ、
そのコートも動きやすさを重視して身体に出来るだけフィットしたサイズになっているから、全体的な身体のラインがはっきりわかる。

本当に無駄な肉の無いきれいな体つきだった。初めは全体的に見てたけど、気がつけば視線は胸とか・・腰回りとかを・・・・・し、仕方ないじゃないか!

僕だって男の子なんだから、健全な証拠だよ!!

そんな事を思っている僕や呆気にとられるスタークさんにお構いなしで二人は勝手にヒートアップしていく。

「ったく、ヌケた面は変わんねぇなぁ?昔からちっとも成長してねぇじゃねぇか、あぁん?」

「そっちこそ、昔から何も変わってないね・・・・・。いや変わったといえば変わったかな?その無駄にでかい胸とかさ!!そっちに回す栄養をちったぁ頭に回しなよ、
礼儀作法とか少しは身につくんじゃない?」

「んだと、こらぁ!!それでも、成長はしてんだろうが!逆にてめぇのは退化だ退化、小さくなってんじゃねぇのか!!」

「なにを!!」

若干赤くなってしまった自分を落ち着かせて、状況確認・・ってうわぁ・・色々ひどい事に・・。僕は呆気にとられるスタークさんに目配せしてその視線にスタークさんもうなずく。
ひ、ひとまずこの状況を何とかしないと・・・・。

「れ・・レイナさん」

「小隊長・・。」

「「・・・・!!!???」」

「「な、なんでもありません!」」

な、なんつー目だ・・。僕がこの前思いっきり殴られた時の目なんて可愛いもんだ。はっきりって、いま口を挟んだら・・・・。

『『こ、殺される・・・。』』

結局止めるに止めれず、二人の取っ組み合いは数十分も続いた。










ようやく落ち着いた二人をパイプ椅子に座らせて、改めてスタークさんが紹介する。僕とスタークさんはそれぞれの上官の横に立ったままだ。

「それでは、改めましてこちらが第6小隊小隊長ライア・フォルティモア陸曹、この現場の最高責任者です。」

ライア陸曹は紹介されると、机に肘をついてフンっと鼻を鳴らし、僕らを見やる。

「ま、そういうこった。ここでは、あたしの指示に従ってもらうぜ?」

「はいはい、お山の大将さんは大変ですねー」

「んだとぉ?」

「やるのかい?」

あぁもうほらほら・・売り言葉に買い言葉じゃないけど、ホントに・・。これじゃあ話がちっとも前に進まない。

僕は、小さい身体で前かがみになったレイナ抑え、何か言いたそうなレイナさんを遮るように若干大きめに挨拶を口にした。

「ど、どうも・・僕はラウル・スカッフといいま・・―――ちょちょっと・・いい加減抑えてくださいよ・・!―――言います・・。」

あぁもう、ろくに挨拶もできない。

まぁでも、僕の制止もあってか、ムスッとした顔だけどレイナさんは足を組んで深々と椅子に座りなおした。まぁパイプ椅子だけど。
向こうも向こうで、「分かったよ!」と吐き捨てながらスタークさんに促されるように、席に戻る。・・・ふぅこれで何とか話を前に進められそうだ。

スタークさんは両者を見やって、また場を仕切っていく。

「それで、特観のお二人は、サンプル回収でしたね。ただいま、回収中ですので、もうしばらくしたらそちらの方へご案内します。」

スタークさんは空間モニターで資料に目を通しながら、話を進めていく。テキパキとして・・優秀な人っていうのはこういう人の事を言うんだろうなぁ。

スタークさんが現場の状況や現れたガジェットについてなどを一通り話し終えライアさんの後ろに下がると、今度はライアさんが話し始めた。さっきとは違って口調も穏やかだ。

「ふぅ、まぁにしてもあれだな。やっぱ何も変わってねぇよな。お前も・・あたしも。」

「まぁ、背は伸びたけどね。」

「はっ、変わんねーよ」

そう言うとライアさんは、ハハッと頬を緩めた。

昔・・・。そう言えばこの二人初めからお互いに知っているぽかったけど・・。

「あの。お二人って失礼ですけど・・・どういう御関係なんです?」

今なら聞ける。そう判断して僕は思い切って聞いてみた。

するとその問いに、初めに答えたのはライア陸曹だった。

「まぁ、どういうっていうかな、昔の同僚さ、ほらお前も聞いてんだろ、こいつがもと陸の武装局員だって話。」

「ライアはね、あたしが陸上警備隊の指揮官やってたときの補佐官だったんだ。補佐官って言っても完全にパートナー扱いされてたけどね。

まぁ、今じゃライアよりも役職的には下だけど。」

レイナさんは「あ、でも階級は一緒か」と笑って答えるとライア陸曹とまた話し始めた。

ふーん・・・指揮官ねぇ・・・って指揮官!?

「レイナさん指揮官ってそんな話知りませんよ?」

「うん、まぁね言ってないし。それに言う必要ないでしょ?別に今それ言ったところでどうなるってわけでもないし。」

「い、いやまぁそれはそうですけど・・。」

今までレイナさんが武装局員だってことは知っていたけど、まさかそんな役職にいたなんて・・。自分の上官の意外な過去を知ってしまった。

でも、上官の意外な過去に驚いていたのはどうやら僕だけではないらしい。

「しかし、驚きました。まさか、特観のチーフの方が元武装局員で、むかし小隊長が補佐官をしていた人物だったとは・・。」

「ま、昔の話だけどな。」

「えー・・ですが、何故武装局員をお辞めに・・」

スタークさんがその話題を振ろうとした時ライアさんがそれを遮った。

「スターク・・・その話ぁ、パスだ。今ここでいうような事じゃねぇ。」

「え、す、すいません・・。」

そう言ったライアさんの声はさっきまでと打って変って低く、目もスタークさんを睨んでいた。その鋭い眼光にスタークさんが若干後ずさる。
なんだろう、どうしてそこまで・・・むかし何か・・あったのかな・・。

若干気まずい雰囲気になった時、その空気を壊してくれたのは、スタークさんの前に現れた空間モニターだった。

「・・あぁ・・そうか・・分かった。ご苦労だった。ん?いや大丈夫だ・・では。」

スタークさんはそう言って、通信を切るとライア陸曹を見やる。

「ガジェットの回収作業が概ね終わったようです。」

「よっし、んじゃま行くか。レイナ、チビすけ付いてきな。」

チ、チビすけ・・。若干苦笑いな僕とレイナさんだったがレイナさんはボソッと「口が悪いのも変わらずか・・」と同じ苦笑いでも、意味合いは大きく異なっていた。

僕たちは、ライア陸曹の後に続いてベースキャンプを後にし、深緑の屋根なしのジープに乗りこんだ。
























あたしの運転でジープは颯爽と緑の草原に出来た轍を駆けていく。もうベースキャンプは見えねぇな。

正直ちと、反省してんだよ?吹き飛ばしすぎたってな。

いやだってまさかこんな遠くまでしかもベースキャンプ付近からぶっ放したんだぜ?、それがここまで飛ぶかってぇぐらいぶっ飛んでいきやがって・・。

あたしは、爆弾じゃねぇっつうの!

・・・まぁいいや。

んなこと考えてると、後ろのバカが気にしてる事聞いてきやがる・・。

「ねぇライア・・なんでベースキャンプからこんなに離れてくのさ!スターク君のさっきの話じゃ、戦闘エリアはベースキャンプよりだったって話だったけどぉ!?」

「うっせぇ!・・あのなぁ!あたしだってぇ・・その・・なんだ・・・・。こ、こんなにふっ飛ばす気はなかったんだよ!」

「いやいや・・現に飛んでるから・・全然説得力ないから・・。」

こ、こいつ・・・わざとらしく身体の前で手首振りやぁって!!

「てんめぇ!ケンカ売ってやがんのか!!」

「うわ、ちょ!小隊長!!ハンドルから手ぇ離さないでくださいよ!!」

うるせぇ、細けぇ野郎だな!!こんなだだっ広ぇ、高原でそうそうぶつかるもんなんざねぇよ!

「って、陸曹!!前前ぇ〜〜!!!」

あん!?チビすけてめぇもか大体前って・・・・・・かっとぅお!!

チビすけの声に反応して正解だった・・。ジープはあと数センチで大木の餌食だったぜぇ。

気を取りなおして、ジープを走らせる。後ろではチビすけがレイナを、あたしはスタークに怒られている。くそったれ・・。

そんな事がありながらも、しばらくすると隊のやつらが集まっているポイントへ到着。その後ろにはガジェットの残骸が集められている。


















・・・これがガジェットドローン・・。初めて見た。僕らは車から降りてライア陸曹の許可のもとガジェットの残骸を前にしている。

「ん〜・・これは使えない・・あ、こっちの装甲板はまだきれいかな。」

で今は2人で手分けしてサンプルになりそうなものを選定している最中だ。

「どうですかー?レイナさん何か使えそうなのありました?」

「そうだね。欲を言えば動力炉とか残ってればうれしいんだけど・・流石に爆散しちゃってるし。きれいな装甲板は3〜4枚あったけど・・。」

そう言うとレイナさんは、小脇に抱えていたガジェットの残骸を掲げて見せた。

きれい・・といっても爆散しているためにところどころ、ススや熱で焦げて黒くなっていたりと、なかなかいわゆる上玉っていうのが出てこない。

僕たちが残骸をあさっていると、しゃがみ込んでこっちを見ていたライア陸曹が話しかけてきた。

「おーい、お前ら。何、全部持ってくんじゃねぇの?」

「いやいや、ライア流石に全部なんて持って帰れるわけないじゃないか・・。あたしの車に乗る程度だからそんなに多くは持っていかないよ・・。」

「ふーん、なんだよせっかくかき集めたってぇのに・・。」

「まぁ・・正確には小隊長が集めたわけではありませんが・・。」

「細けぇなー」という声が聞こえてくる。細かい・・のか?

「あぁ、それと・・そこのチビすけ。」

2人のやり取りをやや苦笑いしていた僕を呼ぶ陸曹。

「え、僕ですか?」

「・・お前しかいねぇだろ。」

まぁ確かに一番小さいのは僕ですがね。それで何の用だろうか。

「お前さっき車であたしの事、陸曹っつたろ?」

「え、あ、す、すいません小隊長ってお呼びした方が・・」

「いやいや、違ぇよ。」

反射的に謝って、別の呼び方に訂正しようとした僕の発言を遮る形で否定する。そしてこう続けた。

「むしろその逆だっつーの。」

え?逆・・・?どういうことですか・・?

「あんまり堅苦しいのは好きじゃねぇんだ。もっと普通でいいぜ・・。その方がこっちも気が楽だしよ。」

「え?でもスタークさんは小隊長って・・・。」

僕のその返答に顔をゆがませて、あからさまに嫌そうな顔でスタークさんを見る陸曹。

「いや、こいつにも言ったんだぜ?同じことをよ・・。でもまぁ・・今のこいつを見たらわかると思うけど・・、どーも直す気はねぇらしい・・。」

その発言にスタークさんが静かに続けた。

「自分にとっては・・小隊長は小隊長ですので・・」

「な、この一点張りでよ。」

ライア陸曹は左手でスタークさんを指さし、呆れた顔でこっちを見ている。

なんだか、こういう会話をどこかで・・・。

あぁ、思い出した。確かレイナ陸曹って呼んだティアナさんにレイナさんが陸曹はいらないよって言ってたんだ。

この人も同じような事を言ってる。・・・似た者同士なのかな。口げんかや取っ組み合いも今思えばケンカするほど仲がいいってことなのかも。

「で?どうなんだ。わかったのか?」

じっと顔を見つめていたから少し怪訝な顔になっているライア陸曹。ふむ・・・まぁ、本人がそう言っているんだし。

「はい、分かりました。ライアさん。」

「へヘッ・・よ〜し素直でよろしい!」

白い歯をニッと出して笑うライアさん。それを見てスタークさんはため息をついていた。

さて・・それじゃあ、もう少し残骸を調べ―――――・・・ん?なんか・・揺れて・・・。

地震かとも思ったけど、どうやら違うらしい・・。じゃあ・・・・・・って何!?

気がつけば僕らの周辺の地面が盛り上がり、目の前にはレイナさんが小脇に抱えていた装甲板と同じ色の球体がいた・・。



































〜あとがき〜 ほいっと、どうもしるくです。最後までお読みくださりありがとうございました。
今回と次回・・その次も・・かなよくまだ予定は分かりませんが、
六課との絡みはまた少なくなり、オリキャラメインの回になっていくと思われます〜。
そう言えばこの前バイトの同僚に「お前・・ボーイッシュっていうかそういう感じの女の子が好きだな」
って言われました。
そんな・・何をおっしゃるか・・・・この僕が?ボーイッシュ好き?
ッハ!
















・・・ド・ストライクだよこんちくしょう!
とまぁ自分の好みを暴露(?)してこの回のあとがきとさせていただきます。
ありがとうございました。
そう言えばもう少ししたら、オリキャラの設定とかもちょこちょこ上げていこうかなと思います。




以下拍手の返事です。

はじめまして。面白くて一気に読んでしまいました。

主人公が色々悩んだり、苦しんだりする真っ当な人間で良かったです。>>

ご感想ありがとうございます。
面白いと仰っていただけるだけで書く方にも力が入りますね。
ラウルにはおそらくこれからも色々困難が降りかかると思いますが、
そこを、彼がどう乗り切っていくのか、どう成長していくのかを
出来るだけ、シリアスにならずにかといってコミカルにしすぎることなく
書いていければと思います。
楽しみにしていてくださいね!




作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。