とある次元世界。



そこは、絶えず内紛が続く地獄の様な場所だった。









そんな世界のとある小さな町の教会に、ボロ雑巾の様になった服を着た1人の幼い少女が、ポツンと椅子に座っていた。











遠くで聞こえる、轟音と、人の叫び声。










ここだって何時、攻撃されるかわからない。少女にも近くまで敵が来ていることぐらいは理解できた。









だが少女には、どうして戦っているのか、殺し合っているのかでさえ分からなかった。










それを教えてくれる人はもういない。守ってくれる人、両親もこの地獄で命を落とした。








少女はゆっくり顔を上げる。









その視線の先には、綺麗な女神像があった。








少女は祈る。このから私を助けてください≠ニ。







それだけが望みだった。









どこでもいい。こんなところから逃げ出したい!それが少女の願いだった。









だが、そんな少女の思いは










敵側の暴徒達の叫びと轟音の狂気へ消えた。








教会の扉を破壊して中へとなだれ込む暴徒達。









そして、その暴徒達は少女を見つけると、容赦なく攻撃を与えた。








少女は、絶え間なく続く暴徒達の殴打に小さな身体を丸めて、耐えようとする。








だが、少女の小さな身体では耐えきれるはずもなかった。







そして数分後、そこには殴られ蹴られ、服はもうすでに原形を留めず、裸同然で血まみれになった少女が放置されていた。









薄れゆく意識の中で少女は知った。幼いながらに理解したのだ。









―――――――――――――「あぁそうか、その望みは私なんかが℃揩チて良い望みでは無かったんだ」という事を。








●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第19話 〈正しいのか間違いか〉●




「はぁッ!」


ギン姉が、回し蹴りからの勢いでリボルバーナックルの一撃をV型αにお見舞いする。


その衝撃で少し後ずさった、V型αだがそれでも歩行ユニットでうまく体勢を立て直そうとしていた。


でも、流石にあたしもそれを見逃すほど馬鹿じゃない!


Revolver cannon!


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


あたしは絶妙のタイミングで、V型αに一撃を叩きこむ。


そしてようやく、V型αが、歩行ユニットをバタバタさせながらも、体勢を崩して倒れた。


―――――でも・・・


それでも損傷らしい損傷が見られない。


「いくらなんでも・・・・これは固すぎるわ!」


ギン姉が、少し上ずった声で叫ぶ。


確かに、それは思う。


リボルバーキャノンは、あたしの持つ魔法の中でも、それないに上位に入る威力を持つ魔法だ。


さっきのも、手ごたえはあったし、これはいった!と思ったぐらいだ。


だが、未だにもそもそ起き上がってくるV型αを見れば分かるが、無傷・・・


お得意のAMFも使用してこないところを見ると、ひょっとしてあたし達なめられてる・・・・。


そう思うと、なんだか無性に腹がたつ。


よーし、上等だ!こうなったら破れるまで何回でもぶん殴ってやる!


あたしは、起き上がったV型αに狙いを定めると、一気に加速を「待ちなさい、スバル!」ぉぉ〜ってッ!!


その時いきなり肩をギン姉に掴まれた所為で体勢が崩れたあげく、マッハキャリバーは走りだしちゃうわけで・・・・


「うわっと!!」


そんな間の抜けた声とともに、仰向けに倒れてしまった。


・・・Sorry buddy. Are you OK?


(・・・すいませんバディ 大丈夫でしたか?)


・・・・うん、マッハキャリバー謝らないで・・・なんだかあたし凄く格好悪い。



にしても・・・


「ギン姉、なにするの!?結構痛かったんだけど・・・」


「いや・・・あんなダイナミックに転ぶとは思わなくて・・・・じゃなくてッ、スバルあなた何か策があって飛び込むの?」


「だ、ダイナミックって・・・」


「いいから!何か策でもあるの!?」


うっ・・・・そ、そん剣幕で迫らなくても・・・・。


それに・・・・はっきりって今さっきまで考えてた事を、ギン姉にいうのがとてつもなく恥ずかしくなってきた。


行くぞって意気込んで、思いっきりこけて、それに加えてさっきの考えを言う・・・・なんていう辱めコンボだろうか・・・。


「え、えーと・・・そのぉ・・・」


「もう、何!はっきり言いなさい!」


「い、やだか・・・・・・ってうわッ!!」


いまさらだが、V型αがあたし達の事なんて待ってくれるはずないよね。


あたし達は、飛び退き熱線を回避する。


これじゃ、さっきと同じだ。


「・・・・っく」


それはギン姉も思った事なんだろう、歯ぎしりをして、声が漏れる。


何か・・・何か・・・・良い案が思い浮かばない・・・・でも何とかしないと・・・・!


と・・・・一瞬でも集中を目の前の敵からそらしたのがいけなかった。


さっきは偶然避けられたが、そんな偶然はそうそう起こらない。


その集中力の散漫は、あたしに致命的な隙を生んでしまっていた。


気づけばもう、目の前に熱線が迫っていたのだ。


いくらバリアジャケットがあるといっても直撃すれば、かなりのダメージは覚悟しなければならない。


プロテクションも、発動してる暇なんて無い・・・ッ!


全てのオプションが断たれた今、あたしは覚悟した。


覚悟して、せめて守らなければならない最低限のところを、リボルバーナックルで覆い来るべき激痛に備えるかのように目をつむり歯を食いしばった。


「ッスバル!!!」


ギン姉の声が聞こえたその直後、熱線はあたしの身体を・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?


しょ、衝撃が・・・・・来ない?


あたしは恐る恐る目をあけると、そこには、身の程位の大きさの盾を持った少女が立ちふさがって、熱線を防御していた。


「あ、あれ?君は・・・・」


「スバル!」


ギン姉とは違う、男の人の声。これは・・・・スタークさん!


後方から、灰色の閃光がV型αを射抜く。


またも崩れかける体勢のまま、苦し紛れに複数のアンカーを振り回すV型α。だがそのアンカーは、こちらに届く前に黄色い魔力刃に全て切り落とされた。


「ふうッ!・・・・このぐらいは・・・ね」


「ラウル君も!」


「っへ!こいつもくらっとけッ!!」


アンカーを失ってもなおこちらを見据える、V型αに、1人の女性が飛び込み、右手を思いっきり突き出す。



そしてその右手からほぼゼロ距離でワインレッドの閃光が放たれる。


「ストライク・ゼロッ!」


その威力はゼロ距離で放たれた分凄まじく、仰向けどころか、V型αは何度も転がりながら後方の側壁を突き破って、高架下へ転落していった。


「ふぉ、フォルティモア陸曹!」


ギン姉も驚きの声を上げる。


ってかあれ? ギン姉ライアさんを知って・・・


そんな疑問も頭の片隅に浮かんだが、あたしは今来た援軍をぐるっと見渡す。


はっきりいって、これほど心強い援軍も無かった。


・・・・若干1名全く知らない子が居るけど。


あたしの視線に気が付いたのかその子は、ニカッと笑うと明るく自己紹介してくれた。


「ナックルお姉ちゃんとは、初めましてだよね〜。ボク、マリエス・シーボルよろしくね」


そう言って、スッと右手をこちらに、差し出す。


「な、ナックルお姉ちゃんって・・・あたしはスバル、スバル・ナカジマこちらこそよろしく!」


それに答えるように、あたしはその手を握り返した。


「・・・・自己紹介は済んだか?」



唐突に後ろから声をかけられる。スタークさんだ。


「あ、うん・・・」


「大丈夫です!」


マリアスちゃんとあたしが返事をする。


それに遅れて、ラウル君とライアさんギン姉も、あたしの周辺に集まってきた。


・・・・っていうか。


「ギン姉、ライアさんと知り合いだったんだね」


この2人が知り合ってのは知らなかった。


だがその問いに最初に答えたのは、ギン姉ではなくライアさんだった。


「まぁ、ナカジマ捜査官にゃ色々、絞られたからなぁ・・・・」


「絞られたとは人聞きの悪い事を仰いますね、フォルティモア陸曹!」


ライアさんの発言に、怒りをあらわにするギン姉。


その声に、少し顔が引きつっているのはライアさんだった。


「い、い、いやだって、そうでしょうが!?」


「あなたは、今一度自分がこれまで仕出かした事を、考えてみてください!」


あからさまに目をそらすライアさん。


心当たりは・・・・あるんだ。


あたしのジト目にライアさんは、焦ったように弁解する。


「ち、ちげぇ、スバルお前なんて目で見てやがる!」


「陸曹!話をそらさないでください!」


「そらしても無いし、今は何も言われることないでしょうが!」


「まだ、そんな事を言いますか!!」


ギン姉がライアさんを掴んで、前後に揺らす。


うわぁ・・・・と思っていると下で衝撃音が響く。ックまだ壊れて・・・・・・・って・・・・は?


それは確かにV型αだったが・・・・どうも上がってきたっていう表現にはならない。どっちかっていうと下から飛ばされてきた♀エじだ・・・



そのまま、轟音と共にハイウェイに叩きつけられるV型α。そしてその直後に怒り心頭と言った声が聞こえた。


「まったくもう!!一体誰ですか、こんなもの上から落としたのは!!」


その声に反応してギン姉の、動きが止まり何故だかライアさんが青ざめ、スタークさんとラウル君がが呆れ、マリエスちゃんがキョトンとした。


そしてその声の主は、丁度V型αが叩きつけられ一部陥没したハイウェイの残骸を上ってすぐに目の前に現れた。


腰に手をあててムスっとした顔で、髪をツインテールにした女性。バリアジャケットから見るに、ライアさんと同じ・・・・多分108の人だという事は分かった。


だがその顔は、ある1人の女性を見てすぐに、変わる。


「・・・・・お、お姉さま!!」


「・・・・だからお前はなんでこういう時にタイミング悪く出て来るんだよ!!」


その女性は、ライアさんをお姉さまと呼んで、そのまま抱きつく。


そして、甘えたような声でライアさんにささやく。


「んもう!お姉さまったら、タイミング悪くだなんて・・・・っは!分かりました照れ隠しですね!」


「お前はどんだけポジティブだ!!」


ひきはがしにかかるが、がっちり首に腕を回されうまく引きはがれないみたいだった。


・・・・・っていうかあの人誰?


いまいちよくわからない状況でも、冷静な自分が凄いと思う。


そんなあたしを知ってか知らずか、ギン姉がガックリと疲れたような声で、あたしに紹介してくれた。


「スバル・・・・・あの人はね、ああ見えても108の第8小隊小隊長レイニー・ミスリルさんよ・・・・補佐官は、今いないけどミミィって子ね・・・」


「あ、あのギン姉、あれはその、お姉さまとかは一体・・・・」


あたしの質問に、ため息で答えると、ギン姉は、2人に近付いて左手で思いっきり、レイニーさんを引っぺがす。


「あだだだっ!!」



「あう・・・・」


首にしっかり腕がからんでいたため、引っぺがしたは良いがレイニーさんの腕のせいでライアさんの首が・・・。


あたしもティアにヘッドロックかけられた事あるけど、痛いんだよなぁあれ。まさにさっきのはそれだったし


「く、首がもげるかと思った・・・・!」


「あぁん、もう!ナカジマ捜査官、邪魔しないでください!」


「レイニーさんもいい加減にしなさい!そういうのはここでやるべき事ですか!!」


口をとがらせるレイニーさんに、ビシッと言うギン姉。


そこで、うっと言葉に詰まって、ライアさんもひと安堵の様子だった・・・・が。


「わかりましたぁ・・・部屋でします」


「あれ!?なにも分かってねぇ!!」


「まったく、場所をわきまえなさい」


「場所とかの問題じゃねぇっすよ!!」


・・・・・ギン姉も色々大変なんだなぁ。


にしてもあのレイニーさん。凄い人だなぁ。あんなに堂々と抱きついちゃったりして。


今度ティアにもしてみようかな・・・・・・・いや、殺されかねない。


それはやめとこう、命が惜しい。


あたしは考えを切り替えるために、チラッとV型αを見る。


レイニーさんあのV型αをここまで飛ばしたんだよなぁ・・・・・・・・・・・・


うん、飛ばし・・・・・・・え?


そうだ飛ばしたんだ。あたし達が2人がかりで、やってようやく仰向けが限界だったのを。


あの人・・・・・あの重たいV型αを1人で・・・・・・ここまでぶっ飛ばした?


投げたのかなとも思ったがふと足のデバイスへ目が行く。


そして直感した。違う・・・・蹴ったんだ!


ひと蹴りで・・・・


あたしは、改めて108が、父が、姉のいる部隊の強さを、垣間見た気がした。


























うわぁ・・・・・レイニーさん思いっきり・・・・


僕は、叩きつけられてクレーターを作っている、・・・・えぇとV型α・・・だっけ、それを見る。


固さを誇るV型αだったが、流石の・・・・いやまさかの一撃に、すぐには起き上がってこれないようだった。


っていうかさっき、アンカー切ったのこれぐらいはとか、言ったけど・・・・。


相当ここまでの、到達経緯が酷かったから、かなりギリギリっていうかアンカー振リ回してる位置に偶然落ちただけ≠チていうのがなんとも。


今度は目線をマリエスさんに向ける・・・。


・・・・・今、思い出してもホントにあれは・・・・・










「ん・・・・上!?」


僕がハイウェイを見上げる。スタークさん達と分かれて僕とマリエスさんは下ルート≠ナ行動していた。


その時にハイウェイの上で戦闘するスバルさん達を見つけたのである。


「でも、これじゃ・・・」


上に行く手立てが無い・・・。


僕がキョロキョロとあたりを見渡していると、そこに満面の笑みのマリエスさんがいた。


「上まで飛ばしてあげよっか?」


「上ま・・・ん?飛ばす?」


「そう、飛ばすの」


ケロッとした顔で、言うとマリエスさんはおもむろに、上に向かってセプター≠構える。


「・・・・・あの」


今まで気が付かなかったけど、セプターって盾なのに、何故か五角形の隅にブースターが付いてるんですね。


・・・・・なんとなく嫌な予感しかしない。


そしてその予感を確証づけるように、マリエスさんはセプターの表面装甲をチョイチョイっと指さす。


・・・・・・乗れってか、んでもって、飛ばしてやると。


その満面の笑顔が怖いです。


色々と・・・・












回想終了・・・・後はまぁご想像の通り。


渋々セプターに乗っかってハイウェイのはるか上まで飛ばされて、先に降りたマリエスさんが熱線を上手いこと*hいだ後に、


スタークさんが一発、その後ホント偶然たまたま、振り回し始めたアンカーの場所に僕が落ちた≠チてわけ。


さっきのこのぐらい#ュ言はあまりにも偶然過ぎて、流石に格好がつかないからっていう自分なりの格好付けの・・・・・つもり。


マリエスさんって、色々悩みとかも聞いてくれて、頼りになるけど、その反面目茶苦茶なところもあるからなぁ・・・・。


・・・・・あ、それは僕の周辺の人ほとんどか。


その時いきなりモニターが開く。それに写っていたのは・・・・レイナさん?


『少年君、どうしよう』


その声は、どうしようという割には全然焦っていない。


そしてレイナさんは、おもむろに1冊のファイルを手に取る。


それは確か・・・・あぁ、ここに来る前にまとめた戦況記録データだ。それがどうか・・・


バサバサバサッ!


『あ、ごめん手が滑っちった』


ギャーーーー全部バラバラに落ちたーーーーーー!!!!


「な、何を!?」


『いやぁ〜手が滑っちゃってね〜』


テヘッと舌を出すレイナさん。全然可愛くない!!


『む・・・・ってレイナ!!お前また何を!!』


流石にその悪行≠ノ気が付いた、リリィさんがレイナさんに詰め寄る。


そーだそーだ、何してるんですか全く。


『いえ、あたしは何も。取ったら少年君のファイリングが悪くて、バラバラに落ちただけです、少年君のファイリングが悪いんです』


だぁーーーーーーーーーーーー!!!!何言ってんだーーーーーーーーっ!!!!


何にもないって顔で、なんて嘘を・・・・こりゃリリィさんに殺されるなぁ・・・レイナさん。


『む、そうか・・・・では仕方が無いな適当に拾って綺麗に挟んでおけ。後で時系列にまとめさせよう・・・・ラウル≠ノな』


あれ、今リリィさん口元がなんだか、あやしく釣り上がったような・・・・・


しかも僕の名前、強調したような・・・。


僕が顔をひきつらせていると、そこへミスティさんとミティさんもやってきて・・・・・。


バサッバサバサバササッ!!


『おや・・・これは失礼したね』


『あぁ・・・申し訳ありません』


ねぇ、いま完璧にわざとあの2人手を出したよね!普通に歩けば当たらないのに。


っていうか、これはもう・・・・


『あぁだいじょーぶですよぉ!ぜ〜んぶ少年君≠ェやってくれますから〜・・・・・・・少年君がねぇ』


最後の部分に悪寒を感じながら、あれ、なんだろう目から汗が出てくるよ・・・・・


『・・・・変な事考えるからだよ』


レイナさんの発言に対して僕は口には出さなかったが、心の中でバサバサバサッ▼・・・・・何も思わなかったですよ!!


僕は通信を一方的に切ると、かぶりをふる。そしてようやく立ち上がろうとしているV型αを見据えた。


「・・・・来るぞ」


スタークさんの声に、さっきまで騒いでいた明るい雰囲気が一転する。


レイニーさんも、真剣な眼差しで、V型αを見る。


そして再びスタークさんが声を張り上げた。


「重要なのはコンビネーション!この1ターンで決める!!」


コンビネーションか・・・・。


その時ドンと背中を叩かれる。


振り向くと、自信たっぷりな顔で笑うライアさんがいた。


「まぁ、あたしもいるし、チビすけに捜査官とスバル、んでもってレイニーが居るんだ、こんだけで叩いて壊せなきゃ嘘だろ?」


っていうかよくよく考えたら、ライアさんはともかく、かなりクロスレンジに偏ってるなぁ・・・。


確かにこれで、破れないっていうのは、なかなか考えられないけど。


再びV型αを見やる。どうやら、相手も戦闘体勢は整ったようで、不気味にこちらを静観している。


「さぁて・・・・・行こうか!!」


ライアさんの声に一同が頷き、スタークさんがヘリオスを構える。


しばしの静寂・・・・・










・・・・・・そしてどこからともなく、瓦礫の崩れる音がした――――――――――――







ガタガタの路面をものともせず、縦≠ノ早く動けるギンガさん、スバルさんそしてレイニーさんが駆ける。


まずは、ギンガさんとスバルさんが、互いに絶妙のタイミングで攻撃を加えていく。


そこには何の打ち合わせもないのだろう。ただ、互いが次にどう動くかを完璧に分かっているからこそできる攻撃だった。


「これでッ!!」


「いっけぇぇぇッ!!!」


Revolver cannon!∞


最後の仕上げと言わんばかりに、同時のリボルバーキャノンが炸裂する。


その威力は、凄まじく、あの大きなV型αが少しだが宙に舞う。


「来ましたね・・・・蹴ります!!」


そして舞った先には、既にレイニーさんが構えている。


レイニーさんは、大きく右足で地を蹴りだしその回転のまま右のミドルをV型αに撃ち込んだ。


だがそれで攻撃は終わらない。


撃ち込んだ流れのまま、まるで踊っているかのようにV型αに猛襲を仕掛ける。


その一撃一撃の音は、凄く身体の奥に響く、まさに重たい音≠セった。


「次、お姉さま!」


レイニーさんは身体をひねって、V型αをライアさんの方へ蹴り飛ばす。


なされるがまま、V型αはライアさんの方へ勢いよく飛ばされる。


「あのやろ・・・・!ったくどっからそんだけの力が出てくんのかね!!!」


ライアさんは、左手のアームドデバイスイグナイト≠ノ魔力を集中させると、V型αに向かって飛ぶ。


そしてある程度距離が詰まった時、その魔力を一気に撃ちだした。


「ストライク・インフェルノッ!!!」


砲撃の威力と、こちらに向かって飛ばされてきた移動のエネルギーも相まって、


さっきの零距離攻撃よりも、はるかに勢いよく転がるV型α。


なんとか歩行ユニットで、ハイウェイ落下からは踏みとどまりはしたものの、


その攻撃によってV型αは装甲を裂かれ機械部を露出させていた。


「やった!」


「いやぁ、まだだ・・・浅い」


一応の成果に喜ぶスバルさんだったがそれを、すぐに否定するかのようにつぶやくライアさん。


確かにむき出しになった機械部からは時折火花も見えるが、破壊に至る致命的な損傷ではないようだ。


まだ、攻撃は必要か・・・・と考えていると、V型αが周囲に何か≠展開するのが見て取れた。


「これは!」


「AMFか!!」


ライアさんが叫ぶ。


ようやく、本領発揮ってわけですね・・・・でも!


これは確かに、魔法頼みのミッド系魔道師には有効な手立てだ。


魔力結合が阻害されてしまい、結合できないければ攻撃も届かない。


そう。普通なら・・・・・ね。


僕はS3Uを構えて猛然と走る。


「それは僕には通じない!!」


S3Uの振動破砕。そのもう1つのバリエーション。魔力砲撃を裂いたあの攻撃!


僕はS3Uの振動破砕レベルを高め、魔力刃を形成せず≠ノ思い切りS3U目がけて振り下ろす。


「ウェイブ・エッジッ!!」


セラミックブレードとフィールドが激しく火花を散らす。


くぅっ、流石に固い!!


でも、ここで下がっちゃいけない!


今は、僕のターンだからだ。


踏み込んだ足に、今一度しっかり体重を乗せ、小柄な身体全体で、文字通り押し切る


そして、ピシッ≠ニいう音がしたと同時に、フィールドが音を立てて崩れゆく。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


僕はそのまま、S3UをV型αへ押し込んだ。


固い装甲を貫いていく、確かな感触が僕の手に伝わってくる。


「よし、よくやった!!後は・・・・・まかせろッ!」


スタークさんの興奮気味の声がする。


チラリとその方向を見やると、既に砲身には魔力が溜まり始めていた。


(・・・・ふぅ・・・もう一息か)


と一瞬、気を緩めた時、最後の力を振り絞って、スタークさんの方向へ向かい、V型αが熱線の束を発射した。


しまった!ここからじゃ誰もカバーに!


見る見るうちにスタークさんに迫る熱線。


「スターク!」


顔をこわばらせ叫ぶライアさんだったが、その声に反応したのは、底抜けに明るい声だった。


「ボクが居ることも、お忘れなく!」


・・・・・あ、そういえば。


マリエスさんが、スタークさんと熱線の間に割り込み、右手で構えたセプターで熱線を弾き、間横のビルに熱線が直撃した。


爆煙があがり一瞬こちらからスタークさん達の姿が消える。


その直後だった。


爆煙をかき分け、灰色の閃光がV型αを真正面から押しつぶしていたのは。


僕はその衝撃で深く刺さっていたS3Uが抜け、ハイウェイ脇に放り出されたが、


側壁へ打ちつけられると同時に、V型αの爆発音を聞いた。


その音を聞いた皆の顔は、間違いなく笑顔だったと記憶してる。


・・・・あはは・・・・ちょっと最後は締まらなかったけど、僕達は、なんとか脅威を退けることに成功したようだった。



























爆発の映像と同時に、オペレーターの「反応ロスト!作戦エリア内のガジェット全滅!」という声が響く。


ふぅ・・・・・終わったか・・・。


思わず安堵の笑みがこぼれた。


我は、チラッと姉上を見やる。


姉上はいつものクセをするとゆっくり口を開いた。


「さて、リリィ・・・・本格的な事後処理に入ろうか」


「はい」


「ふむ、どうかしたのかな?」


「・・・・あぁ、いえ」


いえ、とは言ったものの、気になる事は確かにある。


それは、言わずもがな、姉上とスタークの会話の事だ。


明らかにあの時のスタークは、おかしかった。


遠巻きだったが雰囲気もそうだが、あの話し方。


上下関係に厳しい、あいつが少将ともあろう人物にあんな物言いは絶対にしないはずだ。


だが・・・・それならあれは一体・・・・・。


「リリィ」


口元に手を持っていき、思考を巡らせていた我に姉上が不意に声をかけてきた。


それに応じるように、姉上の方を向く。


姉上は、未だに柔和な笑顔を浮かべていた。


「あれは、彼だよ」


「ッ!?」


「あれは、スターク・ルシュフェンドだよ」


「いや・・・・あの、何を」


「ふむ、その事を考えていたんじゃないのかな?」


「・・・・・」


完璧に良い当てられては黙り込むしかない。


姉上は、体術や身体能力と言った面では他の局員とさして変わらないが、ずば抜けて切れる上に、何を考えているのか


いまいち掴みきれないところがある。まるでそう・・・・雲をつかむような。


今の階級も、言い方は悪いが術数策謀の果てに得た物ともいえる。


地上本部武装隊参謀本部の参謀長に任命されたのも要は、切れ過ぎる人物を地上本部自体に入れる訳にはいかないが、


逆に遠すぎても、目が行き届かない。どうにかしてある程度手綱を握っておきたい。


そう考えての配置だろう。階級はともかくとしても、ある程度自由に動き回れる立場を与えておきながら、見たい時にくまなく動きを把握できる役職


これが今の姉上の立場と言ったところだろう。


「さて、それでは私はこのあたりで、失礼するとしようかな」


ポンと手を叩くと姉上は、ミティを連れなにくわぬ顔でコントロールから出ていこうとする。


「帰られるのですか?」


「ふむ・・・・今ここに残っていても、私にできる事があるとは思えないのだがね。それならば作戦も無事成功したようだしね、


このあたりが引き際だろう、違うかな?」


姉上は完全に振り返らず、少しだけ振り返り流し眼でこちらを確認する。


「それに・・・・・もう目的≠ヘ達したからね」


最後・・・・本当に最後の一瞬だったが、我は姉上の瞳の奥に冷たい何かを感じていた。


背筋に、何か冷たいものを押しつけられたかのような感覚・・・。


(・・・・・姉上・・・・・)


姉上はコントロールのドアが閉まりきる前に、「では、本当に、事後処理は頼んだよ」とだけ言い残してコントロールから姿を消した。


後には、勝ったにもかかわらずどこか釈然としない空気だけが残されていた。


























終始無言のまま、ウチらは技術開発部の建物を後にする。


というか、なんと言って良いのかそれが思い浮かばなかった。


少なくとも、彼女達は管理局法違反は確実。だが、それでも、彼女達が言っている事は紛れもない正論≠ナあり言い返す事が出来なかった。


魔道師じゃない人間が、どうやってそれに対抗できるかどうやったら、自分自身を守れるのか、それの1つの答えだわ!


あの時のローランドさんの言葉が、頭の中で響いている。


ウチは車のドアを開け、ドサッと倒れ込むようにシートに身体を預けた。


いや実際、結構キていたのは事実だった。


気疲れちゅうやつかなぁ・・・。


「・・・・大丈夫ですか?」


いつの間にかドライビングシートに、座っていたシグナムが心配そうに声をかけてくる。


おっと・・・余計な気ぃつかわすわけにもいかんね。


そう心の中で呟き、シグナムには笑顔で答える。


「へーきや。まぁ確かにちょお、疲れたけど、これも仕事やからなぁ・・・」


「・・・・それなら良いのですが・・・・」


「心配性やねぇ、シグナムは」


とはいえ、その気づかいはありがたい。


シグナムはウチの大切な家族の中で、最も気が効く人物といっても過言ではない。


流石、烈火の将の名は伊達やないってことやね。


そんな事を考えながら、しかしまだ頭の片隅に残る、ローランドさんの言葉。


「・・・・・なぁシグナム・・・」


「・・・・はい、主はやて」


「ウチらのやってる事って、間違ごうてるんかなぁ・・・・」


自分でも驚く位に、何も考えず口から出てしまった言葉だった。


でも、だって、そうやろ・・・。言ってみれば今回の事でウチらの考え方は間違ってるって言われたようなもんや。


そう、間違ってたんかもしれん・・・・。


けど、流石に今言うべき事とちゃったなぁ、と今更ながらに後悔の念が襲ってくる。


ウチはシグナムから、否定の言葉が返ってくるとばかり思っていたが、返答は意外なものだった。


「そう・・・・なのかもしれません」


「え?」


「・・・・確かに、彼女達が言っていた事は事実でしょうし、私達も言い返せないほど正しい事でした・・・・・」


意外やった・・・ホンマに。シグナムの性格からいえば、こういった事には、大抵否定してくるもんやとばかり勝手に思い込んでいた自分がいた。


驚くウチをよそにシグナムは言葉を続ける。


「ですが、何が正しくて、何が間違っているのか・・・と言った議論は立場が違えば見えるものが変わってくるように、非常に難しい問題でもあります


彼女達には彼女達の信じる物があり、そして我々にも我々が信じる物がある。ですから、今はまだ、それに答えを出すのは早すぎる気もします・・・」


ウチは黙ってシグナムの意見に耳を傾ける。


・・・・信じる物。


ウチの脳裏に、瞬時に2人の親友、フォワードメンバー、家族・・・それらの顔が浮かぶ。


「だから、焦らなくても良いのではないでしょうか、今はまだ・・・・。それにやり遂げた先にしか、その答えは無い・・・と私は信じておりますから」


やり遂げた先・・・・・か。うん、そやね。今はまだ分からんでもええ。


ウチもその意見に、賛成や!


「ありがとうな、シグナム。なんか少し楽になったわ」


「いえ、お力になれたのなら、良かったです」


・・・・・まぁひとまずこの件の、上への報告は一部の人間までにして少し待ってみよう。


だって、まだどう転ぶかは、わからへんしね。


「さて、ほんならシグナム行こか」


ウチはさっきまでとは打って変わって明るい声でそう告げる。


それを見たシグナムも笑顔で「はい」と答えると車を発進させた。


「そうや、シグナム!今日は久しぶりに外食どうや?」


「良いですね、時間的にも頃合いですし」


「ん〜・・・・ほんならどこ行こか・・・」


「でしたら、私がご案内しましょう。実はテスタロッサから良い店を紹介してもらったのですが、そこの料理が美味でして・・・」


明るく会話が弾む車内。


それを見守る太陽は、綺麗な夕焼けとなって、ウチらを照らしていた。






























































































































〜おまけ〜1
「・・・・・それで、その男のデータはとってきたのね」

「えぇ、ウーノ姉さま。こちらのフォルダの中にありますわん」

「見せてもらうわね・・・」

「・・・完璧のはずですけれど。何せ会話もしましたし・・・・」

「クアットロ」

「はい、何か?」

「このフォルダ、中身が全部ドクター≠ネんだけど?」

「・・・・・っは!間違えt!!!」


「少し、話し合う必要がありそうね」

「そ、そ・・・・そうですわね・・・・」





〜おまけ2〜
「・・・・まぁいいわドクターの事は、まぁそうね5枚程で手をうちましょう」

「・・・・はぁ」

「それで・・・クアットロ、もう1つあなたには任務があったわよね?」

「ギクッ!!!」

「そっちの方のデータを貰えないかしら、ドクターに送らないといけないから」

「・・・・ウーノ姉さま」

「何かしら?」

「あと、5枚プラスのドクターの寝顔集≠ゥら秘蔵1枚でどうでしょう?」


「・・・・・クアットロ、あなた・・・・」

(や、やっぱり流石にダメですよねん)

「秘蔵2枚よ」


(よっしゃー!!この手使える!)










〜あとがき〜
もう少しで寒さも和らぐってことで、少し楽しみなしるくです。
みなさんこんにちは。今回もお読みになっていただいてありがとうございます。
さてひと段落ついてようやくティアナ編に入っていけるかなってところですね。
正直言うと、ティアナ編は原作ぶっちぎり〜ので行こうかなとか考えてます。
極端に言っちゃうとティアナ、なのはさんに吹っ飛ばされない展開になるかも???
まぁそこらへんはストーリとの兼ね合いですからね、まだまだ確定ではありませんが。

楽しく書いていこうと思ってますのでこれからもよろしくお願いしますネ

それでは!




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