跳躍した勢いのまま、得物をレイナさんめがけて振り下ろす。



普通に考えれば、いくらこんな棒でも当たれば相当痛い。
でも、僕が振り下ろした得物は軽々とレイナさんの左腕に防がれる。
「・・っく!」

「甘い甘い〜♪」

ファーストアクションはレイナさんの勝ち・・・か。



●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第1話 〈出会い〉●




ファーストアクションに、負けた僕はひとまず一定の距離を置く。

レイナさんのスタイルは近代ベルカ式の格闘型。それも懐に飛び込んでくるインファイタータイプ。

ちょうどさっきのお互いの間合い、それこそレイナさんの大好物だ。

「まぁ、さっと離れたのは大正解だったねん〜」
「どの道、あのままくっついてても、棒しか攻撃方法無いんですから仕方ないですからね」

互いに軽口を言い合いながら、しばしにらみ合う。

重要なのは詰めすぎないこと。
この手の相手に詰めすぎると、僕みたいに得物を振り回すタイプは攻撃を食らったときに一撃必殺になりかねない。
つまり今、僕には一撃をくらわないように、レイナさんとの間合いを調節して尚且つこの得物が届く絶妙なラインを見切らないといけない訳だ。
積極的に行き過ぎても消極的に行き過ぎてもダメ。よくレイナさんは「無茶しないこと、これが肝心!」と言ってる。
にしても・・この棒・・。
レイナさんが用意しただけあって、ホント絶妙な長さだよ・・。
長くも無く、短すぎず、絶妙な長さ。持たされた時はあまり感じなかったけど、こうしていざ組み合ってみるとよくわかる。

(いやらしい、長さですよホントに・・確実に得物が、あたるとこまで間合いを詰めると多分・・食らう・・)

さて・・どうしようか。










まぁまぁ、ファーストアクションとしては及第点かな。
防がれたとみるや、追撃も考えずにパッ下がったか。悪くない判断だよ。あたしがいつも言ってることは理解してるみたいだね。

さてさて・・どうくるか。あの棒っきれのやらしい長さに気づいてるのなら、何かしらアクションが・・・
ふふっ、どうやら長さの事は分かってるみたいだね・・。

しっかりと、間合いを取ろうとしてるようだけど・・まだ若干消極的かもね・・。
よし、そっちがそうならこっちから行っちゃうよ!






若干僕が思考に入った段階で狙い澄ましたかのように動くレイナさん。
一直線にこっちに向かってくる。
そして、それを助走に・・・。
「ソバットぉッ!」
そんな掛け声とともに、身体を空中で1回転させてそのまま回し蹴り。
それを何とか得物で、防ぐ・・・!
そこからは、間合いを詰められてレイナさんの猛攻に防戦一方
手加減はしてくれてるんだろうけど、それでもキツイ・・
それをこの得物で防いだりいなしたりかわしたり・・・

っていうかふと浮かんだ疑問なんだけど・・
「この棒なんか結構強度ありません!?」
「そりゃ、そうだよ!・・よっと!ホイ!その棒っきれ、一応物質強化の類をかけてあるからね。多分・・おっと危ない。多分車で踏んでも折れないんじゃないかなぁ〜」
なんていう無駄強度・・

まぁそのおかげで、こうやって防げてる・・訳だけどぉ!

僕は、レイナさんが右を引っ込める瞬間、一瞬だけ後ろに引いて得物を強引に互いの間に割り込ませる。

レイナさんは、突きを警戒したのか、半歩ほど後退。その間に僕も再び距離をとる。
何とか、レイナさんのインファイトの猛襲から逃れることには成功した・・・成功したけど・・・。

また距離が少し離れたかな。といってもごちゃごちゃ考えている間にまた近付かれると厄介なのには違いない。
それに・・・。
(はっきり言って、さっきの猛襲で結構・・)
削られた・・。色々と。
一番、厄介なのは体力。僕に一番足りないものだ。
攻めあぐねてるうちに、体力切れっていうのが何回かこれまでにもあったし・・。っていうかついさっきがそれだった。

(仕方が無い・・。これ以上延ばしてもうまく1本入るなんて保障も無いし・・短期決戦だ。ここで行く!)


再び得物を持つ手に力を込め、レイナさんを見やる。

僕がすべきことは、たった一つ間合いを調整すること。

ただそれだけ。

レイナさんのことだ。こんなやらしい、長さに棒っきれを調整したのは、間違いなく間合いを考えてのこと。

それはつまり一番ベストな間合いで、僕の1本が入ればレイナさんの攻撃は絶対には入らないようになっているということでもある。

そうしないと正解が無い。

そのラインを見切るんだ。

かなり難しい事だと思う。でも・・やらないと。
せっかく鍛えてもらってるわけだから!


















ん〜? あそこでスパーやってるのって・・・たしかさっきジョギングコースですれ違った・・・。
私は、パートナーの腕を引っ張る。
「ねぇ、ねぇティア、。あそこでスパーやってるのってさ」
「ちょ、ちょっとスバル急に引っ張らないでよ!何よもう!」
いきなりの事で少しティアを怒らせちゃったけど構わず指をさす。その先をティアの視線が追う。
「え?・・ん?あぁ、あの子確かさっきすれ違わなった?」

やっぱり、私が声をかけた子だ。へぇ〜あの子あんな事してたんだ。人はみかけによらないって言うけどそれ本当だよね。

「ふ〜ん、意外にきちっとした動きしてるじゃない。」
「あ、ティアもそう思う?」
私は格闘型だから、得物を使う人の良し悪しは細かく分からないけど、見ていてなんとなくわかる。
あの子多分結構やる。

はっきりと実力とかは分からないけど。身体の使い方とかは本当にしっかりしてるし。

しばらく眺めていると、一呼吸置いてその少年が動いた。

「あ、あの子が仕掛けるわ!」
「うん、多分・・決めにいくつもりだね。」
あのスパーが終わったら、ちょっと声をかけてみよう、多分仲良くなれるはず。














決して無茶をするわけじゃない、最高のタイミングで1本を取る。それ以外の結果は必要ないんだ!
得物を下手に構え一気に間合いを詰める。
すでにレイナさんは迎撃態勢だ。いつでもどっちからでも打ってこれる。
更に距離が詰まる。


ギリギリの少し手前を狙うんだ。遠すぎても近すぎても失敗する。


まだ・・もう少し・・。


あと少し・・・。
距離が詰まるにつれてレイナさんも動く。ゆっくりと身体をひねる・・右か・・ッ。







そして・・・・跳躍する。ホントにギリギリ、もうこれ以上はレイナさんのテリトリー。何故だかわから無いけどそのラインがはっきり目に見える。前も何度かレイナさんとのスパーで見えたことがあった

それがなんなのかは分からないけど・・でもはっきりと見えているのは確かだった。


そして、そのラインの少し手前・・そこを狙う・・!



「今だッ!」
レイナさんが踏み込むと同時に下手で持っていた得物を前に突き出す。ただしそれはレイナさんを突くためじゃない。自分の勢いを殺すため!
地面に向かって思いっきり突く!
移動のエネルギーと僕の体重で得物がしなる。物質強化された棒っきれは折れることなく反発作用となって、勢いを殺し若干だが後ろに僕を押し戻す。

「これで・・・どうだぁ!」

僕はそのまま得物をはね上げた。

『ゴッ!』っという鈍い音がする。僕がはね上げた得物は・・・。
「ふ、防がれた・・・」
レイナさんの顎をとらえてはいたが、その間には、左手が。
僕はそのままの体勢で大きくため息をついた。
「僕の負けですかね・・」
しかしその言葉を聞いたレイナさんは意外な言葉を口にした。
「いやいやぁ〜こりゃどう見てもあたしの負けでしょ〜。良く見てごらん〜♪」


え、何を言って・・。
「ほれほれ〜良く見てごらんなさいな、自分の目の前を」
め、目の前・・?
そこには本当にギリギリで届かなかったレイナさんの右手があった。
「少年君の攻撃は確かに防いだよ。それは間違いなくね。ただ・・あたしの攻撃は届かなかった」

「はぁ・・」
レイナさんと僕は、組みついていた体勢を解き息を整えながら会話を続ける。

「今回の、課題はまぁ気づいてるだろうけど間合い。そのためにこの棒っきれも用意したわけだしね。
そして少年君は見事あたしの間合いを見切って、攻撃を届かせた。これ以上ないぐらい十分な勝ちだよ」


見切った・・って言えるのかな

でも本当に・・あの感覚はなんなんだろう・・

はっきりと・・・・見えたんだ・・レイナさんの間合いが。

見え始めたのは本当に最近・・でもなんで見えたり見えなかったりするのかが分からない。

もっとよく考えてみたかったが、スパーの若干の疲労感が思考を阻害する。

とりあえず僕はそこで、思考をやめスパーでの1勝の若干の余韻に浸る・・

スパーで久しぶりに勝った気がする・・。そういやぁ前勝ったの・・いつだっけ・・

「さて、と。ひと段落ついたことだし流石にのど乾いちゃったね〜。なんか買ってくるからここらへんで待ってってねん」
レイナさんはそう言い残して、広場わきの自販機コーナーへ。あ、まだスポーツドリンクが残って・・・あ、あったかくなってる・・。

まぁいいか、レイナさんが帰ってくるまで少しのんびりしよう。ホントにくたくただ〜。
ごろんと芝生の上に横になる。
しばらくボケっと空を見る。
本当にいい天気だ。雲ひとつない快晴。
気温も心地いし、なんだか眠たくなってくる・・

若干の睡魔と格闘しながらしばらく、もう落ちそうっていう時だった。
いきなり視界が真っ青に・・!

驚いてバッと起き上がって顔にかかった物体をつかむ。
「・・・タオル・・?」
キョロキョロとあたりを見回す僕の後ろから、不意に声がした。


「汗はちゃんと吹いとかないと風邪ひいちゃうよ?」


そこには、さっきすれ違ったスバルという女の子が座っていた。


















〜あとがき〜
どうも、遅くなりまして「しるく」です。
このような駄文にお付き合いいただきましてありがとうございます。
何気に戦闘シーンは初書きです。
難しいですねぇ、戦闘シーンって。
日々みなさんの小説を読んで勉強中です〜
さて・・・プロローグでがっつり絡むことはまだない・・とか言ってましたが・・。
既にスバティアを出してます(爆ww
もうほんと、ここに書くことをあまり信用しないでくださいね(核爆
それでは、今回はこの辺で失礼します〜
これからもよろしくお願いします。



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