う〜ん・・・・まぁ、あの程度の戦力で地上本部の魔導師をかたせるなんて思ってもなかったケド〜・・・・


ちょうどスターク達が戦闘を行っているエリアから少し離れた上空で、戦況を見下ろすひとつの影があった。


セミロングでブラウン色の髪を左右で縛り、紫色のボディスーツの上から黒いファーのついた白いコートをまとう。


大きな丸めがねをかけ、そして首にはWと刻まれたプレートをつけていた。


その少女はわざとらしくあごに手を当てて首を傾ける。


「さぁ〜て・・・どうしましょうかねぇ・・・・・ちょっと早いけどぉ・・・・準備に取り掛かっちゃいましょ」


そういう、少女の言葉の節々からはおおよそ困っているような、印象は見えうけられず、むしろこの状況を楽しんでいるようなそんな雰囲気が感じられた。


少女は別枠でひとつモニターを起動させ、通信をつなぐ。


そこに写っているのは、同い年ぐらいの、そして同じような髪の色を後ろで束ねた少女だった。


彼女もまた、首のプレートに]と刻まれている。


『どうしたの、クアットロ・・・・まだ時間的には早いけど』


「う〜ん・・・でもねぇ、ディエチちゃん、あのガラクタ≠烽、すぐ全部本当に鉄くず≠ノなっちゃうそうなのよん・・・もう少し時間を稼げるもんだと


踏んでたんだけどぉ・・・ダメだったみたい・・・・。だからぁ〜」


『・・・・・わかったよ、じゃあ準備はしておく』


ディエチと呼ばれた少女は、静かに答え通信をきる。


「・・・・まぁ、もう少し楽しめばいいのに」


クアットロは少しムッとするがすぐに、不適な笑みを浮かべる。


(アレのデータ取りも重要だケド、正直私の興味はあんなガラクタじゃないのよねん・・・)


クアットロは再び別枠でモニターを出現させると、そこに表示された1人の魔導師の名前をつぶやく。


「・・・・・ふぅん、スターク・ルシュフェンドねぇ」


クアットロは、右手でゆっくりめがねを正すと、ふてきな笑みそのままに、データにゆっくり目を細めた。

























●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第17話 〈欲望の目覚め〉●



コントロールには、現在の戦況が次々に飛び込んでくる。


僕たちも、ミスティさんの近くにモニターを借りてデータ収集に没頭していた。


「第8小隊、ポイントB確保!」


「よし、そのまま戦線を押し上げるんだ・・・・・リリィ、別働隊の・・・ライアの部隊はどうだろうか?」


「はい、ただいま確認を!」


すぐ脇では素早くミスティさんが周囲に指示を飛ばしている。


その目つきは、初見のときとはまるで違う。あ、この目つきはリリィさんに少し似てるかも。


余所見をしていた僕に、レイナさんはわざとらしくドサッとデータの束を置く。


「余所見してるなんてヨユーだねぇ、ほら少年君このデータ、レーダの動きと照らし合わせて!あってたら次もどんどんあるからね!」


今、僕たちがやっているのは、いわゆる戦況記録ってやつだ。


その戦況記録のいわゆる裏づけ的なことをしていると思えばいい。


そして最終的に、そのとき撮られたデータと照らし合わせて、間違いがなければ正式な記録として局に保管されるというわけだ。


要はまぁ、デジタルデータの戦況記録対する、アナログデータの模範解答みたいなものかな。


僕はデータの照会を手早く済ませ、次のデータファイルに取り掛かった。


次のエリアは・・・・ミミィ・アルデア▼・・。えぇと・・・・。あ、あぁ思い出した。


あのライアさんたちと一緒にいた、めがねかけたツインテールの女の子だ。


一応、一通り今回参戦してる人の名前は名簿と一緒にリリィさんに貰ったんだけど・・・・


まだ、どうも完璧に覚え切れていないようだ。まぁゆっくり見てる時間なんて無かったしなぁ。


で〜・・・えーと。・・・・・・ん?


僕は、もう一度、映像をストリーミングバーで巻き戻す。


んん!?


「れ、レイナさん、これ、モニターダウンしたんですか?」


「ん、何で?」


うん、僕の質問が意味不明なのは大体理解できる。いやこれはどう考えても・・・


不思議そうにこちらをのぞきこんで来る、レイナさんに問題のシーンを見せる。


「良いですか?ここなんですが・・・・・・・・ほらここ!」


その映像には、今までこのエリア内にあった、複数のガジェットの反応が、一瞬で消え去った事が見て取れた。


「あれ、本当だ・・・あたしも細かく見てなかったからきがつ「・・・・大丈夫だ、モニターは問題ない」・・・・・はい?」


声の主はリリィさん、いつの間にか僕の後ろで腕を組んでたっていた。その顔はなんだか、若干呆れ顔だったけど。


「あ、あの問題ないって、でもこれは・・・」


「・・・・大方あの馬鹿はブチギレたのであろう」


「え、ブチギ・・・うん??」


レイナさんと二人して首をひねる。なにミミィさんがブチギレるとガジェットが消滅するの!?


「と、とにかくそういうことだっ!」


「い、いやでも・・・これだけの数ですよ!?」


「・・・・問題ない、あいつが絡むと・・・・というか第8小隊ではよくあることだ・・・」


よくあるの!!


・・・・・そのとき僕は、何があっても絶対に第8小隊だけは敵に回したくないと思った。



「付け加えるのなら・・・・味方をも巻き込んでも何度か・・・・」



訂正しよう。


絶対何があっても逆らわないと決めた=B

















ふむ・・・・・これで終わりかな・・・。


私はいつもの手を合わせるクセ≠しながら、少し考え込む。


こんなものだろうか、予想通り敵の増援もあった。


少々物足りなかったがね・・・・。彼の能力の半分も見れてはいないというのに。


「あね・・・・んんッ・・・少将?」


どうやらその行動がリリィには、気になってしまったようだ。


それにしても、律儀な物だ・・・・。この場にいる誰もが既に私達が、姉妹であるという事を知っているというのに。


仮に知らぬものが居ても、それを言ったところで何か言われるだろうか・・・・。


やれやれ、まったくリリィは昔からこうだった。


いわゆる堅物と言うやつかな。


まぁ、厳格なのは悪いことではないが、どうだろうねぇ。


「ミスティリーニ・・・逆にあなたはもう少し厳格になられた方がいいかと思いますが?」


「・・・ふむ、ミティ・・・・君は、私の痛いところを的確に突いてくるね?」


「そう思われるのでしたら、少なからず自覚症状はおありの様で・・・安心しました」


「・・・・私は逆に、色々と不安になってきたよ、ミティ」


私とて、痛いところを突かれ続けて嫌にならない訳が無い。


ミティに軽く、言い返して会話を切り上げる。


リリィも、不思議そうな顔で私を見ていたが既に他の、局員に指示を出していた。


私はそれを確認すると、再びさっきの事を考える。


彼の力を見てみたい。そしてこの襲撃は丁度良かったというのに・・・・。


だが・・・と少し疑問に思う事がある。


まだ、あの報告が来ていない・・・。


そう、来ていないのだ。


データを見た時にあった、ロストロギアの反応。それに関する情報が一切入ってこないとはこれいかに・・・。


単なる、センサーの不具合なのか・・・・うぅむ。


反応は微弱であったし、その可能性も無きにしも・・・と言ったところだろう。


だが、そんな私の考えなどよそに、戦況を見つめていたオペレーターの1人が叫んだ。


「高魔力反応感知!・・・・これは・・・・ほ、砲撃!?」


「な、なんだと、馬鹿な・・・距離は・・・・・・ッく、作戦エリアのはるか外からの超長射程砲撃・・・・!」


オペレーターのモニターを覗き込んだリリィが青ざめる。


私にも予想外の事にリリィは、一瞬声が詰まる。


私は、座っていた椅子から勢いよく立ちあがると、本来リリィが聞くべき問いをオペレーターに投げかける。


「どこだね、どこを狙っている!?」


「は、はい、えぇと・・・・」


オペレーターのモニター操作に焦りの色が見て取れる。


だがオペレーターが、言うより先に我に返ったリリィが、確証を以って言い放った。


「・・・・ライア達だ・・・!あそこには密集して魔導師がまだ待機しています。


加えてこの魔力量・・・超長距離とはいっても、この距離でこの量は多すぎる!」


リリィが、焦りを隠さず早口で言い放ちその後からオペレーターの「間違いありません」という報告がその憶測を確証に変える。


私は、一瞬焦ったが、しかしすぐにその焦りよりも、自分の好奇心がその焦りを上書きしていくのが分かった。


・・・・彼の力が見れるではないか――――――。


私は、それに気づき、ほんの一瞬、頬を緩めたが悟られまいとすぐに、口元を引き締める。


「あの砲撃、どうにかならんのかね!?」


「・・・・あれだけの量となると・・・今から退避させても・・・・ッ!」


無論だが、私はあの砲撃を撃ってほしい人間だがね。


他の魔導師よりも彼だ――――。


彼がどうするのか、それが見たくてたまらない。


だが、私のそんな高ぶる好奇心は、2人の魔導師の申し出によってすぐに抑えられてしまった。

































ドアを蹴破る勢いで入ってきたのは、マリエスさん!?


マリエスさんは入ってくるなり、リリィさんに叫んだ。


「お姉ちゃん!ボクをあのビルの屋上に!」


初めの何が何やら分からない様なリリィさんだったが、すぐにハッと何かに気が付いたように目を見開いた。


「・・・よし、マリエス準備をしろ、急げ!!」


何やら慌ただしくなってきたけど・・・・などと他人事のように考えていたら、いきなりリリィさんに呼ばれた。


「ラウル!お前もだッ!」


その時のレイナさんの「えッ!?」って声が妙に耳に響いたが、僕も当然「えッ!?」だ。びっくりしている。


「ぼ、僕ですか!?」


「他に誰がいる!レイナ、ラウルを借りるぞ、奴のデバイスの振動破砕は使える!!」


い、いやいや何を言って!ねぇレイナさん!?


「少年君、振動破砕は魔力刃を形成しちゃだめだよ。魔力どうしのぶつかり合いならS3U-Sは負けちゃうからね!!」


さっきあんた、「えッ!?」って言ったじゃないかぁぁ!!!なに軽々しくOKしちゃってるんですか!!


「言いたい事は言ったな?時間が無いここから強制転送で、あの座標までお前たちを飛ばす!」


え、あのちょっとぉ!!!と言う暇なく、リリィさんは魔法陣を展開。その後すぐに視界が光に包まれた。


その時、「砲撃来ます!!」というオペレーターさんの声を聞いて、僕は諦めて覚悟を決めた。

















僕達が現場へ飛ばされた時既に目の前に閃光は迫っていた。


えぇい、タイミングのよろしい事で!!


僕達は自分のバリアジャケットを瞬時に展開させる。


そしてデバイスを起動させたあたりでタイムリミットだった。


マリエスさんは屋上に着地すると同時に、自分の盾型のデバイスを前に思いっきり突きだす。



そして僕も、魔力刃を形成しないで、ブレードのみの振動破砕ウェイブエッジ≠起動させる。


そして、僕達と迫りくる閃光が


――――――――――――――激突した。





「――――――――っく・・・・!!」


「こ、こんのぉーーー!!!」


僕達がつきだしたデバイスによって弾かれた、閃光が上下左右に飛びちる。


いや飛び散るというよりは、激流の中の石と言った感じで僕らをかきわけて、周囲を削り取っていく。


確かに・・・魔力刃を形成しないままのS3Uはこの砲撃を切り裂いてはいるが、かなりきつい。


最大稼働しても押し戻されそうだ。


ぐっく・・・・このままじゃあ・・・・ッ!!


チラッと横のマリエスさんを見やる。


「だ、大丈夫ですか!」


「う、うん・・・なん・・・とかね・・・ッ!!」


何時まで続くんだよこれは!


はっきり言ってもう限界に近い。さっきからS3Uのヒンジ部分から嫌なきしみ音もしている。


おし・・きられる・・・ッ!?


その時後ろから、叫ぶ声が聞こえた。


「正面から砲撃を受けきろうと思うなッ!横だ、横に受け流せ!!」


スタークさんッ!?いや、でも横って言ったって・・!


「横に・・・・流せばいいの!?」


「そうだ横に流せ!!」


「・・・分かったよ!セプター!!」


セプターそれがデバイスの名前・・・・なんて悠長な事を言っていられる状況じゃない!!


マリエスさんは、受けながら魔法陣を展開する。


流石にきついのか顔が苦悶の表情だが、それでもマリエスさんは魔法を構築する。


「これで・・・いいんでしょぉぉッッ!!」


reflection・defenser!



叫び声と同時に思いっきりセプターを、砲撃ごと左へ思い切り振りきる。



そして轟音とともに、閃光は左側のビルに直撃して霧散した。




全身の力が一気に抜けて、その場にへたり込みそうになる。


「おぉっと!」


その様子を見て慌ててライアさんが、僕の肩をがっしり掴んでくれたおかげで、なんとか倒れずに済んだ。


「ど、どうもすいません・・・」


「いやいや、礼を言わなきゃなんねぇのは、こっちだっつーの」


ライアさんは苦笑いを浮かべて僕を立たせると、改めて「助かったぜ」と頭を下げた。


一難去ったところで、僕はふとマリエスさんに尋ねた。


「そのデバイス、セプターっていうんですか?」


「あぁ、そういえば初めてだね見せるの。バリアジャケットも」

マリエスさんのバリアジャケットは、黒をメインに上半身は半そでのジャケットで、そのふちに赤色のラインが入っている。

腕には保護用の甲冑をはめ、左肩にはショルダーアーマーもあった。

下半身は、ベルトの固定具から、前垂れがさがり、ベルトにそのまま固定される形で生地が取り巻いていた。

足は両方とも黒いハイニーソックスを履き靴はリリィさん同様甲冑らしく、鋭角的なデザインが特徴的だ。




「この子はセプター。本当の名前はインターセプターなんだけどね。ほら長いでしょ」



Nice to meet you


「あ、こちらこそ・・・」


By the way, the pass what do you see?

(ところで、私何に見えますか?)

え?何ってそりゃあ・・・


「盾・・・・ですか?」


Is the shield a thing what to be done?

(では、盾は何をするものでしょう?)



ん?んん??何が言いたいんだろうか・・・。


ま、まぁでもとりあえず質問には答えないとなぁ・・・


「えぇと・・・・攻撃を防ぐ物・・・・ですか?」


I am unpleasant in the pain.


(私・・・・痛いの嫌なんです)


「ぶはッ!」


思わず噴き出してしまった。


痛いのが嫌って・・・盾がそれでどうするんですかッ!!


デバイスにも色々あるんですねぇ・・・。


「あ、そういえば」


僕は少し気になった事があったんだ。


「スタークさん、あの時砲撃を横へ受け流せって言ってましたけどあれって・・・」


話題を振られて、少し驚いたようだったが、すぐに淡々と話し始めた。


「簡単な事だ。砲撃は射撃と違って、感覚的には一本の線と思えばいい」


「線・・・・ですか?」


「そうだ。いうなれば射撃魔法が点で、砲撃魔法は線だ。そして線は基本的に先頭の方向へただ後続はついていくしかないだろ」


あぁそういう事か・・・。なるほど。にしても点とか線とか流石は、砲撃魔道師。捉え方が僕達とはまるで違う。


「基本的に高出力の砲撃程、先端を狂わされたら、結合が強い分、後続は前に引っ張られやすい。今回のはとびきりの・・・・高出力砲撃だったからな」


一通り説明が終わると、互いに何かを考え始める。


多分スタークさんも考えている事は同じだろう。


そう、この場面で当然浮かぶ疑問。


――――――― 一体誰が?





そう・・・・一体誰が・・・・。


その時ふと通信が入る。


『どうやら、終わったようだな・・・よくやったとねぎらってやりたいところなのだが・・・』


リリィさんだけど何やら歯切れが悪い。


『その馬鹿魔力砲撃を撃った奴が特定できた、これがその画像データだ』


スタークさんもそれを覗き込む。


送られてきた画像データには、紫のボディスーツに身を包んだ少女が写っていた。


・・・・あれ?・・・・なんでだろう。なんかどこかで見たような・・・・いやでもこんな知り合いはいないし・・・


こういうのをなんて言うんだっけ。デジャヴ?だったか・・・・・な?


「スタークさんは・・・」と聞こうと顔を見た時僕は驚いた。


どうしてかって?

スタークさんの顔から血の気が引いていたからだ。


しかも尋常じゃないぐらい。更に呼吸も若干乱れていた。


・・・・・スターク・・・・・さん?






















・・・・な、なんなんだ。この感じは・・・。



この・・・・ざらつくような感覚は・・・・・・・。



それに・・・・俺は・・・・こいつらを・・・・知って――――。



い、いやいやあり得ない・・・あり得ないそんな事は!!



「知らない・・・ッ!」



「お、おいスターク?」



「俺は・・・・何も・・・・ッ!!」



それと同時に、頭が割れんばかりの頭痛が俺を襲う。


俺は、思わず頭を抱えその場に倒れこんでしまう。


「ぐぅ・・ッ・・・ッくぅぅ・・・・!」


次第に視界もぼんやりとしてくる。


もうすでに、周囲の声は全く聞こえず、自分がどうなっているのかさえ分からない。


ただ分かるのは、頭が痛いという事だけだ。


俺は・・・・・俺は―――――――ッ!!!




意識が深いまどろみの中へ落ちていくのが分かる。



・・・・・いや、これは闇か?




次第に痛みすら分からなくなってきた。




その時不意に声がする。




「・・・・おや、君は・・・・」



どこからしているのか分からないが、その声には聞き覚えがあった。





いや・・・というか俺の声だ。話し方は全く違うが・・・





「ふむ・・・・もう始まってしまったのかな・・・・」




はじ・・・・まった?何がだ・・・・一体何が始まったと・・・・。




「予想以上に早くなってしまったな」




なんだ、何を言ってるんだこいつは・・・・俺は?




「君が、そう感じてしまうのも無理はないかもね、今は少々曖昧だから・・・」




あいまい・・・・。




ほんの一瞬・・・俺の意識が完全に落ちる前に一瞬だけ見えた。その男が。




金色の目をした俺が・・・・そこにいた。




そんな気がした・・・・。だが俺の意識はそれをもう一度見ることなく完全に闇にのまれた。

























急に静かになったスタークさん。


まさか・・・・死ん・・・・いやいやいやいや冗談じゃない!


「スタークさん!スタークさん!!!大丈夫ですか!?」


「おい、スターク!目ぇ覚ませよ!!」


僕とライアさんが、必死に声を張り上げ、身体をゆする。


その光景をマリエスさんは心配そうな顔で覗き込んでいる。


しばらくゆすり続けたが、一向に返答が無い・・・。ちょっと・・・冗談ですよね!?


そんな・・・なんでいきなり倒れて・・・・・・・って・・・ん?


「ん・・・んッ・・・くぅッ・・・」


反応が・・・・!


「スタークさん、大丈夫ですか!急に倒れちゃって、しばらく起き上がらなかった・・・・・・か・・・・・ら?」


スタークさんは、僕の顔の前に手をかざして、言葉を制しながらゆっくり立ち上がる。


あぁ、よかった・・・・無事だったみたいだ。


と、一度は安堵した物の、すぐに変な感覚に襲われる。


そう・・・・違和感があった。


いつものスタークさんじゃない・・・。


ライアさんも怪訝な顔をしている。


僕はゆっくりと視線を移動させて、スタークさんの顔を見る。


・・・・目が・・・・金色・・・・?


僕の知っている限りではスタークさんの目の色は深い青色だったと記憶してるんだけど・・・。


「あ、あのスタークさん・・・」


「・・・・ふむ、だいたい状況は把握した。彼のデバイスは・・・・あぁこれか」


いきなり独り言のように、話し始めたスタークさん。ただ口調もどことなく違う。


「あの・・・!?」


「あぁ、少し黙っていてくれたまえよ、やるべき事は理解しているからね」


「・・・・おい、スタークお前・・・・どっかで頭でも打ったのか・・・?」


僕もそう思えてならない・・・。これは明らかにスタークさんじゃない。


「いや、だからね、黙っていたまえと言ったばかりだろう。胸に回す栄養を少しは頭に回したらどうかな?」


「な、なんだとこらぁ!」


うん、これ絶対スタークさんじゃないわ・・・。普通なら絶対こんな事言わないもんね・・・。一応スタークさん(仮)となずけよう。


一気に沸点に達したライアさんを、局員が数人がかりで抑え込む。


「―――――さて・・・ちゃっちゃとやってしまわないといけないね」


スタークさん(仮)は、ヘリオスを構えるとさっき砲撃が来た方向を見据える。


「・・・・・ふぅむ、なるほどね・・・・・・そこにいたのかい、クアットロと・・・・ディエチ」


く、クア・・・何?


その疑問もつかの間、いきなりヘリオスがシステムを起動する。


F.F.L.O.S start up


ふぃふろす・・・・?


聞きなれない単語が出てきたけど、ライアさんはそれを聞いて驚愕の声を上げた。


「ッな!?お、お前一体何をする気なんだよ!!それがなんだか分かって!!」


Full firing lock release. maine muzzle open.

その声と同時に、ヘリオスの砲身が上下に開き、急速に光が集まり始めた。


僕にも分かる。周囲の魔力が急激に減っていく感覚が。


信じられない速度で一気に魔力が、一点に集まっていく。


「・・・・や、やべぇ・・・・!!」


ライアさんの顔が引きつり、マリエスさんは一目散に陰に隠れる。・・・・確かにこれは・・・・超が付くほどやばそうだ――――ッ!


だがそんな事お構いなしに、スタークさん(仮)は躊躇なしにトリガーを引いた。


「けし飛びたまえ」


Hell`s gate!


そのスタークさん(仮)の声が異様に冷たくて、嫌な響で僕の頭の中に残った。


そして・・・・・・周囲は灰色の閃光に照らされた。
























驚いたわん・・・・・・まさか、ディエチちゃんの砲撃イノーメスカノン≠ああもあっさり防いじゃうとは・・・。


・・・・・・なんてのん気な事言ってられないわね。


「ディエチちゃん!すぐにその場所から退避よん、おっかないのが急速接近中だから・・・」


・・・とこ・れ・でよし・・・と。


ま、大丈夫でしょ。


眼下に広がる廃都市群が、その閃光と共に一瞬で消えるのはなんとも、まぁ楽しいものだった。


そんな中、閃光の脇で動く物体を見つけた。ディエチちゃん・・・・どうやら無事だったみたいねん♪


まぁこっちも武装がやられちゃったみたいだ・・・・あら、通信・・・・ディエチちゃんかしらん?


あたしはその通信を開いた瞬間、自分でも久しくしない様な強ばった顔をしてしまった。


『・・・少々おいたがすぎたようだね、クアットロ?』


そこに写っていたのは見間違うはずもない男。


「スターク・ルシュフェンド・・・・・・ッ! い、意外でしたわん。そちらから声をかけてくださるなんて」


私は内心の少しの焦りを隠しながら、いつも通りの話口調で対応する。


『まぁ・・・大方の予想はあの攻撃でね・・・ディエチが居る事は分かったんだけれど・・・・』


「・・・・少しいいかしらん?」


話を遮るように、私は少し語気を強めて右手の人差し指をピンと上げ片目を閉じる。


『・・・・・うむ、なんだろうか?』


「色々と聞きたい事がありますけど、そうベラベラと話すほど一筋縄な相手ではないことぐらい分かりますわ」


『・・・・・・・』


「だから、単刀直入にたった1つだけお伺いする事にします」


『・・・・僕が誰か・・・・とかかな?』


「あらん?お分かりになられてましたのね、でしたら話は早いですわ、お聞かせ願いましょ?」


モニター越しに相手は、顎に手を当てて考えている。・・・・さてさてどんな返答が返ってくるかしら。


しばらくの沈黙の後返ってきたのは、こっちが予想だにしない答えだった。


『・・・・・・ジェイル・スカリエッティ・・・・・』


「―――――――――――ッ!?」


『と、いったら驚くかな』


こ、この男!!


「私を、馬鹿にしてますの!?」


何時にも無く動揺し、声も張り上げてしまう。


以前ウーノ姉様に、あなた、意外に人を食ったような話し方をするのね≠ニ言われた事がある。


言われた時はピンとこなかったが、自分に向かってやられると、中々腹立たしいものだった。


それと同時に、それを言われた時のウーノ姉様の気持ちが分かって、あの時の自分が結構怖いもの知らずな事をしてたと頭の片隅で思った。


『それにしてもどうかしたのかい?黙りこくってしまったが』


その声にハッと我に返る。


私は、ひとまず自分を落ち着かせると、同じ問いをぶつけた。


「いえ、なんでも。・・・・それよりももう一度だけ聞きますわ、あなたは誰なんでしょう?」


『・・・・・ふむ、まぁ本来なら僕は、こんな形で出てくるべき者じゃない≠だが・・・』


出てくる?・・・どういう事かしら。まさかこれはスターク・ルシュフェンド本人では・・・・。


今回の任務は、あるモノを搭載したガジェットの試験と、そしてこの男を調べる事。


片方はドクターの指示だが、もう片方はウーノ姉様からドクターを介さずに直接しかも、ドクターに見えない場所でこっそりと言われたものだった。


だがそこで1つの懸念事項が生じた。


スターク・ルシュフェンドという男についての経歴や、今の地位などは調べれば簡単に出てきた。


だが私はこの男について、それ以外の事を全く知らない≠フである。


そもそも、会話すらした事のない相手だ。どんな人物かなど、データだけでは人物像を描くには不十分だ。


それに加えてさっきの言葉である。出てくるべき者じゃない≠ニは一体どういう事なのか。


『・・・・いやだけど、そういうことに近いとだけ言っておこうか』


「え!?」


それだけを言い残して、一方的に通信を切られた。


あ、ちょっと・・・・・なんて失礼な。・・・・でもそういうことに・・・・・・・近い?


私は、しばらくその意味について深く考えてみることにした。


でも、その事についてあまりに深く考えすぎていたためか、肝心の任務のもう片方をすっかり失念してしまっていたのは痛かったかしらん。


























「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


リボルバーナックルの一撃をくらってガジェットが爆散する。


・・・・ふぅ、大体ここら辺のガジェットは片付いたけど・・・・。


あたしは、きょろきょろとあたりを見渡す。


周辺には、撃破したガジェットの残骸と、廃れた街並みが続くだけでそれ以外は何もない。


――――――おかしいなぁ、回収されちゃったのかな。


そう、情報にあったロストロギアの反応が全くないのだ。


なのはさんはレリックとも何とも言えないって言っていたし、やっぱりセンサーの・・・


「スバル!」


不意にどこからか名前を呼ばれた気がした。


あたりを見回す・・・。すると声の主は、キュイィィン≠ニいう機械音と一緒にやってきた。


「ギン姉!」


「そっちはどう、スバル・・・・・って聞くまでもないわね」


青色の髪をなびかせてやってきたギン姉は、周囲に散らばったガジェットの残骸を見て、苦笑い。


「うん、そっちは?」


「まぁ、こっちには108の人たちもいたから・・・そんなに手間取らなかったし・・・・ってあら?キャロちゃんは・・・」


ギン姉は、一緒に降下したはずのキャロを探し、周囲を見やるが影も形もない。


まぁ当然だ、別行動をしてるんだから。


「キャロには、上空からフリードでここ全体を見てもらってるんだ。ほら空飛べるから貴重だし・・・」


「なるほどね・・・・なのはさんの指示?」


「え、なんで分かったの?」


「だって、流石にスバルじゃ、そんな事思いつかなさそうだし・・・」


ひ、酷い・・・・。さらにそれをさらっと、言ってくるから余計に、グサッと来てしまう。


姉妹だから、裏の無い本音の会話が出来る事はいいけど、それってこういうこともひっくるめて何だよねぇ・・・。


そう考えると、これってどうなんだろうって思っちゃうな。


しばらく2人で、話をしているとモニターが開いてなのはさんから通信が入った。


『スバル・・・・とギンガもいるね』


「「はい!」」


『そっちはどんな状況かな?』


「ついさっき1機撃破して、このあたりのガジェットはあらかた倒せたと思います」


『ギンガは?』


「私も同じです。108と共同でガジェットを撃破。私が居たエリアでは安全確認後、ガジェットの回収作業に入っています」


『・・・・そう』


しばらく何かを考えるなのはさん。そしてなのはさんが私も気になっている事を、私達に聞いてきた。


『ねぇスバル、ギンガ。そっちの方でロストロギアの反応ってあった?』


その言葉に思わず顔を見合わせた。どうやらギン姉も、気になっていたようだ。


で、ギン姉の顔を見る限り、その反応は無かったようだ。


・・・・う〜ん、ギン姉のところも無かったのかぁ。


「という事は、なのはさんの方も、反応は見られなかったと?」


ギン姉が、当然の事とは思いながらも訊ねる。


『うん・・・・でもロングアーチの方から送られてくるデータにはまだこの作戦エリア内に、あるらしいんだけどね』


なのはさんは、「まぁでも反応が小さかったのも気になるけど・・」と付け加えて苦笑いをした。


今確か、なのはさんは、上でU型の残存を落としているはずだった。


残存というのは、さっきすごい魔力攻撃の音がした後、ビルの合間から、命からがら逃げてきたU型の事だ。


その前は、ロストロギアの反応を探すからってことで、単独で探知魔法を行いながら空を飛びまわっていた。


それから、だいぶの時間がたっている。それでも見つけられないっていうのはどういう事なんだろう・・・。


と・・・・ん?


なんか足もとが・・・・光って・・・・!


「スバル!」


ギン姉の鋭い声が飛ぶ。あたしは、声が聞こえたと同時にその場から飛び退く。


そして、あたし達が居たところが崩れて、現れたのは・・・・!!


「こ、この丸いのって!!」


「108の報告書にあった、新型!?」


新型≠サれには聞き覚えがあった。


攻撃力はさほどじゃないけど、装甲がやたらめったら固いっていう・・・あれか。


あたしは、着地し体勢を立て直すと、なのはさんに指示を仰ぐ。


「なのはさん!」


『対象を、ガジェットドローンV型αと呼称!スターズ03とギンガは、速やかに対象の破壊を!』


「「了解!」」


あたしとギン姉の声が重なる。モニター越しのなのはさんもその顔を見て力強く頷いてくれた。


そして最後に、みとれそうになる程の笑みでこう言ってくれた。


『手ごわそうだけど、スバルとギンガなら余裕だよね?』


それは、紛れもない信頼の言葉。


そして同時にそれは、自分の教え子に対する、なのはさんの自信の表れでもあった。


私の教えてきた事に間違いはなく、それを教えている魔導師にも何の問題もない▼・・と。


そこまで期待されちゃあ、信頼されちゃあ、無様な戦いは見せられない。


何よりあたしは、憧れのなのはさんに信頼されているという事がたまらなくうれしかった。


「行くよ!ギン姉!マッハキャリバーッ!!」


気合十分で2人≠ノ声を掛ける。

その声にAll right, my ?buddy!≠ニいうマッハキャリバーのいつも通りの合図と


ギン姉の「やれやれ」という感情を含んだ笑いが返ってくる。



さぁて、新型だかV型αだか、知らないけどギン姉とあたしのコンビネーションの前じゃ誰であろうと止められないよッ!


あたしは、相手をキッと睨みつけると、もそもそとこちらに正面を向けようとしているV型αに飛びかかった。






























扉が開くと、そこには、少し大きめの空間と、その先にもう1つ扉があった。


「ここで、失礼ですがデバイスを預からせていただきますわ、ご心配なくちゃんとお返しいたしますから」


こちらを振り返りもせずにジムニーさんが言う。


丁度・・・というかたまたまと言うべきか、今日リィンはロングアーチに詰めている。


ウチらはシグナムのレヴァンティンだけを預け、ジムニーさん自らのボディチェック後その先の扉へ案内された。


そこでもセキュリティシステムに生体認証とパスを打ちこみ、そしてゆっくりと扉が開いてゆく。


そして、その扉の先で、ウチらは真実を目にした。


「・・・・・ッ!!」


シグナムの顔がゆがむ。多分ウチも同じ顔してんねやろうな・・・。


そこにあったのは、紛れもないガジェットT型≠セった。


そう、あの殴り書きは真実。確かにここは質量兵器を研究していたのだ。


ウチはゆっくりジムニーさんを睨み、声のトーンを落として訊ねる。


「これは、どういうことですか?」


「・・・・だから、こういう事よ、あなた方が言ってた通りの・・・・・ね?」


扉を入ってすぐのところにあったT型の周辺には、何やら多くの技術者達がせわしなくコンソールを操作したり、


固定具によって固定されたガジェットの下に潜り込んでガジェット自体を調整している。


その、おおよそ信じがたい光景に目を奪われていると、ウチらの背後から唐突に声がする。


「・・・・よくぞいらっしゃいましたね、機動六課の方々」


一瞬の警戒。シグナムが一歩ウチより前に出て相手を牽制するが、その相手は気さくに応じた。


「フフッ・・・そんなに警戒などしなくとも、何もしませんよ、そんな事考えるの、馬鹿げていると思いませんか?」


見るとその声の主は、ジムニーさんと同じ深緑のセミロングで、白衣をはおり、柔和な蒼色の目を持ち、どどことなくジムニーさんに雰囲気が似ていた。


「だって、ここの技術者全員でかかっても、あなた達1人取り押さえられないんですよ?」


気さくだが、どことなくトゲのあるニュアンスを含む物言い。まぁ間違いなく、表面上友好的だが多分相手はウチらの事は嫌いなんやろうね・・・。


すると、相手の話を遮るように、ジムニーさんがその女性の前に出る。


「この人、私の2つ上の姉で・・・」


「ローランド・ジムニー、第2技術部の主任をやっているの。よろしくね、それと年齢は30よ」


姉がローで妹がハイ・・・なんちゅうややこしい姉妹や。


若干ネーミングセンスに疑問を感じてジト目になるが、視界の端にガジェットが写るとすぐに我に返った。


「まぁ、お姉さんかどうかは、この際どうでもええです。それより説明していただけないでしょうか?」


ウチは、自己紹介と一緒に出された手をあえて拒絶し腕を組むと、語気を強めて言った。


それに対して、ローランドさんは何故かやれやれ≠ニいった顔で苦笑いをする。


それを見て更に怪訝な顔になるシグナムとウチ。


なにが面白い?


なにに呆れられる?


質量兵器根絶を叫んできた時空管理局の、しかも地上本部が管轄する中でのこの異常事態。


本来なら、もっと焦ってもいいはずだろうと考えてしまう。


なのに、初めのジムニーさんの返答に始まり、先ほどのローランドさんの苦笑。


この2人を見ていると、ムキになって説明を求めているこちらが馬鹿に思えてくる。


その目線に気が付いたのか、ローランドさんが話しかけてくる。


「だからそんな怖い顔、しないで下さい。で、えーとなんでしたっけ・・・・・そうそう説明でしたね」


ローランドさんは、言いながらこちらに見えるようにモニターを起動さる。


ウチらもそれを注視する。そしてそこに表示されていた物に驚愕する。


XAB‐00001 戦略的自立機動兵器  SMART


「スマート・・・・?」


「そう、スマート正式にはStrategy Mobilityarms of ARTificial≠アの頭文字をもじってスマートね。


言ってみれば人工的な戦略機動兵器といった感じかしら」


声高に、そして自慢げにそれ≠説明するローランドさん。更にそこへ補足的にジムニーさんの説明が入る。


「ベースは、紛れもなくガジェットですが、それを元にこのスマートは再設計されたものです。


武装もちゃんと非殺傷殺傷の切り替えも可能ですし、何より壊れても替えが効きます」


替え・・・という言葉に思わず反応する。


何より、この人たちは、その機械に携わる者であるはずだ。


ローランドさんが何をやっているのかは分からないが、ここで白衣を着ていることから考えても少なくとも技術者である事は間違いなさそうだ。


そんな中で、堂々と替えが効く・・・とは、ウチの周りにいるデバイスの技術者達とは全く違う2人である事は確かだろう。


シャーリーもそしてマリエルもデバイスに対して愛情を注ぐデバイス思いの技術者だが、この2人は・・・。


「そう替えが効くところが一番ですね、魔導師ではそうはいきませんでしょう?


誰も死なない、誰も傷つかない、壊れるのはこの機械だけ、素晴らしい事だと思いますけど?」


その言葉にグッと声が詰まる。


確かに・・・確かにそうだ。


どんな魔導師にだって家族が居る、大切な人がいる。そしてそういう人たちは、その魔導師が傷つく事に、


深い悲しみをいだく。死んでしまったらなおさらだろう。


だが機械は違う。悲しまない。嘆いてせいぜいそれを配備するのにかかる金を計算する人間ぐらいだろう。


この人が言っているのは・・・正論だ。


言い返す事の出来ないほど、ストレートな。


言葉に窮するウチの神経を逆なでる様にローランドさんは続けた。


「そういえば、機動六課は試験部隊でしたねぇ、よろしかったらどうです?ロールアウトはまだですが、試験機が1機ありますし・・・


なんなら、六課特別カラーにでもしましょうか?」


ローランドさんはチラッと、先ほどの調整中のガジェ・・・・スマート≠見やって自慢げに微笑む。


・・・我慢や、我慢・・・。ここで怒ってしもたら思うつぼやし、なによりただでさえ、風あたりの強い六課や・・・。


敵は増やしとうない。


「あら、お気に召さないご様子で・・・うぅむ、そうですねぇ・・・・・・よくお考えください、八神ニ佐。


このスマート≠ネら少なくともガジェット相手の戦闘における優位性は保証いたしますよ?


ガジェットの様な、あんなガラクタと技術部の粋を集めたスマート≠ニでは、まぁ基本スペックも違いますからね


スペック上では1機で大体T型4機と対等に渡り合える能力がありますわ」


つらつらと、実に自信にあふれた説明を続ける、ローランドさん。チラッとシグナムを見やる。


アカン・・・ブチ切れ何秒前って顔してるわ。


ウチは思念通話でシグナムを諭す。


(シグナム・・・・わかっとると思うけど、我慢やで?)


(・・・・で、ですがこれではまるで・・・まるで私たちがあんな機械ごときに劣っていると言われているようなものです!)


(それでもや、ここで下手に暴れたりしたら、それこそ六課の敵を作るようなもんや!ええか、絶対に手出したらアカンで)


(・・・・ッ・・・・りょ、了解しました)


明らかに不服な声で思念通話を切るシグナム。


だけどまぁ大丈夫だろう、シグナムは確かに不服だろうが、一度自分が了解した事を簡単に覆す人間じゃない。


けど、やっぱりそうは言っても、この話し方と言い、内容と言い聞いてて気持ちのいいもんでもない。


流石に手を出すわけにはいかないので、少し声を張り上げてローランドさんの声を遮る。


「せっかくの申し出ですが、遠慮させていただきます!」


「あぁ・・・・うん、それは残念ですね」


顔が全然残念そうではない、むしろこちらの反応を面白がっているようにもみえる。


「・・・とにかく、この現状は上の方へ報告させてもらいますがよろしいですね?」


「おやおや、困った・・・」


「姉さん・・・・もう少し困ってくださいよ」


この2人は・・・・!


アカンわ、流石にウチも限界来ても―た。


我慢しろと言いながら、自分の限界がこうも低いのかと自分を自分で軽蔑しながら、声を張り上げようとしたその時。


「あんたr「貴様ぁ!!!」」


先にシグナムがローランドさんの胸倉をつかんでいた。


「・・・ッ!ど、どういうつもり・・・・・かし・・・・らッ!?」


「どういうつもりだと!?そちらこそどういうつもりだ!!さっきから聞いていれば、悪びれもなく謝罪の弁も焦りも見せず、


ただ自分達が作った、あんな機械を自慢する一方ではないか!!」


シグナムは胸倉を右手でつかんだままローランドさんを壁に押しやると、腕でのど元を抑えつける。


加減はしているだろうが、ローランドさんの顔が苦痛でゆがんでいた。


「挙句の果てには試験部隊だから、六課へ専用色でどうですかだと!?こんなものを造っておいてふざけるのも大概にしろ!!」


「こん・・・なも・・・・の?・・・・・・ふ、ざけ・・・る?ふざけ・・・るですって!?」


今まで宙を泳いでいた、ローランドさんの手がシグナムの右手をつかむ。


袖のしわなどから判断するに、相当強く握っているように感じられた。


「ッく!!」


シグナムも、少し予想外だったのか、右腕をのど元から離しローランドさんを、右手で少し強めにはらった。


その衝撃で、ローランドさんは、尻もちをつき、苦しそうに数回むせた後キッとこっちを睨みつける。


その目は、今日初めて見せる表側の敵意だった。


「あなた、今ふざけてるって言ったのかしら?」


結構きつく睨んでいるがシグナムは動じない。


「あぁ言った。それがなんだという、さっきも言ったがこんな物を造っていて、


何の悪びれもなく焦りもしない、それのどこがふざけていないと言える?」


「・・・・・・・・に、何が・・・」


シグナムの激しい糾弾に、うつむいて何かをつぶやくローランドさん。


後ろで見守るジムニーさんは複雑な表示上を浮かべている。


「なんだ、言いたい事があるのなら言ってみろ」


シグナムの、厳しい声が飛ぶ。そしてそれに釣られるように、さっき以上に鋭い目つきでこっちを睨むと


バッと立ち上がってローランドさんが叫んだ。


「あなた達に、何が分かるっていうの!!」


その声の大きさに流石にシグナムも一歩引いてしまう。


「あなたに、いや魔導師になんて・・・・・・絶対に分からない!!分かるはずないもの!!!」


魔導師・・・?


こっちの事などお構いなしに、ヒステリックに声を張り上げる。


「そうよ!!!分かるはずないの!!あなた達なんかに、私達の気持なんて、分からない分からない分からないぃッ!!!!!!!」


髪を振り乱してかぶりを振りながら、そのまま、両肩を抱いて泣き崩れてしまうローランドさん。


加えて、小刻みに身体が震えているようにも見えた。



訳が分からないという顔をしていたウチらに、さっきまで複雑そうな顔で見守っていた、ジムニーさんがローランドさんに寄り添う。


そして、ローランドさんを立たせると、その調子のままゆっくり口を開いた。


「・・・・・ごめんなさいね、ちょっと姉さんはその・・・・トラウマがあって・・・・」


「トラ・・・・ウマ・・・?」


「本当はね、こうなる前に姉さんを止めたかったんですけど、もう姉さんがこうなっちゃ仕方が無いですね・・・


それにあなた達も、理由聞きたいんでしょう?」


正直、言ってなんだか今さらながら、申し訳なくなってきている自分がとても嫌だった。


確かに向こうも挑発的な態度で臨んで来てはいたが、我慢、我慢と自分に言い聞かせてきたつもりだった。


でもできなかった、で、結局このザマだ。


だだ、これを招いたのが自分たちである以上、ウチらにはそれを聞く義務もある。


聞きたいという欲望と、聞かなければならないという義務の間で自分の心を揺らしながらもウチらは静かに頷いた。


そして、そのウチらを見てジムニーさんは、複雑そうに目を閉じる。


「じゃあ、応接室に戻りましょうか、こんなところではね・・・・」


そう言うと、ローランドさんに肩を貸しながら、ジムニーさんは歩きだす。




もと来た道を戻り応接室に到着すると、ローランドさんを座らせ、ウチらを対面へと誘う。


ちなみにローランドさんにジムニーさんは「あの事を話すから姉さんは・・・」


と言ったがローランドさんは「いいえ、大丈夫よ・・・・もう・・・大丈夫」とその申し出を断ったそうだ。



ジムニーさんは皆が着席したのを確認すると、ローランドさんの横に座って静かに話し始めた。


「それじゃあ・・・・話すわ・・・・・姉さんのトラウマ・・・・この技術部で起きた・・・・」















































「悲劇についてね・・・・・・・」






















〜あとがき〜
最近、なんだか物忘れが激しいのかなとか思うしるくです。
こんばんわ・こんにちは・おはやうございます
さて、物語は中盤ですが、若干オリジナルは1つ区切り的なのを向かえそうです。
・・・・・・多分(爆ww
色々考えてはいますがね、これは長くなりそうな予感(爆爆ww
ということでですね、皆さまこれからも長くよろしくお願いします!
ではまた次回お会いしましょう!
それでは!



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