魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第16話
あたしが、部屋に戻るとそこには汗だくで腹筋をしている、ティアが居た。
「ちょっと、ティア何してるの!」
この汗の量は、数分とかそんな短時間でかいた汗じゃない。
「見て・・・分かんないのッ!謹慎中にだって・・・・ッ出来る事はッ・・・あるわ!」
「いやそれは、見たらわかるって!あぁ〜もぅ凄い汗・・ティア一体何時からこんな事・・」
「何時・・・そうねッ!・・・いつだったかしら・・・・始めた時・・・・はもう朝だったから・・・・フッ!!」
朝?・・・今がもう昼前だから最低でも3時間は、ぶっ続けで・・・・!
「ちょ、ちょっとティア!朝ごはんとか食べたの!?」
「そんなの・・・食べてる暇なんてッ・・・ないわよ!それに・・・ッ!部屋から出らんないしね・・・ッ!朝練みたいな・・・ッ もんよ!!」
気丈に振る舞っているが、明らかにティアは無理をしている。
朝練ってっそもそも、無茶に身体を動かす事じゃない。
通常の訓練でも、朝連は1時間〜1時間30分程度の物でしかも、なのはさん達、隊長陣がが綿密に計画を練って行われるものだ。
とにかくあたしは、ティアの傍に駆けより、ティアの両肩を掴んで無理やりその無茶な運動≠やめさせる。
「ちょ、ちょっとスバル!何すんのよ!!」
ティアは、少し抵抗したが、やっぱり朝ごはんも食べていない身体で、無茶をしていたためか、その抵抗は些細なものだった。
それこそ、駄々をこねる子供のように、両手両足をジタバタとさせただけ。
でも、すぐにティアも振りほどけないと分かったのか、おとなしくなった。
「とにかく、何かあたし買ってくるから、ティアはおとなしくしててね!」
あたしはそうティアを諭して、部屋を後にした。
●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜第16話 〈キレると切れる〉●
部隊長としては、本来はティアナの事を含めて、もっと真剣に考えんとアカンのやろうけど・・・。
ウチは今、108の公用車を借りて移動中。
公用車と言っても社用車に近く、真っ白いボディの側面に小さく時空管理局と書かれたコンパクトカーだ。
運転は、シグナムがしてくれている。
ウチは、ひと束の報告書を自分のカバンの中から取り出す。
そしてパラパラとめくっていき、とあるページでその動きを辞め、そこに書かれた部署名をポツリとつぶやいてみる。
「技術開発部かぁ〜・・・・・」
以前ラウル達が持ってきた調査資料。
その中に少し気になる、もんが入っとった。
それが技術開発部による、一部ガジェットサンプルの復元および調査が行われている可能性あり≠チちゅう事やった。
なんでメモ用紙とも呼べんような、紙の切れ端にボールペンで殴り書きなんかやろ。それにあの持ってきた2人に連絡取っても、
自分らはそんな事書いてませんっていう答えしか返ってきぃへんかったし。
だからこそ気になった。
ただこんな不確定でしかも、アヤシイ情報で、階級振り回して視察や〜≠ネんて間違ってもできへんし、
ただでさえ敵の多い六課。こんなんで敵なんて作りとう無いからなぁ。
だからナカジマ三佐に頭下げて、目立たないこのコンパクトな車を1台貸してもらったッちゅうわけ。
本当にナカジマ三佐には、六課にも協力してもろてるし、ギンガも貸してもろてるし、今回も・・・・・・。はぁ〜迷惑かけっぱなしやなぁ〜・・・・
だからこそ、何かしら成果っていうもんを上げて帰らんことには!
そう意気込むウチに、ふとシグナムが声をかけてくる。
「それにしても、その情報・・・・・やはり私には信ぴょう性に欠く物だと思わざるを得ません・・・・」
「うん・・・それはな、ウチもよお分かってんねやけど・・・・」
その返答に少し眉をひそめるシグナム。
「でもな、確かに信ぴょう性は無いかもしれんけど、せやったら何でこんな物手書きでわざわざ入れる必要があったんやろか?」
「いや・・・・・まぁ確かにそれはそうかもしれませんが・・・・」
「こんなん、持ってきた人間がだれかなんてすぐに分かるし、それで確かめられたら怪しまれるんは目に見えとる・・・・」
そこでシグナムが何かに、気がついたのか少しハッとする。
そして気がついた事は多分・・・・いやおそらくはウチが薄々気が付いてる事と同じ・・・
「では、主はやては・・・・その手書きのメモ・・・・・・故意に誰かが入れた物だとお考えで?」
「う〜ん・・・他に何か考えられるか?」
ウチが、ヒラヒラと報告書の束を揺らすとチラッとシグナムはその行動を見つつ、視線をまた前に戻す。
シグナムもシグナムで色々と考えを巡らせているようだが、運転をしながらでは中々集中もできなさそうだった。
「あ〜あかんあかん、シグナムは余計なこと考えんと、今は運転に集中や」
ウチはシグナムに運転に集中するように促し、自分は再び資料に目を落とす。
それに気になる事はもう1つ。書かれた用紙はめっちゃ適当な、そこらへんの紙やのに、
挟まってたんがこの資料の丁度ガジェットに関する調査報告書ッちゅう点や・・・。
しかもただ挟まっていたわけじゃない。しっかりクリップで止めてあったのだ。
ウチはこの、どっからどう見てもアヤシイ情報を目の前にして自分で行動を起こしたとはいえ、大きくため息をつかざるを得なかった。
お、お姉さん!?
いまだ初めて会った時と変わらぬ微笑をたたえる女性に向けて、その場の誰もが驚きを隠せずにいる。
もちろん僕もその1人だ。
リリィさんに、お姉さんが・・・・いや、でも名前が一文字もかすってないし・・・・。
まさか、腹違いの・・・・・とかそういうのだろうか?
そんな僕の、想像を尻目にリリィさんは血相を変えてミデルさんに詰め寄っていた。
2人でなにやら声をひそめて話をしているようだけど・・・・・何を話しているのやら・・・。
「あ、姉上・・・・あれほどこちらには来られないようにと・・・・」
「むぅ?いやしかしだね、なにやら面白そうな噂を小耳に挟んだものだから」
「でしたら私の方から、そちらにお伺いに参りますので!」
「いやいや、私もこれは息抜きの様なものなんだよ・・・・あんな狭い執務室にこもりっぱなしでは息が詰まってしまってね」
「こちらの息が詰まるんですよ!」
「そう邪険に扱わないでくれたまえ、まだ彼らには、何も話してはいないよ。さぁ皆にも紹介してくれないだろうかね?」
「しょ、紹介って・・・」
「そう、渋らないでくれ・・・名前だけでもいいんだ」
「・・・・・・・・・っっはぁぁ〜・・・・」
あ、終わったようだ。
最後の大きなため息は気になるが、リリィさんはミデルさんの傍らに立つとこちらに向き直る。
そしてまた一つ、小さく息を吐くとミデルさん側に手をかざす。
「まぁ、先ほど我も迂闊に口を滑らせてしまったが・・・・改めて紹介しよう。私の姉上」
そう言えば、名前を知ってるのって僕ぐらいなもんだなぁ。
「ミスティリーニ・ホーザントだ」
そうそう、ミデ・・・・・・ん?
ミスティリーニ?
あれ?聞いた名前と違う・・・
「ちょ、ちょっと待ってください!だって、その人僕にミデルって・・・・」
「防犯上、仕方ない事でしたので・・・お許しを」
困惑の声に一度は、僕に集中した視線も、次には部屋の入口から聞こえた凛とした声に奪われていた。
あ、クラミスさ・・・・
「ミティ、遅かったね?」
ってこの人も、名前違うの!?
「ミランティ・ビショップ。この方の、ボディガードを務めております。どうぞ、お見知りおきを・・・・」
「あぁ、あと私の事はミスティ、彼女の事はミティで、構わないよ。イチイチ長いからね我々の名前も」
ミスティさんが捕捉説明を入れ改めて、周囲ににこやかに振る舞う。
ミティさんは、その説明の後、静かに頭を下げと部屋の片隅にスッと移動しこちらを伺いながら壁に寄り掛かった。
「さて、それで姉上・・・・一体ここへはどのようなご用件で?」
「む?やはりそうなってしまうかな、私が来ると・・・・」
さも、その問いが来る事をあらかじめ予想していたかのような返答をするミスティさん。
それに、またため息をつきながら呆れるリリィさんも、この返答は想定内の様だ。
すると、その2人のやり取りを見ていたレイナさんが少し気になる事を言った。
「にしても、ご姉妹お割には・・・・その、似ていない・・・ような」
「まぁ、確かにな。三佐があれだけきっつい顔してるし・・・・ミスティさんの方がより女性らしいっていうかなんていうか・・・」
「ライア・・・・お前だけには女性らしさを言われたくないんだがな・・・」
これまでの一連の流れで、精神的に少々疲れているのか、頭を抱えるリリィさん。
でも確かにそうだ。
姉妹と言うにはレイナさんの言うとおり、確かにあまり似ていない。
シーボル姉妹は双子だからあれは別格にしても、この2人見れば見るほど似てるのは紙の長さ位で、顔も目も鼻も口もどこも似ている要素が無かった。
もちろん、性格だって・・・・。
「う〜ん・・・言われてみれば・・・・ここまで似てない姉妹も中々珍しいですねぇ・・・・
・・・・・・と・い・う・かぁ、お二人のそんな細かいところにまで、気がおつきになるなんて流石お姉さまです!私まったく気がつきませんでしたわ〜」
「いや・・・・・嘘つけよ」
「私、お姉さまに嘘なんて申し上げた事一度もありませんけど」
「あぁ、ちくしょう!全てが嘘ならよかったのに!!!」
向こうは向こうで色々大変なようだった。
っていうかあのライアさんに、猛烈アタックしてる女の人は・・・・
「あぁ、あれね。あのこレイニーっていうんだ、んでその近くで袖引っ張って話そうとしてるのが補佐官のミミィって娘」
何時の間にやら、傍にいたレイナさんが遠巻きに2人を紹介した。
「なんでもね、あのレイニーって娘、ライアに憧れてるんだってさぁ!・・・これちょっと面白くない?」
ちょっと声のトーンが最後高くなった所為か、レイニーさんがキッとこちらを見る・・・・いや、どっちかっていうと睨むだな・・・。
「あの、少々いいですか?そこの女狐!」
「あ、それはもう固定なんだ・・・」
女狐って・・・・。初めて聞きましたよ、そんな言葉。
「今、憧れていると仰いましたね?」
「あれ、違うの?」
「ニュアンス的にはまぁ、正解ですが・・・・・100点満点ではありませんね」
「いや、別に100点の回答なんて知りたくない・・・・っていうか予測がつくんだけどなぁ・・・」
レイナさんの少し呆れた言葉に、大げさにチッチッチと指を振るレイニーさん。
確かに僕もなんとなく、予測がつくなぁ・・・場の雰囲気的に
「いやいやいや、なごくありふれた感性しかもたない方々が、そんな・・・、無理です、不可能、あり得ません」
確かにこの人は、すっごい感性持っていそうですからね。いや本当に。
「そんな、あなた達にお教えいたしましょう!・・・・・・それは愛≠ナす!」
「「ほらね、やっぱり」」
思わず、ハモる僕とレイナさん・・・・でもそんな事はお構いなしと言った感じで、レイニーさんはライアさんに更に迫っていく。
「てめぇはなに、こっぱずかしい事を平気な顔して言っていやがる!!!」
「んふふ〜いやですねぇ〜照れ隠しなんてせずに、私をギュッと・・・・」
「だから、こっち来んじゃねぇ!!!」
正直つきあうだけ無駄って感じでしたかね・・・・
だけどその、周りで少しオドオドするスタークさんは少し貴重だと思う・・・・。
・・・・・・・って!
本題忘れとる。
まったく、あの人の所為で2人がまったく似ていない理由を聞いていない事を、すっかり忘れていた・・・・。
「あ、あの!それで先ほどの質問のお答えは・・・・・」
僕の声に反応して2人が振り向き、ミスティさんが、クセ≠しながらゆっくりと口を開いた。
「似ていないのは当たり前だよ、私達はね・・・・・・」
と、答えを言おうとした直後、耳をつんざくようなアラート音が隊舎を揺らした。
「これは・・・・・ッチ、出動要請かよ!!」
その、ライアさんの焦る声の同時にミスティさんの目つきが変わるのが僕には、はっきり分かった。
アラート!?まったくなんていうタイミングで・・・・
あたしは、ちょうどティアにご飯やら何やらを買って帰る途中だった。
そんなときに、いきなりアラートがなったのだ。
「スバルさん!」
「キャロ、フリードも!」
六課の隊舎内を合流したあたしたちは、ヘリポートへ走る。
あたしは走りながら、横のキャロを見やる。
明らかに、その表情は暗かった。
まぁ無理もないだろうと、それにたぶんあたしも今結構暗い顔してるかも・・・
「こんなときに・・・・エリオ君や・・・・ティアさんだって・・・・」
それは当然の懸念だ。一応スターズ、ライトニングと分かれてはいるが、あたしたちは基本4人で1セットだ。
それなのに、いくら今日退院予定とはいえ、今すぐにって言うのは無理だし、無傷だがティアは謹慎処分中だ。
結果的に、現段階で出撃できるのは、隊長陣とあたしたち2人だけ。
まだ相手の規模とかは聞いていないが、さすがに2人というのは少し厳しいものがある。
あたしは、これは苦戦するかなぁと、そんな考えを浮かべながら、ヘリポートへ通じる扉を開けた。
すでにヘリポートでは、ヴァイスさんがヘリの離陸準備を終え、ローターが風を巻き上げていた。
あたしたちはヘリに乗り込む。・・・と、そこにはなのはさんと・・・・ギン姉・・・あれ?八神部隊長は・・・・
「おら、ぐずぐずすんじゃねぇ、とっとと座れ」
と、ヴィータ副隊長。いらしたんですね・・・・見えなかった。
「スバルお前、今なんか失礼なこと・・・・・まぁいいや」
少し睨まれたが、ブリーフィングの妨げになるのを嫌ったのかそれ以上追求してこなかった。
機体全体が少し揺れる。ヘリが離陸したようだ。
それを確認すると、なのはさんが自分のチェックボードを見ながら口を開いた。
「それじゃあ、簡単に今回の状況を説明するね。今回ガジェットが現れたのはココ。第10廃区画。
ココは以前あの、4人と模擬戦をしたあの廃区画のすぐ隣だね」
あの4人とは、言うまでもなくラウル君たちのことだ。いや、いまはそんなことより、何でそんなところに・・・・
「でね、ちょっと今回は普通の出撃とは違ってね、微弱だけどロストロギアの反応も出てるんだ」
ロストロギア・・・その単語にその場に緊張が走る。・・・・まさか。
みな考えることは同じだろうが、皆を代表してギン姉がなのはさんに質問を投げかけた。
「それは・・・・そのレリックということでしょうか?」
誰もが、薄々そうだろうと思う中、なのはさんはその答えを少し濁した。
「ううん、それがねちょっとよくわからないんだ。いまロングアーチも懸命に調べてくれてるんだけど、反応が弱すぎてね・・・」
「つまり、何かしらの封印処理がされてる可能性があるって事だろ?」
「その可能性もあるし、その可能性も無いし・・・こればっかりはよくわからないんだけど、でもね・・・・・」
なのはさんは、一度言葉を区切ってあたしたちを決意のこもった目で見やる。
「ガジェットが出現してることは確定事項!だから今はあたしたちにできる最善のことをしよう!
今回エリオとティアナが出撃不能だから、現場での指揮はヴィータ副隊長が執ります。ギンガも・・・いいね?」
その問いにギン姉もしっかりとうなずく。
「・・・・ま、ウダウダ考えんのは柄じゃねーな!」
ヴィータ副隊長もそれに続いて意気込む。
「なのはさん!もうすぐで降下ポイントッスよ!」
同時にヴァイスさんの声がヘリ内に響いた。
あたしは自分の相棒を、グッと握る。
「よし!やろう、マッハキャリバー!!」
All right my・・・・・・buddy!.
「うっし、お前ら降下の準備だ!」
ヴィータ副隊長の号令でリアハッチがゆっくりと開かれた。
なのはさんが皆に目配せで合図する。
そしてあたし達は、降下ハッチから勢いよく飛び出した。
ふむ・・・・アラートとは、穏やかではないね・・・。
私は、我先に部屋を飛び出そうとする、隊長陣を呼びとめる。
「ライア、レイニー君達どこへ行こうというのかな?」
「どこへって、んなもん決まって・・・・・あれ、あたしら名乗ったっけ?」
「今は、そんな事を気にしている場合ではないだろう・・・」
「いや、ですけれど・・・」
呼びとめたことに対する当然の不服。まぁ私自身、まだ身の内は何も話していないのだから仕方の無いことでもあるが・・・・。
「リリィも、しっかりと手綱を握っておかねばね」
「はぁ・・・申し訳ありません」
「まぁ、良いがね」
するとそんなのんきな会話にしびれを切らしたのか、ライアの副官であろう少年がいら立ちを含む声で私に意見した。
「お言葉ですが、どのような理由で小隊長2名を御引き留めになったのでしょうか?」
「うん?」
私は少年の顔を見て一瞬目を見開いた。
彼は・・・・いや・・・・・・彼が・・・・・なるほどね。
なるほど・・・・彼がその・・・・。
私は、こらえ様の無い少しの好奇心を抑えつつ、私はモニターを出現させ、データに目を通し、彼の問いに隊長陣への指示という形で答えた。
「レイニー以下第8小隊は、速やかに出撃、現れたガジェットの撃破にあたってくれ。
で、だ第6小隊ライアとスタークだったね、君達にはやってもらいたい事があるのでね、
もちろん現地には行ってもらうが、君達は私が指示する場所で別名あるまで待機してもらう。いいかな?」
いきなりの指示、しかも相手が誰だかわからない女性・・・と言うのはおそらく混乱するに十分すぎる材料かな・・・
だがね、流石にそれは後にしていただきたいが・・・
「ちょ、ちょっと待ってくれ、あんた一体何者なんだ!?なんであたしらが命令されなきゃいけないんだよ!」
「そ、そうです、お姉さまに命令なさるなど、あってはならない事ですよ!?」
「いや・・・普通にしてんだろ・・・・三佐が・・・」
「いやですから・・・・!」
また、ややこしい言い争いを、始める2人。流石に・・・そういうことも後にしてもらいたい・・・・
しかしそれはリリィも同様の様で、見かねて口を挟んだ。
「バカもの!!これまでは、言うとややこしくなるからあえて言わなかったが、姉上・・・・いやこの方は、
地上本部武装隊参謀本部参謀長、ミスティリーニ・ホーザント少将だッ!!」
私のすぐ傍らで、身分証を提示するミティ。私もそれに手をかざした。
「そういうことなのだがね?」
私はその時の、皆の顔を、おそらく忘れる事は無いだろうね。
呆けた顔をしている、皆を尻目に私は、リリィに申し出る。
「さて・・・・リリィ私をコントロールへ案内してくれるかな?」
「っな!姉・・・少将!!まさか指揮を執られるおつもりですか!?」
確かにリリィの反応は当然だ。私は現段階においてこの小隊に指示を出せる立場ではない。
もとより私は今、執務中ではないのだ。そう、言ってみれば部外者が指示を出すと言っているようなものだ。
越権行為とも言うのだろうね。しかしそれでも私は、指示を出さずにはいられなかった。
なぜなら・・・・・・・・彼が居るからだ。
私はチラリと、ライアの横に佇み彼女と意見を交わすスタークを見る。
彼は・・・・そう・・・・特別だ。
だからこそ、好奇心という物が先立ってしまっているのは、いささか策を練る者としてはどうかと自分自身思わざるをえないが。
しかし、ここでそれを悟られれば、せっかくのチャンスを不意にしてしまう。私は好奇心を顔の奥に封印しキツめの口調でリリィに詰め寄った。
「渋っている場合ではないだろう!既に現地では局員も対応しているはずだ。こんなときに動かなくてどうするのかね」
「で、ですが」
「良いから、案内するんだ!何かあってからでは遅いのだよ!」
何かあってからでは≠アの言葉にピクっと反応した後、リリィは少し渋い顔をしたが、観念した様子で頷いてくれた。
「・・・・・分かりました。ライア、レイニーは先ほど少将が仰ったとおりに!・・・・・・・ではこちらへ・・・」
その指示を受け2人の小隊長と2人の補佐官が部屋を飛び出していく。
「レイナ、ラウルも我に付いてこい。丁度いいモニター越しだが得られる情報は記録しておいてくれ」
結果、案内のリリィ、私とミティ、それにレイナとラウルを加えた5名でコントロールへ向かう事となった。
まぁ誰が付いてこようと、私の興味は彼だけだからね・・・。
さて・・・・彼はどんなモノなのかな・・・
いよいよ、好奇心も若干隠せないまでに高揚してきたのか、少し笑みがこぼれてくる。
そんな私に、ミティが呆れの混ざった声で耳打ちをしてきた。
「少し、わざとらしかったですよ、ミスティリーニ・・・・」
「おや、フフ・・・大根役者ですまないね、リリィも・・・・気づいていたかな」
「・・・さぁて、どうでしょうか」
「フフフッ・・・」
どうやら、長く私のボディガードを務めてきた彼女には、通じなかったらしいね・・・・
あら、予定より少し早いかしらね。
私は技術開発部の建物の玄関先から、時空管理局と書かれたコンパクトカーが入ってい来るのを見やる。
八神ニ佐・・・・・ね。
車から降り立つ女性を見て、心の中でつぶやく。
連絡を受けた時は何事かと思ったが、声色からすぐにアレの事かと判断できた。
・・・・・にしても、なんでこんなに早く・・・・。
こちらに歩み寄ってくる八神ニ佐と、紫髪の女性。
「わざわざすいません、ジムニー技師」
「いえいえ、こちらこそ。ようこそいらっしゃいましたわ」
簡略的な挨拶を交わす私達。続いて紫髪の女性が自己紹介する。
「初めましてシグナムです、階級はニ尉。どうぞよろしく」
「えぇ、よろしくお願いするわ」
と、本来ならここから先も、明るく振る舞いたいところなのだが、
どうやら向こうもこれから先は、無駄話を続けるつもりはないようだ。
というよりも、私にもそんな気は毛頭なかった。
「では、中へどうぞ」
私は、少し声のトーンを落として2人を中へと、招き入れる。
その声色の変化に、ほんの少し表情を強ばらせたが、私に従って2人ともゆっくり建物の中へと歩みを進めた。
私は、2人を応接室へ通すと、お茶の1つも手配せず相手の向かい側に座り、2人を真っ直ぐ見やる。
それに対して相手も、また真っ直ぐこっちを見ていた。
しばしの時が流れ、ゆっくりとだがズバっと八神ニ佐が問うてくる。
「単刀直入に聞かせてもらいます。実はこちらで質量兵器の開発が行われているという情報がありました」
私は、それを目を閉じて聞く。
「もしそれが、事実なら時空管理局法を犯す重大な違法行為です・・・その点はご理解いただけてると思いますが」
「えぇ、それはもう・・・よく理解してますわ」
「それでは、簡単にこういう聞き方をします。ありますか?それともありませんか?」
なるほど、これは単純明快。分かりやすい質問で。
「あるかもしれないし・・・・・無いかもしれない・・・と言ったところでしょうか」
だから私はあえて、曖昧に答えてみた。
いや、どちらかと言えば、これが一番適切な言い方かもしれない。
だが、その答えが当然不服な両名。特にシグナムニ尉の方はかなり怪訝な顔をしていた。
「だから、どっちなんです?あるのか無いのか・・・どっちかでお答えして、いただけないでしょうか?」
ほんの少しいら立ちを含んだ、声で問いかける八神ニ佐。
だから、さっきのが一番ベストな回答なんですがね・・・・。
息を1つはくと、私は少し考えたうえで、ある所へ両名を連れていく事を決めた。
先ほど答えの意味。見せた方が早いと判断したからだ。
だがまぁ、この方法、もうすでにあります≠ニ言ってしまっているような物だなとおもうと少し笑みがこぼれてしまう。
私は、その笑みを抑えつつ、立ち上がると再び2人を誘導する。
その意図を、慎重に図る両名だったがその誘導には、したがってくれた。
「これからお連れする場所は、ごく一部の人間しか入れません。まぁ言ってみれば技術部の中枢・・・・とでも言うのでしょうか」
「中枢・・・・」
「えぇ、そう中枢です。もちろんのことですが、カメラなどの光学機材やデバイス等も入口で回収させていただきます」
「・・・・デバイスもか」
ポツリとシグナムニ尉がつぶやく。独り言だったのかもしれないが私はその発言を拾い上げた。
「えぇ、デバイスにも記録媒体としての能力がある物もありますからね。特に、あなた方のお使いになられていらっしゃるデバイスは
超が付くほど高性能ですからね。念には念を・・・・ということですよ」
もちろんだが、嫌味を含んでいる。
唐突だが私は正直言うと、彼女達が嫌いだ。
私が好きなのは、あくまで優秀なデバイスで会って優秀な魔導師ではない。
いや、もっと言えば、魔導師自体好きではないのだ。
まぁ、それは昔・・・ゴニョゴニョと・・・ね。
「まぁ、記録されていたとしても、後々バラッバラに分解して初期化してしまえばいい事なんですけどね、どうです、案外良いかもしれませんよ?
そういうのも?」
「ジムニー技師・・・・あなた見かけによらず結構言いはるんですね・・・・」
八神ニ佐の声に、不機嫌さが感じ取れるが私はお構いなしで、その問いを茶化した。
「いえいえ、これが素ですわ。ま、その気になったのなら何時でもどうぞ、お待ちしておりますので」
そんな軽口をたたきながら1つの扉の前にたどり着く。
そこに人気は無く、あるのは頑丈で無機質な扉と固いセキュリティシステムだった。
私は、セキュリティシステムのパネルにIDカードをかざし、パスコードを入力し静脈認証を行う。
「生体認証式のセキュリティか・・・」
「申しましたでしょう、?シグナムニ尉?一部の人間しか入れない・・・・とね」
私が、シグナムニ尉に不敵な笑みを見せる間に、扉が開いていく。
そして・・・・・
私達の前に・・・・・・・
真実が現れた――――――――。
私達が現着した時、既に現地の局員と機動六課のメンバーがガジェットの軍勢と戦闘を開始していた。
私は周囲を見渡す・・・。
私が、今いる場所の後ろは高層ビル群で、幅も狭いが、今いる場所は後ろほどせまくなくむしろ開けているといっても過言では無かった。
当然私もミミィちゃんも全員バリアジャケットは展開済みだ。私のはお姉さまとおそろい・・・というかまぁこればかりは小隊長陣全員共通なのだが。
ただミミィちゃんのは、オリジナルで、青を基調に、胸の下あたりまでの長さの紺色のインナーと上着。首にはプロテクターを巻いている。
下半身はミニスカートにハイニーソックスを履きその周りを金属製のベルトにボルト固定で生地を巻く。
ゴツゴツしたシューズの踵には大きなローラーが1つづつ付いている。
私はそれを確認しつつ心の中で、ひとりごちる。
・・・・・ちょっと出遅れましたわね・・・・。
私はすぐに体勢を整えると、隊に指示を飛ばす。
「ミミィちゃんは、ミドルレンジから支援を中心に!お姉さま方の隊の移動が全て完了するまでは隊列を維持することを最優先です!
それ以後は、六課と連携して各個撃破を!」
威勢のいい了解≠ニの返事を聞きつつ、私はキッとガジェット軍勢の中の1機を、見据える。
・・・・・お姉さまには指一本触れさせません!!
私はその1機に狙いを定めると私は自分のデバイスを起動させる。と言っても既に履いている≠フですけれどね。
私のデバイスは、ミミィちゃんがバリアジャケットの形成の際モデルにしたトライアングル・ローダー≠ニ呼ばれる
インテリジェントシステムを組み込んだ非常に厳ついシューズだ。
ケド・・・ミミィちゃんのはデバイスじゃなくて魔法駆動のあくまで移動の手段なんですけど・・・
まぁ、それは、良いとして。
厳ついということにかけては、お姉さまのボルトレッグ以上に全体的に重厚なデザインで、
何より特徴的なのは、かかとに供えられた三角形のキャタピラ≠セ。
このキャタピラは移動にも、そして攻撃にも使える優れ物。まぁ移動の際には踵にある分
つま先から土踏まずあたりまでの部分で地面をえぐってしまうから、その点だけは少し不便だが、縦移動は走るよりも圧倒的には早い。
「行きますよ!ローダー!!」
OK running system all green! Let's go by the going My Way today.
(了解しました! システム良好、今日もゴーイングマイウェイで行きましょう!)
心強い友の声と共に一気に加速。廃都市という荒れた地面をえぐりながら加速し、その勢いで高く飛ぶ。
そして、ハイウェイ上を疾走する1機のガジェットに勢いよく肉薄。
「それでは・・・・・・参ります!!」
まずはあいさつ代わりに、右ハイキックの回し蹴り。
通常のハイに加えてローダーの分が加算されているため、その蹴りはかなり重い。
その蹴りで、右側に飛ばされたガジェットに、先ほどの攻撃によって生まれた回転から、私は左のミドルを叩きこむ。
2発の蹴りによって、ガジェットはハイウェイの側壁へ一直線に突っ込んでいく。
「・・・・さてまずは、1つ、頂きます!!」
側壁に突っ込んだ衝撃で、大きな砂埃が舞う中、私は止めの一撃を入れるべく再び、そのガジェットへ向かって飛ぶ。
空中で身体をひねり、大きく利き足をインパクトのタイミングに合わせて振り出す。
インパクトポイントは・・・・・かかとからッ!!
「はぁッ!!!」
私は、側壁に埋まっていないガジェットの左側へ、その蹴りを横一文字に撃ちこむ。
勢いを付けた蹴りに加え、高速回転するローダーの威力をもろに受けたガジェットは、自機前後の側壁もろとも、空中へ放り出される。
普通ならば、投げ出されようと浮遊して移動するガジェットは体勢を立て直すところだが、既に2発強烈なのをもらっている上に、トドメの一撃、
もはや立て直す余裕などあるわけも無く、機体の行動限界に達したガジェットは轟音とともに無残に散った。
私は、着地すると再び別の目標を探す。
だがそこへ、ミミィちゃんの呆れた声の通信が・・・
『しょうたいちょー・・・・加減しないと高速が崩れますよー・・・』
え?崩れる・・・?
そう言えばさっきから、なんだが少し揺れているような・・・・
『って、あぁ!小隊長!!崩れ、崩れて!!!』
「へ!? わッ!!きゃぁぁぁぁぁ!!!」
さっきのガジェットと同じ様に、私もハイウェイもろとも、崩落してしまいましたぁ〜・・・。
『へ!? わッ!!きゃぁぁぁぁぁ!!!』
そんな抜けた声を残してハイウェイと共に消える小隊長・・・
まぁそんな抜けたところも、小隊長の魅力ではあるのだが・・・。
いや、にしても・・・まさかハイウェイを崩落させる威力があったとは恐れ入った。
「あの〜・・・小隊長大丈夫ですか?」
白煙しか見えないモニターに向かって、恐る恐る訊ねる。
するとしばらくして声がした。
『うぅぅ〜痛いぃ〜・・・』
「小隊長!お怪我は・・・・」
うっすらと、モニターに写る影に必死に呼びかける。
「怪我〜・・・うぅん・・・大丈夫みたいです」
いまだ姿はうっすらだが、その声に安堵する。
良かった・・・お怪我が無くて。ですが流石小隊長。
ハイウェイの一部と一緒に崩落してほぼ無傷とは・・・。
あたしも、もっと精進精進!
と、急きょ現れた1つの懸念事項が消えたことで、あたしは気持ちを切り替える。
「それでは小隊長!今度はあたしにお任せを!」
そう言い残し、あたしは通信を切ると、自分のデバイスハープーン≠構える。
円状のプラットフォームに4機のビットを備えた扇状の独特なデバイスだ。
あたしはゆっくり目を閉じる。
感覚を済ませ、集中する。
五感の全てを総動員して、戦場の今の状況をイメージする。
しばらくして戦場のとある場所を、疾走するガジェットをつかんだ。
それが、頭の中で3Dに再構築されていく。
「・・・・・・よし・・・・・・捕まえた!」
そして、それと同時に勢いよくプラットフォームから4機のビットが射出される。
「行けッ!ハープーンッ!!!」
プラットフォームから切り離されたビットは瞬時に、彼方へと消えほどなく爆散音が聞こえる。
(・・・・・よしっ次!!)
私はそのまま、エリアサーチに従って、ビットをコントロールする。
このデバイスの正式な名称は、XAB2−0001−TD4ハープーン。Xが付いていることからも分かるように試作機の1つで、
変則的なデバイスゆえに、今もデータ取りを兼ねた調整を、技術開発部が繰り返している。
このデバイスは、4機のフィンタイプのビットをディスタンス・フィードバック・システム、
impulse (Interface for ManeuverPoint Utility link System of Especially)というOSで運用する。
さっきもちょっとやったけど、遠距離でのオールレンジ攻撃が可能な変則的なデバイスで、あたしみたいに空間把握能力≠ノ長ける人しか使えない・・・・・らしい。
よくわかんないけど。
作ったジムニーさんの話をそのまま思い出してみると、このOSは、術者・・・まぁつまりあたしと、遠隔操作するビットをより直感的にリンクさせて
より鮮明なフィードバックを行うために開発された物だそうだ。
ふと、ジムニーさんの事を思い出すと、あの馬鹿男の顔まで一緒に思いだしてきた。
そう、今日あたしが何で急いでいたかっていうと、ジムニーさんのところへ行くためだった。
それをあの、アホ!いきなり飛び出して謝りもしない!!
挙句の果てに、言い返してくるとか論外だった・・・。
結局あいつが謝らなかったからそのまま部隊長に連行されて・・・あぁもう!!予定が丸狂いだよッ!
怒り心頭のあたしのサーチに、複数のガジェットが引っかかる。
「・・・あんの・・・あんのぉぉぉ・・・・・・」
あたしは、そのガジェット群に狙いを定めハープーンをコントロールする。
それと同時にあの男に対しての、怒りのボルテージも最高潮に達した。
いわゆるブチキレたのだ。
「ばっっっっっっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
後に噂で聞いたところによると、あるエリアにいたガジェット群の反応が一瞬で消えたらしいが、あたしはぜんっぜんこれっぽッちも、心当たりなどない。
「ッ〜〜〜!?」
ゾクッとせず時に寒気が走った。
な、なんだ今のは・・・。
その反応に疑問を抱いた小隊長が怪訝な顔をする。
「おい、スタークどうかしたのか?」
「い、いえ、なんでもありません、大丈夫です・・・」
まぁ良いけどよ≠ニ言い残して小隊長の視線は、作戦エリアを向く。
今俺達が居る場所は、作戦エリア内でもまぁまぁ中ぐらいの高さのある、さびれたビルの屋上。
周囲には、今いるビルよりも高いビルが四方に多く見受けられる。
ここからの視界だと空よりもビルの方が多く目に入るくらいだ。
Perhaps, it will be that girl.
(多分、あの女の子ではありませんか?)
不意に待機モードのヘリオスが話しかけてきた。
ヘリオスのいう女の子っていうのは、十中八九ミミィだろう。
っていうか・・・
「・・・・珍しいな、お前から話しかけてくるなんて」
Tentatively, in the one that worried.
(一応、心配なもので)
ますますを持って珍しい。こいつが今まで俺の事を心配したことなど、記憶する限りでは一度も無かったが・・・
Because it embarrasses it even if it is killed by a strange thing to my gunner
(マイガンナーが、変なことで死なれては困りますので)
・・・・・・・久しぶりにしゃべったと思ったらこれか・・・
Because it is shame
(というか恥ですので)
それは言い過ぎではなかろうか・・・。
俺はため息交じりに、自分の愛機を見つめる。
基本的にヘリオスは自分からしゃべる事は稀だ。話しても、基本的に任務中の指示の復唱程度。
・・・・なのだが。
時々こういうチクっと痛い事を言ってくる。
良い相棒ではあるのだが。
俺は目線をデバイスから外すと、思考を今度はこの場所へ誘導したあの、ミスティ少将に切り替える。
俺達が受けた指示、それは第8小隊が敵を引きつけている間にここへの移動し、別名あるまで待機だった。
確かにここからなら、作戦エリアが一望でき、砲撃魔導師の俺にとってはありがたい立地だ。
だから最初はそのためにここに誘導したのかと思ったが、それはおかしいとすぐに気が付く。
さっきも言ったが、両側には大きなビルがあり、それだけで左右の射線が防がれている。
いざとなれば、それごと削って撃ち抜けなくはないが、狙いが定まらない。
とてもじゃないが、砲撃魔道師に有利と言える場所では無い。
・・・・・一体何でこんなところにしかも砲撃・射撃系の魔導師だけ。
そう、ここにいるのは小隊長と自分だけじゃない。第6小隊の射撃魔導師もそれなりの数を引き連れての大所帯だ。
こんなに・・・・一体何に・・・。
そう思っているのもつかの間、突然小隊長も前にモニターが開く。俺もそれを遠巻きに見やるがどうやらミスティ少将の様だ。
俺はモニター回線に割り込みをかけて自分のモニターに開く。
画面越しの少将の顔は、初めて会った時と変わらない、柔和な笑みを浮かべているものだった。
『さて・・・・ね。別名あるまで待機と言ったが』
「はい、それはお伺いしてます。自分以下第8小隊は指定ポイントに手待機中ですが・・・・」
『・・・うむ・・・・頃合い的にはもうそろそろだと思うのだがね・・・・』
その言葉に、俺と小隊長は顔を見合わせた。この人の意図を互いに図りかねている。
・・・・一体何が来ると・・・
意外にもその答えを言ったのは少将ではなく、画面外から聞こえたオペレーターの声だった。所謂sound onlyというやつだ。
『作戦エリア内に高速接近する、反応を確認!数・・・・20!?』
その声の方へ顔をやる少将。そして、すぐにこちらに向き直ると、両手を口元で合わせ、そしてゆっくり開く。
『・・・・こういう事なんだがね?』
なるほど・・・・やっとわかった。
つまり俺達は増援の対処班だったということだ。だが役割は理解したが・・・・なぜこの場所なんだという疑問が残る。
射線軸も取りにくいこの位置に俺達を集めた理由。
だがその理由も、転送されてきたデータを見て、敵の種類と方向を見て納得した。
敵はガジェットドローンU型・・・・航空戦力。そして、方向は丁度俺達の間後ろからだった。
ようやく、意図が完全に理解できた。
その顔を見て少将は満足そうにうなずくと、『では頑張ってくれたまえ』と残して通信を切った。
俺は改めて少将の意図を整理する。
少将はこの増援の可能性がある事にある程度初めから気が付いていたんだ。おそらくは・・・・あのデータに目を通した時には既に。
そして、この場所も。それを見越したうえで考えた現在考えられうる最高の立地だ。
俺は、今までここが射線軸の取りにくい最悪の立地だと思っていた。だがそれは違う。
ここはあのガジェットU型が必ず通るであろう、空の通り道≠ネのだ。
丁度俺達が立っている場所の後ろ側が現在ミミィ達が戦闘を行っているエリアで、あそこに攻撃を仕掛ける最短ルートのアプローチラインがココ。
まさに俺達が立っている場所だ。
左右を高層ビルで囲まれたこの立地は、航空戦力にとっては大きなマイナスである。
なぜならそれは、左右の機動を奪われたも当然であるからだ。
<・・・・だが本当に信じられん・・・・。br>
これだけの事を、本当に俺が思うようにあのデータを見た瞬間にパッと考えていたのだとすれば・・・・
(なるほど・・・あの若さで少将というのもなんだかうなずける話ではあるな・・・)
実際、歳は聞いてないのだが、三佐とそう離れてはいまい。
まったくホーザント家は、なんて怪物ぞろいなのかと苦笑いしてしまう・・
「しっかし、驚いたぜ・・・あの姉ちゃん、そんな事まで瞬時に・・・」
驚きを隠せないのは小隊長も同じようだが今はそんな事を言っている暇は無い。
「小隊長、もうすぐこちらの有効射程圏内に入ります!」
デバイスを起動させながらの俺の報告に、ニカッと小隊長は笑うと威勢よく指示を出した。
「よっしゃぁ、お前ら、ぬかんじゃねぇぞ!!1機でも後ろにそらしやがったら、来月の給料はねぇと思え!」
1機で給料全額ピンハネ・・・。鬼か悪魔か・・・。多分小隊長ならやりかねんな。
俺と同じ事を考えた局員もいたようで、苦笑いを浮かべながら、言い返す。
「ちょ、小隊長、そりゃ無いっすわ!?」
「うるせぇ!だったら1機もそらさなきゃ良いだけの事だろうがぁッ!」
言葉は荒いが顔は笑っている。まぁこんな事は別に特別でも何でもないしな。
さて・・・・。俺はいよいよ、肉眼で捉えるぐらいまで接近したガジェットU型を見据え、ヘリオスを構える。
左目のオペレーションディスプレイには、射程内に入った事を示すin range≠フ文字と、ターゲットロックのlock on≠フ2文字が並ぶ。
充分に引きつけろ・・・・早めに撃ちすぎるとこのビルの合間に入る前に散開されてしまう。
・・・・俺も他の局員も構えたまま、しばしの時間が流れた。
そして・・・・
strike inferno!
ヘリオスの声とともに放たれた閃光が砲撃開始の合図となった。
結果、何機かは避けられてしまったが、明らかに効率よくガジェットU型を撃墜することができた。
俺は次々と火を噴きながら落ちていくガジェットU型を見て、こんなに簡単に陸戦魔導師が航空戦力を落とせた事実。
そしてそれを可能とした、あの少将の指示に関心しながらも、
心のどこかで、何故かミスティ少将に対する警戒心も同時に大きくなっていった。
――――――――――――――――あの女は切れ過ぎる・・・・と。
あとがき
さて、はやてさんは何を見たのでしょう!?
詳しくはまた次回!
ということで、しるくです、毎回お読みいただきありがとうございます。
最近はインフルAにかかって1週間ほど寝込んでましたが、
それ以外には特に何もない1月です。
熱もそんなに高くなかったし・・・
本当にインフルか!?とか思っちゃったり・・・
まぁ何にしてもみなさんまだまだ寒いですから、お体にはお気を付けて!
ではまた次回お会いしましょう
っていうかハープーンって、もろガン○ムのファンネルぱk(ry
〜ご感想ありがとうございます〜
最近更新が無く残念に思っていましたが、また再開されて嬉しいです。
次も楽しみにして待っています
大変ありがたいお言葉、ありがとうございます。
実は、なんでか一か所で長くアイデアがわかず立ち止まってまして(汗
これからも、頑張っていきますのでよろしくお願いします!
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、