広大な、次元世界。

それを監視し、管理する。

大ざっぱに言ってしまえば、時空管理局の仕事はこんなところだろう。

ほんと、大ざっぱに。

ただ、その広大な次元世界を監視する、時空管理局の中にひっそりと「特定地域観測課」と呼ばれる、
ある一定の一地域を一定期間観測する部署があることはあまり知られていない。

まぁ知られていなくて当然と言えば当然。


そこはたった2人しかいない、本当に小さい部署なのだから。


これは、そんな小さな部署に所属する少年とお姉さんのお話。



●魔法少女リリカルなのはstrikers〜空を見上げる少年〜プロローグ〈とある観測課の2人〉●



「だ〜か〜らぁ・・・どこをどう見たらこんな観測結果になるって言うんだよ!少年君!」


観測課のドアの外まで聞こえそうなほど大きい声で怒鳴る女性。
ブロンズの髪を後ろでまとめた、いわゆるポニーテールという髪型に、おおよそ局員に見えないジャージ姿。
目は深みを帯びたブルー。怒っているため元々若干ツリ目な目じりが更に上がっている。
彼女はレイナ・リーンバーン。階級は陸曹。この観測課のチーフである。元々2人しかいないので、結果ここの責任者というわけだ。


「だぁぁ〜もう!だったら少しは手伝ってくださいよ!さっきから文句ばっかじゃないですか!」


少年君と呼ばれた少年。こっちも語気を強めて言い返す。髪の色は女性と大きく変わらないが、長さはショート。
服装も一般的な陸士の制服に身を包んでその上から上半身が隠れる程度の長さの紺色のマントを羽織っている。
僕ははこの観測課のもう一人の局員でラウル・スカッフ。年齢12歳身長は140cmぐらいと小さめ。階級は三等陸士でレイナの部下だ。

「なんだい?文句あるって言うんだね!?」
「大ありですよ!ここ最近ずっと僕しか観測してないじゃないですか!」

この部署は基本的に、地上本部や本局からの指示で観測データをとっている。事前に取っていたデータとそれ以降の観測地域のデータの変化をみたり、
そのデータを統合してもう一度本部へ送り返したり。
そういった、言ってみれば地味な作業の繰り返し。

ごくたまに大発見があるが本当に、「ごくたまに」だ。
ただそういった地味な作業は、いろんな意味で神経をすり減らす作業でもある。ラウルはここ1週間ほとんど計測機器に張り付け状態。
寝てはいるが、機器のブザーや動作音に起こされる始末で、しっかり熟睡できていない。
そりゃ、腹も立つってもんだ。



「ほ〜ぉ・・・それはなにか。あたしが仕事してないって言いたいのかい?」
「え!?してたんですか!」


すっごい勢いで分厚い計測ファイルが飛んできた。
殺す気ですか、まったく・・。
ん??っていうか・・・まて。いま投げたファイルって・・・確かレイナさんの座ってる机の一番上にあったやつじゃ・・
僕はすぐにそのファイルの表紙を見る。そして顔を手で覆う・・
「これ・・まだ統合済んでないですよ・・」
「・・・あり?そだっけ?」

こんな感じが、特定地域観測課の日常です。



















レイナさんが統合前のデータファイルを放り投げて、完全にやる気がそがれてしまった、僕はとりあえず観測課を離れて外に出ることに。

観測課があるのは地上本部のある首都クラナガンから離れたミッドチルダの湾岸地区の一角。外から見るとまるで2階建ての普通の民家だ。
湾岸地区にあるので、海に近く今日みたいに晴れた日には気持ちのいい風が頬を撫でていく。

「ほんと、計測機器の無い視界が久しぶりだよ・・」

開放感からなのか、独り言が出てしまう。だけどそれぐらい気持ちがいい。正直1週間も計測機器の前によく座っていられたと思う。今まででの最長記録更新だ。
風に誘われて、臨海公園の方へ足が向かう。すると海が近付くにつれて、だんだん見えてくる大きな建物があった。



「古代遺物管理部機動六課」
実験部隊的性格を持つ試験部隊。その本部隊舎がこの湾岸地区にある。「八神はやて二等陸佐」話したことも、会ったこともないけど名前は広く管理局内でも知れ渡っている。色々な意味で。
その人が立ち上げた部隊。ときどきそれらしい人は見るけど、いまいち何をやっているのかは分かりにくい部隊というのが第一印象だった。


何をやっているのかは分かりにくいが、実はこの部隊とはほんの少しだけ僕は関わりがあった。まぁ・・関わりと呼べるものなのかは分からないけど。
そんなことを考えながら、六課の隊舎を見上げていると不意に後ろから聞きなれた声が・・。
「な〜に見てるのかな〜少年君??」
「あ、レイナさん・・」
「なんだよぅ〜その目は・・」


よくそんなことが言えたもんだ。責任者でありながら責任問題を自分で作ったくせに・・・。
「で〜・・何の用ですかね?」
「おう、そうそう!久しぶりに外出たんだし、いっちょ身体でも動かすかい!」

身体を動かすか・・・うん。いいかもしれないな、ちょうど座りっぱなしでいろんなところ固まってるし。
「いいですね。お願いします」
「お、乗り気だねぇ〜。そんじゃま、久しぶりに鍛えてあげましょ〜かね」
「まぁ、お手柔らかに・・・」


言い忘れてたけど、レイナさんは一応元武装局員。身体の使い方とか色々教わることは多い。暇な時にはちょくちょくこうやって鍛えてもらってる。
・・・とそういえば・・。
「あ、僕、観測課にデバイス置いてきちゃいました。」
「デバイスっつーとこれかね、少年君。」
レイナさんは、ジャージのポケットからスタンバイモードで黒いカードの形体になっている僕のデバイスを取り出した。
「ま〜ぁ、元々そのつもりで出てきたしね〜。」
ほいっ、と言ってこっちにデバイスを放り投げる。「S3U−S」それが僕の愛用デバイスだ。
それを受け取る僕。デバイスはスタンバイモードのまま。ここは臨海公園内。つまり公共の場だ。むやみに起動はさせられない。
まぁ、最終的には場所を変えて使うことになるんだろうけど。そのつもりとか言ってるし。

「んじゃま、この辺をぐるっと一周身体ほぐしながら走っといで」


スタンバイモードのデバイスをズボンの胸ポケットに入れ、マントをはずして上着も脱ぐ。一応運動するわけだしね。
こっちの準備が整ったと見るや・・。
「ほいじゃ、行っといで!」

その掛け声とともに走り出す。この辺、とは鍛えてもらってる時によくレイナさんが使う言葉でおおよそこの当たりの臨海公園のジョギングコースを指す。
1周約4km弱、まぁほぐすにはちょうどいい距離かも。

小刻みなピッチを刻みながら一定の速度で走る。意外と難しいんだ、これ。

初めのうちは、「一定のピッチで走ってないから余計に疲れるんだよ。」って言われまくったし。

最近じゃあまり言われなくなったけど、まぁ若干成長したってことなのかね。

しばらく走っていると2kmの看板が見える。もう半分来ちゃったのか。慣れてくると4kmなんてあっという間になっちゃってるな。


ジョギングコース半分を走り終え、あと半分か〜などと考えていると、逆回りで走ってくる2人の女の子。片方は青色のボーイッシュな髪型で深い緑色の目をした活発そうな女の子。
もう一人は、オレンジ色髪を左右でまとめたツインテール。目元は青髪の人とは違って若干つりあがっている。
二人とも上は普通の無地のシャツだったが、下は陸士の訓練生が履くような紺色のトレーニングウェアだった。

・・・局員かな・・、見た感じ僕とそこまで年の差は無いような気がするけど。
そんなことを考えながら、その2人を見ているとその視線に青髪の女の子が気がついた。
一瞬きょとんとした顔で見られたけど、すぐに満面の笑みで
「こんにちは!」
「え、あ、どうも・・」
思いのほか明るく声をかけられてしまった。互いに走ってるからほとんど一瞬の会話だったけど。
すれ違ってすぐに「ほら、スバル!ちゃんと前向いて走んなさい!」「そんな怒んなくても〜」
というやり取りだけは聞き取れた。どうやらあの青髪の女の子はスバルさんというらしい。
もう片方の人の名前は分からないけど。


そんなこともありながら、残りの2kmを走り終えると、レイナさんがどこから持ってきたのか長いまっすぐな棒とスポーツドリンクを持っていた。
しかもいつの間にかタイムまで図ってるし・・
こっちを確認するとレイナさんはモニターを操作しタイマーを止める。

「まぁ、こんなもんかね。悪くないタイムだし。しっかり身体はほぐれたかい?」
僕は徐々にペースを落として、息を整える。いきなり止まるのは身体にも良くない。
「えぇ・・ふぅある程度は・・温まったかと」
レイナさんが差しだしたスポーツドリンクを受け取りながら答え、それを口に含む。
あーおいしい・・生き返るとまでは言い過ぎかもしれないけど、改めて身体を動かすならスポーツドリンクは必須だと思ったよ。
「一息ついたら、次だよ。この棒持ってついてついておいで」

レイナさんは棒を僕に渡すときびすを返して歩き始めた。僕も上着やマントとかをまとめてその後を足早についていく。



レイナさんが向かったところは、この臨海公園の中でも一番大きい広場。緑の芝生の揺れる憩いの場所だ。みんなそれぞれ思い思いに身体を動かしたり寝転がったりしている。
広場のそれなりの広さを確保できる場所を見つけ立ち止まってこっちに向き直る。
「このぐらいの広さがあればいいでしょ」
レイナさんはふぅと息をはく。
「そんじゃ、始めようかねいつも通り徐々にペースを上げてくからね。」
「・・・はいッ」



僕は、ふぅっと息をついて、棒を持つ手に若干力を込める。そしてレイナさんに向かって大きく跳躍する。
今僕の目には、相手であるレイナさんしか映っていない。それだけ集中している。だから、気がつかなかった。
こんな事をしてる僕らを、あの2人の女の子が見ているだなんて。











〜あとがき〜
どうも初めまして、しるくと申します。
本日より、リリカルなのはstrikersの2次創作作品を書かせていただきます。
内容はこの、観測課の2人を中心に回っていきます。
そこまで、まだがっつりと絡むお話は無いと思いますが徐々にそういったお話を書いていこうかと思いますので・・
なにぶん、これまで自己満足な文章ばかり書いてきて、こういったところへ投稿するとか初めてで、
見ていて「ここ変じゃね?」とか思われるところが多々あると思いますが・・・
そこは、笑って許してやってください(爆


こんな感じですが、どうかよろしくお願いします
・・・では、また次回お会いしましょう?



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