光はそこにあった。ただ決して俺のところには差さないだけだ。

手を伸ばしても決して届かず、眩さが瞳を焦がす。

眺めることしか許されない光。



それは希望という名の絶望



魔道戦記リリカルなのは異伝、



『忌魂〜Curse of Soul〜』



未だ始まりは見えない。





ピピピピピピピピピピピ・・・・・・

「・・・・んあ?」

覚醒未だ遠い頭に電子音が響く。

ピピピピピピピピピピピ・・・・・・

朝になったことは窓から差し込む光から既に理解していたが、それでも覚醒したがらないのは人の性か。

ピピピピピピピピピピピ・・・・・・

故にいわゆる目覚ましのアラームなどは邪魔でしかない。

ピピピピピピピピピピピ・・・・・・

が、止めねば止まぬのが機械が機械たる所以。

そもそもこの家には他に・・・・



・・・カチ

「・・・朝からわざわざ欝になることを考えなくともいいっての」

枕元にある目覚ましを止め、呟く。

煎餅布団から体を起こし、少年と言えなくも無い青年は左目のみを開き、覚醒する。

東洋人によく見られる黒髪黒目の一般人。

顔の右半分を覆う前髪、特に背も高くなく、太っても痩せてもいない。

好きな食べ物は鶏肉のモツ関連(レバー除く)、嫌いな食べ物は苦いもの全般(茶は許容範囲)

好きな言葉は我道、嫌いな言葉は偽善

どこにでもいそうで、どこにもいないであろう風貌を持つこの少年



名を更科 零。



故あって一人暮らしをしているこの冴えない男こそがこの物語の主人公である。



もっとも

「・・・・・・zzzzz」

立ったまま寝ているところを見ると、自覚はないようである

ちなみに只今AM08:50.

完全に遅刻であることは間違いないようだ。



人気の失せた通学路を一人のろのろと歩く。

どこと無くくたびれた白い制服の上に、冬でもないのに黒いコートをつっかけふらふらとしまりなく歩く。

未だに右目を開けず狭いであろう視界を意に介さず、更に歩く。

「・・・眠ぃ」

駄目駄目である。

「たりぃ、うぜぇ、めんどい、疲れる・・・・・」

をいをい

「・・・サボるか?」

だからマテ

「・・・そーもいかんか、これでも一応特待生だし」

奨学金もらっている以上、そうそう不真面目とはいかんのだ。むしろこれだけ不真面目なのに成績は上位ってどういうことだろう?



といったところで日常が襲来する。



ワンワンワンワゲホ!カーカーカグギャ!!!フギャーギャン!!!

半眼になりつつ曲がり角から襲ってきた野犬を蹴り飛ばし、上空より襲撃してきたカラスに投石、塀の上より飛び降りてきた野良猫を裏拳で叩き落す。

「しねー!!やくびょーが『ドガ!!!』うわーん!!!ままー!!!」

溜息をつきつつ、ナニかを投げつけてきた小学生に接近、鉄拳制裁。つかんだ投げられたモノを良く見たら果物ナイフだった、危ねぇ、回収。

「アナタ!!ウチの子『ボス!!』グゲェ!!」

おそらくはそのクソガキの親にボディブローから延髄チョップのコンボ。意識を刈り取る。後ろ手に出刃包丁確認、とりあず回収。

「オイ、てめぇ金出『ゴギャァ!!!』ひでぶ!!」

肩に手を置いてカツアゲしてきた不良に回し蹴り。顎を砕く。懐からバタフライナイフが落ちる、再び回収。

「HOLD U『ザクゥ!!』Noooooooo!!!」

至近距離から拳銃を向けてきた黒人の両目を皮手袋に包まれた右手で文字通りえぐる。正当防衛成立。



以上全てを左目半眼でこなす。



まぁ、なんてーか死屍累々?な光景を作り出しつつ、一言

「今日は少ない方だな。」

この男、なかなかヴぁいおれんすな日常を送っているようである。



そーこーしてる間に

「到着」

学校についたようである。

「っと」

生活指導の教師がいないであろう、校舎の死角から塀を乗り越え進入。やけに手馴れている様子、表情に罪悪感とか後ろめたさとか欠片も見当たらない。

ちなみに現在09:50、既に生活指導とかそーゆーレベルではない遅刻だと思われる。

コノ時間になるとそもそも完全に授業中であり流石にそこまで警戒する必要など欠片も無いのだが、そこはそれ、様式美。

「お約束ってか?」

それにしても独り言がいちいち多い男である。

「五月蝿い、分かってはいるんだ、直さないだけで」

さいで



「・・・やってられんさ、独り言でも言わなきゃ、な」



ところでこの男、独り言言ってるだけなのに地の文とシンクロしてるのはどういうことなのだろうか?



「それすなわち形式美ってこと、でっ!!」

非常階段を塞いでいる柵形の扉のノブに足を引っ掛け、飛び上がる。

この学校、非常階段が建物の外側についているタイプであるため完全閉鎖されておらず、ある程度の身体能力を持つ人間ならばこの方法で侵入が可能なのだ。

「分かりづらい人は鉄筋丸出しの階段の入り口の前に扉が付いてると思えぃ、上が開いてることが分かればいい」

よーするにワリと簡単に乗り越えることが可能だということさえ分かればいいのだが、

しつこいようだが、この男何故に地の文に解説までつけるのだろうか?

「しょーがねーのさー♪、しゃべる人間いねーんだしー♪」

節つけて歌っても空しさは変わらず、さりとてそれを感じることで更に欝になりそうで、

ぶつぶつと鼻歌に聞こえなくも無い独り言を呟きながら上へ上へと階段を上っていく。

繰り返すようだが、現在二時限目の真っ最中。



いかにヴぁイオレンスな出来事と陰湿なアクションに慣れていようと、授業中の教室に堂々と入る度胸は無いらしい。



実にチキンである。

「くーされやーかましーわ♪」



4階建ての校舎を4階まで非常階段で上り、校舎内を通って屋上への階段をゆっくりと上ってゆく。

授業中ゆえ人気は無く、多くの気配があってしかるべきな校舎はどこか物悲しく感じる。

「怪奇!!人のいない授業!!」

が、この男そんなことはお構いなしのようだ。

あっぱらぱーとでも言えば良いのか、顔にしまりというものが無い。

のーてんきを通り越して快晴な精神構造というのも今時珍しいが、人格的にどうかといえば100人中99人が『ダメ人間』と評価するような人間を羨ましく思うかというとそんなわけもなく。

「怪談のある階段で会談、結果は解団w」

イミが分からん。



・・・カタ



「・・・しっ!!」



その瞬間、スゥっという音が似合うように軽薄な表情が抜け落ち、閃光の如き右腕が走る。

ガン!!

ポケットに突っ込んでいた右腕から放たれたナニかが『スチールの』窓の桟に突き立つ。

「・・・気のせいか」

『誰もいない』廊下にちょっとした違和感を覚えつつ、皮手袋をした右手を収め再び屋上を目指す。

『果物ナイフ』の突き刺さった立て付けの悪い窓がカタカタと音を立てていた。



『な、なんなんですかぁ・・・』



とてつもない違和感を振りまきつつ歩みを進める。

スキップでもしそうなほどリズミカルな声を出してはいるが、発声と体の反応をぶった切ったかのごとくゆっくり、ゆっくりと足を踏み出す。

満面の笑顔を浮かべつつも四肢に僅かに力を入れ、どの方向からどんなモノが来ようとも対処できるようにしている。

右手は上着のポケットに入れてナニカを握り、

左手は半開きにして素早く拳を繰り出せるように、

『死角』を補うようにたまに体を回転させつつゆっくり、ゆっくりと上ってゆく。



張り詰めた緊張の糸を弾き、軽薄な歌を奏でるように。

研ぎ澄まされた意識の刃を滑らせ、かん高い鳴き声を上げるように。

緩んだ声の鎖を張り巡らせ、狩猟者を傷つける反逆の罠を仕掛けるように。

ニヤけた唇の奥に怨嗟の牙を隠すように。

耽々と、淡々と、タンタンと屋上へと歩みを進める。

「そして俺は快男児ー♪」

口ずさむ拍子さえ、廊下に突き立つ刃を見たあとでは虚ろな言葉にしか聞こえない。





そうこうしてるうちに屋上への扉の前にたどり着く。

ここ、私立聖祥学園高校の屋上は基本的に立ち入り禁止ではある。

が、転落防止のフェンスが無いわけでもなく、基本良家のご子息もしくは優等生しかいないこの学校。

生徒の自主性に任せているらしく施錠はされていない。

が、

ガチャガチャ

「・・・なんでやねん」

今日に限ってはそうでもなかったようだ。

「・・・」

ガチャガチャ

「・・・」

ガチャガチャガチャ

「・・・・・・」

ガチャガチャガチャガチャ



「・・・・・・・・・づぁりゃああああ!!!!!」



バキィ!!

いっそ見事とも思える力強いカカト落としでドアノブごと鍵を粉砕する。



「なんだかなー」

凶行に及んだ後とも思えない顔で一人ごちる。

右足をドアに押し付け徐々に体重と力を込めてゆく。

ミシ・・・ミシ・・・

「俺ってこんなに気短かったか?」

ミキ・・・ベキ・・・

扉が徐々に外側に歪んでゆく。

「俺は極々平凡に生きていたかったんだがなぁ」

ビキ・・・ゴキ・・・

「・・・無理か、だって」

外からの力があればどのようなものでも歪んでしまうのだから。

人間まっすぐ生きるのが不可能と悟ればあとは歪んでゆくしかない。



そしてどんなに当人が歪んでいても



「・・・・今更っ!!どーにもなんねぇよ、なぁ!!!!!」

バカァァン!!!!!!



世界はどうせ変わらない。







「・・・へ?」



変わらないはずだった



「・・・はい?」



蹴破った扉の先に見えたのは



「・・・ほえ?」



どっかでみたような少女三人



「・・・・・・・こすぷれ?」



明らかに跳躍では到達できない高度から、謎の光と共に珍妙な服を制服に変えてゆく謎の少女共。





何一つ変わらない日常、何一つ手に入らない日常の裏側。



ナニかが終わり、ナニかが始まったこの日。



変わるはずのなかったモノが確かに変わった日、手に入らないナニカを手に入れた日。



後々考えてみれば、俺の全てがここから始まった。





そしてよくよく考えてみれば



この日こそ、俺の『ゼロ』が『イチ』になった、そんな日だったのだが



無論、その時の俺は知るはずも無かった。







あと書いてみる



・・・えー、実はこのような場に投稿するのは始めてです。

いえ、自分に文才が無いことぐらいは分かっている上に遅筆かつ継続力の無い私ですが

「まぁとりあえず書いてみるか」

という電波(ノリともいう)を受けたのでとりあえず投稿してみました

ストックはカケラも御座いませんのでかなり遅くなるとは思われますが、気長に待っていてください。

・・・待ってくれるほどの作品では無いですがw





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