忍者です。

命からがら逃げ帰ってみれば、ルーテシアに三行半を叩きつけられました。

まぁ、ホッとしたのは事実だけど少し残念だったと言うか……いや、ロリコンじゃないよ俺。 

ただ幼女にガチで離縁されるって、結構くるものがあった。

いや、結婚はしてないけど。

そのうえ、

「ねぇ、忍者の体からクア姉の匂いがするよ。ねぇ……なんでかな、返答しだいでは――」

と、セインに尋問までされて、まさに泣きっ面に蜂。

もう体力はゼロだ。

そして一夜明け


「――と言うわけで、これからしばらくの間……忍者?どうしたのだね?難しい顔をして?」

「ん!?ああ、いやすまない。なんでもない」

「ふぅ……昨日の出撃で疲れが溜まっているだろう。これからしばらくの間はリフレッシュを兼ねての休暇にするよ」 

やったぁーとはしゃぐナンバーズ。

「よしっ!忍者、一緒に遊びに行こうよ」

「んっ!?と、うぉぉぉぉ……」

ばっとセインに抱きつかれ、そのまま地面に吸い込まれていった。


裏・竜魔武芸帳改め魔法使いを回避せよ〜その11





ゆったりとした曲と男女の喧騒。

「やっぱりここのマフィンは美味しいね」

ニコニコとマフィンを頬張るセイン。

いつぞやのデート騒ぎ(犬吉さんの投稿作品を参照)のときにゆっくりと出来なかったカフェでマフィンとお茶を楽しむ二人……ではなく一人。 

「いや、たしかに美味いけどな……」

もさもさと渋い顔でマフィンを食べる束音。

「だったらもう少し美味しそうな顔で食べようよ」

「大の男が女に奢ってもらうってのが……」

忍者としては下手したら自分より一回りも年が違うかもしれない少女(推定年齢16歳)にお金を負担させてしまうのに抵抗がある。

「そんな細かい事は気にしない気にしない。それに無理矢理誘ったんだもん。それくらい出すよ」

しかし、セインの中では、忍者の葛藤はデートなのに彼女に払わせてしまう、と困っているものだと思っていた。

二人の思考のすれ違い。

ホテル・アグウスタでの一件。

セインは忍者と付き合っているという認識になっている。

「いや、しかしだな……」 

「もう……それじゃあ、お金が掛からないように楽しもうよ」

口では仕方ないなぁと折中案を出すも、終始ニコニコ笑顔なセイン。

美味しそうに紅茶を飲んで、笑顔で告げる。 

「それじゃ、行こうよ」

……

うららかな午後の優しい光がステンドグラスを色鮮やかに照らし出す。

剣十字の十字架が厳かに鎮座し、パイプオルガンの重奏な音色が響き渡る。

「――それではシスターセイン、教会騎士(テンペルリッター)忍者。神の御名の下に認めます」

「わーい!」

修道服を着て喜ぶセイン。

「すげぇ教会もあったもんだ……」

甲冑を着込みながら感嘆のため息を漏らす束音。

ときは少しさかのぼる。

喫茶店を出た忍者はセインに連れられて教会に連れてこられた。

なぜ教会、と首を捻る忍者。

「いいからいいから」

と忍者の背を押すセイン。

「すいませーん。なりきり体験コースお願いしまーす」

……

セインはシスター服を忍者は騎士甲冑に着替え、赤い髪のシスターに案内されながら教会を歩く。

「教会って言うと、もっと小さなイメージをしていんだけどな」

大きさにして東京ドームが4つ分くらい。

聖堂や懺悔室に始まり、巨大なパイプオルガンや騎士団の訓練施設。

一般公開されていない箇所もあるが、とにかく広い。


「ふっふっーん!どうでしょ!凄いでしょ」

どうだと言わんばかりに胸を張るセイン。

「いや、凄いのは認めるがお前が凄い訳じゃないだろ」

「ぶー」

……

中庭とは名ばかりの公園のような広さの庭で小休止。

「どうでしたか?」

「いや、凄い物を見させて頂きました」

ガイドのシスターの質問に素直な意見を述べる。

「聖王教会と言うのはどこもこのような規模なのですか?」

「いえいえ、ここが特別なだけで、普通の支部……いえ、教会は普通の規模ですよ」

「そうなんですか。でも、ここまで大規模な施設を要しているということはやっぱり凄い団体なんですね」

「凄いもなにも数多の次元世界に門戸を広げていて、信徒数億人って呼ばれる超巨大武闘派宗教組織だよ」

「数億の武闘派宗教って……ってかセイン詳しいな」

絶句しつつも、セインの意外な博識に驚く。

「だってこのシスター服可愛いからね。いや〜一度着てみたかったんだよね。」

「それだけの理由で来たのかよ!罰当たり過ぎるわ!」

あまりの理由に突っ込みを入れる。

「いえいえ、シスターセインのようなお考えの方々が来訪されることは珍しくはありませんよ」

「と、いいますと?」

忍者の問いに赤髪のシスターは笑顔で分厚い聖書を取り出し、

「この分厚い聖書の朗読と形だけでも整えて楽しんでもらう。どちらの方が興味を持っていただけますかね」

ニコリと笑ってそう告げるシスター。

「宗教と言うともっと堅苦しいものを想像していましたが、いやはや……随分とリベラルなのですね」

「伊達に次元世界一を誇ってはおりません」

心なしか胸を張るシスター。

凛としたシスターがみせた、子供らしい仕草に、思わず笑みが浮かんでしまう。

「むっ……騎士忍者、なにか可笑しいです……「きゃあああー変態ぃぃぃ」」 

つんざく悲鳴に思わず目を丸くする忍者とセイン。

「ちっ!また出ましたか!」

苛立たしげに舌打ちをするシスター。

「出たって……痴漢?」

「盗撮魔です。先に申し上げた通り、このシスター服は人気ですので、若いシスターが着替えをする瞬間を盗撮する者が後を絶たなくて」

忌々しげに吐き捨てるように告げながら、トンファー型のデバイスを取り出す。 
「大半の者に聖王の神罰を受けますが――」

感触を確かめているのかビュンビュンと素振りをする。

「一人、粋の良いがいましてね」

感触を確かめ、一人頷く。

「空戦魔導士崩れなのか、とにかく素早く空を駆ける輩でしてね――私はいまから神罰を下しに行って参ります。あなた方はこちらでお待ち下さいませ」

悲鳴が聞こえた方に走り出す。

「なっ!?聞こえていなかったのですか、あちらでお待ち頂けないかと」

シスターに併走する忍者とセイン。

「いや〜話は聞いたけど、要は女の敵でしょ。なら手助けするよ」

「と、こいつが言っているので俺はお目付役です」

腕捲りをしてグッと力を入れるセイン。 
やれやれと嘆息をつきながら走る忍者。 
二人の申し出にシスターは少し眉を寄せたあと、

「怪我を負っても自己責任ですよ。あと、私の指示には従って頂きますよ」

二人はニィと笑い、忠告を受け入れた。。

……

空を舞う鳥を撃ち落とすのは出来なくはない話であるが、叩き落とすとなると至難の技である。

聖王教会の騎士や武装シスターは、ベルカ式――近接戦主体の戦闘法な為に大空を自由に舞う空戦魔導師には弱い(ヴォルケンリッターやフェイト・T・ハラオウンは別格)

赤髪のシスターは飛び上がりトンファーを振るうも今一歩という所で届かない。

他のシスター達も飛び上がり各々のデバイスを振るうも当たらない。

空を我が物顔で飛ぶ魔導師。

だが、束音はそんな姿を見て、落胆をしていた。

空戦魔導師と聞いて、あの高町の対策になるかと思ったが……

対策どころか、訓練にすらならない。

あれが、空戦魔導師ならば、カトンボも空戦魔導師だろう。

それとも、高町が規格外過ぎるのか。


やる気をなくしてしまったが、だからといって放置するわけにもいかない。

やれやれと、進入禁止の長い金属チェーンを引き抜き、ビュンビュンと振り回す。 

その風切り音に現場に居合わせるすべて者達の視線が集まる。

まさか、あれで捕まえるつもりなのか?


恐ろしく原始的な手段でもあり、対象は地上ではなく、空にいる。

その間抜け過ぎる姿にシスター達は現状を忘れて失笑をしている。 

対象となっている痴漢などにいたっては露骨な侮蔑を込めて嘲笑をしている。



天罰覿面という言葉があるが、それはこの場合どちらをさすのだろうか。


皆の視線が束音に集中をした。

セインはその隙を見逃さずに、飾られている人間大の剣十字を手裏剣よろしくぶん投げた。

死角からの完全な不意をついた一撃は、直撃という結果を生む。

それでも、剣十字は人にぶつけるようには設計されていないモノなので、痴漢を墜落させるまでには至らなかった。

衝撃から脱した痴漢が、我が目を疑ったのはこの時であろう。 

水中を奇怪に泳ぐ海蛇の如く、空中を奇怪に泳ぐ金属の蛇。 

視界には写ったが、脳が理解し行動を起こす時間まではなく、足に絡みつかれてしまう。

しまった、と思うと同時に、すわ落下かと思うほどの凄まじい力で地面に引きずり落とされた。

そこで、痴漢の記憶は途絶えてしまった。

…… 
… 


「ありがとうございます、騎士忍者」

「なんか、新しい職業にしか聞こえないな」

きっとRPGなら上級職に違いない。

「へっ?」

「忍者〜シスタ〜」

「いやいや、なんでもない」


「そうですか。それにしても見事なお手際でした。
もしよろしければ、本格的に入信されてみてはいかがですか。
あなたほどの腕前なら、騎士はおろか将になることすら夢ではありません」

笑顔を浮かべているが、目付きだけは真剣であることから、シスターの熱意が伺える。

「お気持ちはありがたいですが……」

「忍者〜シスタ〜ってばぁ〜……」


「そうですか。もし、お気持ちが変わりましたら、いつでもおこしください。
聖王教会の扉は年中無休24時間フルタイムで開いておりますから」

「凄い教会だな……えっ〜と……」

コンビニかよ、ツッコもうかと考えたが、この教会なら当たり前なのだろうと思い、やめた。


「シャッハです。シャッハ・ヌエラと申します」

和やかな雰囲気で話を進める束音とシャッハ。

そして、

「忍者〜シスターシャッハ〜無視しないでよ〜」

縄でぐるぐる巻きにされている涙目のセイン。


「シャッハさんですか。また会える日を楽しみしております。
では……」


「はい♪シスターセインについてはお任せください。
剣十字がなんたるかについて、キツく教えておきますので」

笑顔だが、額に青筋を浮かべてセインを引っ張っていくシャッハ。


「忍者助けて!忍者〜忍者〜忍者〜」

「よろしくお願いいたします。セイン、ありがたい説法を聞いて改心してこいよ」

「忍者の馬鹿ー!裏切り者ー!」

「馬鹿はどっちだ!調子に乗ってあんなことしやがって」

痴漢を捕まえたあと、束音の捕縛術とセインの手裏剣術を周りにいた人々は口々に褒め称えた。

束音は軽く受け流していたが、他人に誉められた事が少ないセインは舞い上がってしまった。

「えへへ〜なら、ご期待にお応えして」

笑顔で、むんずと剣十字を数本つかみ、、次々と空中に投げ飛ばす。

一見無造作に両手から放られた剣十字は、違う軌跡を描きつつも、全てが同時に、塔の上にある鐘に命中。

カランカラーンと良い音を響かせた。

盛り上がる外野。

得意満面の笑顔のセイン。

あちゃーと手を顔に当てる束音。


そして、額に青筋を浮かべるシスターシャッハ。

彼女の雷が落ちるまでそうはかからなかった。


…… 


「ただいま〜」

「おかえり忍者、デートはどうだったか……おや?セインはどうしたんだい」

アジトの玄関にある花壇。色とりどりの花と一緒にジェイルが咲いていた。

「ありがたい説法を聞かされてるよ」

「どういうことだね?」

「実は…………」

事情を説明すると、ジェイルは、それはまた、と笑った。 

「そういうのも良い経験だ。親としては嬉しい限りだよ」

「横にいた俺の気持ちも察してくれ。ところで、」

一呼吸を置く。

「なんで埋まってるんだ?」

「やっと聞いてくれたかね。いや、スルーされ続けてるときはどうしようかて思ったよ」

苦笑いしながら埋まっている理由を話し始める。

……

「うおっ!」

「きゃ」

通路の曲がり角、ジェイルは大きな資料を抱えて歩いており、対するウェンディも大きな荷物を抱えて歩いていた。

互いに前方の視界は悪く、案の定、ぶつかってしまった。

ウェンディを押し倒す形になってしまうジェイル。 

眼前に、ともすればキスさえ出来そうな距離。

右手は柔らかいなにか、たぶんおっぱいだろう。
思いっきり鷲掴んでいた。

束音であれば慌ていたが、ジェイルは酷く落ち着いていた。

元々の性格でもあるが、ジェイルにとって彼女達は娘と思っている。

「いや、すまない。ウェンディ大丈夫かい?」

「こっちは大丈夫っすよ」

ウェンディもそうなのだろう。

体勢が体勢なのに、至極普通であった。


「……ってドクター、顔色が悪いっすよ。不摂生はダメっす。いつもラボに籠もりっきりなんすから、たまには外で日の光を浴びた方がいいっす」

それどころか、その体勢のまま、ウェンディはジェイルの顔を触りながら心配をする。

「そうですね。ドクターにはたっぷりと日光を浴びて頂きましょう」

「ウーノ!?」

「ウー姉!?」


振り返るとそこには、ウーノが底なし沼のような瞳でこちらを笑顔で見ている。

ニコリ、いやニタリと笑うウーノ。


ジェイルは自身の表情筋が引きつるのを自覚した。


……


「そりゃ間が悪かったな」

「そうだね。いや、君の気持ちが良く分かったよ」

「そうだろ、そうだろ。それに、普段から悪いことばかりしてるから、天罰だ天罰」

「まて、忍者、君は私を助けてくれないのかね」

「助けん!たまにはお前とセインでオチをつとめろ!」

天罰天罰と笑いながら口ずさみ、玄関の戸をくぐる。


一瞬のきらめき。シュと凄まじい速度で何かが頬を横切った。

ツゥーと頬から血が垂れる。

ギギギと油の切れたゼンマイ玩具のように首を横に曲げると、玄関扉に深々と突き刺さる。

「……スティンガー」

「忍者、帰ってきたら、ただいま、だろ」

両手に沢山のスティンガーを構えるチンク。

「おかえり、楽しかった?ねぇ、楽しかった?」

スッと真横に現れたオットー。
全然気付かなかったぞおい。 

脳内ではアラームが鳴り響いている。

やばい、逃げなければ!

瞬時に身をひるがえして、外に逃げようとして、

「セインちゃんとのデートは楽しかった?に・ん・じゃ」

クアットロが玄関をふさぐような形で待ち構えていた。

歌うようにクアットロは口ずさむ。 

「天罰、良い響きですわね〜て・ん・ば・つ」


ジリジリと包囲網を狭めてくる三人。


結局、これだよと、心の中で愚痴りつつ、毎度お馴染みの衝撃が体を包んだ。










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