「あの、はじめまして、これはつまらないものですが……」

ピシッとスーツを着込み、『みっどちるだひよこ』を差し出す青年。

「いや、これはまたご丁寧に……」

「申し遅れました、私は忍者と申しまして、セインさんには……」

「ぷっ、にっ忍者、そんなに堅くならなくても大丈夫だよ」 

「ばっ馬鹿!こういったことは最初が肝心でな……」 

「セイン姉が男を連れてきたって本当っすか!?って本当だぁー!」

「あら、なかなか良い男ですわね。40点ってところですわね」

「男だと……軟弱な。セイン、あとで訓練所に来い。ついでに貴様もだ」

「ふむ、姉としては、各々自覚を持って清い関係をだな……」

「しかし、セイン姉にも春が来たっすか♪セイン姉はぺったん娘だから、貰い手を心配してたっすけど、これで肩の荷が降りたっす。でもセイン姉を選ぶなんて、あんたもなかなかマニアックな趣味の持ち主っすね。あっ、これからはお義兄さんと呼んだ方が良いっすね。いや、でも、大切な事だから二回言うっすけど、よくもまぁ、ぺったん寸胴もぐらっ娘なセイン姉を「ウェンディ!」ヤバッ言い過ぎたっす」

脱兎の如く逃げ出すウェンディ。

「待てぇー!」

怒り心頭で追い掛けるセイン。

「こら、まだ姉の話は終わってないぞ」

「セイン、どこへ逃げる気だ」

「あちらの方が面白そうですわね」

二人を追い掛けていく、三名の姉達。 

「はっははは、げっ元気があってなによりですね」

乾いた笑い声を上げて、なんとかフォローをしようとする束音。

「いや……お恥ずかしい限りです。なにぶん女所帯なもので……まぁ立ち話もなんなので、奥でお茶でも飲みながら「ドクター、こちらにいらっしゃったのですか。評議会の方達から例のプロジェクトの進行具合についての報告書を『はやくwはやくwはやくw』と矢のような催促が」…………」

「……あ〜どこかで時間を潰していましょうか?」

「申し訳ない。セインから話は聞いているから奥に部屋を用意してある。好きに使ってくれたまえ」


かくして、束音改めて忍者は将来の有名テロリスト、ジェイル・スカリエッティの秘密基地に住むことと相成った。










裏・竜魔武芸帳改め魔法使いを回避せよ。その2













12人の姉妹達が住んでいるナンバーズの居住区画。そこに一人放り込まれた束音。
ラブひな?はっ!お呼びじゃねーよ!ただしネギまは勘弁な。

分かり易い数式 


ネギま>束音>ラブひな

世の人はテラハーレム羨ましす。とか言うかもしれないが、特別イケメンでもなければ、話術に秀でている訳もなく、記憶喪失のトリプルコンボでは男女比率、12:1は針の筵過ぎる。
もちろん個室ではあるし、鍵はついているのだが……それでもなにかと気を使うものである。

ジェイルが住んでいる区画に住まわせてくれ、と哀願するも「……まぁ、色々とあるんだよ。こちらにも……色々と……」と向こうも哀願してきたので諦めた。
その時、ジェイルの首筋にうっすらとした刃物傷(推定使用刃物、日本刀)があったのは、あえて見ないフリをした。
ちなみに、彼の部屋は角部屋であり、横の部屋はセインである。


そんなこんなではじまった共同生活。
そこで起きる様々な出来事。

何気ない日常、ほのぼのとした毎日。

訓練をしたり、任務をしたり、適度にスリリングな日常。 

ときにはぶつかり合い、喧嘩もした。

多少の誤差はあれ、セイン以外から信頼されていないのは事実であり、まずは小さな信頼からコツコツと積み上げることにした束音。 

少し未来の話になるが、結果、見事にナンバーズの信頼を勝ち取る。
まぁ、信頼を勝ち取り過ぎた結果、一部ナンバーズの信頼が愛情に変化。
危うくセインに『niceboat』されかけたのはご愛嬌か。 

また、ジェイルやゼスト達とも交友関係を結び――やはり彼らも女所帯で苦労をしていた。

正史では、陰険なマッドサイエンティストと寡黙な武人、最後まで相容れる事は適わなかったが、束音という潤滑油を得たことと、たまたまゼスト隊を撃破したときにチンクの援護として束音がいたおかげでゼストはもちろん、メガーヌやクイントも殺さずに済んだことも大きい。

それでも、メガーヌやクイントが重傷なのは変わらず、今現在も、基地の医療ポッドの中で治療中である。

ジェイル曰わく「問題ないない。後遺症どころか、若さを保持したまま、お肌ツルツルの健康体になるんだから、逆にこちらがお金を貰いたいくらいだよ」 
とのこと。束音とつるむ内に彼の性格が明るくなった。

最後に、ゼスト隊との戦闘において、本来片目を失うはずであったチンクであるが、束音が庇い失わずに済む。

ついでにチンクときめく。

「忍者!?大丈夫か忍者!?」

「大丈夫、軽傷だ」

「馬鹿者!なにが大丈夫だ!なにが軽傷だ!ああ……こんなに沢山血が!姉は姉は姉は……」

「落ち着いてくださいチンクさん。この出血量ならあと五分は戦えます。だから落ち着いてください」

優しい言葉で取り乱すチンクを落ち着せようとするも、チンクはまだ慌てている。

彼女達は数々の訓練を積み、能力は凄まじいが、実戦の場において血を流すことには馴れていない。

訓練は訓練、実戦は実戦か……こればかりは場数を踏まねばなるまい。

となると、俺は一体なんなんだ。真剣で切り結ぶことも、こうして血を流す事も冷静に受け止めている。
本当に一体何者なんだよ俺は……

いや、今はチンクさんだ。口で聞かせて落ち着かせる段階を通り越してる。こういった場合は……

そこから先は、考えるより先に体が動いた。

「なっなにを!?」

わめくチンクを抱きしめる。

「落ち着いてください。俺は大丈夫です。なんたって、こうしてチンクさんを抱きしめて、鼻の下を伸ばせるくらいですから」

顔面の筋力を必死に総動員してニヤケた顔を作り上げる。

「なぁっ!離せ、離さんか馬鹿者」

「お断りです。敵を前に取り乱すチンクさんを離せません」

少しの間、離せ離せと、わめいていたチンクであるが次第にの肩の力が抜けてきた。
もう一度優しく話しかける。

「落ち着きましたかチンクさん」

「……ああ」

「すいません。非常事態とはいえ。コート……血で汚しちゃいましたね。今度新しいのプレゼントしますよ。だからパッパッと片付けて帰りましょう」

「……馬鹿者」

「はい、馬鹿者ですよ、チンクさん」

「チンクだ」

「はっ?」

「さんはいらない。これからはチンクと呼べ。それにさっきから喋っている変な敬語も禁止だ。セインと同じように接しろ!」

「はっ?へっ?チンクさん」

「だからさんも敬語も禁止と言った!お前のような無鉄砲には姉がしっかりとついて無いと駄目なことが良く分かった。この戦いが終わったら、みっちりと説教してやるから覚悟しろ」


「………………」

ゼストですが、空気を読んで待機しています。

「……分かったよチンク」

「っ」

「ただ説教は勘弁してくれ」

二人の間に流れる甘ったるい空気。

「 に ん じゃ 」

その空気を吹き飛ばす冷たい一言。

いつの間にか現れた水色の少女。

顔を伏せて、髪の毛が垂れ下がり目は見えないが、目のある位置から爛々と輝く昏い光。

束音もチンクもあまりの怖さに腰を抜かし掛ける。

「ねぇ……忍者」

「はっはいぃぃ」

「なにチンク姉のフラグ立ててるの?馬鹿なの?死ぬの?」

「いや、誤解だ!話せば分かる六階だ!じゃなくて誤解だ」

「少し……頭冷やそうか」

「ちょっ!?おまっ!?そのセリフは違っ……」

「……あと三分なんだが……」 

小声でチンクにそう伝えるゼスト。彼の深い優しさがうかがいしれた。

……

「あのときは本気で参ったぞ。しかし……忍者の趣味にとやかくは言わんが、ルーテシアに手は出すなよ。リーチだ」

苦い顔つきで牌を切るゼスト。

「ふふふ、私も後で映像を見させて貰ったが、なかなか……セインといいチンクといい、君はあれかね、ぺったん娘フェチかね。……ふむ、私もリーチだ」

にやにやと、実にイラッとくる笑顔で牌を切るジェイル。

『久々にワロタw。追っ掛けリーチw』

キュッキュッと、コンパクトサイズのホワイトボードに書き込むガリュー。

「お前等いい加減にしろ。『YESロリコン!NOタッチ!』と言う名言を知らないのかよ!ってか、あの後、セインにシバかれるわ、チンクには耐久24時間説教されるわ、本気で死ぬかと思ったぞ!……くそ安牌がねぇ……通るか」

額に青筋を浮かべて牌を切る束音。

「ロン」

「ふむ、ロンだ」

『ロ〜ン』

「ウボァー」

……

「しかし忍者、貴様も良い年だろう。だれか相手はいないのか?」

「私としては、セインでもチンクでも構わないが……まぁ家具も女房も若い方が良いと言うが……若すぎるのもどうかと思うよ。忍者の年……は分からないが、まぁ見た目からして……」

『犯罪ですね。分かります。とりあえず誰か2ちゃんに晒せw』

「そっそんなことはない!俺は20だ!20!」

「「『それはない』」」

「んだとゴラァ!」

……

「まぁ、年の話は置いておこう。相手がいないのなら、買いに行ったらどうだ?こんな環境だ。たまにはリフレッシュも必要だろう」

「ああ、それは気が利かなかったね。費用はこちらが持つから……って忍者くん?なに顔を真っ赤にしてるのかね?」

『まさか童て……』

「どどど童貞ちゃうわ!」

盛大に度盛る束音。束音自身、なぜこんなに度盛ってしまっているのか分からない。
分からないが、心の底――魂が吼えていることだけが分かった。 
そして、止せば良いのに、魂に流されるまま見栄――というより嘘を吐いてしまう。

「なっなんか勘違いしているみたいだが、あっ相手ならいるぞ」

「へー、忍者にそんな相手いたんだ」

「その話、姉も詳しく聞きたいな」

聞こえるはずのない声。

聞こえてはならない声。

ぞっと背筋に冷たいものが走ると同時に、ヒヤッとした金属の冷たさが両の首筋に走る。
恐る恐る目線を下げると、背後から首筋に沿うように突きつけられている刀とナイフ。

「おおおっ落ち着け、ととととっとりあえず、刃物をしまえ。ははははっ話せば分かる」

「話せばわかるんだよね♪なら話して」

「話せば分かるなら、しまう必要もないだろう。さあ話せ」

首を斬らないように器用に首だけを旋回。
振り向いた先には、素敵な笑顔のセインにチンク。
煌々と輝く金色の瞳が素敵に恐いです。

「こっこっこっ、これはジョーク。場を和ます為のジョークだよ。なっなあ皆」

振り返って雀卓を見れば、綺麗さっぱり誰もいない。

「おぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ドクター達も気を利かせてくれたんだね♪」

「さあ、忍者……」

「「ゆっくり、お話をしようか」」

……

「恋は盲目と言うが……あの程度の嘘を……」

扉の向こう側から聞こえる悲鳴を聞きながら、やれやれと首を横に振るうゼスト。

「娘達もそれだけ人らしく……いや女の子らしく色気付いてきたってことかな。実に興味深いし微笑ましい」

ニコニコと扉を眺めるジェイル。

『悲鳴が止んだぞww忍者死んだなww』

南無南無と扉に向かって手を合わせるガリュー。

――後世、稀代のテロリストとして名を残すジェイル・スカリエッティ。
彼らが潜んでいる秘密の基地は今日も平和であった。














チンクもヒロインとして参戦。でも、メインはセイン。それが私のジャスティス。

束音×セイン。
種は蒔いたし水も撒いた。
あとは犬吉先生が芽をはやしてくれると信じて(キリッ












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