あの日の兄さんの笑顔は今でも覚えている。

「辰守束音参上致しました」

「同じく連音参上致しました」

「辰守束音」

「はっ」

「竜魔衆頭領辰守宗玄として命じる。現時刻をもって、辰守束音を竜魔衆頭領として任じる。より一層の精進をするように。同じく辰守連音も一層の精進を致し新しき頭領を助け支えるように命ずる」

「なっ！？頭領！私、辰守束音はまだまだ若輩者であり、竜魔を背負う大任を勤めれるとは思いませぬ。それに頭領はまだまだ健在。これからも……」

「束音」

先ほどまでの身内の情を感じさせぬ冷たい声音から一転と温かみと優しさを伴った声音。

「いつまでも祖父をこき使うんじゃない。これからはお前達、若者の世代だ。いい加減、隠居させてくれ」

お役目など忘れて日がな一日ゴロゴロしたいわ、とカカと笑って答える宗玄。

「〜〜〜〜〜っ……頭領就任の件、しかと承りました」

束音はなんとも言えない、それでいて仕方ないな〜といった顔で答えた。

「そう言うわけだ、連音。これからも俺の補佐を頼むぞ」

口元を緩めて、そう頼む兄さんの笑顔はなぜか印象に残った。

それから、数年の月日が流れた。

「竜魔衆頭領、辰守連音」

「……お言葉ですが辰守連音は頭領代行であり、頭領は兄、辰守束音でございます」

原作

「シャドウダンサー」

「シャドウブレイカー」

「そろそろ一年か……兄さん、早く戻って来てくれよ……」

原作者  犬吉

「兄さんは、最強の竜魔なんだ……認めて……認めて、たまるかよ」

Purezentsu By 名無しAS

「兄さんが……死んだなんて……」

新しき部隊の創設。

「分かった。俺の力を貸そう。存分に使ってくれよ、指揮官殿」

「指揮官殿じゃなくて、部隊長や部隊長。あっ、はやてって呼び捨てでも可や」

「じゃあ八神で」

「ぶーいけずやな。まぁ、ええわ。機動六課にようこそ。頼りにしてるで」

新たな出会い。

「ティアナ・ランスター二等陸士です」

「同じく、スバル・ナカジマ二等陸士で…………あれ、あなたはあの時の」

「ん……ああっ、もしかしてあの火災の時の」

「そうです。あの時はありがとうございました、忍者さん」

「いや、あの……まぁ忍者なんだけど……俺は連……」

「もしかして、忍者じゃなくて、乱波ですか？それとも素波、草、他には……」

「音って名前なんだけど……やけに詳しいなミットチルダ人」

「すっすいません。スバルは普段はまともなんですが、忍者の事になるとスイッチが入ってしまうんです」

穏やかな日々。

「竜肉……そういうのもあるのか」

「たっ辰守さん、そんな目でフリードを見ないでください」

「んっ……あっあ〜すまんすまん。職業柄、どうも動物を見ると食えるかどうかをまず考えてな。ほら、職業柄潜入任務とか色々……ごくり」

「いっ今、唾飲みましたよね唾！」

「きゅくるー！！」

ポロリあり！Toloveるあり！

「あっあの、胸……」

「！？すっすまないティアナ！」

「いっいえ、だっ大丈夫です」

ガシッ！！ガシッ！！

「ちょっと良い」

「なに、部隊長室に少し行くだけやから」

「やっ八神、ふぇフェイト、おっ落ち着け、まずは落ち着くんだ」

同時刻。地球(ちたま)にて。

バキャ！！

「ひっ、どっどうしたのすずか」

青筋をたてて、ティーカップを握り潰すすずかにアリサが恐る恐る問い掛ける。

「……なんとなく腹がたったから」

騒がしい日々。

「ティアナ」

差し出される花束。

「えっ？つったっ辰守先輩！？」

「この前の詫びだ。受け取ってくれないか」

「あっなんだ……でも花束なんて、辰守さんって意外にロマンチストなんですね」

同時刻。地球(ちたま)にて

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「…………………………………」

アリサですが、お茶会の空気が最悪です。

……
…

「アホ、そう言った意味の花束じゃない。この花は竜魔の里に咲いている変わっている花でね。これを使うと常時、火の玉が出せるようになるんだ」

「かっ変わってる花ですね」

「他にも使うと大きくなるキノコとかあるんだけど、あれは取るのに苦労するんだよ。なんたって動からな」

「えっ！？大きく？動く？それキノコですよね」

「キノコだぞ。やっぱりキノコの方が良かったか」

「いっいやいや、良いです良いです。この花で十分です」

「そっか。まぁ大きくなるだけじゃ芸がないからな。よく凡人凡人って落ち込んでるからな。これを機にファイヤーティアナになるのも悪くないかもな」

「ファイヤー……ティアナ……良いです！凄く良いです！これでもう、地味だとか凡人だとか言わせません！」

「ほぅ……ファイヤーティアナか……大層な名ではないか。この烈火の騎士に、一つ炎の使い方を御教授頂けないものかな。この烈火の騎士に」

「「！？」」

……
…

「あれは……嫌な事件でしたね……」

後にティアナはそう語った。

騒がしくもおだやかな日々は終わりを告げ、鉄と魔法が彩る血なまぐさい事件の幕が上がる。

「こんな鉄屑ごときで、竜魔をやれると思うな!!」

「凄い……ガジェットがまるで紙のように」

JS事件。
後にそう呼ばれ、ミットチルダひいては次元世界の犯罪史に刻まれた大事件。

その大事件の影に、決して刻まれる事のなかったもう一つの事件があった。

「危ない！」

「えっきゃあ！」

連音に抱き倒されるティアナ。

倒されながらも、ティアナの視界に映ったのは、自分がいたであろう場所に刀を突き刺す青色の少女。 

襲撃！？
でも気配はしなかった！？
それ以前に、こんな見晴らしの良い場所で奇襲されるなんて。
どこから？
目的は？

刹那の間に様々な事を思考するティアナ。
加速する思考は次なる最善の行動を導きだ「おい、女」

止まった。
彼女の思考はもとより、周りにいる全ての時が止まった。

言葉が胸に突き刺さると言った揶揄があるが、連音の吐き出した言葉は密度を伴っていた。

濃密な殺気。
この瞬間、皆が己が胸に突き刺さった氷の刃を幻視した。

呼吸すら満足に出来ないコールタールのような重い空気の中、その殺気を直接ぶつけられている、少女はニコニコと笑っていた。

自分達は余波でこの惨状である。

それなのに……

格が違う。
ティアナの内心の葛藤を余所に、二人は対峙している。

「その技、その刀、どこで学んだ、どこで手に入れた」

「敵にそんなことベラベラ喋ると思う」

「ならば直接体に聞くまでか」

「言い方が卑猥だね〜」

「戯れ言を」

「まぁ勝てない相手に戦いを挑むほど、私は馬鹿じゃないよ」

そう言うや、地面に沈んでいく少女。

「なっ！？待て！」

聖王をめぐる戦いは激化の一途を辿る。
修羅の激闘のさなか、連音の胸をよぎるのは、青髪の少女。

彼女の使った突き……あれは紛れもなく竜魔の技。
それにあの刀は……

頭によぎる最悪の可能性。

最悪の可能性を自身の妄想を打ち消すように首を振る。

しかし、物事とはえてして最悪な方に転ぶもの。

「なんで……なんでなんでだ兄さん！なぜ奴らに荷担する。なぜ門外不出の竜魔の技まで伝授したんだ」

兄、束音との再会。

「答えろ！兄さん！いや、辰守束音！返答しだいでは、竜魔の頭領として、貴様を斬る」

ミットチルダを舞台に、竜魔同士の戦いが幕を開ける。

「竜魔武芸帳」

近日開幕。 

もちろん嘘です。

犬吉さん、連音達の使用許可ありがとうございました。
なお、連音達が気になりましたら、犬吉さんの作品を見れば分かります。