この作品は鬼丸さんの機動六課の日々の三次魔改造作品であり、読むにあたっては、『ケイスケの機動六課の日々』本編と『IFギンガ』を読んでいる事を特に推奨致します。









































カラースプレーを振りかけながら、塗装作業に精を出す。

たまには気分転換で模様替えも悪くない。

BGM代わりに、立て掛けてあるラジオからは、「管理局が誇る空戦技教導隊まさかの半壊、かのエース・オブ・エースも撃墜される」とひっきりなしに騒ぎ立てている。

ひとしきり騒いだ後は、軽快なBGMと共に、最近のオリコンのランキングの曲を流し始めた。


どおしてこうなった♪

どおしてこうなった♪


わ〜い♪











参ります。




バケモノの雄叫びの如きエグゾースト。
フルスロットル全開。
エンジンの唸りは最高潮。
メーターはとうの昔に振り切れている。


風。 


文字通り、俺たちは風になっている。

「凄い……」

時速300キロの世界。

風住まう世界にただただ圧倒される。

「ああ、凄いだろ……だから……」

「この先になにがあるのか見てみるよ」

「アホ!この先は工事中だから、なにもない断崖絶壁だから!」

「あはは!風だ、風になるんだ」

「そこの暴走車両、すぐに止まりなさい!ナンバー折り曲げてても、すぐに足が付くわよ」


鬼が羅刹か、姉さんがこれまた凄まじい速度で追跡してくる。 


時を遡ること一時間前。 

「ケイスケ、本当に運転して良いの」

キラキラとした目でバイクと俺を交互に見つめるエリオ。

「ああ、ただ気をつけろよ。こいつは『隼』と言って、マジでモンスターマシーンだからな」

しかも、このモンスターマシーン。先日、ディードが、「ご主人様、バイクと言う乗り物は、大変危険な乗り物です。ご主人様の運転技術を信頼していない訳では御座いませんが、万が一と言う場合が御座います。ですので、僭越ながらドクターに頼んで、改造させて頂ました」と、素敵過ぎる事をのたまってくれやがりました。 

と、話が少しズレたな。
最近エリオが、やたらとバイクに興味を持ち始めてきた。 
まぁ、エリオの年齢を考えれば、なにも不思議ではない。
あの年代と言うのは、とかくバイクに憧れるものなのだ。
ただ、エリオが、あまりにもショーウィンド越しにトランペットを見る少年の如き瞳で見るものだから、思わず「乗ってみるか」と言ってしまった。 

エリオがはしゃぐ姿を見て、なんとなく、自分の昔を少し思い出してしまった。

そして、夜。
とある人目のつかない倉庫街にケイスケ達はやって来た。

エリオが無免の為、こうした人目のつかない場所を選んだのだ。

ケイスケは簡単なレクチャーをして、エリオにバイクを運転させる。 

「習うより慣れろ」

教育方法としては間違っていない。
間違っては居なかったが、教える相手を間違えた。

もともと、エリオは人造魔導師であり、きわめて学習能力が高い。
ましてや自分の興味を持つものだ。 
その修得速度は、異常と言っても過言ではない。
そして、その年代にありがちな、不良少年漫画を愛読しているので、エリオの中で変なスイッチが入ってしまった。

「ケイスケ、僕のドラテク見せたいから、後ろに乗って」

「おっ、随分と生意気言うじゃねーか。良し見せて見ろ」

そして、不幸の幕が開ける。

「そうだな、この倉庫gadjtwgmふじこ」

この倉庫街を一周な、と言おうとしたら、凄まじい加速を受けて、話せなかった。 


sideギンガ 


「さて、仕事仕事」

スピードガンを構えて、ネズミ取り。

正直な話、これ私の管轄外よと思うも、管理局は万年人不足。畑違いの部署に駆り出されることも少なくない。

まぁ、違反車両の摘発と言っても、スピードガンで計るだけ。
簡単な作業なうえ、管理局員の私が言うのもどうかと思うが、ここがネズミ取りのポイントだと言うことは広く知られている。
こんな所で引っ掛かるのは、よほどのアホか、違う街から来た者しか居ない。

場所を変えれば問題はないと思うが、そうはいかないお役所仕事。 

思わずため息が出そうになる。

考えれば考えるほど、鬱になりそうだ。

こんなときは楽しい事を思い出しましょう。 

そう……ケイスケ。
弟的存在兼、私の彼氏。
数日前から、名実共に深い繋がりも出来てしまった。 

「えへへ〜」

脳みちょがピンク色になり、子供には見せられないよ的な妄想に耽る。 

……
… 

「そんな、取り調べなんて……ああ、それは私の手錠よ。ああ、やめて、ケイスケ」

イヤンイヤンとくねくねと腰を振るうギンガ。 
とても嫌そうには見えないのはご愛嬌か。 

ひゅーと夜風が吹きすさび、正気に戻る。

「はっ……えっーと、ちゃんと、仕事しなきゃね」

誰に聞かせるともなく一人ごちる。

でも、これが終わったら、そのまま…… 

またも、ニヤけてしまうギンガ。

しかし、そのピンクな脳みちょに、冷水がぶっかけられた。

揶揄ではなく、本物の冷水ではあるが。

先ほど、目の前を物凄いスピードで通過したバイク。

とっさのことに呆然としながらも、スピードガンを恐る恐る見ると、燦然と輝く。

『300kilo』

路面は先日雨が降ったため、あちらこちらに水たまりが出来ている。

ゲーコゲーコとどこかで蛙が鳴いている。

プチンとなにかが切れた音がした。

……

sideケイスケ

赤灯の光が闇を切り裂き、ファンファンと警報が響き渡る。

どう見ても、管理局です。本当にありがとうございました。

っといかんいかん。あまりのことに現実逃避してしまった。

見つかる前なら、なんとしてもエリオを止めようとしただろう。

しかし、管理局員に見つかってしまった以上、そうは言っていられない。


止まる=タイーホ



明日の新聞の見出しは決まりだ。

『奇跡の部隊、機動六課深夜の軌跡』 

『六課の恥部』

素敵だ、素敵過ぎる。
しかも、相手は姉さんだ。最近と言うか、付き合ってからの彼女は優しい反面、悪いことをすれば容赦も慈悲もない。

こんな暴走運転行為の片棒を担いでいるのがバレたら、見開き10ページ分の『無駄無駄ラッシュ』は確定だ。

「冗談じゃねーぞ。逃げ切るしかねぇぞ。こりゃ」

幸い、こっちはフルフェイスを被って、顔は特定されていない。

こうして、姉さんとの夜の風伝説がスタート。物語は先ほどに戻る。

時速300kiloは伊達じゃない。

そうこうするまに崖が見えてくる。

「うおおおおおおおおお!エリオ、崖、崖、崖、崖っっ!」

「ちょっ、あなた達死ぬ気!今すぐに止まりなさい!」

「ケイスケ任せて、あんな国家権力の狗なんかに捕まらないから!」

「お前も俺も国家権力の狗だからぁぁぁって崖ーーー!」

しかし、エリオは速度を緩めず、崖に突っ走る。
そして、 

『ウィングロード』

バイクから、機械音声が聞こえた。 

空に浮かび上がる、天空の滑走路。

「これは……ウィングロード」

「うん、このバイクが教えてくれたんだ」

「はっ?バイクが」

『アナザーマスター、敵がまだ追ってきます』

「うぉい、バイクが話したよ」

『はじめまして、マスターケイスケ。私はマスターの足となり翼となり、敵を討つことを誓います』

強いめまいに襲われ、バイクから落ちそうになる。




あのクソドクター、よりにもよってバイクをデバイスにしやがった。

『マスター、敵もウィングロードを展開、追跡されています。迎撃します』

「すんな!」

『マスター、現実を見てください。今捕まれば、マスターはスピード違反どころか、飛行魔法の無許可使用に不法デバイスの不法所持で、人生オワタになりますよ。ついでに私も解体処分は免れず、短い人生になってしまいます』

ホタルの光を流しながら切々と訴えかけるバイク。

バイクの言い分はもっともだが、さすがに攻撃するのは躊躇いがある。 

こちらの躊躇いを見透かしたのか、朗らかに答えるバイク。

『安心してください。迎撃兵器は全て、非殺傷設定。またこの高度から撃ち落としても、地面には安心着陸出来る仕様です』

「おいおい、随分と都合が良いな」

『私の産みの親はドクタースカリエッテですよ。第一、時速300kiloで走ってる最中にこうして普通に会話出来るのも、そう言ったスーパー装置の一種なんですから』

「たしかに……」

説得力が有りすぎだな。

「ケイスケやろう!国家権力の狗に一泡吹かせてやるんだ」

「お前はまだ変なスイッチが入りっぱなしだな。だが……」

瞳を閉じて思い出す。姉さんとの日々。

「ケイスケ。煙草やお酒は体に悪いのよ。産まれてくる赤ちゃんに悪影響もするわ」

棄てられた煙草にお酒。

「ケイスケ、私がいるんだもの、こんなものいらないよね」

棄てられた、えてぃ本とエロゲームとえろてぃくDVD。

「ケイスケ、結婚資金や子供の教育費って馬鹿にならないのよ。ちゃんと貯蓄しましょう」

自由に使えない給料。

姉さんとのことは本気だ。責任もキチンと取るつもりだ。
それでも溜まるものは溜まる。
吸えぬニコチン、採れないアルコール。
消えたお宝。使えぬ給料。 
溜まりに溜まった、声無き叫び。

カッと目を見開き、雄々しく答える。

「悪くねぇ……良し迎撃開始」

『了解しました。迎撃開始します。リリカルバナナ射出』 

バイクの後部からポトリと吐き出されるバナナの皮。 

「ちょっおまっ!」

さすがのケイスケとエリオもこの迎撃には、ツッコミをいれざる得ない。
攻撃された側のギンガも、 「舐めているんですか」と怒鳴り声をあげている。

「こんなもの」

と怒鳴り、踏み潰そうとして、「きゃあああああ」盛大にスピンして、ウィングロードの上から落ちていってしまった。

「嘘だろ……」

ケイスケとエリオは同時に呟いた。 

……

「……ところで、いまどこ走ってんだ?」

全力で走ること一時間。
地上ならまだしも、空の上だ。土地勘など働く訳もない。

『現在地はクラナガン北東部に位置するエリア65になります』

「エリア65……随分とまぁ……エリオもう良いだろ。そろそろ帰ろうぜ」

「そうだね。ケイスケ、ありがとう」

「どういたしまして。ってか次は正気で乗れよ正気で」

「あっ、あはは……」

乾いた笑いでお茶を濁すエリオ。 


『なごんでいるところ申し訳ありませんが、現在地がエリア66に入りました。なお、この地区は管理局航空戦技教導隊の演習区域に当たります』

「ぶっ!!」

噴き出す両者。

「引き返せ!引き返せ!ここはヤバすぎる」

Uターンしようとしたら、車体が傾かない。

『マスターケイスケ、Uターンは推奨出来ません。今Uターンすれば、無防備な横腹と背後を集中砲火されます。さすが音に聞こえた、航空戦技教導隊。展開が早いです』
一瞬、こいつがなにを言っているのか分からなかった。

エリオと一緒に、ギギギと油の切れたゼンマイのように視線を前方に戻すと、 

「そこの犯罪者、今すぐ止まれば、我々にも温情がある」

「我々に喧嘩を売るなどと、よほど実力に自信があるようだな」

「止まれ。いや止まるな。止まれば我々は攻撃出来ない」

「てめーら、覚悟しやがれ!この鉄槌の錆にしてやる」

どこの戦闘民族だとツッコミたい。あと、ヴォルケンリッターのロリ担当の声が聞こえたが、切実に幻聴であって欲しい。

「皆、乱暴すぎるよ。落ち着いて話せば分かってくれるよ」

こっこの声は!

「こちら、時空管理局航空戦技教導隊の高町一等空尉です。ただちに、着陸してください。私達は無駄な争いを好みません」

神は居ねぇぇぇぇぇぇぇ!! 

よりにもよってなのはさんかよ。
しかも、

「姐さんが言うならしかねぇ」

「おら、犯罪者、高町さんの御慈悲だぞ泣いて喜べ」

「高町様がそう言われるなら、是非もなし」

「なのはは、相変わらず甘いな〜」

と、まさに鶴の一声。
あの戦闘民族共が一斉に納得しやがった。

さすが、管理局の白い悪魔。そこに痺れも憧れもせんが、畏怖はする。

しかし、事ここに至った以上、逃げることは出来ない。

おとなしく捕まるしかない。

どのみち、姉さんとフェイトさんにぶっ飛ばされるのは確定事項。

ならば、これ以上、ダメージを増やす必要はない。
あと、このバイクは勝手に改造されたんだ。
エリオの件は別としても、酌量の余地はある……はず……ある……よな。

エリオも同じ考えなのか、俺の顔を見て頷き、ブレーキを握り……

『舐めた口を。管理局のエース・オブ・エース、白い悪魔と呼ばれているから、どれほどの存在かと思えば……はん、処女の売れ残りの分際で偉そうな口を。このまま行けば、新古品の型落ち……いいえ、売れ残ったしなびた苺のショートケーキも同然。割り引いても売れず、特売でも売れず、廃棄処分にされるのが目に浮かびます。さあ、現実が分かったのなら、偉大なるマスターに道を譲りなさい、ショートケーキ!』

瞬間、世界が凍った。

俺もエリオも、ヴィータも教導隊員達も、等しく刻が止まった。

最初に動き出したのは俺。

とにかく逃げ出さなくては。その一心でアクセルを全開に。

バイクから、小声で指示がくる。

『マスターケイスケ。先ほども言いましたが、Uターンは厳禁です。そこで一つ策をば。現在、あそこで固まってるショートケーキと愉快な連中の中央突破を具申致します。私には乱戦向けの兵器も搭載されています』

この状況下において、ケイスケ自身も他に道は見えず、彼の好きな第97管理外世界の言葉を使うなら「死中に活あり」である。

ケイスケは中央突破を図ることにした。 
結果から言えば、策は見事に的中。
と言うよりはまったく攻撃はなく、まるで静かな海辺を走り抜けるような気持ちであった。

しかし、安心は出来ない。
あの、なのはさんに正面切って暴言を吐いてしまったのだ。もちろんバイクが勝手に言ったことではあるが、そんな細かい事に頓着する人ではない。

もろともに消し炭にされてしまう。

なればこそ、今はとにかく距離をとらなくては、静か海だが、いつ荒れ狂ってもおかしくない。

被災地から逃げる避難民がごとく一心不乱にわき目も振らずに距離を稼ぐ。

どれだけ、時間が過ぎただろう。5分、10分。はたまた1分か……
極度の緊張下において、自身の体内時計が狂ってしまっている。

それでも、最高速度で逃げているのだ。1分だとしても、相当な距離を稼げたはずだ。



声が聞こえた。

「皆、なにしてるの」

普段の明るさなど微塵も見当たらない平坦な声音。

「犯罪者が逃げちゃったよ」

現実的に、科学的に考えても聞こえるはずがないのに。

「はやく、追い掛けて捕まえないと」

自身の恐怖心から生み出された幻聴であってほしい。
しかし、エリオが真っ青な顔で、ブルブルと震えているところから、どうやら幻聴ではないようだ。

「頭……冷やそうか」

魔王による慈悲も容赦も見当たらない判決が下された。

潰れそうな心を叱咤する。
聞こえない筈の声が聞こえた。
開始された追撃。 
だから、どうした!こちらには稼いだ距離がある。
この距離なら……

「ねぇ、どこに行くの?お話しようよ」

『っ!前方から高エネルギー反応!回避運動開始!』

車体が勝手に傾いたと思ったら、掠るように飛んでくる桃色の光線。

「嘘……だろ……」

いつの間にか前方に現れたなのはさん。

「あれぐらいの距離……航空戦技教導隊を舐めないでなの」

降り注ぐ弾雨。

光の雨の中を蛇行しながら避け回る。

被弾こそしないものの、そのような蛇行運転を続ければ、追っ手に追い付かれてしまうのは必定。
「全周……かよ」

パタリと弾雨が止んだので、もしやと思い周りを見渡せば、完全に包囲されていた。

もはやこれまで、と諦めたケイスケ。

しかし、

『マスターケイスケ、やっと魔力が溜まりました。広範囲攻撃システム『カミナリ』の使用が可能になりました。使用許可を』

もはやどうにでもなれと、開きなおりの胸中で使用を許可する。

瞬間、全ての教導隊員にカミナリが落ちた。

『マスターケイスケ、今の内に戦線からの離脱を』

こうして、ケイスケとエリオは辛くも、虎口からの脱出を図ることに成功をした。

その帰路の最中、ケイスケとエリオは疑問に思った事を口に出した。 

「あの『カミナリ』なんだがよ、いくらなんでも凄すぎないか」

「そうですよ。一般の教導隊員のシールドやバリアジャケットの厚さは知りませんが、なのはさんやヴィータさんの装甲を一撃で抜くなんてどんな威力なんですか?」

このインテリジェンス・バイク型デバイスの使用魔法の威力の高さに恐れ入る二人。

『いいえ、威力はゼロです』

きっぱりと答えて、手品のタネを明かし始める。

『あの『カミナリ』しかり『バナナ』しかり、もとをただせば、防御・シールド系魔法の一種です』

「どういうこと?」

首を傾げるエリオ。 

「続けてくれ」

先を促すケイスケ。 

『シールドやバリアジャケットは文字通り、全ての物理、魔法攻撃を無効ないし軽減させます。しかし、そのシールドやバリアジャケットを無視して、直接本体に使用出来る魔法があります』

「そういうことか」

「えっ!?ケイスケ分かったの」

「ああ、と言っても、大まかにだがな、要は相手にシールド魔法を掛けたんだろ。あとこれは予測だが、そのシールド魔法には、強力なスピンを掛けてある」

『その通りです。いくらシールドやバリアジャケットが魔法を防ぐからと言って、補助魔法まで弾かれたらたまりません。第一に、命のやりとりの最中に対戦相手に補助魔法を掛ける馬鹿など存在しません』

「そりゃそうだ。しかし、『バナナ』に『カミナリ』ねぇ……随分とまぁヘンテコな攻撃だよな」

『なんでも、マリオカ○トをやっている最中に思い付いたのだと』

「……ケイスケ、僕すごく頭が痛いよ」

「安心しろ。俺もだ」

しばしの沈黙のあと、コホンと咳をして、こう切り出した。 

「しかし、なんで、あんなになのはさんに攻撃的だったんだ」

しばらく黙って走行したあと、ポツリとこぼした。

『産みの親……父や姉たちの敵討ちですかね。事の善悪はともかく、敵と言えば敵ですから。父がいくら悪い事をしても父は父ですから』

恥ずかしげにそう告げるバイクに妙な親近感が沸いてきた。

「そっか」

『ええ、あのショートケーキが空からスピンアウトしていく様子は爽快でした。とりあえず、あの映像は父や姉たちに送っておきます』

「ドクターと四番は狂喜しそうだな。ところでしつこいようだが……」

『大丈夫です。落ちていく最中に回転していたシールドが球状に変化して彼女たちを包みカスリ傷一つ負わせません』

「なら良いか。さて帰るか」

「はーい」

『分かりました』

こうして、俺の生活に新たに1人珍妙な奴が加わるのでした。 



























と、綺麗に終わるはずがない。





航空戦技教導隊壊滅の報告を聞き、はやては、長年の親友と家族の無事を祈りながら、現場に急行。

落下ポイントについての第一声がこれだ。 

「………………卵?」

落下ポイントには、白と緑でカラフルにペイントされた大きな卵の大量に落ちていた。

長年の捜査官としての彼女の経験がこう告げた。

「……とりあえず持って帰ろう」

……

「なるほどなるほど、それはよーく分かった……で、なんで俺が斧持ってこんな僻地で卵を割んなきゃいけないんだよ」

「それはケイスケくんやからや!」

「意味分かんねーし、第一爆発したらどうすんだよ!」

「それもケイスケくんやからや大丈夫や」

「あっ、ケイスケー!これ昨日ギン姉の墜落ポイントに落ちてた卵。これもお願いねー」

「ちょっ!おまっ!」

朝っぱらから、はやてに連絡を受けたときは、昨日の件がバレたのではないかと危惧したが、どうやらそうではないようだ。

ホッと一安心する。

「とりあえず割るか」

斧を叩きつけると、パカリと割れる。 

「でってぃう」

なんとも残念な掛け声とポーズを取りながら、出てきた、教導隊員。 

何とも言えない気まずさから、皆目を逸らす。

「ちっちがうんだ、これは勝手に……この卵のせいで」

「てい」

パカンと他の卵を割ると、 

「でってぃう」

やはり、残念な掛け声とポーズで現れる教導隊員。

パカンパカン、でってぃうでってぃう、パカンパカン、でってぃうでってぃう。

そんな訳で、残りは3個。

教導隊員の人達は全員ヘコんでいるがさもあらん。

はやてがなにを思ったのか、大きな声で叫ぶ。

「全員傾注!」

なんだなんだとはやてを見る。

「皆、ちょいと考えてみ。残る卵は3個。そしてまだ見つかってないのは、なのはちゃんにヴィータにギンガや」

その一言に、皆が落雷に打たれたかの如くハッとなる。

「そや、あの3人の『でってぃうポーズ』が見れるんやで」

先ほどまでの落ち込みようはどこへやら、テンションMAXで「ひゃっほー」と叫び出す隊員たち。
かくいう俺も漲ってきた。

ペッと手のひらに唾を吐き付けて斧の柄をギュッと握る。

「我々も手伝おう」

「あの御三方の『でってぃうポーズ』同時に見た方が素晴らしい」

「しかり、夜空に浮かぶ花火は大きければ大きいほど良く、数が多ければ多いほどふつくしい」

「我々は会場のセッティングをする」

「我々は照明と音響だ」
「映像は任せておけ。ブルーレイハイヴィジョンじゃあ!」

貴様ら、本当はテレビ局のベテランスタッフだろうと、ツッコミたいほど彼らの仕事はしつこくなくそれでいてまったりとしていた。




かくして、舞台は整った。

光り輝く壇上に並び置かれる3つの卵。

会場には、いつの間にやら、教導隊員だけではなく、108部隊も押し掛けていやがる。

……どっから涌いたんだこいつらは。 

頭痛を堪えてヤレヤレと頭を振るっていると、ポンと肩を叩かれた。

「あまり深く考えるな」
「そう、我々は黒子。我々が心を傾けなければならないのは、卵を同時に割ることだ」

「いや……別にそんなことj」 

俺の返答を聞くまでもなく、「はっはっはっ、舞台袖で待ってるぞ」と爽やかに去っていってしまった。 

足下に置いてある、黒子の衣装と破砕用斧。

頭痛が増しました。

……

有志による無駄にハイレベルな前座のお陰で、会場のボルテージは上がりっぱなし。

そして、クライマックスがいま――

「いくぞ」

「おう」

「……おう」

せーの 

パカン。

「「「でってぃう」」」

うわわわわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

会場が揺れ動くほどの歓声。
まさに最高潮。

そして、 

「頭……冷やそうか」

観客席をぶち抜く、ごんぶとビーム。

さきほどまでの騒ぎはどこへやら、まるで墓地のように……いや墓地になってしまった。 

俺たち黒子組は、卵を破壊したら、すぐに舞台袖に引っ込んだので、運良く射線から外れていた。

「大将激怒しとるのぉ……」

「どうする」

「決まっとるじゃろ」

「是非もなし」

仲良くトンズラ。

壊滅した会場を背にスタコラ走り去る。 
でも1分もしないうちに捕まりました。

あの二人組は、飛んで来た鉄球に後頭部を撃ち抜かれて、俺は、 

「ケイスケ……どこに行くの」

瞳を金色に輝かせる姉さんに無条件降伏をしたのだった。

……

「管理局の捜査官を撃墜。そして、航空戦技教導隊壊滅。皆……これがいかに重大な意味か分かるよね」

「はい。分かるであります」

一糸乱れぬ返答。

壇上では、なのはさんがマイク片手にお説教。ヴィータと姉さんとはやても横でウンウンと頷いている。 

ってあの野郎!

いつの間にあっち側に居やがるんだよ!俺達は瓦礫の上で正座をしているだぞ。

「こんなことしている暇はないよね」

「はい。そうであります」

「草の根分けても探し出す。なんとしても検挙しなければいけないの」

「全くもってその通りであります」

「それじゃ、全力全開で捕まえに行くの」

かくして、航空戦技教導隊と108部隊は全力を持って逮捕に乗り出した。
もちろんケイスケの血圧が上がったのは言うまでもない。 

そして、物語は冒頭に戻る。

『マスターケイスケ、車体の色に若干のむらがあります。もう少し丁寧に仕上げて頂きたいのですが』

「じゃかぁしい!あの事件が報道関係者にすっぱ抜かれたお陰で、局を上げてのお尋ね者なんだぞ」

『マスターケイスケ、安心してください。証拠を残すようなヘマは致しておりません』

「おめーの存在自体がデッカい証拠なんだよ」

『はっはっはっ』

「笑っ誤魔化すな!」

「ケイスケー!今度はいつ乗せてくれるのー?」
「お前は自重しろ馬鹿たれ!」










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