この作品は鬼丸さんの機動六課の日々シリーズとIFスバルを見た後に見ることを強く推奨いたします。





「うわぁ……立派なマンションに住んでるわね」
いや、本当に凄いわ、コレ……

「そんなことないよ。……ってあれ、ゴメン、ティア。コーヒーとかお茶請け、切らしちゃってる」

「良いわよ。別に」

「いやいや、折角来てくれたんだから、買ってくるね」

ついでに、晩御飯のおかずも、ぐれーどあっぷ。
とか言いながら、こっちの言い分など、聞かずにスタコラと買い出しに行ってしまった。

やれやれ、変わらないわね。

そう思いつつも、自然に笑みが浮かんでしまう。

訓練校時代、六課時代と彼女とコンビを組んでいた昔を思い出してしまう。

壁に掛けてあるコルクボードには、様々な写真。
くすりと笑みが零れ落ちる。

脳裏に浮かんでいた映像がそこに。思わず近付いて見てしまう。

「うわっ〜懐かしい〜」
これはあの時、これはあの時、これは……

貼り付けてある写真を眺め、心が踊る。とは言っても、所詮、コルクボードに貼られている写真。枚数は多いものではない。

全てを見るのに時間はそう掛からない。

スバルが帰ってくる気配はまるでなく、どうしても時間を持て余してしまう。

テレビでも見ようかな……

そう思った矢先、本棚においてあるアルバムを発見。

非常識だらけの六課の面々において、ティアナは比較的に常識人。
家主の留守中に勝手に家捜ししたり、許可なくアルバムを開いたりすることはまずない。

しかし、この家の家主はスバルであり、彼女とは気の置けない仲である。また、先ほどの写真のせいで、気分が高まっており、ティアナは勝手にアルバムを開いてしまった。

開きながら、 

ああ、そういえば、ケイスケは良く家捜しされていたな〜
主に、スバルや部隊長に。

一度、ケイスケが、デリヘルを頼んだとき、そうとは知らず、あの二人が毎度の如く、アポなし凸撃をかましてしまう。
結果アパートが半壊したのは良い思いでだ。
(episode―デリバリーその先にあるもの―)


「まぁ、男の生理だもの。仕方ないわよね」

そう呟きながら、アルバムをめくる。 

先ほどのコルクボードと同じように懐かしい気持ちになってくる。 

しかし、だんだんとページをめくる度に違和感を覚えてくる。

「あっ、ケイスケの比率が多くなってるんだ」

写真の日付が今に近付く程、ケイスケの比率が増えていき、二人きりで写っている写真もどんどん増えていく。 

「もしかして……」

なんとなく予想は付いたが、次のページが決定的だった。 

「うわぁ、キスしてるよ」

うん、キスしてる写真がある。 

いや〜若いね。
しかし、こんな写真を普通にアルバムに入れるなんて、相当なバカップルね。

まったく、こっちは、仕事が恋人に等しい毎日なのに。

これは、帰ってきたら徹底的にからかう……もとい追及しないと。

新たな決意を胸にアルバムを本棚に戻そうとして気付く。 

「あれ、なにかしら」

本棚の奥に隠すように設置してあるスイッチ。

普段のティアナなら、まず押さないだろう。しかし、今日のティアナはテンションが高い。

悪い不味いと思いつつも、好奇心に負けて、スイッチを押してしまう。

ポチっとな。


ウィーンと音を立てて壁開き、中からモニターが現れる。

「えっ……なにこれ?……地図」

モニターには、たぶんこの近所であろう地図が写し出されており、その地図の上をピコーンピコーンと一つの光点が動いている。

一体これは、なんなのだろう? 

他にも色々と疑問が浮かぶが、彼女に考えている時間はあまり無かった。

地図上を動く光点が、このマンションに向かってドンドン近付いてくる。

これは不味いと本能が警告する。 

間髪入れずに本棚のスイッチを押す。 

ウィーンと音を立てて壁の中に仕舞われていくモニター。 

思わず、「ふぅ」とため息が漏れる。

「ティア、お待たせ〜」
「お〜ティアナか、久しぶりだな〜いらっしゃい」

間一髪とはこの事か。 
表情筋に全神経を注ぐ。

「遅いわよスバル。久しぶりケイスケ」

「ごめん、買い出し途中でケイスケに会って、それならってことで」

「このバカ、お茶請けや夕飯の材料以外にも、日用品を大量に買い入れやがったんだよ」

「要は荷物持ちね。ご愁傷様」

やれやれだな。とグチをこぼしながら、日用品を仕舞い、コーヒーの準備をするケイスケ。 

その手慣れた姿と、さっきの写真から想像するに…… 

「もしかして、あなた達、付き合ってるというか、同棲してるの?」

こう見えても演技力には自信がある。 
本当なら、「あなた達、同棲してるでしょ」とツッコミたかった。

「そうだよー。でも、なんで分かったのティア?」

「雰囲気よ。それに、ケイスケの動きが手慣れ過ぎてるのよ。コーヒーの準備ならともかく、日用品の場所までなんて」

「うわ〜ティア、執務官みたい」

「みたいじゃなくて、執務官よ」

カチャリと音がして、テーブルの上に置かれるコーヒー。 

「はいよ、コーヒーおまっとさん」

「ありがとう」

コーヒーを飲みながら、三人で昔話に華を咲かせる。

しばらくしてから、私は何気ない風を装って切り出した。

「二人はいつから同棲し始めたの?」

「えっーと……このマンションに私が引っ越した時からかな」

「そうそう。スバルから『凄く良い部屋見つけたから、ケイスケ一緒に暮らそうよ〜』って連絡を受けて、そのまま押し切られたんだよ」

「そうなんだ。ってことは、もう結婚も秒読みね」

「ぶっ」

「いやだな〜も〜からかわないでよティア」

コーヒーを吹き出すケイスケに、満更でもないスバル。 

しかし、これで、一つ確実に分かったことがある。 

あれはGPS。
そして、あのモニター上の光点はケイスケだと言うことに……

「スバルの親友として忠告するわ。彼女を泣かしたら、ただじゃ済まないわよ」

ええ、きっと、ただじゃ済まないわね。

「泣かせるつもりなんかねぇーよ」

「ケイスケ……」

なんか、いちゃつき始めたバカップルを尻目に、海を見る。 

海は全てを飲み干す。 

ケイスケも飲み干されてしまったのか。 

海色の髪をする親友に。

この作品を展示して頂いたリョウさん、掲載を許可して頂いた鬼丸さん、そして、最後まで見て頂いた読者の皆様に感謝を


ヤンデレスバル……良いよね!








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