The past binds me in the nightmare

プロローグ「全ての始まり」

夢を見ている。

白い床。白い壁。白い天井。白いベッド。白いシーツ。
全てが白で埋め尽くされた小さな部屋。
自分の周りには、白い服を着て、首からドッグタグをぶら下げた10歳くらいの子供が何人かいる。

そうか、これは過去の夢だ。

周りにいる子供達は、誰一人として笑わない。
恐らく、自分も他の子と同じように無表情なのだろう。
何か話をするのでもなく、ただ俯いて埃1つ無い白い床を見続けている。

俺がまだ幼かった頃の夢。

音の無い部屋に、ドアノブを回す、小さな音が響いた。
それを聞いた途端、今まで無表情だった子供達が一斉に表情を変えた。
その幼い顔に浮かんだ感情は、恐怖と絶望。

あの小さな箱庭にいた頃の夢。

ドアを開けて入ってきたのは、白衣を着た大人達。
レポート用紙を持ち、自分達を見ながら小声で話し合っている。
そんな大人達を、自分達は身を寄せ合い、涙を浮べながら見ていた。

楽しい事なんか無かった、あの頃の夢。

やがて大人達は、一番左端にいた子を指差した。
その子は泣きながら部屋の隅に逃げたが、すぐに捕まり部屋の外に連れて行かれた。
ドアが閉まると、俺は首から下げたドッグタグを握り締めた。

名前で呼ばれた事なんか無かった、昔の夢。

そこには自分のを含めて、13枚のドッグタグがある。
その冷たい金属の束を握り締めながら、認めたくないけど、きっと変わらない未来が浮かんだ。
―――きっと、また1枚、このプレートが増える―――

3日後、その未来は現実になった。

 

夢を見ている。

幼かった頃の夢。

俺を悪夢に縛り付ける、忘れられない、過去の夢。













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