地に伏せている男性の映像がそのまま流れるはずが、

はやてが直ぐにこの状況について反応して反論してみせた。

「・・・・・・・アリサちゃん・・・これは一体なんの冗談や・・・・・・・」

アリサもこの反応を待っていたようで、直ぐに映像をそのまま中断させた。

「・・・冗談では・・・ないわ、これは良介が体験してきた事をそのまま再生しているのだから」

「そう・・・なんや」

はやてはそれを聞いたとたん・・・・・・、黙ってしまった。

フェイトとヴィータは新人達の様子と同時に【例の写真】の事を考えていた。

特にキャロ・エリオ・スバル・ティアナはその映像を見て、やりきれない思いが巡っていた。

なのは特に深刻そうな顔をしながら考えていた。

なぜならばなのはは、これと良く似た事件を父・兄が活躍して解決した事件と酷似していたからだ。
それに当時のなのはもこの事件の時は良く姉と共に家に帰っていた頃を思い出していた。

ヴォルケン達も主はやての元になってからは、特に【汚れ仕事】と呼ばれる場面はあの
【なのはの事件】以来殆どはないと言える、実際は【収集の時】はそれなりに怪我は当たり前だが
いまはそれがないと言えるだからこそ、シャマル・リィン・ザフィーラ・ヴィータは、
【良介の過去】に非常に興味を持っていた、特に自らの主を危機に落とす可能性を秘めているなら、
良介の扱いも慎重にしなくてはならないからだ。


そして五分が過ぎた頃、アリサははやてにたいして。

「・・・そろそろ中断させていた映像を流してもいいかしら・・・」


「えっ・・・・・・んいいけど・・・まだ続くんか」

「当たり前でしょうが・・・まだ私やミヤが出てきてはないなでしょうが」

「そうやね」

「それじゃあ、映像流すわね」

アリサは先ほどまで中断させていた、映像を流し始めした。


中断されていた映像が流れると男性が頭から血を噴き出して倒れていた。

闇夜の雲の陰より差し込む月光は俺と倒れている人間を明確に映し出し、場を演出していた。

一瞬幻かと思ったが、目の前の光景はあまりにリアルだった・・・・・・・

狐は鳴いていた。

良介も混乱していたが、元々一般人の良介がこのような現場に出くわせば混乱するなという方がただしい。

再び男性の方をみれば明らかに誰かが背後から何か鈍器のような物で一撃して倒したのだろう。

後頭部から夥しい血が流れており、横顔を血で染めている。

次にその男性が着ている服の方に映像が集中している。

被害者は男性で着ている服装はジャージであり、荷物の方は竹刀袋である。

これほどまでに状況証拠が揃っていればおのずと答えが出てくる。

この男性は剣道家であるということだ。第六課のメンバーもあの道場の映像しか知らないので

あの道場の門下生と思っていた、実際はそれであっているのだがそれを知るのは大分後である。

突如映像が写ってはいるが色々場所を見ている、これは良介が混乱してためにこのようになっている。

ふと倒れている男の手元に良介の視線が止まった。

利き腕なのだろうか、倒れている男は右手にしっかりと細長い棒を握っていた。

少し気になって俺は握る男の手を力任せに解いて、自分の目の前に掲げる。


それは余りにも残酷な映像で在った。

良介が掲げた【ソレ】は男が握っていたのは何の細工もない木刀で、かなり本格的な作りとなっている。

じっと見ると、木刀の先端部分は黒い曇りで染まっている。

既にその映像だけで、エリオとキャロは既に気分が悪いのか、表情は既に血の気が引いて真っ青になりかけている。

スバルとティアナだけは、先の役職上の都合で、見る場面は皆無とはいえ、血を流して意識を失っている人物の救助の為に
多少の血なれはしていたが、実際にそれを体験している人物の記録を見るのは初めてなので緊張や不慣れの初めてづくしで、
顔には出さないが既に気分は悪くなっていた。

それを見たフェイトは、直ぐにエリオとキャロに声をかけた。

「・・・・・・大丈夫・・・気分が悪いならムリはしなくても良いよ」

「大丈夫です」

「・・・・・・大丈夫」

2人ともフェイトの問いかけに答えてはいるが、既に表情が真っ青になっている人物に【大丈夫】と言われても、
ムリだろう、特に2人ともフェイトに引き取られて良く面倒を見てもらった仲だ、大抵のことは直ぐに母親役のフェイトにばれるの
同然の理であろう。


「大丈夫じゃないでしょう・・・・・キャロにエリオも顔色既に真っ青だよ、ムリしないで。後で2人にも報告書でおしえるから」

フェイトの言い分ももっともである、元々保護区にいたキャロと施設で育って、二人とも殆どこのような経験は無い、
だからこそ、フェイトはこの様な言い方をしたのだ。

2人ともフェイトの言葉の意味を察したのか。

「「わかりました」」

の返事と共にキャロとエリオの2人は自分達に割り振りされた部屋に戻っていた。


こうして既に第六課のメンバーの主力となる人物の内の2人が気分が悪くなるということで部屋に戻るというアクシデントが起きたが。
そのまま映像は流れていた。




間違いがなければ、俺が殴りこみをかけた時にじいさんの傍らにいた男だった筈だ。


「貴様だったのか・・・・貴様がやったのか!!」

「はあ?お前何を言って・・・!?」

普通ならいきなり犯人呼ばわりはしないが、【物的証拠】を既に良介が手に持ち、
状況証拠というべき被害者の男性が頭から血を出して倒れていれば。誰だって犯人と思う。

そんな中犯人を捕まえたいなら方法は限られる。


男は本気の目で、俺の言い分を聞かずに走り出そうとする。
待て待て待て待て待てーーーーー!


冗談じゃない!!

ここで警察を呼ばれたら、俺は問答無用で捕まる。


「またんかい!俺は何もしてな・・・・」

「人殺しーーー!!!人殺しだーーーー!!!誰か来てくれ!!!!」

その内の一つをその男は実戦した。

もしこの世に運命の女神がいるのなら、そいつは今夜俺の敵に回ったようだ。

男の大声に触発されてか、たまたま近くにいたのだろう複数の足音が前方より聞こえてくる。

すっかり動揺した俺は即座に動く事が出来ずに二の足を踏んでいると、やがて対面より多数の人間が来た。


元々既に連続通り魔事件として世間を騒がしている。そのような犯人がようやく見つかったのだ。

それに状況が状況なので俺も手出しができずにいると、中年達の間から一人の男が出てきた。


「・・・下がっていて下さい。俺が何とかします」

「高町君、気をつけるんだぞ」


高町?

聞き覚えのある苗字に俺が反応するが、男は無表情のまま一歩前に出る。

黒づくめの全身スタイルに、鋭い眼光を秘めた瞳。

立ち振る舞いは気品より凛々しさを感じさせ、立っているだけなのにまるで隙を感じさせない。

その映像を見たなのは、は確実に驚く、確かに自分の兄である、しかもその表情は時々父と共に修練で見せる表情より
さらに鋭いのだから。

同じくヴォルケン達も【シグナムは除く】人物達も驚く、あの表情は一流の剣士の表情にむしろ近い。

はやてもフェイトもなのはの兄である人物と既に会っているがあそこまでの表情は見た事がない。

そしてスバルとティアナは高町という名前に驚いていたと同時に映像で見る高町の姓を持つ男性の表情見て
スバルは完全に確信してしまった。

『あの表情は親父の知り合いにいるシュバルツと良く似ていると』

元々あの事故の時も現場にいたのだから、家族ぐるみで付き合いが会っても不思議ではない。

ティアナもあの表情に既に飲まれていた。

映像はまだ続いてた。


緊張感に喉を鳴らすと、背後からガサガサ音が聞こえる。

はっとして振り返ると、門下生の奴が手持ちの竹刀を抜き払っていた。

ある程度時間が経ったのかいきなり映像が暗くなる、これは良介が目を閉じた為におきた現象であり。

直ぐに映像は元に戻る、


「む、抵抗する気か貴様!」

「・・・・・二刀流か」


 俺は腰元の剣を抜いて、左手に剣・右手に木刀のスタイルで二人と対峙した。


「無駄だろうが、一応言う。俺は何も知らんし、何もやっていない。
ただ通りがかっただけだ」


 先程から殺気立った視線を向ける周囲の人間に聞かせるように、俺は冷静に言った。

だが元々殺気だっている人間達には状況証拠が既にある人物が言うことなど聞くわけがない。


「ふざけるな!そんな血塗られた木刀を持って何を言う!」


 俺の背後より怒りに顔を染めた道場生が、俺をキツイ眼差しで睨み付ける。

俺は負けじと睨んで言ってやった。


「大体なんで俺が通り魔まがいの事件起こさないといけないんだ?
俺はたまたまこの人が倒れているのを見つけたんだ。
この木刀だって拾っただけであって…」

「よくもぬけぬけとそんな事が言えたものだな!
うちの道場生を叩きのめしておいて…この外道が!」


この言葉に残ったメンバー達は直ぐにわかってしまった。
あの最初にここにいる良介が道場破りをした門下生と。

映像の中の良介も同じだったようで。

視線を下に向けると、変わらず後頭部より血を流しながら倒れる男が目に入る。

「だから! 俺はしてないって言っているだろう。
今だってじじいに再戦を挑むべく、こうして…」

「何い!? 先生にまで、貴様の腐った剣で切り伏せるつもりか!
そうはさせんぞ!!」


 『うわ〜、こいつ滅茶苦茶単細胞だ。』

と映像を見ているメンバーの殆どが思った事であったが一人だけ例外がいた、その名はスバル・ナカジマ
格闘タイプの馬鹿といったほうが良いだろう実際【Bランク試験】の時でさえもティアナを信じて行動を起こした結果。
リィンとなのはがスバルとティアナがゴールの時に助けに入らなければ確実に事故を起こしてほどだ。

それでも映像は流れていく。


こいつを説得するのを諦めて、俺は正面を向いた。

俺の前方の中央に位置する状態で、黒ずくめのその男は対峙していた。

先程までは素手だった筈だが、いつのまにか男は両手に剣を携えている。

しかも俺や背後の熱血君のような木刀や竹刀ではなく、小振りの真剣だった。

これには流石のなのはも驚いた、確かに実家には真剣がある事はあるが、一度として使われた事がない。
もちろんそれはなのはが知っている部分であり、実際に父・姉・兄たちの以降によりその闇の部分を知らないように育てられた。
だけであり。知っているだけの知識はただの昔父が使っていた【護衛の剣術】としか聞いてはいなかった。

またもやフェイト・はやて・スバル・ティアナ・ヴィータ・ザフィーラ・シャマル・シャーリーも驚きのあまり
言葉を失っている。

確かに魔法で守りの魔法をやバリヤ・ジャケットを着れば、刃物程度のダメージある程度無効化されるがそれは管理局の局員に限られる
ことであり。映像では確実に一般人である良介にたいして使う武器ではないからだ。


だれもが諦めて捕まると思っていたが。それは大きく予想を裏切られる結果を迎える。

映像の中の良介が取った行動はだれもが驚く行動で在った。


 狐なりに事情を察したのか、大人しく俺の足元へトコトコ狐はやって来た。

俺はすかさず胸元のシャツの中へ押し込んで、両手の獲物を構え直す。

左手に剣・右手に木刀。

二刀流であった。

俺の進路上にいる障害ー熱血君ーは、ややうろたえながらも竹刀を構えなおす。

黒ずくめの男を相手にするのはパス。

背後にも親父達がいるし、何より得体の知れない何かを感じる。

俺はそのまま加速しながら、持っていた右手の木刀をすんなり投げつけた。

まさかそう来るとは思っていなかったのか、熱血君は顔色を変えて竹刀を振るった。




切り払われた木刀は弾け飛び、熱血君の横脇に乾いた音を立てて落ちた。

それで安心したのか、熱血君は落ちた木刀へ注意を逸らしてしまった。


映像を見ているなのはもフェイトもはやても、青年が行った行動は悪くは無いが、それはあくまでも敵が
他に武器を持っていないときに限られる方法であり。

実際には、なのはがそれを訓練で使うのなら、2手も3手も先を見越した対策が必要になる。


だが映像で見る限り青年はそれを怠っていた為に、当然としてそのツケハ自らに何らかの形で跳ね返ってくる。

映像もやはりそのような結果に成りつつあった。

「がぎっ!?」


 胸を思いっきり斬られて、熱血君はたまらず地面へ倒れこむ。

そのまま走る速度は緩めず、俺は倒れて咳き込む熱血君を一瞥してこう言った。


「安心しろ、みね打ちだ」




後書き〜

過去編の二話目です。
正確には良介編の三話目に当たる作品です。

今回は色々な視点を組み込んでみました。

最も幼さが残るキャロとエリオは早々に退場させました。


なのはの最後の視点は、教官の視点で書いています。
二巻でも実際にティアナに射撃に指導を教える際に、必ず色々な方法や対策を瞬時に取らせる訓練を
しているから、このようにしてみました。

またなのはの兄の表情は仕方ないです。ここでは父が死亡しているために早くから
社会の闇に関わりがある、兄と父が生きている世界とでは経験値と修羅場の潜った数が段違いなのですから。







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