Keith in Lyrical World


◎第1部第2話・サイキッカーVS魔導師

 親友バーンとの戦いの最中に感じた、巨大な力。
 抗いようの無い力に引き寄せられたキースは、次の瞬間には何も存在しない空間を漂っていた。
 踏みしめる大地も、空に輝く太陽も、夜空を照らす月も、何も存在しない空間。
 キースの脳裏に、見知らぬ誰かの記憶が再生されていく。
 それはとある少女の記憶。
 母の為に働き、母に捨てられた記憶。
 戦いの中で得た、かけがえの無い親友達の記憶。
 夢を叶える為に頑張った記憶。
 そして成長した今、悪い魔導師によって夢破れ、死に掛けている。
 
(できることなら、助けてやりたいが・・・・・)
 
 明確にそう意識すると、キースの身体は光に包まれ、どこかに向かって引き寄せられ始めた。
 しばらくは何も存在しない虚無の空間だったが、徐々に色が戻り、音が戻り、世界を構成する全てが戻ってきた。
 そして・・・・・。
 
 
 
―――第2話・サイキッカーVS魔導師―――
 
 
 
「何者だ、貴様」

 キースに、背後から緊張感を含んだ、ギルラスの声が投げかけられた。
 だが彼はそれに答えず、フェイトの前で軽く腕を一振りした。
 すると<リングバインド>が、硝子細工のようにあっさりと砕け散る。
 もしこの場に、今のことを冷静に見れた人間がいたなら、気づいただろう。
 キースは<解呪>したわけではない。
 <リングバインド>を構成している魔力ごと、凍らせて砕いたのだ。
 キースは床に倒れそうになるフェイトを、そっと片腕で支えた。
 
「無事か?」
「は、はい。貴方は?」
「君が召喚した者だ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」
「じゃぁ、貴方がキース・エヴァンス?」
「その通りだ。―――さて、色々と聞きたいところだが、まずは後ろの奴を倒してからにしよう」

 そう言ってキースはフェイトから離れると、ギルラスに向き直った。
 
「私を倒すとは、随分と大きく出たな」
「大きく出たつもりは無い。倒せる相手を、倒せると言ったまでのこと」
「そうか、では大口を叩いたことを、後悔させてやろう!!」

 ギルラスは言い終えると同時に、攻撃魔法を起動。
 無数の闇色の球体が、ギルラスの周囲に出現し、キース達に襲い掛かった。
 強力な誘導性能を持つそれは、前後左右に頭上と、完全に逃げ道を塞ぐ形で放たれていた。
 次々と闇色の球体が2人に命中し、爆発で姿が見えなくなるが、ギルラスの探知魔法はその場から動いていない2人を、しっかりと捕らえていた。
 大方、<シールド>か<バリア>系の魔法で、辛うじて防いだのだろう。
 そう考えたギルラスは止めを刺すべく、収束砲の魔方陣を展開した。
 そして収束が終わり、発射直前になっても、2人は全く動かない。
 
「ふん、他愛もない」

 そう言って放たれる一撃。
 だが撃ち終えた後、驚愕するのはギルラスの方だった。
 キースは何一つ変わらぬ姿で、その場に立っている。
 もちろんフェイトも。
 
「ば・・・・・バカなっ!!」

 キースが腕を一振りすると、2人を覆っていた薄い氷の殻(※1)が、何もなかったかのように消えていった。
 
「その程度か? ―――今度は、こちらから行くぞ」

 キースの手にサイキックパワーが集まり、氷のランス(※2)が放たれる。
 ギルラスは<シールド>で防ぐが、氷のランスはそれごと貫こうと突進を続け、<シールド>を軋ませていく。
 
「中々の威力だが、この程度・・・」
「元より、これで倒せるとは思っていない」

 いつの間にか至近距離まで迫っていたキースが、ギルラスの独白に答えた。
 
「なっ!?」

 気づいたときにはもう遅い。
 キースの回し蹴り、それもサイキックパワーが収束された重い一撃が、ギルラスの<シールド>を粉微塵に打ち砕く。
 そのまま吹き飛ばされたギルラスを追撃するキース。
 だが流石にAAA+ランク魔導師。
 即座に体勢を立て直し、散弾魔法で弾幕を張り、追撃を防ごうとする。
 だがキースが腕を一振りすると現れた、霧状の氷(※3)に弾幕が触れると、その尽くが凍りつき、消滅させられていった。
 そして再び放たれる氷のランス。
 <シールド>で防御しながら、ギルラスは思った。
 
(強い!!)

 たった数度の攻防だが、ギルラスはほぼ正確にキースの実力を見抜いていた。
 過去に戦った追っ手の中でも、並ぶ実力者は3人といないだろう。
 なにせ、(ギルラスから見れば)収束砲を無効化できるAMF(アンチ・マギリング・フィールド)の使い手。
 AAAランク魔法防御。
 魔力結合を崩壊させて、魔法を無効化するという、極めて強力な魔法防御。
 だが実際には、AMFを実戦で使う魔導師はほとんどいない。
 それはなぜか?
 答えは簡単だ。
 AMF発動中は、その他の魔法が(ほとんど)使えなくなるからだ。
 魔導師が魔法を使えなくなる。
 どれほど使い勝手が悪いかは、言わずとも分かろうというものだろう。
 だが、あの男は実戦で使ってのけた。
 それだけで実力の程が知れる。
 奴と正面から戦ってはいけない。
 ギルラスはそう思った。
 
(小娘を攻撃して、奴に防がせた隙に離脱・・・・・これで行くか)
「カートリッジ、ロード」

 ガチャンという音と共に、杖を一振りして攻撃魔法を起動。
 ギルラスの周囲に、無数の闇色の球体が現れる。
 その数は、明らかに先ほどよりも多く、キースが動くよりも先に放たれた。
 
「ファイア!!」
(この隙に!!)
 
 ギルラスは即座に踵を返して、先ほど自分が開けた―――迷宮を貫いた―――縦穴に向かっていった。
 だが、

「―――<フォトンランサー・ファランクスシフト>、ファイア!!!」
「なにっ!?」

 闇色の球体が、黄金のランスに尽く迎撃されていく。
 ここにきて、ギルラスは己の迂闊さを呪った。
 青年との戦いに集中する余り、執務官への注意を怠ってしまったのだ。
 しかし、縦穴へは自分の方が近い。
 あそこに逃げ込んでしまえば、後は迷宮に逃げ込むなり、そのまま外に出てしまうなり、好きに出来る。
 (当然、ギルラスは次元転送魔法が使えた)
 そう思い、そのまま縦穴を目指したギルラスだったが、眼前に撃ち込まれた氷のランスが、彼の動きを止めた。

「貴様のような輩は、考えることが分かりやすい」

 ギルラスの前に立ちふさがったキースは、組んでいた腕を解きながらそう言った。
 
「なんだと」
「己の利益を最大限に追求する者が、命懸けの死闘など行うものか。―――必ず脱出を図ると思っていた」

 キースが右手首に左手を添えて、前方に突き出す。
 突き出された右手に、強力な冷気を秘めたサイキックパワーが収束され、青白い光が徐々に強くなっていく。
 何かがマズイ。
 そう直感したギルラスは、久しく忘れていた感情―――恐怖―――に突き動かされるように、最速で散弾魔法を起動。
 キースのいる空間を、圧倒的な密度の魔力弾でなぎ払った。
 だが、突き出された右手に現れた小さな氷の卵が、瞬く間に人間サイズまで大きくなり、散弾魔法を弾き返す。
 盾のように現れたそれは、孵化寸前の卵のように、小さなヒビが入り、亀裂はあっという間に卵全体に広がっていく。
 
「―――ブリザード」
 
 そして卵から孵ったものが、ギルラスが見た最後の光景となった。
 
「―――トゥース!!!!!!」

 現れたのは氷の龍。
 あらゆる次元世界において、最強クラスの生物と言われる存在。
 巨大な牙がギルラスを捉え、象が蟻を踏み潰すように、一切の抵抗を許さず彼の命を噛み砕いた。



※1:薄い氷の殻
   キースの超能力技の1つ。フリジットシェル。
   ゲーム本編では、特定の技を除いて相手の超能力技を無効化するという割と反則的な能力。
   が、「コレ装着してれば無敵だぜ」と言うほど強力な技ではありません。
   (けっこう弱点多い技です)

※2:氷のランス
   キースの超能力技の1つ。フリジットランスです。

※3:霧状の氷
   キースの超能力技の1つ。フリジットプリズンです。
   






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