PALM
概要 |
1981年、元心臓外科医の私立探偵カーター・オーガスは、シンジケートの家系に生まれ、11歳で誘拐され、
数奇な運命をたどったかつての天才児、ジェームス・ブライアンを助手として雇うことになる。
28歳でこの世を去ったジェームスの伝説を中心に、3人の人種の異なる主役とその周りの人々、
20世紀後半の世界を描いた壮大な人間ドラマ。
作者獸木野生はプロの作家として1983年から、アマチュアとして14歳の1974年からこのライフワークに取り組み、
現在第9話「蜘蛛の紋様」を執筆中。
シリーズは2011年完結の予定。
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レビュー |
漫画家・獣木野生(旧ペンネーム:伸たまき)のライフワークとも言える長編マンガ。
全10章からなる作品は、出自・人種・経歴・年齢の異なる三人の男性を主人公とし、
彼らの過去、出会い共同生活を送る現代、そしてそれぞれの別れの後の未来から構成されています。
1984年の連載開始から途中休載を挟みましたが現在第9章を連載中。
作者HPでの予定では2011年完結予定の長期連載作品です。
主人公は以下の三人。
マフィアのボスの義息子であり、誘拐・監禁・脱走・刑務所への逃亡という波乱万丈の少年時代を過ごしたジェームス・ブライアン。
日系人としての容姿のため戦時中の日系弾圧を体験した母に愛情を注がれることも無く過ごし、伯父の下に身を寄せたカーター・オーガス。
だが、彼は両親と伯父を一度に亡くして以来、親しい人との離別を否応無く経験することになる。
最愛の母を喪った悲しみにより絶望し、人に心を閉ざしペットのライオンと共にジャングルで過ごしたアンドルー・グラスゴー。
まるで運命に導かれるようにジェームスと出会ったカーター、
アンディは親戚の女の子アンジェラと共にカーターの家で同居することになり……。
運命に翻弄される主人公達は一つ屋根の下で過ごす内にお互いの過去の傷を乗り越え、それぞれの幸せを求めるようになります。
ですが、彼らはその日々もいずれ終わり、皆がそれぞれの道を進むために別れの時が来ることに薄々気付いていて……。
お話自体は、企業犯罪や国際テロリストと対決する探偵モノ、殺人鬼の登場するサイコサスペンス、ギャング相手のコン・ゲーム、
CIAからの逃亡劇などシリアスからコメディまで幅広くカバーされています。
しかし、作品の本質は過酷な運命に翻弄される人間の弱さと、
己の無力さに涙しながらも必死で運命に立ち向かう人間の強さを描いた点にあります。
特にお勧めは第7章「愛でなく」です。
環境問題を舞台の背景に、登場人物の恋愛(男女問わず)、
人と動物の間の愛情、隣人愛などあらゆるものに対する愛情をテーマにした「愛でなく」は連載期間10年、単行本12巻にも及ぶ大長編です。
本作は少女マンガに分類されていますが、非常に奥深いテーマ性を持っているのでお勧めの作品です。
(注;電車等公共機関での移動中の読書はお勧めできません。私も電車で読んでいて――)
執筆者:shinyaさん
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