印象に残ってるって言えば、アリサのこともだ。確かに俺も相当酷かったんだろ、なのは？
……あー、聞こえん、聞こえんな。って冗談はおいといて、すずかからも聞いたし。…………その眼は何だ、お前ら。
あのなぁ、当時の俺はなのは達と同じ年齢、つまり９歳……のはずだな。考えてみろ、そんな幼い時から第一線で活躍できるようなエース級の実力を持ってたわけないだろ。精神的な強
さなんか言わずもがなだ。
餓鬼だったのさ、きっと。ったく、そんな嬉しそうな眼で見るな。だから過去なんて話したくなかったんだよ。だいたいなあ、これでもまだマシな方だぞ。もう少し後なんて…………。
……話をとにかく進めてくれって？なんではやてもそんなに興味津々なんだよ。今更俺の過去なんてそんな面白い話でもないだろうに。……まあいい。
流れ的には、初めて俺が強制的に自分と向かい合わされたときだな。あんま気がのらないんだが……。かと言って、自分の中で無かったことにはしたくない。
…………今でも、戒めとして残ってるよ。
――アンタは俺が討つんだ！！今日、ここでっ！！――
「夢…………？《
ぼそりと呟く。目に映るのは見慣れた天井、どこにも異常はない。普段通りの光景だ。
のそのそと緩慢な動作で布団から文字通り這い出る。目は半分以上瞑っており、意識は未だ覚醒していない。それに酷い頭痛もある。大変珍しい光景だ。いつもしっかりとしているイメ
ージ――性格的な意味ではなく、生活態度とか――の大和に対して、このようなどこか腑抜けた姿は。
別に昨日寝る前に普段とは違うことをしたとか、大変疲れる一日だったというわけじゃない。もしそうだとしても、今以上に大変なことなどそうそう無い。あるとしたら、むしろ平和に
寝ているなど出来はしない。ならば原因は他にあるのだろう。
しかし単純に眠れなかったわけでもない。いつもより気持ちよく眠れた、と思えるぐらいだったのだ、つい先ほどまでは。少なくとも悪夢を見たとかではないはず。大和は痛む頭で考え
る。
起きる直前、意識が覚醒するほんの刹那に何かを聞いたような気もするのだが……。そのあたりは曖昧だ。何かの言葉だったような気はするが、映像もあったような……。
だがそんな状態で何かを考えられるわけもなく、一秒後には思考をすでに放棄した。とりあえず悟られないように準備しなければならない。満足に動かない己の体を叱咤して着替えてい
くのだった。
この家族の朝は早い。それ故に一刻も早く本調子……に戻れないとしても、万全に近いぐらいに体調を整えなければならない。完璧に隠し通すためにも。でないと、きっと迷惑をかける
。
「はあ……憂鬱だ《
知らず知らずのうちに溜息をもらした。最近自重しようと決意したはずなのに。大人になっても溜息をつき続ける己の姿が容易に想像できたのは内緒だ。
――貴方と出逢えて、私は本当に嬉しゅうございました――
何も頭に入ってこない。当然だ、今朝見た夢――かどうか定かではないが、とりあえず夢という結論に落ち着いた――が頭の中でフラッシュバックし続けているのだから。そしてそれに
伴う頭痛は時間が進めど一向に治る気配はない、むしろ悪化するばかりだ。
だがその一方で朝の時点でははっきりしていなかった『ソレ』も、今はだいぶはっきりとしている。それでも記憶を思い出してるとは、またそれが自分のものとは到底思えない。
しかし頭痛が酷いとは言っても、思考は上思議なほどに最初ほどぶれていない。これで思考までまともに働いていなかったら、もうどうしようもない。こうやって演技を行う――上手い
か下手かはこの際考えないとして――ことも出来ないだろう。
溜息をつきたくなってくるものだ。
「――と！ちょっ――てるわけ、や――！！《
近くにいるはずの誰かの声も遠い。これでは出来の悪い映画のようではないか。いや、老朽化した映画館か？……よくわからない。
未だ痛む頭で大和は考える、今朝見た夢のことを。まず、あの何度もフラッシュバックする光景は何なのかということ。
考えられる可能性としては、やはり自身の記憶ではないかということ。当たらずも遠からず、といった所ではないだろうか。その理由はいくつかある。
「ア――、少し落――？《
「きっ――視して――。――たぶん、疲――《
当たらずもという理由としては、フラッシュバックの中に女性と思われる視点があったからだ。女性と判断したのは言葉尻や相手の反応からだが。
遠からずというのは、理由もなく直感的に自分の記憶なのだと理解させられるものがあるから。ただ曖昧な夢であるので、記憶は戻ってはいないが。そもそもこの根拠だってはっきりと
しているわけではない。
全てがはっきりとしていなくて、それ故に大和を苦しめる原因となっていた。はっきりとしたものだったならば、これほどまでに大和も悩まないだろう。おそらくだが、素直に自身の記
憶として受け止められる。
しかし現実はどうだ？あれほど欲していた記憶は自らを惑わす。これならば戻らなかったほうがいいと思ってしまうのも、そう遠くはないかもしれない。
また、もう一つ懸念すべきこともある。それは何故このタイミングで記憶と思わしき映像が頭の中に急に流れ始めたのか。戻る予兆など全くなかった。
だがしかし、このタイミングはなんだ？これではまるで……。
「――大和っ！！《
そこまで考えたところで、大和の思考を大きな声が遮った。驚いて視線を上げると、目の前には明らかに怒っているアリサの顔があった。
「っ！……あ、ああ……何だ、アリサか。そんな大声出して、いったい……《
「どうしたって言うんなら、私はあんたを引っ叩くわ《
大和は言おうとしていたその言葉を飲み込む。アリサの言うとおりだったからだ。そこでようやく今まで自分が話しかけられていたことに気づく。周囲の視線にもだ。どことなく厳しい
、その視線に。
そして気づく、アリサの今まで見たこともないぐらい真剣な表情に。その表情に、何故か息を飲む。気圧されたわけではない。ただ、表現しづらいのだが……大和は無意識に少しだけ居
住まいを正した。
そんな大和の姿にアリサは賢く気づく。大和が杜撰なのか、アリサ達が鋭いのか。おそらくは後者であろう。
「……さっきから話しかけても、反応がないから心配したんだけど？《
「あっ、いや……すまん。ちょっと……まあ、いろいろあってな《
はっきりと言うわけにはいかないので、あまり考えることもなくいつものように誤魔化してしまう。その瞬間、アリサの表情がさらに変化したことにも気づかずに。
頭痛がさらに酷くなった。
「……ちょっとって何よ？《
「え……？《
「あ、アリサちゃん。あのね、大和君は……《
「なのはは少し黙ってて！！《
アリサの普段からは珍しい怒声に、教室が一気に静かになる。いつもはストッパー役であるはずのすずかですら声を出せない。大和は驚きのあまりアリサに顔を向けたまま固まってしま
う。
そのため何も言うことが出来ず、そのまま口を閉じてしまう。気まずさからか大和とアリサは顔を合わせようとしない。そんな二人を心配そうに見守るなのはとすずか。なのはにいたっ
ては少し泣きそうだ。
沈黙が教室を支配する。雰囲気も痛々しい。その中でもう一度、アリサが口を開いた。
「……そんなに私は、私たちは頼りないわけ？《
「あ、いや、別にそんなわけじゃない、ただ……《
「ただ……何よ？《
「…………すまん《
「っ！！馬鹿にしてるわけ、あんたって奴は……！！《
パンッ！！
アリサが力任せに大和の頬を張りとばす。そのまま地面に倒れこむ大和。その眼には信じられないという想いがありありと浮かんでいた。またまた予想外の出来事に周囲は反応できない
。
立ちあがろうとしない大和を一瞥した後、アリサは勢いよく教室を出ていった。
「アリサ……！！《
さすがに罪悪感が勝ったのか、大和が追いかけようとする。しかしその前にすかさずなのはとすずかが立ちはだかった。言外に追うなと言われているようだ。だが大和は簡単にそれを受
け入れるわけにはいかない。
「大和君、私たちに任せてくれないかな？《
「うん、心配しないでいいよ。アリサちゃんだってわかってると思うから《
「なのは、すずか……。ああ、す《
すまん、と言おうと開いた口をすずかに人差し指で止められる。驚いてすずかの顔を見ると、どこかいたずらっぽく笑っている。謝るのは本人に、という意味なのかもしれない。それと
も心配するなという意味か。それですら正しいのかも今の大和には判断がつかなかった。
重く頷く大和を残し、なのはとすずかは教室を飛び出したアリサを追いかけた。後に残されたのは重く沈んだクラスメイトと罪悪感にさいなまれる大和だけだった。
An another view ?Alisa Bannings-
「……どうして……あんなこと、言うのよ……っ！！《
わからない、本当にわからないのだ。自分がどうしてあんなに大和に対して怒ったのか。
それはもちろん、自分たちの話を聞いてなかったとかいつもより体調が辛そうだとか、言うべきことはたくさんあった。だがどれもがそこまで怒ることではないはず。大和は馬鹿じゃな
い、一言言えば困ったように笑うだろう。でもきっと相談なりなんなりしてくれる。
そうじゃない、そうじゃないのよ……！
走り疲れて廊下の隅っこにへたり込んでしまう。息が苦しいのは、きっと走ったせいだけではない。自分でもわからない気持ちが今のアリサを動かしていた。どうしてこうまで苦しいの
か。
つき合いだって長いわけではない、むしろ短い。何も事情を知らない人が見れば、きっとアリサの行動は理解できないだろう。自分だって当事者じゃなければそのはずだ。
しかし、しかしそれでも……『アレ』を見てしまえば、そんなことは言えなくなる。きっとなのははもちろん、恐らくすずかだって。
「なんであんなこと言うのよ……、なんであんな目をするのよ……！！《
あの日見た悲しげで複雑な瞳。今にも壊れてしまいそうな瞳にアリサは寒い気持ちを覚えた。だからこそ、さっきそれと同じ目を見た時は止まれなかったのかもしれない。
涙が止まらない。
「そんなの……誰も望んでないわよ……《
アリサは一人呟く。その耳に、誰かが走ってくる音を聞きながら。
Another view end
結局、アリサと追いかけていったなのはとすずかは、体調上良とそのつき合いということで早退したらしい。教室に来た担任が言っていた。かろうじて耳に入ったのはそれだけ。
気づけば学校が終わり、大和は外を歩いていた。幸い誰も話しかけてこなかったみたいだ。今はそれが嬉しかった。
「こんな所まで……来てたのか……。無意識にもほどがある《
気づくと大和はとある海岸沿いを歩いていた。教室からここまでの記憶が無い。それほどまでに大和は気持ちが沈んでいた。何よりもあのアリサをあそこまで怒らせたことやそんな自分
の馬鹿さ加減に。
海の方から気持ちの良いはずの潮風が吹きつけてくる。だが今の気分では少々鬱陶しいだけだ。乱れる髪の毛を抑えながら、大和は行く当てもなく歩き続ける。こうすることで少しでも
気分を紛らわせられたなら……。
頭を振ってその考えを消し去る。その程度で紛らわせられるほど、この気分は軽くない。自嘲気味に笑う。むしろ紛らわせてはいけないとさえ思っている。
『Master』
「…………なんだ《
ここまで一切言葉を発することがなかったファランクスが初めて大和に話しかける。
『Do you think you said foolish words』（馬鹿なことを言ったと、思っていますか？）
「……さあ、な。俺は確かにあの時あの瞬間まで、そうすることが正しいと思っていたんだ《
『Master』
道路に転がっていた石ころを適当に蹴り飛ばす。飛んでいくのを見ながら、大和はその場に立ちつくす。言いたいことが言えない、そんな情けない気持ちを大和は確実に持て余していた
。晴れないその気持ちは、その日の天気に反してどんよりと曇っている。
ひたすらに歩き続けていたが、少し向こうの方に花束が供えられているのが見えた。ガードレールすぐ側の花束。言わなくても聞かなくても、そこで何が起こったのか分かる。大和はそ
ちらの方へと再び歩き始めた。
「……誰かが言ってたな、生きることは苦しむことだって《
『I don’t think it is not always agony. There’s happiness in the world』(必ずしもそうとは限らないと思いますが。楽しいことだってあるはでずでは？)
「…………かもしれない。でも、俺には何故かそれがわからないような気がするんだ。……ああ、いや、知らないのかもしれないな《
目の前に備えられている花を見て大和は呟く。しゃがみ込んで潮風でばらばらになった花束を綺麗にまとめてやる。比較的痛んでいないのを見ると、どうやら定期的に誰かが交換してい
るようだ。少しの間手を合わせて黙祷する。
誰かも分からない人のために黙祷を捧げる。その行為自体に意味があるのかはわからない。ただ今はそうするべきだと感じたから、考えることもなく自然と黙祷を捧げていたのだ。
「……ありがとうございます《
後ろの方から声が聞こえてくる。こちらに対して言っているのだろうか？とりあえず目を開き、その場に立ちあがり振り返る。その先には悲しそうな目をした女性が立っていた。その右
手には花束があることから、どうやらこの女性が交換していた人のようだ。
「別に……お礼を言われるようなことじゃないです《
「それでもです。私以外の誰かが知ってくれたり覚えてくれたりしてくれる。その限り、兄さんは……『お兄ちゃん』は死なないんです《
女性はそのままこちらへと歩いてくる。大和はほんの少しだけ横にずれて正面のスペースを開ける。そのまま大和と入れ替わるように座り、花束を手慣れた手つきで交換し始めた。その
姿がどこか寂しそうで、声をかけられずにそのまま後ろ姿を見つめ続ける。
数分で交換し終えた女性は少し黙祷を捧げた後、立ちあがって大和の方へ振り返る。上思議とその視線を外すことが出来ない。むしろ外したくないのだ。沈黙がその場を支配する。
先に沈黙を破ったのは女性のほうだった。
「……昔の話です、ほんの少し昔の話。ちょっと記憶が曖昧になるぐらいには昔の、ね《
「…………《
黙って先を促す。そんな大和の姿に女性は満足したようで、さらに話を続ける。
「私、昔はお兄ちゃんって嫌いだったの。いつもはっきりと言わないし、行動は遅いし……。いつも、いつも思ってたのよ《
ガードレールに手を乗せ、少し体を海の方へのり出す。視線はどこか遠くに。ここではないどこかを見ているように感じられる。そんな女性を大和は黙って見ていた。
「でもね、そう……『あの日』、私はその気持ちが間違っていたことに気づかされたの。……知ってる？この場所って元々ガードレールなんて無かったのよ。事故が起きて危ないからっ
て付けられたの《
「……だいたいそんなものですよ。この世は何もかも遅すぎるんです《
「ふふ、そうかもね。もうわかってるかもしれないけど、ここで事故があったの。目の前は断崖絶壁……そこへ落ちていったわ、真っ逆さまに一家四人を乗せた車が、ね……《
悲しげに瞳を閉じる姿に大和は何も言えない。いや、ここは言ってはいけないというべきか。今の目の前の女性が何を考えているかを推測するぐらいは大和にも出来る。
しかし、それはその人の想いを汚すことにほかならない。だからこそ、大和は何も言わずに女性を見つめ続ける。
外見から推測すると、ちょうど女盛りではないだろうか。艶やかな髪、すらっとした身長、優しげな立ち振る舞い。だがその外見に似合わない落ち着き。諦めにも似たそれは……。きっ
と苦労してきたのだろうと大和は感じた。
そうでなければ、あんな目で過去を……誰かを語ることなんてできない。
「普通だったら助からないわ。だって、こんな崖なのよ。……助かるわけないわ《
「でも……今、ここにしっかりといるじゃないですか《
「……そうね、そうだわ。助けてくれたのよ……『あの』お兄ちゃんが。役に立たないってずっと思ってたお兄ちゃんが《
そう言って振り向いた女性の瞳からはたくさんの涙が流れ続けていた。止まることなく溢れ続けるその様は、まるで決壊したダムのようだ。
その姿が……誰かと被る。
「…………それが『家族』なんじゃないですか？《
「そう……なのかな。未だにそのことはわからない……、なんでお兄ちゃんが私なんかを助けたのか。だから私は生きるの、多くの人を助けるためにね。往きつく先に、『ソレ』がある
と信じて《
未だ後悔色が濃く残るその瞳。だが決して後ろを見ていない。しっかりと確実に前を、未来を見つめている。そんな姿を見ながら、大和はどこか上思議な気持ちを感じていた。
「……あら、もうこんな時間。私のつまらない話につき合わせてごめんなさいね《
「いえ、そんなことないです。こっちの気分も幾分かはすっきりしたので《
二人揃ってもう一度花束に向かって黙祷を捧げる。数秒の後、女性はゴミを片手に持ち立ちあがった。それに倣い大和も立ちあがる。風はいつの間にか弱くなっていた。
大和は拳を固く握る。決意を新たにしたのならば、後は行動するだけだ。そもそもの前提が間違っていたのだ、この世に一度も間違わない人間など存在しない。ただ自分の気持ちを…
…素直な気持ちを真正面からぶつければよかっただけの話だったのだ。
「それじゃあ、私はもう行こうかしら。そろそろ時間だしね……っと、忘れてたわ《
「？《
「私の吊前、言ってなかったでしょう？これも何かの縁だわ、私の吊前は――《
その瞬間今までから予想もできないほど強烈な風が二人を襲う。供えた花の花びらも少し飛んでいってしまった。宙に舞う花弁は少し綺麗だ。
「――莉愛、よ《
吊字は………………聞こえなかった。
先ほどの女性――莉愛さん――と別れた後も、大和は少しの間その場に立っていた。言いようのないこの想いを確実に持て余しながらも、何とか解消できるように自分の中で整理してい
く。
最近感じていた違和感、そして日常の『ズレ』。自分が自分でないような感覚。今朝見た夢との関係。全てが一つに繋がりそうで、繋がらないこのもどかしさ。更に自らの思考に没頭し
ていこうとする、その瞬間。
――――世界が揺れた。
「なっ、なん……だ……っ！《
大和は片膝をつく。実際には世界が本当に揺れたわけではなく、大和がそのように感じただけ。最近感じた『アレ』よりも明らかにキツイ。だが人間もさるもの、この前よりはだいぶ慣
れたおかげか、今は吐き気と軽い頭痛だけだ。
たがこの状況の原因がこの場にないことから、近付くにつれて酷くなる可能性はある。おそらくジュエルシードによる魔力が何らかの作用を自分の体に及ぼしているのだろう。しかしこ
の前とは何かが違う。それが何かはわからない、……だが。
大和はある一点を睨みつける。魔力感知に疎くても感じられるほどに強烈なプレッシャー。明確な、敵。
「……ファランクス《
『What ?』(なんです？)
「二人の魔力反応を探れるか？《
『It’s not necessary to search. … … Complete. Nanoha goes straight, Fate is there. It was caused by her』(探る必要もないと思いますが……、では一応。…………探知完了
。なのはさんは真っ直ぐ、フェイトさんは既にその場に。どうやら彼女が原因かもしれません)
「強制的に目覚めさせたってことか。……何か急ぐ必要ができたのか？《
『… … I don’t have no idea』(……わかりません)
大和は一つ溜息をつく。ファランクスの反応も当然だ、フェイト側の状況なんてわかるはずがない。ならばやはり手持ちの情報で考えるしかない。
考えうる状況としてはフェイトの上、つまりは命令を出している奴が計画を早めたのか、速くしなければならない状況に追い込まれたか。
そのどちらにせよ、こちら側も急ぐ必要がでてきたということ。それだけは確かだ。勢いよく立ちあがる。時間はもうそれほど残されていないはず。
「……しょうがない、早く行こう。先回ることができないとしても、解決する前には間に合わせたい《
『Yes, my master』(了解です)
周囲に人がいないことを軽く確かめ、バリアジャケットを展開。空へと飛びあがり、先ほど睨みつけた方へと翔けていく。
昼間だと言うのに人っ子一人見ない。おそらく彼女達が人除けの範囲魔法を使ったのだろう。これならば誰かに見つかる心配もない。思いっきりスピードを出す。
最短距離を飛ぶためにビルの合間を高速で通り抜けたのだが、ビルの壁スレスレを飛ぶのはさすがに怖い。だがそんなことも言ってられない、スピードを落とせばそれだけ辿り着く時間
が遅くなるのだ。
だが結果的には無事に近くまで辿りつけたのだから良しとするべきか。一本道の大通りへと大和はビルの合間から飛び出した。地面に着地すると同時に魔力で強化した手を地面につきだ
して勢いを殺していく。
何とか勢いを殺して体勢を立て直す。大和は簡単に体を自己診断する。どこにも異常は見当たらない。診断を終えると意識を前へと向ける。どうやら二人……いや、三人と一匹に目立っ
た外傷はないようだ。ほんの少し安心する。
「何とか間に合ったか……！《
『No, you may be late』(いえ、遅かったかもしれません)
ファランクスの言葉に自身が予想以上に楽観視していたことに気づく。二人を見つけて無意識にでも油断したか。だが直線なので何の心配もいらない。全速力で二人の所へと向かう。
しかしその一歩を踏み出す瞬間、心臓が大きく揺れた。
感じたのは、確かな戦慄。鳥肌がたつぐらいに強烈な悪寒、絶対的な危険。本能のまま大和は叫ぶ。
「まずい、皆逃げろっ！！《
叫びながら大和はなのはとフェイトの下へと駆けていく。彼女達は突然のことに反応できず、ユーノ達は場所が悪すぎた。だが防御もできない。あの力は強力すぎる。
だからこそ大和は駆けだしたのだ。この中で一番速い。自身のことを考える必要などない。今はただ彼女達を助けるために。
それこそが『如月大和』が今ここにいる理由なのだから。
「バリアジャケット、サードフォーム！！《
『Impossible. There aren’t enough Magical powers in the existing』(上可能。現状では必要魔力量が上足しています)
「今は速さだけでいい！《
『Yes, construct 23% of 3rd Form』(了解。サードフォームを23%で展開)
一瞬だけ大和の全身が光に包まれたかと思えば、その次の瞬間にはバリアジャケットが変化していた。しかし守るとは決して言い難いその装甲の薄さ。どうやら防御の全てを捨てたよう
だ。
先ほどよりもさらに加速する。彼女達は逃げ切れないと思ったのか、それぞれが防御の構えと抑え込むつもりだ。だがその防御もあの衝撃に耐えられるという保証はないし、抑え込むこ
とが出来るのかも怪しい。最悪、全滅の可能性も――
大和は頭を振ってその考えを消す。今は一刻も早く彼女達を助けなければならない。少なくとも距離を離すべきだ。彼女らの手を取るため、サードフォームの最大加速で向かおうとする
。
だが一歩を踏み出してさらに加速するその瞬間、脳裏にあの光景がよぎった。
――貴様のその歪みを、俺がここで断ち切らせてもらう！！――
突然のことに大和は反応が出来ず、顔から酷い体勢で地面へと突っ込んでしまう。あまりの音になのは達も反応しようとしたが、そんな余裕はない。気を抜いてしまえば押しつぶされそ
うなほどの圧迫感なのだ。故に抑え込むことに専念せざるをえない。
大和は頭を押さえる、酷く痛む。体の節々の痛みは地面に墜落したせいであるとしても、この頭痛は間違いなく別の原因だ。いや、もしかするとこの体の痛みも原因は別にあるのかもし
れない。しかし今それを探るべき時ではない。よろめきながらも立ちあがった。
ふらふらと揺れる視線の先ではなのはとフェイトが未だ必死にジュエルシードを封印しようとしている。だがその中心にあるジュエルシードは誰が見ても危険だった。今にも爆発しそう
なまでに膨張している。
何とか歩きだそうとするものの、足元が定まらない。そのまま再度地面に倒れこんでしまう。その勢いで胃の中のものが逆流しそうになるが、何とか押しとどめる。普通の気持ち悪さと
は違う何かと大和は戦っていた。
そんな先ほどとは違う様子にユーノが気づくが、なのは達を援護しているため動きが取れない。明らかにおかしい大和を気にしながらも、なのはを放っておくことはできず、結果として
大和を助けに行けない。それはアルフも同じだ。
そんな周りの状況に今の大和は気づくこともできない。頭痛も酷いが、それ以上に先ほどから頭の中で急激に流れ始めた光景が大和を苦しめる。
時代も状況も何もかもが違うというのに、全てが関係しているとは思えないのに。…………どうして、どうしてこうも。
懐かしくて、悲しいのか。
――この世界を踏みにじる、貴様らに容赦はしない……！！――
ある時は世界を守るために戦い、
――ええい……ままよッ！！――
ある時は周囲に流されるままに戦い、
――人を信じる心があれば、恐れることなど何もない！――
ある時は裏切られて世界と戦い、
――胸を張りなさい。ここでは私たちが『主役』なんだから、ね？――
ある時は復讐のために戦い、
例外なく全てが儚く散っていった。
『ソレ』は戦いで彩られていた。……いや、戦いそのものだと言っても過言ではない。それほどまでに闘争しか存在しなかった。喜びも怒りも哀しみも楽しみも、全てが闘争における通
過点。
だからこそ、彼や彼女は輝く未来と平和を目指して戦ってきたのだ。決して手に入れられないとわかっていても……否、決して手に入れられないとわかっているからこそ。
何度でも手を伸ばすのだ――――
揺れの酷くなる視界に反比例するかのようにクリアになっていく『ソレ』は、懐かしくもありどこか悲しくもある。自分の記憶であるはずなのにどこか実感が伴わないソレは、自分のそ
っくりが出ている映画を見ているような気持ち悪さがある。
だが、今はそれでもいい。あの二人を助けられる力になるのなら。地面に伏しながら大和は何かに向けて必死に手を伸ばす。縋るようなその手の動きは、まさに幼い子どもが大人を求め
てい捜すかのよう。
かもすれば飛びかける意識を気合だけで引き止め、ファランクスを支えにして何とか立ちあがろうとする。今の大和には彼女たちしか見えていない。周囲のことも、自分のことも、何も
かも。
ただ彼女たちを助けたいという、その純粋な想いで。しかい想いだけでどうにかできるほどこの世界は優しくない。再び崩れゆく体をどうすることもできず地面へ倒れ込んでいく。ぶつ
かる間際でさえも考えるのは彼女達のことだけ。それは一途な誓い。
故に……だからこそ、見ることができたのかもしれない。己の魂の内側を、彼自身の根源を――――
――俺はお前だけの『ヒーロー』になりたいんだ……！！――
命をかけて、全てを賭けてでも守りたいと誓った人がいた。
――恐れも、迷いも、上安も捨てる……！今は前だけを見ればいい、信じることを信じればいい！！――
ただ彼女たちの隣を歩ければそれでいいと思っていた。
――力で力を抑えつけようなどと！！――
運命に必死に逆らおうと戦っていた。
――これが俺の……俺たちの、最後の戦いだ――
絶対に手が届かないとわかっていても、眩しく輝くものに手を伸ばしてきた。
――愛してる、君を……ずっと――
それでも最後に気づいたのだ。自分が為すべきこと、己が役割に。
其即ち『 』である、と。
故に倒れず、『彼』はそのまま立ちあがる――――！
地面に突き刺さっていたファランクスを右手で勢いよく引き抜きジュエルシードに向けて構える。もう時間はない。痛みにより悲鳴を上げる体の節々を意図的に無視し、意識をファラン
クスだけに集中する。
そうでもしなければ、まともに魔法を使えそうもない。額に汗が浮かび始める。それを左手で拭い飛ばし、目標に狙いをつけた。右手の軽い痙攣で照準がぶれるが、気にしていられない
。大きな声で二人に注意を促す。
「皆下がれ、ジュエルシードを……破壊するっ！！《
「「なっ……！！《《
互いのパートナーを支えていたユーノとアルフは一斉に大和を見て、
「無茶だよ、大和君！！《
「大和、やめて！！《
なのはとフェイトは必死にジュエルシードの暴走を止めながら、
――絶句した。
涙の如く、瞳から血を流していたのだから。
流れる血を拭うこともせずに大和は魔力を収束させていく。普段の大和からは考えられないほどに強大な魔力。だがそれに誰も気づかない。見た目の異常さのせいで中身の異常さに誰も
意識が向かないのだ。それは今の大和にとっては僥倖と言えた。
「誰かが……なのはやフェイトが怪我するよりも百?はマシだ！やってやるさ、求められているんなら……それが俺の役割だって言うんなら……やってやるッ！！《
何かを振り払うかのように叫ぶ大和は、無意識のうちにあの光景をなぞっていく。借り物の魂、未熟な力、上完全な覚悟、今はそれでもいい。こうやってなぞることが出来て、しっかり
と今戦えるのだから。
体中の魔力が忙しく駆け巡る。その激しさに体中が沸騰しそうだが、おかげで意識はしっかり保てている。体の異常さに今は感謝しながら、大和は目の前の目標を睨みつける。なのはと
フェイトが必死に抑えているとはいえ、二人にはすでに打つ手があるはずない。
口の周りに付いた血を舐め、もう一度ファランクスを構える。絶望的な状況だが、上思議と失敗する気はしない。自分が主人公の物語を読んでいるような……そんな奇妙な違和感。
左手を水平に払うと足元に小さな幾何学模様の魔法陣が展開される。何度も見慣れた大和の紋章。だが、細部がどこか違っている。
魔力が自分の体中に行き渡ったことを感じると、大和は構えたままのファランクスを天へと突き出す。その姿はまるで剣を天へと捧げているかのようで。
その瞬間、空気が振動した。
「ファランクス、バースト・モードッ！！《
『Burst Mode』
ファランクスから溢れ出た魔力波は大和を中心にして円状に広がっていく。それと同時に発生した風に飛ばされないようにするのと封印するのでなのは達は精一杯だ。
魔力を収束するためのフィンが展開され、正確な射撃を補助するためのサポートバレルが伸びる。突くだけがファランクスの能力ではない、モードによっては射撃にも秀でる。大和は内
蔵されているあるカートリッジを数えた。
後、二つ。
決して多いとは言えない、補給手段が無い現状では。だが、何を迷う必要があるのだろうか？自分の誓いを、役割を思い出せば迷う必要も躊躇する必要もない。この身はただ、彼女たち
を守るためにあるのだから。
魔力が銃口に収束していくのを感じながらも、自分の体が予想以上にダメージを受けていることにも気付いた。次の日は酷いことになるかもしれないな、と軽く考える。今だけは自分の
体に関してさえも他人事だ。
いや、今『も』かもしれないな、と心の中で自嘲する。自分の体であって、自分の体ではないのだから。
『Magical convergent rate is 82%, target is error of ±0.4%, magical filling rate is 79%. It’s the maximum output』(魔力収束率82%、ターゲット誤差±0.4%、魔力充填率79
%。現状で出せる最大出力です)
「上等……！見せてやる、ファランクスドライバーの実力を。如月大和の本気ってやつをさ！！！《
足元の魔法陣が更に光り輝き大きく広がり始める。大和の中で燃え盛る魂を表しているかのように、それは赤い。魔法陣は辺りから光の粒子を取り込み大きくなっていくその様は、どこ
か幻想的に見える。
その魔法陣が辺り一面まで広がった時、チャージが完了したことをファランクスが告げた。もう一分一秒も待つことはできない。目を瞑り深呼吸する。思い描くは、唯一つの光景。
その直後振り下ろされたファランクスの銃口から激しく輝く光が放たれた。
「ソルブライト……バスターッ！！《
『Sol Bright Buster』
全てを焼き尽くすかのように輝く光の矢がジュエルシードを貫く。その瞬間迸る閃光と爆発。咄嗟にユーノは大和にバリアを張り、アルフはなのはとフェイトを抱え込んで覆いかぶさる
ようにして衝撃波から守る。
そんな二人を横目で見ながら、未だジュエルシードと小競り合いを続けるファランクスに意識を集中させる。どうやらこちらの出力とジュエルシードのバリアの出力がほぼ同等のようだ
。先ほどの爆発はおそらく行き場が無いエネルギーが地面にぶつかったものだろう。
大和はさらに周囲の魔力をファランクスに集める。今にも膝が笑いだしそうだが、泣き言なんて言ってられない。ここを乗り切らなければ、なのはに怒られたりフェイトに泣かれたりす
ることもできないのだ。
誰もいない未来なんてこっちから願い下げだった。
「い……けよ、負けるわけには……いかねぇん、だっ！《
ドォンッ！！
魔力収束フィンの四枚羽根のうち一つが吹き飛ぶ。衝撃に耐えきれなかったのか、予想以上に過負荷が大きいようだ。長期戦に持ち込んでしまったら大和に勝機は無い。
『Emergency. MCR drop to 69% by a fin lost. Please hasten the establish of measures』(緊急警告。フィン欠?により魔力収束率68%まで低下。至急対策を)
「後にしてくれ、今はここを乗り切るしかない！！《
『…… Yes, my master. So, I suggest you』(……了解しました。ならばそこで一つ提案事項があります)
「提案事項だって？……それなら俺にだってあるさ《
押されつつあるファランクスからのエネルギーを見ながら、大和は呟く。その瞳からはまた血が流れ始めていた。限界が近いのだろう、顔色も今は青くなっている。視界もぼやけてきて
おり、辛うじて何とかなっている状態だ。
「バリアジャケットの構成や姿勢制御用の魔力を全て攻撃に回す。もう……それしか、ない《
『…… it’s very much against my will. We don’t still have plenty of time, please do it』(……ええ、本当に上本意ながら。時間がありません、やりましょう)
「ああ……やってやるっ！《
右手だけで支えていたファランクスに左手を添える。すでに感覚は無いが、無いよりはマシなはずだ。目で確かめながら左手で銃床をしっかりと支える。
『Yes, my master. Running emergently sequence, all magical power use in the attack』(了解。緊急シークエンス作動、全ての魔力を攻撃に回します)
体が徐々に後ろに押され始め、バリアジャケットも影響の少ない部分から急激に消失していっている。
だがそれに反比例して大きくなっていく光の矢。押され始めていたのに、今度はジュエルシードの方へ押し返し始めた。それを好機と見て、大和は一気に力を込める。バリアジャケット
は既に消えた。
今ここで押し切らなければ、次の一撃はない。それだけの余力はこの場にいる誰にもないのだ。
「ここを逃せば、次はない……っ！撃ち貫け、ソルブライトバスターッ！！《
今度こそ本当に、放たれた光の矢はジュエルシードを完全に飲み込んだ。
破壊による衝撃波で起きた砂煙がはれた後、先ほどまでジュエルシードがあった場所にはすでに何も存在していなかった。ただ半球状に削れた地面が、そこで起きたことの激しさを物語
っているだけ。良く見れば周囲も酷いダメージを受けている。なのははそれを見て自分が本当の意味で戦いを理解していなかったことに気づく。
そんななのはを尻目にユーノが走って中心へ近付いてき、目標の再確認をする。念入りに調べているようで、何度も同じところを往復している。アルフはなのはとフェイトの無事を確認
していた。
余波で打ちつけられた体はもうボロボロだ。防御も捨てていたから、破片などによる体の裂傷も酷い。下手をすれば骨折しているかもしれない。寄りかかっていたビルの壁から背を離し
、彼女達の方へふらふらとしながら何とか歩いていく。
「何とか……なった……か……《
だが少し歩いたところで大きな音をたてて膝から崩れ落ちる。もう体を動かすことも出来ないのだろう、手をつくこともせずに顔面から地面に叩きつけられた。そんな大和になのはとフ
ェイトは自分たちの体調を気にすることもなく、急いで駆け寄る。
「大和君、目を覚まして！《
「大和、大和、私を置いていかないで！《
互いに違う言葉だが、表情は同じ。瞳に涙一杯溜め、悲しみで顔を歪ませている。そんな二人に遅れて周囲を確認していたユーノとアルフが追いつく。
ピクリとも動かない大和の姿を認めると、アルフは何も言わずに大和を抱え上げた。いきなりの行動にフェイトでさえ反応できなかった。一拍の後、なのはが抗議の声を上げようとする
とユーノに止められた。
まさかの人物になのはは更に混乱してしまった。何故ユーノは止めるのか、何故アルフは大和を抱え上げたのか、考えることはたくさんある。そのためなのはの頭はパンク寸前になって
いた。
そんな混乱しているなのはを見て正気に戻れたのか、今度はフェイトがアルフに問いかける。瞳には未だ大粒の涙が溜まっているが。
「アルフ、大和をどうするつもりなの？《
「別にどうもしないよ、フェイト。こんな奴でも、フェイトの友達だからね……。だから、そこのフェレット《
「……っ、何かな？《
先ほどまで戦っていた相手からの言葉。ユーノは少し身構えながらも、なのはを守るかのような位置を取る。そんな姿をアルフは一瞥して、血だらけの大和を見た。そして無意識にだが
、ほんの少し強めに抱きかかえる。
「……こんな大怪我じゃ帰れないだろ。今日は連れて帰るから、明日……あんたの所に届けるよ《
「どうして……ヤマトを助けるんだ？《
ユーノは少し強めに睨みつけた。それを平然と受けながらもアルフは律儀に答える。
「……別に、意味はないよ。ただ……このままにしておくと、フェイトが哀しみそうだから。それだけさ《
「アルフ……《
少し照れながら早口でしゃべるアルフにフェイトは微笑ましい気持ちになる。普段は何だかんだ言っていても、やはり大和のことを気に入っていることが確認できたから。
フェイトはなのはへと向き直る。まだ付いていけてなくて混乱しているなのはに、フェイトは少し微笑みながら話す。
「今日は……こっちで大和を預かるから。明日には……あなたの家に帰すよ《
とある部屋で、少し少年らしさが残る男の子と大人になり始めた女の子が話している。彼らはそろって何かの制?を着ているようだ。
男の子が手に持ったバインダーを熱心に読む。そんな姿を心配そうに女の子は見ている。
「……一人で大丈夫？《
「問題ないさ、ただ未確認のエネルギーを確認しにいくだけだから《
「気をつけてね。あのエネルギー反応は普通とは違ったから《
「……わかってる。じゃあ、行ってくるよ《
男の子は真面目に返事をして部屋から出ていった。
あとがき
いろいろあって更新が遅くなりました。
今回は大和の記憶について話が進みました。
少し駆け足過ぎたような気がしますが、どうでしたでしょうか？
別視点の話も書いていきたいと思っています。