『ジョジョの奇妙な冒険外伝 SNOW MEMORYS
第21話 硬さの恐怖A』





--------------------------------------------------------------------------------------------




2人は追う。二人に襲いかかってきた敵をだ。
逃げた方向は人通りの多い所だ。
逃げこまれたら厄介極まりない。

「それにしても……舞も使えたんだね」
「……自覚が出来たのは最近だけど……」

2人は内心驚いていた。
まぁ、自分しか無いと思いこんでいたため、打ち明ける必要が無くて良かったかもしれない。

「……佐祐理、急ごう」
「うん。急ごう」

2人は謎の男を追跡する。


「まさか……本当に2人ともスタンド使いだったとは……しかし、任務は遂行する」

男……工藤彰人はボスに心酔している。
自身の優先順位において間違い無く1位なのだ。この男にとっては。

「……どんなコトが……起きようとも」

その目の色を見れば、間違い無くこう言うだろう

――――それは狂気の眼だと……


場所は変わって、久瀬の居候先である斎藤のマンション

「そういえば。先程の電話で確信したのだが」
「なんだ?」
「もうバレている」

久瀬は断言した。その意味はこの中にいた全員が把握した。
誤魔化す必要がない。それだけを……なんの虚飾もなくそう伝えた。

「……それで?」

斎藤の疑問の声。いや、おそらく確認だろう。

「だいたい何を聞きたいかは分かっている。そうだな。現在、倉田さんと川澄さんは襲われているだろう」
「なぜ?話しによるとまだ2日後のはず……」
「……だからバレたと言ったはずだ」

渚の質問にそう返した。

「……油断……させるためね」
「油断?」
「手出しさせないためよ。この前、荒神たちを始末しに行ったときから、怪しんでいたんじゃないのかしら?」
「……そうだな」
「そのために手出しさせないために時間について嘘を教えた。それにあっさりと引っ掛かってしまった。
どう、久瀬?」
「その通りだ……」

久瀬は明らかに落ち込んでいる。

「責めてはいないの。だけど、問題はこれからどうするかよ」
「月宮さんたちは相沢たちが警戒すると踏んだから見過ごしていたからな。助けにいくのか?」
「……行きたいところだが……行けないだろうな」
「なんでだ?」
「正直な話し……僕は川澄さんに嫌われている」
「そりゃそうだろう……なに?それでいけないわけ?」
「……考えてみろ。川澄さんはああ見えて繊細だ。
僕が行くことで余計なプレッシャーを与えてしまうかもしれない。
そんなことになればやられてしまうかもしれない」

そこで、言葉をきる。

「……そのことが原因で倉田さんもおそらく戦闘不能になる。その時点でお終い。とこういうことか?」
「その通り」

斎藤は唸った。それでも助けに行ったほうがいいのではないかと。

「さらに言えば……相手が悪い」
「……その口振りからすると、相当ヤバイやつが行ったのか!?」
「そうだ……ちなみに誰だ?」
「まずは自分で考えろ」
「そうだな……雹か?」
「それは月宮さんだ」
「……あの男もとんでもない人選をしたもんだな。じゃ、霧絵か?」
「違う。ある意味その2人よりヤバイ奴だからな」
「……マジですか?」

何故か、答えるより首肯した。 

「はっきりと言おう。工藤だ」
「工藤?……ってあの狂人か!!?」

悲鳴……というか絶叫か?斎藤があげた。

「……どうした?そんなにヤバイか?確かに雰囲気はアブない奴だけど」

雇われていた男である、雨水将が質問をする。確かに、雇われて日が浅いためそこらへんの事情を知らない。

「そうだな……本名、工藤彰人。スタンド、スウィートボーイ。スタンド能力から判断すると強敵だ。
オレが知っている中では、パワーなら最強だろう」
「しかし、スタンドはパワーだけで決まるものではないはずだ」
「勿論だ。奴のパワーは確かにスゴイ。だが、それだけで狂人と言う異名は取れない。
それに+αがあるのさ」

そう説明すると、斎藤は果物の中からリンゴと教科書を手に取った。
しかし、教科書をそこらへんに置いてあることから、勉強をしてない事がよくわかる。
斎藤は、将に少し離れた所にリンゴを置いた。そして、その前に教科書で阻んだ。

「例えば……ここに、倉田さんがいるとする。しかし、ここに壁がある。おまえなら、どう取る?」
「そんなの、回り道をするに決まっている」
「そうだろ?奴は違う。いや、命令でなければ、そうするかもしれない」

すこし、言葉をきる。
そして、苦虫を噛み殺したかのような顔をする。

「奴は、この壁を打ち破る……そう言う事だ」

そして、教科書をどこかに投げた。

「……大体、わかった」
「要するに、命令されれば、それを遂行する。しかも、被害を考えずに行動する。それ故に狂人。
ちなみに、そんなヤツをナゼ飼うかと言うと、ヤツの任務遂行率は100%に限りなく近いからだ」
「……そして、遂行できない時は、予想を越えてやりすぎた時のみ」

将が顔を蒼ざめさせる。
久瀬が補足する。

「更に言えば、先程も言ったがパワーに限って言えば、
僕が知っているスタンド使いでも恐らく、組織でも3本……いや、パワーだけなら誰にも負けないだろう。
味方でも、ヤツの行動を邪魔して、死んだヤツは数知れない」

斎藤より久瀬の方が、能力を熟知している。

「……ってことは?」
「……一人で行動している。つい先日、やり過ぎて、パートナーが入院している。これは奇跡と言っていい。
なにせ、死んでないからね」
「たぶん……明日の朝刊はの見出しは、大惨事!!夜の街に何が起こった!!?と言ったところね。
たぶん、トップで一面にでるでしょうね……まぁ、圧力かけて揉み消すと思うけど」

渚の痛烈な言葉のナイフだ。
久瀬と斎藤はその様子が目に浮かぶ。
以前、たった一回そんな記事が載ったのだ。たしか、3年ほど前だったはずだ。
さすがに、ボスは彰人を謹慎させた。そして、2ヶ月後に復帰した。
そして、それらの反省をまるきり活かさず、今なお、同じような行動を繰り返す。
彼にとって、ボスの命令は第一優先なのだ。
そのために、自分の命さえも捨てる事が出来る。
本当に厄介である。

「どうするか?」
「……倉田さんたちが勝つのを祈ろう」

そう、結論した。


妙だ。

佐祐理はそう感じた。
人も沢山いる。しかし、周りの人達は自分達のことを気にかけていない。
なにが、起きているのか気づいていない。
そんな感じがした。

「妙ですね」
「どうしたの?」
「静かすぎます」

佐祐理は断言した。
そして、あらためて周りを見た。
そこで、気づいた。

薄暗くて、急いでいたため気にしてなかったが、彼らは自分達に気づいていないのではなく、
動きそのものを止めていた。

ということを。
舞も気づいた。そして、舞は近くにいる人に触れた。
そして、すぐに離す。

触れた人は、冷たかったのだ。
そう、死人のように……

「こ、これは!?」
「も、もしかして……死んでいるんですか!!?」

二人の驚愕の声。
しかし、それこそが妙。
もし、彼女たちが言うように、死人ならどうして立っているのか?
二人もすぐにそのことに気づく。

「佐祐理……もうちょっと調べよう」
「そ、そうだね」

そして、死人(便宜上)を触れる。
触れれば、触れるほど人の温もりを感じない。
人の肌の感触ではない。
これは、まるで……

「……!!佐祐理!!」

舞の緊迫した声。
佐祐理も遅れて感じた。

なにかが、おかしい。

そして……


ドスン!!

乗用車が跳んできた。
舞は右に、佐祐理は左に跳んだ。
二人の間に、車が飛んでくる。
それが、2台、3台と積み重なり、ついには6台が積み重ねられた。
高さにして、ワゴン車もあるため、10mかそれ以上の高さだった。

こうして、二人は分断された。


舞は目の前にある車を見据えていた。

「……佐祐理はあの時、何かを気づいた……だから、車に気づかなかった」

舞はそう思った。
いくらなんでも、あの殺気と車に気づかないなんて有り得ない。
それはともかく、舞は前方の車を破壊するべく。

「……斬る!!」
ドン!

スタンドを出し、

「ハァァァ!」

スタンドは跳躍し、上段から一気に切り裂くべく、剣を動かす。
しかし……

ガキン!

剣を弾いた。
舞は驚く。たしかに、車だから、斬るのは難しい。
しかし、いきなり弾くコトはないはず。

「……どうして?」

冷静な声に聞こえるが、聞くものが聞けば、焦っていると断言できる。
舞は、言葉などにするのが苦手なだけであって、決して,冷静なわけではない。
舞は前方の車に触れる。
そして、気づいた。

この感触は、先程の人とまったく同じ感触であると……

「……もしかして……!?」
そして、気づく。
敵の能力を、

「……たぶん、敵の能力は人とかを鉄に変えたりするコトが出来る。だけど、この硬さは鉄じゃない。
たぶん、硬くすることが出来る能力だと思う」

最初は鉄に変える能力かと思ったが、車は元々、鉄だ。
しかし、舞の剣は(試していた)鉄をいきなり弾く事はない。
いきなり斬れるわけではないが、多少はめり込ませるくらいは出来る。

「……急いで、佐祐理と合流しよう」

舞は駆けた。
裏道を使い、佐祐理のところまで戻ろうとする。


一方。
佐祐理は敵の能力を硬さの変化と見破った。
しかし、ここまでムチャクチャな行動力を見せつけられるとは……

(どうしましょう?……舞と合流しましょう)

そう思い、移動をしようとすると。

「どこにいく?」

不意に後から声が聞こえた。
それは、今、最も聴きたくない声。
今の状況で一番ヤバイ人の声。
そう、そこに工藤彰人が立っていた。

「合流はさせん。まずは貴様だ」

そして、彰人は佐祐理目掛けて、駆け出した。

TO BE CONTINUED

後書き
作:どうも、どうも。
祐:ピンチが多いぞ。
作:そうだな。でも、いいじゃん。
祐:ファンに殺されるぞ?
作:大丈夫だと思う
祐:そこで弱気になるなよ
作:しょうがないじゃん。元々、ジョジョはピンチになる漫画だし。
祐:だからピンチになるのか……
作:ま、いいじゃん、いいじゃん。次回は硬さの恐怖Bです。
祐:やれやれだぜ。
作:今回ギャグ無いな。 




                                       --------------------------------------------------------------------------------






作者さんへの感想、指摘等ありましたらお気軽にこちらまでどうぞ














戻る