『ジョジョの奇妙な冒険外伝 SNOW MEMORYS
第18話 地獄にも似た芸術4』




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あゆと栞は疲れていた。かつてここまで命の危険に晒されたことはない。
いや、過去にも命の危険はあったが、こんなにハッキリとした形で見るのは始めてだった。
あゆは木から落ちて以来、今まで意識がなく、栞も病気で死ぬと言われていただけだ。
つまり今回のような直接的な危険は始めてだった。

「……終わった………?のかな?」
「たぶん………終わったと思います………」

見た先には、人ほどの大きさをしたもの……
なぜ、人と断言しないかというとそこには羽が刺さっているのだ。
一本や二本ではない……それこそ、無数の羽が刺さっていた。
おそらく、後ろから見れば、人と分かるだろう。背中には刺さっていないはずだから。

「それにしても……弱点がバレないうちに倒せてよかったですよ………」
「?どんな弱点があるの?スゴク強かったよ?」
「実はですね………あまり一辺に吸収できないんですよ……エネルギー……」

少しずつ声が小さくなっていた。
そして

「今回、スゴイ威力が出せたのも、最初のウチにエネルギーがたくさん吸収していたからなんですよ。
はじめて遭ったときから少しずつ……吸収してたんです。
勿論、その時にスタンド……ですよね?
それを自覚してなかったから、スタンドが吸収しすぎて、私の体調が悪くなってたんですよ」

あの時、栞が蹲っていたのは自身が吸収したエネルギーがスタンドが吸収しきれなかったからなのだ。
簡単に言うと食い過ぎだ。この場合はエネルギーの食べ過ぎだと言う事なのだ。
それがスタンド自身にダメージを受け、栞にもダメージが行ってしまった。
それが真相なのだ。

「それでですね………あの後、攻撃を受けちゃいそうになりましたよね?
その時にあの子たちが、使い方を教えてくれたんです。」

栞の説明が終わった。

「それはともかく……帰りましょう。いつまでもここにいるのも辛いですし」
「そうだね」

二人は歩いて帰ろうとした。そして、ドアの方向に向かおうとした。
雹の横を通りすぎようとしたその時……

「ウシャァァァァァ!」

突如、雹が動いた。栞は完璧に不意をつかれた。
そして、あゆは栞を抱えた。そして……

バキィィィィ!
ドシャァァァ!

あゆは腹を殴られ、その場から吹き飛んだ。
既に、スタンドを解除していたあゆ……しかし……

「チィ!あの一瞬で殴られるところだけは鎧を作りやがったか……この羽の鎧をな!」

殴ったと同時に羽が舞った。あゆは全身に鎧は作っていなかった。
羽がある場所は背中に神話で出てくる天使さながらの翼……
それ以外ではあゆが殴られた場所である、腹の部分しかなかった。
しかし、その全ての羽は殴られた衝撃のためか、全て宙に舞った。
雹はその羽を掴んでいた。

「な、どうして………」
「さすがに……死ぬかと思ったぞ……だがな……忘れてないか?スタンド使いだって人間なんだぜ?
刺さったら血が出るはずだ。
血が地面に落ちもしなければ、羽にも染み込まない事に早く気づくべきだったな………!」

二人はその事を言われるまで気づかなかった。
それを責めるのは酷だろう。
なぜなら、いきなり一般人には無縁であろう戦闘をあの長い時間していたのだから……
早く終わらせたいという気持ちが先に来ても不思議ではなかった。むしろ、当然の事だろう。

「で、でも………どうして無傷なんですか!?」

栞の最大の疑問がそれだった。あの状況……少なくとも軽く数えても100は超えていたはずだ。
最初の10発ほどは弾かれ、何発かは逸れたかもしれないが、
それでも50の羽は彼の身体に刺さったはずだ。なのに、無傷……不可解だった。

「説明してやろう……というより、お前の友人を見たほうが早いぞ……俺の氷の特性を!」

栞はあゆを見た。身体を震わせたあゆがいた。
異常は特にはないとおもったが、栞は殴られた場所を見て、雹の氷の特性を理解した。

あゆが殴られた場所の凍った場所はジワジワと拡がっていたということを……

「そう、俺はあの時に弾いた羽を凍らせた!確かに少ない……
しかし!その弾いた羽が凍っていない羽に触れた瞬間!その凍っていない羽は凍った!
あとはそれが連鎖的に凍っていった!
僅かに外れ、俺を襲った羽は、我がヘルアーティストが注意して弾いたのだ!
そして、出来たものが凍りの壁だ………俺はその影に隠れていればいた……それだけだ」

全てを吐き出すかのごとく、あっさりと暴露した。
聞いていた栞は戦慄していた。目の前の男の強さにだ。
その一瞬の間は完璧に栞は隙だらけだった。
当然、雹は見逃さなかった。

ブンッ!

無言で雹のスタンドであるヘルアーティストが栞に向かって、一発の拳が飛んできた。
栞もスタンドを出し、雹のスタンドに向かった。そして、殴る運動エネルギーを吸収しようとした。
これで隙ができていなければ、止める事が出来ないにせよ、パンチを遅くできた筈だ。
しかし、一瞬とはいえ遅かった。

バキィ!

殴られた音が聞こえた瞬間、栞は目を瞑った。そして、フェンスにまで吹き飛ばされた。

「やはりな………今回のように突発的にエネルギーを吸収することはできないか……
スタンドの動きが速いから焦ったがな……それに、僅かしか吸収してないか……あまりパワーもないな!
もう焦る必要もない……誤算だったのは………月宮あゆか……」

遠くから聞こえる雹の声に反応した。
栞は殴られた痛みが全くと言っていいほどなかった。
背中をフェンスに叩きつけられた痛みはあるが、それ以外の痛みがない。前を見ると、あゆがいた。
あの瞬間に、あゆは最初の攻撃と同様に、栞の盾になったのだ。
その証拠に、雹と栞の間にあゆの羽だと思われるものが舞っていた。
雹は歩きながら……

「フン!悪運………いや、意志か……心の底から尊敬しよう………二人ともだ。
美坂栞はこの俺をここまで追い込んだ………月宮あゆは自らの身をもって友を守った………
その精神力………素晴らしかった………だが、貴様等の負けだ!
だが、貴様等の氷像を作ることを約束しよう!貴様等の………墓標として!この場所に!」

雹はあゆ達に向かって駆け出した。トドメをこの手で刺すために……
栞は目を瞑った。もう間に合わないからだ……
絶望した。あゆももう動けない。栞の能力の発動も間に合わない。
不思議と涙が出なかった。足音が近付いた。本当に最後の時だと思った。

ヒュン!
ザシュ!

場に似合わない音が響いた。恐る恐る見ると雹の右肩に刺さっていた。

それは羽を固めたモノ………いわゆる円月輪のようなものが刺さっていた。

雹はたたらを踏んだ。

「ど、どういう………」
「あの時………ぼくがガードしたとき羽が舞う必要がなかったんだよ………」

あゆは起きていた。そして、

「あの時、羽が舞わせたのはぼくの意思……上から羽で攻撃しようと思った……
けどきみの説明で、ぼくはその攻撃をするのをやめたんだ……
また同じ方法で避けられたら本当にお終いだから……
だから、羽を固めて円月輪を作って……チャンスを待ったんだ。その効果が今………でた………よ」

ザシュッ!

あゆの台詞が終わると同時にあゆは気を失い、雹の右肩から下の部分である腕が切断された。
あゆはそれを切断しようとは思っていなかった。だが、気絶の瞬間、気が緩み、手加減できなかった。
不幸中に幸いだったのがあゆはその前に気絶した事だった。
それを見ることなく気絶した。それだけは幸運だったろう。

「ぐ、グォォォォォ!ヘルアーティスト!」

雹は切断から呆けていたが、気を持ちなおすと、腕を取り、切断面とくっ付けてヘルアーティストを使った。
氷の部分で傷口を塞いだのだ。

「や、やめたほうがいいですよ!適当にくっ付けると元に戻りません!」
「……甘く見るな!芸術を極めるのならば、不自然をなくすために人間の身体を勉強するのは当然の事!
痛みは残るが、腕をくっ付けることぐらい造作もない!」

芸術家は石膏で像を作る仕事もある。その際に人間としておかしいもの作ることはできない。
人間そのものを作り、その上で造形美などを構築しなければならない……
そのため、極めた人はある意味で医者と同等の知識を持つことになると言う。

「疲れた……貴様等の足掻き………本当に疲れたぞ……これで……終わりだ!」
「終わりません!あゆさんの意志は無駄にしません!」

ブンッ!
ヒュンッ!

栞はあゆを抱えながら空を飛んだ。タネは雹の肩を切断したあゆの円月輪……それを吸収し、栞は飛んだ。
しかし……

「終わりと言ったはずだ……予想していないと思ったか?」

ピシィ!

そして、栞の両手は凍ってしまった。そして、右足も凍っていた。隣りを見ると……

「T!W!X!どうしたんだ!?」

見るとYが驚愕の表情をしていた。前述した3体は凍っていた。

「スタンドで飛ぶ……予想していた通りだった。貴様を狙っていたのではない。
避けるために使うであろうスタンドを狙ったのだよ……3体……凍らせた……
君たち二人を支える力はないはずだ!」

その言葉通り、栞はあゆを抱えたまま墜落した。
墜落といっても雹のすぐ後ろに落ちただけだが……いや、それが一番の不幸だった。
すぐ其処には雹がいた。本当の意味でのトドメを刺そうと待ち構えていた。

「長い………長かった………貴様等は今までで一番強かった………
俺の経験の中でも間違いなく最上位の強さを持っている。
それが………俺の手で芸術になる!今!この場で!」

その台詞と同時に雹はヘルアーティストを打ち下ろした。
このままならば、あゆ達は命の終着点でもある死を体験するだろう。
諦めた………栞は今度こそ完璧に絶望した。そして………

ヒュッ!
ドカァッ!

何かが飛び込んだ。その何かは雹を吹き飛ばした。
栞は呆けた。そして………目の前に石の礫があった。

「ど、どうし………」
「間一髪だったな………栞」

声の主は、栞にとって大切な人だった。自分の病気を治した……と栞自身が思っている。
そして、生きる希望をくれた人……相沢祐一だった。

「少し………遅れたか?」
「………ギリギリ………セーフです………祐一さん」

張り詰めた緊張の糸が切れたのか、栞は涙がでた。 祐一は栞が泣いているのを見て、そしてあゆが気絶しているのを見て激しい怒りが湧いてきた。
表情には出ていなかった。しかし、雰囲気はいつもと違うのだ。

「おまえが……やったのか?」
「……そうだ……この俺がだ……」
「………そうか………」

雹は祐一を見ていた。 報告によれば、その戦闘能力はスゴイらしい。
単純な戦闘能力ならば誰よりも強い、という報告を受けている。それを鵜呑みにはしていない。
だが、半分は正しいとは思っているのが雹だった。あの女が断言したのだから……
ならば………

「クラえ!ヘルアー………」
「オラァ!!」
ボキィィィ!

先手必勝とばかりにしかけた攻撃よりも速く祐一の攻撃が届いた。
雹は吹き飛んだ。

(ハァ!ハァ!速い!俺がスタンドを出すときはスタンドを出していなかったハズ!
それなのに………俺より速く拳が届いただと!!)

驚愕だった。組織の中でも近距離の戦闘において、雹と同レベルの使い手は中々いないのだ。
その自分より……多少の負傷をしているとはいえ、それより速く攻撃をしたのだ。相沢祐一という男は……!

「無駄だ……本調子ならともかく……負傷していて勝てるわけはないだろう……
これ以上はやりたくない……二度と姿を表わすな……そうすれば逃がしてやる。」
「それは……どうかな!」

雹が立ち上がった。しかし、

ヒュウ!

その場に風が吹いた。

「……そこまでよ。両方とも退きなさい」

誰かがそう言った。そして……

「霧絵……か?なんのようだ?」

雹はこの人物に心当たりがあるようだ。
謎の人物に……

「クスクス……ほんとはきついんでしょ?素直に好意は受け取りなさい」
「誰だ!?どこにいる!?」
「ここよ……あなたの後ろよ」

声のする方向を見た。入ってきたドアの上に一人の女が立っていた。
ストレートの長い黒髪に、スーツを着こなしたその姿も似合っている。
だけどきつくは見えない。全体的に童顔のせいだろう。
しかし……隣りの栞を見ると、どことなく敵意を持った視線を向けていた。
目線の先は霧絵の胸部……栞が一番、気にしている部分である。
そして、それを見て落ち込んだ。それを祐一は無視する事に決めた。

「アンタも……そこの男の仲間か?」
「わかっているくせに……それは確認でしょ。」
「やはりそうか………」
「モノは相談だけど……退いてくれない?これ以上闘っても意味がないでしょ?」

祐一にしてみれば願ってもなかった。
これ以上闘うなら意識がある栞はともかく、あゆを守りきる自信がない。
その上、上の女の能力はまだわかっていない。

「いいだろう………じゃ、交渉成立だ」
「OK。賢い判断ね。良いリーダーになれるわよ……行くわよ、雹」
「……納得できないが……まぁ、しょうがない……
おまえが動いたのならボスの命令だろうからな……従うよ……」
「じゃぁね……また、いつか……私の名前は霧絵……戸川霧絵よ。じゃぁね」

雹と霧絵は帰っていった。

「……これで……よかったんですか?」
「わからない……だけど、このままなら俺たちがやられてもおかしくないからな……後ろを見ろ……」
「?……!?こ、これは!?」
「……デモンストレーションだよ……あのままだと、俺たちがああなっていたかも……」

後ろには、なにか鋭い刃物で斬られたかのよう斬撃があり、ウィンド・クライミングと書かれていた。

「舐めてるのかもな……自分のスタンド能力を見せ、名前まで教えてくれたよ……」

しかし、目の前に起こっているものを見て、祐一は戦慄を感じていた。

そして、この10分後に、香里達が到着した。
そこで事情を全て話すと、二人とも協力してくれると言ってくれた。
ありがたいが、祐一はあまり巻き込みたくはなかった……

TO BE CONTINUED

スタンド解説
ヘルアーティスト
本体 上戸 雹 破壊力 A  スピード B  射程距離 E(2mほど)
持続性 B  精密動作 D  成長性  E
能力解説
殴った対象を凍らせることができる。
一瞬で凍らせることもできるが、ジワジワと凍らせる事ができる。
なお、瞬間冷凍の時は、−273.15℃にまで下げることが可能である。

ウィンド・クライミング
本体 戸川霧絵
破壊力 A  スピード A  射程距離 D(5mほど)
持続性 D  精密動作 C  成長性  A
能力解説
風を操る近距離パワー型スタンド。
かまいたちであろうと竜巻であろうと風ならば操れる。
殴るときにも風を纏えたりできるため、強力である。

後書き
作:平和だ………
北:………なにをのどかに過ごしてる………
作:少しだけど忙しいのが終わったんだよ
北:最近書いてなかったからな
作:いや、まったく………
北:今回はかなり動きが多いな 作:だけど未熟だと思っている……
北:そうか?それなりに書けてると思うぞ?
作:それなんだけど……普通、起承転結じゃん?
北:まぁね。それが?
作:それなのに、この前までは起承転結この話しなんとかなりそうだったのに、
今回だけで無茶苦茶やってるからね……起承転起承転結になっているという……(汗
北:たぶん、前回で終わったと思った人も多いはずだぞ。
作:それを反省しつつ、前回の後書きでレクイエムを発動させましたが、それの解説をしようと思います。
私はレクイエムを使い放題ですが、それは平常時に限ります。
北:どういうことだ?
作:例えば、殺気で恐怖したり、物凄く痛い怪我をしたりすると使えません。健康時にしか使えません。
北:傷ができたら?
作:それはもう……あっさりと死んでしまいます。
北:やれやれだぜ
作:次回はインターミッションです。




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