『ジョジョの奇妙な冒険外伝 SNOW MEMORYS
第14話 それぞれの思惑』




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斎藤視点
彼は歩いていた。学校へ行くためにだ。
そして、もう一人のメンバーである、神倉渚に会うためである。
彼等は生徒会のメンバーである。立場的に久瀬が生徒会長、渚が副会長、
斎藤はそれらの補佐といったところだ。
神倉渚について教えよう。彼女は久瀬に輪をかけて冷静な女性である。
見た目は、切れ長の目で鼻もツンと高く、かなりの美女。
スタイルもかなり良い様であるが、彼女は前述した通り冷静なため、 通称として現代の雪女と呼ばれるほど冷めた性格をしている。
そのため、近づく男は滅多にいない。 近付いても、知らないうちに毒舌(本人に自覚なし)を放つので、この女をオトすのは不可能とされている。
斎藤もその点は同感だ。
もし、オトせるとしたら彼女以上の冷たさを持つ男か、
厳しさと優しさが同居した人物が必要であると思っている。
相沢祐一のような優しさなら、合格かもしれないが、彼は厳しく出来ない。
そう考えると、彼女を落とすのは事実上不可能である。

「久瀬はどうしたの?」
「どわっ!」

考え事をしている最中に抑揚のない口調で聞かれた。
動揺したが、そこらへんはうやむやにした。

「な、渚か……あいつは今日、学校にはこない」
「ふーん……そう……」

それきり、話しはなくなった。この女といると疲れるのだ。
特に話題もなく、学校に歩いている。なんとか話しをしようと努力する斎藤。
明日も雨だそうだぞ。
など、どこのケーキ屋が美味しいとか、そんな風に話しをするも一向に話が出来ない。
ただ、ふーん、とか、そう……などで話しが切れて終了なのだ。
やはり、苦手だと思う。
斎藤自身、彼女の事が好きかと聞かれれば、答えはYESでもありNOでもある。わからないのだ。
彼女の思考が……。
斎藤は話しを彼女も興味を持つ事に切り替えた。

「おそらくだが……明日だそうだ。月宮さんが襲われるのは…」
「随分と早いわね」
「久瀬が進言したそうだ。早いうちが良いと言ってな」

またも、それきり会話がなくなる。彼女にとってはどうでもいいことなのか?
と真剣に思ったが、わずかだが、表情が怒っているように見える。比較的付き合いが長いお陰だろう

「……急ぐ必要があるのかしら……」
「この前言ってたろ?春来祭までに覚醒させたほうが良いって……」
「そうね……

またも会話がなくなった。本気で疲れるが、もう学校に着いた。
これ以上、付き合うと胃が痛くなりそうなので、彼は足早に教室に向かった。

渚視点
渚は思う。彼の理由もわかるが、もう少し遅くてもいいのではないかと……
これは今年3年生の最後の春来祭をムダにはしたくないという意思の表れでもある。
断るが、自分がではない。その祭りを成功させようとしている人のことだ。
彼女は基本的に優しいのだ。しかし……

(まぁ……いいか……)

彼女の優しさは長続きした覚えは一度たりともない。

祐一視点
彼らは歩いていた。彼らは今まで、雪だろうが風だろうが何でも走っていた。
大半の生徒は雨が降っているから、傘をさしながら走るとそう思われていた。
だが、雨の日である今日に限って、歩いていた。
そして、学校に登校しようとしている生徒は怪訝な目で見ている。
彼等が歩いている。それは、日常ではありえない光景だから……

「いやー……みんなが俺達を見てるぞ!なぁ、あゆ!」
「そうだね!やっぱり、名雪さんが早く起きるのって珍しいよね!祐一くん!」
「ひょっとして……ひどいこといってる?」
「「全然!」」「うー。最近は早く起きてるもん」
「でも食べるスピードがゆっくりだから、結局、いつも通りなんだよ、名雪さん。」
「うー!」

今日に限ってなぜか、朝ご飯もすんなりと終わったので、彼等は歩いているのだ。
それを、からかわれ名雪は本気で拗ね始めた。
祐一は、あゆにそんなこと言うとはな。」

「ひどいよ。祐一くん……」
「またか!?またなのか!?」

祐一の癖はもう末期のようだ。
こんな癖、もういらない。と何度も思ってはいるが、治る気配は一向に無い。
むしろ、聞かれたくないところを優先的に喋っているのだ。どうでもいいところではなぜか発生しないのだ。
この癖を……友人達はわざとか?という疑惑を何度も持ったが、祐一の表情が至って真剣のため、
何も言えなかった。わざとではないと分かってしまったのだ

「もうすぐだよ。悩むのは後だよ。祐一」

名雪の台詞通り、彼等の目の前には学校があった。
奇跡でもある、チャイムの5分前登校……祐一が夢見た光景が今、現実の物になった。


学校に到着した早々彼は今までのことを思い出していた。思い出したのはこんなやり取りだ。
自分の事を真面目だと思っていた。それを友達に言ってみた。
しかし、何人かの友人に聞くと、

「おまえが真面目?そうだったら、世界の80%は真面目な人だろうよ」

と、こんな事を言ってきた。細部は所々違うが、皆、同じ様な事を言う。
しかし……本人は納得できない。彼は、真面目に自分の事を真面目だと思っている。
その事を大声で公言すると、全員大声で笑った。
ショックだった。もう味わいたくなかった。
そして、今回……彼等は無慈悲にもこう叫んだ。

『あ、相沢と水瀬達が早く登校している!!??』

前述した台詞と少しダブる。自分の事をはっきりとバカにされたのだから。
これが教室での彼等の評価である。ちなみに既に来ている、香里と北川も一緒に叫んでいた。
登校してきた、相沢一行……特に祐一は憤慨した。

「俺は、真面目なんだよ!」
『わはははははは!!』

それは転校前に味わった屈辱をもう一度受けたのだ。
全員に笑われた。無論、仲の良い2人にも笑われた。そして……

「うぐぅ。ボクも真面目じゃないと思われてる?」
『あゆちゃん(月宮さん)はまじめだよ』

ほぼ全員がそう言った。ちなみに今度は、祐一の友人でもある2人は口を閉ざした。
2人はあゆの行った食い逃げと言う名の犯罪をしっているから……
しかし、真面目扱いされなかった2人は怒っていた。

「どういう意味だ!?」
「私も祐一と同類!?」

何気にきついことを名雪は言っていた。しかし、祐一はそれを後回しにした。
そして……

『おまえ等は変な人だと思う。』

クラス全員が口を揃えた。

「相沢……これがおまえの評価なんだ……」
「名雪……ある意味、相沢君より酷い評価よ……」

2人の親友は慰めにもならない言葉を発した。
祐一達はもう怒る気力が沸かなかった。そして……

「「ぐー……」」

2人はこの日の午前中の授業を全て、寝て過ごした。
ちなみに、この日授業を聞いていなかったことを後悔することはなかった。
彼等の知らないところで、ある計画が水面下に進行していたのだから。


時間は移って昼休み。
旧美坂チームのメンバーは集まった。
ちなみに新美坂チームはこのメンバーに冬に出会った女子を加えたチームのことだ。
今日は大学に進学した2人の先輩……舞と佐祐理さんは講義のために欠席し、
あゆと栞は美術部の集まりだそうだ。美汐はというと学級の委員を勤めている為、その会議で欠席である。
ご都合主義全開である。
ちなみに、話しの中心人物は美坂香里である。

「それはともかく……敵が襲ってきたらどうすればいいのかしら?」
「その点なら、問題無いだろ。一応スタンドがあるからな。
ある程度騒ぎを起こせば、誰かが気付くと思うぞ」

香里の疑問に祐一の楽観的だが、現実的な答え。
確かに、敵に襲われたらそれぐらいしか方法はないだろう。

「私が問題にしているのは、普通の人の事よ」
「それは大丈夫だと思う」
「なんで?」
「今までのことを考えると、どうも一般人を巻き込みたくないのかもしれない。
考えてみれば、もし無差別に襲うなら、教室で何度も襲われているはずだ」

その言葉の真の意味は、名雪には分からなかった。しかし、祐一と香里は悟った。

「言いかえれば……誰もいなければ問答無用で襲うということか……」
「……なるべく団体行動したほうがよさそうね」

言われて名雪も気付いた。もし一人なら確実に襲われると言う事だ。
事態の重さにようやく気付いたのだ。
一行は事態の重さを再確認すると、無口になった。そして、食事を開始した。
祐一と名雪は秋子さんの作ったおいしいお弁当。香里も母親に作ってもらったお弁当を出した。
北川が弁当を出した。いつもは佐祐理さんや栞が弁当を作っても、パンを持ってきているはずの少年。
ここで、北川がパンを出せば本当にいつも通りだ
しかし、北川はいつもと違う食事を持っていたものがいる。

「き、北川……なんだ?それは?」

祐一は、まるで敵スタンドを見たかのような顔になった。
そう、それは純粋な奇妙……人が空中で眠っている姿を見るかのような、祐一の視線。
見ると、名雪達も同じ様な顔をしていた。
微妙に祐一達に対する怒りがホンの少し出てきた。

「なんだとはなんだ……ただの弁当じゃないか……」
「う、嘘だ!北川が料理できるなんて、俺は認めない!」

無茶苦茶、失礼な物言いである。
祐一と一度真剣に話し合いをしたほうがいいのではないかと、思いながらなんとか言葉を探した。
そして……

「前にも言ったと思うが……一人暮らしだからな……おれは……自炊しないと、すぐ金がなくなるんだよ。
そういえば……この前の調理実習で相沢はゆでたまごを作ろうとして、レンジにかけようとしてたなー」
「くっ!なにがいけないんだ!」
「祐一……そんなコトしたら卵が大変な事になるよ……」

名雪の諦めにも似た言葉は祐一の胸にグサっ!と突き刺さる。言葉のナイフで襲われた祐一……
だが、もう一人この事実を知らなかった者がいた。

「ふーん……そうだったの……」
「「「………」」」

香里の呟きを彼らは聞き逃さなかった。祐一の視線は痛くないが
(料理が同じ位できない人間に見られても痛くも無い)、
料理に詳しい二人は信じられないものを見たかのような視線はかなり痛いのだ。

「へ!?い、いやね……その……じょ、冗談よ……」
「「「………」」」

なんとか言い訳の言葉を出すが、かなりの疑惑の視線を受けた香里は、固まっていた。
理知的な印象を受ける香里だが、料理は完璧に駄目だというのが証明してしまった。
そして

「香里……もうバレちゃったよ……」

名雪の諦めが入った言葉で、香里は真っ白になった。
補足として、名雪は知っていたが、黙っていて。と頼まれたのだ。
名雪は約束を破っていない。香里が自爆したのだ。
しかし、お人好しの名雪はそれに対して、結構辛そうだった。
そして、程なくして昼休みは終わった。

午後の授業も祐一と名雪は寝ていた。祐一は完璧に寝ていたが、名雪は違った。
名雪は半覚醒状態なので、首が動きながらノートを取っていた。
ちなみに午後の初めの授業である化学の教師は、寝ている人間のメカニズムという名の論文を発表し、
かなり大きな賞を受賞した。勿論の事だが、その研究対象となった、とある人物は名雪であったりする。


放課後はあゆを安全に送るために、祐一と名雪は部活が終わるのを待ち、その後一緒に帰った。
香里と北川は栞を待ち、一緒に帰った。
彼等の話しはここで、終了だ。

久瀬視点
彼らの行動は斎藤達が調べているはずなので、学校にいないであろう人物の調査をしていた。
パソコンのキーボードを叩く音が部屋に響く。
そして、ふと気になる物を見つけた。

(なんだ?これは……)

見つけたものは佐祐理さんが写っている写真だ。それ自体は問題ではない。
しかし、横にある水差しがおかしかった。
微妙だが、取っ手の部分がはずれているのだ。そう本当に微妙だが、確かに水差しとはずれているのだ。
しかし、その後の日付の写真でははずれていない。
その真偽を確かめるべく、久瀬は急いで、倉田佐祐理が入院していた部屋に向かった。
そこは幸いなことに空き部屋だった。

(……取っ手が離れていない……まさか、もう既にスタンド使いになっているのか!?)

驚愕の事実だった。能力はわからない。だが、写真と比べてみても、異様なものだった。

(アレがスタンドだとしたら……川澄さんも既に覚醒している可能性が高いか?)

確証はないが、確かめる価値はありそうだ。
そして、彼は携帯を取り出し

「はい。実はですね……
後日に襲おうとしていたあの2人が既にスタンド使いになっている可能性があります。
……はい……いえ、確証はありません。ですが、予定を何日か速めてください。はい……はい……では……」

彼は携帯を切った。そして……

「予定は、明日が月宮さんたち……明後日に倉田さん達になったか……
本来なら、今日から3日後のはずだったが……この事が良い事なのか判断がつきにくいな……」

彼のボヤキはどこにいくのか……


そして……今日が終わり、明日がくる。
そう……あゆと栞の闘いが始まろうとしている。

TO BE CONTINUED

久瀬秀平
裏から支配する男に反逆する男。
祐一達の学校の生徒会長でもある。
基本的に洞察眼に優れているため、人を見る目は超一流。
スタンドは現在不明である。
斎藤怜二
祐一達と同じクラス。久瀬に従う男。
生徒会では、久瀬の懐刀と呼ばれるも本人は否定している。
基本的に良い人だが、それが元で、クラスメートにも厄介事を押しつけらている
スタンドは現在不明。
神倉渚
生徒会副会長。かなりの美女だが、性格は冷めているを通り越して。寒いの域である
なぜ、生徒会に入っている理由は頼まれて、断る理由が無かったから。オリキャラである
話していて、疲れるタイプである。何気に毒舌を使いまくる。
スタンドは現在不明。

後書き
祐:話しが大きくなりはじめたな
作:それを言うなって……
祐:書いてて辛かったりするのか?
作:大丈夫。楽しいから……特に君のピンチを考えると……
祐:どういうことだ!?
作:だって……主人公がピンチになるのは当然じゃん
祐:第一に男がピンチになってもつまらないだろ!
作:じゃあ……どうすればいいんだ?
祐:そうだな……名雪が香里に襲われるとか……
作:(ヒュン!)
香:いい度胸ね……相沢君……
祐:そ、そんなことないぞ……
香:なにを怖がっているの?(ニヤソ)
祐:こ、怖がってなど……
名:祐一〜。大丈夫?
祐:な、名雪!助けてくれ!
名:いいけど……スタンドを出してくれたら助けてあげる
祐:あ、ああ。いいけど(ドキュン!)注:スタンドを出す音です
名:エイッ!(ビチィ!)
祐:な、何をするんだ!よりにもよって種を俺のスタンドに植え付けるなんて……
名:助けてあげたよ……香里から(ニヤソ)
祐:ぐ、グアッ!身体の力が……抜ける……(バタッ!)
名:ふふふふふ……反省してね。祐一
香:そうね……ふふふふふ
作:(遠くから)や、やれやれだぜ……




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