魔法少女リリカルなのは―――暗き瞳に映る世界―――

 

 

 

 

 

第二章 

 

 

 

第三話

 

〈苦悩〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時空管理局本局の艦船ドック。

 

ここでは今、一隻の艦船の出航準備が進められていた。

 

 巡航L級八番艦アースラ。

 

次元空間を自由に移動でき、さらに高い戦闘能力も備えた艦である。

 

 本来の予定ならば、まだ出航は随分先になるはずだったのだが、急遽、この艦に出航命令が出た。

 

原因は一つ、ロストロギア<メイガスの鍵>である。命令が出る前日、メイガスの鍵を調査するべく移送された研究施設から、鍵が突如として消失したのである。その消失時、研究ブロック一つが巻き添えとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またぁ?!」

 

 

 管理局内の提督執務室。そこに今、クロノ・ハラオウン執務官と、その補佐官であるエイミィ・リミエッタ。他にも、嘱託魔導師の高町なのはやフェイト・テスタロッサ、八神はやてなどのメンバーが、ソファに座りながら、正面に座るリュウト・ミナセに視線を向けていた。

 

 また、時空管理局提督リュウト・ミナセの隣には彼の使い魔であるシグレ、そしてアースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督が座っている。

 

 そのメンバーが見守る中、リュウトは昨日のメイガスの鍵消失を報告し、さらには、その再確保を巡航艦アースラが担当する事を説明した。

 

 

「エイミィ! 隣で大声出すなよ!」

 

 

 冒頭の叫び声はエイミィがそんなリュウトの言葉に過剰に反応し、反論、もとい文句を言ったのだ。彼女の隣で話を聞いていたクロノはその大声をまともに聞いてしまい、耳を押さえている。それでもエイミィに対する苦情は忘れない。

 

 

「でも、なんでそんな事になったんですか?」

 

 

 その風景に苦笑いを浮かべていたなのはが、子供らしく率直な意見を口にする。フェイトも同様の事を考えていたようで、頷いている。

 

 

「まぁ、なんと言いましょうか…。簡単に言ってしまえば、我々は一度あの鍵を確保しています。その実績を活かして、再び目標を確保せよという事です」

 

 

 リュウトも顔に苦笑を浮かべている。隣のリンディも同様だ。

 

 彼らからしてみれば、ここにいる全員を巻き込んでしまったと思っているのだ。

 

話が終わる頃、リュウトの隣にいたシグレの姿が消え、奥から人数分のお茶を持ってやってくる。

 

なぜかそれぞれの湯飲みには「えいみぃ」、「りんでぃ」、「くろの」と書いてある。この茶碗はなのはとフェイト、はやてが持ってきたものだった。何でも手作りで、こういった物を作るキットがあるそうだ。勿論、リュウトの湯飲みにも「りゅうと」と書いてある。

 

 

「あの、もう一つ質問してもいいですか?」

 

 

 いつもの落ち着いた声でフェイトがリュウトに話しかけてくる。その彼女は先ほどまで両手で湯飲みを持ち、ちびちびとお茶を啜っていた。

 

 

「どうぞ、フェイト君」

 

 

 リュウトが自分の分のお茶を飲みながら言った。

 

主の隣に戻ってきたシグレはリュウトの「おいしいです」という感謝の言葉で、隠しきれないほど幸せそうな顔をしている。

 

リンディは相変わらず、リュウトの執務室の応接テーブルの上に“何故か”置いてある容器から砂糖とミルクを取り出し、それをお茶に入れて飲んでいる。シグレも最早諦めの境地に達してしまって、すでに文句を言う事も無い。

 

 

「今回の任務には、私となのはも?」

 

 

 ここに呼ばれた時点で、フェイトにはそんな予感があった。先の鍵確保の任務の際、なのはとフェイトは学校の用事があったために参加しなかったのである。

 

報告自体ははやてに二人とも聞いていたが、今回もやはり学校があるのだ。もちろん学校は休むことが出来るだろうが、リュウトはあまり任務のために二人を休ませたりはしなかった。

 

 

「真に残念ながら君たちにも参加してもらいます。私自身は反対なのですが、鍵の能力などを考えると、戦力が多いほうがいいということで、上層部がゴリ押ししてきましてね…。―――申し訳ありません」

 

 

「い、いえ、わたし達は大丈夫です。ね? なのは」

 

 

「うん! ノートとかはアリサちゃん達に頼んでおきますから、大丈夫です!」

 

 

 本気で申し訳なく思っているらしいリュウトの気持ちを察して、フェイトは少し明るく話す。なのはもまた小さなガッツポーズを取っている。

 

 そんな行動を見ながら、リュウトは笑みをつくる。はやても「早めに準備せな…」と小声で呟いていた。

 

 

「アースラの出航は明日。かなり急な命令ですが、各自準備は怠らないでください。はやて君は騎士の皆さんにも伝えておいてください」

 

 

 リュウトは各自に命令を出す。しかし、リュウトの口調もあって命令というより、どちらかといえば要請に聞こえてしまう。

 

リュウトの隣に座っていたリンディは、すでに艦の出航準備は終わらせている。あとは整備班の報告を聞けば直ぐにでも出航できる。

 

 リュウトのサポートに回っているシグレも、すでに諸々の準備は整えていた。

 

彼女は負傷した武装局員を後送するために前回の作戦では途中帰還することになったが、今回の調査ではほとんど武装局員は動員しない。いや、正確にいえばできないのだ。

 

先日の一件―――時空管理局の保有する施設、つまり鍵を解析していた研究施設が消失した件の事後処理で、本局の人員が多数割かれている。そのため、今回は以前に比べて少ない人員を全て投入せざるを得ない。シグレも前以上の働きをしなければならないのだ。

 

 

「それから、はや君の場合はここしばらくまともに家に帰っていないでしょう。今日は帰ってきなさい。またしばらく離れることになりますし。あ、それから戸締りも忘れないようにしてください」

 

 

 はやては苦笑しながら「了解です」と笑っている。クロノのこともそうだが、リュウトはどこか彼らの兄のような、もしくは引率の教師のような存在になっていた。

 

 

「では解散にしましょう。後のことはリンディ提督、お願いします」

 

 

「ええ、任せて」

 

 

 リュウトの隣にいたリンディは笑顔で頷き、リュウトの部屋を後にする。

 

艦の出航準備は出来ているとしても、他にも多くの仕事がある。多数の命を預かる艦長も主席執務官も、とてもじゃないが楽な仕事ではないのだ。

 

 

「じゃあ、私たちもこれで」

 

 

「お茶、美味しかったです!」

 

 

「ほな、また明日」

 

 

 三人の少女も退出していく。なのははいつもリュウトとシグレの入れるお茶が気に入っているようであり、高町家に行った際にもご馳走したことがある。その結果は大好評だった。

 

 

「…さて、私も仕事をしましょうかねぇ」

 

 

 クロノたちも部屋を出て行き、リュウトは自分のデスクの引き出しから数枚の紙を取り出した。そこには日本語で<成績表>と書かれていた。

 

 

「主殿、それは?」

 

 

 いつの間にかリュウトの背後に回ったシグレは、その成績表らしき紙を初めて見たようで、デスクの椅子に座っているリュウトの背後から顔を覗かせる。

 

 

「簡単に言ってしまえば、なのは君たちの成績表ですよ。彼女たちの場合、特になのは君の場合は家族の方々に彼女のことを色々と報告しなくてはなりませんからね。そういった説明を円滑にするために用意したんです」

 

 

 この成績表の元になったのは、リュウト自身も貰った事がある、なのはの世界の学校で配られる通知表だった。もちろん中身は魔法関連のことだが、こういった媒体があるだけで人は理解しやすくなる。

 

 その成績表をリュウトは黙々と書き始める。彼は自分がまさかこのようなものを書くことになるとは思っていなかった。勤務評定とは些か趣が異なるので、リュウトも実は緊張しながら書いているのだ。書き進めていくにつれ、自分自身が小学校で通知表をもらった時の気持ちが、僅かながら思い出される。

 

本人、もしくは家族に渡すのはもう少し先になるだろうが、早めに書き始めるに越したことはない。

 

今までの戦闘訓練での評価や任務での評価。日ごろの任務態度や生活態度など、それなりに細かい評価を付けていた。もちろんコメント付きである。

 

 

「主殿…、前々から再三申し上げていますが、もう少し髪の毛を整えてみてはどうですか?」

 

 

 成績表を書いているリュウトの後ろに回っていたシグレは、当たり前のことをするように主の髪に櫛を入れ始める。リュウトの髪は意外と長く、首の後ろで紐を使い一本に束ね、それを無造作に垂らしている。

 

シグレはそのまとめていた髪を解き、幸福感が滲み出そうな嬉しそうな顔で髪を整えていた。

 

 

「ふむ…。まあ、私もあまり時間が無いですし、君がやってくれるから問題ないと思うんですが…」

 

 

 その言葉を聞いたシグレは思わず頬を染める。そして、どもりながらも「…まぁ、そうなのですが」と少し俯いて答えた。

 

 そんなシグレの様子に、リュウトは全く気付く気配を見せず、それどころか何かを考える仕草をする。

 

 

「しかし、やはりこの髪もいい加減に切った方がいいですかもしれませんね。猫には妙に好かれてしまいますし、なによりヴィータのおもちゃにされてしまうこともありますし――――」

 

 

「ダメです!!」

 

 自分の前髪を気にしながらリュウトが言った言葉を、シグレはもの凄い勢いで却下した。

 

 

「主殿はそのままで良いのです! その髪型で良いのです! 貴方様の髪を愚弄する者がいるならば、私が斬ります!!」

 

 

 シグレは今のリュウトの髪型が気に入っていた。自分と出会った頃から伸ばし始めた髪は、自分と主の絆のようなものだとシグレは思っていたのだ。

 

それにもし髪を切ってしまったら、最愛の主の髪を梳くという至福の時間が消えてしまう。それは絶対避けたかった。

 

 

「わ、わかりました…。このままで居るとしましょう」

 

 

 いきなり後方でデバイスを抜き放ちそうになったシグレに驚きながらも、リュウトは冷静に返答する。

 

 

「感謝します」

 

 

 そう礼を言うシグレの声は、心底ホッとしたという響きが多分に含まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや? そういえばシグレ、今日は武装隊訓練生の育成カリキュラムがあったのではないのですか?」

 

 

 手馴れた手つきで成績を書いているリュウトが、ふと思い出したように呟く。確か今日、シグレは陸士訓練学校の訓練に付き合うはずなのだ。

 

 シグレはリュウトの使い魔だが、リュウトがデスクワークをしているときは、このようにして何処かの訓練に臨時教官として参加することが多い。

 

 それはデスクワークに対して悲しいほど適性が無いシグレが、せめてリュウトの役に立ちたいと積極的に訓練に参加しているからだった。

 

 

「はい。これが終わり次第、訓練場に向かう予定です」

 

 

 その返事は確かにしっかりとしたものだった。だが、その心中は必ずしも平穏とは言い難い。よく見れば、その手がかすかに震えている。

 

 シグレからしてみれば、自分に机仕事の才が少しでもあればリュウトと一緒に居られるはずなのに、どうして自分にはそれがないのだろうと嘆かずには居られないのだ。

 

 ついこの間発覚した事だが、シグレのデスクワークの能力は、なんとはやてにすら劣るという。その事実を知ったとき、シグレは大いに泣いた。

 

 これがエイミィやヴォルケンリッターの誰かであれば、まだ救いがあったのかも知れない。だが小学生にすら劣るとなれば、もはや自分を怨む事すら難しい。

 

 だが、自分の本領は主の隣に立って戦う事と信じている。

 

 そう考えていると、シグレの耳にリュウトの声が聞こえてきた。

 

 

「―――それにしても、今回の件は参りましたね」

 

 

「全くです。メイガスの鍵を逃したのは、どう考えても主殿の責任ではありません。それなのにこうして探索の任に就かされるとは…」

 

 

 リュウトのぼやきにシグレは反射的に答えていた。本心では今回の命令に全力で異議を唱えたいのだ。

 

 それでも黙っているのは、リュウトがそれを望んでいないからに他ならない。

 

 

「まあ…、命令とあれば仕方が無いですよ。他の人に任せて取り返しのつかないことになるよりは、マシと考えましょう」

 

 

「主殿が仰られるのならば、私に異議はございません。ですが、これだけは言わせていただきます」

 

 

「なんです?」

 

 

「…今回の件、明らかに不自然です。私などが言うまでもなく、主殿は分かっておられるでしょう?」

 

 

 その言葉に、リュウトはペンを走らせる手を止めた。

 

 そして、シグレに視線を向ける。

 

 

「それならば、いくらでも対処のしようがあるはずです。なぜそれを為さらないのですか?」

 

 

 シグレの問いかけに、リュウトは虚空を見つめた。その視線の先にあるものが何なのかは本人にしか分からない。精神リンクから流れてくる感情には、一切の色が無くなっているからだ。

 

 

「―――無論、今回の件は私の方でも疑問には思っています。ですが、はやて君を私と共に任務に就かせると言ってきている以上、それほど厄介な事は出来ないと考えてもいいでしょう」

 

 

「ということは、やはり彼女に対する行動の前触れだと?」

 

 

「現状で他にありますか? 鍵の件はたまたま利用されたに過ぎないというところでしょうか。そうでなければ、このような被害を出してまで事を起こす理由が分からない」

 

 

「すでに、理性的な判断が出来なくなっている可能性もありますよ」

 

 

 シグレの指摘に、リュウトは微かな笑みを浮かべる。その笑みには、どこか自嘲的な色があった。

 

 

「もしもそうならば、これほど私が苦労する事はないんでしょうけどね…」

 

 

「―――失礼しました」

 

 

 シグレは自分の不明を恥じた。この境遇を一番憂いでいるのは間違いなくこの青年だ。自分だけの事ならばいくらでもやりようはある。だが、事はアースラに関わる。

 

本来アースラ所属でないなのはまでもがこの任務に参加する事になったのは、おそらく目の前の青年がなんらかの働きかけを行ったのだろう。それだけが青年に出来るせめてもの抵抗だったのかもしれない。少しでも、アースラやなのは達への危険を減らすためにはこうする他なかったのだろう。

 

アースラでの任務を行っている間は、なのは達に対する何らかのアクションを起こすのは難しいと考えたリュウトの策に、シグレはようやく気がついた。

 

しかし、リュウトの考えは外れることになる。悪意ある者たちの目的は、ある意味リュウトの想像を超えていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、疲れた〜」

 

 

 エイミィがそんな愚痴をこぼしながら、ブリッジにある自分の席にもたれる。前回もそうだが、メイガスの鍵の行動パターンはまったく読めない。鍵が持っている特有の魔力反応を探さなければ鍵を見つけることすら叶わない。

 

 

「しかし、なぜ我々がこんな任務に就かされたんでしょうか? そりゃあ確かに一度目の確保を行ったのはこの艦ですが…。なあ? ランディ」

 

 

 エイミィの隣の席で、この艦のブリッジ要員―――アレックスがエイミィともう一人のブリッジ要員であるランディに話しかけてる。アレックスの言葉にランディも「同感」と頷いている。

 

 

「俺たち、絶対にこき使われてるだけだよな。ミナセ提督も、どうにか出来なかったのか?」

 

 

「今回ばかりは、リュウトの力でもどうにもならないみたいね」

 

 

 ランディが発した言葉に、エイミィはすぐに応える。今回の件、確かに不可解な点が多いものの、これは管理局が決めた任務なのだ。リュウトでも、さすがに拒否は出来なかったのだろう。

 

 

「やっぱ上層部の一部の人たちは、リュウトのことあまりよく思ってないみたいだしさ」

 

 

 エイミィはリュウトとの付き合いが長い。だからこそ、彼の周りのことはよく分かっているつもりだった。それはクロノも、リンディも同じはずだ。それは同時にリュウトの境遇を悔しく思っているということも三人は同じだった。

 

ちなみにこれは余談になるが、エイミィはよく他の女子局員に羨望の眼差しを向けられる。理由は簡単だった。リュウトと普通に会って、普通に会話をしているからだった。幼馴染であるいう事はそういうことなのだ。

 

 エイミィには、上層部の一部が幼馴染を蹴落とそうとしていることも見当はついている。この鍵の確保が失敗すれば、リュウトがその責任を全て負わされるはずだ。

 

そして、この任務に際しリュウトがどれ程自分たちのために働いてくれたのかも彼女には分かっていた。本人に聞けば笑って流されるだろうから、それはエイミィの心の内だけで留められている。

 

そのうち、何気ない風を装って何かお礼をしよう。エイミィはそう思っていた。

 

 

「あの連中は今回の一件を、目一杯利用するつもりだろう」

 

 

「あのタヌキどもめ、これを機にミナセ提督を蹴落とすつもりじゃないか?」

 

 

 そしてこの艦の乗組員である彼らも、そのことには薄々気付いている。おそらく自分たち以外にも、リュウトと面識をもつ人間はあらかた気付いているはずだ。

 

 だが、自分たちに出来る事といえば、この任務を無事に完遂する事ぐらいだった。

 

 

「そういえば、はやてちゃん、ここのところ元気ないな」

 

 

 話題を逸らすように発せられたアレックスの疑問は、ランディもエイミィも気付いている。

 

はやては近頃、やけにぼんやりとしていることが多い。今まではそんなことは無かったのだから、この変化には誰でもすぐに気付く。

 

 

「多分、例の強硬派の連中になにか言われたんだろう。あの子は純粋だから、なんの抵抗もなく受け止めてしまうみたいだし」

 

 

 彼らにとって、はやては既に信頼する仲間なのだろう。本気で心配している様子がランディから伺えた。そしてエイミィは、少しだけ苦笑する。

 

 

「このままだと、リュウトが本気で怒っちゃいそうだねぇ…」

 

 

「…そういえば、ミナセ提督が怒ったら、どうなるんだろうな……」

 

 

 その瞬間、二人そろって身震いをする。ああいったいつもは優しい人物が怒ると、大変なことになることが多い。もしリュウトがキレたら恐ろしいことになる可能性は高かった。

 

 唯一リュウトが本気で怒ったところに遭遇したことのあるエイミィは、過去の出来事を思い出した。

 

 あの風景を思い出すだけで、真夏の暑さも忘れられるだろう。

 

 

「う〜ん…、わたしゃあいつを本気で怒らせるくらいなら、虚数空間に生身で飛び込むね」

 

 

 アレックスとランディはその言葉に賛同し、再び職務に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アースラ内には比較的大きな訓練室が存在する。元々巡航L級は大型艦船のため、こういった施設はかなり充実しているのだ。それは長期に渡る作戦行動を想定しているためなのだが、そのためか、自分の所属する艦が自分の家、という者もいる。

 

 事実、アースラの中にある施設は、普通に暮らす分にはなんら不自由しないようになっている。

 

 ちなみにリュウトの本来の任務は本局勤務であるため、アースラにいる間は使われていない部屋を借りて過ごしている。

 

 

「それでは、B2Uの基礎訓練を始めましょう」

 

 

 今、この訓練場には数名の魔導師がいた。一人はリュウト・ミナセ。あとは嘱託魔導師の八神はやて、そしてその守護騎士三人と、はやてと同じ嘱託魔導師のフェイト・テスタロッサである。本来はもう一人の嘱託魔導師、高町なのはも此処にいるはずなのだが、彼女は現在、この艦に乗っている無限書庫の司書ユーノ・スクライアの情報整理を手伝っている。先ほどリュウトがなのはに命じたのだ。

 

 

「はやて君、もう既に蒐集行使は可能ですね?」

 

 

「はい。特に問題はないと思います」

 

 

 蒐集行使。

 

それは彼女、八神はやてが夜天の書に託された能力である。この力は闇の書、または夜天の書が蒐集したリンカーコア内にあった魔法データをマニュアル化したものであり、今まで蒐集したリンカーコアの持ち主の魔法を使用できるというイレギュラーな能力だった。つまり今のはやては、なのはやフェイト、そして闇の書が使用していた魔法を使うことができるのである。

 

 だが、そのリンカーコアのデータはあくまで過去のものである。仮に今、なのは達が新しい魔法を覚えたとしてもそれを使うことは出来ない。そのデータ内に無かった魔法は、一から覚えなくてはならないのである。

 

 

「よろしい。では開始しましょうか」

 

 

 その言葉と、彼の次の行動に、はやてはきょとんとしてしまう。

 

リュウトがいきなり自らのデバイスを手にしたのだ。今までの訓練でそんなことは一度も無かった。彼がデバイスを手に取ったのは、なのはやフェイトとの戦闘訓練の時ぐらいなのだ。

 

そんなはやてを見てリュウトは首を傾げる。

 

 

「おや、言ってありませんでしたか? 今日の戦闘訓練の相手は私なんですよ?」

 

 

 硬直(フリーズ)

 

そう、はやてとフェイトはその言葉を聞いて止まってしまった。手に持っていたB2Uは奇跡的に落とさなかったが、それでも、もう少しで落ちてしまいそうである。

 

 そしていきなり、はやて達はリュウトの眼前まで詰め寄って怒鳴る。

 

 

「無理に決まってるやないですか!!」

 

 

「わたしが変わりに戦います!」

 

 

 そう、無理なのだ。現段階ではやてとリュウトには圧倒的な差がある。それはやがて消える差かもしれないが、今はまだ無理だった。

 

 二人の剣幕に気圧されながらも、リュウトはこの訓練の理由を説明する。

 

 場合によっては、リュウトの話を聞いて微妙な表情をしている守護騎士たちとも戦わなければならなくなってしまう。

 

 

「大丈夫ですよ。手加減しますし、なによりこういった訓練をしないと、いざという時に反応できなくなります」

 

 

 リュウトが感じているはやての弱点、それは即応能力だった。今までの戦闘を見ていると、はやてはまだ敵の動きに対応していない。

 

確かにはやての戦闘訓練での成績は優秀だが、それはあくまで仮想の敵との交戦であり、実物は自分の予想しない動きをする。それに対応させるためには、こうした対人戦を経験させておいた方が良いと考えたのだ。

 

 

「ザフィーラ。申し訳ありませんがこの訓練場に結界を張っておいてください。この施設の結界だけでは心許ないので…」

 

 

 はやての横で蒼い獣形態になっているザフィーラがそれを聞いて「分かった」と言って獣人形態になり、集中する。すると、白いベルカ式魔方陣が彼の足元に浮かび上がった。

 

それに応えるように訓練場の外壁が光りを纏い、全域をコーティングした。

 

 

「では、始めましょうか」

 

 

 その言葉の直後、はやての始めてといえるだろう対魔導師戦闘訓練が始まった。

 

 そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ぽこん!

 

 

「きゃっ!!」

 

 

 結局のところ、彼女の奮闘も虚しく、リュウトははやての後ろに回りこみ、彼女の頭をルシュフェルの棟で軽く叩く。

 

 それが決着の合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううぅ」

 

 はやては頭を擦りながら、リュウトに向かって少しだけ怒ったような視線を向ける。リュウトは「あははは…」と、いつもの笑みで返してきた。

 

この笑みにはおそらくだれも抵抗できない。できるとしても、それは彼と同様の笑みを持つものだけだろう。おかげではやても、険悪な視線を向けることが馬鹿らしくなってしまった。

 

 

「まぁ、私の裏をかいたことは立派です。魔法の攻撃スピードもそう悪くないですし、各々の術の特性も良く分かっている。あと必要なのは、こういった戦闘に慣れることと、純粋な経験でしょうか」

 

 

「…はい。わかりました」

 

 

 それでも、はやてはなんとなくコツは掴んだ気がした。それでも彼に勝てる気はしない。彼との差はそれほどに大きいのだ。

 

 はやてはリュウトが自分と同じ世界の出身者だという事を知らない。しかし、リュウトが今までに多くの実戦を経験していることは、先輩であるなのは達から聞いていた。

 

 

「はやてっ!! 次はあたしがやるぞ!」

 

 

 はやての後ろから、元気な声が聞こえる。その声の発信源はヴィータだった。ぴょんぴょん跳ねて、全身ではやてに訴えている。

 

 

「いいでしょう。他の人の対人戦闘を見ることも、良い経験となります」

 

 

 リュウトはまったく疲れを見せず、ヴィータとの戦闘を承諾する。

 

そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ぱこん!

 

 

「ぎゃっ!」

 

 

 結局はやての二の舞いとなって、ヴィータも後頭部を擦る結果となった。

 

 はやてと違ってヴィータの戦い方はリュウトに決して劣るものではなかったが、やはりお互いに全力を出せない状態での闘いともなれば、手数に勝るリュウトに軍配が上がったのだ。

 

 しかし、ヴィータがリュウトに敗北したのは、やはりリュウトと戦った回数が少ないことも大きかった。リュウトの戦い方は、ミッドチルダの標準的な魔導師のそれとは随分と異なる。

 

 ある意味ではベルカに近い戦い方も多分に含まれているため、なのは達と対するのと同じような策では、リュウトは倒せなかった。

 

 しかし、ヴィータとリュウトの実力にはそれほど大きな差はないというのも、また事実だった。

 

 しかし、それだけではないような気がする。そう思って訓練内容を備え付けの端末で分析していたリュウトの耳に、思わぬ怒声が聞こえてきた。

 

 

「シグナムこそ、この前剣術でリュウトに負けたじゃねぇか!!」

 

 

「それは違う! 確かに負けたが全体で見れば引き分けだった! それに私が言いたいのは騎士たるもの負けを認め、それを糧にしろということだ!」

 

 

「そんな事分かってる! でもシグナムが負けたのだって事実だろうが! 将たる者が一対一で、しかも剣術のみの勝負で負けるってのはどうかねぇ」

 

 

「正々堂々、全力で戦って負けたのだ。言い訳するつもりはない。だが、そこまで言われて引き下がれるほど、私は臆病ではないぞ!!」

 

 

リュウトに負けたということで癇癪を起こしたヴィータが、それを諫めたシグナムに喧嘩を売ったのだ。

 

実際にシグナムとの闘いは一勝一敗同士で引き分けている。シグナムが言っている事は決して間違っていない。それに、リュウトの一勝は剣を使う魔導師に対抗するために、教導隊時代に教えられた戦術が基礎だ。シグナムに全く通用しなければ、それは悪夢でしかない。

 

舌戦を続けていた二人は結局真剣勝負で決着をつけることになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訓練室で守護騎士達が戦っているのを眺めていたリュウトの背に、はやての声が掛けられた。

 

 

「リュウトさん、すみません」

 

 

「いいんですよ。まあ、ザフィーラには頑張ってもらうしかないですが」

 

 

「そうですね。―――ザフィーラ! しっかり!!」

 

 

 その声が聞こえたのか、盾の守護獣が張り巡らせた結界が一層輝きを増す。これで、一応は安心といえるだろう。

 

 フェイトやシャマルに至っては既に応援モード全開で二人に声援を送っている。

 

 

「それで、リュウトさん…。ちょっといいですか?」

 

 

「? 構いませんよ」

 

 

 先ほどとは打って変わったはやての深刻な表情に、リュウトは心の準備をしてその続きに備えた。

 

 はやては僅かに逡巡すると、意を決してひとつの疑問を口にした。

 

 

「あたしは…、本当に罪を償えるんでしょうか?」

 

 

「ッ!」

 

 

 はやての言葉に、リュウトは驚いた。

 

 まさかそのような事を考えていたとは思っていなかったのだ。

 

 その表情を見て取ったはやてが、慌てて手を振ってその言葉を取り消そうとする。

 

 

「すみません。おかしな事聞いてもうて、折角罪を償う機会をもろたのに、こんなんじゃだめですよね」

 

 

 リュウトははやての仕草を無視して、ポツリと呟いた。それは聞こえるかどうか分からないくらい小さな声だったが、はやての耳には確かに聞こえた。

 

 

「―――いえ、そう思っているのならば、罪は償えるでしょう。時間は無限ではないですが、けっして無ではないのですから」

 

 

「………」

 

 

「―――独り言です。気にしないで下さい」

 

 

「……はい」

 

 

 訓練室の熱い闘いとは裏腹に、二人の間には暖かいとも冷たいともいえない風が吹いているようにはやてには感じられた。

 

 

 

 

 

 烈火の将と紅の鉄騎の戦いは、結局両者KOで幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はやてたちの訓練が終わって、リュウトは一度執務室に戻ってきた。この後はいつも通りの仕事を済ませなければならない。しかし、その仕事は、部屋の扉の前に佇む気配で中断された。

 

 

「どうぞ」

 

 

 部屋にいたリュウトが手元のインターフォンを押してそう促す、すると、小さな客人たちが彼の執務室に入ってきた。なのはとフェイトのふたりだった。彼女たちの顔には、少しだけ心配の色がある。

 

 

「どうしました? なにか心配事でも?」

 

 

 リュウトはその顔に混じっていた感情を直接彼女たちに問いかける。そして、最初に話し出したのはなのはだった。

 

 

「はやてちゃん、管理局でなにかあったみたいなんです……」

 

 

 それは彼女たちが大切に思う親友のことだった。

 

 そして、リュウトの脳裏に先ほどのはやての言葉が蘇る。おそらく、少女たちの間には自分の及びもつかない絆があるのだとリュウトは実感した。

 

 はやてが自分に問いかけてきたのは、おそらく他の人間よりも客観的に自分を見ていると思ったからかもしれない。

 

 なのは達では自分に近すぎて、聞くことが出来なかったのだろう。

 

 

「私たちが話しかけても、すぐには返事がないし。仕事中に手が止まっていることも、このところ多くなってきて…」

 

 

 フェイトは自分から見た最近のはやてを口にする。

 

確かにそれはおかしい。彼女は親友の言葉にはすぐ反応するし、仕事中に手を止めることなどそうそうない。リュウトは「ん〜」と少し考え込むようにして、執務官の少年のことを口にする。

 

 

「クロノは何も知らないのですか?」

 

 

 クロノはなんだかんだ言って、仲間のことをかなり気にする人間だ。彼なら何か知って

いるのでは、と思ったのである。しかしフェイトが横に首を振る。なんでも、もう既にフ

ェイトが聞いてみたらしい。すると、こう答えたという。

 

 

「管理局で何があったかは、僕にも分からない」

 

 

 そう言って、申し訳ないと謝ったそうだ。

 

 次にはエイミィにも聞いてみた。しかし、彼女の返答もクロノと同様だった。

 

 

「私たちに出来ることって、意外と少ないのよね…」

 

 

 そして、エイミィは言葉の最後にそう言った。それもまた正論だった。

 

結局最後は本人が解決しなければならない。それはなのはも、フェイトも分かっている。それでも気持ちは納得できない。

 

 

「…心配だよ。友達だもん」

 

 

 なのはがそう呟く。フェイトも同じ考えのようで、リュウトの方を見る。

 

 

(となると、あの時に何か言われた、としか考えられませんね…)

 

 

 先のメイガスの鍵確保の際に行われた会議。その終了後のカーライル提督との会話。それ以外に有り得なかった。

 

 何かろくでもないことがあったのはわかっていたが、ここまではやてが悩むとは本当にろくでもないことなんだろうな、とリュウトは思ってしまう。

 

 

「分かりました。それはこちらでも力を尽くしましょう」

 

 

 リュウトの言葉を聞いて、少女二人は満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュウトはまず守護騎士たちの意見を求めた。はやてが今、騎士たちからどのように見えるか、知りたかったのだ。

 

 

「…そのことには、我々も気付いている」

 

 

 シグナムがそう告げる。傍にいる守護騎士から見ても、はやてはおかしいようだ。周りにいたヴィータやシャマル、ザフィーラもまた、シグナムと同意見のようだ。

 

 もしかすると、先ほどの訓練でヴィータが負けたのはそれが気になって集中しきれなかったという理由もあるのかもしれない。

 

 

「そうですか。となると、かなり深刻ですね…」

 

 

 はやては元々、自分が抱え込んでいることを表には出さない。しかし、今はその抱え込んでいるものが他の人にも見えている。

 

 

「主はっ! 主は何故、私たちになにも言ってくださらないのだ?!」

 

 

 シグナムが吼える。この剣の騎士も今回の件ではかなり悩んでいるようだ。ヴィータもすでに、何回かはやてに悩みごとがあるのかと尋ねたが、全て笑顔で「大丈夫やから」と返されてしまったらしい。

 

 

「なんで、あたしたちにも話さねえんだよ…」

 

 

 リュウトはそんな騎士たちを見て、少し安心した。こんな主想いの騎士がいるのだ。はやてはおそらく、誰にも負けることはないだろう。

 

 負けてもらっては、はやてが作り上げた絆が涙で曇ってしまう。

 

 

「はやて君は強い。でも、それ故に脆い」

 

 

 リュウトは苦悩する騎士たちに声を掛ける。それがおそらく、彼らの力になると信じて。

 

 

「その脆さは弱さではありません。むしろ人としてなくてはならないもの。これがなければ、人間とは呼べません。そして、その脆さがあるからこそ、彼女は優しい。そして周りの人間が彼女を支えることで、彼女は強くなっていくでしょう」

 

 

 その言葉は、自身が経験したことでもあった。強かった人間が、自身の脆さに負けていく姿を、彼は何度も見てきた。それは、支えてくれる人がいなかったからだと、リュウトは思っていた。

 

 

「彼女を支えてあげてください。そして、彼女の強さ、誰にも悩みを打ち明けないという強さを認めてあげてください。その上で、彼女を護ってあげてください」

 

 

 それを聞いた騎士たちの顔は、先ほどよりも僅かにだが確かに明るかった。

 

 

「……主はお優しい方だ。だからこそ、護りたいのだ…」

 

 

 蒼き盾は、静かに、そして確かにそう告げた。目の前にいる、今、自分たちの支えとなってくれている青年に向けて。

 

 その視線の先で、青年は静かに微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリッジでは今、エイミィ一人が仕事をしていた。アレックスとランディは飲み物の調達に行き、リンディ提督は自室に戻って報告書をまとめ、クロノもその手伝いをしていたからだ。

 

 それなりに広いブリッジで、エイミィは仕事の合間にふと、暇を持て余していた。

 

 

「あぁ、なんか寂しいなぁ」

 

 

「おや? そうなんですか?」

 

 

「うひゃあ!?」

 

 

 驚いたエイミィが、妙な悲鳴をあげて椅子から転げ落ちる。そのすぐ後ろには、リュウト立っていた。先ほどの愚痴を聞かれていたようで、少し笑っている。

 

 

「ひ、酷いなあ! いるんならいるって言ってよね!」

 

 

 エイミィはリュウトとの付き合いが結構長い。それでも未だに、彼が近付いてくるのはイマイチ分からなかった。今回も、それが原因になってしまったのだった。

 

 

「いえ、別に気配を消していたわけでは…。というか、私はそんなに怖いのでしょうか…」

 

 

 少し前にも、レティ提督の部下であるマリーに驚かれた。それが意外とダメージになっているようである。

 

 

「いや、そういう訳じゃなくてさぁ…」

 

 

 普段のリュウトらしくないその発言と態度に驚いたエイミィがサポートに回る。しかし、その前に通信の受信を示すランプが光る。

 

 

「…緊急通信? しかも本局からって、なんだろう?」

 

 

 エイミィが席に座ってそれ見ると、それはリュウト宛になっていた。そのため、エイミィの横に立つリュウトの目の前にその内容を映し出す。

 

 

「―――っ!」

 

 

 通信を読むにつれその表情を厳しくしていったリュウトが、モニターを消すのと同時に舌打ちをする。その手は固く握られ、震えていた。

 

そんなリュウトらしからぬ風景をエイミィは今まで見たことが無い。

 

そしてリュウトはその厳しい表情を無理矢理押し殺すようにして、エイミィに主要クルーをブリッジに集めるよう、指示を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、いきなり集まってもらって…」

 

 

 ブリッジにはリンディ、クロノを始めとするアースラの主要クルーと、なのは、フェイト、はやての三名に加え、守護騎士たちも全員集まっていた。

 

 

「どうしたの? いきなり緊急の呼び出しなんて・・・」

 

 

 リンディがその場に集まった全員を代表してリュウトに問いかける。それにリュウトはすぐに答える。その表情は恐ろしいまでに無表情だった。

 

 

「任務が変更になりました。その報告です」

 

 

「新しい任務?」

 

 

 クロノが声に疑問を滲ませながら呟く。

 

なのはやフェイトも「なんだろう?」と顔を見合わせ、はやても頭の上に疑問符を浮かべる。そして、リュウトは新たな任務を、全員に伝えた。

 

 

「これより時空管理局所属巡航L級八番艦アースラは、八神はやての護送を任務とし、管理局へ帰還します。理由は………はやて君の処分が、見直されました」

 

 

 その言葉に、リンディとクロノは何かを確信したように顔を上げる。

 

 

「ちょっと待って! まさか…」

 

 

 リンディの言葉は、最後まで紡がれる事は無かった。その言葉を遮り、リュウトが真実を告げたからだ。

 

 

「夜天の王、八神はやてをそのリンカーコアごと封印する」

 

 

 その言葉は、一人の少女の未来を凍てつかせようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話につづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜あとがき〜

 

 皆さんこんにちは、悠乃丞です。

 

 皆様の応援もあり、無事に三話を書き上げる事が出来ました。

 

 ページ数は少なくとも、容量は第二話と変わらないので密度が濃いです。

 

 さて、一時的にメイガスの鍵は蚊帳の外に放り出され、はやメインの部分に入りました。

 

 現在四話以降を執筆中ですが、四話までがはやてメイン、それ以降が鍵メインの話になる予定です。

 

 戦闘シーンはしばらくお休みです。もっとも、鍵メインになれば戦闘シーンがメインになるんですけどね。

 

 さて、今回はこの辺であとがきを終わりたいと思います。

 

 皆様、次回の話でお会いしましょう。

 

 




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