※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件・地名等とはいっさい関係ありません。

 

 

 

              第六話

 

 

 

――時空管理局本局 B区画対策会議室――

 

 

「皆、揃ってくれたようね。それじゃあ始めましょう」

 

 

凛とした口調で声を上げたのは、時空管理局『提督』の位を持つ、リンディ・ハラオウンである。

 

 

「皆さんに集まってもらったのは、昨日発生した“ジュエルシード”強奪の件についてです」

 

 

そういいながらリンディは会議室をざっと見回す。

 

今、会議室には自分の娘や息子である、フェイト、クロノをはじめ、なのはやエイミィ、アルフ。さらにアースラスタッフ一同が揃っていた。

 

なぜ、一日明けるまで対策が行えなかったか。それは、この事件の前に起こった次元犯罪が関係している。

 

その次元犯罪は、組織の規模や人員などの規模が大きく、事後処理にも多大な労力が掛かっていた。

 

その最中に今回の事件が起こってしまったのだ。

 

局に直接襲撃をかけてきたこともそうだが、ジュエルシードを奪っていったその手際の良さに局内は完全に混乱してしまったのだ。

 

 

「なのはさんとフェイトさん、それにクロノが直接対峙したと聞いているのだけれど、その二人のことを話してもらえる?」

 

 

なのはとフェイトが立ち上がり、全員に聞こえるように説明を始めた。

 

要点を纏めると…

 

・犯人は二人組みの青年と少女

 

・青年は斉藤アズマ 少女は高村千歳

 

・ジュエルシードを狙った目的は『自分達の日本へ帰るため』

 

・どちらも魔法とは違ったような力を使っている

 

といったところか。

 

 

 

「それで、なのはさん、気になることがあるって…」

 

「はい。あの人たちは確かにジュエルシードを強奪していきましたが、そのときに3つもこちらへ返してるんです」

 

 

リンディの言葉になのはがそう答える。

 

そう、彼らは『全ての』ジュエルシードを奪っていかなかったのだ。

 

12個保管されていたうち、3つを返還した。つまり彼らは9つ持っているということだ。

 

なぜわざわざ返す必要があった?

 

きっとありすぎると困るからですよ。

 

いや、数に関係があるのでは?

 

会議室に全員の様々な憶測の声が溢れかえる。皆こんなパターンの事件は初めてなのだ。

 

 

『皆さん、こんなところから失礼しますね』

 

 

空中にモニターが浮かぶ。その中に写っているのは、

 

 

「ユーノくん!」

 

「うん、なのは。久しぶり」

 

 

なのはがモニターに写る少年、ユーノ・スクライアの名前を呼び、それにユーノが答える。

 

 

「ん、んん。久しぶりに会えたところ悪いんだが…いいか?」

 

 

わざと咳しながらのクロノの言葉になのはは「あっ」と言って少し俯く。皆の前で大きく出てしまったことが恥ずかしいようだ。

 

 

「それでユーノ。頼んでいたものはどうだった?」

 

 

クロノが気を取り直して話を戻す

 

 

『ああ、結構きつかったけどなんとか見つかったよ。もうちょっとマシなキーワードはなかったのか…。探すほうの身にもなってくれ! 長年放置されていた書庫内整理がやっと終わったっていうのに、こんなきついキーワードじゃ探すのだって…。先日の件でもいそがしんだぞ!』

 

「そういうな、今はどこの部署だって忙しいんだ。それにその忙しい中にこの事件が入ってきたんだ。しょうがない」

 

『もともとは局がしっかりしていなかったからじゃないのか』

 

「それはそれ、これはこれだ。君には司書としての権限があるのだから、それをうまく使え」

 

『……』

 

 

ユーノとクロノはこういうところでよく衝突するが、結局はクロノがうまく纏めてしまうし、なんだかんだでユーノも言われること全てをこなしてしまうから、傍からいいコンビだ。

 

そんなことをいえばどちらも否定しそうであるが。

 

 

「クロノ。ユーノになにを頼んでいたの?」

 

「そうね、私も聞きたいわ」

 

 

一通り落ち着いたと見て、フェイトがクロノに話しかける。リンディもクロノに話すように促す。

 

クロノがユーノに頼んだ件は、フェイトやリンディも含め誰にも話していなかったのだ。

 

それは、クロノにその件に対しての確証がなかったからだ。

 

 

「ああ、それについては…エイミィ、あのとき記録できた映像を流せてもらえるか」

 

「うん、いつでもOKだよ」

 

 

クロノとエイミィのコンビもかなりのものだ。

 

時空管理局・士官教導センターの頃から同期で、直接の上司部下であるとともに、俗に言う腐れ縁、また仲良しの友人や姉弟といったように、一言では言い表せないぐらい長い付き合いだ。

 

エイミィがモニターに表示したのは、アズマと千歳が子供を人質にとっている部分だった。

 

 

「始めのうちはジャミングみたいなものでうまく撮れなかったんだけど、あの炎の壁が消えてからいきなり感度がよくなってね。ギリギリで補足に成功したんだよ」

 

 

流される映像は、ちょうど子供を抱えて二人が黒い靄に消えていこうとしていたところだった。

 

なのはは自然と腕に手を当てギュッと握り締めていた。

 

それが、彼らの話を聞けないことからなのか、人質となった子供を助けれなかったことからなのか、自分では分からなかった。

 

不意になのはの肩に手が置かれる。

 

振り向くと、心配そうな顔で除いてくるフェイトの顔がそこにあった。

 

その目は「大丈夫?」と尋ねてきている。

 

 

「フェイトちゃん…ごめんね。でも私は大丈夫だから」

 

 

心配させないよう、フェイトへ笑顔を向ける。それが無理に作っているものだと分かっていても。

 

 

「皆にみて欲しいのは、男の左手だ」

 

 

室内全員の視線がモニターに注がれる。クロノが言った男の左手には黒い手袋が付けられている。

 

特に変わったところはない。何の変哲もないただの手袋のようだ。

 

 

「このモニターでは分からないだろうが、この男の左手から魔力反応をキャッチできたんだ。それでエイミィ、頼んでいた識別はどうなってる?」

 

「一応、解析は出来たんだけど・・・」

 

 

エイミィの口が濁る。

 

 

「どうしたの?」

 

「調べた結果、あの魔力反応は“ミッドチルダ式”でも“ベルカ式”でもなかったの・・・」

 

「ミッドでもベルカでも・・・ない?」

 

 

エイミィのその言葉に、フェイトの口から疑問があがる。

 

“ミッド”でも“ベルカ”でもないとしたら、いったいどんな体系の魔法なのだろうか?

 

現在の主流はミッドチルダを中心とした“ミッド式”。そして、一部の地方で残っている少数の“ベルカ式”だ。

 

そのいづれでもないとすると・・・

 

 

「そこで僕はユーノに無限書庫での検索を頼んだんだ」

 

 

たしかにそれが一番効率がいい。

 

あらゆるデータが集まっているとされる無限書庫。

 

そのデータ量から利用価値が高かったのだが、以前は膨大なデータが“あるだけ”で“整理”がされていなかった。

 

それ故に、利用する場合は複数の人数で細かく調べていく必要があったのだ。

 

それが今では、ユーノ・スクライアが無限書庫の司書を務めてからは、それの有用性が格段にあがった。

 

ユーノが持つ探知・検索魔法とそれを行使する本人の優秀な才が生かされているのだ。

 

それ以来、どこの部署も必要なデータを無限書庫から必要とし、依頼を要請するのだ。

 

・・・・・・まあ今では、依頼の量が増えて忙しくなってしまったとか・・・。

 

 

『クロノから要請があった“黒コートの人物の魔力”だけど・・・ひとつだけ、検索に引っかかったものがあるんだ』

 

「それは、なんだったんですか?」

 

 

ユーノの報告に、リンディがその内容をせまる。

 

 

『・・・・・・検索した結果・・・それは・・・ロストロギアの反応でした・・・』

 

 

『ロストロギア』。この単語に室内全員が反応した。

 

『ロストロギア』の危険性については、もはや誰もが知っていること。

 

ましてや今回の事件には、あの『ジュエルシード』が再び強奪されているのだ。

 

つまり、今回の犯人は、ふたつのロストロギアを所有していることになる。

 

 

『そのロストロギアが、コレです』

 

 

空中パネルに新しいものが浮かび上がる。

 

モニターに映し出されたものは、美しい深緑色の球体だった。

 

詳細なデータも同時に表示される。それによると大人の掌サイズの宝玉のようなものであるようだ。

 

 

『固有名は存在しませんが、コレは遥か昔に製作された“デバイス”なんです。それと、文献にはこう書いてありました。“寄生型デバイス”・・・と』

 

「“寄生型”? いったいどんなものなんですか?」

 

『順に説明していきますね。コレはデバイスとはいうものの、いまのようなプログラムを組んだものではなく、純粋な魔力の結晶体のようなものなんです。簡単に言えば、“魔力と情報の詰まったもの”ということです』

 

 

ユーノ以外のその場の全員が聞いたことのないものだった。ということは、やはりロストロギアということになる。

 

 

『さらにコレにはいくつかの特徴があります。一つは、人体と融合――この場合は寄生ですね――をさせることで、身体能力の強化や特殊能力の開花などが見られるんです。そしてもう一つ、こちらのほうが驚異的だと思いますね』

 

 

ユーノがいったん間をおいてから、再び口を開く。

 

 

『情報を引き継げるんですよ。簡単に言うと、過去に記録された情報を次に寄生させた人に伝えるということです』

 

 

この後もさらに細かい説明がユーノの口から出てきた。

 

ロストロギアと呼ばれるだけあって、さすがにその性能はなかなか理解に苦しむものであった。

 

その中でも特に『概念的魔法の行使』というものがあった。

 

現在使われている魔法は“術式”つまり“プログラム”を組んでそれも術者の詠唱や集中、発生のトリガーによって発動させるというスタイルだ。

 

『概念的魔法』は、それらの術式を必要とせず、術者の魔力と詠唱のみで行使できるものである。

 

だが、ユーノの話によれば、古代の魔道士たちは、高い魔力素をもつ木や、魔力石をとりつけただけの杖を使っていたという。

 

とすれば、その術式が残っていても、なんら不思議なことではない。・・・ただ、忘れ去られただけ、ということになる。

 

 

 

 

「あの、すこしいいですか?」

 

 

急にフェイトの声が上がり、全員の視線がそちらへ向く。

 

 

「男の人のことは分かったんですが、もうひとりの方はなにか分かったんですか?」

 

「もう一人の女性――千歳――については、とくに何も分かってないの・・・。魔力反応はあったんだけど、あの“炎”については何も・・・」

 

 

エイミィが悔しそうに俯くのを見て、フェイトは「そうですか・・・」とつぶやき、席に座る。

 

 

「あの、私からも一つ、聴きたいことがあるんですけど・・・」

 

 

今度はなのはから声が上がった。

 

 

「あの人たちの目的・・・なんですけど、“私たちの地球じゃない地球へ帰るため”ってどういうことなんでしょう・・・?」

 

「ああ、そうか。君達はまだあまり次元世界のことについて詳しくなかったな」

 

「どういうこと?」

 

『なのは、この次元には様々な世界があることはもう知ってるよね?』

 

 

ユーノの言葉に、こくっと頷く。

 

 

『いくつも存在する次元世界、その中には“近似世界”とよばれるものもあるんだ』

 

「“近似世界”?」

 

「ユーノの言うとおりだ、なのは。簡単に言えば、同じ“地球”でも微妙にどこかが違っていたりする、そんな世界のことだ」

 

「それなら、管理局であの人たちの世界を探してあげれば・・・!!

 

『それは・・・無理なんだ、なのは』

 

 

ユーノの言葉に、今度は「どうして?」と疑問をなげかける。

 

 

「それはね、なのはさん。“近似世界”というのが、どのぐらいあるのか、管理局でも把握できないのよ。“未開の世界にどんな平行世界がそれだけあるのか”。たどっていったら、キリがなくなってしまうわ。それに・・・」

 

 

その問いに答えたのは、リンディだった。そしてリンディの言葉にはまだ続きがあった。

 

 

「彼らは、自分達の世界がどれなのか、きっと見当がついてないのよ。もし見当がつくのなら、こちらへ来るはずだし」

 

 

確かにその通りだ。無限に存在するだろう世界の中から“彼らの世界”だけも探し出すなど、不可能だろう。

 

でも、なのはは諦められなかった。

 

あの二人も、何かのせいで異世界へ飛ばされてしまい、困っているのだろう。

 

そして、元の世界に戻るためにあんな強行手段をとっているのだ。

 

・・・・・・・・・何か・・・?

 

 

「あ、あの!!

 

 

再びなのはの声が上がる。

 

 

「今度はどうしたんだ?」

 

「あの人たち、もとの世界へ帰るためって言ってたけど、じゃあどうしてこっちの世界へきたんでしょうか?」

 

 

あ、とその場の全員がそんなかんじの表情を浮かべた。

 

そうだ。彼らがこちらの世界へ来てしまった理由、それは未だに不明だ。

 

 

「確かに、それは盲点だったな・・・。だが・・・それは本人達から聞くしかないだろう・・・」

 

「でも、それを聞けば、きっと何か手がかりがつかめますよね!?

 

 

少し、希望が見えてきた。やはり、もっとよく彼らと話し合う必要がある。そうすれば、彼らのことを助けてあげられるかも。

 

そう、なのはは思った。

 

だが、まだもう一つ問題点がある。それは・・・

 

 

「それから、彼らが人質にしたと思われる子供だが・・・詳細が分かったぞ」

 

 

そう、人質・・・。

 

なのは達が対峙した際に、盾のようにしたあの少女だ。

 

 

「あの子は時空管理局で保護していた、戦災孤児なんだ」

 

「戦災孤児って、戦争や災害で家族を亡くした子供達ですよね・・・?」

 

 

フェイトがクロノに尋ねる。クロノもフェイトのその質問に、そうだと頷いた。

 

 

「あの子は、第11管理外世界の住人の最後の生き残りといわれている子供だ」

 

「最後の・・・? どういうことなの? それに、生き残りって・・・」

 

「それは私から説明するわ」

 

クロノに変わってリンディが、人質となった子供のことを話し始める。

 

 

数年ほど前に、ある世界で大きな戦争が起きた。

 

その規模は、その世界全体に及ぶもので様々な兵器や武器、果ては強大な殺傷魔法までもが使用されるものとなった。

 

もちろん、魔力資質の高い人間は戦場に駆り出される。それは子供も同様だった。

 

また、その世界には生まれもって特別な魔法を身に着ける人間がいた。

 

それは、治癒魔法の一種だった。

 

普通治癒魔法には複雑な術式が必要で、専門的なことを学ばなければ習得できない。

 

だがその世界で使用される治癒魔法は術式が必要なく、使用者の魔力さえあれば使用でるというものだった。

 

 

戦争は終結した。世界が滅ぶという形で。

 

管理局が到着したときには、すでにその世界は炎に包まれたあとのような常態だった。

 

せめて生き残りだけでもと、現場の局員達は探した。

 

そして、地下の厳重なシールドに守られていた場所で一人の赤ん坊を保護した。

 

それが、誘拐されたルクスという少女だった。

 

 

 

「酷い話ですね・・・自分の故郷が全て滅んでしまってるなんて・・・」

 

 

リンディの話を聞いた後のフェイトの沈痛な言葉が会議室に聞こえる。

 

誰もフェイトの疑問に答えることは出来なかった。

 

 

「逸れてしまったな、話を戻そう。つまり僕らの任務は、彼らが奪ったジュエルシードの確保、そして人質となった少女の奪還と身の安全だ」

 

 

会議室に流れる重たい空気を打ち払うかのように、クロノが言葉を発する。

 

 

「それから、彼らの要求であった『ディストーション』フィールドを使える人員を用意しろというものだが、それはリンディ提督にお任せしてあるので、大丈夫なはずだ」

 

「でも、それを用意しろってことは・・・・・・」

 

「ああ、ジュエルシードを起動させる可能背は大だな。何故かは分からないが・・・」

 

「一区切りついたようね。それでは、これよりアースラスタッフは『犯人確保』、『ジュエリシードの捕獲』、『少女の救出』の3点で任務を進めていきます。いいですね」

 

 

 

室内のスタッフ全員の声がそろい、この会議は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

 

 

えー、自分でオリキャラを出しておきながら、その記述がなかったことにあとに気づいたおバカな作者、吉です()

 

自分で「必要かな」って記述だけ増やしました。

 

脳内妄想100%な内容を追加しましたのでご了承を・・・。

 

 

質問はメールなどでも受け付けるので、気になった方は送ってくださってもかまいません。

 

誹謗中傷だけはカンベンして欲しいですが・・・()

 

 

 

では、次回の話でまた会いましょう。

 

 

・・・・・・・・・でも次回っていつだ・・・?

 

 

 

 

 




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