第四話

 

 

 

 

 

 

 

「俺は足止めをしておけとは言ったが、なんでお前は捕まっていたんだ…?」

「いやー…それは、そのー…ね?」

「ね?じゃねえよ…」

 

千歳の頭に左手で軽くチョップを叩き込む。右手にはまだ大鎌を携えているため、必然的に左手になる。

ううー、と頭を押さえてうめく千歳を見て、ため息をつく。

 

「どうせ、W楽しかったから”とかだろう? 気持ちはわからんでもないが、せめて目的を優先するぐらいの心構えは持ってほしかったな」

「もう、いいじゃないの! …結局助けてくれたんだし」

「タイムングがよかっただけだ。もうちょっと自重するようにしろ」

 

アズマの言うことには千歳が、千歳が言うことにはアズマが。お互いの言葉に反論をかけていくため終わりが見えない。

 

 

 

なのはとフェイトは呆気にとられていた。

突然現れたもう一人の人物。間違いなくあの千歳という少女――なのはたちから見たらお姉さんぐらいなのだが――の相棒であるのは間違いない。

すぐに対応しようと、フェイトとアイコンタクトまでとっていたのだが、その人物はこちらではなく千歳の方へ向かって何事かを喋ったあといきなりその脳天にチョップし、そのまま口論に入ってしまったのだ。

こちらに気付いているのかどうかは分らないが、このままでは話が進まない。

 

『フェイトちゃん、どうしよう?』

『とにかく、このままじゃ何もできないから、話しかけるぐらいしないといけないんじゃないかな?』

『そうだね。でも…なんか入りにくい雰囲気なんだけど』

 

念話でどうするかを会話し、とりあえず話しかけることにしたのだが…やはり話しかけにくいなのはだった。

 

 

 

 

「・・・って言い合いに時間をとられている場合じゃない・・・やることがあるんだよ」

 

永久に続くかと思われた口論に終止符を打ったのはアズマの一言だった。

 

「なによ・・・? やることって・・・」

 

と千歳が聞いてくる。

 

「ジュエルシードを三つほど返却するのさ。必要なのは9つ。3つ余計だったんだ」

「余分に持ってたほうが、万が一の保険にならない?」

「そいつは危険だ。余分のジュエルシードが万一発動したら、それこそ本末転倒だ。それに・・・」

 

なのはたちのほうへ振り向くアズマ。そのときの表情は、なにか含みのあるような

表情に千歳には見えた。

 

「それに一応、保険は確保してあるしな・・・」

 

 

 

 

「おい。そこのガキ二人、聞こえてるだろ?」

 

男の言葉に、なのはとフェイトはすぐに身構える。

 

「ああ、身構えるな、話が出来ない。こっちも武器をしまうから」

 

男がそういうと、ずっと右手に握られていた大鎌が深緑色の光を纏いながら、空気中に溶けるように消えていった。

あんな魔法はあっただろうか? 見たことが無い。

なのははそう思った。

 

「さあ、これでこっちは丸腰だ。そちらも武器を収めるか、矛先を下へ下ろしてくれ」

 

なのはとフェイトは言われたとおり構を解き、デバイスの矛先を下へ向ける。

 

「言われたとおりにしました。だからお話を聞かせてください! あなたたちの行いに悪意が無くて、管理局で出来ることなら協力しますから!」

 

そう、まずは話を聞かせてほしい。そして闘わずにすむのならそれに越したことは無い。

それがなのはが管理局員として第一に考えていることである。

もともと争い事を好まない性格でもあるなのはだからこその発想でもある。

だが、

 

「申し訳ないが、目的についてはコメント無しな。話してどうにかなると思ってたら今頃こんなことはやってない。それにお前達に言いたいことはそんなことじゃないんだ」

 

その言葉になのはは少しばかり俯いてしまう。

あちらにもなにかしらの事情があってこんなことをしているのは分かる。

だが、やはり話してもらえないのは少し悲しい。

しかしそれで諦めてしまったら、それこそ話を聞くことは出来ない。

最後まで説得して話してもらわなきゃ。

俯いていた顔を上げ、もう一度あいてのほうへ顔を向ける。

 

「大丈夫、なのは?」

「うん、大丈夫」

 

フェイトの励ましに笑顔で答えると、フェイトも微笑みと頷きで返してくれる。

友達だからこそ、少ない言葉で分かり合えるときがある。こういったときには特に。

 

「それで、わたし達に話したいことって何ですか?」

 

今度はフェイトが相手の男、アズマに問う。

すると男はちらっと後ろを振り返る。千歳のほうを向いたのだろう。

顔を向けられた千歳のほうは「何よ?」と言いたげな顔でアズマを見ている。

こちらに向き直ったアズマは、少しきまづそうな顔をし、

 

「言いたいことはいくつかあってね。まず一つなんだが、あー、その・・・あれ、な」

 

そういいながらなのはたちの後ろの炎の壁を指差す。

なのはとフェイトは指を指された後ろを見てから怪訝そうな顔でアズマのほうへ向き直る。

 

「ああ、違うその壁じゃなくて、むこうにある俺たちが事件を起こした管理局のことなんだが・・・、悪かった・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

「「「・・・は?」」」

 

思わずそう答えてしまった。三重にたぶって聞こえたのは、アズマの後ろにいる千

歳も同じように声を上げたからだ。

そんな三人の疑問の声を無視する形でアズマは続ける。

 

「もともと、あそこまで事を大きくするつもりは無かったんだ・・・。ばれない様に穏便に以降と思ったんだが、そちらの局員方が優秀だったのと、うちの千歳が頭に血が上りやすいタイプでねー。あんな形になってしまったんだ」

「ちょ、アズマ!頭に血が上りやすいってどういうことよ!?」

「・・・今のお前そのまんまじゃないか」

 

うっと千歳は言葉をなくす。

――よく分からないけどまた向こうのペースに持っていかれそう・・・――

そう思ったなのはは思い切ってもう一つのことを聞いてみた。

 

「局のことについては分かりましたから、その、他には・・・?」

「ああ、それは・・・」

 

アズマがコートの懐に手をいれ、そして何かを取り出した。

それは

 

「ジュエルシードの保管ケース!?

 

フェイトが驚きの声を上げる。

それもそうだ。あの二人はそれを奪っていったのだから、ここで取り出してしまえば奪い返されることを想定するはずだ。

不要人ではないか、となのはは思った。

アズマはケースから蒼く輝く宝石を三つ取り出す。

間違いなくジュエルシードだ。

なのはとフェイトには見間違うはずも無い。

かつてその事件の当事者だったのだから。

アズマはそのケースからジュエルシードを3つ取り出し、

 

「こいつを3つほど、そちらへお返しするよ」

 

手のひらを押し出すようにかざし、3つのジュエルシードがなのはたちのほうへ飛んでいく。

突然だったがすぐにジュエルシードをなのはがレイジングハートで確保する。

 

「・・・どうして3つだけ返してくれるんですか?」

 

フェイトがもっともな疑問をアズマに投げかける。

 

「理由は簡単。その3つ、というか、必要なのは9つだけで十分だからさ。そうとしかいえないんだが、満足か?」

 

 

 

やっぱりなんだかよく分からない人たちだ、と改めてなのはは思った。

ジュエルシードの基本概念は“願いをかなえてくれる”だ。

数が多ければ多いほどその効果は増加する。

ただ、秘められた魔力量がとんでもなく、発動すれば間違いなく災害級のなにかが起こってしまう。

最悪次元震、そして次元断層が発生して世界が滅ぶということも十分ありえることだ。

だからこそロストロギアに指定され管理も厳重におかれている。

 

「でもあなた達はそのジュエルシードを起動しようとしているんですよね。それはとても危険なんです! だから、何か少しでもいいんです、お話を聞かせてください!」

 

それを聞いたアズマは左手をあごの下に当て、しばらく考えるようにし、

 

「うーん、まあちょっとくらいならいいかな・・・? 分かるとは思えないけど」

「ちょ! アズマ、あんた何言ってるのよ!」

 

アズマの後ろにいた千歳が強気に詰め寄った。

その顔には困惑と怒りが混ざったような複雑そうな顔をしていた。

 

「言ったって分からないだろうっていったのはあんたでしょ!?

「どうせあの様子じゃ言うまでしつこいだろ? だったら大まかなことだけ話しておけばいい、違うか?」

 

それを聞いた千歳はまたしぶしぶと後ろへ下がり、そのままそっぽを向いてしまった。

どうやらあの二人、アズマのほうがイニシアチブは上のようだ。

 

――歯止めの利かない女の子と、それを抑える保護者・・・かな?

 

こんな状況でなのはの頭の中はそんなことを考えていた。

 

「じゃあ、そっちの一生懸命さにお応えして、大まかなところははなしてやろう」

 

ようやく話してくれる、と、少し期待を抱いたなのは。

 

「俺たちの目的は・・・」

 

少しだけ間をおき、再び口を開く。その間隔なのはには少し長く感じられた。

 

「・・・故郷へ、“俺たちの地球”へ戻ることさ」

 

なのはもフェイトもその言葉を聞き、

 

「な、なんでそういうことを早く言わないんですか!?

 

となのは。

 

「そうですよ。それにその目的ならわたし達で何とか・・・」

 

できます、とフェイト続けようとしたのだが、

 

「あー、言っとくけど、あたしたちの目的地は“あたし達の地球”であって、“あんたたちの地球”じゃないから、そこんとこ勘違いしないでね」

 

千歳が釘を刺すように横から口を入れた。

 

一体どういう意味だろうか?

なのはもフェイトもそろって首を傾げてしまう。

地球とは自分達の―なのはとフェイト―のところだけじゃないという事なのだろうか?

なのははフェイトに聞いてみようとしたのだが、フェイトも首を振ってくるので同じことだろう。

 

「分かりやすく言ってやる」

 

困惑しているなのはたちにアズマが口を挟む。

 

「俺たちは以前次元転移魔法を使って、地球を探して帰ろうと試みたことがある。で、その時は確かに地球に着いたのさ」

「じゃあ、なんで今こんなことをしてるんですか!?」

 

なのはにはもう分からなかった。彼らが何を言いたいのかが。

 

「そこはたしかに地球ではあったが・・・俺たちのいた地球ではなかったんだよ・・・。なぜならだ」

 

 

 

 

 

「その地球には・・・俺たちがいたからさ・・・」

 

わざと自嘲気味な顔で喋ってみる。もちろん話の内容は本物だ。

少女二人は明らかに動揺した感じだ。

 

「どういうことですか!?」

「さあなあ、俺にもよく分からん。だから、見逃してくれないかな? やることや

ったらジュエルシードは返すさ」

「っ・・・!そういう問題じゃないですよ!」

 

白い服の少女、なのはが必死な形相で叫ぶ。まあ、無理もないが。もしも失敗なぞしようものなら次元震やらなんやらでヤバイことになるのは明白だ。

と、うしろから千歳が何事かを言ってきた。

 

「なんだ?」

「…もう火炎の牢獄(イグニートプリズン)がもたない」

 

どうにも不安げな口調だ。つまり…

 

「つまりはタイムアップか…。もう少し言っておきたいことがあったんだがな…それを言っておかないと」

 

アズマが言い終わるよりも早く周囲の炎が拡散していく。

千歳が言っていた効果が切れたのだ。

と同時に、黒いコート――バリアジェケット――を纏った少年がこちらへ向かってきた。

 

「なのは! フェイト!」

「クロノ君!」

「クロノ!」

 

二人の答えようから、あの黒い子は仲間、つまり管理局員と見ていいだろう。

 

――ならここはこれでお開きにするか――

 

「そこの二人」

 

アズマの思考を中断させるように黒い少年がこちらへ向かって話しかけてくる。

その手には、青い杖が握られている。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。なのはやフェイトから聞いてるだろうが、君達には管理局襲撃とロストロギア強奪の容疑がかけられている。すぐに投降してくれれば…」

「はいはいはい、そのくだりはもう聞いている。答えは、今のところNO」

 

黒い少年、クロノの長いくだりを聞くつもりはアズマにはなかった。

同じ事を最初から聞いていれば時間の無駄でもあるからだ。

 

「申し訳ないが、君達はもう包囲されている。大人しくしてくれないか」

「なんですって!?」

 

クロノの言葉に千歳は驚くが、アズマはそう驚かなかった。

むしろそれは想定の範囲内だ。

なにしろあれだけ時間が掛かっていたのだから、それだけの準備をさせる時間はあるはずだ。

 

・・・・・・・・・

 

「そうか…、ならこっちにも考えはある」

 

 

 

 

青年―アズマ―が左手を前面にかざす。

黒い手袋に包まれたその左手から深緑色の光が溢れてくる。

それと同時に、その部分から魔力のようななにかを、クロノは感じ取った。

それが何なのか、今は分からなかったが、後で無限書庫のユーノに調べてもらうか。

このときクロノはそう思っていた。

 

アズマの左手から溢れてきた光が少しづつ収まってきた。

そこから現れたのは…

 

「なに!?

 

クロノは驚愕した。

なのはもフェイトも同様だ。

 

アズマの左手の下に現れたのは、両手を口の前に持っていって震えている幼い子供だった。

さらに右手には、先ほどなのはたちの前で消した大鎌が握られており、その刃が子供の首の前にある。

 

つまりこの子は……人質…。

 

「もう回りくどいことは無しでいかせてもらう」

 

今までのものとは違い、アズマの低い声が当たりに響く。

 

「ディストーションフィールドを使える人材を、俺たちの事件の担当チームに入れろ。要求が飲まれないときは…分かるよな?」

 

大鎌の刃が鈍く光り、子供の首筋にさらに近づけられる。

子供がさらに縮こまるように怯える様子を見せる。

 

 

 

クロノもなのはたちも動けなくなったようだ。

それを確認したアズマは千歳に「戻るぞ」と告げ、ずっと開いておいたゲートに足を運ぶ。

 

「ちょっと…それ(・・)は何なのよ? わたしは全然聞いなかったわよ…」

「あとで話す。今は戻れ」

 

千歳の疑問も一蹴させ、戻るように促す。

なにやら疑問ありげな表情で千歳はアズマを見つめるが、おとなしくゲートに入っていく。

千歳が入ったこと確認したアズマは、改めてなのはたちのほうを見つめる。

 

「さっきの要求、忘れるなよ」

 

釘を刺して、ゲートの靄に包まれていく。

 

 

 

 

なのはもフェイトもクロノも、何も出来なかった。

まさか人質までとってあるとは、想定していなかったのだ。

二人が靄の中に消えていくまで、三人はじっとしているしかなかった。

そして完全に靄が消えたとき、最初に言葉を発したのはクロノだった。

 

「…二人とも、すぐに局に戻るぞ。いろいろとやらなければいけないことがある…

 

クロノ言葉は重かった。

そう、やらなければいけないことは沢山ある。

あの人質となってしまった子のこと、要求のこと、彼らが言っていた目的のこと。

そう考えると、3人の足取りは重くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

4話  完

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

なにが書きたかったのでしょうか、僕は…()

もう本当に、考えれば考えるほど難しくなっていく…(つД`)

ぶっちゃけこの話で書きたかったことは、最後の部分がほとんどです。

後のところは、どうやったらうまくつばがるかと考えた部分ばかり…。

 

そうです、うん、すごく微妙なんだ・・・。

 

でもこれ以上書き直すとさらに分からなくなりそうなのでここで妥協。

 

この第4話は、実は5回以上書き直してるんです…。

うまく纏まらなかったので()

 

今は、「さーて次の話はどんなふうにつなげようかなー」などと考えています。

 

 

それでは次回にお会いしましょう。




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