幕間 其の二
彼はいつも1人だった。
同時に研究する事があっても、いつも1人だった。
だがそれに興味を持った男が1人。
いつしかその男と彼は一緒に研究を行うことになった。
気付けば男の周りには彼と同じ様な境遇を持った人が増えてきた。
そうして彼らは誰に命じられたのか分からないが、研究を続けた。
研究が成功したが、彼らは解体を命じられた。
彼はまた1人になった。
彼は歩いていた。
荒廃の続く町並を見、そして今も崩壊せんとする城壁を。
彼の国は今も人によって滅ぼされる所だった。
瓦礫の下からはまだ、生ぬるい赤い雫が一滴一滴と落ち、町は焼かれ、いたるところで悲鳴も上がっていた。
焼ける匂い。息つく暇も無く、彼は廃墟になろうとする町を後にする。
彼がいくつか歩けばそこは草原だった。
前に敵国の兵達がいた。黒い鎧のせいか、まるでその膨大な数の兵から黒い霧のようだと彼は思った。
彼は絶望した。
彼は常に最善を施そうとした。
目の前で人が死にそうだった。
彼には助ける術が無かったわけじゃなかった。
だからその人を救おうとした。
だがその人は「ありがとう」と告げると、崩れ落ち、その人は動かなくなった。
彼は嘆いた。
己の力不足を、そして人という物に。
彼は見つけた。
人が人でいるために必要な事。
人として人ができうる最良の選択を。
絶望したこの世の全てを救う方法を。
だから彼はいつも1人でいた。
あの人は笑う。
「さて救済を始めようか」
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