夕闇から夜に変わろうとしている時刻。
 目の前には一人の今は顔を伏せている女の子。そして向かいに立つのが俺こと志麻恭司。
 ここは私立聖祥大学付属中学校という我が学び舎の屋上。そこに俺ら二人だけがぽつんとそこに立
っている。
 俺は待つ側、彼女は待たせる側。
 凄く胸がドキドキする。ここまで緊張したのは1度目か3度目か。ただ、この前の緊張から時間は
それほど経っていない事だけは確かだ。心地よい緊張とは違う、焦燥だけが占められているこの緊張
は凄く、もの凄く耐え難い。
 俺が発した言葉からどれだけ時間が経っただろうか。10秒か、1分か……はたまたそれ以上なの
か定かではないほど時間の感覚が曖昧になっている。
 彼女に投げかけた一つの言葉、これがどれだけ彼女に伝わったか。
 そして彼女がゆっくりとだが顔を上げ、俺の目を見る。見てくる。

「ごめんなさい」

 終わった。色々な意味で終わった。けど俺だって人だ、何故なのか気になるところだった。だから
問うた、何故と。

「その……私、彼がいるし。えと、だから」

 そういうと彼女は踵を返し屋上から出て行こうとする。
 あ、と情けない声を出してしまった。そうして、その屋上と校舎を隔てる扉を前にして急に彼女が
振り向いた。

「志麻君の事、知らない仲じゃないし嫌いじゃないよ。でも……その、ね」

 いや、訳が分からないから!
 そうして、彼女はこの二人だけだった世界から消えた。
 というかだ、何故俺はこんな恥ずかしい思いをせねばならないのだ。
 ただ、悪友に誘い方を教えてもらい、そのまま実行した。それだけなのにだ。何故こうも喪失感が
ある?
 そうだ、呼び出すのを手紙にしたため、その手紙を女子の校舎にある靴箱に入れ彼女が放課後に来
るのを待った、そうただ待って用件を告げた。
 ――いやまて、何故こうも疑問に思わなかった、主に悪友を。
 俺はただ数日先にある小テストの点数がこのままだと非常にまずいので、一日だけ勉強を教えても
らおうとただ、懇願しただけ、だったような気がする。そしてその時俺の台詞はこうだった気もする。

「えっと、色々と教えて欲しい事があるんだ。だから俺と付き合ってください」

 ふと自分の行動を振り返る。そしてその行動に似ている行動、当て嵌まる項目は一つだった。それ
は明らかに先ほどの俺と同じだった。
 そう。

 勉強教えて貰うだけなのに、なんで告白シーンになってるんだああああ!?














             魔法少女リリカルなのは 救うもの救われるもの


                     第一話「日常」














「憂鬱だあー」
「い、いきなりなにー恭司くん」

 ところかわって、あの凄く恥ずかしい場面からいつも贔屓にしている喫茶店にやってきた。
 『翠屋』
 ここ海鳴に住んでいて、知らない人はそうそういないとされるくらいの店。
 なによりケーキ、それ以上にシュークリームがおいしい。まあそれはここのパティシエの腕が確か
だからなのだが。
 しかし、甘味処ということで圧倒的に女性客しかいない。だが俺は気にしない。俺は甘味を求める
者だから。

「うあああ、思い返すとダメージが! 主に肝臓とか胃のあたりとか!」
「い、痛いの?」
「いや、実は痛くない。心が……そう心が痛いのです」

 だがしかし、今の俺はつうこんのいちげきを受けて瀕死なのだ。
 そんな俺の前に座っている少女がこの店のパティシエ桃子さんの娘で末っ子、高町なのはだった。
 目の前にあるシフォンケーキをフォークでつつきながら喋る。それに倣うようになのはもケーキを
つつき、食べる。
 ああうまいなー、癒されるなー、精神ゲージっぽいのが回復されるー。

「んくっ。――――ふぅ、でもいきなり閉店直前にやってきて、
 ケーキあるだけ下さい。って言うからビックリしたよ」
「いや、まあちょっと傷心なんだ俺」

 実はなのはの後の台詞には、あ……やっぱ5個で。そして財布を見て、すいません3個で……と続
く。我ながら情けないものだ。中学生とはかくも辛いものなのだよ。
 ふと、後ろに気配。

「何があったのかは知らないけど、私のケーキを食べに来る辺りやっぱり恭司君なのね」

 座ったまま振り向いて確認すると気配の主は桃子さんだった。
 現在翠屋は閉店時間。ご厚意に預かっている。
 そしてこの桃子さんは翠屋のパティシエにして、この人がいなかったら今の翠屋はなかったと言わ
れるほどの人物。そのうえ目の前に座っているなのはの母親でもある人だ。
 ――この人3児の母なのになんでこうも20代、悪く言ったとしても20代後半にしか見えないの
だろうか。
 そしてわかっているからこそ、言わなくちゃならなかった。禁句を。

「あ、桃子おばさん」
「――――恭司君、あっちで恭也が美由希にマッサージしているの。
 一緒に……どう?」
「すいません、誠心誠意遠慮させていただきます桃子さん」

 さすがに握力80kg超のマッサージは受けたくない。そしてなにより桃子さんの笑顔が怖い。な
んでそんな笑顔なのに目が笑ってないんですか、怖いですよ。
 ちょっと耳を澄ますと「ああああ痛いイタイいたい痛い、痛いよ恭ちゃん!」「愚妹め、この程度
で疲れた等というからこうやってマッサージをしてやっているのではないか」等と聞こえません聞こ
えてませんよー。
 ちなみに高町家は恭也さんが長男。美由希さんは長女、そしてなのはが次女だ。まだ名前が出てな
いけど、士郎さんが父親で翠屋のマスター。
 しかし。

「珍しいですね、高町家総員で翠屋にいるなんて」
「あ、違うの。士郎さんが仕入れで北海道まで出ていてね?
 それで恭也と美由希に手伝って貰ってたのよ」
「ああ、なるほど……しかし北海道ですか、相変わらず無駄に行動力のある拘りですね」
「ええ今度はコーヒーにいれるミルクを自分で探して持ってくる、なんて言うのよあの人」

 いつだったか忘れたが昔、士郎さんには放浪癖があったと聞く。今では桃子さんと結婚してそんな
ことをしないと思っていた矢先に――

「卵に納得がいかない探してくる 俺は探すなby士郎」

 などと書置きした紙が1枚だけあったと聞く。
 しかし探すなと書いてある辺り、実は探してほしいんじゃないかとも思う。
 そして当然誰も探しに行かなかった。その事で少し士郎さんが落ち込んでいたなんて事は記憶にご
ざいません。
 だが実際、持ってきた品物はどれも1級品で文句の付け所がないため性質が悪い。

「ところでなのはは?」
「ただの暇つぶしじゃないかしら」
「酷いよーお母さん、私だって手伝ったよ」

 冗談よと笑う桃子さん。
 そういえば、なんだかんだとこの高町家と関わりを持って早4年が経つ。そろそろ5年か。
 ま、出会った頃が一番思い出したくない時期には変わりはない。
 そういえば士郎さんがいないとなると……。

「士郎さんから何か俺宛に預かってません?」

 現在、俺は士郎さんの元色々と身体を鍛えている。色々とあってとりあえず大事なのはまず自分を
鍛える事からだろうと思い、士郎さんにお願いしたのだ。
 士郎さん、恭也さん、美由希さんはそれぞれ剣術? をやっているみたいで、その事を知った俺は
まず身体を鍛えてもらおうと思い剣術はやらないけど、弟子入りした。
 士郎さんに正直なところ弟子というより、手のかかる息子みたいな感覚だ。と言われたが。それで
もいまのいままでずっと鍛え続けている。
 最近では足が主体の動きを教えてもらっているが。

「ええ、そのことで話があったの。でも……その前に」

 凄く嫌な予感がする。桃子さんがこの笑顔を見せたときが一番性質が悪い。そう、この好奇心丸出
しの笑顔だ。

「一体、今日何があったの?教えてくれないと、士郎さんから預かったもの見せないわよー」
「そうだよ、いきなり憂鬱だあー。なんて言われたら気になるよー」

 まずい、桃子さんはなのはを味方につけた!
 こうなったら、えっと……ああもうどうするか……。

「さて、逃げれるだなんて思わないわよね」

 あ、ああも、桃子さんなんで隣の席に座るんですか。近いです接近しすぎです! ちょっとお菓子
の甘い匂いがするなとか一切思ってませんよ!?
 そしてなのはよ、何故俺の目をじっと見る! お、俺はそんな純真無垢な目に負けないぞ!
 なのは と ももこ は じじょうをききたそうに こちらをみている。
 事情をはなしますか?

「――――実は……」

 俺は弱い。
 ああ、こんなふうに目を見られたら誰だって言うだろ。だって目の前にはそろそろ中学生一歩手前
でやっぱり桃子さん似で将来有望な少女と、明らかに見た目20代な美人女性がこうも近寄り目を見
られたら誰だって、すんなり話すよ……ね! ですよね! そこストライクゾーン広すぎじゃね? 
とかツッコミいらないデスよ!?
 そうして経緯から経過、結末まで事細かに説明した否、自白した。もうどうにでもなれー。
 ……結果、笑われました。いえあの、そこまで笑われると正直へこみます。しかも恭也さんや美
由希さんまでいつの間にかホールのほうにやってきて笑ってるし。

「はー、傑作だわ。いい、いいのよ恭司君。貴方はそのままでいてね!」
「くくく……、い、いいねえきょー君。美由希さんは大いに笑わせてもらったよ」
「ははは、お前はもう少し人を疑うということくらいは覚えたほうがいいな」
「えっとその、恭司君が、がんばって?」

 ああ、なのはお前だけが俺の味方だよ癒しだよ。でもどもってるあたり、後で話し合おうか。そし
て美由希さんは後で恭也さんにお願いしてデコピンです。

「はあ、それと士郎さんからの言伝は『恭也に任せる』
 それだけだったわ……、相変わらずストレートねー」
「いえ、それ放任って言いません?」
「あらそうとも言うわね」

 はあ……。相変わらずだな、予想からしてみるに恭也さんと打ち合って錬度を高めろってことなん
だろうけど。
 せめて美由希さん相手にしてくれないかなーと淡い期待を持って恭也さんを見る。凝視!

「……?」

 気づいてもらえない!?
 後でこっそり、お手柔らかにとか言うと「そうか手加減か、そこまでお前は弱いのか」なんて言っ
て、俺のこと煽ってくるしなー。それに乗せられる俺も俺だけど。

「ケーキご馳走様でした、相変わらず美味しかったです。
 とりあえず一回家に戻ってから行きますね。あ、食器は自分で洗っておきます」
「ああ、いいのよ食器くらい恭也にやらせとけば。
 それじゃ美咲さんにもよろしくって伝えておいてね」
「高町母、俺は小間使いではないぞ」
「今の貴方は小間使いよ」

 あ、恭也さん見た目そんなに変わってないけど顔が引きつってる。多分あのストレス行き先は美由
希さんなんだろうなあ。
 美由希さんご愁傷さまです。

「ん、きょー君何かな?」

 いえ、せめて俺だけでも見送ったほうがいいと思いまして。

「? なんのことか分からないけどありがとねー」

 美由希さん、もう少しだけ人の観察眼鍛えたほうが良いです、ほら後ろに般若が立ってます。
 あ、引きずられていった。まああの人も間違いなく剣術を習ってるわけだし大丈夫、うん大丈夫。

「それじゃ、お暇しますね。ではまたあとで」
「はいはーい、またねー」
「またです、恭司君」

 その前に、残っていたシュークリームを買おうとしたら、止められていくつか余分に渡された。
 結構お世話になってるのに、なんだか気を使わせてしまったような気がする。
 しかし、こうなった桃子さんは「いいのよー」や「子供がそんなの気にしないの」と言い、取り付
くしまもない状態になるので、ここは諦める。好意は素直に受け取っておくべきだと思うから。
 こうして俺は翠屋を出、家路にへとつくのである
 それにしても……

「んー、寒いなー」

 ついつい言葉に出してしまうほど、外は寒かった。
 ほう……と息を吐くと白く浮かび上がる。
 そして空を見上げると既に黒と白の世界。星は綺麗に光り輝き、周りの漆黒を照らし出すように月
もまたぼんやりと光瞬いていた。
 現在暦の上では2月、春にはまだ少し遠い時節。
 海鳴では海が近いので潮風が結構吹いてくるので、風が特に冷たい。
 ちょっと身動ぎしてマフラーとコートが着崩れしていたのを直す。風が直接肌にあたると寒いどこ
ろか痛い時がある為だ。
 そうして、いくらか時間がたっただろうか。目の前には我が家でもあるマンション。
 おや、エントランスにいる人物あの後姿は……。

「おーい、クロノじゃないか」
「ん……? ああ志麻か、学校にしては遅い帰りだな」
「お、おお。翠屋寄ってからだったからな、ホレ」

 右手で持っていた翠屋のシュークリームが包まれている翠屋の紙箱を掲げる。
 しかし、何気に遅いとか分かるものなんだな。
 彼はクロノ・ハラオウン、言うなれば年の近い友人だ。
 そうして、一緒にエレベーターに乗る。

「クロノこそ家に帰るのは久しぶりか? 
 何してるのか未だに知らんが、フェイトやリンディさんに心配かけるなよー?」
「何度も言うようであれだが、一応母さんやフェイトは何をやっているのか分かってるから大丈夫だ、
 まあ家に帰る回数がちょっと少ないのは分かってはいるんだがな」

 苦笑交じりに、これも仕方のない事なんだが、と付け加えた。
 こいつもこいつでなんだか大変そうだな。そういやフェイトもたまに家に帰ってないとか言ってた
な、あの不良っ娘めあとで成敗ぢゃ。

「あまり人の義妹、苛めるなよ?」
「おお、怖い怖いお兄様ったら。って苛めてるってなんだ人聞きの悪い。
 というか表情で考えてること読むな! お前が一体何者なのか分からなくなってくる」
「経験から生かした観察眼が鋭い人、とでも思ってくれ」

 少しだけ浮ついた感じが急に重たくなる感覚がする。そうエレベーターが目標の階についたのだ。
 そして俺とクロノはそのまま一緒に出る。

「ん、そうだ結局大目に貰ってきてたんだった。
 おい、クロボー。翠屋のシュークリーム余ってるからあとで家に来い」
「クロボーって僕の事か……訂正してくれたら、向かってやる。
 それが嫌なら自分で我が家に来るんだな」
「おー、すまんすまんクロック」
「……」
「……」
「……」
「すいません、スルーは勘弁してくださいクロノ様」
「分かればいいんだ分かれば」

 そうして、間もないうちに俺らは自らの家の扉につく。

「じゃ、後でな」

 と俺は右を向き、ノブに手をかける

「僕が行くとは限らないがね」

 クロノは左を向く、既に扉は少し開かれている。
 そうして間もなくして両方の扉は閉められる。
 ハラオウン家と志麻家はお隣同士、ハラオウン家は1年とちょっと前に引っ越してきた。
 フェイトとなのはがどうやら友達だったらしく、なのはに紹介してもらった時、ついつい「なんだ
このパツキン少女は!?」と叫んでしまった。
 しかし前例としてアリサを紹介してもらった時も同じ事を言っている辺り、俺は成長していないと
思った。
 そうして、今に至る。靴を脱ぎリビングへ。

「ただいまー。おーこの匂いはカレーだな、まあ外からも少し匂いがしてたけどさ」
「おかえり少し遅かったじゃない」

 キッチンに向かうと、そこには母が立っていた。
 志麻美咲、正直自分では感覚が分からないのだが。翠屋の高町桃子、お隣のリンディ・ハラオウン、
そして我が母、志麻美咲。
 ご近所では美人妻ということで有名らしい。しかし俺の母さんはそこまで若く見えるかねー?

「翠屋行ってきてたんだ、おみやげにシュークリーム買って来たよ」
「どうせ、お代はいいからとか言われて貰ったんでしょ。
 今度高町さんに会ったらお礼言っておかないと」
「うぐ……まあそれで途中クロノにあってさ――」

 と経緯を話す、その途中途中で自分の部屋に戻り着替える。
 すると、しばらく経ってからチャイムの小気味いい音が鳴る。

「きたみたいだ、そいじゃちょっとお裾分けと行きますか」

 そうして玄関へ、戸を開ける。すると――

「――あ、今晩は」
「おや、クロノは? あいつに来いって行ってあったんだけど」

 予想に反して我が家の玄関前に立っていたのはクロノではなく、その妹のフェイトだった。
 うむ、挨拶と一緒に頭を下げるとは、相変わらず礼儀の正しい金髪っ娘だ。何処かの金髪にこの娘
の爪の垢でものませてやりたいところだ。そう考えている間に『何ですって!?』等と幻聴が聞こえ
たが無視だ無視。

「あ、クロノは帰ってきてこのこと伝えたらすぐ寝ちゃって……、
 それで私が代わりに」
「むむ、そうなのかそこまで疲れてるとは思いもしなかったな、
 まあいい立ち話もなんだし上がってくか? というか上がりなさい」
「ぇ……」
「ほれほれほれ、あがったあがった。
 ――ん、そういえば今は髪結んでないのな。下ろしても似合ってるぞ」
「あ、ありがとうございます」

 そうしている間にもリビングへ。
 あとは煮込むだけなのか、母さんはソファーに座ってテレビを見ていた。

「おーい、母さん我が家にとうとうパツキン美少女が入荷だ。
 これで我が家のジャンルも増えたわけだ、これからよりどりみどりになるやもしれん」

 すると、母さんはテレビから目を外し俺らのほうへ向く。ものごっつ笑顔だった。

「やるわね恭司。でも誘拐はいけないわ? そこで待ってなさい今電話するから」

 すかさず母さんは立ち上がり、電話の元へ。
 させまいと俺は母さんと電話への間に立ちふさがり進路を阻む。

「待て、どこに電話するつもりだ。
 まさか例の100と10を足した番号ではなかろうな」
「分かってるじゃない、ほらそこにいられると電話とれないでしょ」
「や・め・れ」

 はいはいと、そのまま母さんはまたテレビに向かった。
 と、肝心のお客を待たせたままだった。そのお客さんは控えめに笑っていたが。

「さて、と。ほいこれがお裾分け翠屋のシュークリームだ。
 桃子さんから直接貰っちゃったからな、ハラオウン家にプレゼントだ」
「ありがとうございます。あ――今日なのはに会いました?」
「ん? おう会ったぞ」

 思案顔になるフェイト、何を考えているのか分からないがなのはの事を心配している……というの
は分かる、本当にこの子らは仲がいいな。
 フェイトはそのまま顔をあげ、俺を見てくる。
「今日のなのは学校についてからちょっと元気なかったんです。
 恭司さんは会って何か感じませんでした? 元気なかったり悩んでたりとか、
 えとえと……何でもいいので教えてください」

 本当に仲がいい、なのはが羨ましくなった。
 俺にはここまで心配してくれる友達がいるだろうか、もしなのは達にそう思われているなら正直嬉
しいが。
 それにしてもこの子らは心を過敏に感じてくる、悩んでたり元気なかったりしたらすぐに分かって
しまうほど。

「そうだな俺が会ったのは翠屋でなんだが、少し言葉少なかったかな。
 んー、あと気づいたとしたら、俺を見て話あまりしてなかったような気がする」
「あ……そうですか。ありがとうございます」

 何か思うことがあったのだろうか、笑顔で返してくれた。きっとなのはを元気にしてくれるのはき
っとフェイトが1番だろうな。いやアリサやすずか、はやてあたりもきっと同じだろう。
 それもなのはに元気がないなんて一目で分かるのなんてな。

「あと、気になることだが。最近俺に何か言いたそうにしているのだけは分かるな。
 話したいけど話していいのか分からない、そんな感じがここ1年の間、何回かあった気がする。
 まあ無理に聞き出す事でもないと思っているから、ずっと黙っていたけどな。
 と、こんなとこかな? なのはの事は」

 俺も笑顔で返す、なのはの事は心配していないといわんばかりに。
 そうして、今日は有難うございましたとまたしてもお礼をしたフェイトは、シュークリームの入っ
た紙箱を持ってそのまま家へと帰っていった。

 きっと、こうやって彼女達は大人になっていく。
 俺にはまだ、そういう大人になるという感覚がない。ただがむしゃらに前だけを向いて走っている
だけだ。あの子達はどうにも考え方が妙に大人びていると感じる事が多い。
 それはもしかしたら俺以上に大人なのかもしれない。俺には横を向いて『何か』を心配しているほ
ど余裕がない。だけど彼女らは前を向いて、それでいて横にいる『誰か』と一緒に走っている。
 俺もいつしかそうなれたらいいなと思う。
 もしかしたら、なれずそのまま大人になってしまうのかもしれない。そうなったら少し悲しいけど、
きっと殆どの大人がそうなのかもしれない。
 それを思い、俺はこの日常を謳歌する。
 これはいつまでも変わらないのだと、心に深く刻み込み……。

 ちなみにこの後高町家の道場にて、ぼっこぼこにされてやりました。
 恭也さん、さすがにもうちょっとだけ――悔しいですが――手加減してください……。



























【あとがき】
 はじめまして、きりや.と申します。
 ここまで読んでいただきありがとうございます。
 実はこれが初めての小説執筆なのですが、つたない文章と表現力の無さに現在痛感しております。
 テイストとしては純粋に物語を楽しんでいただけたら幸いです。
 この話だけ主人公視点にしており、これ以降は全て三人称の予定。
 次回以降あとがきはありません。最終回まで書ききれたらまたお会いいたしましょう。

 誤字・脱字・言い回しなど気づいた点などがあればご指摘ください。






作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。