「じろじろ見てんじゃねえよ。たっく……」



……………………



「…………………」



「なあ……」

「何よ……」

「今俺たちの前を通り過ぎたのって……人面犬?」

「……げ、幻覚よ」





「譲ちゃん……現実を見ろ」

「黙りなさい幻覚」

「つうかマジでいたのか……」









時空を駆けちまった少年



夏休み外伝? With ティアナ KIMODAMESI












さて……今俺はティアナと一緒に廃校になった小学校に来ています。

今日いきなり呼び出しをくらいここにいます。

なんでよりによってこんなところに……



「……さっきのは地球原産の変な犬ね。そうよ。そうに違いないわ。さあ無視して行くわよ」

「待て。どこに何をしに行くかを説明しろ。25文字以内で」

「この目の前の廃校舎にあるロストロギア回収に行くわよ」



きっかり25文字で答えやがった。シット。

……えっ!? 待て。ここに突入するのか!?



「帰ろうとするんじゃないわよ」



ガシッと俺の肩を掴み振り返って俺を止める。



「放せ。俺は関係ない」

「か弱い乙女をこんな怖いところに1人で行かせる気?」

「誰がか弱い。その言葉は元機動六課女性陣および数の子軍団には一生適用されることはない。いや、使うことすらおこがましい言葉だ」

「撃つわよ」

「あなたはか弱い素敵な乙女でございます」



しっかりと俺を掴みつつ眉間にクロスミラージュを突き付けてくる。

目なんか素敵に俺を睨みつけていらっしゃいます。

うう……俺泣きたい。



「つうか何故俺が……」

「半分嘱託魔導師みたいなものだしあんたの故郷の世界だから丁度よかったのよ」

「俺は局に所属した覚えはない」



勝手に局員にするな。

誰があんなとこに好き好んで勤めるか。

それにまだ16だぞ。遊びたいお年頃なんだ。



「素直に1人じゃ寂しかったと言え」

「ところでアギトは?」



無視かよ。

相変わらずだねこの人。



「アギトはシグナム師範のとこ」



昨日から師範が結構大変そうな任務に就くと聞いたので念のためアギトがいた方が心強いと言われたので行かせた。

まあアギトもここんとこ戦闘してなくて鬱憤溜まってたしいいだろ。

ぶっちゃけ俺より師範とユニゾンしたほうが強いし。



「……まあいいわ。装備くらい持ってきてるんでしょうね」

「ねえ」

「……はっ?」

「全部今点検中」



たまにはメンテしないと。

ちなみに管理局にはしてもらってない。

してもらったら、してもらったで絶対弱みにつけこんで入局させられる。

リンディさんとかに。あの人口がうますぎ。





「……まさか今のあんた」

「丸腰です」

「何しにきたのよ!?」

「呼び出しといて何いうか!?」

「言ったら絶対来ないでしょうが!?」

「こんな出そうなとこに誰が来るか!」



滅茶苦茶怖ええじゃねえか!

見てみろ! 夕方くらいのはずなのにここだけもう真っ暗で、カラスが鳴いてて草や木も荒れ放題。

ガラスも割れてるは校舎も木造建築で風でギシギシ言ってるわ……

100%出ますがな!



「し、仕方ないじゃない……任務なんだから……お化けが怖いなんて理由で断れるわけないでしょ……」

「いやそれはそうだろうけど……」



ミッドじゃお化けとかいないとかいうのが普通だからな……



「だ、だからその……」



泣きそうな、恥ずかしそうな感じでちょっと潤んだ瞳でこっちをチラチラと見て来る。

そ、そんなデレ期に入ったツンデレみたいな顔で見るなよ……

おまえはツンデレじゃなくてツンツンだろ……



「……わかったからそんな目で訴えないで……」

「……ありがと……」



ボソッと言うのも反則だって……













校舎の中にいざ入ってみればマジでボロい。

1歩歩けば床はギシギシと軋むし横風は入ってくる。

ところどころ床が抜けてたり、凹んでいたり、埃も木の屑も錯乱している。





「ふ、雰囲気あるな……」

「へ、下手なお化け屋敷より怖いわね……」



いや今まさに本物のお化け屋敷にいるじゃねえか。

ちなみに今は懐中電灯をつけて2人でくっついた状態で歩いている。

柔らかいものがあたるが……怖すぎて堪能できない。



ガタガタ!と大きな音が後ろから聞こえる。





「ぎゃああああああ!?」

「きゃあああああああ!?」





おもいっきり叫んで後ろを確認せずにティアナを引っ張ってダッシュ。

あまりの勢いでティアナの足は浮いていた。



「あああああああああ!」

「ちょ!? 落ち着けーーーー!」



出たーーーーーー!?



「ただの強風で教室の扉が揺れただけよーーー!」













「この馬鹿ケイ! あんなでビビるな!」

「……すんません」



2,3分走ってやっとこさ落ち着いてきてティアナの止まれの声が聞こえた。

そのまま説教を喰らった。

だって怖かったんだから……



「なんでなのはさんに喧嘩とか売ったり、事件でもそれなりに戦ったのに臆病なのよ……」

「……多分それが恐怖体験過ぎたからなったのかと……」



はっきり言う。

強くもなったが臆病にもなった。

てか幽霊とかはまた別モノじゃない? こっちの攻撃効かないかもしれないし。

夏の特番の恐怖体験とか見てみろよ。怖くて夢に出ないか心配になるじゃねえか。





「はあ……とりあえず探すわよ。2人で」

「別々に別れないでか?」

「………だって1人じゃ怖いじゃない」



お前もやっぱ怖いんじゃん。

まあ別々にとか言っても絶対拒否したけどさ。

結局またくっつきながらおっかなびっくりな感じでゆっくりとロストロギア探索に向かった。











「中々見つからないわね」

「普通教室はあらかた見たし……残るは特別教室か……」



校舎は2つに別れてるようで普通の教室のある塔は今あらかた見終わった。

とくに何も出ずホッとしたぜ。



「あっちの塔行ってみましょ」



何も起きなかったので慣れてきた俺達。

さっきまでのようにくっつくことはなくなった。



「そういやこれって初の2人での任務だったな」

「そういえばそうね。てか任務あんたしたことあったっけ?」



ううん。ない。



「記念に写真でも撮るか」

「いいわよ」



クロスミラージュに撮影してもらいついでにスバルに送ってやる。

この任務のこと怖くて実はスバルに相談してたらしく、俺を連れてったらというのが答えとして出たらしいから大丈夫そうだと途中経過の報告を兼ねて送った。



「さて行くか」

「そうね」





送ってすぐに通信がいきなり来た。

空間パネルで来たのだがなぜか映像が砂嵐で音声のみだった。



「ティ、ティア!? ケイ!? 今どこにいるの!?」

「どこって……」

「いや普通に任務先の学校だぞ」



やたら焦った声で叫ぶスバル。

どうしたんだ?



「い、今2人だけじゃないよね!? ケ、ケイの友達と来てたりしてるんだよね!?」



はあ? 



「何言ってんのよ。任務に連れてこれるわけないでしょ」

「じゃ、じゃあさっきの写真のたくさんの人の顔と腕は何!?」



えっ……



「とにかく今すぐそこから……」



通信がブツンと切れる。

そのまま砂嵐の音のみが静かな校舎の中に響くだけだった。



「……な……なあ……」

「……い、言わないで……」



お互い真っ青になって油が切れたロボットのように向き合う。



「い、今すぐ逃げない?」

「だだだだだだ、ダメよ。だだだ、だってこれ任務だし……ししし、失敗したら執務官試験にも受かりづらく……」





「ねえ……」





俺の声でもティアナの声でも、さっき通信が繋がらなくなったスバルでもない声が俺たちの後ろから聞こえる。

その声は女のようで、教室の隅の方からした。





「ねえ……」





ギギギギと2人で声の方を確認する。

そこには縮れた長い髪と赤いワンピースで裸足の女が項垂れながら立っていた。

長髪のせいで顔が見えないが、マスクのようなものをしているのはわかった。

そして俺たちが振り向くとゆっくりとマスクに手をかけ外した。





「ねえ……私って……綺麗?」





突然顔をこちらに向ける。

その顔は恐怖だった。

血走り、瞳孔が開ききった眼に青白い顔の色。

そしてグパッっと開く横に裂けた大きな口。





「「ぎ……(き……)ぎゃあああああああああああ(きゃああああああああああ)!?」

「あはははははははははははは!」





それを見た瞬間猛ダッシュで駆ける俺とティアナ。

任務だろうがなんだろうが関係なしで出口に向かう。

後ろからは口裂け女が狂気の笑いを上げながら追って来る。



「な、何よあれ!?」

「口裂け女!」

「何よそれ!?」

「都市伝説チックなお化け!」



「綺麗?」

「綺麗!」

「馬鹿!? その答えは!」



「じゃあ私みたいにしてあげる!」



女は突然どこからか出刃包丁を取り出し飛びかかって来た。





「「いやああああああああ!?」」





即教室から逃げだす。

真っ直ぐ出口に向かうがその進路先から何か聞こえる。

その瞬間目の前で何かがキラリと光った。





「伏せろ!」





ティアナの頭を鷲掴みにしてその場で伏せる。

そして俺たちの頭があったであろう位置をするどい鎌が通り過ぎる。





「けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!」





半透明で鎌としゃれこうべを持ち、あぐらをかいて宙を浮く幽霊。

俺たちを通り過ぎるとそのまま方向転換して口裂け女と並んでこちらを見て笑い声を上げる。





「テケ○ケ!? それともシャカ○ャカ!?」

「何よそれ!?」

「こっちもお化け!」

「地球ってなんなのよーーーー!?」





「けけけけけけけけけえけけけ!」

「あははははははは!」



口裂け女とテケテ○が揃って襲いかかってくる。

快楽と狂喜の笑いを上げながら久々の獲物に喜んでいるようだった。





「く、来るなーーー!」

「来るんじゃないわよーーー!」



ティアナがクロスミラージュを起動して口裂け女に発砲。

だが効果はあまりないようだ。後退はしてるがダメージ0のようで口を思いっきり開き涎が床に垂れている。



俺の方は拳をおもいっきりテケテ○かシャカシャ○かわからん幽霊に入れる。

そのままピンボールのように跳ね、魔力弾の直撃を喰らったがピンピンしてる口裂け女に激突。

お化け同士だからかぶつかった衝撃でそのまま吹っ飛んだ。





「チャンスだ! 逃げるぞ!」

「ええ! って道が!?」





昇降口への道を確認するとそこには数えきれない程の手が壁から窓から床から天井から隙間なく生えている。

きしょっ!?





「こっちだ!」





ティアナを引っ張り横の渡り廊下を駆ける。

そのまま俺達は特別教室の方に逃げ込んでしまった。











「ぜーぜー……」

「はあ……はあ……」



どこの教室かはわからないが適当に駆け込み鍵を掛ける。

そのまま2人で息を整える。



「な、何なのよ……ここは……」

「お、俺が知るかよ……」



まさか超有名なお化けを見るとは……





ごとり……ごとり……と廊下から足音が響く。

お、追ってきた!?



だが廊下との間の窓のシルエットは先ほどの口裂け女とは違っていた。



……あのシルエット……まさか……



「馬鹿!? 何窓開けてるのよ!?」



小さいが荒い口調で俺を止めようとするティアナ。

だが無視して覗ける分だけ開きそのシルエットを確認する。



ちょんまげ、和服、背中に薪を背負い、草鞋で廊下を歩くその石造。



動く二宮金次郎像!?



金次郎像はそのまま向かいの教室に入る。

えっと向いは……図書室か……ってことは……本の返却と新しい本を借りに来たのか……



しばらく見てると本を読みながら図書室から出てきてごとり、ごとりと廊下を渡って見えなくなった。





「まんま学校の怪談じゃねえかよ……」

「さ、さっきの魔法でもかかった石造?」

「んなわけねえべ。ありゃお化けの一つだ。こっちも都市伝説的なのだけど」



まさか本当に動くとは……

俺の小学じゃ本を借りるの他に薪を毎日拾うから背中の薪の数が増えているとかあったな……





「……それって他にもあったりするんじゃないでしょうね?」

「かなりあったりする」

「……他には何が?」

「理科実験室の動く人体模型とか」

「……ちょっと待って。ここは?」



周りを見渡す。

カエルの解剖したホルマリン漬けの標本。

割れた試験管やビーカー、アルコールランプや化学薬品の棚がそこにあった。





「……理科実験室」

「じ、人体模型は……」



人体模型があるであろう場所を見る。

そこには人が入りそうな棚があるだけで何もなかった。



「き、きっと元からないのよ」

「そそそそそ、そうだよな。あははは……」



お互いに苦笑しながら顔を合わせる。

そして俺とティアナが向き合うと視界の横側に人の顔があった。



瞼の肉の部分の加工がなく、左半分は筋肉線維の絵を描かれ、右半分が内臓器官でできた人体模型がギョロっと見つめてきた。





「うわあああああっ!?」

「きゃああああああ!?」





反射的に2人でストレートを顔面に打ち込む。

人体模型はそのまま吹っ飛ぶ。





「鍵が開かない!?」

「どけええ!」





逃げようとしたが扉の閉めた鍵が開かずパ二くるティアナ。

どけと叫んでおもいっきり蹴りで扉をぶち壊す。



廊下に出て逃げると人体模型がオリンピック選手ばりの軽快な走りで追いかけてくる。

俺もティアナも全力でそれから逃げる。

だが正面から



「けけけけけけけけけけ!」



またお前か!?



「邪魔―――!」



ダメージがあるかどうかわからないがさっき俺が殴れたので、ティアナはバリアブルシュートを放つ。

頭部におもいっきり喰らいその場でクラクラとお星さまを出すテケテ○。



チャンス!



テケテ○の真下につくとそのままバク宙をする。





「テケテ○オーバーヘッドシュート!」





バコーンとボーリングのピンのごとく後ろから追いかけてくる人体模型にストライク。

人体模型はバラバラに、テケテ○はそのまま廊下をスーパーボールのように跳ねて見えなくなった。





「こっちよ!」

「バッカ!? そこは……」





ティアナに引っ張られまた別の所に入ってしまう。





「こ、ここは……」

「女子トイレ……」





まずい……このパターンからしてトイレはまずい。



「い、いいわ。とにかくそこの窓から逃げるわよ」

「ま、待て。トイレはまずい」

「何がよ。サッサとここから逃げるわよ」



そういいながら俺を窓の方まで引っ張るティアナ。

俺達2人が奥から3番目の個室を通り過ぎた瞬間だった。





「うふふふふふ……」





おっかぱ頭で赤い服の小学生くらいの女の子の姿がチラリと見えた。

そして薄気味悪い笑いが聞こえた。



「「 !? 」」



バッっとそこを見るが誰もいない。

お、おかしい……確かに姿が見えたぞ。



「い、今のって……」

「奥から3番目の個室……た、多分トイレの花子さんだ……」

「ま、また……」



文句をティアナが言おうとしたが突然懐中電灯がチカチカと点滅しだす。

それと連動してトイレの扉がバタン、バタンと開いたり閉じたりを繰り返す。

そして10秒ほど続くと止まる。





「な、何?」

「わ、わからねえ……」



トイレのお化け……トイレのお化け……他に何がいたっけ……

えっと……確か……





「青い紙……赤い紙……」

「何よそれ……」

「便器の中から声がして、青い紙と赤い紙どっちがいいか聞いてくるんだ」

「ど、どうなるの?」



カタカタと震えながら聞いてくる。

その間にまた電灯が点滅を繰り返し始めた。



「赤い紙と答えたら血祭りに上げて殺されて……青い紙だったら真っ青になるように血液を全部抜かれて殺される……」



確かこれって土地によって色々バリエーションがあったはず……天井から血が降るとか、首を絞められて真っ青になって殺されるとか……

正しい回答は……えっと……





「赤い紙、青い紙……どっちが欲しい?」





さっきとはまた別の個室の便器から声がする。

ティアナは無言で震え涙目になる。

お、俺だって泣きたいって……こんな状況。





「どっちが欲しい?」





ティアナが何か叫ぼうとするがそれを抑える。

泣きながらそれを振りほどこうとするがなんとか抑える。





「……どっちが欲しい?」





声が大きくなりトイレが揺れる。

天井も壁も軋み、懐中電灯の点滅も呼応して激しくなる。

そしてそれが立っているのもやっとな程になる。

ティアナはパニックになって俺を蹴ったり叩いたりして抑えを振りほどこうとする。

それでも俺は我慢してティアナが動かないようきつく抱き締める。



そして突然揺れが収まり点滅もしなくなり、声も聞こえなくなった。

そして俺はティアナを離す。





「ぶっは! あんた! 何すんのよ!」

「た……助かった〜〜〜」

「助かったじゃないわよ! って……あれ? なんで何も起きないの?」

「あれに対しては答えないのが確か正しい対処法だったからずっと黙ってたんだよ……」





別の色を答えるとかいうのも聞いたけどそっちだと両方喰らうって聞いたこともあるし……

何もいらないと答えるか何も答えないがベストだったかな確か。





「とにかくお化けの質問に軽々しく答えるなよ……」

「うっ……わかったわよ……」



さっきの口裂け女のときだって……

綺麗だって答えたら自分も口裂かれるんだぞ。まあブスと答えたら即殺される。

たしか対処法は……べっこう飴をあげる。まあまあと答えて考え込んでる隙に逃げ出す。ポマードと3回言って怯えるてる隙に逃げ出すだったかな……





「なんでそんな詳しいのよ」

「お化け関連は昔怖かったから結構調べた」



対処法を知っておきたかったからだけど。

まあ総合的に言うと素直に質問には答えないでいるのがベストってのが多いんだが。





「……どうしたらここから出られる?」

「……わからん……」



こんな状況になるともう対処のしようがない……



また電灯が点滅しだす。



「……とりあえず進みましょ……」

「……ああ……多分昇降口にはもう行けないだろうから……屋上から飛び降りよう」



流石に魔法を使える人間を襲うのは初めてだろうから屋上は手薄だろ……

飛び降りて逃げるとか思いつかないと思うし。



トイレから抜け出し俺達は上へと向かう。













屋上に向かう途中……何かが聞こえてくる。



「な、何?」

「この音……ピアノ?」



そこまで音楽に詳しいわけでもないがこの聞こえる音色が素晴らしいのはわかる。

だけれどもそれは感動などを伝える凄みではなく、人を惑わせるような凄みを持っていた。



「凄い……綺麗な音色……」

「ああ……」



気付くと俺もティアナもそれに聞き惚れる。

曲はエリーゼのため。

音楽はどうやらどの世界も共通の文化のようだ。

異世界人のティアナでも曲に聴き惚れてる。



曲が終りに近づくにつれ俺たちの頭の思考はただ聞くことだけに流される。

足は無意識のうちに音の方へ向う。



…………………………はっ!? いかん!? 意識を奪われてた!?

ここは……音楽室!?

ってことは!?



おもいっきり扉を開きピアノを視認する。

当然のごとくそこには誰もおらず、独りでに演奏されている。





「…………………」



焦点がズレた目をしてティアナが音楽室に入ってくる。



やばい!? まだ意識奪われてやがる!



「おい! ティアナ! しっかりしろ! おい!」

「……………………」



まったく反応がない。

ビンタしてみる。だが効果がない。

ツインテールを引っ張ってみる。反応がない。

ツンデレじゃなくてツンツンガンナーと呼んでみる。反応がない。

あー! あそこにかわいいお人形さんが! と叫んでみる。ちょっと顔が緩んだが反応がなくなる。



し、仕方ない……スバルから教わったティアナ起こしの秘伝……逝きます! 





「ティア〜〜〜朝だよ〜〜〜。早朝訓練するんでしょ〜お〜きて〜」



スバル口調で胸を揉みしだく。

すまん……セクハラだけどマジでスマン。これが一番効きそうなんだよ!

……お、お椀サイズ……手にしっかりと吸いつくような弾力……や、柔らけえ……

俺の手の中で形を変えるティアナの胸。



「………………」



だけど反応がない。

し、仕方ない……もっと過激に……



「き、……」

「えっ?」

「きゃああああああああ! 変態、馬鹿、アホ、痴漢、セクハラ男―――――!」

「のべしっ!?」



右アッパーを顎にきれいに入れられる。

そのままダウン。

ティアナは胸を庇いながら顔を真っ赤にして激怒する。

よ、よかった……意識が……戻った……な……



でも今度は俺の意識が飛びそうです……



「なななななな、何人の胸揉んでるのよ!? あんたはスバルか!?」

「す……スバルから……これがお前に……い、一番効くって……教わったんだ……」

「あの馬鹿スバルーーーー!」



怒りでツインテールが逆立ってる……スーパーティアナ?



突然曲調が変わりピアノの大音量が響く。

そっちを見るとピアノの弾かれるスピードが上がっている。

や、やばい!?



「ティアナ! 今すぐここから離れるぞ! ピアノの音が聞こえないところまでだ!」



手を掴み入口にダッシュする。



「な、なんでよ!?」

「あの曲を最後まで聞いたら……」

「聞いたら……」

「毎晩どこからか現れて何回か最後まで聞くと呪殺される!」

「今すぐ逃げるわよ!」





扉を蹴破ろうとするがまったく開かない。

んなアホな!? 全力の蹴りで開かんだと!?



その間にも曲は終りに近づく。



まずい、まずい、まずい、まずい、まずいーーー!

このままじゃここから出れても音が聞こえないところまでは逃げれないーーー。





「階段確かこっちよね……」



壁の方を見てそう呟く。



「そうだけど今は関係……」



ま、まさかこいつ……



「全力全開………………」



カートリッジを6発ロードする。

オレンジ色の特大の魔力の塊が銃口に現れる。



「スターライト……」



こいついつの間に……



「ブレイカーーーーーー!」





轟音とともに床だけ残して壁をぶち抜く。

その衝撃で音楽室のものが吹っ飛び、ピアノも壁の砕けた木片やらで破壊され演奏が止まる。





「はあ……はあ……さ、行くわよ」

「お、おう……」



これって確か収束砲だから魔力が周りにないとつらいはずだっつーのに……

威力抑え目でも辛いだろ……



「す、すげえな……いつの間に……」

「も、もう少し魔力が周辺にあればこの校舎ごと撃ち抜くわよ……てか変なエネルギーのせいでやたら頑丈ねこの学校」



息切れしながらだけどそんなおっかねえこと言うなよ……

……2代目砲撃魔王の誕生もそう遠くない未来だな……

下手なこと言わんようにしよ……



ん?



「……………」

「「……………」」



ベートーベンの絵画と目が合う。

ベートーベンはティアナの方を見つめる。



「な、何よ……」



そのまま後ろを振り返るベートーベン。どこからか指揮棒を取り出す。

すると四方の絵画が同時に動き出し、楽器を構える。



どっから出したその楽器!?



そして始まるクラシック音楽。





「ま、また!?」

「いやこれって……ベートベンの……“ 魔王 ”?」



……ああ、つまりそういうことか。



「何1人で納得した顔してるのよ……」

「いや……別に……」



つまりあれだな。

ここに魔王が降臨したと言いたいんだな。

砲撃子弟は幽霊も恐れる存在だったのか……



「……何よその憐れむような怖がるような目は……」

「さあ……行こうか……」

「なんで仕方ないなみたいな感じで流して先に進もうとする!?」



知らぬが仏さ……



ツッコミを聞きつつ2人でぶち抜いた壁の穴から階段にショートカットで向い、目的地の屋上へと向かう。

その途中また絵画があったが……



「なんで怯えてるのよ!? しかも目を逸らした!?」



有名なモナ・リザの絵画……

あんたもさっきの砲撃で怖くなったか……

よく見ると額縁焦げてるし……もう少しで直撃喰らうとこだったんだな……



「強く生きろ」



親指立てて応援したら向こうも親指立てて返事してきた。

ノリがいいなお化けって。



「お化けなんだから生きてるわけないでしょうが」



あっ………









屋上に着くと校庭が見えた。

一緒に学校敷地内への玄関も見える。



「よし。じゃあ飛び降りてダッシュを」

「!? ちょっとストップ!」



ティアナに駆けだすのを止められる。

何故止める!?



「下の校庭よく見て!」

「校庭が何だよ………………ってええええええ!?」



校舎の真下がいつの間にやらマグマやなんやらが噴き出していて、大きな崖のような場所に校舎が建ってるような状況になってる。

ここは地獄か!?



「これ……どうやって降りるのよ……」

「……ひ、飛行魔法で行けるか?」

「行けるけど……なんかもうここだけ異次元になってない?」



確かに……さっきまで普通の町が見えてた玄関先なのに下のマグマに気づいたら、景色がいきなり変わって見えなくなったもんな……



「脱出不可能……な状況?」

「……万事休すね……」



おいおいマジかよ。

はてさて困った……連絡もとれねえし……ってうおっ!?



突然校舎全体が激しく揺れる。

そして下のマグマの校庭からでかい髑髏が姿を現す。



「何あれ!?」

「がしゃどくろ!?」

「対処法は!?」

「どっかに人の骨が埋まってるからそれを見つけて供養すると消えるけど……」

「けど何よ!?」

「骨がどこだよ!?」

「知るか!?」



ぎゃーー!? 攻撃してきたーー!



がしゃどくろは校舎をも超える大きさ。

その大きな手で俺たちを握りつぶそうとしてくる。



「なめんじゃないわよ!」



クロスミラージュでがしゃどくろの各関節を狙い、手の動きをズラし回避する。

そしてそのせいで屋上に手をつく。



「その頭吹っ飛ばしてやるぜ!」



俺はその腕を駆けあがり、頭の部分まで上がるとおもいきり蹴りを入れる。

だがやや傾いただけで効果はあまりなかった。

反対側の手で俺を薙ぎ払う。



「がっは!?」

「ケイ!」



俺はそのまま吹っ飛ばされ屋上の時計塔の方に突っ込んでしまう。



「イテテテテテ……んっ? 何だこれ?」



コロコロと野球ボールほどの不思議な光る球がそこにあった。

なんとなくそれを手に掴む。





「きゃあああああ!」



ティアナの叫び声!?

畜生あの腐れ髑髏が! 死んだなら死んだで大人しく成仏しとけ!



さっき俺が突っ込んできた穴から屋上に伝って戻ろうとする。





「!? があああああああああ!」



俺の姿を見つけると慌てたようにがしゃどくろが攻撃してくる。

壁にへばり付いている虫のように潰そうとかかってきた。

壁ごと吹っ飛ばされ全身が木片で切れ、血だらけになる。

だけれどもおかげで屋上の方に落ちずに戻れた。



「だ、大丈夫!?」

「大丈夫じゃねえ……」



まあ血だらけといっても切れた個所が多いだけで派手に見えるんだけど……





「……ん? それって何?」

「さあ……」





「それをよこせええええええええええ!」





喋れたのか!?

奇声のような声で叫び連続で叩き潰そうとしてくる。

俺達はなんとかそれを横飛びで回避していく。



「なんか向こうさんにまずいものらしいな!」

「ええ! そうみたいね!」



回避しながら相談。



「使い道わかる!?」

「投げつける、割る、どっかに置く、こんくらいしか思いつかない!」

「どれ!?」

「知るか!」



自分でも考えてくれ!



「それがロストロギアだったりはしない!?」

「んなアホなことが……」



あったし!?

微妙だけど魔力感じるし!?



「多分それだ!」

「じゃあ魔力注入してみるわよ! 破壊だろうがなんだろうが暴発したってこいつにぶつけりゃどうにかなるでしょ!」

「その賭け賛成!」



「がああああああああああ!」





さらにラッシュをかけてくるがしゃどくろ。

けっけっけ。どうやら相当まずいものらしいな。



回避しながらなんとか合流。

魔力を注入しようとするがそんな暇もなく攻撃が飛んでくる。



「ちっ、ケイ! 捕まんなさい!」

「ほい!」

「手をじゃなくて抱きつく!」

「へい!」

「もっとしっかり!」

「いいのかよ!?」



とか言いつつおもいっきりしがみつく。



「飛ぶわよ!」



ティアナは俺を背負ったまま空を飛ぶ。

まだそんなにスピードはないがしっかり飛行ができるようになっていた。



「変なこと考えるんじゃないわよ」

「……はい」



実はいい匂いだなとか考えたりしてました。ごめんなさい。



がしゃどくろの手の届かない頭上に来ると2人で光る球に魔力を入れる。

すると光は大きくなり勝手に宙に浮く。





「「「「「「「「「「やめえええろおおおおおおお!」」」」」」」」」」」」





学校中からお化けが飛び出して来て球に向かって叫ぶ。

そして光がさらに強くなり轟音とともに世界が揺れた。

俺たちも、お化け達もその光に飲み込まれるのだった。















「んっ……」



目を覚ます。

ここは……あれ? 廃校舎の校庭前?

横を見るとティアナもいた。



「ティアナ、ティアナ」

「んんっ……」



だけど起きない。

うむ……ではスバル方式で……



「んっ……あれ? ここは?」



ちっ……目覚めたか。



「校舎前。多分戻って来れた」

「……なんだったの? あの体験」

「夢?」



ティアナは不思議そうに頭をかしげる。

だけど同じ夢を見るってことはないか……



「ねえ……これって……」

「ロストロギア?」



光る球はしっかりとティアナの手の中に納まっていた。

ってことはあれは夢じゃなかったのか……





「ロストロギアが見せてた幻覚……だったのかしら」

「そうだとしたら相当マニアックな夏のアイテムだな」

「あはは、そうね」



つうか地球のお化けを知ってたのかよ製作者は。



「さて……朝だし……どっかで朝飯食ってくか?」

「そうね。それからあたしは局に戻るわ。報告書も書かないといけないし」



こうして俺たちの2人での任務が終わった。

任務つーけどかなりハイレベルな肝試しだったな。





「あっ、そういや任務だったんなら当然給料も……」

「あんた嘱託ですらないでしょうが。でるわけないでしょ」

「……ただ働きかよ!?」



まあもっといいモン触れたからいっか。

御馳走様でした。









                                   おわり









おまけ





「シャーリーさんこれ保管お願いします」

「はいはーい。で、どうだった? ケイ君との任務」

「もう大変でしたよ……」

「うーん。そういうのじゃないんだけど……」

「あっ、ところであんな質の悪い幻覚見せるロストロギア……何か資料とか出ました?」

「えっ? そんなじゃないよ? これの機能」

「えっ?」

「これは魔力を通すことでその世界を朝の状況に持ってちゃうロストロギアだよ。

世界事態の有り様変えちゃうから使用し過ぎると崩壊するかもしれない超危険物」

「ゆ、幽霊を見せたりするだけじゃ……」

「やだな〜そんなだったらホログラム見せるようなものだし指定されてないよ〜」

「じゃああの体験って……」



「……ティアナ」

「あっ、ケイ君。珍しいね通信してくるなんて」

「ケイ……」

「あのさ……あれから調べたんだけど……ないんだよ……」

「……何が?」

「あの学校だよ……」

「……えっ?」

「50年以上前に廃校になって、校舎も取り壊されてあの辺一体ただの荒地のはずなんだよ……」

「嘘でしょ!? だって……あたしたち見たじゃない!?」

「俺だってそう思うよ! だけどあるはずがないんだよ! あの後……行ったけどなかったんだよ……何も」

「ちょっと、シャーリーさんこの座標の現状見せてください!」

「えっ? えっ? どういうこと?」

「……ホントに荒地……」

「……俺これからお祓いに行くけどお前どうする?」

「……待ってて……あたしも行くから……」



「えっ? えっ? 何がどうなってるの?」







      おまけ  ティアナ執務官補佐日記から抜粋





今日、ケイと先日の恐怖体験のお祓いに行った。

地球の宗教を信じてるわけではないがその世界のお祓いの方がいいと判断し、そうした。

最初はケイの地元の神社とかいう教会へ行った。

そこの神主が私たちを見た瞬間腰を抜かして慌てて逃げた。

捕まえて話を聞くと背中の陰に驚いたそうだった。

言われてみるとなんとなく肩が重かった。

そのまま神主さんに言われ鹿児島の“神咲”という家の神社を紹介された。

転移魔法でそこに移動し、その人たちに見てもらった。

那美さんという人と一緒にいた久遠という狐も私たちを見て驚愕していた。

その場で詳しい話をするとすぐに建物の中に案内され、薫さんというお姉さんを連れて来て2人でお祓いをされた。

いつの間にかあたしもケイも眠ってたようで気付くと夕方になっていた。

那美さんがいうにはもう大丈夫だそうだ。

実際型も軽くなり、体の調子も良くなった。

その後話を聞いたら神崎家は日本有数のその方面に関しては超一流の一族だとか。

だけれどもそんなすごい人たちでもお祓いに6時間以上かかったそうだ。

今まで幽霊やなんやらは信じていなかったが、これからはそうは言えないと痛感した。

ケイはその神社で破魔札やらお守りやらを相当数買っていた。

かく言う私もいくつか買い、部屋に置くことにした。

…………………地球の夏の夜は気を付けよう………







   あとがき





夏休みSS第2弾! ティアナメイン終了!

アンケートをとった結果見事1位に輝いたティアナ。

遊園地でデートなどのリクエストもありましたがそれはまた別の機会といいますか夏以外でもできそうなので肝試しなお話に。

そして懐かしい映画「学校の怪談」シリーズよりお化けを出させてもらいました。

いや〜自分あのシリーズ大好きなんですよね。

今もまだレンタル屋にあるのかどうか怪しいところですが……

テレビで是非放映して欲しいものです。



さて……意外に早く仕上がったこのお話。

というわけで……第3弾夏休みSSを募集したいと思います!

期限、結果はまた掲示板などを使って載せておきます。

メール、感想版のどちらかで投票をお願いします。

以前と同じでWeb拍手では管理人のリョウさんの負担となるためやめてください。来てもカウントはとりません。

ではまた次回よろしくお願いします。





以前の集計結果





スバル 1  ギンガ 1  ヴィータ 1 ウェンディ 1  リインU 1  セッテ 1  はやて 1  フェイト 1

カリム 2  ルーテシア 2  シグナム 2  トーレ 2 スバル 2 チンク 2

なのは 4

そして第1位 ティアナ 5 






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