スカリエッティのアジト生活から今度は根無し草の生活になった。

前よりは居心地はいい。

だけど前よりも……強さを必要とされる。

俺自身の保身じゃなくて……俺がいてもいいっていう3人のために……

下手な行動は慎もう。







時空を駆けちまった少年



第28話










「シッ! ふっ!」





2発の拳を振るう。

それを黒く2Mの強固な外甲を持つその生き物は大きく跳ぶことで避ける。

魔力放出で蹴り出し、できた距離を詰め寄って右ストレート。

といっても打ち込みは魔力を使わない。



今度は向こうが喰らいながらも肘打ち。

それを脳天に喰らって目がチカチカする。



やっば……チカチカして見えない。



右が来る! 防御!



うっし! 止めた。次蹴りが来る。

出だしを潰せば……



右足が上がってきた途中の腿を空いた右手で掌底で押し返して潰す。

そのまま頭突きを鳩尾に……





「そこまで!」





頭突きをやめて力を抜く。

時間か。





「あざーした」





組手をしてくれたガリューに一礼。

向こうは頷いてそれに返事をくれる。





「ガリュー……お疲れ様」





紫色の光になってルーテシアのアスクレピオスの宝石の中に消える。





「お疲れさん。まーだ動きおかしいよな」

「マジか……」

「まあ、最後はなんか動きが違ったけど……」





そういえば……目がチカチカしてたけどなんとなく来るとこわかったな……





「なんかさ……お前が人形と組手するときと、ガリューと組手するときとじゃ動きが違うんだよな……」





違うって……うーん……人形の方だと動き見えないからがむしゃらにやってるんだよな。

たまーに見えるレベルまで下げて来て、あとは見えないスピードでとかペースずらしてくるし……





「最後はなんか動きがよかったんだけど……う〜ん……」





ふわふわしながら腕組んで悩む。

不思議だよなこの光景。



しかし……動きが違うって……なんでだ?









この組手……朝の基礎トレしてるときに他の相手とした方がいいというアギトの判断でこうなった。

最初ガリューを見た時は超驚いた。



虫が人型してる生物なんて初めて見たし。

しかもなんでマフラーしてるんだ?

てか喋らないから意思疎通が難しい。

……手話でも教えるかな……























ゼストの旦那、ルーテシア、アギトと行動するようになって早数日経った。

3人は一緒にいるようでいないことが多いみたいだ。

旦那はいつも用事だって言ってどこかにいく。

今日も昨日の夜にいなくなり、昼までは戻ってこない。





「レリック探しはどうする?」

「……情報も大きいレリック反応もないから……今日はここでゼスト待つ」





そっか。

じゃあ俺は空戦シュミレーションでも……





「お前は浮遊魔法の練習から」

「……しゃーっす……」





ユニゾンして魔力を抑えながらの浮遊魔法の練習。

このふわふわした感覚……楽しいのは楽しいんだけど……

上空数十メートルまで浮く。





「や〜っとここまで浮くようになったな」

「……やべえ……高いとこ好きだけどこれはちと……」

「水平になって前進むぞ」



へいへい。了か……うおっ!?

バランス崩した! やべえ! 落ちる!



腕をバタバタさせて浮こうとするけどまったく効果なし!

地面にぶつかるーーー!





「……はあ……もう1回」

「……うい」





これで何度目だろ……

ユニゾンを即解除してアギトが俺自身に浮遊魔法かけて地面への衝突を防ぐのって……





「だーかーらー、イメージだってば。お前のイメージが不鮮明だと、飛ばすサポートだってできねえんだぞ」

「真っ直ぐ浮くのならなんとかできるんだけど……つうかその感覚わからねえよ」





そもそもな……何も足場がないとか、どっから推進力出てるんだって話だよ。

蹴るとか、押すとかそういう力まったく働かねえんだもん。

ふわふわした状態からビュンビュン旋回するイメージとか体じゃわかんねえよ。





その後十数回これを繰り返す。

いい加減覚えたいんだけど……本当に無理かも……





「センスねえ」

「……さーせん」





これよく言われるんだよな……

スポーツだって何年も練習したことあるのじゃねえとうまくできねえし……

サッカーとかバスケとかだといらねー扱いされるんだよな……





「飯時だし……終わらねえ?」

「だな。明日こそ覚えるぞ」





頑張るしかねえか……











あれ? 旦那もう戻ってるし。





「アギト……武ノ内の調子はどうだ」

「飛行は全然。近接戦闘はガリューについて行けるくらいになったけど」

「そうか……」





旦那は基本教えたりはしない。

俺の戦い方には戦い方があるって言って。



ただ、俺の精神面のことは結構言ってくれる。





「レリックの場所……ドクターが情報を入手したって……」

「誰が聞いたの?」

「ゼスト……」





旦那を見ると小さく頷く。





「場所は29管理外世界。人は住んでないが……何やら研究所があるらしい」





なるほど。

犯罪者の研究所か。





「……管理局の息がかかっているようだ。最近何やら活発に動いている。以前お前を襲った者達がそこから来たのかもしれん」





……まじかよ。

あんなのばっかいるのかよ……





「俺はそこを潰す。ルーテシアはレリックを探す。……お前はどうする」





どうするって……

つうかマジでルーテシアは襲撃に参加するのか?





「………」





無言でこっち見てる時点でわかった。

だけど……10歳の子供がそんなことを……

……旦那は俺の世界の常識で測るなっていったけどやっぱ……







「……レリックを探します。元々ルーテシアとはそういう約束だし」





今、俺の常識を強要しても仕方ないか。

だけど……多少そういうことに対して抵抗とか違和感とか……持ってもらいたい。

一緒にいてそういうふうになってくれるといいんだけど……



俺自身抵抗感じるけど……

もう逃げられもしないし、こっちから仕掛けることもしないとすっきりしねえ。

犯罪だろうけど……むしろどっちが犯罪だという気もするし……



それに……ここで何もしないっていうのは俺自身が……卑怯だと思う。





「そうか……アギト。武ノ内とルーテシアのサポートを頼む」

「がってんだ! ケイ! 気合入れろよ!」

「おう!」





内心緊張してるけどな……

ここまで戦闘でまともな結果を出してねえ……

今回はアギトとのユニゾンがあるけど……



手が少し震えるのを握り拳を作ることで抑えようとする。





「…………」





旦那に見られたな……でも見て見ぬ振りしてくれた。

今はもう逃げられないんだ。



……とにかく……この戦いで……しっかり勝ちを掴む。

















夜。

俺の朝昼の訓練での消耗した体力、魔力の回復をしつつも目立ちにくい時間まで待った。



作戦内容は場所ははっきりしているから、ルーテシアの召喚魔法で建物に特攻をかけて一気に潰す。

俺とルーテシアはレリックを入手したら即離脱。

旦那はデータを集めるらしい。



スカからの情報だけど協力はなし。

今スカの立場はその研究所と同じ。

俺たちを今の時期に手伝って、管理局のご機嫌を失うわけにいかないんだろ……





「準備はいい?」

「ああ」

「おう」

《 いつでもいいぜ 》

「………」





俺は既にユニゾン状態。

前のジャージのバリアジャケットにベルトを付けてそこに刀を帯びる。

髪も眼も炎髪金眼に変わっている。

ガリューも電撃作戦なため最初からスタンバイ。







「……武ノ内」

「はい?」

「……次回からもう少しまともな形にしろ。それでは防御力に欠ける部分がある」





……防御力って……あーでも旦那とかみんな手甲とかそういうのあるな。

接近戦タイプなら欲しいかも……





「……アスクレピオス……転送」





周りに紫の魔力光が発生し、景色は変わった。











暗く、周りを森に囲まれた建物の前に出る。

瞬間、旦那とガリューが突撃。

建物前にいた警備員を速効で潰す。





「召喚……」





ルーテシアはさらに召還で4体の巨大甲虫を呼び出し、それらが建物に電撃を放つ。

俺も無明を抜き警備員を峰打ちで潰しにかかる。





「し、侵入者だーー!」





警報が鳴り響く。

中から10数名の警備の魔導師が出てくる。



魔力は普通……装備は杖ばっかしか。

なら……

左腕に刀を持ち、右手にラケット。

警備員は半分が魔力弾を発射、半分が砲撃魔法の体勢に。





この威力にスピードなら……



撃たれた魔力弾で直撃コースと打ちやすい位置の魔力弾をすべて打ち返す。





《 おまけだ!! 》





アギトがうまくそのタイミングを合わせて返球に炎の付加魔法をかける。



燃える魔球だな。

そのまま入口を固めていたやつらに直撃、爆煙が舞う。





《 油断すんじゃねえ! 1人砲撃撃ってくるぞ! 》



オーライ!



アギトが言ったように砲撃が飛んでくる。

だけどこれくらいの威力……今まで見てきたのと比べたら……



「うおらあああ!」





右足を後ろに下げ腰を回し力を溜める。

右腕を腰と連動させて一気にラケットを振り抜く。

打ち返した砲撃は入口を破壊。

大きな穴を壁に開ける。



うっしゃあ!

砲撃は初めて打ち返したけど、このレベルのなら結構楽に返せるな。





「ぼやぼやするな。すぐに突撃しろ」





旦那は俺の横を素早く通り過ぎて突撃していく。

いつの間にかガリューも俺の横にルーテシアといた。





「旦那はここからは別行動か」

「うん……私達はレリック……」

《 レリック反応は奥だな 》





そのまま俺たちも突撃……しようとしたがストップ。





「……いや、ルーテシア……ここは歩くんじゃなくて走って突撃だろ……」

「 ? 」



いや不思議そうな顔されても……

ええい! 仕方ない!





《 おんぶで突撃かよ……大丈夫か? 》

「ルーテシア軽いから片手空いてりゃ少しくらい」





かーっ……締まらねえな……

















突入していくと中にいた警備とかに鉢合せたりもしたが、

魔力弾の返球や、以前使った炎弾やルーテシアの魔力弾などで蹴散らす。



……魔法ってやっぱ使えると戦闘がしやすくなるんだな。

1人でだったらこんな風にならん。



1人だったらまず、返球しても接近が走ってだけだから……

速度あってもそれに加速魔法で追いつかれたし……



炎弾あれば倒す、牽制、牽制の間に接近って感じでうまくいく。



ってまた来し。



魔力弾が一斉に飛んでくる。

よしまたレシーブで……!?





「ちっ……」

「ひゅ〜、受け止めやがった」





魔力弾と一緒に混ざって槍型と剣型の武器を持った2人が急接近。

剣の方をガリューが止め、槍の方を俺が止める。



んなっ!?





「お、お前らあの時の!?」





マジかよ!?

ルーテシア攫ったやつらじゃねえか!?

なんでここにいる!?





「ひゃっひゃ。久し振りじゃねえか餓鬼」

「わざわざ説明の必要はない。貴様を殺すだけだ」



「……誰?」





背中で不思議そうに聞いてくるルーテシア。

いや前にお前を攫ったやつらだって……

忘れられてるとは……





「子供を背負いつつとは余裕だ……なあ!!」





鍔迫り合いをすぐにやめ、槍を横薙ぎに一閃。

右腕でガードするがありえないほど重い一撃だった。



壁を3,4つぶち抜くほど吹っ飛ぶ。





「つっ……おい、大丈夫か?」

「……うん」

《 なんつーパワーだよ…… 》





右腕折れては……うん、いない。

流石バリアジャケット。

あるのとないのとじゃ大違い。





背中から激突しそうだったけど、正面からに切り替えれた。

背中から激突だったらルーテシアを潰してるしな。



にしてもこいつら……背負いながらじゃ絶対無理だな。

かといってルーテシアが側にいても巻き添え喰らわせそうだし……

先に行かせるかな。





「……1人で先に行っても大丈夫そうか?」

「うん……大丈夫。ケイより強いから」





……あー……そっか。

ルーテシアって今までも襲撃してきたことあるし、俺より弱いわけねえか。





「……ケイ下がってて……」





おいおい。お前がやる気かよ。

パワー勝負なのに無茶だろ。







「断る。お前下がってろ。あいつは俺が狙いだ」





どーもあいつも改造されたっぽいな。

以前じゃあそこまでパワーなかったし。





「……先行ってろ。場所わかるだろ」

《 ケイのお守はアタシがすっからルールーは先行っててくれ 》

「……わかった。剣の方はガリューに任せておいて……私は……インゼクトツールと地雷王がいるから」





そう言ってルーテシアは歩いて奥に向かう。

インゼクトなんたらってなんだ?





「なあ……一応聞くけどルーテシアは強いよな?」

《 当たり前だろ。普通のやつじゃ何人いたって勝てねえよ 》



んじゃあ大丈夫っぽいな。





「す〜〜〜……はああ〜〜…………行くぞ」





さらに緊張してきた。

とりあえず深呼吸だ。





《 おう! 》 





今度はこっちが壁を突き破って突撃。

一気に男の真横に出る。



視界の端でガリューと剣の奴が戦ってるのが見えた。

よし、これで槍の方に集中できるな。





「りゃあああああああ!!」

「はあっ!!」





上段からの斬りつけを受け止められ火花が散る。

こいつ……!





「……流石の力だな」

「嘘だろ!?」





受け止めやがった!?

前の奴らはシールドとか固かったけど俺の攻撃防げてなかったのに!?



なんとかそこから圧し潰そうとするが全然それ以上刀が進まない。





「俺が改造されたのは魔力ではない。筋力だ」

「がふっ!?」





鍔迫り合いの状態のまま蹴りを入れられる。

ぐっ……腹に……しかもバリアジャケット越しでこの威力……





「だがその結果魔力がすべて筋力強化にだけになったのだ」

「くっ……」





とりあえず一旦、離れねえと……

バックステップで離れようとするが槍の柄尻が俺を逃がさなかった。





「あがっ!?」

「そのせいで俺は魔法が使えなくなった……貴様のせいでなああ!!」



!!!!?





突きの体勢から体を回転させ、横薙ぎの一撃を喰らう。

さっきより重い一撃で俺は廊下を吹っ飛ぶ。





「死ねええええ!!」





吹っ飛んでいる俺を追尾して上からの刺突で止めを刺しにくる。



やべっ!? 死んで……たまるか!!



俺の上から被せるように刺突をしようとする男の首に右足を引っ掛ける。

そのまま体を捻り込み、足で引っ張るようにして





このおおおおおおおおお!!



「 【 首狩り……シュート 】!!!!」

「がああっ!!??」





地面に叩きつける。

魔力放出で威力も上げて叩きつけたため、激突した床は大きく凹み、割れた。

俺も飛ばされながら蹴り出したいたせいで、体勢を直せず床にそのまま落ちる。





「……っ〜〜!!」





痛えええ! さっき喰らったとこが床に落ちてさらに痛え!





《 大丈夫かよ!? 》

《 はあっ……はあっ……ちょっとダメージあるかも 》





なんつう馬鹿力だよ……

ジャケットあるから結構防御力上がってるっていうのに……





「くっ……」





割れた床から片手で頭を抑えながら出てくる。

くっそ。さっきのちょっとしか効いてない。





《 猛れ炎熱……【 烈火刃 】!! 》



うおっ……刀に火がついた。



《 ボヤボヤすんじゃねえ! パワーならお前もあるだろうが! 》





それもそうだけどあそこまでいかんぞ……

結構な量の魔力が筋力に行ってるなありゃ……





《 それに身体強化も一緒にかけた。お前が放出で強化してたときくらいの威力だって普通にでる! 》





……この場ではすげえありがたい魔法だけど……

なんか1人のときのMAXがユニゾンだと通常になるっていうの悲しいな。

1人じゃメチャ弱ってことじゃん。





「カートリッジロード オフェンサープラス」





槍に魔力纏わせやがった。

さっきより数段威力の上がった攻撃でくるな……

ぶっちゃけまだ威力上がるのかよと言いたいぜ。



……しかも魔法無理とか言ったくせにカートリッジで魔法使うのかよ……

……ああ、あれか。

俺の作ったデバイスもどきみたいな物か。





「ふん……例え炎を付加しようが……俺の今の力に勝てるものか!」





単純な脚力だけのスタートダッシュで間合いを詰めてくる。



だっていうのに、速ええ!?

以前の魔導師とかは加速魔法で移動してたんだろうけど、

筋力だけでここまで速度出すのか!?





「はあああああああああああああ!!」





―――――――!!



1撃で殺られそうな攻撃が高速で、しかも何十も連続で俺を襲う。

くそ! こんだけ速くて、重いようなのじゃ反撃が……

ぶっちゃけ怖ええ!





「馬鹿め! 下がったな!」





やばっ!! 槍相手にバックしちまった!?





「死ねええええええええええ!!」





心臓に向かって槍の穂先が襲いかかる。

っつ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!



《 パンツァーシルト!! 》



「無駄だあああ!!」





一瞬止まるがすぐにシールドに罅が入り、砕ける。



くっそおおお!!

突きを喰らって壁にぶつかるが勢いが中々落ちないままいくつも突き破りながら吹っ飛ばされた。













***********************************************









壁をぶち抜いてアタシ達は何か広い部屋にまで吹き飛ばされた。

その衝撃のせいでユニゾンが解ける。





「おい! ケイ! しっかりしろ! おい!」





うつ伏せに倒れたまま反応がない。

クソ! あの一撃を喰らって……シールドまで破るなんて……

サポートしきれなくってケイが……





「…………ぁ……」





!? 生きてる!?





「し、死ぬかと思ったぁ……」

「って刺されてねえ!?」





うつ伏せから仰向けに体を返しす。

半泣き状態で思いっきりビビリながらもほぼ無傷で生きていた。





「あででで……!? 痛ええ! 起き上がろうとするとすっげえ痛ええ!」

「何で無傷なんだよ!?」

「無傷じゃねえわ! 壁にぶつかり過ぎて全身打撲だ!!」





上半身だけを起こして痛む部分を抑える。

槍での一撃喰らったんじゃねえのかよ!!





「間一髪止められたんだよ……」





そう言って刀の腹柄の部分見せてくる。

よく見るとその部分が罅になってる。



これだと刀身はなんともないけど柄は一,二撃攻撃したらぶっ壊れるな……





「アギトのシールドで少し威力と刺さるまでの時間稼げたからギリで防げた……」







……



「待て。なんであれに反応できたんだ?」

「えっ? だからあっ、やばい。槍の突きが来るー と思ったらお前がシールドで少しだけど時間作ったから」



そうじゃねえよ!!



「だから、それでも何でそんな芸当できたのかって聞いてるんだよ!!」

「えっと……あ〜〜……やばい、刺さる、と思ってたらなんかできてた」





……そういうことかよ……

あ〜、今わかった。

こいつがガリューと組手してて反応いいときと悪いときあったり、

やったら苦戦とかするわけがよーくわかった。



そもそもあの人形との攻撃に反応したり、アホみたいに基礎トレしてる割に攻撃効いてないのも何でかわかった。





「……お前……相手が攻



「……手堪えがおかしいと思ったが……あれで生きているとは本当にしぶとい……」





げっ!? さっきの空けた穴から追って来やがった!

ちっ……とにかくすぐにユニゾンを……





「ユニゾン・イン!」





……あれ?

おかしい……できない。





「ユ、ユニゾン・イン!」





場の空気がしーんとなる。





「……すまん。アギト……魔力空っぽい」





えーーーーーーーーーー!?





「しかもそのせいで超眠い……」





瞼がトロ〜ンとなって、クラクラしだす。

待て待て待て待て待て待てええええ!?





「ふん、ならば永遠に眠れ!」





距離を詰めて槍を大きく振りかぶり止めにくる。

ケイはアタシをすぐさま片手で掴んで横に大きく跳ぶ。





「ブレネン・クリューガー!」





突っ込んで来たところに真横からぶっ放す。

全弾命中して男は吹っ飛んで行く。



距離は取れたがそれでも眠気のせいで着地するとふら付くケイ。





「くっ……やべえ……」

「何で魔力切れたんだよ!?」





ユニゾンしてるときは消費量は普通だぞ!?

それにまだ残ってたはずなのに……





「あ〜……壁をすげえ枚数ぶち抜いたからそのときのショック吸収に使ってたかも……」

「かもぉ?」

「使いました。すんません」





魔力運用ド下手な癖に勝手にやってるなよ!?





「最後の方は槍受け止めるのと、壁破るので一気に飛んだ……ユニゾンも最初の衝撃で解けてたっぽいから……あかん……眠気がもう限界……」

「寝るなーーー! なんかないのか!? 収納空間開けろ! 今すぐ開けろ!」





すげえ眠そうな感じでなんとか開ける。

なんかねえのか!? なんかねえのか!?



ってやべえ!? あっち起き上がってやがる!

あれでもダメージ少ししかねえのかよ!?

ええい! なんでもいいから眠気覚ますものーーー!



ええい! これだ!



「うりゃああああ!!」





とりあえず掴んだものでケイの頭を思いっきりぶっ叩く。

そしたらなんかパリーンと割れた音がして





「ぎゃあああああああああああああ!! 目が! 目が!! 右目がああああ!!」





あ、あれ?

掴んだものを見る





“ タバスコ ”





ラベルにそう書いてある瓶だった。





「殺し合いの中でふざけているな!!」





げえ!? またさっきみたいに襲って来やがった!?

やばい! 今のケイはタバスコで片目が





「このっ……」





へっ?





「なっ!?」





振り降ろされている槍と体の隙間に入り込む。

そのまま首跳ねで倒立をするかのように勢いを付け、





「 【 顎割れショット 】!! 」

「―――!! がっ!?」





顎と首の骨の軋む音が少し響く。

そして男の身体が上にやや浮く。



嘘だろ!?

顎に真下から蹴り入れやがった!





「 【 廻旋シュート 】!! 」





今度はそのまま両手で体全体を回転させて脇腹に横蹴り。

脇腹からやや鈍い音が聞こえる。

そしてそのまま蹴りで体を引っ張り、吹っ飛ばす。



なんつう曲芸な技を!?





「水! 水!」





そう言って空間からボトルに入った水で目を洗う。

……やっぱりだ。









****************************************************







目が!? 目が!?

もはや眠気どころじゃない!

痛い! 目が痛い!





「はー……はー……痛かった……」





あかん……まだ目が染みる。

見えん。

やばいぞ。さっきはうまく蹴れたけど次はそううまくいくわけがねえ。





「おい……大丈夫か?」

「大丈夫なわけねえだろ!? なんで目にタバスコを!」

「目は覚めたか?」





覚めるわ!

つうかさっきのちゃんと効いただろうな……

あれで効かんのだったらマジどうしようもないぞ。





「ぐっ……」





ぐあっ……まだ意識持ってやがるあの野郎。

タフ過ぎだろ。

でも……足にキテルな。

顎を真下から蹴り飛ばしたんだ。脳が揺れんてまともに立てんだろ。



こっちはこっちで片目が潰れて距離感がおかしいけどな。





「くっ……くそ……ダメージはないのに立てな……」



「顎を真下から蹴り上げたんだ……むしろ立たれたら困るわ……」





と言ってもこっちも結構辛い……魔力が切れたんだ……

集中力が……





「クソが……クソがクソがクソが……くそがああああああああああ!!」



「いいっ!?」

「嘘だろ!?」





男が天上に向かって吠えると筋肉が一気に膨らみ、その身体が2M以上の大男に変わる。



おいおいおい!?

まだそんな隠し技ありかよ!?





「がああああああああああ!!」





足が立たないのを無視して槍を床に叩きつけることで推進力を生み出し突進してくる。



マジどんなだよ!?





「うおおおお!?」





なんとか横に回避する。

しかし男は今度は腕を床に叩きつけて反転、俺に再度突進。

それに加えて槍を大きく振り回す。



それを回避するが同じように突っ込んでくる。





「アギト! 炎弾!」

「ブレネン・クリューガー!!」





いいっ!?

ゴッツイ筋肉のせいで大してダメージになってねえ!



槍が俺の顔面めがけて振り回される。

危ねえ! 伏せたけど髪何本か斬られた!





こっちも“眼”使うか!?

いや、でもあれは……





「おい! さっきのもっかいやれ!」

「無茶言うな! 距離感がわからんのだ!」



「相手が動いてから見るな! 初動を見ろ! 目にばっか頼るんじゃねえ!」





目にばっかって……









―――――――――――――――――――――――――――――――――――



















『じゃ〜から言ってるじゃろ。動いてから見るんじゃない。予測と気配じゃと』



『んなこと言ったってよ……』



『まあ動体視力も上がっとるから反応できるんじゃろうが、それじゃあこれから先持たんぞ』



『予測って言ってもよ。外れたらアウトじゃん』



『外れても反応できるように経験でするんじゃろうが。後手に回っても防御をできれば最低死なん。それに武術の真髄は守りだ』



『嘘〜』



『嘘じゃないわい空手だったら “ 空手に先手なし ”って言葉があるんじゃ』



『先手必勝って言葉があるぞ』



『アホか! 先に攻撃するなという意味じゃないわ!』



『痛い……殴るなよ』



『はあ……まあいいわい。いいかこうやって』








――――――――――――――――――――――――――――――――――













えーっと……たしか……





「おい! 来るぞ! しかも足回復しやがった!」





時間の経過でダメージが抜けたのか、すでに腕での特攻を止め、両の足で立っている。

興奮状態になり過ぎているのか目には正常さが感じられない。

そして一気に爆発的なダッシュ力で突っ込んでくる。





「コロス、コロス、コロス、コロオシテヤルウウウウウウ!!」











『自分の手の届く範囲……そこに自分の領域を作って……』











右腕で無明を持ち、左手をやや前に構える。











『視覚に頼らず、気配に対して反射で対応し……』













「シネエエエエエエエエエエエエエエエ!!」







男の槍の横薙ぎを左腕で下に弾く。





「ナッ!?」





そのまま右腕の無明を左肩の方に構え、力を溜める。











「『自分の領域の範囲に入ったものを迎撃する!!』」













突進する巨体が俺を直撃する前に、その首に峰での一撃を打ち込む。











「っつ、あああああああああああああああああああああ!!」

「がああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」





真下へと振り抜き、男の突進力プラス俺の渾身の一撃が決まる。

カウンターのように入ったその一撃は、男の筋肉で固められた首にめり込み、それをさらに下に叩きつけることで 大きく凹んだ穴を作り、男を沈黙させた。







「……ぶっはああああああ!!」





元々罅が入っていて、限界を超えた柄は砕け散り、無明の刀身だけが床に刺さる。

俺もその場で尻もちを付いて座り込む。



いい加減沈んだよな……



よく見るが動く気配はない。

白目を向き、首の筋肉に大きな溝のような痕を作り、うつ伏せの状態で倒れてる。





うん、起きるわけねえ。





「ケイいいいい!! やったじゃねえか! 倒したぞ!」





お〜、アギト……勝利の包容とは嬉しいね〜

まあお前のサイズじゃ頭にしがみ付いた様にしか感じんが。





「何だよ! あんなすげえのできるんじゃねえか!」

「あ〜……お前のアドバイスなかったら死んでた」





なるほどね……今まで目で追って、それを回避、防御してたから駄目だったわけか。

逆に見えないときとかは少し気配への“反射”ができてたから無意識に対処できたと……



え〜っと……たしか “ 制空圏 ” だっけか……



ぶっちゃけジジイに習ったこと全然活かせてなかったんじゃん俺。





「つうかさ」

「ん?」

「今反省をしてみるとこいつってただ馬鹿力で槍を振り回してただけなんだな」





まあ、滅茶苦茶速かったし、威力あったから反撃とか難しかったんだけど。

振り回してただけっぽかった。



あー、あー……反省点多いわ。











『アギト、武ノ内。こちらは目的を果たした。途中実験中の物はすべて破壊、研究者もすべて始末した』





始末って……旦那……まさか殺したのか……

いや……確かに死んでもいいやつだとは思うんだけど……俺も共犯だって思うと……

……いやいや、深く考えるな。

どうせこっちもやられてるんだ。

やったらやり返されるんだ。



だから……別段殺られても文句言えないはずなんだ……





『ルーテシアとも合流した。レリック、それと何かのデータが奪う前にどこかに送られたそうだ』





そっか……半分成功、半分失敗か……

つうかよく見ると周りボロボロで、しかもそこら中に火が着いてるな。





「アギト、了解って返事しといて。あと念話も今度教えてくれ」

「あいよ。 旦那、こっちも終了だ。後で合流な」





『ケイ……剣の方はガリューが倒したって……それと……』



ん?





『お疲れ様……』





……はい、お疲れさん。

苦戦してるのは俺だけだけどな。

けどまあ……すげえものが実感できたし、掴めた。



なんとなく小さく右手を握り拳にしてそれを見つめて、ガッツポーズを小さくとる。





「さて……行くか」

「おう」





床に刺さった刀身のみになった無明を引き抜き、柄で挟む部分で持つ。

そして廊下に繋がってるであろう壁の穴に向かって歩き出す。







         ぱらぁっ





!? 物音!?



ちっ……このっ!!





物音がしたと思うと後ろから何かが飛んでくる感じがした。

横に跳ぶと大きめの石が、俺のいた場所の延長上の壁を大きな穴を空けて破壊していった。



あ、危ねえ〜〜〜



こいつ……ってやばっ!?



飛んで行った石に気を逸らしている間に距離を詰められていた。

槍の刺突が俺に向かってくる。





「ブレネン・クリューガー!!」

「ぐああああっ!!」

「うおっ!?」





アギトの炎弾が刺さる前に直撃。

俺も男も着弾の爆発で吹っ飛ぶ。





「ぐあああああああああああああああああああああ!!」





爆風で飛ばされただけの俺は大してダメージはなかったが、男は違った。

着弾した部分が吹っ飛び、皮膚は焼け落ち、腕も飛び、骨と中の筋肉繊維、神経、血管などが丸見えになる。

そしてその周辺を血で染めていた。





「アギト!? お前何殺傷設定で!?」

「そんな場合じゃなかっただろうが!! それに今まで効果なかったんだから仕方ねえだろうが!」

「だからってな!」





「この蟲があああああああああああああ!!」





完全に頭が逝ったのだろう。

飛び出る血も、そして腕がもげたことで感じるであろう痛み、焼けただれた皮膚の熱さ、まるで感じていないかのようだった。

そして残りの片腕で槍を持ち、アギトを襲う。



アギトも迎撃しようとするが、炎はもう起こせずただの小さな火種が周りに起こるだけだった。











「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」













気付くとザクッと手に変な感覚が走った。



狩りでよく感じた感覚に似ていた。



いつもよりどこか硬く感じた。



何か柔らかいものが落ちる音がした。



何かが噴き出るような音がした。



何か生暖かいものを浴びてる感じがした。



鉄のような匂いを感じた。



掌に痛みを感じて見てみると無明の刃の部分を直に握り、血が出ていた。



頬を水のような感覚を拭うと何か赤いものが手についていた。





何かが倒れた音がした。



見ると首から上がない “人” の体だった。





「け、ケイ?」

「アギト……」





アギトの方を見る。



その目には血を全身に浴び、灰色に変わった眼の俺が写っていた。





「あっ……ああ……」





一歩、二歩と後ろに後ずさる。





「ああああ……」





無明をその場に落す。







「わああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁっぁぁぁああああああああ嗚呼嗚呼アアあ!!!????」





その場に頭を両手で抱える。





この日……俺は初めて人を殺した。



















                                     つづく









         おまけ





〜 ゼスト襲撃時 〜







「何のデータを送ったのかは知らないが……ここまでだ。諦めろ」

「お、おのれ……スカリエティごときの駄作にワシの……」

「お前があれを作ったのか……」



「どいつもこいつも……ワシの理論は完璧だ! 耐えきれずに失敗するからこんな駄作に!!」

「……滑稽だな。死者の国に行って詫びることもないか……」



「くそ……くそおおおお!! ぎゃああああああああああああああああ」









『……ルーテシアか……こちらは済んだ。レリックはあったか?』

『さっき反応が消えた……多分どこかに転送されたんだと思う……』

『……わかった。そちらに向かおう』









あとがき





疲れた……非常に疲れた……

ケイの修行成果出せるようにするのにここまで苦労するとは……

管理局の裏とか書いたせいで話もややこしくなってきたここ最近。

とりあえずハゲ博士とそいつの作品群はここでやっと消せました。

これで勢力はスカリエッティ陣、ゼスト陣、六課教会陣、評議会陣……それでも色々と勢力がある……



作者自身も勢力図、関係図に最近こんがらがってきました(オイ

まあケイ自身の行動はゼストとともに行動、レリック集めと単純なんですがね。



ケイのこれからの行動はどうなるかは秘密です。









技・魔法一覧 (原作の魔法は説明しません)





【 首狩りシュート 】 …… 相手の首に足を掛け、地面に引っ張って叩きつける蹴り



【 顎割れショット 】 …… 相手の顎に向かってのただの蹴り



【 廻旋シュート 】 …… 体を捻って回転させる回し蹴り



【 オフェンサープラス 】 …… フェイトの魔法のディフェンサープラスの攻撃版。魔力を纏わせて武器・デバイスの攻撃力を上げる







   Web拍手返信





※よく考えたら主人公のレアスキルって条件はありますが、使い方次第で限りなく人の枠を越えていくことも可能な自己進化能力ですよね?

単に高い魔力やセンスがあるとは異なるというのを考えるとあの無敵ジジイをして反則といわしめたのも頷けます。

ぶっちゃけ遠い祖先に壬生一族もしくはそれに作られた存在が居て隔世遺伝したものとかでも驚きません。



>そこまで考えてなかった……

>ただこういうスキルにすれば人外設定いけるかな〜って思って考えた設定だったので(汗)





※主人公のレアスキルってばれたらレジアスや腐れ脳髄どもが血眼で欲しがりそうですね。

コピー出来れば人材不足が一気に改善しますし、次元世界平和の為とか戯言をほざきながら喜々として解剖しそう。

また、他の想像力豊かなクズ共の手に渡ったら戦闘機人以上の存在を生み出されそうでゾッとします。

つくづく主人公みたいなのが持ち主で良かったと思います。





>現在まったくバレてませんw

>スカには秘密、評議会はケイとスカが接触あったの知らずです。

>実際知ってるのは……ゼストとアギトくらい? 体のことはすずかなら知ってますね。





※ケイ、全然成長してなくねぇ? ダメダメじゃんっ、ウェンディも背後簡単に採られ過ぎ





>ケイ「……言わないで……俺も悩んでるの」

>ウェンディ「いや〜、油断したっス!」





※ケイさん、戦闘機人は魔力が無いから念話は出来ないですよ。



>魔力が動力源かは知らないんですが……クアットロが原作12話でルーテシアと念話をしていたはず……





※もし、壬生一族(というか鬼)みたいな人の天敵が、デバイスや魔法の知識を手にしたら、

ミッドチルダを含めた次元世界が奴らの狩場になりそうな予感。原作KYOでも奴らの大半が人間を家畜同然に見てたし。

戦力的にも奴らの精鋭クラスが魔法を手にした場合、原作通りなら一人倒すのに教導隊レベルで袋だたきにしないと無理そうだし、

ぶっちゃけスカリエッティ事件より凄惨な事態を予想してしまう。





>あはは……確かに……でもこの設定はまだまだ先でという感じですね。

>StS中は出ないですね。オリジナル展開まで進めてから出るかと。



※今更ですが、すずかさんって無謀ですよね。親友のためとはいえ、一人で主人公の正体を探ろうと挑みかかったり。

主人公だから死なずに済みましたが、もしKYOに出てきたような炎殺人マシン、獣神化した隻眼の名将、盲目ブラコン氷使い、

忠義者の雷チビッコ忍者みたいのだったら今頃墓のしたですよ!?

というか、サディスティック京都弁ボケボケ重力魔人だったら下手すりゃなぶり殺しですから、後先考えてないにも程があるかと。

まあ、フェイトやヴォルケンズにも言えることですが、一途過ぎて周りが見えなくなり安いですね。



>まあ友達を自分のことで巻き込みたくないという考えですずかとはそうするかな〜と思い書いた話です。

>KYOの作品の人たち出したらもうとんでもないことにww

>KYOの設定は鬼の力とかそういうのだけ引っ張るつもりなのでキャラまでは出ないかもです(汗)







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