……なんだこれ?

昔の夢……だろうか。

小さい頃の……謎ジイと修業した頃の俺が見える。

場所は……ああ…最後に連れてかれたジャングルか…

1回目と2回目は樹海……3年目はジャングルだったからこれ以降は合わなくなったんだっけ……



過去の記憶がそのまま流れる。



小さい頃の俺が必死に何かから逃げている。



《 はあっ、はあっ、……くっ…… 》





そうだ……このとき俺は……



《 くそっ……謎じいちゃんがいないときに…… 》

《 ゴオッ――――! 》





すぐ後ろに4メートルはありそうなトラが俺を追っていた。

このときちょうどジジイがいなくて、どうせならその間に小動物を狩ろうとしてたらヘマをして追われてたんだ……





《 うわあっ!? 》



だが密林の王者から子供が逃げ切れるわけがなかった。

俺はすぐ飛びかかられたんだった。



《 こ、このっ! 》



トラは飛びかかった獲物の首をその強靭な顎と牙で噛み砕くことで仕留める。

だからそれを知ってた俺はトラの顎下に掌底を入れる。



だけど確か効果はあんまなくて……



《 うわあああ! 》

《 っ…があああっ!? 》



右腕で掌底を入れた後すぐさま開いてる左腕で右腕の肘を押し上げて威力を倍増させてなんとか逸らしたんだった。

けどいくら倍になっても人間の子供と大型のトラ。



首への一撃を遅くしただけだった。



俺を抑えるトラの爪が体に食い込む。

そして300キロを超えるその体重をかけてくる。



《 うわああああっ!? 痛い! 痛い! 》



ミシミシと嫌な音がする。

アバラが折れ、内臓が圧迫される。

もしかしたらこのときは内臓も潰れてたかもしれない。



《 嗚呼あああああああ! 》



なんとか逃げようとジジイから渡されてた脇差を抜きトラの目に刺す。



《 ゴオオオおおおおおっ!? 》



圧し掛かっていた体勢を解き昔の俺から離れる。

俺は逃げようと起き上がろうとするが立ててない。

いや……あまりの痛さに立てなかったんだった。



《 ぐるるるるる……ガ嗚呼ああああ! 》



俺の反撃に怒り狂ったトラは、倒れてる俺の肩辺りに噛み付き肩の骨を砕き、思いっきり木に叩きつける。



《 くあっ!?―――――… はあっ…がはっ… 》



全身を血だらけにして生きてるのが不思議な状況になっている。

そうだった……今まで忘れていたけどこうやって死にかけたんだった。



《 我嗚呼アアアアア !!! 》





トラが止めと言わんばかりに木の根元で倒れている俺に飛び掛かる。



そこで俺の夢は覚めた。









時空を駆けちまった少年



第22話












「んっ……」



やけに消毒臭い白い部屋で目を覚ます。

やけに昔の夢を見たな……

思い出したくもねえ超恐怖体験を思い出しちまったぜ。



そういやここは……確か地球に帰るはずだったのに管理局の支部の裏に転移して…





「とりあえず起き……えっ!? 動けない!?」





両手両足、さらには胸を頑丈そうなベルトで縛られている。

なんだこの実験体になってるような状況は!?





「おや起きたのかね? いやはや、流石化け物。あと半日以上は気絶するのが普通だというのに」

「……誰だ」

「簡単に言えば君を捕獲した者だとだけ言っておこう」



そこにはスーツを着たメガネをかけたいかにも悪に下っ端っぽさそうな男がいた。

捕獲……

そうか……そういえばこいつの声を聞いて振り返ったところで部下らしき男どもに魔法を喰らったんだった。





「……今すぐ解放しろ。マッド野郎」

「それはできないね。我々の上から君を捕獲し実験、調査しろと言われていてね」



上? 一体誰だ。



「化け物ってなんだ……」

「何、簡単なことさ。君は人間じゃないのだろう? 魔法を使わないでその異常な力。化け物以外の何だというのだい?」



この野郎……胸糞悪い言い方しやがって……

ぶっ飛ばしてやる!!



「はははは、無駄だよ。今はリミッターを掛けられた状態の上に薬も投与済みだ。諦めて研究チームが着くまで大人しくしていたまえ」

「ざけんな! 誰が大人しくするか!」



俺を縛るベルトを無理やり外そうと必死でもがく。

くそ! 外れねえ!





「くっくっくっくっく……しかしまあ機動六課だったか……よくもまあ、あそこまで人間でもない化け物を集めた部隊ができたものだよ」

「……何だと?」

「だってそうだろう? 私はね、過去にあの部隊にいたエリオ・モンディアルのクローンの子共を見たことがあるんだよ」



嫌らしく口を歪ませるように笑う男。

こいつ……なんで知ってやがる……



「いや、正確には実験するために施設に運んだと言うべきかな。まあ流石魔導士となるべくして造られた存在。中々にいいデータとなったそうだよ」



さも当然のように誇らしいことをしたかのように言う。

こいつ……



「自分が本物ではなく偽物だとわかったときの顔……いや、とても作った命と思えなかったよ。まあ残念なのは同じクローンの執務官が保護を買って出た

 せいで普通の人間と同じように生活してしまっていることだがね」



「はん、それのどこが悪い。あいつはクローンだろうがなんだろうが生きてんだ! エリオはエリオだ!!」

「はははは。いやいいね。流石だよ、人間じゃない者同士慰め合いか。人間染みたことをしてくれるよ。傑作だ。」



この糞野郎が…

頭が今までにないくらい熱くなる。

こいつ絶対に自分と少しでも違う存在を忌み嫌う俺の大嫌いな人種だ。



「おやおや怖い怖い。まあそんな状態じゃあ何もできないだろう? 大人しく私の話相手でもしてくれたまえ。まともに人間と話せる最後の機会なんだから」



っ…こんな糞と話すことなんざ何にもねえ。

無視してなんとか逃げる方法考えねえと……

自分の周りをどんな場所かを把握しようと、男から目を逸らしたかのように見せ何か使えそうなものを探してみる。

だが自分の手の届きそうな範囲内には何もない。



「次はだんまりかい? あの部隊にいた化け物との楽しい時間でも思い出しているのかい? プロジェクトFで作られた子供と執務官のことかい?

 それとも人造魔導士計画でつくられた姉妹の片割れのことかい?」



姉妹という言葉に反応して見たくもない男の顔を見てしまう。

ニヤニヤと笑いながら話しているのが男の顔。

……姉妹? まさか……





「ははは、顔に出やすいようだね。ナカジマ……と言ったかな。あれも魔導士となるべくして造られた化け物だよ」



……なっ!?

普通ではないと聞いていて、エリオとフェイトさんのことを聞いてからなんとなく可能性の1つとして考えてはいた。

でも実際に聞いてしまうと驚きと辛さ、本人から聞けなかったことに対する申し訳なさが出た。



「知りたいかい? 他にもたくさんの化け物が」

「……せえよ…」

「ん?」

「うるせえって言ったんだよこの糞野郎がああああ!」

「なっ!? バ、バカな!? 拘束を無理やり解いて……があっ!?」



さっきまで俺を拘束してたベルトをぶち壊しメガネをかけた男を殴り飛ばす。

そのまま髪を掴み倒れた男を持ち上げ壁に向かって投げ飛ばす。



殴った男の顔は歪み、顎が外れ血だらけになっている。



「がっは!? な、何をしている! さっさとこの化け物を拘束しろ!」



誰もいない壁に向かって男が叫ぶ。

その場所に監視カメラか、マジックミラーでもついていたのだろう。

言葉通り部屋の入口からデバイスを装備した黒服が5,6人駆け込んでくる。

一斉に杖を構え魔力弾を撃とうとしてくる。



「撃……」



撃てと言おうとした一番近くにいた黒服の顔を飛び蹴りで潰す。



「し、死ねえ!」



隣にいた奴が撃ってきた。

さっき潰した奴の頭を掴み盾にする。



だが俺の後ろに回り込んできた2人が背中に向けて撃ってきた。

しゃがみ込み回避。



「えっ?」



俺に当たらなかった魔力弾はそのまま死ねと叫んだ男に直撃。



「このっ……がっ!?」



後ろから撃ってきた2人の内の一人の喉に拳を入れる。

呼吸を止めたところで頭を掴み膝に叩きつけ潰す。



「この化け物がああ!」



魔力弾を撃つ暇がないと判断した1人が杖で頭部を殴りつけてきた。

ラッシュをかけるかのように2撃、3撃と叩きつけてくる。

頭から血が流れ、痛みを感じる。

5,6発殴られたところで杖を掴み



「なっ――――!?」



そのまま懐に半身で入りこみ、伸びきった男の腕の肘を下から突き上げ折る。



「ぎゃああああ!」



止めを刺そうとしたが



「があっ!? うごっ!? がはっ!?」



背中から激痛が何度も来る。

見ると先程よりも武装した男の数が増えていた。

くそ……増援かよ。





「死ななければ構わん! 撃てえ!」





数十の魔力弾が俺を襲う。

顔、喉、肩、腕、胴、足、全身所かまわずで撃ちこまれ俺は倒れる。





「よくも……よくもやってくれたな化け物が!」

「う、うるせえ……俺を……あいつ等を化け物って呼ぶな…」



口の中が血の味がする。

体の魔法を喰らった所が痛み、間接が軋む。



スバルも……普通じゃねえのは知ってた……

だから気にしてたんだな……こんな……こんなことを言う奴がいるから…

エリオも…こいつのせいで…あんな…子供の内から大人にならないといけない羽目になったんだ…





「これ以上あいつ等を悪く言うんじゃ……ごっは!?」





顔をサッカーボール感覚で蹴られる。

そのまま男は俺を上から踏みつけ続ける。

顔から血が流れ、口の中もさらに切れる。



「黙れ化け物が! そんな眼と力を持って何をほざきやがる! お前らは大人しく人間様の実験材料か道具になってるばいいんだ! 生み出してもらった恩を忘れてんじゃねえ!」



「けっ……生憎こちとらお袋の腹から生まれてんだよ……てめえなんぞに生み出された恩なんざねえ」

「ふん、誰が造った存在か知らんがふざけた奴だ! 調べるだけ調べて処分を……」



髪を掴まれそのまま引っ張られる。

さらにそこから俺を殴りつけようとした瞬間、



「困るの〜……馬鹿でドジな奴じゃが儂の弟子みたいなもんじゃからの〜」





突然声がした。

低く、静かで、それでいてどこか楽しそうに感じ取れる声。

この声は……





「だ、誰だ貴様!? どうやってこの場所に……」

「はっはっは、秘密じゃ。とりあえずそこの馬鹿を返してもらおうかの」



部屋のど真ん中に長髪白髪で、長い同じ色の鬚を生やしその長身を筋肉で固めた老人が立っていた。



なんで謎ジイがここに……



「お〜お〜驚いとるの〜。まったく、しばらく見んうちにそこそこ大きくなったの」

「なんでジジイがここに……」

「説明は後じゃ。ほれ、帰るぞい」



部屋のまん中にいたはずなのにいつの間にか俺の横に来て、立てない俺を肩に担いだ。

……あ、相変わらず俊敏な爺さんだ……

まったく見えんかった……





「ま、待て貴様ら!」

「黙っとれ管理局の人体実験組の下っ端が」



管理局の人体実験組!?



「おいジジイ、それってどういう!?」



「……知っているなら生かしておけませんね……死んで貰いましょうか!」



手を振り発射の合図を出す。

黒服たちの杖から数十の魔力弾が発射される。

だが数十の魔力弾は俺達のいた場所を通り過ぎるだけだった。





「まったく……老人相手になんたる多勢に無勢じゃ」

「うっぷ……Gが……」





ジジイは俺を担いだまま撃った奴等の後ろに超高速で回りこんで回避しやがった……

そのせいで思いっきりGが俺の体に。





「人体実験して老人を敬わん馬鹿者どもは……」





ジジイの顔に影が差す。

げっ、この状態は……





「仕置きじゃあああああああ!!」





一気にジジイから気合い砲のようなものが爆発し、プレッシャーが周りに飛び散る。



その直後また俺の体にGがかかる。

あまりの光景の移り変わりの速さに目が何を認識したかは定かではなかったが……

地獄絵図のような光景だった。





「ぎゃあああああ!?」

「ぐはあああ!?」

「化け物だああああ!?」



「誰が化け物じゃ失敬なーーー!」



「うわああああ!?」

「た、助け――――」



「はははははははははははは! 人間手裏剣じゃあーー!」



「ぎゃああああああ!」

「このっ……死ねええええ!」



「まだまだ威力が足りんわーー!」



「ぐああああああ!?」



「ほれほれ若造共が! もっと元気を出さんか!」





俺を担いだまま1人をまるで球のように蹴り飛ばしそれを他の奴に当てることで一気に2,3人ぶっ飛ばす。

頭を掴んで投げ飛ばし同じようにまた数人同時にぶっ飛ばす。



魔力弾が飛んできても普通にかわし、腕ではじき返したり気合い砲みたいなのでふっ飛ばしたり。



細かいところはあまりの速さに目が追い付かなかった。

ただ20人近くいた武装した黒服共を倒すのに1分はかからなかった。





「まったく……最近の若い者は礼儀がなっとらん」

「いや……あんたが言うなよ……」





ジジイの対人戦初めて見たけど……マジでありえねえ……

あっという間に死体が……って全員生きてるし……



「殺す価値もない者共ばかりじゃからのお」

「……あんたマジでありえんわ」

「そんな師匠で嬉しいじゃろ」

「むしろよく子供の頃あんたなんかに関わったなと昔の俺を褒めたい」

「照れとるな」

「照れとらんわい!」





むしろ呆れてるんだよ。その傍若無人なハチャメチャなあんたに。

化け物って言いたくないがそれ以外形容する言葉が見当たらんぞ。



「お……お前ら……か、覚悟しておけ……私にこんなことして……」



しぶとくも気絶していない眼鏡の男。

地面に這い蹲りながら負け犬の遠吠え以下のことをのたまっていやがる。



「何言うとるか。こんな事態になったのにお前さんの上司とやらが、お前さんをそのまま生かしとくと思うのか?」

「なっ…」

「それじゃあの」

「ま……待てえええ!」

「誰も待てと言われて待つわけなかろう」



男の顔はこれから自分の身に起こることを恐怖しながら叫ぶが、ジジイそれを無視して、俺をまだ担いだまま転移して実験室のような白い部屋から脱出した。













「ふう……肩が凝るわい」



あんだけ余裕で戦って何をのたまいやがるこの爺さん。



「嘘コケ」

「後でマッサージ頼むわい」

「無視するな!!」



くそっ……マイペースも変わってねえ。





「さてと……そろそろその眼解除しなさい」

「えっ?」

「眼が解放状態になっとる。あまりいい傾向ではない。深く呼吸して落ち着け」



どこからか鏡を出して俺に見せる。

すると眼が黒ではなく銀に近い灰色になってた。



「なんじゃこれ!?」

「さっさと言われたことをせんか」

「すぅ………」



言われたとおり目を閉じ、深呼吸して心を落ち着かせる。

すると一気に怠惰感が体に流れる。



「とりあえず落ち着いたか……」

「……なあ……これって」

「まあ待て。他にも気になることがあるんじゃ」



頭に右手を乗せてくる。

そして左手を胸に置いてくる。

そしたら俺の胸からリンカーコアが出てきた。



「な、何しやがる!?」

「……ケイよ。体に変化が起こっただろ? どんな感じじゃ?」



なっ!?知ってたのかよ!?



「何じゃ? 知ってたのが意外そうじゃのう。会った頃から変わったコアだというのは気付いとったわい」

「じゃあ教えとけよ!?」

「今更じゃろうが。とりあえずどんな感じか教えなさい」



そのまますずかさんのことは除いて死に掛けたら無意識にとんでもない力が出て、それから身体能力が上がったと説明した。

本当に変な話であり、不思議にも思う。

そんな俺の心情を読み取ったのかジジイは質問してきた。



「不思議か?」

「不思議だ」

「……頭固くなったの……」



半眼で呆れたかのように言う。



「常識を知ったと言え」

「魔法が存在するんじゃぞ?」

「そういやあんたも常識外な存在だったな」

「お前もな」



なんか話が脱線する…



「とりあえず細かい説明してもお前の頭じゃわからんだろ」

「失敬な」

「じゃあわかるのか?」

「……小難しい計算とかある?」

「物理学的、生物学的にして欲しいならいくらでもあるぞ」

「じゃあいい……」



もおいいっす…

とにかく何かが理由で上がったってわかるでけでいいっす。



「さてと……じゃあまず何から話すかの……」

「……俺の体に起きた変化の理由から話してくれるか?」

「うむ。いいじゃろう」



髭を撫でながらやや下を向き思考の体勢のような感じで座りなおすジジイ。

やっと本題に入った…



「お前を連れた最後の日のこと覚えとるか?」

「……少しあやふやにだけど」



丁度さっき夢で見て少し思い出した。



「トラのことは?」

「覚えてる」

「そうか……目に傷を負ったトラは怒り狂ってお前に止めを刺そうとしたところになんとか間に合っての…そのまま儂が狩ったんじゃが……」



ああ、やっぱあんたに助けられたのか。



「お前はほぼ瀕死でな……血も足りず、内臓も破裂、生きとるのが奇跡だったわい」



……死ななくてよかった…

今更ながらに思い出し、少し鳥肌がたった。



「で、仕方なく回復魔法かけて輸血したんじゃが……その血がの……」

「血が?」

「人間の血ではなかったんじゃ……いや、正確には普通の人間より力のある一族の血というべきかの」



…夜の一族の血か?

普通の人間より力がある一族っていうとそれくらいしか知らんけど。



「鬼伝説知っとるか?」

「酒天童子とかそういうあの鬼?」

「まあ……そうじゃな。鬼と言っても伝説通り角があったりするわけではないがの。見た目とか十分普通の人間じゃ」



そんなの輸血されたのか俺は!?



「その一族は力、頭脳、共に一般の人間を遙かに超えていた。ただ問題が1つあった」

「どんな?」

「……殺戮衝動じゃよ…」



どこか寂しそうにそう呟く。

……えっ?



「力も頭脳も、そして長寿であったがゆえに欲という欲はほぼすべて埋めつくされ果てには殺しに快楽を見出すようになったのじゃ」



超危ねえなおい。



「まあ昔の人間が伝承に残したのはその衝動で普通の人間を襲った奴らじゃな」

「よくそんなの殺せたな……

「弱いのを殺したくなる輩は一族でも大して力のない奴らじゃ。本当に強い奴等は同族でとの殺し合いに快楽を見出していたんじゃ」



……げえっ……マジかよ。

つうか超怪談っぽい話になってきたなオイ。



「西洋にも似たような一族はおったが鬼と呼ばれるようになった一族程の力はなかった。まあ殺人衝動もそうない代わりに吸血衝動があったようじゃが」



……なんか夜の一族の方がまだいいよ。それでも。



「で、最後は一族同士で殺し合って強いのはいなくなって弱いのも鬼として退治されて消えたと」

「まあ……概ねそんな感じじゃ。力と欲に溺れ、殺戮に酔い、滅びた。……愚かとも言えよう」



力に溺れる……か……

よく聞く落ちだな。



「で、なんでまたそんな大昔の一族の血をあんたが持ってる? しかも何故に超詳しい」

「秘密じゃ」



さらりとのたまいやがった。



「……いやここは秘密で済ますとこじゃねえだろ」

「……時が来れば話そう」



……ジジイが下を向いてやや暗くなるなんて……よっぽど深い事情があるんか。



「わかった……じゃあ次だ。輸血したのはいいが、そんなのが俺に輸血されてよかったのか?」

「普通の人間に輸血しても耐えられず死ぬじゃろうな……そして輸血の前は完全にお前は普通の人間の子供じゃった」



じゃあ何で生きてる。



「お前のリンカーコアに輪が掛かってるじゃろ? あれのおかげじゃ」

「4つあったやつ?」

「そうじゃ。お前のスキル……それは体質の変化じゃ」



……はっ? どういうこと?



「まあ要するに外部からの影響で体の細胞が変化するというわけじゃ。まさにメタモルフォーゼ。ポケ○ンのメタモ○みたいなやつじゃ」

「……えっ? つまり血を輸血したことで細胞を変化させたと?」

「そうじゃ」



……………ええええええ!?

何その無茶苦茶なスキル!?



「儂も初めて見るスキルで驚いたわい」

「俺の方が驚きでいっぱいだわ! いつの間にか俺は人間から変身してたってことだろ!?」

「まあ馴染んだのはつい最近のようじゃがの。この前覚醒したの感じてお前を探しとったら地球におらんくてさっきミッドで感じて急いで来たんじゃぞ」



この前って……ああ、すずかさんとの事件の時か。



「血液検査のときバレなかったのは覚醒前で隠れていたといったところかの」

「推測かよ」

「儂でもすべてわかるわけでないわい」



いや、何でも知ってそうだぞ。



「まあとりあえず……俺は鬼になったと」

「まあ半分鬼で半分人間じゃの」



ショックなような半分嬉しいような……

でも化け物扱いは嫌だな……

さっきのメガネみたいなこと知り合いに言われたら嫌だな……



「副作用みたいなのないのか?」

「わからんが……恐らく殺人衝動やらが出たりするかもしれんの……そこまで強くなくても…他のもあるかもじゃが」

「……力上がるだけで収まらないってことかよ」

「まあ死ぬよりいいじゃろ」

「まあそうだけど……」



もしかしてすずかさん殺しかけたのとかそのせいか……

コントロールできるかな……

殺戮衝動とか嫌だぞ……他にもなんかあるかもしれねえっぽいし。





「まあ半分は人間じゃし相当ヒートアップせん限り大丈夫じゃ」



本当かよ……うさんくせえ。



「とりあえず輸血後流石にあれ以上連れ回すのは無理かと思っての……それに丁度色々と用事もあったからお前を回復後、家に帰して1人で鍛えるよう言ったのじゃ」

「ああ、それでずっと音信不通と」



そして死にかけて記憶がいくらかぶっ飛んだから、はっきり覚えていなかったと。



「まあ音信不通の理由はわかった。じゃあ何で俺を鍛えようと思った?」

「……これも今は言えんが初めてお前と会ったときのこと覚えとるか?」

「ああ。あんた餓死寸前でしかも傷だらけで死にかけてたしな……つうか原因がなんだ?」



ジジイ程のやつがそうなるとは……



「すまぬ。それも言えん。……ただお前のコアを見て面白いと思ったのじゃ、それに儂の回復魔法を見て目をキラキラさせてたしの」

「待て。俺はそのとき魔法見たっけ?」

「なんじゃ? 覚えとらんのか? 死にかけたせいで記憶飛んだか?」



……そんな重要な部分ぶっ飛んだのかよ!?

そういやどうやって樹海やらジャングル行ったのか深く考えたことなかった!?

それを考えれば思い出したかもしれないのにーー!

俺のバカちーーん!!





「まあそういう理由でお前を鍛えようと思ったのじゃ」

「どう返事したっけ俺?」

「カッコイイ! 僕も強くなりたいから教えて!」



声色まで変えて言うなよ!?



「そんな純粋無垢なかわいい男の子だったお前が今ではツッコムばかりのみならず、記憶もぶっ飛んだへタレか……」

「待て、なぜへタレと決めつける」

「なんとなく昔より冴えない空気が強くなっとるぞ」



久々に会った人間に言われるほどなのか!?





「まあ……流石に当時10にも満たぬ子供じゃ。そんなのをあんな目に遭わせてすまんかった。儂の油断じゃった」

「まあ……俺もヘマしたのが悪かったな……注意はあったはずなのに」



「トラウマになっとるから助けるだけ助けて、会うつもりもなかったが…今回のような事態でしかも覚醒したとなるともう別じゃ」

「どうするんだ?」

「多分またお前は貴重なサンプル扱いで狙われる。だがずっとついて回るわけにもいかん。鍛える。2ヶ月ほどしか教えられんがみっちり仕込んで大抵の魔導師には遅れをとらなくしてやる」

「……わかった。よろしくお願いします」



自分の身は自分で守りたいしな。

いつまでも頼ってばっかじゃいられねえし、自分のできるとこまでは自分でやるって約束したし。



「さて……その前にお前の質問に答えねばな。次はなんじゃ?」



「管理局の人体実験ってなんだ?それに人造魔導士って管理局が作ってるのか?」

「そうじゃ。表じゃと禁止などしとるが裏では管理局自体が行っておる。まあそれを知らないでまた別でしておる犯罪者もいたりするがの」



おいおい……そんなキナ臭い組織だったのかよ…

スバルやティアナそんなとこにいて大丈夫か? 滅茶苦茶心配だぞ。





「裏では色々やっとるもんじゃぞ。管理とか言うが支配に近い形で魔法文化ある世界を管理下にしたこともあるしの」

「いいのかよそれ……」



「まあどの道異世界への航行手段があれば他世界を支配しようとする世界もあるわい。細々した戦争も昔はよくあった。

そんな中で取りまとめるようになったのが管理局だったというわけで他の世界、組織がなっても変わらんわい」



それもそうか……



「まあ管理局があるおかげで纏まってる世界もあるのは事実じゃ」

「……なかったら余計覇権争いがあると」

「十中八九あるじゃろな」



はあ…どうせあれだろ? 権力馬鹿の政界上層部がそうするんだろ? 迷惑な。

死ぬのは兵士と一般人なんだぞ。てめえらどっか安全なところで護衛に守られつつ権力の保持について話し合ってるだけじゃねえか。





「最近は管理局の上層部が驕ってきたかのか正義のためと言って戦力増強のために、生まれながらに大きな魔力資質持ちを作ろうとし始めてできたのが

 プロジェクトF。クローン細胞を改造して生み出したというわけじゃ。表には出てないし成功例も少ないがの」



それがエリオとフェイトさんか…

じゃあスバルは? スバルもクローンなのか? いやでもフェイトさんはそう言ってなかった……



「つうかそこまで知っててどうこうしようと思わないのか?」

「知らんわい」



知らんて…



「儂には関係ないことじゃ。別に正義の味方でもなければなる気もない。興味もないからの。それに儂には儂のしなければならないことがある」

「……それを今までしてたのか? 俺を帰した後」

「そうじゃ。まあ今言ったことは裏を調べてたらついでにわかったことじゃしな」



ついでかよ。



「それにいくらなんでも次元世界規模の組織を1人で相手する気にはならんわい」



十分できそうだぞ。



「ちなみになんか俺のスキルのこととコアのことで人造魔導士かもとか言われたけど」

「安心せえ。お前は天然物じゃ。かなり変わり種のな」



…本当に?



「世界にはまだまだわからんことはたくさんある。知らないから常識内に抑えようとするから頭が固くなっとるんじゃお前は」



わかった。わかった。

だから頭鷲掴みでぐるぐる回すな!!





「はっはっは。まだあるか?」

「じゃあ最後。あんた魔導士ランクどのくらい?」

「知らん。そもそも管理局に関わり持とうと思わんかったから測りようがないわい」



マジかい。



「じゃあデバイスは?」

「刀じゃ。じゃからお前には剣術を教えてたじゃろう。察しろ。後は人に戦力教えるもんじゃないから言わん」

「さっき使ってなかったけど?」

「あんな奴等素手で十分じゃ。よしついでじゃ。素手の戦闘も叩きこんでやろう」

「魔法は?」

「特に使っとらんわい」



……完全素手であれをしたのか!?

この無茶苦茶ジジイ!



「ちなみに俺は魔法できないぞ。どうするんだ?」

「知っとるわい。リンカーコアが周りのスキルでガチガチに囲まれとるから出せんのじゃろ」



それっぽいね。

アギトにも言われた。

中からコントロールしてくれたから出せたんだな。





「安心せい」



おお、何か方法があるんだな!





「素手で魔導士ぶっ倒して、刀一本で障壁ごとぶった斬れるように鍛えてやるわ!」





っ〜〜〜〜〜―――――!

無駄にプレッシャー飛ばすなーーー!

ふっ飛ばされそうになるだろうが!





「魔法なしでどう勝てと!?」

「武術と気合いじゃ」

「んな無茶な!?」

「アホタレ! 人間は魔法に負けん! 魔法なんぞただの戦闘手段と生活手段の1つじゃ!」

「銃やら刀全然効かなかったぞ!?」

「お前の腕が悪いんじゃ。達人クラスなら勝つわい」



「だけど無理があるだろ!?」

「お前にはスキルがあるじゃろうが! むしろそっちのが反則じゃ!」

「あんたの素手の強さのが反則だ!」

「とにかく修行にレッツ・ゴーじゃ! 今度は前よりサバイバルな所で鍛えるぞ!」

「ちょっ!? 待っ……」





こうしてまた謎ジイの修業が始まる。

しかし俺は後悔することとなる。



あまりの厳しさと異常な自然環境の世界での修行に。







                                     つづく







   〜 おまけ 〜



「そういえばケイってもう来たりしないんですか?」

「あっ、それなら安心しい。ちょっと事情があって検査でこっちにたまに来るようになったから」

「事情……ですか」

「うん。ほらケイ君って魔力あるのに魔法できなかったり、私との戦闘で不思議なことしたからそれのだよ」

「それはいつですか?」

「えーっと……3ヵ月後より後だったっけ?」

「うん。この時期は忙しいから多分陳述界が終わってからや」

「結構先ですね」

「そのときは誰かに向かえと案内頼むな」

「「「「 はい 」」」







    あとがき



ふう……書き直し…終わったーーーーー!!



ついに出た謎ジイ。

この爺さんの正体はStS中は完全謎のままで進みます。

今回の話で出たケイの体に流れてることがわかった“ 鬼の血 ”ぶっちゃけ侍ディーパーKYOの壬生一族っす。

あんまり他のとこからまんま引張るとかよくないんですが…勘弁してください。

夜の一族でもいいかなって思ったんですがそれだとリョウさんの良介とネタが同じになるので申し訳ない気がしましたので。



ジジイの正体は以前投稿掲示板の方に書いたオリジナル展開にまで進めば書けます。

それまで連載続けれるようがんばります。



ちなみに修業の話は飛ばします。

そして次回から一気にケイがパワーアップして頑張ります。



 



  〜 Web拍手返信 〜

※ケイのコアは、まんまソウルドライヴですね。

>どんな漫画あるいはアニメかは知らないですが似たような感じになりましたか。

※大変面白いので毎回見させてもらってます、それにしてもユーノがなのはを戻せるかどうかが大変気になります…実際のところどうなn(ry

>執筆のノリしだいですww(ぇー

※この様子だと素直に管理局入局はなさそうだきそうにないですね。もっと悩むケイを期待してます。管理局に入るとは思えないですね。

>あはは…あまり悩み事をしない正確なキャラですのであまり悩む描写はないかもしれません(汗)

※ふと、思ったんですけど、異世界で知らない検査受けて、その結果が嘘つかれてたのを知ったら不信感が増すのではないでしょうか?
返信のところのなのはの考えで思ったんですが、最高ランク魔導師が犯罪に走った場合はどうするんでしょうか?
魔法では誰も止められない場合はほうっておくしかないんじゃないでしょうか?最高ランク魔導師は小型ミサイルと同等に危険と考えられるんですが…

>不信感は持つでしょうが身近で人柄は見てるので許せるかなと思います。
>最高ランクの魔導士が犯罪に走った場合は完全に人海戦術でしょうね。ASの頃のように。
>本来はなのはとフェイトみたいなのが出てこないで結界で囲み潰す。これだと思います。

※これからも頑張ってください。
>がんばります!!

※いつも更新を楽しみにして待っていますこれからも頑張って下さい

>今月は期末があるのでちと更新が遅くなるかも…夏休みにハイペースで書けるよう頑張ります!

※この話でかなりケイの話がでましたね。続きが気になります。ただガチがちょっと…

>まだ言われるとは…流石にそろそろ凹みそうになるのでそろそろご勘弁を…

※どんなに立派な考えを持っていてもも、それを伝え無ければ思ってないのと同じだと僕は思います

>アニメじゃ全然伝えてれてないのが魔王様でしたね

※ケイの能力の名前サテライト・アームズなんてどうでしょう

>能力名考えてなかった!? 

※なんと、ケイはヘタレなミュータントだったのか!

>ミュータントではなくメタモ○でしたww

※.ケイの能力がコアを使用したアイテム生成能力とは驚きました。この能力とアギトとのユニゾンが有れば結構戦えるんじゃないですかね?

>魔法はアギトがいないと使えないことには変わりませんでしたww

※ケイが自分の身体が普通と違う事を知っていると知ったなのは達の反応も気に成りますね。聖王教会でケイが何をするのか楽しみですね。

>特に何も言いませんでした。下手に言うとルーテシアのことがバレるので。


※ケイの身体の秘密は知りたがっても、模擬戦のダメージについて心配はしないんだな。


>シャマル曰くなのはの訓練弾は優秀とかであんまダメージ心配してなかったんでケイもそうなりました。

※以前「時空を駆けちまった少年高校二年編」を読んで思ったのですが、ダ・カーポとダ・カーポUをクロスさせるのは辞めた方が良いと思いますよ?
 ダ・カーポUはダ・カーポの53年後の設定ですから芳乃さくらがどっちの設定になるかが判らないのでクロスさせるのならどちらか一つにした方が良いですよ? 俊

>まあかなり先の話ですのでかなり漠然としてます。設定も世界観も全然作ってないです。
>投稿掲示板にはほぼ妄想状態で書きました。
>でもこの先できるだけ書きたいとは思ってます。

※>し、白装束の悪魔が…悪魔が…  完全にPTSDものですね(怖ッ)これでケイくんも被害者の会の立派な一員だ!w

>ケイ「そうだ!!慰謝料を請求する!!」
>なのは「えっと…ごめんなさい…」
>ケイ「…いやすんません…俺も調子こき過ぎました…」
>なのは「魔王とか言われないよう頑張らなくちゃ」
>ケイ「ファイトっす!!」

※ガチレズはさすがにどうかと思うんですが……特定嗜好の人にだけ喜ばれるものは微妙だと思います。
該当の話だけ差し替えてもよいかと思います。今なら2話分だけなので影響は少ないと思いますし…。

>いえこのまま行きます。一応これを元にした話もこれから先に考えてますので。

※ガチレズはちょっと…でも心の何処かで納得している自分が居るw

>はっきり言ってガチにしか見えません。

>違うというなら男陣もっと出せや!!重要な励ましとかそんなん全部フェイトと相談しかねえじゃねえか!!

>すいません。言われ過ぎて口調荒くなりました。









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