ついに来た模擬戦の日。

俺が師範と戦る前にスターズとライトニングが先になのはさんとするんだがな。

さて……準備もできた。

逝くか。





師範……マジで手加減してよ……ホントに……









時空を駆けちまった少年

第19話












準備を整え、訓練場に向かう。

服はいつもの訓練服ではなく武装隊の紅いアンダースーツを着ている。

バリアジャケットを生成する程の余裕はなかったし、ある程度の防御力が欲しかったので借りたのだ。



そして背中に130センチほどの布で捲かれた円筒を背負い、肩にショルダーバックをかけている。

これがデバイスもどきだ。

待機モードもくそもない。

むしろ変形の原理がさっぱりすぎていらないってことにしたのだ。

戦闘中邪魔になるかもしれんが、まあそこは大丈夫だろ。多分。

一応動いて邪魔になりにくいようにしたし。



うむ……にしても……結構カッコいいよなこの服。

武装隊の統一されたバリアジャケットを見せてもらったがこっちの方がカッコいいと思うのは俺だけかな?









     〜 訓練場 〜







訓練場に着くとみんなアップをしていた。

俺もその中に入りアップをする。



「ケイのデバイスでっかいね」

「ん〜……ちとでか過ぎたかなと思ったりしてる」

「邪魔にならない?」

「まあ固定とかベルトでしっかりできるようにしたし」



戦闘中はこのでかい袋に巻かれた円筒は肩にベルトで固定できるようにしたし……



「ケイ兄がんばって」

「おう。エリオもがんばれよ。応援してっかんな」

「うん」



しかしこのチビッ子2人がバトるのか……まさに漫画だな。



「どうかしました?」

「ん。いやチビ2人も怪我せんようになと思ってな」

「あはは。大丈夫ですよ。特訓してきましたから」

「まあしっかりな」

「はい」



うんうん。キャロもエリオも素直で俺は嬉しいよ。

このまま真っ直ぐ育つんやで。



さて……問題は。



「……何よ」

「……いや、別に」



ティアナさんなんだよな……

謝りたいけどブス〜っとした顔でしか会わないもんだから謝れないんだよな。



「ケイ……いい加減謝っちゃいなよ」

「無理言うな。謝りづらくてかなわん。」



スバルが耳元でひっそりと言う。



「何内緒話してんのよ」

「あはは……ううん。なんでもないよ」

「そうそう。まあお互いがんばろうや」

「……あっそ」



ぶっきらぼうにそう呟くと反対方向を向いてクロスミラージュの簡単な点検をしだす。

……はあ……やっぱ謝りづらい。

こっちからもう謝るか……意地を張るのも疲れる…





「さて……じゃあ今日の模擬戦始めよっか。最初はスターズから。バリアジャケット装備して」

「「はい!!」」



なのはさんもアップを整え、宣言する。



「他の奴は見学だ。そこのビルの屋上いくぞ」



ヴィータに連れられ残りの俺とエリオ、キャロもビルの屋上へ移動。

先に来ていたのかシグナム師範とフェイトさんもそこにいた。



「ケイ。点検などはもうしたのか?」

「はい。この後すぐにでもできます」

「そうか。どれ程成長できたか楽しみだ」



あはは……結構したとは思いますが、多分てか絶対勝てないと思うんでその辺を考慮してくださいね……

さもなくば死にます。俺が。



「言っとけっどシグナムに手加減期待すんなよ。バトルマニアだからな」

「げっ、マジかよ……」



手加減の可能性は0になった。

うわっ、どうしよ……遺書書いてねえや……







「それじゃあ。レディー……ゴー!」





そんなこと考えてるうちに、なのはさんの掛け声と同時にスターズの模擬戦が開始された。

スバル、ティアナさんガンバ! 訓練や自主練とかの成果見せてやれ!















戦闘が始まった。

前半はなのはさんがスフィアを中心にスバル、ティアナさんに攻撃を仕掛ける。

そして中盤から2人がアクションを見せる。

スバルがなのはさんのアクセルを防御しながら突進する。

どわぁ〜……すげえ勇気だなおい。



突進し、なのはさんに肉迫、そのままリボルバーで殴りかかる。

だがなのはさんはそれをプロテクションで防ぎ、さらにそのプロテクションを横に薙ぎ払いスバルを吹き飛ばす。

すっげえ力技だな。

魔力有り余ってるね……





「こらスバル! ダメだよそんな危ない軌道!」

「すいません! でも、ちゃんと防ぎますから!」





無茶……まあ確かに言われればそう思うけど……

実際ああしないと近づけん気も……

あ〜……でも普通に技術ある相手じゃ自殺行為だし……う〜ん……どうするべきな場面なんだ?





「ティアナは……」





なのはさんはティアナさんを探す。

そういや姿が……





「あ、あそこに!」

「ティアナが砲撃魔法!?」





ティアナさんはなのはさんを狙い撃てる距離のビルに立っていた。

そしてそこから砲撃をしようと2丁のクロスミラージュを前に突き出し魔力チャージする

おっ、撃つのか。よっしゃー! いったれー!



なのはさんの意識が一瞬ティアナに向くとそこにスバルが再度突撃する。

アクセルで狙い撃つがスバルはそれを全弾回避、そしてもう一度リボルバーで攻撃する。



しかしそれもまたプロテクションで防がれ、そのまま押し合いにもつれ込む。



スバルがこの押し合いでなのはさんを抑えてる間に狙い撃つ気か?



そう思いティアナさんの方を見る。

しかしその姿はかき消える。

幻影!?

本物は!?

いたっ! 

なのはさんの頭上に延びたウィングロードを駆けあがり





「――― 一撃必殺 ―――!」





なのはさんにクロスミラージュの先端に生成した魔力刃で斬りかかる。

接近戦に持ち込んだか。

自主練では接近戦をメインにした。その成果は出るのか!?





「……レイジングハート……モードリリース……」

「でやああああああ!」





斬る刹那、突然爆発が戦闘中の三人を包み込む。

どうなった!?





「おかしいな……2人とも……どうしちゃったのかな……」





そこには片腕でスバルの拳を受け止め、もう片腕でティアナさんの魔力刃を受け止めたなのはさんが立っていた。





「模擬戦は……喧嘩じゃないんだよ……練習の時だけ言う事きいてる振りで……本番でこんな無茶するんなら練習の意味……ないじゃない……」





…………





「ちゃんとさ……練習道理やろうよ……」





…………





「あ、ああっ……」

「ねえ? ……私の言ってること……私の訓練……そんなに間違ってる?」





…………





「っ…!」





ティアナさんがなのはさんから無理やり離脱し、距離を置く。

そのまま砲撃のチャージに入る。





「あたしは…! もう、誰も傷つけたくないから! 失くしたくないから! だから……強くなりたいんです!」





失いたくないから強くなりたい……俺もそういう感じ……なのかな。

自分とその周りを壊されたくない……いや微妙に違うか。





「少し……頭冷やそうか……クロスファイヤー…」





!? ティアナさんの魔法!? いとも簡単に!?





「うわああああ! ファントムブレ……」

「シュート……」





なのはさんが放ったクロスファイヤーがティアナさんの砲撃の前に放たれ命中する。

ッ……! ティアナさんは……

爆煙でよく見えない。





「ティア! っ……バインド!?」

「じっとして……よく見てなさい……」





スバルをバインドで縛り、まだ煙で姿が見えないティアナさんをなのはさんは再度狙いにかける。

再びクロスファイヤーシュートのためのスフィアが生成されていた。



! また狙い撃つ気か!? さっきのがクリーンヒットしたじゃねえかよ!





「くっそたれが!」





俺は肩に架けていた円筒の包みを破り捨て、その姿を晒した。







       Side ティアナ







訓練もちゃんと受けてきた……そしてそこに自分なりの答えとしてスバルとのコンビネーションを立ててきた。

接近戦ができないのがあたしの弱点…だからあいつにも…ケイにも手伝ってもらいながら強化してきた。

でも……なのはさんには通用しなかった……

力が上なのは知っている。この模擬戦でも勝てないってわかってた。

だからこそ自分の力以上のことしようと思って……多少の無茶でもしないとって……

でも……駄目だった……





「――― クロスファイヤー ―――……」

「っ……! なのはさん!」





爆煙が少し消え、なのはさんの姿が見えた。そしてまたクロスファイヤーシュートの撃つ準備……

あはは……あたしの魔法……あっさりと……それにあたし以上の威力で……



体は動かない……認識をしていても回避行動どころか指も動かせない。

意識も……だんだんと遠くなる。





「――― シュート…… ―――」





クロスファイヤーを収束させ、なのはさんは砲撃並の威力に上がった魔法をあたしに放った。

朦朧としていく意識の中、もう完全にこの一撃を喰らうと思った。

だが……





「くそったれがーーーーーー!」





あいつの声がしたと同時になのはさんの攻撃に横から別の光がぶつかり軌道をずらした。

あたしを直撃するはずだった一撃は真横を通り過ぎる。



しかしもう立っているのも難しかったあたしは砲撃が真横を通り過ぎただけでウィングロードから落ちた。





「あっ……」





落ちるんだ…

そう思い目を閉じる。

地面に叩きつけられると思った。

でも落ちるときの浮遊感はすぐ消えた。





「お疲れさん……ゆっくり休めや……ほんで次頑張ろう……まだまだ先はあるんだし」





そんな声が聞こえた。

少ししか残っていない体力を使い目を開く。

そこにはあいつがいた。

落ちたあたしをキャッチしてくれたのだろうか……両腕で抱かれていた。





「……あの時……怒って……ごめん」





そう呟いてあたしは意識を手放してしまった。









         Side ケイ







なのはさんがティアナさんに砲撃を放つギリギリ前。

俺は自分のデバイスもどきの1つを使用した。



魔力バズーカ



名前はないが簡単につけるならこうなる。

ただ単に大型カートリッジの魔力を砲弾の形に凝縮し高速で相手に撃つ。

ただそれだけの装備。

大型の魔力弾を撃つのとなにも変わらない代物だ。

しかも撃てるのは一発ずつ。

後ろの方にリボルバー式で詰まっているため残り5発。

外に晒しておくと魔力弾が当たって誘爆しないか不安だからそうした。

威力はなのはさんの砲撃軌道をずらすことができただけで十分。



撃ち終えた俺はそのままウィングロードに飛び乗りティアナさんの真下に走った。

そして墜落してきたところをキャッチしたというところだ。





「お疲れさん……ゆっくり休めや……ほんで次頑張ろう……まだまだ先はあるんだし」

「……あの時……怒って……ごめん」





そう言ってから気絶した。

……はは……先にこっちが謝らないといけないなって思ってたんだけどな…



「ティア!」



スバルがバインドを掛けられたままこっちに来た。



「大丈夫だろ……ただ気絶しただけっぽい」



外傷は特にないっぽいし……これが非殺傷設定ってやつの効果か……

おもいっきりぶっ飛ばしても死なないってのはいいけど怖いな。





「ケイ君……なんで邪魔したのかな?」

「……あんた……最後の追い打ちはないんじゃねえのか?」



なのはさんが質問してきた。

そもそも俺にはなんでこの人が怒るのかがわからねえ。



「なんでキレるんだよ。2人とも頑張ってたじゃねえかよ。無茶までして」

「……無茶をし過ぎだからだよ……それにこれは模擬戦……喧嘩じゃないんだよ」

「そ、それは……」



スバルがなのはさんの言葉でたじろぐ。





「知るかよ。喧嘩でも模擬戦でもどっちにしたってあんたが上なのは変わらねえだろうが。そうでもしねえと勝てねえだろうが」



もう細かい理由なんざどうでもいいや。

滅茶苦茶ムカついた。



「とにかく今日の模擬戦はここまで……2人とも撃墜されて終了」

「………くっ…」



スバルがなのはさんの追い打ちとその敗北宣言に怒り睨みつける。





「だとよ。スバル……下がっとけ」

「っ……! ケイ!」





俺の言葉が悪かったのかスバルはその怒りの目を俺にも向けた。

だけど俺はそれを無視して前に出る。

そして肩にかけたバズーカを左腕で横持ちに構え、狙いをなのはさんにつける。





「……どうしたの?」

「スターズとの模擬戦が終わったんなら……俺の相手してもらいましょうか」

「模擬戦はもう終わり……それにケイ君の相手はシグナムさんだよ」

「知るかよ。こっちは頭に来てんだ。模擬戦が駄目なら喧嘩だボケ」



喧嘩上等。勝とうが負けようが知ったこっちゃねえ。

そのスカした横っ面に一撃ぶち込んでやる。





「……いいよ。少し頭冷やさせてあげる」

「なのはさん!」

「スバル。下がってなさい」



「じゃあティアナさんとスバルをみんなのとこに置いてからってことで……」

「うん。そうだね」





ティアナさんを抱えたまま俺は見学組の場所に戻る。

そしてティアナさんをそっと降ろし、ショルダーバックを開ける。

残りの4つのデバイスもどきをそのまま身につけていく。



「ケイ……どういうつもりだ」

「師範……」

「高町と模擬戦をして勝てると思っているのか」

「思ってませんよ。それにこれは喧嘩です」



師範の言葉を適当に流しながら左腕に籠手を付ける。



「だったら……」

「エリオ。黙ってろ。俺はあの人にムカついてんだ。止めるならお前でもキレるぞ」



エリオに顔を向けずに、手の甲の部分に装飾のついたグローブを両手に装備する。



「……ありゃティアナが悪りぃんだぞ。わかってんのかよ」

「知るかよ。ティアナさんが努力してきたこと全否定してなのはさんは悪くねえ。全部正しいってか?」



俺はそう思わない。

自分の信じたこと、努力してきたこと、それをティアナさんは全否定されたような言葉を受けた。

自分の言う事だけ聞けってか? 私の教導そんなに間違ってる? ってのは。

そこに自分の考えとか練習して撃墜される謂われはねえよ。



腰にカートリッジのホルダーが付いたベルトを巻きつける。



「そうだ。事実ランスターは無茶というより無謀を重ねている。そもそも今はそういうことまでする状況でもない」



師範がそう答えた。



「だったら言葉で言え。なんのために口がある」



屈んで靴を履き替える。

見た目は金属製の靴に踵と親指の付け根の部分にデバイスのコアのようなものが付いている靴だ。



「……貴様も頭を冷やしてこい」

「シグナム!?」

「いい。馬鹿弟子に無茶と無謀の違いをわからせるいい機会だ」



最後に腰のベルトに25センチ程の円筒を挿す。

これで準備はできた。



「じゃあ……戦ってきます」

「ケイ……大丈夫なの?」

「やれれるだけやってくるさ。あっ、ウィングロードは消すなよ。足場にすっから」



準備を整えた俺は先程の位置に戻る。

なのはさんはこちらを見たまま先程の位置で浮遊していた。

だが雰囲気はいつもと違う。

完全に戦闘モードに入っている。

10年……10年も戦いをしてきた魔導士。

19歳以前でSランクを超えており、さらに多くの魔導士を指導してきた教導官。

纏っている雰囲気は恐怖というものしか感じない。



こんな化け物に喧嘩を売ったか俺は……ヤキが回ったもんだな。



「合図は……いらないよね」

「いらねえ……よっ!」



合図もなしで俺は即バズーカで狙いを付け発射する。

弾道の誤差修正などは俺にはできないし、狙う事もできない。

だからこのデバイスもどきには細工をしたのだ。



開発部の古いインテリジェントデバイス。

俺にミッド語を翻訳して教えてくれたデバイスを狙いを定めることにのみソースをかけるようにしたのだ。

外付けだから外すことも可能だが、他の使い道はないだろう。





発射した大型魔力弾は狙い通りなのはさんに向かう。





「――― プロテクション・パワード ―――」





だがあっさりとシールドで防がれる。

恐ろしくガードが堅え……



「――― アクセル・シューター ―――」



俺に向かって10数発の魔力弾が飛んでくる。

チッ……これは全部は避けきれねえ。

俺はバズーカの構えを解き、両腕を前に突き出すように構え踏み込んだ。







     Side エリオ







ケイ兄がキレた……前にもキレたようなことはあったけどただ不機嫌なだけだった。

僕にも八つ当たり気味なことは言わなかった……



「始まっちゃいましたね……」

「合図もないのに……」

「さっきケイの馬鹿が言ったじゃねえか。これは喧嘩だって」

「そんな……危ないよ……」

「いい。さっきも言っただろう。無謀をするとどうなるか知るいい機会だと。そもそもあいつには対魔導士の訓練をさせていない。

 今回の模擬戦も接近戦以外に私は魔法を使う気はなかった。精々身体強化と威力強化。飛行魔法ぐらいの予定だったいうのに、あの馬鹿は……」



確かにケイ兄はなのはさんみたいな遠距離型魔導士の対策はしていない……副隊長からも剣しか……





そうこう話している間にいきなりケイ兄のバズーカが防がれ、アクセルが10数発直撃した。

なのはさんとケイ兄の間に爆煙が起こる。





「終わったな……」

「ケイ……」





みんなもう終わったと思った。

だけれども……





「だりゃああああああああ!」

「!?――― プロテクション ――― 」





爆煙の中からほとんどダメージを負っていないケイ兄が飛び出し、空中に浮いているなのはさんに殴りかかった。

だがそれも簡単に防がれる。

そのまま拳とシールドがぶつかり合う。

そしてケイ兄がニヤリと笑う。





「魔力刃……カートリッジフルバーストーーー!」





腰から両手で握れるほどの筒を抜き、それでバリアに斬りかかる。

普通なら破れない…でも





「「「「「「「 なっ……!? 」」」」」」





バリアを斬り裂いたのだ。

これにはなのはさんも驚愕する。

全員が驚く中で1人だけ次のアクションを起こしていた。

足場のないはずの空中で跳ね、体を横に捻りこんだ右足の横蹴りをなのはさんの顔面に蹴り込んだ。

なのはさんがおもいっきり吹き飛ぶ。

……あれは……少し受け流されたかな?





      Side ケイ







……先手はこっちが取ったな……

まあ当たったときに横に飛ばれたし、バリアジャケット着てるからそこまででかいダメージはなしか。

また俺は空中を跳ね、ウィングロードの上に戻る。



さっきのアクセル。これを防いだのはグローブで作った掌大のシールドだ。

体全体を守れる大きさなら防御力が落ちる。だったら小さくして圧縮する。

それを使い、アクセルを叩き落して体への直撃を防いだのだった。



撃ち落すじゃなくて打ち落す方なら自信がある。



まあ1回作るたびにこれもカートリッジ1発、しかも片手でだ。

俺はリストにある弾一発のみ装填できるサイズのリボルバーにカートリッジを再び埋め込む。

シールドが使えるのはあと4回……



シールドを斬り裂いたのは名前の通りライ○セイバーとかビー○サーベルみたいな魔力の刃だ。

カートリッジを一瞬に集中することで威力を上げる。

そこに俺の力と訓練の成果が合わさり斬ることに成功した。

普通に使って約1分。

一瞬に集中して5秒。まさにタイミングが命。

柄尻の部分からカートリッジを電池のように詰め込む。こっちは3発装填できるがマメにしておこう。

残り6発。



そして最後に宙を跳ねたのは靴の効果。

薄く小さい足場を作り、数秒静止することができる。

だからずっと宙に浮いていたいなら常に移動し、新しい足場に移動しなければならないので足のちゃんと着く場所に降りないといけない。

こっちは移動系だから装填もしていられないから足首に結構大きめの弾巣を巻いてある。

こっちはずっと空中戦しないかぎり切れないとは思う。





「………」





装填しつつも先程蹴り飛ばしたなのはさんから視線を逸らさない。

頬に怪我をし、口から血が出ている。目は髪が陰になって見えない。

だがプレッシャーは先程よりもさらに大きくなる。





「――― ディバイーーーン・バスター! ―――」





ノーアクションで砲撃を撃ってくる。

おもいっきり後ろにジャンプし回避する。



げっ、ウィングロード一部ぶっ壊しやがった。わかっちゃいるがすげえ威力……

だが回避したそこには既にアクセルが20以上待ち構えていた。

ッ……これはまずい!

一斉に360度から俺を襲う。

両手にシールド……じゃ全部は防ぎきれねえ!



左斜め前にシールドを出しながら、自分から突っ込み無理やり蜂の巣になる位置から離脱する。

さらに左腕をビルの壁に向かって思いっきり振る。

すると籠手から魔力でできたワイヤーが飛び、壁に突き刺さる。



「リターーン!」



ワイヤーを籠手が巻き取り俺をビルの壁に一気に引き寄せる。

そして壁に近づいたら足場を生成し、ビルの屋上に立つ。



「っ〜〜〜」



だがアクセルが速すぎた。

3発程左半身に喰らう。

骨などに異常を感じないが衝撃が突き抜けたような痛みはある。

こんなのおもいっきり喰らったのかよ、ティアナさんは。

シールドも後3回か……





「これで5つ……ケイ君の装備はこれで全部だね」

「………」



ちっ……全部使ったか。



「グローブはシールド……靴は限定空戦を可能に、魔力刃は時間制限制で、直射式のバズーカ、籠手のワイヤーは空中回避と相手を縛る……って感じかな……」



流石は教導官。簡単に能力バレましたか。

まあ、あんだけ目の前ではっきり見せたら誰でもわかるだろうけど。



「遠・中・近に移動用のデバイスかな……でもね……」



なのはさんはそのままさらに高度を上げる。



「そんなバズーカじゃ私を打ち抜けないし、それだけじゃ近づくこともできない……決定的に速さが足りないよ……それにすべてが中途半端」



チッ……痛いところを……

そもそも今回師範が相手だったはずだからメインは接近、移動だけどそこまで速さ追及してねえしな……

バズーカも距離とって打ち込む程度のつもりだったし……

まあ中途半端なのは認めるが……



「だからどうした。俺は勝ちたいんじゃねえ。あんたを殴りたいだけだ」

「……そっか。いいよ。私は頭を冷やさせてあげるから」



またアクセルが飛んでくる。

この人の基本戦術はアクセルで攻撃、倒せないなら誘導してそこに砲撃…接近戦用の魔法はあったとしても師範レベルではないはず。

だったら接近して叩くのが一番なんだが……



「くっそ……」



なんとか走り回り、空中でジャンプしたりすることで回避するが、近付くことができない。

こうなったら……

ワイヤーを頭上のウィングロードに発射し、巻き込むことでなんとか高い所に移動しようとする。





「――― アクセル! ―――」



「ちい!」



だが巻き込んでいる途中に狙い撃ちにされる。

すぐさまワイヤーを切り離し、足場を生成、回避行動を起こす。



1発、2発、3発、4発、5は……



「がっ……くっ!」



だがコントロール、威力、スピードが違い過ぎる。

くっそ……前の廃棄都市で戦った魔導士のは避けれたのに……レベルが違い過ぎる。



「あがっ!? ごっふ……はあっ……はあっ」



2,3発避けてもすぐにまた別の角度からの攻撃で喰らってしまう。

アクセルは次々と飛んできてその場で足止めをされ、狙い撃ちにされてしまう。

クソ……どうせよけられないなら……



「ぐっ、がはっ!? っ〜〜発射!」



喰らいながらも無理やりバズーカを撃ち込む。

1発じゃ足りない。この完全に遠くからの狙いうちの状況を打破しねえと……



撃ち終わりすぐ次弾装填、発射。さらにもう1回それを繰り返す。



計3発大型魔力弾を発射した。

だが距離がありすぎた。簡単に回避される。

けどそのおかげでなのはさんが回避行動を起こし、さっきの狙い撃ち状態のアクセルの嵐が止まる。

あと1発……こいつを至近距離でぶっ放すっきゃねえ!



軋み、直撃した体の各部が痛い。

だけどそんなの関係ねえ! 俺は思いっきり宙を駆ける。





「速いっ!?」





俺のダッシュに驚くなのはさん。

今まで身体能力の異常な上がりを報告してなかったからな。これは予想の範囲外のはずだ!





「うおおおおおおおおおお!」

「っ…――― アクセル・シューター! ―――」





っ!? 反応が速い!

くっそ、思ったより近づけねえ!

だったら……



「シールドーーー!」



両手に掌大のシールドを作り、頭と胸のみガードしながら回避、防御で突き進む。

肩、アバラなどを掠めたりもしながら突き進む。

残り距離約30メートル程のところでシールドを破壊される。



「ちっ!」



腰のホルダーからカートリッジを取り出し装填しようとするが





「そこっ!」

「なっ!? しまっ……」





ホルダーがアクセルに撃ち落され、そのまま下に落ちていく。

くっそ、これじゃシールードがもう張れ……





「――― ディバイン…… ―――」

「マジかよ!? くっそ!」





至近距離でぶっ放すはずの最後の1発を構える。





「――― バスターーーー! ―――」

「最後の1発……いけええええええ!」





バスターに向かい発射する。

しかしそれはなんの意味もなかった。軌道を逸らすこともできずに簡単に弾き飛ばされたのだ。

そして勢いの衰えのない桃色の光が俺に向かって真直ぐ近づいてくる。





「うおおおおおお!」





すぐに魔力刃を抜きそれで受け止めようとする。

自分の全力の力を込める。足場を作り踏みとどまろうとする。

しかし足場は簡単に砕け。生成しては砕けを繰り返す。

刃もすぐにカートリッジが切れていく。

予備の3発もさっき落とされ、中にある3発しかない。

そしてこの押し合いですでに1発消え、残り1発半程しか残っていない。



さらには足場が現れは消え、現れは消えを繰り返しながら後ろに圧される。



くそっ! デバイスの出力が低すぎて俺の脚力に足場が耐えれてねえ……

魔力刃も出力と時間が短すぎる……





「――― シューーット! ―――」





バスターの押す力が上がる。 





「うわああああああああーーー!」





そのまま吹き飛ばされる。

足場の生成をしようにも体勢が崩され足を下に向けることができず、刃もカートリッジの魔力が切れたことにより消える。

そしてそのままバスターに飲み込まれる。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

激痛が体全体に走る。

外傷もないのに痛みだけというのは相当な違和感を感じる。

だけれどもその一方で神経は痛みのみを認識する。









くそ! くそ! くそ!

また負けるのかよ。嫌だ。負けたくない。

自分が気に入らないことは全部吹き飛ばす力が欲しいんだ。

自分に害があるものを全部蹴散らせる力が欲しいんだ。

やられたらやり返せる力が欲しいんだ。



力、力、力。



魔法ができなきゃ魔導師に勝てないのかよ。

魔力があっても魔法が使えないのかよ。

魔法さえ使えれば最強なのかよ!





「ちきしょーーーーーーーー!」





バスターに飲み込まれた俺は力を望む。

両目を閉じくやしさに吠える。







そしたら俺の胸の辺りが熱くなる。

そしてそれは体全体に伝わってくる。

胸に何かがつっかえている様な感覚がする。



俺は無意識のうちにそのつっかかりを最大限にまで溜める。

そして限界が来た瞬間それを一気に体全身から噴き出すように開放した。





「だりゃあああああああああああああああ!」





太陽の反射でようやく視認できるような透明な銀色の光が桜色の光を弾き飛ばす。





「嘘!?」



なのはさんも見学のフォアード、副隊長陣も驚いている。

だけど俺はそれを見向きもせずこのチャンスを生かそうとする。





「嗚呼呼呼呼―――――!」





足場を作りながら突撃する。

体1つしか俺にはない。小細工ももうできない。

なら……



玉砕覚悟の……特攻だ!



「うおおおおおおおおお!」



宙を駆けながら真直ぐなのはさんに突撃する。

なのはさんはその場で停滞し、いくつか分らない程のアクセルが俺に向かって飛ばしてくる。



横に跳び、足場の高さを階段数段分高度を落として回避、避けきれないものは急所のみをガードして突き進む。



真直ぐ。このまま目標に向かって真直ぐ……





「あがっ!?」



真後ろと真横から衝撃が走る。

先ほど回避したアクセルは誘導型だった。

前しか見ていない俺の意識の外からの攻撃をされる。



数秒。



たった数秒、それで足が止まっただけで俺の周りをすべてアクセルで囲まれる。





「なっ!?」

「……――― アクセル… ――― 」



なのはさんの一言で360度すべてのアクセルが俺に放たれる。



だったらさっきのをもう一度!

胸の突っ掛かりをもう一度溜め開放する。



アクセルがそれにより先ほどと同じように弾かれ俺は蜂の巣状態から抜け出す。

そのまま、また駆ける。





「――― ディバインバスターーーー! ―――」





ある程度予想できていたのかすぐにまたバスターを撃たれる。

溜めもクソもない、圧倒的な魔力量による力技。

アクセルで足を止め、相手が対処しているうちに砲撃の準備を整え撃墜する。

単純だがその過程で、アクセルを手足のようにコントロールし、確実に狙いに当てる技術、そして意識を別の作業をしながら相手から離さない集中力が必要とされる。

さらに何度でもそれを行使できる絶対的な魔力量。

そのどれも持っているからこそできる絶対的な力の戦法。



まさに鉄壁の城塞。



弱点なんかわからない。どうやって崩せばいいかなんてわからない。

こんなのに喧嘩売ったなんて馬鹿だ。

もう2度とこんなアホな行動しない。

だけど今はしているんだ……

だから……





「うわああああああああ!」



全身全霊を持って突撃する。

先ほどの突っ掛かりの放出をずっとしながら突っ込む。

バスターに飲み込まれながら、足場が崩れて圧されようとも突き進む。



全身から力が抜け、意識が朦朧としてくる。

そのせいで俺はその場からバランスを崩し横に体が流れるように倒れる。



あっ……落ちる……



横に落ちていくと運よくバスターの奔流からはみ出した。

そして丁度バスター1発分の放出を終えたなのはさんの姿が目に映った。



落ちながらバスターの中から出てきたのが予想外だったようだ。

一瞬の隙ができた。



最後に意識を戻し、突っ掛かりを推進力のように放出し体当たりをかける。



なのはさんはそれを杖で防御した。

よっしゃ……シールドで防がれなかったんだったら……



拳を握り締めその顔に向かって振りかぶった。

拳は確かになのはさんに届いた。

だが



ぺちん



ただ触れるのと何も変わらない一撃。

これが精一杯だった。

スピードもまったくない一撃。

なのはさんはそれを魔法もなにもなしで片手で受け止めていた。



………くそ……届いたのはここまでかよ…



俺はそのまま意識を失い、この喧嘩に完全に負けたのだった。









    Side なのは





…最後の拳が来るのは予想外だったかな。

体当たりの時点でもう終わったと思ってた。

だけれども最後のパンチがフラフラの状態でなかったら貰っていたと思う。



私はそのまま意識を落としたケイ君の腕を掴み落ちないようにする。



「模擬戦……喧嘩はここまで。シャマル先生呼んでくれるかな?」

『は、はい!』



通信でシャーリーに頼みケイ君をそのままみんながいるところに降ろし、今日の模擬戦を終わらせた。

ティアナにもケイ君にも私の教導を否定されたような結果となってしまった。

私の教導……そんなに間違っていたのか……

だけどこれが正しいと信じて進んできた道だから……

無茶をさせて私のような目には会ってほしくないから……



だから………





                                 つづく











   あとがき





や……やっと書けた……

以前はここにでアイテム生成能力でバドミントンラケット生成して打ち返すにしてたんですが、それを消しため今回のような形となりました。

戦闘中に開放したのは魔力です。

ケイ本人はどんなものかを知らないまま使っていたので本編中では“ 胸の突っ掛かり“と表現しました。

これはケイの魔力の出し方による表現ですのでなのは達とは出し方が違ったりします。

そこはまた別の話で解説がでます、







    Web拍手返信





※ふぉふぉふぉ、ケイよ師範のクーデレはそなたが師範を落として己が眼で見るのじゃ…



>ケイ「…無理!!師範に惚れられたら幸せだけどありえねえ!!」

>シグナム「ふっ……私より弱い男に興味はない……」

>ケイ「うん。一生無理。そして師範も男作るの無理」

>シグナム「よし。訓練してやる。来い」

>ケイ「えっ!?ちょっと!?なんで血管浮かばせながら引張るの!?嫌――――――!!」



※矛盾が出るって書いたのに修正するのは何故?



>え〜……そっちのがいいかなと思ったからです。はい。



※ぐ……ぐは……(吐血)ま…まさかガチでしたか……(バタ)み……みんな!スクープだ!

隊長陣はガ(ガシ!……ズルズルズル)モガモガ…

そしてそのあとなにがおきたかは誰もしらない……



>???×3「「「ふふふふふ……」」」



※ケイとスバル達のやりとりは良かったけど、ガチの部分って必要なんですか?



>ギャグとして書きたかったので加えました。

>それにスバルメインにしようにもきっかけがないと……まだフラグ成立してませんし。できるかどうかは謎ですが。



※このホームページに掲載されている作品の中で、最も好きな作品です。続き、期待してお待ちしています。

※すごくおもしろかったです!今後に期待してます^^ 三毛猫



>ありがとうございます! 続き遅れましたーーー! すいません……



※ナンバーズやルーテシア達の触れ合いで出来たムードが台無しだな

※ガチはらめぇーーーーーーーー

※隊長組…マジで百合。ギン姉に癒される

※ガチとかこう言うのを入れると真面目なパートに言った時にシコリに成る気がハッキシ言って興ざめになる

※いややぁ〜…ガチで百合はいややー! 



>つくづく不評です(汗)

>なんというか…すいません。でも自分の中ではあの3人はどうして百合なんです。どう考えても。



※頑張れ! ケイ誰か一人くらい隊長格をおとすんだ!



>ケイ「……いやいや。無理ですから。怖すぎて無理ですから」

>なのは「どう怖いのかな?」

>ケイ「え……えっと……初めって会っていきなり崖から落とされたりしたらやっぱ…」

>なのは「……ごめん」



※ガチにして強制!!?



>ガチっす。すいません。



※てか、同性愛だとまずいん? 星界の紋章みたく女同士でも子供作れそうな技術レベルよね。あと、あの世界突きつめて考えると男女差別ないと思うよ。

社会基盤の魔法使いに性差ないから男女同権とか。女=嫁ってのは無いのと違うかな。俺が他人の趣味に無頓着なだけかもだけどね



>結構まずい気もしますがアマゾネスとかいそうですね…世界いっぱいあるみたいですから



※こ、これは本編なのだろうか?  夢オチとかでは!?



>残念ながら本篇です(ぇー



※なのはとフェイトのガチ調査……もし、まだ記憶生きてたら如何したんだろ?



>真相は闇の中です。はい。



※思ったんだ……シグナムが主人公のヒロインだったらなぁって。



>あはは。最初の頃はそうしたかったけど今では誰も落せないだろコイツwwっと思ってます(ぇー



※今回は笑わせていただきました。ガチ談義転じて最後はホラーwww こういうかつてない話は価値が高いです



>ありがとうございます。ギャグのつもりで書いたら不評過ぎたので心に染みました(泣)



※いつもボケる君に、オモロー!



>ケイ「ボケてねーーーーー! 普通にしてるだけだーーーー!」

>ティアナ「うっさい!」

>ケイ「のごっ!?」(殴られた)



※まぁ、あの三人はガチなのは昔決まっていたようなもん



>自分も賛成です。その意見(こら



※ケイ, 力を出しなさい. 人生, 塞翁が馬という言葉もあるんじゃないの



>ケイ「いや……災いばっかな気がするんだけど……俺は」

>スバル「ドンマイ。大丈夫。すぐにいいことあるよ」(にっこり)

>ケイ(あっ、でも可愛い娘にかなり知り合えたしいいかも…)








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