今現在俺の頭の上に妖精がいる。

背中に日本刀、腰に銃。

そして俺は走っている。誘拐されたルーテシアを禿げ博士から奪還するために。



……これなんていう映画?







時空を駆けちまった少年

第14話








    〜ミッドチルダ廃棄都市西〜







さて……今現在俺は廃棄された都市のビルの前にある物影に隠れている。

アギトによるとここから生体反応が出ていたらしい。

おかげで迷わずここまで来れた。



しかし問題は入り口だ。

そこには見張りでだろうか……新しく護衛らしき男が2人いる。

アギトのサーチ魔法によると生体反応は全部で5つ。

うち3つはルーテシアとハゲ博士、そして杖の男だろう。そしてその3人はこのビルの奥……厄介だな。



「どうすんだよ。無理やり突撃しても人質にルーをとられるぞ」

「いや……その可能性は低い……」



向こうは俺が魔法を使えないということを知っている。

そんな自分より弱い相手に人質をとる必要など皆無だ。それに目的が実験がどうこう言ってたから殺すわけねえ。



「……アギト。俺が前で騒ぎを起こしてなんとかハゲと一緒にいる護衛の杖の男を引き離す。だからお前は中に忍び込んで隙を見てルーテシアを助けろ」

「なっ!?お前馬鹿かよ!入り口の2人も魔導師だぞ!?」

「こっちには銃も刀もある。まあなんとかなる。ランクが高いのとかそうそういないんだろ?」



聞いた話だと六課の戦力は管理局トップでスバル達も未来のエリートだそうだ。

現時点ではBランクだそうだが俺と会った時点でAランク以上に訓練で成長をしているらしい。

今の身体能力と装備なら時間稼ぎくらいならできるはず…



「……前の2人は多分B〜Aだ。だけど奥のやつのランクはA〜AA行くと思う。だから出てきても無茶するなよ……」

「わかってる。死ぬ気はないからな」



……A〜AAか……

できたら即ルーテシアを助けて今度は俺を助けて欲しいな〜



「じゃあ後でな」

「ああ……生き残れよ。たこ焼き男」

「お前もな。紅妖精」



アギトは物陰の後ろへ飛んでいき、入り口の護衛から見えないようにビルの中へ入っていった。

準備はよし……あとは俺が頑張るだけ。



思考を切り替えろ。恐怖を感じろ。そして生きることに執着しろ。

弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。

俺は思考を切り替え達人の域ではないにしろ自分の五感を研ぎ澄ます。





騒ぎを起こす前にまず生存確率自体を上げる必要がある。

普通に出てって撃ってもシールドで防がれる可能性が高い。

ならば気づく前、あるいは発動前に撃ってしまえばいい。

右手に刀を持ち、左手で銃を握る。

男たちに駆け寄りながら撃ち、近づいて斬る。これが作戦だ。



深く深呼吸をし、余計な力が入らないようにする。

そして息を吐いた瞬間、俺は物陰から一気に飛び出し入り口に駆ける。





距離は約40M程だろうか。

以前の俺だと大体4秒から5秒前半程の距離、しかし今の俺の速さならもっと速く行ける。



護衛の2人は気づくとすぐに対処をとろうとデバイスを向け魔力弾のようなものを3、4発ほど宙に発動させ狙ってきた。

よし、これはありがたい。こんな距離なら撃って来る前に倒せる!



俺は狙いを大体ではあるが左側の男に定め引き金を引く。

数発のただの鉄の弾が発射され、その弾が左の男の右足と心臓の位置に当たる。



「ぐあああっ!?」



そいつは予想外の衝撃に俺から狙いを外してしまい制御の利かなくなった魔力弾が見当違いの方向に飛んでいく。

右側の男は弾の当たった男を見てあわてて放ってくるが遅すぎた。

すでに懐まで潜り込んでいた俺は右手の刀をおもいっきり斬りつけた。



「ぎゃあああ!」



斬った感触がおかしい?

致命傷、もしくは死ぬであろう一撃だったはずなのにそこまで深く斬れていない!?

バリアジャケットで威力が殺されたか。

それを見るや否や俺は振りぬいた刀に合わせ体を回転させて、男の頭を狙う。

斬れないなら頭に打撃の一撃だ。

峰を返して当てると狙い通り男は気絶した。



しかし斬ってもバリアジャケットに衝撃を殺されるってことは…



俺はすぐにその場から離れる。

すると予想通り魔力弾が俺のいた場所を通過する。

危ねかった……けど精度がさっきよりない。

男の顔を見ると心臓を抑えている。さっきのが効いたみたいだな。



心臓撃ち



これはボクシングのパンチの種類の中にもある。

心臓への捻り込みの強打が受けた相手の時間を止める。

その効果が出ていたか……ラッキー。



また魔力弾を撃とうと弾を生成しようとしてきた。

すぐさま俺は銃を向ける。

すると魔力弾を撃つのをやめ、シールドを前面に展開してきた。



俺はそのシールドがあるにもかかわらず2,3発打ち込む。

銃声が鳴りシールドに弾がぶつかり、男はそのぶつかった衝撃にビビり目を閉じる。



しかし弾はシールドに完全に防がれ地面に落ちる。



「は、はは! 馬鹿め! そんな攻撃が効くか!」



銃弾を防げたことに安堵したのか強気にそう発言する。しかし男の発した方向に俺は既にいなかった。



「馬鹿はお前だ……殺し合いで目を逸らすな。By謎ジイの台詞」



俺は撃ち終えたと同時に男のシールドよりも外から後ろに回りこみ、体を捻った横薙ぎの一撃を峰で首筋に叩き込んだ。

それにより男は10M以上吹っ飛びビルの壁にぶつかり穴を開け、その場で気絶した。



「ふうっ……疲れた」



武器、運、身体能力の向上……これなかったら死んでたな。

しっかしこの世界の魔導師って銃を知らんのか?警戒0だったぞ。

魔法世界の弊害か?





「ほう、生きてたか……まったくこの役立たず共め。魔法も使えない子供にやられおって」





げっ、本命の杖の男が中から出てきた。

まあ作戦はうまくいっているな。あとはアギトがルーテシアを奪還するのを待つだけだ。

…そこまで持てばいいけど…

会話で時間稼ぎでも…



「魔法を使ったことで局員がここに来る可能性が高いからな。貴様をサッサと殺させてもらう」



杖形態にデバイスを変化させると先ほどの2人とは段違いの速さで魔力弾を生成し、放ってきた。

弾数も7発と多い。

時間稼ぎも無理か……

俺は距離をとってかわそうとするが弾は俺の動きに合わせてその軌道を変える。



「くっそ、誘導弾かよ!」



刀で打ち落そうと斬る。しかし3発目を斬ろうとすると斬ったと同時に折れてしまった。



「魔力も通さないものに俺の弾が斬れると思うな」

「くっ、このっ!」



残りの4発が俺のすぐ目の前まで飛んでくる。

地面に伏せると内1発がビルにそのまま当たり残り3発、しかし俺の方にまた飛んでくる。

立ち上がりかわそうとするが間に合わない。

持っていた刀の鞘を握り逆に外側の軌道をとっている1発に向かって踏み込んで打ち落す。同時に鞘も砕けてしまう。

これで残り2発。

残りもまた俺に向かってUターンしてくる。

銃で撃ち落そうとするが1発も落とせず今度は弾切れになる。



しまった。弾数数えてなかった!

ええい! やけくそ!



銃を魔力弾に向けて投擲、見事命中し残り1発。

最初から投げりゃよかった…

しかし投げたことで身を守るものもない。

最後の1発をかわすことも迎撃することもできず腹に喰らってしまう。



「がっは!?」



強烈な痛みが体を走る。



「ほう?殺傷設定の魔力弾の直撃で死なないとは……だがこれでなら死ぬな」



見ると男は重心を据え両腕で杖をこちらに向けており、その先端には魔力がチャージされている。

砲撃魔法…

俺が誘導弾に必死に対処している間に新たに生成するのではなくこれを作っていたのかよ。

まんまと踊らされたってわけか。くっそ!



「じゃあな」



砲撃が俺に向かって放たれた。

初めて見たなのはさんの砲撃と比べれば弱いけど人を殺すには十分な威力っぽい。

あっ……死んだ……



「ブレネン・クリューガー!」



上からその詠唱が聞こえると10発ほどの火炎球が砲撃に当たり相殺した。

上を見ると



「烈火の剣精アギト様参上! たこ焼き男よく粘ったな!」



禿げ博士をぶっ倒してルーテシアの安全を確保したか。

よっしゃ! ナイスタイミングだ。



「ルーテシアは?」

「薬かなんかで眠らされてたから別の場所に移してきた。ハゲは焼いてバインドかけて放置だ」



今頃中年の丸焼きができてるのか……まずそうだな……



「……ユニゾンデバイス……貴様そんなものを持っていたのか」

「んなわきゃねえ。さっきの路地裏で会ったんだよ」

「おいテメエ! ルールーに変なことしたがって! 覚悟しやがれ!」



アホ、煽るな。目的は達成したんだ。

逃げる。



横の降りてきたアギトを掴んで俺は後ろにダッシュ。この場から離脱をはかる。



「なんで逃げるんだよ!?」

「あんな強いの相手にできるか! 逃げるんだよ! 目的もすんだんだ!」



魔力弾を喰らったところはまだ痛むがそうも言ってられない。

殺傷設定でも死なず、激痛ですむくらいに頑丈になった体に感謝だ。



「逃がすか!」



しかし逃げてる途中で体が突然何かに縛られた。



バインド!? またかよ!? つうかあいつ発動してなかったよな!?



「ふう…逃げ出したときに設置型のバインドを仕掛けておいたのだ…まんまとかかったな」



設置型!? そんな罠みたいなことまでできるのかよ。

くっそ! この!



外そうと試みるが外れそうにない。

男はゆっくりと歩み寄ってくる。



「手こずらせおって……そもそも雇い主がユニゾンデバイスの情報を寄越さんのが悪い。無駄な手間がかかる」

「じゃあそんな雇い主見捨てろよ」

「ああ、お前を殺して放置するさ」



いや、殺さないで放置していってくれ。



男はそのまま魔力をチャージして至近距離で撃ち殺そうとしてくる。

くっそ、これじゃ避けられねえ。



「アギト! お前だけでも行け!」



アギトは俺が手で掴んでいたのでバインドにはかかっていない。

握っていた手自体にも掛かってはいるがおもいっきり手を広げるために力をこめれば抜け出す隙間くらいは作れた。



「お前はどうすんだよ!?」

「知るか! なるようにしかならん!」



意識がなくなれば前みたいに暴走でなんとかなるかもしれん。そのまえにバラバラかもしれんけど。



「無駄なことをするな。逃げる前に纏めて撃ち殺すのみだ」



そういうとチャージされた魔力がさらに増えているいようだ。杖の前で光が膨れ上がっていく。







「そんなことできるかよ! もう賭けだ! いくぞ!」



アギトが手から抜け出すとそう叫び俺の体の中に入ってきた。

それと同時に俺の体は光に包まれる。

そして俺を縛っていたバインドも消える。



「なっ!? ユニゾンだと!? くっ…死ねええええ!」



魔力砲が超至近距離で放たれるが俺を包む光がさらに大きくなりそれは弾き飛ばす。



「馬鹿な!?」



その現象に男は驚く。

すると頭の中にアギトの声が響いてきた。







       Sideアギト







一か八かだったけど賭けに成功したぜ。

こいつ魔力あんまねえとか言ってたくせにユニゾンしてみたら結構あるじゃねえか。

なんで外からだとそんな感じないんだ?

しかもコアの形も変だし。

まあ融合事故は起きてない。

だからそれは後だ。今は目の前のやつをぶっ飛ばす!



《おい! たこ焼き男!騎士甲冑作るから想像しろ!》

《はっ? どんな?》

《どんなでもいい! いいから早く!》

《え〜っと、動きやすくて丈夫なの、動きやすくて丈夫なの……よし! これだ!》

《よし! いくぞ! 展開するから距離とれ!》

《わかった!》



たこ焼き男は返事をするとバックステップで一気に距離をとる。

よっしゃ! 一気に畳んでやる!



砲撃を弾くために放出させてた魔力を消し騎士甲冑に変換する。

たこ焼き男はそのまま男に対して構える。

こいつの姿は黒髪黒目から炎髪金眼へと変わり髪もやや逆立っている。

成功はした。

……けどな……



《なんでデザインがジャージなんだよ!》

《動きやすくて丈夫なのがこれしか浮かばなかったんだよ!ジャージでもいいだろうが!》

《もっと騎士らしいのにしやがれ! 甲冑だって言っただろうが!》



なんでか黒色の肩に白いラインが入っただけのジャージに下に白シャツ1枚の甲冑になりやがった。

……これじゃあ甲冑じゃなくてただのスポーツする服だろうが……







      Sideケイ







アギトに言われて甲冑を生成したら文句を言われた。

だって甲冑って動きにくい西洋鎧しか浮かばねえっての。そんなよりこっちのほうがしっくりくる。うん。



「ゆ、融合事故も起きずしかもなんだその魔力量は?貴様かくしていたのか?」

「はあ?」



男は何故か驚いている。魔力量?大体Bランクくらいだって聞いてるぞ?

まあいい…・・・今は何ができるのかだ。



《今は炎が使えるからな。発動は全部アタシでコントロールすっから使い道は考えろ》



しかし不思議な感じだ。

この会話のような思考がほぼ一瞬で終わる。

融合しただけあって両者の思考が同時に展開され会話というものが存在しないのか?

まあおかげで思考のロスもなくなるけど。



炎を使えるとのことなのでまずは火炎放射を想像し相手に放つイメージをする。

すると本当に大きな火炎が男に放たれた。



「くっ、ラウンドシールド!」



シールドを張りながら男は空中に逃げる。

これなら行ける!



「逃がすかよ!アギト!」

《おう!まかせろ!》



俺は足に炎の爆発をイメージする。それと同時に足元が爆発しそれを連続で起こすことで空中に飛び相手に迫る。

男は魔力弾を生成し近づくのを妨害、さらに迎撃をしようとしてきた。



その攻撃を左右に爆破させることで避け続ける。

そして爆発の勢いに合わせ男の顔面をに拳をめり込ます。男はそのまま吹き飛びビルに激突した。

俺は地面に着地し、そこを見つめる。



「…・・・やったか?」

《まだだ!》



土煙が上がるビルから砲撃が飛んでくる。

横とびに回避、しかし男は砲撃を撃ち終えたと同時にビルから飛び出てきて杖を俺の腹に打ち込んできた。

今度は逆に俺がビルに激突し、建物の中に突っ込んでしまう。



「ツツ……けどそこまでダメージがないな…・・・」

《甲冑を身に付けてるから魔法攻撃と物理攻撃は緩和できるんだよ》



装備するとすげえんだな。



「炎に貫通力加えられるか?火炎球を槍みたいな形に変えて」

《楽勝!》

「んじゃ発射!」



さっき喰らった場所に向けて炎の槍を飛ばす。

そのまま外に飛び出し男を探す。

いた!また空に逃げてたか…けど数発は当たったなバリアジャケットが少し焦げて血も出している。



「はあ…・・・はあ・・・…くっそ…」



ダメージもあるみたいだな。叩くなら一気に行く!

俺はもう一度足元を爆発させ男に飛びこむ。



「馬鹿が! 同じ手を喰らうか! スティンガー・スナイプ!」



男の杖から魔力による鞭のようなものが飛んでくる。

くっそ!

当たる瞬間、体の前に炎の壁ができ直撃をせずに済んだが地面に戻される。



「ここから狙い撃ちにしてやる!」



魔力弾が上から飛んでくる。

ちくしょー!上に行ければ………行く必要ないじゃん。



「アギト!」

《魔力結構食うけど・・・…わかった!!》



飛んでくる魔力弾邪魔!

かわすし、かわしきれないのを炎の壁で防御する。

アギトのサポートでかわせないようなのは簡単に防御できる。

そのまま男の真下に入る。



よし!ついた!



「《大炎塊…・・・“炎柱”!!》」



男の真下からアギトに俺の魔力をおもいっきり使わせて半径10M程の超でかい火柱で男を燃やす。

この大きさなら逃げることも防御もできないはずだ。



炎柱は男を狙い通り飲み込み、上から燃えた男が落ちてくる。



「…・・・勝った〜〜〜!」

「おう、お疲れさん」



あっ、いつの間にかユニゾン解けてる。

騎士甲冑も解除されてるし。



「中々やるじゃねえか。初戦闘で3人も魔導師を倒すなんざ」

「まあ色々運がよかったからな」



もしアギトもいなくて力も上がっていなかったら……

……

………

ガタガタガタ……シヌノイヤ、シヌノイヤ……

おもいっきりミンチになった自分想像しちまった……



「で? ルーテシアは?」

「捕まってたビルの隣」



隣!? めっちゃ近っ!?



「お前を助けようとしたらそんな遠くまで運べねえよ」



……おっしゃる通りで。













うん。よく寝てる。

ルーテシアは何かあったとは知らずに寝ていた。

……寝てる方が表情豊か?寝ずらそうだと顔をしかめたりしてるし。



「まったくルールも世話が焼けるぜ」

「まあそういうな。!?」



殺気を感じてルーテシアを守るように上に覆いかぶさる。

その瞬間背中に激痛を感じる。

…っつ!? やべえ意識飛んだ…つうか進行形で飛びそうだ。



「はあっ……はあっ……許さん……殺してやる……ガキまとめて殺す」



くっそ…まだ来るのかよ…しつけえぞ…

男は全身火傷の状態で意識どころか死んでもおかしくない状態にも関わらずその体を引きづりなら近づいてくる。



背中が痛む……床に血が飛び散ってる……やべえな……

ふらふらしてきた……対処しようにも……出来ねえ……



「このっ!? ブレネン・クリューガー!!」

「ぐあああっ!?」



アギト…サンキュー…

アギトは火炎球を全弾直撃させ止めを刺した。

……うわぁ〜しつこい……まだ痙攣してやがる。



「おい!? 大丈夫かよ!?」



大丈夫だと言いたいけど大丈夫じゃないっぽい……

ドクドクと血が流れている。

感覚もちょっとなくなってきた……



「……ケイ? ……ここ何処?」



起きたのかルーテシア……

怪我はないっぽいな……あ〜あ〜……他人助けて死ぬとか考えてなかったのに

血がついちまったな……わりぃ……



俺はなんとか仰向けになりルーテシアから離れる。

息……しずれえ……こんなんになったの久しぶりだな……前は8歳のときだっけ……ジャングルでなったな〜



「……さっきの変なおじさんいない……ここも違う場所……」

「そうだよ!ルールーが攫われてコイツとアタシで助けに来たんだよ! そしたらこいつが大怪我しちまったんだよ!」



……話も……いいが……さっさと病院運んでくれ……

なんか考えて……ないと意識なく……なるから……

実際……もう……喋れねえ……



意識が………あれ? 戻ってきた?

感覚もだんだんはっきり……イデででで!

痛い! 直撃喰らったとこが痛い!



「ルールー? 回復魔法使えたのか?」

「……ううん……でもやってみる……アスクレピオス……お願い……」

『了解』



柔らかい紫色の光が包み込んでくる。

……なんか変な感じだな……チビッ子に治してもらうのって……



「……どう?」



光が消え訪ねてくる。どうって……まだ少し痛むけど……初めてでここまで治せたら上出来じゃねえのか?

血も完全に止まったし。



「すげえな……もう大丈夫だ。サンキューな」

「んっ……うん。ワタシを助けてくれた……だからお礼……」



起き上がって頭を撫でてやる。

助けに来て助けられてたら世話ねえな。あははは。



「ルールーここ離れようぜ。そろそろ局の魔導士がきやがる」



げっ……マジか!? 急がねえと。

っとその前に



悪いな杖の男。あんたのデバイス貰ってくぜ〜。

映像記録見られてもやばいしな。



「アギト、あと俺が使ってた銃と刀の破片、血の跡やら全部燃やしてくれ」

「あいよ」



よしこれで証拠隠滅。けどどうやってここから離れるんだ?



「じゃあケイ……捕まって……」



言われたまま捕まる。

そしたら地面に魔法陣が出てきて周りの景色が変わる。

……ここはかなり高いビルの上? 遠くに地上本部が見える。

時間も結構たったか……日が沈むところだ。

お〜絶景かな。絶景かな。



「また会ったな少年。だが何故ここにルーテシアと現われた」



……いたなこの無責任な保護者め。しっかり面倒みんかい!



「旦那〜ルールーが攫われて大変だったんだぜ。まあアタシ程じゃないけどコイツも手伝ったからよかったけどさ」

「そうか……すまない。以後気をつけよう」



マジでそうしてくれ。攫われた理由は聞かんがもうあんな怖い思いは嫌だからな。



「つうか居場所わからんのじゃなかったっけ?」

「今度はここが合流場所……」



すげえ合流場所だな。高層ビルの上って。



「しかしよく魔力の多くもない者が助けられたな」



無傷じゃないし死にかけましたがね。

いや……よく生きてた俺。



「そうそう。お前なんだよそのリンカーコアに変な体質」

「コア? 体質?」

「魔力あんまねえと思って融合したら結構あるし、コアの形も変だし」



……結構魔力のある普通のコアって聞いたぞ?

どういうことだ?シャマルさん達嘘ついたのか?



「……魔力値は多くないって言われたから知らんかったな」

「まあ……その……なんだ……相性は悪くないみたいだったけどよ……」



そういや融合事故もなかったしな。

ラッキー。ラッキー。



「あのさ……ケイはデバイスとか持ってるのか?」

「ないぞ。お前しかデバイスは使えんかったし」



なんか他のだと魔力全部抜けるんだよな。体外からの操作じゃ出せないみたいに言われたし。

男のデバイスはパクったけど使えんし。



「じゃあさ……アタシのロードになる気ってあるか?」

「ロード?」

「使い手……ということだ。どうやらアギトもお前が気に入ったようだな。俺では相性があまり良くなくてな」

「別にそんなんじゃねえけど……剣も使うし相性もいいから仕方ねえなって…」



ゼストの旦那とかいう人は違うのか……



「俺も他のデバイスじゃ魔法使えないからな……そうしてくれるとありがたいし喜んでなるぞ」

「ホントか!? よしゃーー!」



俺もヨッシャー!!だよ。



「……じゃあケイも一緒に探してくれるの?」



あっ……そういや局に関われない理由持ちだったなこいつら……

どうしよう……今は六課に居候してるし、連れてけねえ。

 

仕方なく今の俺の立場と現状を説明する。

ついでに自己紹介やらも済ます。

とりあえずゼストとかいう人は俺も旦那と呼ばせてもらう事にした。



「そっか……」



すまん…せっかくロードになるって言ったのにな。



「……ケイ一緒に来ないの?」



そんな寂しそうに服の裾掴まんでくれ……なんかすげえ罪悪感感じるから。



「ルーテシア。武ノ内にも自分の生活がある。それも魔法のないな」

「……うん」

「ごめんな。流石に家族に黙っててわけにもいかねえんだ」



家族は大事だからな……

俺ももうしばらくしたら地球に帰らねえといけねえし、学校だってある。

最低でも中学くらいは卒業してないとやばいし。



「旦那達は異世界とかにも行けるんすか?」

「ルーテシアの転送魔法なら可能だろうな」

「じゃあ俺が地球に帰って学校卒業した後でもいいなら手伝えるぞ」



都合のいい話になるけどな。



「いや……無理をする必要もない。それまでにはおそらく終わっている」

「あっ、やっぱし?」

「……だが見つかった後……アギトのことを頼めるか? ルーテシアは目的が果たせれば家族と一緒になれるがその後も会ってやって欲しい」

「旦那!?」



……ルーテシアの探し物は家族に会うのに必要なものなのか?

じゃあ今は1人?



「……わかりました」

「頼んだ……ではルーテシア武ノ内を六課まで送ってやってくれ」

「……うん」

「本当にごめんな? 手伝えなくて……」

「……いいよ。でも見つからなかったら手伝って……」

「約束する」

「ケイ。ロードになるって約束したんだからな。絶対なれよ」

「お前こそ俺の相棒になってくれよ」



アギトと拳を合わせる。

また会おうな。



「あっ、できたら誘拐された路地裏で頼むわ。チャリがあんだ」

「わかった……じゃあケイ。バイバイ……」

「ああ。またなルーテシア。地球の日本に暇だったら来な。俺はそこに住んでるから」

「うん」

「じゃあなアギト。旦那も」

「ああ」

「てめえ他にデバイス作るんじゃねえぞ!」

「すまん。AIとかないけど実は作ってる。性能低そうだけど」

「んなっ!?」

「大丈夫だって。どの道俺の魔力とか使えないもんだし、お前と組むまでの間に合わせみたいなもんだ。じゃあな〜」

「待てええええ!」





そして俺は3人と別れた。

目の前の景色は今日の誘拐現場に変わっている。

いや〜……戦闘怖かった……

時間はもう夜……さっさと帰ろう。腹も減った。

自転車を置いた場所に急いで向かった。









【違反駐車により撤去 108部隊】(翻訳:通り掛かりの人)









自転車が置いてあった場所にそんな張り紙がしてあった。

……そんなアホな……

仕方ねえ……持っていった108部隊とかいうとこ行こう……















「はい。じゃあもう違反駐車するなよ。それとその服。ボロボロだからそれに着替えとけ」

「はい……」



108部隊とかいうとこに道を探しながら来たらもう11時過ぎ……やばい……非常にやばい。

服は籠にいれっぱだったおかげでそのまま返してもらえた。

ちなみに血の部分は破って捨てといた。

おかげで相当破れた服になってる。

買った服をさっそく来て夜道を急いで俺は六課隊舎に向けて自転車を走らせた。

はあ……やっと帰れる。







    〜六課への帰り道〜







とりあえず海沿いの道に出ようと夜の街をまっすぐ突き抜けようとして信号待ちをする。

あ〜……早く青に変われ。



「ちょっと、君いいかしら?」

「はい?」



管理局の人がなんの用だ?

げっ!? この人昼間のゲーセンで追ってきた人だ! ……誰かに似てる?



「管理局108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹です。君何歳? 職業は?」

「15歳で学生ですが……」



まさか……



「未成年ね。深夜徘徊です。補導しますから108部隊まで連行します」



………えええええええ!!??

昼間の事バレたんじゃなくて補導!?



「あの……マジっすか?」

「ええ。マジです♪」



……笑顔でそんなこと言わんで下さい……

うわ〜〜ん! 俺の平和は今日もなかったーーーー! ちきしょーーーー!







                                 つづく







〜おまけ1〜





「ケイ……遅いね……どうしたんだろう」

「何してるんだろう…せっかくみんなで食べようって待ってるのに」

「迷子になってるんでしょうか……」

「はあっ……もう先食べましょ。そんで帰ってきたらシバいてやりましょ」





  ぞくっ……



「どうかしたの?」

「いえ……なぜか悪感が……」









   〜おまけ2〜





「旦那……」

「心配するな俺はまだ倒れんさ。目的を果たすまではな」

「ゼスト……いなくなっちゃ嫌だ……」

「大丈夫だ。それに武ノ内とも最後の別れではないのだろう? 元気を出せ」

「……うん」

「それにしてもあいつ……AIとかないデバイス作るって言いやがって! 文句言ってやる!」

「ふっ、その調子だ」

「アギト……元気いっぱい」

「あーー! 腹立つーー!!」





   ぞくっぞくっ!



「うおっ!?」

「また?」

「ええ……またっす……」







あとがき





今回は相当難しかったです。

シエンさんからのアドバイスもありなんとか書けた今回の戦闘シーン。ここが一番難しかったです。

戦闘SSを書けている作家のみなさんはすごいですね。

そして今回ついに魔法をユニゾンすることで使えることになった主人公。

しかしコアの影響でランクが落ちる影響も…

その辺の改良もそのうち出ます。まだまだ先ですが。

最後にはギンガさん登場。次回のメインはナカジマ家。では次回もよろしくお願いします。







   Web拍手返信





※このまま続けこお平和<うん、絶対無理さろ。



>無理でした。



※ケイ、君はもしや某宇宙人の狩人と人類の混血児かね?



>すいません……元ネタがわからんです……



※ウエンディだよ。1番可愛いのはウェンディだよ。



ウェンディ「ありがとうッス! アタシ感激ッス!」

ケイ「まあ事実ではあるな。出番はしばらくないらしいけど」

ウェンディ「がーーーん! ッス」



作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。