対抗心が芽生えた。
 今の生活に不満は無い。
 今現在まで歩んできた人生に、誇りを持てる。
 だが、いつも大きな波――させない、やるな、という強制に、抗うことはしなかった。
 いや、いつも大きすぎる壁に、抗うことは許されることはなく、ただただ飲み込まれていった。
 しかし、この日、初めて抗う意思が生まれた。
 誰かに勇気付けられるように。
 ここで引く様な真似はするなと。

「我、再び――」

 何かを呟いた。

「あっ、聞こえないって、そんな小さな声じゃ」

 困惑する男だが、時覇の目の色は――

「……ほう、腹は既にくくってあるってか……いいだろう、望み道理――」

 すかさずカートリッジ・リロードを行う。

「吹き飛べ! ――カラミィレイン」

 銃口から、直径三メートルほどのオレンジ色の光の弾が出現した。
 時覇は、緑色の水晶が輝く前に、コスプレした女性――シグナムをお姫様抱っこして、全力で木々の間に入っていった。

「逃がすかよ!」

 その言葉と同時に、カラミィレインを放つ男。
 そして――オレンジ色の塊は放たれ、少しとんだ途端に拡散し、木や地面などに吸い込まれるように消えていった。が、吸い込まれるように消えていった部分がオレンジ色に輝きだして、大爆発を起こしたのだ。
 それを本能的に感づいた時覇は、シグナムを庇うようにして、地面にふさぎ込んだ。
「……くそっ、あんなのに当たったら、穴が開く所か、吹き飛ぶわ」

 再び立ち上がり、シグナムをお姫様抱っこし直して、走り出した。
 だが、四方八方が煙塗れで、どっちを進んでいいか分からなかった。

“うん!”

 不意に声が聞こえた。

“こちらだ!”

 時覇は、声のする方へ走った。
 そして、そこには突き刺さったままであった剣があった。

“私を持って、私が指示する方向へ進んでください”
「あ、ああ、わかった」

 驚きつつも、どこと無く懐かしい感覚に襲われながら、剣――レヴァンティンを地面から引き抜いて、指示に従いながら進んでいった。

「……逃げられてか。ロングイには、悪いが叩きのめ――」
(撤退だ、ゴスペル)
「ずって、何だと?」

 いきなりの念話に、困惑するゴスペル。

(今から470秒後に、時空拡散弾と魔力無効化弾の同時使用を行う)
(なっ、アレを使うのか!? しかも二つ同時に……正気の沙汰か!?)
(そうだ。なんせ東野がアースラに侵入していたからな。その為のかく乱だ)
(……さすが東野、神出鬼没にも限界は無いのか?)

 先ほどの焦りはどこへで、こめかみを押さえる。

(とにかく、戦線離脱を最優先命令とする)
(了解。レニアスフェイトを連れて帰る)
(頼むぞ)

 そこで念話は終わった。

「……アイツが進んで使うのか……腹は括れてって事か」

 頭を掻きながら、笑みを浮かべる。
 ふと、風が吹いてきた際、僅かな氷の欠片が混じっていた。
 アッチかと言わんばかりに、風が吹いてきた方向を向く。

「さ〜てと、我がラギュナスの華を――」

 カードリッジを再装填しつつ、

「迎えに行きますか」

 音を出しながら、デバイスを垂直に構えた。





 その頃、次元空間で待機中のアースラでは、未だに内部は、機能回復はされていなかった。
 そしてブリッチでも、フードを被った男がリンディの首――喉仏にナイフを突き立てたままだった。

「……っち」

 フード被った男が、不意に舌打ちをした。
 その為、レティやオペレーター達に緊張が走った。
「時空拡散弾と魔力無効化弾の同時使用とは……、とうとうラギュナスも落ちるか」
 そう男は呟いた。

「時空拡散弾と魔力無効化弾って……」

 その呟きが聞こえたリンディが、フードの男に聞き返した。

「時空拡散弾は、文字道理時空を裂くための爆弾。魔力無効化弾も、文字道理魔力を無効化させるための爆弾だ……それを、この空域で使うそうだ。まったく、あの世界には当分来られなくなるではないか」

 呆れ口調で答える。
 だが、その言葉を聞いたアースラのブリッチにいた者達は、言葉を無くした。特に時空拡散弾は、文字道理の効果を発揮するが、時空空間を拡散させるということは、時空を行き来するアースラなどの時空艦が使用不可能になるからである。だが、転移魔法での移動は何とか可能だが、AAA+ランク以上の転移能力を持っていないと不可能になってしまう。しかし、それに追い討ちを掛けるように魔力無効化弾を使うのだから、完全になのは達の世界とは断たれる事になるのだ。
 ついでに、今アールラがいる場所は時空空間なので、下手すれば次元の狭間に永遠とさ迷う事に成りかねないのだ。
 そしてフードの男は、リンディの喉仏からナイフを離すと、平然と背を見せて出入り口の方へ歩き始めた。
 その突拍子も無い行動に唖然となるスタッフ一同。
 フードの男が、出入り口の前に立つと、スタッフ一同の方を向く。

「早めに決めることだな……あの世界で待機するか、管理局に戻るかを」

 それを言い残すと、フードの男を中心に空間を渦巻きのように捻じれ、その捻じれがいい具合になった途端、空間が元に戻った。
 そして、そこには初めから誰もいなかったように。
 次の瞬間、アースラの機能が立ち上がった。

「……!? エイミィ、状況は!?」

 リンディは、今の状況の理解で少し間が空いたが、『とにかく状況把握』と脳裏に浮かんだ為、エイミィに激を飛ばした。

「ふぇ――あ、は、はい!」

 エイミィは、大慌てでキーボードを打った。
 そして、映し出された映像には――

「こ、これは!?」

 リンディは驚愕した。
 武装局員の大半の全滅、二人のフェイト、そして――シグナムをおぶさっている時覇。
 この短時間で何があったのか、リンディとレティは考えつかなかった。
 そして――

「エイミィ、現地の者と連絡は!?」
「少し待っ――出来ます!」

 手を素早くキーボードを打ち込み、通信できるか確認を取ったエイミィ。
 どうやら、通信・念話妨害は解かれているようだ。

「なら医療班を現地に! それと、アースラに戻れる者は大至急戻るように!」
「はい!」
「出来るだけやったら、この中域を離脱します!」
「リンディ提督!?」

 リンディの指示に驚くレティ。

「今の状況では、これ以上危険です。それに、一旦管理局に戻り、この事を報告して増援を要請しなければなりません」

 確かに、状況は全くわからずじまい。唯一の情報源は、現場に出た武装局員のみ。このまま現地に残っても、何時管理局と通信できるかわからないからである。
 それにこの世界が、なのはたちの世界なのか、疑問を抱いていた。





 ロングイの追跡を掻い潜り、他方から戦闘音が聞こえるが、無視して出入り口まで来た。
“ここまで来れば大丈夫です”
 いつの間にか、待機フォームになっているレヴァンティン。
 シグナムを背負いながら足を止め、息を整える。

「はぁ、はぁ……だろうな、追ってくる殺気も生命の息吹も無い」

 息を切られながら、レヴァンティンの問いを補足する。

“生命の息吹、ですか?”
「ああ、生命体――つまり木や草も入る息とし生きるもの全てがあるモノ。生命の波動、言わば『氣』という。詳しい話は、また今度で」

 苦笑する時覇。
 なんせ、八年ぶりに『氣』の話をしたのだから。
 その時、一緒にいた連中を、久しぶりに思い出した。
 だが、次の瞬間――空を裂くようなガラスが砕けたような音と、波紋が残るような爆発音が立て続けに聞こえた。

「――!? まさか!」
“大変です! ここら一帯の結界が壊れました!”
「結界って、結界魔法の結界の事か?」
“うん、そうです。このままでは人目につきます”
「そうか――なら!」

 時覇の目線の先には、マンホールがあった。












































 それから、数時間後。
 中破ながらも、航行に支障は無い状態で、アースラは進んでいた。












































 時空管理局の通信室に、ネコミミの美少女が、モニターの前に立っていた。

「クロ助、大丈夫かい?」

 リーゼロッテの第一声。リーゼアリアもリーゼロッテの前のキーボードを操作している。

「エイミィ、お久――で、容態は?」
『お久、アリア――うん、外傷はあまり問題無いけど……肺をやられていたらしくて、無理やり魔力をつなぎ合わせてから』

 顔が暗くなるエイミィ。

「……二十歳(はたち)になっていうのに、まったく変わらないねこの子は」

 どこか暗い顔で苦笑するリーゼアリア。

「ねえ、なのはたちは? どうなっているの?」

 不意にリーゼロッテが、エイミィに尋ねた。

『……なのはちゃんは、ラギュナスに捕まって。フェイトちゃんやはやてちゃんは……時空拡散弾とかいう爆発の余波を受けて……』
「そう……事態は深刻な様ね」

 キーボードの操作を、そう呟くリーゼロッテだったが、

「今、時空拡散弾って、言わなかった?!」

 急に立ち上がたので、二人は驚いて顔を上げた。
 特にリーゼロッテは、耳と尻尾が逆立っている。
「なっ、なんだい!? 行き成りどうしてのさ、アリア」

『う、うん。確かに、アースラを襲った男が言っていたから』

 しかし、リーゼアリアは震えていた。
 何かに怯える様に。












































 再び時間は、数時間戻り――












































 道のど真ん中にあるマンホール。
 道を照らす街灯は、汚れている為に、余り役には立っていない。
 そして、その周りの家は暗かった。
 そんな時、僅かにマンホールが浮き上がる。
 だが、すぐに元に戻る。

「なんだ、レヴァンティン?」
“私が、外の確認をします”
「出来るのか?」

 落ちそうになったシグナムを、背負い直す。

“しばしお持ちを”

 それか一分経過し、

“……うん、大丈夫です”
「よし」

 再びマンホールを開ける時覇。家の近くまで、下水道を通って来たのだ。

「よいっしょっと」

 シグナムを落さないように、再び背負い直してから道路に出た。そして、素早くマンホールを元に戻して、その場を離れた。
 その後、五分程度歩いた所に時覇の家があった。
 時覇は、シブナムをおぶさりながら玄関の鍵を開け、家に入っていった。

「ただいま〜」

 蚊の泣くような声で、帰宅を知らせる返事をする。
 だが、返事は返ってこなかった。
 当然、家の中は真っ暗である。

「……俺抜きで外食に行ったな……まあ、好都合だから、いっか」

 置いてきぼりに腹がたったが、今回はシグナムを担いでいる為、家族が居ないことに感謝した。
 一応、これ以上の魔力の消費と人目を避けるために、防護服をレヴァンティンの方で解除してもらった。
 それから、下水道を通っている間に、ある程度の事情を聞いた。
 まあ、時覇自身もある程度は嘘だとわかったが、状況が状況の為、あまり追求はしなかった。
 それに明日は、学校の創立記念日で家には時覇以外いないので、なを都合が良かったのであった。

「これで……よしっと。早めに自分用の布団を持ってこないと怪しまれるかなら」

 シグナムをベッドに乗せて、毛布をかけた。

“すいません”
「なぁに、気にすることじゃないさ。だけど明日悪いけど、詳しく追求させてもらうからな」

 そう言って、部屋の電気を消した。
 そして、音を立てない様にドアを閉め、忍び足で階段を下りていく。
 ドアが開けっ放しのリビングにあるソファーに、腰を下ろす。
 そして、自分の部屋がある方を見上げる。

「……腹、括ったはずだったのに、な」

 視線を地面に移し、項垂れる様な体勢になりながら、甲にある水晶の部分を、人差し指で軽く撫でる。
 ただ、自分の行いを、悔いるように。
 優しく、そして悲しい、その手で。












































第五話:二つの決断(後編)・END























































リョウさんもとい――リョウスケ&○○○○に感想を言ってもらいましょう!


※今回は『エリオ』で、お願いします。

エリオ「(ぼ、僕が……僕がしっかり説得しないと!)良介さん!」

良介「おー、カミナリ小僧。いい所に来た。お前を感想係に任命する」

エリオ「だ、駄目ですよ!? ダークマスターさんは良介さんに感想を求めているんですよ!」

良介「その俺がお前に感想を求めてるんだ。分かるな、この意味が?」

エリオ「えっ!? それは僕を信用してくれているって事ですか!」

良介「当然だ。感想を任せられる男は、お前しかいない」



アリサ(……押し付ける、の間違いでしょう。あーあ、目をキラキラさせちゃって)






あとがき
 改正と言っても、軽く手を加えた程度と、文章の訂正したくらいです。
 あとは、追加ですね。
 あとは、第六話のタイトルを一応仮にしました。
 変更が予想されるからですよ。
 最後は、暴走妄想爆走烈風疾風陣風外交鮫市場!
 などと、意味の通じない早口? 言葉を考えました。
 これ書いてるときに(笑
 読み方:ぼうそう もうそう ばくそう れっぷう しっぷう じんぷう がいこう さめいちば!
 です。(スペースは、読みやすいように入れました)
 では、次の話か、HP中で。






制作開始:2006/4/3〜2006/4/5+2006/4/6
改正日:2006/12/21〜2006/12/23+2006/12/28

打ち込み日:2006/12/28
公開日:2006/12/28

修正日:2007/10/4



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