Corporate warrior Corporate warrior chapter.2 Ruin training story.6


 神の住まう教会で聖女を裸にして、辱める。罪悪感はあれど、懺悔は決してしない。許されようとも思っていない。

恐れ多くも神を人質に取り、救世主を降伏させる。武装解除した上で縛り上げて、身体の自由を奪った。


神の下僕に相応しい、美しい肢体。異性を魅了する豊かな胸、露になった秘所、白い肌に穢れは無い。


「……私を、どうするつもりですか?」

「そうね――折角、神様が御覧になっているもの。
世界を救う使命を持つ聖女様を、徹底的に犯して差し上げようかしら。白濁に染まった貴方はさぞ、美しいでしょうね。

神への生贄にピッタリだとは思わない? うふふ」

「!? そ、そんな真似をしたら、舌を噛んで死にます!」

「御立派。けれど、貴女の魂はそれほど高潔なのかしら? 

そのイヤらしい身体に、甘い蜜を塗ってあげる――狂おしき屈辱と、浅ましき快楽を与えて」

「その辺にしておけ、イムニティ。彼女には、聞きたい事がある」


 神を盾にされて歯向かう気はなくとも、抵抗する気力は残っているらしい。俺を見る目には、強い怒りが宿っていた。

立場が逆になれば、少しでも命を永らえるべく従順になるだろう。公開処刑の場で、俺は彼女に死にたくないと叫んだのだから。

ベリオ・トロープ、彼女は多分まだ十代。なのにこれほど強いのは生まれ持った素養か、環境か。いずれにしても、俺とは全然違う。


職にもつけずに引き篭もった二十代との違い、世界を言い訳にするにはあまりにも隔たりがあった。


「貴方と話す事など、何もありません! 早く殺しなさい!」

「今の所、あんたを殺すつもりはない。命の恩人を殺すのは、胸が痛む」

「白々しい事を……! 神殺しを企てる貴方を助けようとした私が愚かでした」


 流麗な唇を強く噛み締めて、瞳から一滴の涙が零れる。他者への憐憫ではなく、自分への強い自責の念。

イムニティを祭壇に立たせ、ベリオを床に寝かせている。少しでも抵抗すれば、イムニティが神の象徴を破壊する。

候補であっても、救世主。召喚器の力も、魔法の概念も知らない以上、縛り上げていても安心はしない。


彼女の一挙一動に気を配りながら、尋問を行う。


「俺の公開処刑人であり、救世主候補の一人リリィ・シアフィールド。彼女について、教えてもらおうか」

「話す事は無いと、言ったはずです!」

「分かった。破壊しろ、イムニティ」

「はい、マスター」

「やめて!? お願い、やめて下さい……」


 愚かしいまでの、神への信仰心。重傷を負った破滅の将に消滅寸前の書の精霊、ベリオ・トロープ一人でも倒せる筈だ。

神といっても、姿形を成した実体ではない。教会に十字架、神への信仰を模しただけの象徴でしかない。

なのに、彼女は自らを差し出してでも頑なに守らんとする。俺には、彼女の心が理解出来なかった。

熱心な信者と言えば聞こえはいいが、その神様が今危機に陥る彼女を救おうとはしていない。愚かを通り越して、哀れだった。


「彼女は私の大切な仲間です。貴方が破滅である限り、彼女の事は教えられません」

「どうします、マスター。我が侭な救世主様に、罰を与えましょうか」

「か、神様と仲間を天秤にかけるなんて、私には出来ないんです!? お、お願いですから……」

「――分かった、話せる限りでいい」


 イムニティは不服そうにしているが、追い詰めてまで得たい情報ではない。俺が知りたいのは、彼女個人の事。

リリィ・シアフィールド、彼女こそが真の救世主。公開処刑の場で俺はそう確信し、己の新たな夢を語った。


正式に手を組む事は出来なかったが、この先どうなるかは分からない。いや、必ず彼女の手を掴んでみせる。


彼女が真の救世主となり、俺が破滅の王となる。両者が揃い意思を統一する事で、世界のシステムを変えられる。

神は決して、許しはしないだろう。その時こそ決戦の場、俺とイムニティで神を断罪する。

その未来への道筋を読むには、情報が必要だ。就職活動で嫌というほど、情報の大切さを学ばされた。


俺の妥協を自分の中で噛み締めて、彼女は当たり障りの無い情報を説明してくれる。


「貴方がどれほど彼女の事を知っているのか分かりませんが……リリィは、優秀な魔術師です。
『救世主クラス』では主席で、候補生の中でも彼女が一番救世主に近いと噂されています。

……学園長の推薦もありましたが、貴方の処刑人に選ばれたのも彼女が優秀だからです」

「『救世主クラス』というのは?」

「? 貴方は、破滅の将でしょう? どうしてそんな質問を――」

「救世主を養成すべく設立された、フローリア学園。
救世主候補達が徹底した実力主義の元で教育を受けるクラス、それが『救世主クラス』ですわ」


 俺の質問に怪訝な顔をするベリオに代わって、俺の召喚器であるイムニティが説明してくれた。

名前から薄々察する事は出来たが、世界を救う救世主を育てる学園が存在するというのは驚きだった。

考えてみれば救世主の素養があっても、いきなりモンスターや破滅の将と戦わせるのは無茶な話である。


この世界は、アニメやゲームのような二次元ではない。生死が当然のように切り分けられる、現実なのだ。


「あんたも、その救世主クラスにリリィ・シアフィールドと共に所属しているのか」

「……一応、委員長をしています」

「なるほど、あんたらしいな」

「褒めているんですか、それは……?」


 苦笑しかけて、彼女はハッとした顔をして強く睨みつける。裸体を晒す我が身を省みて、自分を戒めたらしい。

結構な事だ、こちらも情を移さずに済む。正義と悪、このラインを明確にしなければ緊張感は保てない。

自分で選んだ事に、後悔してはならない。


「救世主クラスに所属する人間全員を教えろ」

「絶対に、仲間の事は話しません!」

「だったら、自分の事は話せるんだな。ベリオ・トロープについて、詳しく話してくれ」


 まるで面接官にでもなった感じがして、可笑しくなる。面接官の態度の悪さに怒っていたのに、今では自分が横柄に質問している。

どの立場になっても、自分の矮小さを思い知らされる。有言実行なんて、俺には一生縁が無いのかもしれない。

自分の身になれば、これほど手の平を返すとは思いもよらなかった。政治家になってはいけない人間だな、俺は。


こんな俺が世界を変えようとしている――滑稽の極みだった。


「私は……特に、誇れるような経歴はありません」

「救世主候補に選ばれておいて、嫌味な謙遜だな。凡人を馬鹿にしている」

「そ、そんなつもりはありません! どうしてそう悪く捉えるのですか、貴方は!?」

「リリィ・シアフィールドは『魔術師』と言ったな。あんたも同じタイプの救世主か?」

「……少し、違います。彼女は攻撃魔法を主体とし、私は回復系や補助系の魔法などを勉強しています」

「おや、仲間の事は話さないのではなかったのか?」

「攻撃魔法が得意という情報を知られても、貴方では彼女は倒せません。リリィは本当に、強いのですよ」

「――マスターを侮辱するなら」

「いいんだ、イムニティ。言わせてやれ」


 公開処刑で手も足も出ずに倒された俺、俺を守って消滅したイムニティ。苦々しい敗北の記憶が思い浮かぶ。

信頼関係が無かったとはいえ、イムニティは俺の力になれなかった事を恥じてくれている。だからこそ、侮辱されて怒りを感じる。

一度は見捨てた主をこれほどまでに思ってくれる。俺は、その気持ちだけで充分だった。


こいつの為ならば、世界でも敵に回せる。ちっぽけな罪悪感なんて、俺の心から消し去ってやる。


「回復系の魔法が使えると言ったな?」

「私は修道僧です。まだ未熟ではありますが、聖職者として毎日修行を積んでいます。

人を癒す為の、力――破滅の将である貴方に、使用するつもりはありません」

「ほう、察しがいいな。だが、ちょっとだけ違う。


あんたのその力、俺では無く――イムニティに使ってくれ」


「マ、マスター、私はかまいません。それよりも、傷を負っている貴方に!」


「イムニティ、命令だ。彼女の治癒を受けろ。
救世主クラス主席である、リリィ・シアフィールドより受けた傷――自然に任せていても、回復に時間がかかる。

俺を守って傷付いた怪我、その気持ちに悪意は無い。この子を癒してくれ」


「……それは、命令ですか……?」


 何故、そんな事を聞くのか。俺を見上げるベリオの視線は今も強く、そして複雑に揺れている。

どうして物事は完全な善悪に分かれないのか。どうして人間は好き嫌いを完全に区別出来ないのか。


救世主と、破滅――立場がはっきり別れているのに、言葉だけはこうも通じ合えるのか。


「――そうだ。拒否するならば、神を殺すまでだ」

「……ユーフォニア!」


 敢えてハッキリと言い放ち、脅しをかける。ベリオは悲しげに俯き、そして怒りに身を震わせる。

彼女の召喚器の力で、俺の召喚器が癒されていく。その光景をぼんやり見ながら、今後の事を考える。


彼女を殺すか生かすか、決めておかなければならなかった。













































to be continues・・・・・・







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