第十二話 夜天、明けない夜が終わる時なの(後編)
 半球体となっていた淀みが海中から生まれた柱に引きずられるようにして、海上へとほんの少し浮かび上がる。
 そして淀んだ色の表面がより濃い闇色一色に染まったかと思った次の瞬間には、表面の淀みが弾け飛んでいた。
 外側から見えていた淀みは卵の殻のような役割をもって、中に潜む防衛プログラムを覆っていたのだ。
 だが現れたのものは、お世辞にも何かを守るための役割をおった防衛プログラムには見えなかった。
 あがる咆哮は鋭い牙を持った獣の口から放たれ、体を支えるのは獣の前足二本と節足動物の様な足が四つ、角や翼が入り乱れるように体から生えた化け物であった。
 そして最も目を引くのは、化け物の頭部にて悲鳴の様な声を挙げる人型の女性の上半身であった。
「あれが夜天の魔導書を、呪われた闇の書と呼ばせた防衛プログラム、闇の書の闇」
 はやての呟きが示すのは、歴代の持ち主の誰か、もしくは持ち主たちがそれだけの闇を欲望に従って埋め込んだと言うことであった。
 夜天の書の意志を無視して、望まぬ未来を与えた原因。
 化け物の頭部に埋め込まれたようにも見える女性の声は、嘆き声にも聞こえていた。
「動くぞ。八神はやて、皆に増幅魔法を。直後にユーノとザフィーラ、頼む」
「了解や、ゴールデンサン皆に元気を分けてあげてや!」
「The expression is unpleasant, and not a hobby. Amplify to all」
 ゴールデンサンが不満そうな声を挙げて直ぐに、頭上に一つ小さな太陽が生まれたかと思うと弾けて粒子となって皆に降り注いでいく。
「確かに、口の悪いゴールデンサンには似合わない言葉かもね。ストラグルバインド!」
 増幅された魔力を感じながら、ユーノが手の平を前に突き出し叫んだ。
 目の前に浮かび上がるのはユーノ固有の魔力光を放つ魔法陣。
 そこから生み出された光る鎖が数本、防衛プログラムの足と、前面でうごめく触手を絡めとって動きを止めた。
 続くザフィーラも腕を目の前で交差させ魔力を練り、ベルカ特有の三角形の魔法陣を生み出した。
「縛れ、鋼の頚木!」
 魔法陣から生み出された白光の刃がユーノが縛り付けていた触手たちを振り払う様に斬り裂き、防衛プログラムの前足を傷つけていった。
 防衛プログラムの頭部にいる女性の悲鳴がさらに大きくなり、耳を塞ぎたくなる衝動にかられていく。
 どちらが本体か不明であるが、下部の化け物の痛みを訴えるような咆哮が重なっていたのは幸運であった。
 おかげでギリギリ耳を塞ぐのを堪えることが出来たなのはへと、ヴィータが叫ぶ。
「あれは生き物じゃねえ。ただ暴走して被害を撒き散らすだけの、プログラムだ。躊躇う必要なんてねえ。ちゃんと合わせろよ……えっと、高町なんとか!」
「い、今頃?! 酷いよ、まだ名前覚えてなかったなんて。なのは、高町なのは!」
「し、しょうがねえだろ。前に自己紹介された時は、あかねの馬鹿とはやてが闇の書の一撃に巻き込まれそうだったんだ。とにかく、行くぞなのは!」
「なんだか納得いかないけど、追求は後だから!」
 出来れば忘れろと心の中で願っていたヴィータの願いも虚しく、なのはは問題発言を後回しにしただけであった。
 あわせろと言う確認だけで終わらせるべきだったと心の隅っこに問題を蹴り上げ、ヴィータはグラーフアイゼンを握り締めた。
「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン」
「Gigant form」
 カートリッジを飲み込んだグラーフアイゼンがハンマーの頭部を分解、再構築させる。
 ヴィータとそう変わらない大きさにまで膨れ上がった頭部を支える柄を、ヴィータが思い切り振り回した。
 左に引き絞っていた状態から頭上へと振り上げていく間にも、グラーフアイゼンの頭部は巨大化を続けていく。
 暴走プログラムの巨体と同じぐらいにまで大きくなったグラーフアイゼンを、ヴィータの細腕が支えていた。
「轟天爆砕、ギガントシュラーク!」
 そしてほぼ同等の質量がそのまま、防衛プログラムへと叩き付けられた。
 防御魔法でも支えきれなかったその質量を受けて、防衛プログラムの体が生みに沈む。
 だがそこは揺れる海面でもあり、波間に受け止められた巨体への直接的なダメージはあまり見られなかった。
 はやてに増幅魔法を貰った手前、一撃で決めるつもりだったヴィータの舌打ちが響くが、目の前で防衛プログラムを保護していた防御魔法が砕け散っていた。
 さらに次の防御魔法へとグラーフアイゼンが到達するが、さすがに止められてしまう。
「ちくしょう、一枚だけかよ。けどあかねと夜天の魔道書の防御魔法よりは断然やわいぜ、こいつ。しくじんなよ、高町なのは!」
「任せておいて、ヴィータちゃん。高町なのはとレイジングハートエクセリオン、行きます!」
 比べる対象が間違っていると思いつつも、レイジングハートを手にしたなのはの瞳は自信に溢れていた。
 足元に桃色の魔法陣を広げ、天を突くようにレイジングハートを掲げた。
「Load cartridge」
 気合を入れすぎたのは、なのはかレイジングハートか。
 四発ものカートリッジを爆発させ吐き出すと、抑え切れない魔力を効率よく放出する為の羽が二対レイジングハートから現れた。
 そのレイジングハートを一回転、二回転、さらにもう一回転と振り回し、眼下の防御プログラムへとなのはは突きつけた。
「エクセリオンバスター!」
「Barrel shot」
「ブレイクシュート!」
 一度の砲撃にて放出された弾丸はカートリッジをロードした数だけ四つ。
 螺旋を描いて交じり合うように放たれたそれが、防衛プログラムの防御魔法の上から直撃する。
 なのは得意の砲撃魔法は一発の砲撃でさえ一撃必殺の威力を誇るのだが、それが四発同時ともなれば語るまでもない。
 螺旋状の軌道から集束された砲撃は、抵抗の間もなく二つ目の防御魔法を撃ち砕き、三つ目の防御魔法へとひびをいれさせていた。
 自分は一枚だけだったのにと悔しげな声を挙げたヴィータへと、なのはがピースをして名前を覚えてもらえなかったことへの小さな復讐が完了する。
「なのはちゃんまで、緊張感がないんですから。シグナム、テスタロッサちゃん。引き締めて決めてあげてください」
「任せておけ」
 呟き前へと一歩踏み出しシグナムは、鞘に収めていたレヴァンティンを一気に引き抜き掲げた。
「剣の騎士シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。刃の連結刃に続くもう一つの姿、今一度見せてやろう」
「Bogen form」
 刃を解き放った鞘をレヴァンティンの柄頭へと近づけると、吸い付くように一体化してその姿を変えた。
 弓なりに反り返ったレヴァンティンへと、魔力の弦が一本緩みなく張られ、シグナムが右手を添えて引き絞り始める。
 始めは弦のみであったそこへと、引き絞るにつれ魔力の矢が生成されていく。
 そして引き絞りが頂点に達すると、レヴァンティンがカートリッジをロードして蒸気を発し、シグナムの足元にあった魔法陣から炎が噴出した。
「駆けよ、隼!」
「Sturm falken」
 矢の先端へと魔力が集束され、シグナムの手から解き放たれ、防御プログラムへと突き進んだ。
 なのはが生み出した三枚目の防御魔法のひびの中心へと命中し、貫通したままに四枚目の防御魔法へと衝突し炎上。
 一気に二枚の防御魔法を撃ち砕いていた。
 全ての防御魔法を撃ち砕かれた防衛プログラムは、全くの無防備状態。
 その猛威を衰えさせる大ダメージを与えるには、今をおいて他にはなかった。
「フェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサ・ゴールデンサン、さらにバルディッシュ・ザンバー。行きます!」
 そして好都合にも四枚の防御魔法を破壊する担当を負ったフェイトが、一番の攻撃力を誇っていた。
 普段は鎌として使用することが多いバルディッシュを、最終形態である大剣状態のままさらにカートリッジをロードさせる。
 使用者の補助に徹しきれないアリシアはユニゾンデバイスとしては優秀とは言いがたいが、演算能力だけを考えれば超一級品。
 どれだけ膨大な魔力を込めたとしてもバルディッシュを破壊することもなく、全ての魔力を攻撃に注ぐことが出来る。
 幼く小さな姉を信頼して、残りのカートリッジを全て爆発させた。
 刃先をほんの僅かでも動かせば膨大な魔力に引きずられ、疾風が舞い上がり刃となって襲い掛かるバルディッシュを頭上に掲げると紫雷が落ちる。
「撃ちぬけ、雷刃!」
「Jet Zamber」
 振り下ろすと同時に伸びていく刀身が防御プログラムの巨大な体を一刀両断していく。
 それだけに留まらず、フェイトがバルディッシュから一部刀身を切り離すと、制御を失った雷の刃が咆哮を上げて頭上の暗雲からさらに雷を呼び寄せる。
 切り裂かれた体の内部から電流が駆け抜け、防御プログラムを焼き焦がしていった。
 一瞬にして大きなダメージを負ったせいか、絶えずうごめいていた触手の動きが鈍り、一刀両断された片割れは体を繋げることも出来ず海に沈んでいった。
 畳み掛ける攻撃に恐れていた回復能力を発揮する暇はなく、もちろん後に控えていたクロノがさせるつもりもなかった。
「このまま限りなく封印状態に近づける。行くぞ、デュランダル」
「OK, Boss」
 遅まきながら回復能力を発揮し出した防御プログラムを停止させる為に、恩師が用意していた魔法を解き放つ。
「悠久なる凍土、凍てつく棺の地にて永遠の眠りを与えよ」
 クロノにしては珍しい詠唱付きの魔法、それだけ制御の難しい大魔法がくみ上げられクロノの足元に魔法陣を生み出していく。
 発動する前から急激に冷え込みを見せだした近辺に、空気中の水分が結晶化して雪となって舞い落ちる。
 それだけに留まらず、海が見渡す限り凍り始め、それが修復中の防御プログラムさえも巻き込んで凍り付いていく。
「凍てつけ!」
「Eternal Coffin」
 そして最後の呪文を期に、全ての音が消えた。
 防御プログラムを中心にして、空気さえも凍りついて音が伝わる震動を止めたのだ。
 一秒にも満たない僅かな時間ではあったが、音が戻った頃には防御プログラムは凍りつき修復作業もままならなかった。
 だが無限に近い魔力を含む防御プログラム相手に、何秒耐えられることか。
 自身の魔法のせいとはいえ、すっかり冷え込んだ空気に息を白くしながら叫ぼうとしたクロノよりも、はやてとなのはが叫ぶ方が速かった。
「「あかね君」」
 この役目だけはと、取られてなるものかと言う心が見えなくもなかったが、あいにくあかねは前だけを見つめていた。
 夜天の魔導書を苦しめ続けてきた原因である防御プログラムだけを瞳に収め、右手を挙げて拳を握りこんだ。
「闇に閉ざされた昨日を断ち切る為に、光に祝福された明日へと繋げる為に」
 掲げた右の拳に、魔力が集束されていく。
「拳に宿れ、幾百万の太陽」
 集束された魔力が太陽に劣らぬ眩い光を放ち、何処までも、何処までも強く大きく輝いていく。
 あまりの眩しさに、周りからは瞼の上に腕をかざしてさえあかねの姿がほとんど確認できなくなってしまう。
「Sleipnir」
 そして辛うじて見えたシルエットの中で、背中に生まれた黄金の翼をはためかせ跳んだあかねの姿だけが見えた。
 拳に宿った百万の太陽を支えながら、一直線に防御プログラムへと突っ込んでいく。
 ようやく修復を完了させた防御プログラムが活動を再開し、失った防御プログラムの代わりに数をそろえた触手を伸ばす。
 だがあかねに触れるよりも先に、眩いばかりの光に触れたそばから分解され塵となり消えていく。
 攻撃に対する絶対的な攻撃魔法は、同時に防御魔法をも兼ねていた。
 攻撃は最大の防御という言葉を彷彿とさせる光景であった。
 あかねが拳に宿した光を前に成す術もなく接近を許してしまった防御プログラムが、怪物と女性の二つの口から咆哮と悲鳴をあげる。
 両者を目前として、あかねは構わず太陽の宿る拳を振り上げた。
「対攻撃魔法用攻撃魔法、ミリオンズサン!」
 あかねの拳の中で弾けた光が、夜と結界の二重の闇の中で膨れ上がり、今はまだ地平線の向こうにいるはずの太陽を生み出した。
 幾百万と言う言葉に語弊がないほどに、辺りを照らし、防衛プログラムを光の中へ消し去っていく。
 抵抗の為にあかねへと触手を伸ばせば近付いた分だけ、他の触手よりも早くイカロスの翼の様に光に焼かれてしまう。
 防御プログラムが攻撃性を秘めている魔力エネルギーである以上抵抗は不可能。
 出来ることと言えば、幾百万の太陽に抱かれ消えていくことを享受することだけであった。
 長く絶え間なかった怪物の咆哮も、その頭部に鎮座していた女性の悲鳴もやがて光の中へと消え去り、残るのは防御プログラムのコアだけであった。
 そのコアも活動だけは停止しており、残っているのは夜天の魔導書がこれまでに蒐集してきた多くの魔法であった。
『防御プログラムの停止、およびリセットを確認』
「それなら偉大な人が残した偉大な魔法を、蒐集しましょう」
『お待ちください、我が主。もしよろしければ主の魔法を、ミリオンズサンを一ページ目に蒐集することをお許しいただけませんか?』
 お許しも何も、偉大だとは露とも思っていないあかねは小首を傾げた。
「僕は偉大でもなんでもなくて、ただの欠陥魔導師なんですが」
『いいえ、主は主が思う以上に偉大な魔導師です。私は主の偉大な魔法をさらに多くの人に知って欲しいと思います』
 まだなお首を傾げていたあかねであったが、夜天の書の願いを叶える手伝いをすると言った手前、そうしたいと望む夜天の書のお願いを断れなかった。
 あかねが了解の意を示して頷くと、ほとんど真っ白になった夜天の魔導書の一ページ目に文字が刻まれていく。
 言語体系が違うのであかねには読み取れなかったが、一ページ目にミリオンズサンが、そして抜け目なく二ページ目にはサンライトサウザンドが乗っていた。
「Sammlung」
 蒐集しなおすことで三ページ以降に、数々の魔法が書き出され始めたのを確認してあかねは夜天の魔導書を閉じた。
 クロノの魔法で冷え切った空気を思い切り吸い込み、火照った体に染み渡らせ吐き出す。
 それからやっと全て終わったのだという感慨が心に滲み出すが、別の意味ではまだ終わっていなかった。
 皆の所に戻ろうとするあかねの目の前に、奇妙な笑顔を貼り付けたはやてとなのはが降りてきたのだ。
 一瞬きょとんとしてしまったあかねの腕をそれぞれが抱き寄せ、大岡裁きかと思う程に引っ張り挙げた。
「痛い、なんですか急に。痛いですってば!」
「心配して心配して、こっちの心の方がよっぽど痛かったんよ!」
「ユーノ君の説明、聞いてなかったの? 防衛プログラムは、手当たり次第に物を吸収しちゃうんだよ。迂闊に近付いちゃ危ないんだから!」
 普段からうっかり者であるあかねだけに、聞いていなかっただろうと責める二人であったがそれは誤解であった。
 ユーノがそれを説明した時、あかねの体の主導権はまだ夜天の書にあったのだ。
 つまり本来怒られるべきは、あかねと一緒にサンライトサウザンドを直接攻撃型に変えながらも、防衛プログラムの特質を伝えなかった夜天の書である。
『お待ちください、我が主に非はありません。ミリオンズサンを前に防御プログラムは近づくことが出来ないことを理解し、伝えなかったのは私です』
 だからこそ伝える必要がなかったと言いたかった夜天の書であったが、理屈の通じない相手、通じない状況と言うものはあるものである。
「それならそうと、言って欲しかったって言っとるんや」
「そうだよ。何も知らされず、見てるしか出来ないのって怖いんだから」
 そしてより状況を混乱に陥れる幼子が現れてしまう。
「あかね君、ユニゾンイン!」
「は?」
 フェイトとのユニゾンを解除したアリシアが、強制的にあかねとのユニゾンを行いその内部から夜天の書を追い出したのだ。
 光の翼が消え去り、髪の毛も銀色から金色へと変わったあかねは、はじき出された夜天の書と顔を見合わせ目を丸くする。
『あかね君のユニゾンデバイスは私、アリシア・テスタロッサゴールデンサンなの。ミリオンズサンだって、サンライトサウザンドだって、もっと楽に撃たせてあげられるんだから!』
「何を言うかと思えば、貴方のマスターはあそこに居る瓜二つの少女でしょう」
『ふーんだ、負け惜しみ。夜天って夜の空ってことなんでしょ。夜の空に太陽なんておかしいもん。その点、私はゴールデンサンだからおかしくないもん』
「なるほど、一理あります。ならば私は今から太陽の書です。過去と決別の意味も含め、改名のお許しをいただけませんか、我が主」
 冷静に切り替えした夜天の書の方が、比べるまでもなく大人の対応であった。
「はあ、別に構いませんが」
「ありがとうございます、我が主。そう言うわけなので、貴方の理論は消失しました。そこをお退きなさい。ユニゾンイン」
「痛った、太陽はゴールデンサンと同じ意味だもん。そっちこそどっかいって、ユニゾンイン!」
 だがそれは大きな間違いであったようで、淡々とした口調ながらきちんとアリシアに対抗してあかねの体の中から追い出しあってしまう。
 ユニゾンの繰り返しにより金と銀の髪の色を繰り返し変えながら、地味に疲れる責め苦を受けるあかねであった。
 しかも、本来最初に行われた責め苦は、終了したわけでもなかった。
「あかね君、まずはそのうっかりな性格を直してや。二度と私らに心配かけへんこと!」
「今までのあかね君を考えると、とっても無理な気がするけれど。努力はするべきだと思う!」
 あかねが何度解りましたと頷いても、はやてもなのはも解ってないと言って腕を離してはくれない。
 その間にもアリシアと夜天の書改め太陽の書がユニゾンを利用した押しくら饅頭を止めてくれなかった。
 このままでは本当に命が危ないと、助けを求めて視線を寄越すも助けがもらえる望みは薄かった。
 これまで何度も見捨ててきたユーノは言うに及ばず、クロノも対処法なんか知るかとばかりにそっぽを向いて視線をそらしていた。
 シグナムとザフィーラは憮然としながらも静観の構えで、ヴィータははやてが取られそうだと下手に突けば蛇が出そうなほどにおかんむりである。
 シャマルなどははむしろ微笑ましそうにしている様が、自分の母親とかぶりげんなりしてしまう。
「現実が何もかも思い通りにいくわけがない。わかってたはずなんですけどね」
「Your points are only bad. Training is insufficient, brother」
 やっぱり慰めの言葉を貰おうとすること自体無駄かと、どこか諦めの境地へと至ろうとするあかねであった。


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