第二話 魔法の呪文はリリカルとセイブルなの?
 いまや一張羅と化した格好をケバイとまで言われたあかねは、反論しようとしたが咆哮がそれを遮った。
 変身に驚き忘れていた状況を思い出したあかねたちは、身を低く沈ませた影へと振り返り身構えた。
「きます!」
 ユーノの声と重なるタイミングで、影がその体を高く跳びあがらせた。
 高速で回転する体は球状となって更に回転を早めていく。
 限界まで空へとあがった影はそのままあかねたち目掛けて落ちてきた。
 前回よりも確実に威力のあるであろう攻撃に、なのははうろたえ、あかねは迷いを見せていた。
 なまじ何かしらの力をユーノから与えられた為、何ができて何が出来ないのかわからなくなってしまったのだ。
 そんな二人に指針を与えたのは、力を与えた本人であるユーノであった。
「ゴールデンサンは防御魔法にすぐれたデバイスです。大丈夫、受け止められます!」
「受け止められなかったら、怒りますからね。ゴールデンサン!」
「Don't make noise. Believe me. Protection」
 ゴールデンサンがあるかないかわからない口を開き、滑らかな言葉を持って答えた。
 言葉の内容まではっきりとはわからなかったが、あかねは宝玉が光り出したグローブをはめた両手を空へと突き出した。
 光の壁があかねとなのはを覆い、落ちてきた影をそのまま受け止めた。
 魔力の火花が飛び散り、鉄を裁断するときのような耳障りな音が辺りをつつみこむ。
 そこまでは先ほどと全く同じであった。
「今です、レイジングハートでジュエルシードの封印を」
「え、私? 封印って何、どうやって?」
「今彼がしたような単純な防御、または攻撃魔法は心で願うだけで」
 悠長にユーノが説明しようとしている間にも影の攻撃は続いていた。
 同じくあかねの防御も続いており、拮抗状態が崩れた。
 今度はあかねの防御魔法ではなく、勢い良くぶつかりに来た影の方が耐え切れずその体が四散したのだ。
 細切れになった影は四散した時の勢いのままアスファルトやコンクリートの壁に突き刺さっていく。
「しまった、これじゃあ封印できない。一度距離を稼ぎましょう」
「え、そうなの? あかね君!」
「うわ!」
 防御魔法を解いたあかねの頭上を、細切れになった影の一つが触手を伸ばして貫こうとしてきた。
 なのはがそでを引っ張ってくれたおかげで運良くその一撃は免れたが、何時までもここに留まっていては触手に射抜かれてしまう。
 あかねが最後尾で防御魔法を使いながら、二人と一匹は一目散にこの場を後にした。
 近くに人気がなくなってからようやく影は散りじりになった体を集め始める。
 その間に出来るだけ距離を稼いだあかねとなのはは、ユーノから少しだけ魔法のレクチャーを受ける事ができた。
「先ほども言いましたが単純な魔法は心に願うだけで発動します。ですがより大きな力を必要とする魔法には、呪文が必要なんです」
「呪文?」
「心を澄ませて、心の中に貴方の呪文が浮かぶはずです」
 言われた通り瞳を閉じて精神集中している間、あかねは周囲に気を配り何時でも防御魔法を扱えるようにしていた。
 先ほどユーノはゴールデンサンを防御魔法に優れたデバイスと言ったのだ。
 ゴールデンサンとレイジングハート、二つのデバイスをユーノが持っていたとしたら、普通に考えてレイジングハートは攻撃に優れたデバイスのはずである。
 あかねが防御を担当し、なのはが攻撃を担当する。
 警戒に気をやり全く自分の呪文を浮かべようとしないあかねにユーノが注意を促さないのがその良い証拠である。
 夜のせいだけではない、独特の静けさが辺りを支配していた。
 ユーノの言う呪文がまだ浮かばないのか、背後にいるなのはへとちらりと視線をやると同時にあの影の唸り声が耳に届いた。
 なのはが強い意志を持って目を開き杖を掲げた。
「リリカル、マジカル」
 同時にあかねは向かってくる影へと向けて駆けた。
 両手を突き出し、防御を心の中で願う。
「A good feeling, Brother. Protection」
 体当たりでは無駄だと悟った影が、先ほどと同じ触手を伸ばした攻撃を行ってきた。
 アスファルトやコンクリートをも貫くその一撃を、あかねは光の壁で受け止める。
「高町さん!」
「封印すべきは、忌まわしき器。ジュエルシード」
「ジュエルシード、封印!」
「Sealing mode. Set up」
 ユーノの言葉を聞いて、なのはが空高く杖を掲げるとレイジングハートの声が続いた。
 杖の先端がせり上がり、覗いた穴から桃色の光を放つ羽が三枚噴出した。
 更に先端の宝玉からは光の帯が幾重にも重なりながらあかねの前にいる影へと伸びていった。
 影を光の帯で縛り上げると苦しいのか、影が苦悶の声をあげた。
 血に濡れたような真っ赤な相貌の中心にナンバー二十一とアラビア数字が浮かび上がる。
「Stand by ready」
 レイジングハートの更なる声に、なのはが続けた。
「リリカル、マジカル。ジュエルシード、シリアルナンバー二十一封印!」
「Sealing」
 光の帯で包み込んだ影を、さらなる帯がジュエルシードを探して突き刺さっていく。
 やがてジュエルシードの封印に成功したの影による苦悶の声は消え去り、その姿もまた霞みのように消えていった。
 後に残ったのは無残にも砕かれたアスファルトと、その窪みで僅かに光る青い石であった。
 先行してそれに近づいたユーノの後に続き、なのはもあかねも歩み寄っていった。
「これがジュエルシードです」
 ユーノが指差したのはほのかな光を浮かべるただの青い石で、とても先ほどのような化け物を生み出した石とは思えなかった。
「封印した後は誰が持っていてもいいんだけど、封印したのは君だからレイジングハートを近づけて」
「うん」
 なのはがレイジングハートの杖の先を砕けたアスファルトへ向けると、浮かび上がったジュエルシードが浮かびゆっくりと近づいていく。
 そのまま宝玉まで近づくと、飲み込まれるようにして消え、レイジングハートが呟いた。
「Receipt No.XXI」
「Next time is my turn」
「For freedom」
 なにやら憎まれ口っぽい事をゴールデンサンとレイジングハートが呟くと、なのはとあかねの体が光り始めた。
 一際大きく瞬いた次の瞬間には、二人はもとの私服姿へと戻っていた。
 それぞれの手の中には、もとの小石へと戻ったゴールデンサンとレイジングハートの姿があった。
 気がつけば奇妙な静けさもまた終わりを告げており、近所の家からは人の気配が、遠くでは車の音が聞こえてきていた。
「なんだか終わったみたいなの?」
「そうみたいですね。少し、まだ夢見心地ですけれど」
 二人でほっと顔を見合わせていると、どさりと何かが倒れこむ音が聞こえた。
 考えても見れば、昼間に衰弱と診断されたユーノが夜には元気一杯とはいかないのが普通である。
 音のした地面を見下ろしてみれば、力なく横たわるユーノがいた。
 慌てて駆け寄り、なのはがユーノを抱きかかえる。
「ちょっと大丈夫? ねえ?」
「あまり大丈夫じゃないかもしれないですよ」
「そんな?!」
 嘘でも大丈夫と言って欲しかったとなのはがあかねをみると、なんだか顔が引きつっていた。
 その顔に違和感を感じたなのはは、遠くから近づいてくるサイレンの音を聞いた。
 そしてあかねと同じように引きつった顔を浮かべた。
「も、もしかしたらなのはたち、ここにいると大変あれなのでは?」
「まったくもってその通りです」
 二人で確認するように辺りを見渡せば、アスファルトは大きく抉れ、何時の間にそうなったのか電柱は倒れ千切れた電線が放電を行っていた。
 局地的な台風か地震でもおきたかのような惨事に、冷たい汗が二人の頬をつたっていた。
 よく近所の人が飛び出してこないものだと思いながらも、ふたりはこっそりとユーノを拾い上げ、そして全力で逃げ出していた。
「ご、ごめんなさーい」
「ごめんで済んだら、警察はいらないですよ」
「こんな時まで皮肉を言わないでよ。それに半分はあかね君のせいなんだから」




 二人が急いで逃げ込んだ先は、夕方にユーノを拾い上げた公園であった。
 川の手前に設置されたベンチに並んで座り、乱れた息を少しずつ整えていく。
 それなりに長い距離を走って逃げたのだが、二人の息のきれようはそれだけが理由ではなかった。
 不可抗力とは言え大掛かりな器物破損をしでかしたのだ。
 当たり前の良心を当たり前に持っている二人には少々心に負担の掛かる出来事であった。
 少しずつ息を整え心にけりをつけた二人は、なのはの膝に視線をよこした。
「すみません」
 すると気を失っているはずのユーノから謝罪が飛んで来た。
 何時の間にユーノが気がついたのか、それさえ二人は気付かないほどに慌てていたようだ。
「あ、起こしちゃった? ごめんね、乱暴で。怪我痛くない?」
「怪我は平気です。もう殆ど治っているから」
 そう言ったユーノは体を細かく震わせて、体に巻かれていた包帯を外していく。
 昼間に治療を受けたばかりで衰弱していると言われたのだ。
 そんな馬鹿なとあかねがなのはの膝上からユーノを抱えあげた。
 くるりと一周ユーノを眺めてみるが、確かに綺麗な毛皮に乱れはなく、かさぶた一つ見られなかった。
「これも魔法ですか?」
「君たちが助けれくれたおかげで、残った魔力を治療にまわせました」
「すごーい、魔法ってそんなことも出来るんだ。よくわからないけど」
 それでも安静にはしていた方が良いだろうと、あかねはなのはの膝へとユーノをおろした。
 そして何から聞くべきか、思考をめぐらす。
 ユーノがやってきたという別の世界、その世界で使われている魔法、あの化け物を生み出したジュエルシード。
 聞かなければいけない事が幾つもある中で、にっこりと笑ったなのはが先に尋ねていた。
「ねえ、自己紹介して良い?」
「あ、うん」
 確かにユーノにはあかねもなのはも名前を告げていなかった。
 色々話し合う為には知っていた方が良いに決まっている。
 だがもっと他に聞くべきことが色々あるだろうと、あかねもユーノもやけに肝がすわっているというか、余裕のあるなのはにと惑っていた。
 そんな二人の視線に気づく事もなく、なのははえへんと喉を鳴らしていった。
「私、高町なのは。小学校三年生。家族とか仲良しの友達とかは、なのはって呼ぶよ。あかね君だけは苗字で呼ぶけどね」
「高町さんと同じクラスの大空あかねです」
「ほら、何度なのはって呼んでって言っても直してくれないの」
 やや恨めしそうな視線を無視してあかねが自己紹介すると、少し諦めたようになのはがユーノへと視線を変えた。
「僕はユーノ・スクライヤ。スクライヤは部族名だから、ユーノが名前です」
「ユーノ君か、可愛い名前だね」
「可愛いは少し可哀想だと思うのですが」
「どうして? こんなに可愛いのに」
 男に可愛いはないだろうと思うあかねに対し、フェレットの姿を見て可愛いと表現したなのはには少し認識のズレがあった。
 互いにどうしてそう言うことを言うのだろうかと思っていると、ユーノが再び謝罪の言葉を放ってきた。
「すみません、貴方たちを巻き込んでしまいました」
 放っておけば何度でも謝罪の言葉を繰り返しそうなユーノを、なのはが抱え上げ目線を合わせてにっこりと笑った。
「たぶん私は平気、ね。あかね君」
「そうですね。ゴールデンサンとレイジングハートがあればなんとか」
 つまりそれはなかったらアウトなのだが、それを言うほどあかねは冷たくはない。
 あかねの答えになのはは笑みを深め、大丈夫だとユーノへ笑いかける。
 まだ巻き込んだというユーノの罪悪感は完全には拭えていなかったが、時間が時間である。
「聞きたい事は山ほどありますけれど、そろそろ帰りましょうか。さっきの化け物みたいなのがすぐに出ることはないですよね?」
「たぶん、今はジュエルシードの力を感じないから」
「なら私の家でユーノ君は休んでいって。怪我が治ったって言っても疲れてるでしょ?」
「なら僕は高町さんを家まで送っていきます。もうかなり遅いですし」
 ユーノを抱えて立ち上がったなのはへと言ってから、あかねは隣を歩き始めた。
 それは言葉通りこんな遅い時間になのは一人で歩かせられない気持ちからであったが、あとで思えば途中まで送るだけでよかったのではないかと思えた。
 妙な義務感からなのはを家の前まで送り届けたあかねは後悔する事になる。
 旧家屋を連想させる立派な塀と門構えのあるなのはの家にたどり着き、なのはが引き戸の門を開ける。
 こっそりと忍び込むように扉の間をすべりこみ、門の外にいるあかねへと振り返った。
「送ってくれてありがとう。あかね君も気をつけてね」
「それではまたあ……」
 言葉に詰まったあかねを不審に思いなのはが振り返ると、そこには歳の離れたなのはの兄が厳しい顔つきで立っていた。
「こんな時間まで女の子を連れまわすとは感心しないな」
「あの、違うのお兄ちゃん。これは、その」
「どんな理由があろうと、こんな時間まで小学生が外をほっつき歩いて良いはずがないだろう」
 なのはの中途半端な言い訳は怒りに火をそそいだだけのようで、兄の顔がさらに厳しくなっていく。
 その顔を和ませたのは、ユーノの一鳴きであった。
 きゅうっと小さくも甲高い声を響かせ、なのはの兄に自分の存在を知らせる。
 突然の動物の声に多少面食らった顔を見せながら、なのはの手の中で小首をかしげるしぐさをみせるユーノとあかねを見比べる。
 そして軽く溜息をつくと、少しだけ表情を和らげた。
「なんだか、このまま君を攻めているとそのうちなのはに嫌われそうなのは解った」
「いえ、僕の方こそすぐに高町さんを帰さず申し訳ありませんでした」
「そこまで下手に出られると、本当に俺が悪者になりそうだ」
 夕食時になのはからフェレットの話を聞いていたため、一度誤解が解ければ話ははやかった。
「それでは僕は失礼させていただきます」
「っと、そうはいかないぞ。言っただろう、こんな時間に小学生を歩かせられないって。後で俺が車で送っていくから、まずは家にあがって電話をかけるんだ」
 つまりそれはこっそり抜け出した事が母にばれる事になるのだが、目の前のなのはの兄の様子から断る事は出来そうにはなかった。
 さらにダメ押しをするように、玄関が開けられ今度はなのはの姉らしき人が顔をだしてきた。
「恭ちゃん、なのは帰ってきたの? あれ、君は? あ、なにそれ。フェレット? 可愛い」
 もう逃げる事はできないと諦め口調であかねは呟いた。
「すみません、お邪魔させていただきます」
 なのはの家にお邪魔し、先に居間へと向かった三人を見送ってから玄関先の電話を手に取る。
 このまま掛けた振りだけでも良いかと思ったのだが、ばれた後が怖そうだと大人しく母に怒られる方を選択する。
 番号ボタンをプッシュして、家へと電話をかけると数回のコールの後母の声が聞こえた。
「はい、大空ですけれど。今何時だと思っているんですか?」
 かなり不機嫌な声であったが、それもあかねが喋るまでであった。
「母さん、あかねだけど」
「あかね? え、だって貴方自分の部屋で寝てるんじゃ。まさかこっそり出かけたの? なのに電話?」
「ちょっと色々あって、クラスメイトの家です。家の人に言われて電話しろって」
「そう、今度お礼しにいかないといけないわね。どなたの家なの?」
「高町さんの所です」
「高町……あかねにそんな名前の友達いたかしら」
 間違いなく男友達を連想しているであろう母に、あかねは言った。
「高町なのは、女の子です」
「さ、最近の子たちは進んでるわね。よく怒られなかったわね」
「馬鹿な事を言わないでください。とにかく、しばらくしたら送ってもらうので心配しないでください」
「了解、貴方がいなくなった事に気付きもしなかったけれどね。それでも帰ってきたら一応お説教ね。待ってるわ」
 そこはかとなく嬉しそうな声を最後に、電話はぶつりと切れた。
 今が何時なのか正確な時間はわからないが、普段ならばそろそろ布団の中であろう時間帯である。
 家に帰ってからお説教となると起きていられるか非常に疑問である。
 嫌だなと思いつつ受話器を置いて、先ほど教えてもらっておいた居間へと向かう。
 すると一種異様な光景があかねを待っていた。
「あ〜、可愛い。本当に可愛いわよね」
「お母さん、ほどほどに」
 ユーノに頬ずりしたり、ふりまわしたりして悶えているお姉さんをなぜかなのはがお母さんと呼んでいた。
 なのはの母の横に座っているのは普通に考えてお父さんなのだろうが、こちらもお兄さんにしか見えない。
 なんだこの空間はと、少しばかりあかねは呆気にとられていた。
「おっ、きたな。主犯格が。ちゃんと電話しただろうな」
「主犯格って……ちゃんと電話しました。帰ったらお説教だそうです」
「あはは、それはお気の毒様」
 なのはの本当の兄と姉にあたまをぐりぐりされながら、何がどう主犯格なのかと考えたらすぐに答えが出てきた。
 なのはとの電話中にユーノからの声が届き、とまどうなのはへと病院へと思わず言っていた。
 その辺りをなのはが正直に言ったのか、喋らさせられたのか、ともかく主犯格は自分だった。
「なにか芸とかできるのかな。ほら、お手」
 なのはの父が手をさしだすと、ユーノがそっと手を置いた。
 その様を見てさらになのはの母と父のテンションが上がっていった。
「ああ、本当に賢いわねえ」
「やるなあ。いたちも」
「もう、お父さんもお母さんもいい加減に。ってあかね君、いつからそこに?!」
「いえ、ずっと見ていましたが。ほどほどにと言う辺りから」
「よかった、まだ半分ぐらいだよ」
 今目の前で起こっている光景よりもっと面白いものが見られたのか、怖いもの見たさも加わって見てみたかったが口には出さなかった。
 とりあえず、まだユーノを可愛がっているなのはの両親へと頭をさげた。
 盛り上がりに水をさすようだが、なのはを連れ出した主犯格だとようやく気付いたからでもある。
「申し訳ありませんでした。遅くに高町さんを連れ出してしまって」
「ああ、その話ならもういいわよ。この子が心配で出かけたんでしょ? なのはも二度と黙ってでかけないって約束してくれたし」
「僕はなのはに彼氏ができたかと冷や冷やしたけれど、そう言う事情なら仕方がないな」
「いきなり何言い出すの、お父さん!」
 真っ赤になってぽかぽか父をたたき出したなのはに対して、なのはの父は朗らかに笑っているだけであった。
「大人の人ってそう言う話好きですよね」
「君は、随分と冷めた言い方をするんだな」
「恭ちゃんが言っても、ちょっと説得力ないかな」
「そうか?」
「そうなんです。でももう少し照れるなりしてくれないと、なのはも落ち込んじゃうよ?」
 そう言うものだろうかと、未だぐるぐるパンチを繰り出しているなのはを見る。
 どうでも良いのだが、なのはが父とじゃれているため、ユーノを可愛がりまくるなのはの母を止める人がいなくなっていた。
 可愛い可愛いと振り回されているユーノの首はガクガクと揺れていた。
 ジュエルシードによる危険はそうないだろうと言っていたため、とりあえず放置するあかねであった。
「少し考えてみましたが、落ち込みはしないと思いますよ。僕が高町さんを苦手な事は、本人にも伝えてありますし」
「それはそれでちょっと酷いような。でも、なんで?」
「あれはまだ一年生になりたてのころだったんですけれど、高町さんとバニングスさんの喧嘩の仲裁に入って逆にボコボコにされたからです。こちらは手を出せないのに二人は興奮してるから叩くはつねるはひっかくわ。大変でした」
 その割りに今日は手を繋いで走ったりと、わりと普通に接しているような気もしていた。
 苦手というのはただの先入観かもしれないが、急いで直す理由もないのでよしとする。
「それは、本当に大変だったんだな。解る気がする」
「どうして恭ちゃんが解るのかな?」
「い、一般論だ」
 あかねのせいで新たなる火種も勃発しつつ、何時になったら送って言ってもらえるのだろうとあかねは時計を見上げた。
 すでに時計は十一時を回ろうとしている所であった。





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