第十話 どんなに苦しい時でも忘れちゃいけないことなの(後編)
 行方知れずとなった二人を捜索する上で、不確かな情報ながらもあかねが聞こえると言い出したアルフの声は重要なものであった。
 大怪我をしたばかりであるあかねが外へと出る事は反対意見も多かったが、正確な位置はあかねにしかわからない。
 そこで補助になのはとユーノと言う、いつものメンバーがつく事でなんとかアースラからの外出を許される事となった。
 その三人は、今鳴海市の臨海公園の外れの森の中に足を踏み入れていた。
「本当にこの辺りにアルフさんがいるの?」
 信じられないと言うわけではないのだろうが、あまり今のあかねを出歩かせたくないと言う気持ちでなのはは尋ねた。
 なのはの疑問に答えたのは、あかねが歩くのに肩を貸しているユーノであった。
「あかねの人の助けを求める声を聞く力は、多分念話の亜種なんだろうね。誰かを助けたいと強く願っているから、無差別に人の念話や心の声を受信してるんだ」
「あまりその辺りは考えた事もなかったですよ。もう少し歩いた所です」
 しぶしぶと言った感じでなのはが頷き、そして三人はアルフを見つける事となった。
 ただし、その姿はとても無事とは言いがたく、オレンジ色の毛皮を血で染め上げ息も絶え絶えの様子であった。
 一体何があったのか、フェイトは一緒ではないのか。
 直ぐに問いただしたい気持ちを抑えて、まずはアルフへとユーノが応急処置を施しアースラの面々があかねたちも一緒に回収する。
 その予定であったのだが、ここで予想外の人物と遭遇してしまうこととなった。
「あかね、それになのは……っと、アンタ誰?」
「アリサちゃん、それに鮫島さん。わわ、これはあの、怪我してる犬さんを見つけて」
「私も車で帰る途中で血痕を見つけたから、それを追ってきたのよ。あかねもそう言うのに良く遭遇」
 ユーノがアルフへと回復魔法をかけようとした為、一時肩を貸してもらえず木の幹に背を預けていたあかねを見てアリサが言葉を止めた。
 すぐにあかねが失くした左腕を見せないように体をひねったが、一足遅かった。
「あ、アンタ。腕、どうしたのよ。しばらく学校を休むって、一体何してたのよ、なのはも!」
 ここでアリサに遭遇するのは、様々な意味で都合が悪かった。
 今のあかねの状態を母に報告されては、行動が制限されるどころか外出そのものが禁止されてしまう。
 それに一度知られてしまったアリサに嘘をつく事は躊躇われ、嘘そのものもすぐに見抜かれてしまうことだろう。
 目の前で自分に詰め寄るアリサをあかねはまともに見る事ができず、なのはも止める事が出来なかった。
 アリサは純粋に自分達を心配して声を荒げているのだ。
 そんなアリサを止めたのは、弱々しく唸り声をあげて自分の傷の深さを訴えたアルフであった。
「もう、問い詰めてる時間が惜しいわ。鮫島」
「心得ております、お嬢様。さあ皆様も話は後でゆっくりとなされませよ。この犬は当家の専属獣医が看ましょう」
 唯一の大人であるアリサのお目付け役の老人が、屈強にも大型であるアルフを肩に担ぎ上げた。
『少し予定を変更しましょう。このまま貴方達は、そこのお嬢さんの家にお邪魔しなさい。もし二人のご両親へと話が伝わるのであれば、私自らが説明に行きます』
『ここで逃げ出すと余計彼女に心配をかけるだろうし、それが一番だと僕も思うよ。二人は、どう?』
『こうなった以上、アリサちゃんにはちゃんと事情を説明しておきたい』
『仕方がありません。ただし腕の事は僕が自分で母さんに話します』
 リンディからの念話で手早く話を纏めると、三人は前方で振り返り怒鳴っているアリサの後を急いで追いかけた。
 臨海公園を出て道路の脇に止まっていたバニングス家の専用リムジンに乗り込む。
 走り出したリムジンの中は、同い年の子供が四人もいながら耳に痛いほど静かであった。
 すぐにでも問い詰められると思っていた三人はひやひやとアリサを伺っていたが、当のアリサは専属の獣医にでも連絡を取ろうとしているのか携帯を耳に当てていた。
 だが相手が電話に出た所でアリサが口にした名前に、冷や汗が瞬く間に増加させられた。
「あ、すずか? ちょっとね、大事な話があるからすぐにうちに来てくれない? 電話じゃ出来ない話なの。ね?」
「ちょっと、これ以上無関係の人を呼ぶのはまずいんですけど」
「シャラップッ!」
 無謀にもユーノが待ったをかけたが、アリサの剣幕に首をすくませてしまう。
 こうなったアリサには何を言っても無駄だと、叱られたユーノに二人とも同情の目を向けていた。
 すずかとの電話が終わった後も、アリサは聞きたい事を喉で食い止めながらずっと三人を責めるような目で見ていた。
 三人の神経がどんどんと削られる中、アリサの家へと付くとすぐにアルフは待機していたスタッフに連れられていった。
 そしてあかねたちはと言うと、それについて行くことも許されず、アリサが用意させておいた部屋へと連れて行かれた。
 またもや部屋の中が無言と責める一つの視線だけが占める中、十数分後にすずかが部屋のドアを開けて現れた。
「本当だ、なのはちゃん、あかねさん」
 二人の姿をみて直ぐに笑みを見せたすずかだが、あかねの左腕に気付いて言葉を失っていた。
 少し顔色も悪くなっており、気遣ったなのはがすずかを支えて皆が座っていたテーブルの席の一つに座らせた。
「さてと、全員がそろった所で、全部話してもらうわよ。アンタたちに拒否権はない、いいわね」
 魔法やジュエルシードの事まで喋って良いのかという事もあったが、それについてはクロノから二人が他言しない事を理由に許された。
 あらかじめ嘘の容易をしていたのならまだしも、その場しのぎの嘘では確実に話がこじれてしまう。
 特にクロノは今回の事件が終わるまではなのはやあかねと言った戦力を失いたくはなかったのだ。
「あのね、始まりは四人でユーノ君を、フェレットさんを見つけた事から始まったの」
 そうなのはは話せといわれた全てを語り始めた。
 ユーノとの最初の出会い、その夜に始めて封印を行ったジュエルシード。
 あかねが一人でジュエルシードを封印しようとして失敗し、二人が仲良くなる切欠となった二つ目のジュエルシード。
 順調に封印を続ける中で始めてなのはが味わった挫折と、自分へと望んだ成長。
 そしてジュエルシードを集める中で出会ったフェイトと言う名の同い年の魔導師とその使い魔アルフ。
 意見の食い違いから仲たがいし、あかねをなのはが撃ってしまったこと。
 心を決めフェイトと戦う最中に起こりかけた次元震、ジュエルシードを保護、管理しに現れた時空管理局。
 フェイトが残りのジュエルシードを手に入れるために行った無茶と、仲直りの最中を狙われ皆を守ろうとしたあかねが腕を失った事。
 そしてアリサと遭遇する原因となったフェイトとアルフの失踪。
「だいたいこれが全部だよ。ごめんね、隠してて。でもすんなり言える事でもなくて……」
「ちょっと待って、謝るのは後。混乱してる。魔法? 管理局? 別の世界?!」
「あかね君の腕の事もあるし、なのはちゃんが嘘をついてない事は解るけど。信じられない」
 当たり前だが理解に苦しんだ二人は、懸命になのはから聞かされた内容を理解しようとしていた。
 いくら聡明な二人といえど、まったく未知の世界の話については理解に時間がかかるようであった。
「実際に見せてあげた方が、とりあえず信じられると思うよ。あかねはまだ無理しない方がいいから、なのは」
「うん、ここまで喋っちゃったら、見せるぐらい良いよね」
 なのはが席を立つと、少しテーブルから離れて首に下げていたレイジングハートを宙へと放り投げた。
「レイジングハート、お願い」
「Stand by ready. Set up」
 何時もと変わらないレイジングハートの機械音声の後、なのはが桃色の光に包み込まれた。
 突然の事態に目を腕で庇ったアリサとすずかは、次の瞬間には制服ではなくバリアジャケットをまとい杖を持ったなのはの姿に言葉を失っていた。
 こんな事があって良いのかと、何故か二人とも椅子に深く腰掛けだるそうにしていたあかねへと視線で問いかけてきていた。
「夢を見ているわけでも、催眠術に掛かっているわけでもありません。僕もデバイスは持っています。ゴールデンサン、適当に喋ってください」
「Forget everything if friend's word is unbelievable. And, stop the friend」
「なによこの偉そうな石っころは。私たちはなのはやあかねの事を疑ってるんじゃないわ。心配してるだけよ!」
「How? It is possible to say even very much in the mouth」
「ムーカーツークー! あかね、常時こんなんと一緒に居てよく平気だね。私なら一時間と経たず叩き割ってるわよ!」
 別々の言語で口喧嘩されたあげく、詰め寄られても困ってしまうあかねであった。
 いい加減ゴールデンサンの口の悪さには気付いていたが、何を言っているかは相変わらずさっぱりだからだ。
 全く関係ないことに、アリサがバイリンガルであった事に素直に凄いと思ってさえいた。
「アリサちゃん、ちょっとお話ずれてるよ。それにその子はずっとあかね君を守ってきてくれたんだよね。きっと良い子だと思うの」
「That lovely girl says it is good. It differs from this carping girl」
「誰がやかましいだけよ。すずかにだけ甘い所が良く似てるじゃないの」
「ゴールデンサン、少し黙ってください。話が進みません」
 何故かじと目で見られたのはあかねであり、聞かない振りをしてゴールデンサンを注意する。
 できれば巻きつけた腕から外してポケットに放り込みたいが、一人では無理なため手の平に押し込んで握って黙らせる。
「とりあえず、なのはやあかねから伝えられるのはこれで全部だよ。もちろん僕からも。それで二人はどうしたいの? 二人を止める? それとも笑顔で見送る?」
 ユーノが尋ねたとおり、大事なのはそこであった。
 二人が何をしているかも、何のために行動しようとしているかも聞いた。
 聞いた上で考え自分達の行動を決めなければならない。
 意外にも先に答えたのはすずかであった。
「私はなのはちゃんとあかね君がしようとしてる事が危ない事だから止めたい。実際、あかね君は腕までなくして……友達の縁を賭けても止めたい」
「すずか、何もそこまで」
「でももし笑顔で見送って二人がもう二度と私たちの前に現れなかったら、私は止めなかった事を後悔する。大切なお友達だもん。大切だから、危ない事をして欲しくない」
「そう言われると、そうなんだけど。二人はフェイトって子を助けたいのよね? 友達になれるかもしれない子を」
 迷いなく頷いた二人を見て、行かないでくれとはいえなかった。
 二人が友達となれると言った以上、その女の子はいずれ自分達にとってもかけがえのない友達になるはずである。
 友達のために頑張ろうとする二人を、友達だから行かないでくれと止めるのは矛盾である。
 笑顔とまではいかないまでも頑張ってきてと見送るぐらいはしなければならない。
「ただし、二人ともこれ以上余計な怪我をしない事。それでフェイトって子をしっかり助ける事。そう約束してくれれば、とりあえず今はまだ二人の親には黙っておいて上げる」
「本当に、怪我だけは気をつけてね。もしも二人に何かあったら、考えるだけで泣きそうになるんだから」
「約束するよ。ちゃんとフェイトちゃんと一緒に戻ってくる」
「なのはとフェイトさんは必ず守りますから。僕の意思で、僕だけの想いにかけて」
 どうにか丸く収まりそうな様子を見て、一人ユーノはほっと息をついていた。
 今は管理局が手を貸してくれ、ジュエルシードの殆どを回収できていたとしても、やはり二人に離脱される事は複雑な気持ちであったのだ。
 せめてこの件が全て終わるまではと思っていると、ふいにアリサの瞳が自分を見つめていることに気がついた。
 何だろうと正面から視線を交差させていると、アリサが思いも寄らない台詞を口にした。
「所で、今更なんだけどアンタ誰? それに厄介ごとを持ってきたユーノは何処にいるの? まさかとは思うけれど、なのはの家でのほほんと事件が終わるのを待ってないわよね?」
 アリサの素朴な疑問に、ここでもかとユーノは青ざめた。
 おそらくはすずかも含め、発端のユーノがフェレットであり目の前の自分だとは気付いてすらいないのだ。
 正直に言うべきか、誤魔化すべきか迷うよりも早くあかねが喋ってしまう。
「この人がユーノ・スクライア。あのフェレットの正体ですよ」
「ちょっと、あかね!」
 怪我人であるあかねに手荒いことも出来ず、止める事は叶わなかった。
「あのフェレット? ちょっと待ってね、フェレットよね。ペット扱いしてた……」
「フェレットがユーノさんで、ユーノさんがフェレット」
「あ……あ…………」
 このパターンはまずいと逃げ出そうとしたユーノをアリサが紙一重で捕まえることに成功した。
 襟首を捕まえられてなお逃げようとするユーノをしっかり掴み、逃げすまいと押さえ込む。
「逃げようったってそうは行かないわよ。いたいけなフェレットの恰好での悪行三昧。挙句の果てに温泉で女湯にまで!」
「悪行三昧って、僕は最初あかねについていこうとしたのに、アリサが勝手に僕を連れて行ったんだろ!」
「言い訳まで、なのはとりあえずなんかこう魔法で縛り上げて!」
「え、あ……バインド?」
 なのはの疑問系の命令にもしっかりレイジングハートが答え、ユーノを何重にも縛り上げた。
 アリサはすかさずユーノを床に転がし、その顔をまじまじと見つめ始めた。
 これから何をされるのかビクビクと脅えるユーノは、なにかいけない趣味に目覚めさせてくれそうな程に可愛く見えた。
「まあまあね。アンタ、頭はいいの?」
「質問の意味がわかり」
「質問を質問で返さない。アンタにあるのは答える義務だけで、質問する権利はないのよ!」
「い、一応スクライアの一族は遺跡発掘や歴史調査が得意な一族で、僕も相応の教育を受けてます。と言うか、ジュエルシードを発掘したのは僕です」
 答える間にも一応あかねに念話で助けを求めたが、そもそもその念話が受信されることはなかった。
 つまり、あっさりと意図的に見捨てられた。
「頭の方も問題なしね。身長はこれからだろうし、後問題は……すずか、これいる?」
 物のようにアリサが言っているが、正確に意味を察したすずかは真っ赤な顔でぶんぶんと顔を横に振っていた。
「被害者同士、意見の一致はみたわね。ユーノ、とりあえずアンタ今から私のフィアンセね。乙女の肌をじっくり見た罪は、一生をかけて償ってもらうわよ」
「ひどい、僕の意思は。僕だって少しぐらい恋焦がれてる子ぐらい」
 女の感とでも言おうか、ユーノの言葉を聞いてなのはへと振り返ったアリサは直ぐに留めの言葉を放ってきた。
「そっちは多分いずれ売約されるから、諦めなさい。この私のフィアンセよ、何が不満なのよ」
「いきなり縛られて婚約を強制されてどうやって好感を抱けって言うんですか!」
「とりあえず鮫島辺りから、地盤を固めに行くわよ。さすがに違う世界の人と婚約とか言い出したら、パパが不安がるだろうし」
「僕の意思は、僕の意思は。三人とも見てないで、アリサを止めてください!」
 ずりずりとユーノが引きずられていく様を見せられて、確かに誰一人それを止めようとはしていなかった。
 すずかはまだ裸を見られていたことが後を引いて恥ずかしそうに俯いているし、なのははアリサの積極性を少しだけ羨ましそうにみていた。
 そしてあかねはと言うと、思わぬライバルの脱落にテーブルの下でガッツポーズをしていたりする。
 こうして一時の平和な時間は過ぎていき、あかねたちは今日一日だけアリサの家にお世話になることになる。





 早朝、アリサの家で朝を迎えたあかねは、すずかの家と同じぐらい広い庭に一人たたずんでいた。
 背中に屋敷を、手前には植木と呼ぶには大きな森を前に人目のつかない場所である。
 右手でそっと触れた左肩は、未だすさまじい痛みと熱を生み出しているが、なんとか一人で立って歩ける程度には回復できた。
 腕に巻かれたゴールデンサンを振り子のように揺らし、そのまま手の平で掴み取る。
「ゴールデンサン、セットアップ」
「Stand by ready. Set up」
 空に上ろうとする太陽とは別に、小さな太陽が生まれる。
 その太陽に包まれたあかねは、黒い上下の服に金色のコートを纏い始める。
 コートの長袖に関しては、律儀にゴールデンサンが左肩から直ぐの場所で一つ結びにしてくれた。
 特に意味はないが、ファッション的な問題だけである。
 変身を終えたあかねは、自分の姿を見回して自分の魔力が回復したことを確認する。
「よし、魔力だけはとりあえず……あとは体調だけど、こっちは直ぐには無理ですね」
「そんな悠長な事を言ってもらってちゃ困るよ」
 満足げに呟いたあかねに茶々をいれたのは、体に包帯を巻いたまま狼の形態で現れたアルフであった。
「昨日の夜も話したけれど、一刻も早くプレシアの元からフェイトを助けて欲しいんだ。向こうで何があったのか詳しい事一つ言えないのは悪いと思うけど、信じて欲しい。私が考えてるのはフェイトの事だけなんだ」
「アルフさんがどれだけフェイトさんを大切にしているかは解っているつもりです。だからフェイトさんも僕やなのはを信じてください。フェイトさんは必ず救い出します。クロノさんたちの準備が整い次第、その時の庭園という場所へ向かいます」
「それが悠長だって言ってるんだよ。出来るなら今すぐにでもいっとくれよ!」
「アルフさん、約束は守ります。けれど闇雲に動けば良いってものでもない事は、身をもって知ったでしょう? お互いに」
 プレシアの攻撃から闇雲に皆を守ろうとしたあかねは、片腕を失った。
 あの場合は全員で逃げつつ協力して防御魔法を多重で張るべきであった。
 一時の感情でプレシアの元へと向かったフェイトは捕らえられ、アルフは重症を負わされた。
 アースラに、時空管理局に保護を求めたまま協力という形でプレシアを捕らえ、それから会話なりなんなりするべきであった。
 特にあかねは以前クロノに助けることと暴れることとは違うと教えられていた。
 今までずっと実践できなかったが、それはその言葉の意味を理解していなかったからだ。
「解ったよ。少しでも安全にフェイトを救いたければ、それなりの態勢を整えろって事だね。まどろっこしいけれど、アンタの言う通りだよ」
「今は出来るだけ迅速に態勢を整えることです。僕とアルフさんは体力の回復をしなければいけません」
 そうしなければフェイトを救い出す作戦から外されかねない。
 落ち着いて物を考えるだけで、大きな差があると思っていたクロノに少し近づけた気がしていた。
 そう思うと、なんだか自分が凄く成長できたような気がしてならなかった。
 理想の父ではなく、クロノを目標にするのが一番かもしれないと新たな目標をあかねが掲げていると、背後の館の二階からなのはの元気な声がかけられた。
「あかね君、おはよう。アルフさんも」
「おはよう、あかねさん」
「おはようございます、なのは。すずかさんも。アリサは寝坊ですか?」
 三人一緒の部屋で寝ていたはずなのにと思い聞いてみると、一度窓から引っ込んだなのはとすずかが姦しい悲鳴をあげた。
 一分ほどキャーキャー騒いでいた二人は、落ち着いたのか再び顔をだした。
「ユーノ君を起こしに言ったよ。おはようのキスをしてみるんだって」
 それ伝えて再び二人は部屋の中へと引っ込んで騒ぎ出した。
「元気な子たちだね。あそこまでいって欲しいとは言わないけれど、フェイトもいつかあんな風に笑って欲しいよ」
「なのはたちが十分引っ張ってくれますよ。さあご飯を食べてから、一度アースラへと戻りましょう。フェイトさんの救出に関する詳しい話をそこでしましょう」
「ああ、そうだね。待っててね、フェイト。出来るだけ早く行くから」
 フェイトを救い出す、そう口にした二人であったが、この後フェイトの方から襲撃してくるとは夢にも思わないことであった。


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