魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate
Stage11「クロノ・ハラオウン」



interlude



士郎くんが気絶した直後、士郎くんの身体が発光した。

「これは・・・回復魔法?」

気絶する直前に自分に回復魔法をかけているらしいとユーノくんが言っている。

「足しになるかはわからないけど」

そう言って、ユーノくんも回復魔法を重ねてかけた。

二つ同時に回復魔法がかかっているためか、確実に傷が塞がっていった。

私は安堵した。

「あ・・・あの・・・」

不安そうな顔をしたフェイトちゃんがそこにいた。

先程まで茫然自失していたが、少しだけ回復したようだ。

「し、士郎は大丈夫?」

「傷の方は士郎の回復魔法が強力だから、多分大丈夫。だけど、血がだいぶ失ったから、安静にしないと」

ユーノくんの返答で少しだけ、表情が明るくなるフェイトちゃん。

そして

「ごめんね・・・士郎」

と言って、涙を流した。そのまますすり泣いて。

アルフさんが抱きしめて。

「悪いけど、帰るよ。・・・えっと、なのはって言ったっけ?」

「はい」

「ああ・・・ま、眼を覚ましたら、士郎にお礼は言っておいてくれ」

頭を掻きながら、その場を去ろうとするアルフさん。

出て行く直前・・・

「そうだ。ついでにこうも伝えておいてくれ」

そう言って、一拍置いて





「自分の命をもっと大切にしろ。この大バカ」





その言葉は私の胸に残った。





interlude out





side―Emiya Shirou

これはあの日の夢の続きだ。俺と遠坂が英国で二人で歩いていたときのことだ。

「わたしね・・・あんたのお父さん・・・『衛宮切嗣』を恨んでいるわ」

いきなり何を言われたのかがわからなかった。

だが、言われたことを知覚した瞬間、俺は遠坂の目を睨み、手を出そうとした。

それで気付いた。遠坂は俺と同じ位睨んでいることに。

「士郎が怒るのはわかってるわよ。だけどね、今更だけど言わないと気が済まないのよ」

「・・・どういうことだ」

遠坂が・・・いや、遠坂だけでなく、ほとんどの知り合いが俺に対して『自分の命は大切にしろ』という内容の言葉は聞いている。

だが、それでも未だかつて親父のことを悪く言うことはなかった。

はっきり言って認めるわけにはいかない。

「あんたは自分の命よりも、他の人の命の方が大事なのはもう分かってるわ。今更、変える事もできないだろうし」

悔しいけど。と洩らした遠坂。それを見て、少し罪悪感があるが、それでも認めるわけにはいかない。

「士郎さ・・・そんなにお父さんのことを尊敬してる?」

「あたりまえだ」





「なら、気付かない? 士郎がこれから人を救えば、その人にとって尊敬される人になるのよ」





俺は答えることができなかった。

俺にとって『衛宮切嗣』は正しく目標であり、救ってくれた。何者にも代えられない人だ。

俺がそれになる?

「まったく・・・世の中は士郎の視点だけじゃないの。あんたの信じる正義が他の人に合わないことだってあるわ」

俺は呆然として

「でも、これだけは言える。士郎が救ったその命は大なり小なり感謝の念がある。士郎が『衛宮切嗣』に受けたのと同じようにね」

遠坂を見つめて





まったくすごい女だ。





と思った。常々思ってることだが、今日も思った。

「あとは・・・そうね。契約よ」

「契約?」

「そ。他人の命だけじゃなく、自分の幸せも求めなさい。いつか言ってたでしょ。『頑張った人が報われないなんて嘘だ』って。
 それを自分自身で実践しなさい」

俺は頷いたが、遠坂は信用してないような視線をして

「もし、今の契約忘れて無茶したら、どこにいようと見つけてボコボコにしてやるからね」

「ははは・・・肝に銘じておくよ」

口調こそ明るかったが、目が悲しそうだったぞ? 遠坂・・・





・・・う。眼を覚ますと、そこは俺がお世話になっている高町家だった。

「・・・あの後、どうなったんだ?」

最後の力を振り絞って、回路に魔力流したのは覚えている。

・・・そうだ。怪我の状況はどうだ?

とりあえず、簡単に触診してみる。

「・・・傷はほぼ完全に塞がっているか・・・アバラは、治りかけかな?」

微妙に痛みが残っているのはアバラだけではない。

というか、全身が痛い。

傷は治っても、こういう部分は完全には治らないらしいな。

加えて、魔力も減ったままだ。

まぁ、宝具二つを同時に展開し、最後に自己治癒までしたのだ。それぐらいは当然だろう。

記憶が確かなら、あの衝撃波で魔力が削られたような気がするし。

「あ・・・」

そうだ・・・思い出してしまった。

おもいっきりなのはを泣かせてしまったことを。

どうしよう・・・





「あら? 起きたのね、士郎くん」





と思っていたら、桃子さんが入ってきた。

入ってきたのだが・・・





「ふふふ・・・士郎くん・・・なのはからちょっとだけ事情を聞いたわ」





あれ? なんかやばい予感がもの凄くするよ。具体的には遠坂が本気で激怒した時と同じくらい。

笑顔が眩しい。正直、この状況じゃなかったら、見惚れたいくらいだ。

「さて、士郎くん・・・なのはをかばうために自分の身を前に出したんですって?」

今の状況じゃなかったら、色々と口に出したい気持ちで一杯です。

「士郎くんのそういうところはいい所かもしれないけど、他人のことに夢中になっちゃって、自分のことをないがしろにして・・・」

えっと、ごめんなさい。それは俺の友人に何度も何度も指摘されています。

それに、これでもちょっとだけマシになったんです。

「聞いてるの!? 士郎くん!」

「は、はい! ゴメンナサイ!」

な、何故だ。俺の最大の天敵である『あかいあくま』よりも強いぞ!?

こ、これが母性なのか?

「士郎くん・・・私も詳しいことは聞いてないけど、君は自分のことも少しはみないとダメよ」

・・・今日確信した。桃子さんに逆らうのは絶対にダメ。

それにしても、なのははどこまで喋ったんだ?・・・





結局、俺は30分程お説教を頂いてしまった。

いや、すごく辛いです。ホントに。





で、少しお怒りが冷めたので、俺はなのはのことを尋ねてみた。

「なのはは士郎くんの看病するって言ってたけど、明日も学校だから休ませたわ。
 大変だったんだから」

「そ、そうですか」

なのはに外傷はないようだ。

外傷があったら、もうなのはは無断外出は出来ないだろうし、何よりも士郎さんとの約束がある。

守れて良かった。

「それで・・・確認してもらったんだけど、どういうことなの? 血が足りてないって」

どういうことって・・・言えないよな。だって、端的に説明すると

なのはと他3名を助けるために、自分の体を犠牲にして行動しました。なんて。

「でも、みんな驚いていたわね。明らかに重症のように感じるのに、怪我があまり見当たらないって」

う・・・流石に御神の剣士はごまかせないか。

「えっと・・・すいません。いつか、話します。だから、もうちょっと待って下さい」

「・・・なのはの無断外出と関係があるの?」

俺は迷ったが、真剣な表情をしている桃子さんを誤魔化すのは良くないと思い、頷きを返した。

「・・・わかりました。なのはが言う時まで待ちましょう」

「ありがとうございます」

「本当は親に頼って欲しいけど・・・ね。なのはも決意してるみたいだしね」

そういって、一拍の間。

「それと・・・士郎さんと約束したことの他に、もう一つだけ、約束を追加します」

なんだろうか? なのはを守ることの他?

「士郎くんも無茶をせず、無事に帰ってくること。この約束・・・守れる?」

それは・・・本当にありがたいことだ。

だけど、多分俺は守れない。それが分かるから・・・

「約束はできませんが・・・鋭意努力します」

「努力してね。それと」

桃子さんが俺を抱きしめてくれて

「あなたが悲しむとなのはだけじゃない。私も士郎さんも、恭也や美由希も悲しむことを忘れないで」

それで、この人の手が震えていることに気付いた。

そうか・・・ここにも、俺のことを想ってくれる人がいるのか。

「ありがとう・・・本当にありがとうございます」





今日の桃子さんのお説教は終了したのだが・・・

翌日。士郎さん、恭也さん、美由希さん、そしてなのはがすでにテーブルに陣取っていた。

・・・しかも、ほぼ全員怒っている。例外はなのはでまだ泣きそうな感じがする。

「・・・さて、士郎くん」

「はい」

「なのはから少しだけ事情を聞いた。娘を守ってくれてありがとう、と言っておこう」

言葉とは裏腹に、感謝の念がすごく低いです。

いや、感謝はしているのだが、それ以上に怒っているというのが正しいのだろう。

「だが・・・あの時の約束を守ってくれたとは思うが、まさか君の身を全く考慮外にしているとは予想してなかった」

たぶん、なのはは状況を全て話したのだろう。

魔法という重大単語こそ省いているのだろうが、状況だけ聞けば予想はついているのだろう。

「君は君が思っている以上に想われている。そのことは忘れちゃダメだぞ」

本当に温かい人たちだ。

だからこそ、俺はなのはを守りたかった。だが、結局体は守れたが、心は傷つけたのだろう。

あれだけ、泣かしたのだ。怒られて当然なのに、俺は許されてしまった。

「・・・今日は学校を休みなさい。いいね」

しょうがないか。まぁ、状況整理にはちょうどいいのかもしれないし。

・・・ただ、猛禽類の表情をした恭也さんは極力視界から外しておいた。





さて、平日だというのに俺は完全休暇を頂いている状態だ。

ちなみに、今日の食事の用意を手伝おうとしたら・・・





「ふふ・・・今日はしっかりと休んでね」





・・・うん。背筋が寒くなったのは俺だけの秘密である。

ダメだ。絶対に動けない。さて、どうするか。

・・・昼まで動かないことにしよう。

だって、少しでも動こうかと思ったら、背筋が寒くなるんだもん。

・・・で、結局俺はなのはの学校終了する時間まで動かずに、今後の動き、ジュエルシードの考察を行った。





interlude





なのはが元気がない。

いや、温泉行く前よりもさらに酷い。

考えられる理由は・・・あいつか。

「なにやってんだか・・・」

ぼやきの言葉が出たが、しょうがない。

だけど、幾らなんでも普通じゃないわね。

前の状態なら、怒る位はできたかもしれないが、今の状態で怒るとすぐにでも泣いてしまいそうだ。

「・・・どうしよう? アリサちゃん」

「・・・なんとかしたいけど、今は何かしただけで、すぐ泣きそうよね」

すずかも頷く。私たちの仲は決して浅くない。

だからこそ、今のなのはの状態が、いかにまずいかがわかる。

とはいえ

「聞かないわけにはいかないわよね」

憎まれ役になるかもしれないが、話を聞こう。

それぐらいしかできない自分に腹が立つが、やるべきことはしっかりやろう。





で、話を聞いたのだが・・・

どうしよう・・・助言ができない。そりゃ、悩むわ。

好意持ってる異性が何かに巻き込まれて、下手したら死んでたかもしれないなんて。

しかも、自分を庇われてだなんて・・・ドラマかなんかではありそうだけど、実際に起こるとは。

今のなのははダウナー状態でまずい。しかも、話したらさらに落ち込ませてしまった。

どうにかして、立ち直らさなければ・・・

「ねぇ、なのはちゃん」

すずかが話しかける。

「今、なのはちゃんが落ち込んでるけど、それだけでいいの?」

こういう落ち込んでるときは、あたしのような強気で攻めるのではなく、すずかのように優しさで攻めた方がいい。

あたしはそう思ったから、すずかに託した。

「なのはちゃんが落ち込んでる理由はわからないけど、それを悔やんでるだけじゃダメだよ
 そのことを教えてくれたのはなのはちゃんでしょ」

おお。なのはが顔を上げた。

「だいじょうぶ。今、悩んだり悔やんでいることは直していこう。そうすれば、今回のようなことは少なくなるはずだよ」

少し顔を上げたが、また俯いた。

だが、すずかがきっかけを作ってくれた。それにすずかもあたしにウインクしてくれたし、ここからはあたしの出番だ。

なのはの心に火を灯してあげようじゃないの。





ま、紆余曲折あったけど、なんとかなのはは元気を取り戻すことに成功したわ。





interlude out





で、桃子さんのプレッシャーをなんとか跳ね除けて、俺は現在散歩中である。

まぁ、昨日の今日だから無茶はいけないな。

あ。そういえばフェイトに生存報告ぐらいはしておこうか。という風に思う。

なんとなくだが、フェイトも精神的には弱そうな娘だろうと思ってるし。

というわけで、まずはいそうな公園に向かおうとした。

したのだが・・・

「? なんか視線が強くなったな」

先程から視線を感じる。まだ、物騒な感じはしてないから、放っておいているのだが

(・・・うーん。昨日の今日だからなぁ・・・あまり戦闘はしたくないんだが)

一応、午前中に体は勝手に修復してくれたようだが、まだ魔力は完全に回復していない。

加えて体もちょっと痛むから、出せても70%ぐらいか?

今日一日乗り越えれば、なんとかなるかな? という感じだったのだが・・・

(こちら側で尾行されるようなことをしたのは、今のところはジュエルシードのみ・・・やばいなぁ)

まず管理局がでてきたのかなぁ。と思うのだが、まだ確定ではない。

それに感じる気配は一人だ。

聞いた話では武装局員は隊ごとに管理されているとのことだから、かなり多いはずだとも聞いているし。

(・・・話し合いと行きますか。頼むから、話が通じる人であってくれよ)





で、海鳴公園のベンチに座っている。

自販機で相手の飲み物も購入して、準備は万端というところだろうか。

「・・・隣、いいかい」

「ええ。遠慮せずにどうぞ」

見ると、そこにいたのは黒ずくめの少年だ。

利発そうな顔をしており、瞳には知性の光が宿っている。

一見、なのはより少し上くらいかと思ったが、もっと上みたいだ。

「君に聞きたいことがあるのだが」

「・・・どのようなご用件でしょうか?」

「ロストロギア・・・ジュエルシードのことについてだ」

確定。こいつは管理局の人間だ。

だが、何故俺に気付いたのだろうか。

シラを切って、様子を見よう。

「ろすとろぎあ? ・・・なんのことかわからないのですが」

「前回のジュエルシード封印時に異質な魔力反応を感知した。そこから追跡調査を行ったところ、君に辿りついたのだが」

ち。すでに状況証拠は掴まれたか。

だが、それでさらに疑問が出た。

「・・・いくらなんでも、調査の時間が速すぎると思います。あらかじめ、この世界だと予想していないといけないと思いますが」

「ロストロギアを運搬していた際の事故の調査の調査をしていたのだが、人為的な可能性が指摘されてね。
 漂着した可能性が高い世界に挙げられていたからだ」

なるほど・・・人為的ということは、恐らくフェイトの後ろにいる人物か組織が有力だろう。

俺は管理局の介入はないだろうと考えていた。

何故ならば、多くの世界があるのだから、この世界に来たのは、何かしらの特別な理由がなくてはならないはずだから。

だが、その特別な理由がユーノから聞いていた情報に堂々とあったのだ。

少し前まで、楽観的に考えていた自分に拳を叩き込んでやりたい。

「それに前回の封印時に小規模な次元震が観測されたため、間違いがないという結論になったんだ」

次元震・・・聞いたことがない単語だが、おそらく前回の暴走が関係しているのは間違いないだろう。

なるほど・・・その次元震の観測と予想された漂着ルート。その二つが原因で管理局は介入したと。

「さて・・・まだ、何か反論はあるか?」

「事件に関わったのは認めますが・・・現時点で俺が何かの犯罪に関わっていると考えていますか?」

これだけは、はっきりさせておかなければならない。

そうでなくても、俺は追われる理由にはこと欠かないのだ。

余計なモノをこれ以上持ちたくない。

「それはこれから次第だ。君がジュエルシードにどのように関わったかを聞かせてもらいたい」

・・・さて、俺はどの程度までが犯罪かがわかっていないのだが。

しょうがない。最初の一歩を踏み出してみよう。

「最初だが、俺はジュエルシードが起こした事件に巻き込まれてしまったため、やむなく対象に戦闘を行った」

「・・・管理外世界での戦闘自体が違法なのだが、知らなかったことと、ジュエルシードの件がある。
 その辺りは融通が利くだろう」

この時点で有罪が出たらどうしようかと思ったが、なんとか良しとしよう。

思ったのだがこの少年。硬いがある程度のところは融通が利く様に見える。

だが同時に、それでもベストよりベターな選択をするように思える。

そこらへんはアーチャーに似てるが、こいつはアーチャーではない。だから、そこまで嫌悪感はまだ持てない。

「その後、ジュエルシードにはどのように関わっている?」

「ジュエルシードは俺の考えでは1級の危険物と見ている。だから、封印に協力しているのが現状だ。
 後、俺自身に所有権があるわけじゃない。そっちの交渉はわからないからな」

あくまでもあれはユーノの一族が発掘したものなので、そこらへんの決定権はない。

だからこそ、そっちの交渉はユーノに任せよう。

「ふむ・・・そちらの話は本人に確認させてもらう。すでに、スクライアの一族には打診してあるからね」

俺は呆けてしまった。

「意外か? 君自身も認めていただろう。1級の危険物だと。そんな危険物を発掘したが、事故でばら撒いてしまったと聞いたんだ。
 一族に確認を取るのは普通じゃないか」

確かにそうだ。他の世界の法律はわからないが、一般に所有権はあるのだ。

発掘したものがロストロギアでなければ、今頃はスクライアの一族が管理しているはず。

今回はロストロギアを発掘したため、管理局に指示を仰がなければならなくなっただけのことだ。

ロストロギアは時空管理局が管理するのだから、不手際があれば当然連絡が行くに決まっている。

管理局とスクライアの一族で交渉は終わっているのか。

ということは・・・ユーノは独断専行で動いているということか。

「・・・悪いが、そっちは任せた。何度も言うが、俺はそっちの方面は期待しないでくれ」

「そうだな。で、無視してるのかもしれないが、なぜ次元震が起きた?」

やっぱり来たか。少年はまだ話してくれる。情報はやはり欲しい。

「ジュエルシードは次元震を起こすためのロストロギアである可能性が高いという説があるが、まだ発生条件が確かめられていない」

その推測が正しかったとして、実際に発動させるのは以ての外だろう。

確かめていたとしたら、そんな存在を俺は認めるわけにはいかない。

それにしても・・・その可能性が高いというのに、魔力が汚れていないのは何故・・・

「あ・・・」

「どうした?」

「いや、なんでもない」

そうか。魔力が汚れていないはずだ。

目的が次元震なのだから、あれは正しく作動していたんだ。

むしろ、願いを叶える時の方がおかしかったのはそのためか。

最終的に正しく「世界を破壊する爆弾」になるのだろう。そして、時空管理局の推測は正しいことが分かってしまった。

ただ、まだ正しく発生させるのに、なんらかの条件が必要な気がする。これは後で考えてみよう。

「ジュエルシードの暴走に関しては・・・スクライアの他に現地の魔導師と協力しているのだが、もう一組魔導師と争った結果だ」

「ほう」

「現地の魔導師もだが、相対した魔導師もジュエルシードに関して詳細は知らないようだ」

でなければ、あんなことは起きなかったはずだ。

そこだけは確信を持って言える。

「・・・では、理由もなく集めていると?」

「そうじゃない。恐らく、その魔導師の後ろに何かが居て、そして輸送時の事故も背後の者が起こしたと俺は考えている」

少年も考え

「なるほど・・・その魔導師に関しては、その後ろにいる何者かを目的としている。そう考えるほうが自然かな?」

やはり頭の回転が速い。

俺の言いたいことは大体把握したようだ。

「ふむ・・・では頼みがあ・・・!?」

これはジュエルシードの魔力反応!?

俺が感知できる以上、ジュエルシードが覚醒したか?

それになのはとフェイト、加えてユーノとアルフもいるっぽいな。

「近くか・・・悪いが、一緒に来てもらうぞ」

「言われなくても・・・あれ? あんたの名前は?」

そうして、俺たちは名乗りあった。

「クロノ。クロノ・ハラオウンだ」

「俺は士郎。衛宮士郎だ」

そうして、俺たちは現場に急行した。

今思うと、これが腐れ縁の始まりだったんだろうな。





で、急行したのだが・・・

やばい・・・前回と同じように全力で争っているなのはとフェイトが見えるのだが・・・

魔力が漏れてしまい、いつ暴走するかすでにわからん。

そして、ジュエルシードは魔力を吸っていて、現在危険な状態だ。

なのはとフェイトのデバイスが、前回と同じように交差しようとしている。

だから・・・!

「悪いな! クロノ!」

「なに?」

俺はクロノの服を引っ掴み・・・





ブンっ! と全力でクロノを投擲した!





「な、なにぃぃぃぃぃぃ!?」

叫びながら、そして空気を切り裂きながら、二人の間に急行した。

「くっ!?」

必死に体の制御を取り戻そうとするクロノ。

そして、二人のデバイスの一撃をクロノは受け止めた。

「そこまでだ!」

うん。格好良く叫んでいるつもりだろうけど、色々台無しだぞ。

「・・・色々とそこの大バカに言ってやりたいことはあるが、僕は時空管理局『執務官』クロノ・ハラオウンだ。
 直ちに戦闘を停止し、時空管理局に従ってもらおうか」

そして、二人は後方に下がった。そして、フェイトが口を開き





「あの・・・忠告ですが、あの男の子を常にマジメな子だと思っていると、しっぺ返しが来ますよ?」

「うるさいな! 今、実感したよ!?」





フェイト。中々失礼だぞ? 俺はこんなにもマジメだというのに。

おっと。フェイトはそれを隙と見て、封印しようとしたが、クロノの動きの方が速い。

ワンアクションで魔法が放たれた。

で、俺はと言うと、脚力を強化してフェイトを引っ掴み、その魔法を回避した。

「・・・どういうつもりだ?」

「そっちの法律がどうかは知らんが、罪状も言わずに問答無用で攻撃するのはまずいと思うぞ」

「だが、停止するよう求めた。だというのに、封印処理を行おうとしたが?」

「その前に、俺との話し合いでジュエルシードについて詳しく知らんということを教えたはずだ。
 必要最低限の情報を提示せずに従えというのは難しい。それに最後の台詞は任意同行を求めるもののはずだ。
 なおさら、情報の提示は必要だ」

そう言うと、クロノが表情を歪めた。

組織というのは、そういう規律を定めなくては立ち回らないのだ。

大多数の人間が勝手にやる。しかも、世界が違えばルールも違うのだ。だからこそ、こういうルールはしっかりと決めているはずだ。

今回は、ジュエルシードの状態が悪くなっていたということもあり、クロノが焦ったためだろう。

だから、俺としても間違ったことは言っていないはずだ。

ちなみに、フェイトは固まっていて、何も耳に入っていないように感じるが、それは些細なことだ。

「・・・議論の最中悪いけど、ご主人様は返してもらうよ」

アルフの声を聞こえた瞬間、俺は脇腹狙いの蹴りを防御したが、吹き飛ばされた。

「ぐ!?」

しまった。注意力が散漫していたか。

それに、今の衝撃でアバラがまずい。

「・・・悪いね。けど、やっぱり完治してなかったみたいだね」

今のアルフの目は冷たく、主人以外のことは全く頭に入っていないのだろう。

そして、俺の怪我の具合を知られたか。

1日あれば、問題なかったのに。

「じゃぁね・・・士郎」

と、冷たい声が俺の耳に響き、そしてアルフはフェイトを抱えて撤退した。

クロノが先程の議論を思い出したのか、砲撃魔法ではなく、拘束魔法を唱えようとしたが、なのはが間に入り、構成は霧散した。
(ちなみに、ユーノから魔法の対処のため、プログラムの構成の読み取り方法は教わっている)

「く・・・君もか」

「フェイトちゃんに攻撃しちゃダメ!」

「いや、今のは拘束魔法だから。構成を読み取る力が甘いな。訓練の強化を命じる」

なのはの『にゃー!?』という悲鳴が響いたが、俺は無視する。

まぁ、これは動体視力の問題でもあるから、そう簡単に鍛えられるとは思えないが。

悪いが、今の俺にそんな余裕はない。

「・・・今回は、僕の落ち度もある。その件は了解しよう。だが・・・完治していないとはどういうことだ?」

前回の封印時の状況はぼかしていたが、アルフの台詞でバレてしまった。

くそ。あの肉食娘め・・・

「いや、前回の戦闘でアルフに不意を突かれてな。それで怪我を負ったんだ」

「先程の咄嗟の不意打ちを防御していたのにか? 僕も体術は嗜んでいる。正確な強さはわからないが、あの使い魔より上のはずだ。
 嘘が下手だな」

悪かったな。なのははショック状態から戻ってきて

「し、士郎くんは・・・前回の封印で・・・ジュエルシードの魔力に吹き飛ばされ・・・」

「なのは!」

その情報はまずい。俺の情報はなるべく与えたくないのだ。

それに・・・

「・・・なるほど。君たち3名をアースラに同行してもらいたい」

これで、俺が管理局の懐に入り込む口実を与えてしまった。

・・・なのはの善意が裏目に出てしまったか。

「・・・俺は断りたいが・・・」

「ロストロギアで吹き飛ばされたんだ。魔力が自然回復するかは未知数のはずだ」

う・・・流石に回路を『アヴァロン』に接続すれば問題ないだろうが、リスクが高すぎる。

今後、さらに加熱しそうな戦いの中で、魔力減少のハンデは正直痛い。

痛いのだが、俺の体は人形体だ。

『蒼崎』の作品であるため、完全に人間に擬態しているが、バレる可能性がある。

たが、ここで同行を断れば、俺自身の意志に関係無く拘束されてしまい、なのはも同様だろう。

・・・しょうがない。ある意味、最悪だが厄介になるとしよう。

バレないという可能性に一縷の望みもかけるとしよう。

「・・・わかりました。そちらの指示に従います」

俺はそう言うのが精一杯で、俺の胸中はクロノへの敗北感で一杯だった。



魔法少女リリカルなのは Crossing of the Fate Stage11 「クロノ・ハラオウン」 End
Next Stage 「士郎 対 クロノ」



タイガー道場!! Stage11!!

注:)基本的に恐ろしくギャグ空間です。
   拒否反応がある方は読まないでください。

イリヤ:外は沈黙したけど、城の中は温かくて、ハイテンションに行きましょう! というわけで、タイガー道場の時間です!

???:ふむ。で、何故私はここにいるのだ?

イリヤ:おや? そこにいるのは『ブラウニー』の名を冠するアーチャーさんではないですか

アーチャー:ふむ。褒め言葉として受け取ろう

イリヤ:流石です! では、本日からしばらくは質問が届いているのでそちらにお答えします!

アーチャー:最初の質問はなんだ?

イリヤ:最初の質問です。
    ・リリカルなのはxFateのクロス小説ではすずか達の夜の一族ネタはつかわれているのでしょうか?
     また、内容を読む限りノエルとファリンもとらハ3の自動人形っぽいと思うのですが。
    という質問をいただきました。

アーチャー:ふむ。これは結論から言うと、夜の一族で自動人形だ。

イリヤ:このSSは、原作者のサイトにて乗っていたのですが、基本はとらハ設定を引き継いでいるとのことなので、
    その他の登場人物は、そのまま引き継いでいるものと思ってもらって問題ないです。
    でも、それを考えると酔ったファリンって一体・・・?

アーチャー:作者の頭の中では、衛宮士郎がさざなみ寮のメンバーと知り合いになっている。という脳内設定までできているそうだ

イリヤ:さぁて、ちゃっちゃと行きましょう。次の質問です!
    ・士郎がフラグ乱立してきましたけど、嫉妬は誰に向かうのでしょうか?

アーチャー:そんなもの、衛宮士郎に決まっているだろう

イリヤ:これは当然ですね。嫉妬を受けない士郎なんて士郎じゃありません。ね、アーチャー。

アーチャー:・・・ノーコメントだ。

イリヤ:さて最後の質問は
    ・士郎は温泉編の時にすずかのことどこまで見たの?(上半身は見えたと書いてありましたが)
    これは本人が答えられないようなので、私が士郎から聞きだした表現でどれだけ見たかを察してください。では、どうぞ。





知ってるか? 白一色の雪原の中に一色でも違う色があると、そこに視線が集中することを・・・





イリヤ:・・・ということです!・・・あ、ノートで書いた通りに痙攣してきたわ

アーチャー:・・・女に囲まれて溺死しろ(視線を逸らして)

イリヤ:以上です! また、後日質問が溜まり次第、回答を行いたいと思います。それではまた次回のタイガー道場でお会いしましょう。

END?





???:ふふふ・・・弟子1号・・・好き勝手やってるようね・・・





終わっとけ

後書き

な、難産でした。今回はフラグイベントが特に無かったから、タイプが思うように進みませんでした。

今回は、独自設定多目ですが、時空管理局が警察組織のようなものなら、ここらへんはやってないとまずいなというものを抜粋しました。

加えて、stsに続く場合、ここらへんのことは最低限やってないと士郎が入局しないと考えたので、追加してます。

現在の状況ですが、今のままだと冬休みの半分が無くなるのではないか、と戦々恐々としています。

冬休みに書き溜める予定だったのに・・・

ジージェネやこれから出るOG外伝、1月の下旬に出るFORTUNE ARTERIALも一役買いそうです(マテ

では、9話の拍手の返信です。

>最高だぜ!最高過ぎるぜ作者さん!指輪というリーサルウェポンがついに登場しちゃったぜ。追伸風邪に注意を
登場しちゃいましたね。想像以上に反響大きくて正直困ってたり。風邪は了解です。

>最近寒くなってきましたが作者様もお体にはご注意をしてください。作品はとても面白くて良かったです。
現在は体調良好ですが、良好なのが逆に辛いです。仕事が・・・(泣) 面白いと言ってもらえて嬉しいです。

>没ネタの没理由に大爆笑しましたw
士郎なら知っているか知らないかが確率的に微妙かな、と。知らなかったら、確実に没ネタで書いてました。

>没ネタのならデカイなのはフラグを消化できたのに・・・それはともかく、士郎はほんと弄るの好きだなw
まったくです。これなら正式になのはがヒロインだったのに・・・この士郎の成分は『士郎70%、アーチャー30%』で出来てます。

>アーチャー分って……からかい本能?それで良いのか錬鉄の英雄
士郎はアーチャーの愉快な部分を受け継いでます。スーパーの時だって、釣りしてる時のアーチャー分が出ていたと思ってます。

>Crossing of the Fate いつも楽しく読ませてもらってます。
>面白かったです続き楽しみにしてます
ありがとうございます。感想を力にして現在頑張ってます。

>次回はフェイトフラグ満載ですか!?
満載ではありませんでしたが、10話で強烈な一撃があったと思います。どっちかというとアルフとの会話の方が比重多い?

>毎週楽しみにしています。次が早く読みたいという衝動に毎回駆られます。これからも、がんばってください。
すいません。週一連載が現在ストップしていて、隔週連載になってます。ですが、完結目指して頑張ります。

>仮にSTSまで続いたら、士郎はスバルやティアナたちのフラグも立ててしまうんでしょうか?
立てるんじゃないかなぁ・・・脳内妄想だとスバルは士郎に抱きつくのがデフォで、ティアナには尊敬されてます。
そして、エリオは師匠と兄として見られて、キャロはお兄ちゃんとしてみてます。
ちなみに、士郎とキャロのカップリングは私の脳内設定では絶対にありえませんので、あしからず。

>是非STSまでやってくれ。楽しみにしてるぜ
>最高ですぜ!!ダンナ!これからもSTSまでつながるようがんばってくださいな!
>更新楽しみにしています。このままSTSまで続けてください。
書きたい気持ちにはなってます。ただし、STSの前にオリジナル展開を考えていますが(公開するかはわかりませんが)
応援よろしくお願いします。

>旦那!夢をありがとう!やべぇ〜面白過ぎるぜ!コンチクショウ!指輪はファイナルウェポン過ぎるぜ作者さん
正しくファイナルウェポンとして登場してます。このプレゼントは月日が経つごとに効果が増していくはず。

>二次ならではのアレンジや、キャラの性格をしっかりしいてアピールしつつ、他のキャラも立っていて面白いです
全く同じだと、おもしろくないなぁと思ってたのですが、この士郎が好評で嬉しいです。結構好き勝手やってるので

>いつも楽しく読ませていただいてます。ここはぜひヴォルケンリッターともフラグを!
ヴォルケンどうしようかなぁ。脳内妄想はリィンUが『士郎くん』と言って頭の上に乗ったり、抱きついてますが(当然笑顔で)

>質問ですが、士郎は元の世界に帰ったりするのでしょうか?
当初の予定では、A’S編の最終回で戻る予定でした。現在は考え中です。

>お疲れ様です。今回の八話と一話を読んだ時にも思ったのですが、なのはにしろ凛にしろ、
>一人称が「わたし」 か「私」だったと思います。面白いSSなので、余計に気になりました。細かい所で申し訳ありません。
なのははわたしになってるはずだけど、誤字があるかもしれません・・・ただ、凛が確実にあたしになってますね。後日修正します。
あと、褒めていただいてありがとうございます

では、次の話にて会いましょう。








作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。