これは
I F設定の世界ですので、本編とは何の関係もありません良介君の設定も所々違っています。
剣士の初恋
さて、それは何年前の事だっただろうか?
剣の道で天下を取ろうと、全国を渡り歩いている最中、海鳴の街に偶然流れ着き、そこで、変に癖のある大勢の人達(主に女性ばかり)と出会い、更に魔法と言う今まで本の中のものだと思っていた未知の力に出会い、そして自分の中に秘められていた能力にも目覚め、そして魔法のある異世界へ・・・・新しい世界で、新たな夢を見て俺は異世界ミッドチルダへと渡った・・・・。
そこで俺はあの人と出会った・・・・。
ミッドに着いた俺はリンディの推薦で、嘱託試験を受けたが、なのはやフェイト、はやて達と違い空戦適性が無いと判断され、地上本部に配属されることとなった。
俺の配属された部隊は地上本部の首都防衛隊でもトップの実力のあるゼスト・グランガイツという人が隊長を務める部隊だった。
何故俺が地上でもトップの実力のあるこの部隊に配属されたのかというと、なのはとはやてがリンディに俺のことを話して、本局には無理でもせめて地上のエリート部隊へと言う配慮だった。
しかし、入隊前リンディに「ついでに地上本部の弱みを掴んでくれると嬉しんだけど」と、言われ、俺はそこで初めてリンディに対し、嫌悪感を抱いた。
地上部隊きってのエリート部隊・・・・
そこでの訓練はまさに生き地獄・・・・。
これまでの剣術修行がまさにお遊びだったのだと自覚された。
訓練では、隊長のゼストと分隊長のクイントにボロ負けする日々・・・・。
噂では、なのはやフェイト、はやては同じ嘱託局員でもメキメキと魔法の腕を上げ、既に局員の中で噂になりつつある。
それに比べて俺は周囲から「魔法も碌に使えない穀潰し」「エリート部隊のお荷物」等と陰口を叩かれる始末。
段々やさぐれて行く俺に対し、あの人は優しく声をかけ慰めてくれた。
「またやさぐれていたの?良介君?」
「別に・・・・」
「もう、素直じゃないんだから」
ぶっきらぼうに言う俺に対し、苦笑交じりで紫色の長い髪をしたゼスト隊のもう一人の分隊長、メガーヌ・アルピーノは俺にそう言った・・・・。
メガーヌ・アルピーノ・・・・あの人は何かと俺に気を遣ってくれた。
この時俺は、まだ自分の中に芽生え始めていた彼女に対する感情に気がつかなかった・・・・。
ある日、部隊の全員でクラナガンのある飲み屋に飲みに行ったとき、彼女はその時相当酔っていたのか、俺に絡んできた。
その時の彼女の愚痴は、
同期のクイントは既に結婚しているのに何故、自分には男運が無いのか?
何処かにいい男は転がっていないか?
と、言う内容だった。
普段の俺だったら、「知らねぇよぉ!」の一言で終わらせていたかもしれないが、今思えば、この時の俺も相当酔っていたのかもしれない。
何故ならその時、俺は冗談ながらも彼女に「俺じゃダメか?」と、言うと、彼女は一瞬驚いた顔をしたが、直ぐにニンマリとした笑を浮かべ、
「本気?」と、尋ねてきたので、
俺は、「本気になっちゃダメか?」と、彼女の耳元で返すと、彼女は俯きながら「その言葉信じていいの?」と、呟く。
「後悔はさせないぜ・・・・」
と、俺が再び呟くと、彼女は俺の服の袖を掴み、
「じゃあ、証明して・・・・その言葉が嘘じゃないって事を・・・・」
その時の彼女の顔は酔いではなく羞恥で顔を赤く染め、上目づかいで俺に呟いてきたのだ。
彼女の態度で俺は酔いが一気に醒めた・・・・。
メガーヌの顔は先ほどのニンマリとした笑顔ではなく、俯く彼女の顔は恥じらう乙女の顔だった。
そしてこの時、俺は自覚した・・・・。
そう・・・・俺は彼女に・・・・メガーヌに恋をしていたのだと・・・・。
他の皆に「メガーヌが酔いつぶれたので、先に帰る」と言って他の皆より先に店を出た俺達は部隊の寮ではなく、ホテルへと向かった。
そこで、俺は初めて女を・・・・彼女を抱いた・・・・・。
事を終え、俺の腕の中で眠る彼女は少女の様に可愛らしい顔をして眠っていた。
俺は眠る彼女の額にキスをして、彼女の温もりを感じながら再び眠りに着いた・・・・。
「ん・・・・夢・・か?」
俺が目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった・・・・。
「あれから随分と経つな・・・・・」
俺はベッドに横になった状態から、ベッド脇のテーブルに置いてある写真立てに手を伸ばす。
写真立ての中には管理局の制服姿のゼスト、クイント、俺、そしてメガーヌが一緒に写った写真と私服姿の俺とメガーヌが腕を組んでいる写真が入っている。
「メガーヌ・・・・」
俺は初めて恋いをし、愛した女の名前を呟いた・・・・。
あれから何年の月日が流れただろうか?
メガーヌと一夜を共にした日を境に俺とメガーヌは部隊公認の仲となり、非番の日にはよくデートをしては、何度も彼女を抱いた。
彼女はますます綺麗になっていき、俺はミッドに来て初めて幸せを掴んだ気がした。
しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。
ゼスト隊長が密かに追っていた戦闘機人事件・・・・。
その戦闘機人の拠点を突き止めいよいよ突入の決行が定められた日、俺は隊長から、
「良介、お前は隊の中で魔力ランクが一番下のため、後方でバックアップだ」と、突入部隊から外された。
当然俺は隊長に掴みがかったが、結局許可を貰うことは出来ず、メガーヌから諌められ、渋々ながらも指示に従った。
突入間際、メガーヌから「この任務が終わったら、大事な話があるの・・・・」と、俺だけに秘匿回線を使用した通信が入った。
そこで、俺も、
「俺もお前に伝えたい事がある・・・・だから、絶対に帰って来てくれ」
と、メガーヌと交信を交わした。
その時、俺の手には指輪を入れる小さな宝石箱が握られていた。
俺はこの任務が終わったら彼女にプロポーズをすると決め、有り金を叩いて婚約指輪を購入していたのだ。
しかし、俺がその指輪を彼女に贈ることはなかったし、メガーヌの言う大事な話を聞くことは無かった・・・・。
ゼスト隊長をはじめとして、クイントを含めた突入部隊は全て全滅、当然その中にはメガーヌも含まれていた。
クイントを含めた何人かは遺体が発見され収容されたが、隊長とメガーヌの遺体は見付からず、行方不明・・・・。
もしかしたら、奇跡的に脱出できたのでは?と、思ったが、
殉職した他の隊員のデバイスによる記録映像から、致死量の出血と怪我をしている映像が見付かり、生きている可能性はゼロに近いという判断がくだされ、遺体が見つかっていないが、隊長もメガーヌも殉職と言う処置となった。
隊長、分隊長を含め主力隊員を失ったゼスト隊はその後すぐに解散、残された低ランク、または非魔導士の隊員達は他の部隊へ転属する者と管理局を辞める者と二手に別れた。
そして俺は後者の方を選んだ。
彼女の・・・・メガーヌが居なくなった管理局にはもはや何の未練もなかったからである。
管理局を去る時に、なのは、フェイト、はやてらの妹分からは、「辞めないで」と何度も嘆願されたが、俺は彼女たちの願いを聞き届けてやれなかった。
クイントの旦那のゲンヤさんも同じような事を言ってきて、更には、「家(ナカジマ家)に養子に来ないかと」と誘ってくれたが、俺はそれも断った・・・・。
彼女を・・・・メガーヌを失い、海鳴の街に舞い戻って来た俺はまさに廃人同然だった。
ミッドから逃げるように去り、海鳴の街に戻った俺をはやては自分の家に招き入れてくれたが、毎日が嫌で嫌でたまらなかった。
死んでメガーヌのいるあの世に逝こうとしたこともあったが、肝心の後一歩が怖くて踏み出せず、死ぬことさえも出来ない生きる屍状態だった。
そんな俺に喝をいれ、慰めたのが、アリサや忍、なのはの母親の桃子といった海鳴で出会った大勢の人達だった。
メガーヌを失い、廃人となった俺を必要とする奴なんてもう居ないと思っていたのに・・・・。
メガーヌの後を追うことも出来ない臆病で、弱い俺なんかを気にかける奴なんて居ないと思っていたのに・・・・。
そう思っていたのに、俺の周りにはどういうわけか、俺に声をかけ、気にかけるお節介な奴らが大勢いた・・・・。
ただ俺が目を逸らしているだけで、守らなければならない大切なモノはまだまだ沢山あった・・・・。
メガーヌ、お前の傍に逝くのはもう少し時間が掛かりそうだ・・・・。
すまないが、隊長やクイント達と待っていてくれないか?
土産話を沢山持ってからそっちへ逝くから・・・・。
どうかそれまで、待っていてはくれないだろうか?
それから俺は海鳴で探偵業を営むのと同時に神咲姉妹と共に退魔の仕事もした。桃子の頼みで、非常勤ながらも翠屋の手伝いもした。
やがてはやて達が中学を卒業する年にはやて、なのは、フェイトの三人は高校へは行かず、そのままミッドに移り住み、正式に管理局局員となった。
はやてが海鳴を去るということで、海鳴にあるはやての家は俺が引き取った。
それから四年後、ミッドの暦で言うと、新暦75年にはやてが自分の部隊を立ち上げるので、俺にミッドへ来て欲しいと言ってきたが、俺はその誘いを断った。
はやて達はもう、俺が居なくても十分に自分達の足で歩けるし、戦える。
それにミッドには辛く悲しい思いでしか残っていないからだ・・・・。
はやてが自分の部隊を立ち上げた時、一度だけ、なのはとフェイトが自分の部下を引き連れ、地球に来たことがあった。
その時連れてきたなのはの部下の一人、ティアナ・ランスターとかいう生意気なツンデレ娘が俺に突っかかって来たので、模擬戦で返り討ちにしたのは我ながら大人気なかった・・・・。
ただ、あのツンデレ娘とメガーヌの声が何となくだが似ていたのは少々気にはなった。
それとそのツンデレ娘の相棒、スバル・ナカジマ・・・・。
かつて、俺の彼女(メガーヌ)の親友・・・・クイント・ナカジマの娘・・・・。
クイントが生きて居る頃、何度か会った事がある。
そしてゼスト隊の合同葬儀の時にクイントの棺にしがみついて泣いていたのをよく覚えている。
しかし、スバル本人は俺(良介)の事を覚えている様子は無かったので、俺は黙っていた。
それから約一ヶ月半後、今度ははやてが俺に・・・・知り合いである宮本 良介ではなく、探偵、宮本 良介に依頼を持ち掛けてきた。
この時、俺の下を尋ねて来たはやてはは、妹分、八神 はやてではなく、時空管理局、古代遺物管理部
機動六課 部隊長 八神 はやてとしての依頼だった。「依頼?」
「そうや。今度、地上本部で陳述会があるんよ。良介も局員の経験があったんやから、知っとるやろう?」
「ああ、そうか、ミッドじゃもうそんな季節か・・・・」
ミッドの九月にはそれぞれ“陸”、“海”、“空”の高官達が地上本部ビルに集まって、陳述会を行っていた。
そしてその様子はマスコミにも公開されている。
良介も局員時代にはこの陳述会のため、地上本部ビルの警備をやった経験がある。
「それで依頼って言うのは?」
「今年の陳述会の地上本部の警備に私らの機動六課も参加するんやけど、警備員の数が足りなくて、良介にもその日だけ、手伝ってもらいたいんよ」
「・・・・」
またミッドに行く・・・・。
彼女との思い出と別れが有ったあの世界に・・・・。
良介は、はやてからの依頼を受けるか断るか考え込んだが、思えば彼女が死んでから一度も彼女や隊長、クイントや大勢の仲間の墓参りをしていない事を思い出した。
最もゼストとメガーヌに関しては遺体が発見されていないので、実際の墓は空の棺が埋葬されたが、それでも彼女の墓にかわりない。
良介は彼女や仲間の墓参りを兼ねて、久しぶりのミッドへ訪れる決心をし、はやての依頼を受ける事にした。
ミッドの首都、クラナガンにある機動六課の隊舎に来た良介。
その隊舎の通路を見ながら、
(随分と金をつぎ込んでいるな・・・・一年の試験運用なのに・・・・)
と、思いながらはやてと共に部隊隊長室へと入った。
部隊長室では、当日の警備内容が書かれた極秘書類を受け取り、陳述会の予定を聞いた。
そして、
「陳述会終了までの相棒を紹介するで」
と、言われた。
やがて、部隊長室に一人の女性局員が入って来た。
「ギンガ・ナカジマ。参りました」
部隊長室に来たのは長い青髪をした女性局員だった。
ギンガ・ナカジマ・・・・。
スバル・ナカジマの姉で、当然彼女もクイント・ナカジマの娘である。
「あっ・・・・」
ギンガは部隊長室にいる良介の存在に気が付き、小さく声を漏らし、バツ悪そうに良介から視線を逸らす。
「ギンガか・・・・久ぶり・・・・大きくなったな・・・・」
「は、はい・・・・」
「なんや?二人は顔見知りなんか」
「え、ええ・・・・」
「昔に・・な・・・・」
「ふぅーん・・・・それじゃあ後は二人で昔話をしながら、当日の件について詳しい打ち合わせをしといてなぁ」
はやてはニヤニヤしながら言うが、残念ながら俺と彼女の関係ははやてが予想している恋愛といった類のものではない。
むしろ逆な関係だ。
憎む者と憎まれる者の関係だ。
「あ、ああ・・・・」
「・・・・」
良介は書類を片手に部隊長室を後にし、その良介の後ろからギンガも良介の後を追う。
しかし、二人の周りの空気はぎこちないというか、少し重苦しい。
二人には会話も無く気まずい時間が流れる。
やがて、人通りのない通路に出ると、ギンガが不意に立ち止まる。
「あ、あの・・宮本さん・・・・」
そこで、ギンガがようやく口を開いた。
「ん?どうした?」
「・・・・あ、あの・・・・あの時はすみませんでした!!」
突然、ギンガは良介に深々と頭を下げる。
ギンガの言うあの時とは、ゼスト隊の合同葬儀後の事を指していた。
合同葬儀の時、当時八歳だったギンガは、クイントの眠る棺を前にして必死に涙を堪えていた。
それは、『自分は今後、スバルの姉でもあり、母親代わりとなるのだから、そう易々と妹(スバル)の前では泣かない』と言う彼女の意思表示だった。
しかし、ギンガも年相応の子供。スバルが居ない時には、一人で涙を流しているのを良介は知っていた。
このままでは、ギンガは無理をして、体を壊し、下手をしたら精神崩壊をしてしまうかもしれない・・・・。
其処で良介はある策を講じた。
それは、ギンガにデマを流す事だった。
そのデマとは、クイントが殉職したあの事件で、自分も突入部隊に選抜されていたが、怖くなって逃げたと言うものだった。
そしてそのデマは自然な形でギンガの耳に入り、それを聞いたギンガは、当然激怒し、良介を攻めた。
「卑怯者!!」
「恥知らず!!」
「お母さんは死んだのに何で貴方は生きているの!?」
「貴方はお母さんを見捨てて逃げたんでしょう!!人でなし!!返して!!お母さんを返してよ!!」
と、良介を拳で何度も殴りつけながら泣き叫んだ。
良介はギンガに自分を憎ませることによってクイントの死から目を逸らそうとしたのだ。
それにこの時すでに良介はミッドを去る決意をしていた。
遠くの管理外世界へ逃げた男を恨むことにより、彼女に生きる糧を与えたのだ。
そして、その策は見事に的中し、ギンガは良介を恨み、良介を憎むことによって、ソレを生きる糧とした。
しかし、良介が墓の下まで持って行こうとした秘密は意外な所から漏れた。
それは、ギンガが母の意思を継ぎ、管理局の訓練校を卒業し、父が部隊長を務める
108部隊に赴任してから間もなくの事であった。ギンガは隊舎にて、元ゼスト隊の隊員であの日、良介と共に留守を任された局員から良介を含め、待機組になり、結果的にクイント達を見殺しにしてしまったことについて謝罪を受けた。
「そんなっ!?・・・・でも、あの人は怖くなってメンバーから外れたって・・・・」
ギンガは震える声で、確認をとる。
「いえ、宮本は、逆に最後まで『自分も突入部隊のメンバーに入れてくれ』と、隊長に頼み込んでいました」
この言葉を聞き、ギンガはこの局員の言っている事が本当なのか、元ゼスト隊の生き残りの局員や元局員に連絡し、確認したのだが、結果は皆この局員と同じ事を言った。
そして、決め手は父、ゲンヤからの告白だった。
ゲンヤは、良介本人からギンガにデマを流し、自らを恨むようにけしかける計画を聞かされていたし、それを実行してくれと言われ、実行した人物だった。
当初、この計画を聞いたゲンヤは止める様に言ったが、良介はクイントを守れず、更に近々ミッドを去る旨をゲンヤに伝え、自分を恨むことでギンガが生きる糧としてくれたら、それで良いと言った。
ゲンヤとしても母の死によってスバル以上に精神的、肉体的に追い詰められて行くギンガを見るのは忍びなく、渋々良介の計画に乗った。
そして良介がミッドを去り、かなりの年月が経ち、ギンガが真実に辿り着いたため、ゲンヤは良介の行った計画をギンガに話したのだ。
その事実を知ったギンガは深い罪悪感にかられ、良介に詫びたいと常々思っていた。
しかし、彼はあの事件でミッドを去ってからミッドへ来ようとしない。自分が彼の下に行っても良いのだが、彼女の方も、どうしても足を踏み出す事が出来なかった。
そんな中、今回、良介がこうしてミッドに来た。
ギンガにとって長年溜めていた罪悪感からこうして良介に謝罪したのだ。
「別に気にしてないさ。結果はどうあれ、俺がクイントを生きて、ギンガやスバルの下に連れて行けなかったのは事実なのだから・・・・」
「・・・・」
良介には哀愁が漂っており、ギンガが過去、自分に行ってきた数々の行為をまったく気にしていなかったが、ギンガとしては謝っても謝り足りなかった。
そして迎えた公開陳述会の日。
陳述会もまもなく終わりに差し掛かろうとした時、ソレは起きた。
突然、何十機とも言えるガジェットが特攻をかけ、地上本部周辺の防御用結界を
AMFで中和し、そこから広域指名手配犯ジェイル・スカリエッティの生み出した戦闘機人、ナンバーズが地上本部に襲撃をかけてきた。現場は大混乱となり、電気やエレベーターも機能を停止し、外部との交信も不可能となった。
襲撃時、良介とギンガの二人は、北のエントランスホールを警備して居たのだが、突然の停電で地上本部に緊急の事態が起きたのだと、判断し、妹のスバルを始めとする機動六課のメンバーとの合流を図った。
しかし、その途中・・・・。
「見つけたぞ、タイプゼロ・ファースト。大人しく私達と来てもらおうか」
敵の戦闘機人に見つかった。
奴の言葉から敵の狙いはギンガだと言う事が分かった。
「そう言われて着いていくと思う?」
ギンガが言うのも最もである。
態々敵についていくバカは居ない。
「そうか、ならば・・・・」
敵の戦闘機人は何処からか、ナイフを取り出す。
「力づくでも連れて行く」
そして、良介とギンガは突然戦闘に巻き込まれた。
戦闘機人特有の能力、
inherent skill。通常IS辺りに
AMFが充満して魔法が上手く使えない状況で、魔力ではなく、AMFの影響を受けないISの能力を敵の戦闘機人はフルに活用してきた。しかも厄介な事に眼前の戦闘機人の能力は鉄を爆発物に変える能力で、投擲してきたナイフを爆弾に変換して攻撃してきた。
最初は二人でこの戦闘機人を捕まえようとしたが、俺もギンガも近接戦闘専門のため、なかなか相手に近づけない。
それでも現状は二対一なので、何とか凌げたが、途中から、
「チンク姉!!」
「援軍に来たっスよ!!」
敵の増援が来て、戦況は一気に此方側が不利となった。
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・ギンガ・・・・」
「は、はい」
三対二となってからは、此方が防戦一方となった。
良介もギンガも体中ボロボロの状態。
「あいつらの狙いはお前だ・・・・俺があいつらを引き付けるから、お前はその隙に逃げろ・・・・」
「そんなっ!?」
俺の提案にギンガは声をあげる。
「俺はあの時、クイントもメガーヌもゼスト隊長も大勢の仲間も救えなかった・・・・だから・・・・今回ぐらい俺に恰好つけさせてくれ・・・・」
ボロボロの体になりながらもギンガにニッと笑みを浮かべる良介。
「で、できません!!宮本さん一人を置いていくなんて」
良介の言葉から彼が自分を逃がす為、命を・・・・死を覚悟している事を悟るギンガ。
二人がそんなやり取りをしていると、
「とどめっス!!」
ライディングボードを持った赤髪の戦闘機人が砲撃クラスの攻撃をしてきた。
(あのボード、大砲も積んでいたのかよ!!)
「ちっ」
良介は咄嗟にギンガの前に立ち塞がり、プロテクションを張ったが何分、咄嗟の事で、張られたプロテクションも十分なモノではなく、攻撃全てを受け止める事は出来なかった。
「がっ・・・・」
爆炎がはれると、満身創痍の良介が立っているのもやっとという感じでそこに居た。
「宮本さん!!」
「逃げろ・・・・ギンガ・・・・俺に構うな・・・・」
良介は背後にいるギンガにそう声をかけると、三人の戦闘機人の方へと歩み寄る。
「ちっ、死にぞこないが!!」
「チンク姉、こいつヤッちゃっても良いっスよね?」
「ああ、目障りだ。これ以上邪魔され、時間をかける訳にはいかん」
目の前の戦闘機人たちは明らかに殺気だった。
先程までは、なるべくギンガをほぼ無傷で捕獲したかったようだが、良介に邪魔され、目標をギンガの捕獲からまずは邪魔者の排除に移行したようだ。
万事休す・・・・。
そんな時、
「ギン姉!!」
通路の向こうからローラーブーツの爆音とスバルの声がした。
そしてエントランスにはスバルの他になのはに抱えられたティアナも到着し、形勢は一気に逆転した。
「くそっ、やはり時間をかけすぎたか・・・・」
「チンク姉」
「どうするっスか?」
「やむを得ん、ここは撤退だ・・・・」
銀髪眼帯チビの戦闘機人が一本のナイフを
IS能力で閃光弾に変換して、なのはたちの目を攪乱し、その隙に連中は撤退していった。敵が撤退したと言う事で、気が緩んだのか、良介はその場に倒れた。
「宮本さん!」
良介が最後に見たのは自分に近づくギンガの姿だった。
「うっ・・・・んっ・・・・ここは・・・・?」
目を開けるとそこに映ったのは真っ白い天井で辺りからは消毒薬と薬品の匂いがした。
「病院・・・・か?」
現状を確かめようと起き上がろうとしたが、
「ぐっ・・・・」
身体中に激しい痛みが走り、良介は再びベッドに沈んだ。
「あっ!宮本さん目が覚めたんですね?」
病室のドアが開き、そこから現れたのはギンガだった。
どうやら、ギンガは無事だったようだ。
しかし、連中に攫われなかったと言うだけで、ギンガ自身も身体や顔の彼方此方に包帯やガーゼ、絆創膏を貼っている痛々しい姿だ。
「ギンガ・・・・無事だったか」
「はい。宮本さんのおかげです」
ギンガに礼を言われ、良介は、
(今度は守れた・・・・)
と、心の中で一息ついた。
「それで、あれからどうなったんだ?」
良介が地上本部襲撃後の経緯をギンガに尋ねる。
「はい。あれから・・・・」
ギンガは地上本部襲撃後の経緯を良介に話した。
ギンガの話によれば、あの地上本部襲撃は囮で本命は、良介がミッドに来る前、クラナガンのとある裏路地で六課が保護した少女がおり、その少女の拉致こそが連中の本命だったらしい。
自分(ギンガ)の拉致は連中にとっては副目標であったと言う。
地上本部ビルが襲撃されたほぼ同時刻、戦闘機人の別働隊が六課の隊舎を襲撃し、その少女を拉致した。
そして、地上本部同様、六課の隊舎でも負傷者が多発した。
その中にははやての守護獣であるザフィーラも含まれており、良介の隣のベッドに横たわっていた。
良介がチラッとザフィーラの様子を窺うと、ザフィーラはまだ眠っている様だ。
ザフィーラは、ほぼ全身を包帯で包まれている痛々しい姿だ。
地上本部と六課を襲撃したスカリエッティ一味は一週間後、ミッドを総攻撃すると、電波ジャックしてクラナガン全体にその放送を流した。
それから一週間後、スカリエッティは予告通り、ミッドに・・・・管理局に決戦を挑んで来た。
まず、地上に新たに設置された新型砲台『アインへリアル』がナンバーズに襲撃され、アインへリアルは全て破壊され、ベルカ地区の山間部から古代ベルカ時代の戦艦『ゆりかご』を浮上させた。
管理局は全局員をあげて、スカリエッティ一味の迎撃、逮捕に向かった。
当然その中には六課のメンバーも含まれていた。
六課のメンバーがスカリエッティ一味の迎撃と逮捕に向かっている中、重傷を負ったザフィーラを含む、局員は残念ながら、迎撃と逮捕に向かうことなく病院にいた。
その中には良介も居たのだが、もう一人居た。
「いいのか?ギンガ・・行かなくて・・・・」
「・・・・」
其処には、すでに傷から回復したギンガが居た。
「まさか、お前・・自分のせいで俺が重傷を負ったから、『自分は此処にいます』なんて事思ってないよな?」
「・・・・」
良介の問いに何も答えないギンガ。
どうやら、良介の言った言葉は図星だった様だ。
「そう思っているならば、心配無用だ。行って来い、ギンガ!!クイントが見ていたら、きっとお前を叱って此処(病院)からつまみ出しているぞ!!」
「でも・・・・」
「良いから行け!!もし、お前が俺に対して、少しでも申し訳ないと思っているならば、行ってこの事件を少しでも早く解決して来い。ゼスト隊長やクイント、メガーヌの仇をお前がとって来い!!」
「宮本さん・・・・はい!!行ってきます!!」
ギンガは駆け足で良介とザフィーラの病室を後にした。
「やれやれ・・・・ぐっ・・・・」
ギンガが病室を出た後、良介は、ベッドから起き上がり、痛む体を引きずりながら病室のドアの方へと歩んで行く。
「行くのか?最後を見届けぬまま・・・・」
突如、ベッドに横になっていたザフィーラが良介に声をかけてきた。
何時の間に起きていたのかは分からないが、恐らく良介とギンガのやり取りは全て聞いていたのだろう。
「見届けなくても、はやてになのは、フェイト・・・・それにギンガ達はあの変態ナルシストを逮捕するさ・・・・」
良介は背中越しにザフィーラへと告げる。
「フッ、そうだな・・・・しかし、事件が終わった後、お前が居ないと知ると、主やなのは達は怒るぞ・・・・」
「その時はお前が皆に伝えておいてくれ、『いつまでも甘えているんじゃね』ってな・・・・」
良介はザフィーラにそう言い残し、病室を後にした。
ザフィーラはフッと口元を緩め、
「お前も立派に成長したな・・・・」
と、ポツリと呟いた。
その後、良介の予見どおり、はやて達はスカリエッティとその一味の戦闘機人を逮捕し、クラナガンを舞台にした
J・S事件は幕を閉じた・・・・。その様子を良介はゼスト隊の仲間が眠っている墓地から見届けた後、彼は人知れず、ミッドを去り、海鳴へと戻った。
そしてザフィーラの言う通り、
J・S事件解決直後、良介ははやて達から「何故勝手に帰ってしまったのか!?」と、長時間にわたって通信でお小言を言われた。いや、はやてよりもギンガからのお説教が一番長かった・・・・。
さて、過去の回想は(現実逃避)此処までにして・・・・・
誰かこの状況を俺に教えて欲しい・・・・
しかもより詳しく、鮮明に・・・・・
何故、俺のベッドに、メガーヌにそっくりな女の子が居るのだろうか?
しかも気持ちよさそうに寝ている。
というか、一体何処から入った?
一瞬、メガーヌが子供になって転生してきたのか?とさえ思ってしまった。
写真立を元の位置に戻し、俺が訝しい表情で、この小さな侵入者を見ていると、
「う・・・・ん・・・・・」
ようやく小さな侵入者は目を覚ました。
「ぅん・・・。あっ、お父さん!!」
目を覚まし、俺と目が合った瞬間、小さな侵入者はいきなりとんでもない事を言い出した。
「はいぃー!?」
ちょっと待て!何故俺は見ず知らずの子にお父さん呼ばわりされる!?
この小さな侵入者のお父さん発言でパニくる俺。
落ち着け、俺!
ひとまず、この小さな侵入者の正体を聞くことからにしよう・・・・。
「ちょ、ちょっと待った!その前にまず、お前は一体誰なんだよ!?」
「えっ・・・・?」
俺の「お前なんて知らない」発言を聞き、小さな侵入者である女の子は目に涙を浮かべ、突然泣き出しそうな顔になる。
えっ?何でそんなに悲しそうな顔をするの!?俺か!?俺が悪いのか!?
互いに気まずい空気が流れえる中、突如、インターフォンが鳴った。
俺は取り敢えず、その子に「ちょっとそこで、待っていろ」と、言って、玄関へと向かった。
玄関のドアを開けると、そこに居たのは・・・・・。
「やっほー。久しぶりだね、良介君
♪」十年前と全く変わってない姿の彼女が・・・・
死んだと思った彼女が・・・・。
俺が初めて愛した女が・・・・・。
メガーヌ・アルピーノがそこに居た・・・・・。
「め、メガーヌ?・・・・本当に・・・・・本当にメガーヌ・・・・なのか?」
震える声で俺は目の前の女がメガーヌなのか尋ねる。
「ええ、正真正銘、メガーヌ・アルピーノよ。良介君」
「メガーヌ・・・・メガーヌ!!」
俺は思わず、メガーヌに飛びつき、彼女を抱きしめた。
「良介君・・・・」
彼女も抱き付いた俺を抱きかえしてくれた。
永遠に失ったと思った彼女の温もり、声、匂い・・・・。
その全てが懐かしさと同時に愛おしさを思い出させる。
玄関先で再会の長き抱擁の後、俺はメガーヌを居間へと案内した。
メガーヌの話では、あの時、彼女(自分)は殺されず、仮死状態のままスカリエッティに囚われており、はやて達が事件を解決させた後、保護され、つい最近になって目を覚ましたのだという。
メガーヌの生存と同時に俺はもう一つの疑問・・・・。
今、俺の膝の上でちょこんと座っているメガーヌ似の女の子の事を聞いた。
「なぁ、メガーヌ。お前が生きていたのは嬉しいが、もう一つ教えてくれ、お前にそっくりなこの子は一体・・・・?」
「その子は私が生んだ子供よ。名前はルーテシアって言うの〜♪可愛いでしょう?」
「あ、ああ・・・・」
ルーテシアの頭を撫でながら枯れた声を出してルーテシアが可愛い事に肯定する俺。
しかし、俺の頭の中は混乱しまくりだった・・・・。
こ、子供!?
しかもメガーヌが生んだ子って!?
俺と初めて出会ったときは妊娠してなかったよな?
しかも付き合い出した頃も、確か独身だったよな!?
俺と付き合う少し前、彼氏いない〜クイントが羨ましい〜ってぼやいていたよな?
それに初めて抱いた時もメガーヌは確か処女だった・・・・。
あれから何度もメガーヌを抱いたが、彼女のお腹はまったく変化は無かった筈・・・・。
ゼスト隊が全滅したのはその一年後だけど・・・・
まさか乗り込んだ時には妊婦だったのか!?
「そ、それで、この子の父親なんだけど・・・・」
俺が震える声でメガーヌに問うと、メガーヌはイタズラが成功した時の様な明るい笑を浮かべて言い放った。
「ルーテシアの父親は貴方よ、良介君」
やっぱり俺だったか・・・・。
でも、ゼスト隊が全滅するまでの間、メガーヌが妊娠したなんて話は聞いていないし、まして、出産していたなんて聞いてない。
そう思うと、一時期メガーヌが一身上の都合と言う理由で長期休暇をとり、音信不通になった時があった。
そのことから恐らくその期間中に出産したのだろう。
でも、それまでは彼女のお腹はいつもどおりだった。
俺がそのことについて聞くと、彼女は大きくなったお腹も幻影魔法の要領で普通に見えるようにしていたのだった。
メガーヌは元々幻影魔法や転移系の魔法を得意としていた魔導士だったため、大きくなった自分のお腹に幻術をかけるくらい朝飯前だったのだろう。
って、言うか、俺ってメガーヌが妊娠したことも知らないで、妊婦状態だった彼女を抱いていたのか?
今更ながら、あの時の俺が此処まで飢えていた獣だったのかと思い知らされ自己嫌悪になった。
妊娠という可能性を全く考慮しないで抱いていたわけだし・・・・。
となると、当然俺は責任を取らないとダメだよな・・・・。
「お父さん、嫌?私が娘じゃ迷惑?」
上目で俺に尋ねる我が娘、ルーテシア。
「そんな訳ないじゃないか。ルーテシアみたいな可愛い娘を持てて嬉しいよ」
俺がルーテシアの頭を撫でながら言うと、ルーテシアも微笑んでくれた。
「認知・・・・してくれるの?」
メガーヌが恐る恐る尋ねてきた。
「当たり前だ。俺とお前の娘なんだぞ」
「ありがとう、良介君」
その後、何故ルーテシアが俺の部屋のベッドに寝ていたのかメガーヌに聞くと、あれはメガーヌの仕業であり、前日から地球入りしていたメガーヌは朝早くにルーテシアを泊っていたホテルの部屋から俺の部屋に転移させたのだと言う。
何故そのようなことしたのか聞くと、俺の驚く顔が見たかったらしい。
彼女のドッキリと言うか、そう言う子供っぽい所は相変わらずだ・・・・。
「そ、そう言えば、あの時、『この任務が終わったら、大事な話がある』って言っていたけど、それって・・・・」
「ええ、ルーテシアのことよ」
「そうか・・・・」
「ん?どうしたの?良介君?」
「メガーヌ、ちょっと待っていてくれ・・・・」
俺は膝の上のルーテシアをソファの上に置くと、急いで自分の部屋へと戻り、クローゼットの奥から小さな小箱を手にメガーヌのいるリビングへと戻った。
「良介君?」
「メガーヌ・・・・俺からもあの時言えなかった事を今、ここで言わせてくれ・・・・」
俺はゴクリと生唾を飲み込み、深呼吸を数回してメガーヌに言った。
「メガーヌ・・・・お、俺と結婚してくれ!!」
そう言って俺はあの時、メガーヌに渡せなかった指輪をメガーヌに見せ、人生で初めてプロポーズというものをした。
メガーヌは初め、俺の差し出した指輪と言葉が理解できなかったのか、キョトンとした顔つきだったが、時間が経つにつれ、俺の言葉の意味を理解したのか、目に涙を浮かべ、プロポーズの返答をした。
「はい・・・・喜んで・・・・」
「ありがとう・・・・メガーヌ・・・・・」
俺はメガーヌの指に指輪をはめると、彼女の唇に自分の唇を寄せ、メガーヌも俺の行動を理解したのか、目を閉じ、唇を寄せた。
久しぶりのメガーヌとのキスだった・・・・。
この甘美な時間を長く感じていたい・・・・・。
そう思っていたのだが、俺達を現実に引き戻したのは、俺達の娘の声だった・・・・。
「・・お父さん・・お母さん・・・・やりすぎ・・・・・・」
「「えっ!?」」
勢いよく振り返った両親の視線の先にはジト目で俺たちを見る娘(ルーテシア)の姿があった。
それからメガーヌの行動は素早かった。
ルーテシアはあのマッドが起こした事件に関係しているらしく、今は海上の更生施設で更生中だったらしく、あの時はメガーヌが無理を言って仮出所していたらしい。
なお、その更生施設でギンガが更生担当官を務めているらしい。
その話を聞いた俺は、逮捕されてもいいからあのマッドを半殺しにしてやりたかった。
ルーテシアが更生施設で更生教育中、メガーヌも必死にリハビリを行っていた。
なにせ、十年間ずっと生体ポッドの中で眠っていたらしく、体の筋肉が弱まっていたからだ。
俺に会いに来てくれた時も車椅子だったからな・・・・。
しかし、そのおかげなのか、十年前に購入した指輪が指に入ったのだが・・・・。
そして、ルーテシアの更生とメガーヌのリハビリが済むと、俺とメガーヌはささやかな結婚式を挙げた。
参加者はメガーヌと交流が深かったナカジマ家の皆と俺との交流が深かった八神家の住人、それに桃子や忍といった地球で世話になった連中だけを呼んで式を行った。
しかし、結婚式を挙げる当初、クイントを守る事の出来なかった俺(良介)、上司であるゼスト、同僚でもあり、親友でもあるクイントを始めとするあの時、突入し死んだゼスト隊の中で、オメオメと一人生き残ってしまったメガーヌ。
そんな自分達が結婚し、幸せになっていいのかと?自問した。
だが、ナカジマ家を始めとするゼスト隊の遺族はそのほとんどが良介もメガーヌを咎めはしなかった。
逆に生きていた事、そして結婚する事を祝福してくれた。
それから月日は流れ、現在俺達はメガーヌの故郷である「カルナージ」に引っ越した。
そこで、俺たちは自給自足の生活をしながら、新たにペンション業を行おうとしている。
あのマッドが起こした事件、
JS事件から五年の月日が流れ、ルーテシアも大きくなった。性格も出会った頃と比べずいぶんと変わり、明るく社交的ないたずらっ子に成長していた。
メガーヌ曰く、「いたずらっ子なところは良介君そっくりね」らしい。
でも、メガーヌにも似ている・・・・と、俺はそう思う。
ペンション業の開業間際にルーテシアの友達が大勢、ミッドから遊びに来ることになり、俺が「誰がくるんだい?」と尋ねてもルーテシアは詳しくは教えてくれなかった。
ルー曰く「サプライズだよ」と、言っていた。
しかし、人数と友達の特徴だけは教えてくれた。
それによると、大食いな友達が三人いるらしい。
そこで俺とガリューは朝早くから山へ狩りに行き、昼頃に戻った。
昼食後、一休みした後、
「さて、明日からは暫く出来そうに無いから、今のうちに目一杯ヤッておくかな?」
そう言って俺はメガーヌをソファに押し倒した。
「で、でも、まだ昼間よ?
//////」メガーヌは頬を赤く染め良介に尋ねる。
「いいじゃないか、周りには誰もいないし、ルーとガリューは今、外に居て当分は帰ってこないだろう・・・・ルーの弟か妹のためにも・・・・なっ?」
尋ねるように言って俺はメガーヌの服に手をかける。
彼女も嫌ではないようで、然したる抵抗もしない。
「ちょっ・・・やさしく・・ね?
//////」「善処するよ・・・・」
そう言って、俺は真っ昼間にも関わらず、メガーヌを抱いた。
メガーヌも最初は恥かしがっていたが、それはあくまで最初だけであり、後半はメガーヌの方から俺を求めてきた。
そんなアダルトな両親の光景を少し離れた場所で顔を真っ赤にしながら見ている人影があった。
「まったく、お父さんもお母さんも昼間から・・・・・少しは自重してよね
//////」良介とメガーヌの娘、ルーテシアだった。
「・・・・でも、弟か妹は欲しいな〜・・・・・頑張ってね、お父さん、お母さん」
そう言ってルーテシアはガリューと共に、自宅兼ペンションから遠ざかった。
ルーテシアは空気が読める子でもあったのだ。
それからルーテシアの友達が来た時、まさかルーテシアの友達が、昔の知り合いばかりだったのには驚いた。
そして、俺が結婚しているのを知らなかったなのは達と一悶着があったのは言うまでもなく、俺はオフトレの模擬戦に強制的に参加させられた。
この時、なぜか敵チーム側の昔の知り合い(エリオ、キャロ、スバル、ノーヴェを除く)は俺にばかり集中的に攻撃をしてきた。
(やっぱり夜はメガーヌに癒してもらおう)
そう思いながら俺は必死に迫りくる連中の攻撃をかわし続け、逃げ続けた。
一度は止まった良介とメガーヌの人生と言う時計は、こうして再び針を刻む事となった。
この後も二人は互いに支えながら死が二人を別つまで共に過ごして行く事だろう・・・・。
おまけ
時系列はメガーヌとルーテシアが良介と会う前日の夜。
海鳴にある高級ホテルのレストランで食事をする一組の親子が居た。
「ねぇ、お母さん」
娘の方が食事の手を止め、母に訊ねる。
「ん?何かしら?」
「明日、お父さんに会えるってホント?」
「ええ、本当よ」
少し不安そうに尋ねる娘に母は微笑みながら言う。
「お父さん・・・・どんな人なんだろう?」
娘の方はまだ見ぬ父に期待を膨らませている様子。
母の方もそんな娘の様子と明日会える旦那の事を思っていた。
そんな、親子水入らずの中、無粋な言葉をかける連中がいた。
「へーい、彼女、俺達と一緒に飲まない?」
ワインの瓶を片手に親子に話しかけて来たチャライ若者。
若者の後ろには同じくチャライ連中がいた。
「車椅子だなんて大変でしょう?」
「俺達が手取り足取りお世話してあげるよ」
「まぁ〜その分、お礼もしてもらうけどなぁ〜」
下心一杯の目で母を見るチャラ男達。
「良く見ると、娘の方も可愛いじゃん!!どお?お嬢ちゃん、お兄さんと良い事しない?」
「お前ロリコンの気があったのかよ!?」
チャラ男達は勝手に盛り上がっているが、母子の方はそんなチャラ男たちを完全に無視している。
「ねぇ、彼女、どうだい?一杯?」
無視されていた事に気付いたのかチャラ男が母に近づく。
「結構よ。私には心に決めた人が居るので」
「そんな事言わずにいいじゃん」
尚も食い下がるチャラ男。
流石にチャラ男達のしつこさに対し、頭に来たのか、母は・・・・
「いい加減にしないと・・・・男としての機能を潰すわよ」
母が目をスッと細くすると、辺りに妙な空気が漂う。
「残りの人生も男でいたいでしょう?」
「・・・・」
ついでに子供の方も、母親が苛められているのかと思い、母親同様殺気を含んだ目でチャラ男達を睨む。
チャラ男達も本能的にその空気を感じ取ったのか、
「し、失礼しました!!」
慌てて逃げて行った。
レストランでの一件後、部屋に戻った母子は明日のため、早々にベッドに横になった。
「さっ、早く寝ましょう」
「うん・・・・明日はお父さんに会う日だからね」
娘は明日が待ち遠しい様子で眠った。
そして翌日の早朝・・・・。
「さてと・・・・」
母親が、眠っている娘を前に何やら呪文を唱えると、
眠っている娘の周りに紫色の光を放つ魔方陣のようなモノが現れ、娘の姿が消えた。
娘の姿が消えたのを見て、
「さて、それじゃあ私も行くとしますか・・・・。待っていてね、良介君・・・・」
娘の母親は・・・・メガーヌ・アルピーノは口元をフッと緩めた。
あとがき
一話限りの良×メガの話です。
リンディの扱いに一部アンチのようなものが入ってしまいました。リンディファンの方々申し訳ありません。
夫婦設定な良介君だとなぜか、アダルトで親バカな性格になってしまいますが、今までの孤独からの反動のようなものだと思ってください。
大食いな友達三人はもちろん、スバル、ノーヴェ、エリオを指しています。
最後の模擬戦で良介君に襲いかかって来たのは、なのは、フェイト、ティアナの三人です。
なのはとフェイトは自分たちが結婚式に呼ばれなかったため、ティアナは良介にリベンジを吹っ掛けた感じです。
この世界の良介君とギンガの関係は当初はネーブルから発売されたゲームソフト『
SHUFFLE』の土見 稟と芙蓉 楓の幼少期と同じような関係だとお思い下さい。ただし、ギンガはヤンデレにはなりませんでした。
StrikerS
はキャラが多いせいか、中の人が一人二役以上やっていました。特に数の子が・・・・。
この作品のヒロイン、メガーヌさんもティアナの中の人が担当していましたが、何故かクイントさんだけは被りがありませんでした・・・・
何か事情があったのでしょうか?
大人の事情が・・・・。