六話 懐かしい魔法
太一さんとアグモンが空の彼方へと消えた後、俺達は太一さんの家に戻った。
「あの・・・・ヒカリ、何か食べる?それとも何か飲むか?」
帰り道、ヒカリはずっと顔を俯いているままであった。
あまりにも気まずいため、俺はヒカリに声をかけた。
しかし、
「ううん・・・・いらない・・・・」
ヒカリの声は元気がない。
それは風邪によるものではなく、兄である太一さんが異世界であるデジタルワールドへ行ってしまった事が原因だろう。
「ヒカリ」
「ん?何?」
俺はヒカルの頭を撫で、
「そう、心配するな。太一さんは無茶なことをするけど、ヒカリを悲しませるような事はしないから、だから太一さんの無事を信じて帰りを待とう・・・・太一さんが帰ってきた時、ヒカリが元気じゃなかったら、太一さんきっと心配するから」
と、ヒカリを励ました。
「う、うん・・・・」
それから暫くしてヒカリのお母さんの裕子さんが帰ってきたので、俺は自分の家に帰った。
「良介。さっき妙な気配が外からしたけど何かあったの?」
「ああ、オーガモンとかいう鬼のようなデジモンが居たんだ」
「それでソイツは!?」
「太一さんのパートナーデジモンのコロモンが追っ払った。その後、太一さんはコロモンと一緒に異世界へ旅立っていった・・・・」
「そう・・・・」
「少し疲れた・・・・ちょっとだけ寝るわ・・・・・」
その後、俺は少し疲れ、ベッドに横になった。
それからどれだけの時間がたったどろうか?
「・・・・すけ・・・・・りょう・・・・・良介!!」
ドラコモンが俺の耳元で怒鳴りその声で俺は目をさました。
どうやら、ベッドに横になったまま、いつの間にか眠っていたようだ。
「な、なんだよ!?ドラコモン?」
「また妙な気配がする・・・・デジモンだ!!」
「えっ!?どこから!?」
「あっちの方からだ!」
ドラコモンはベランダからある方角を指さした。
「行くぞ、ドラコモン」
「うん!!」
ドラコモンは成熟期のコアドラモンに進化して良介を背中に乗せ、デジモンの気配がするという場所へと向かった。
そしてその場所は・・・・・。
「ここは・・・・・光・・が丘・・・・・」
コアドラモンの背中から俺が見た場所は、かつて自分が住んでいた土地でもあり、ドラコモンと出会った場所だった。
良介が唖然とした表情で光が丘を見下ろしていると、
ドッカ――ン!!!
団地の一角から爆発音が聞こえ、煙が立ち上っていた。
「コアドラモン!!」
「ああ!」
コアドラモンは爆発が起きた方向へと向かうと、そこには大きな鳥人とマンモスのようなデジモンが戦っていた。
ガルダモン 完全体 鳥人型デジモン 属性 ワクチン
大空を自在に舞うことのできる翼と、巨大な鉤爪を持つ鳥人型デジモン。
鳥型デジモンの中でも知性と戦闘能力の高い、選ばれしデジモンのみ進化すると言われ崇拝されている。デジタルワールドの秩序が乱れると、どこからともなく現れ、乱れの根源を正し平穏に導くと考えられている。
必殺技は超速で真空刃を繰り出し、敵を切り刻む『シャドーウィング』。
シャドーウィングはあまりの速さのため、その正体を確認することはできず、黒い鳥の形をした影のみ認識することができる。
マンモン 完全体 古代獣型デジモン 属性 ワクチン
全身を濃い体毛で覆われ、太古の強大なパワーを持つデジモンだが、極端な熱さに弱い一面を持つ。
顔面を覆う仮面に刻まれた紋章は、超古代の英知の結晶であり、遥か彼方まで見通すことができる千里眼の力を持ち、大きな耳は遠く離れた場所の音まで聞き分ける。
必殺技は長く伸びた
2本の牙で相手を突き刺す『タスクストライクス』と、長い鼻から一気に冷たい息を吐き出して、どんな相手も一瞬で凍らせる『ツンドラブレス』。
「シャドーウイング!!」
黒い鳥の形をした影がマンモスに当たると、マンモスは粒子になり消え去った。
すると、マンモスを倒した鳥人の姿は光と共に変化した。
光が収まると、そこに居たのはピンク色の球根の形をしたデジモンだった。
ピョコモン 幼年期
U 球根型デジモン頭に大きな花を咲かせた球根型のレッサーデジモン。
根のような触手を器用に動かすことで移動することができ、短い距離だがフワフワと空に浮かび上がることができる。
群れをなして生活する習性があり、群れによっては数匹から数百匹にもなるという。
そのピンク色の球根・・もとい、ピョコモンは空の下へ戻っていった。
「太一さん・・・・空さん・・・・・それにヤマトさんも・・・・」
真下には数時間前に異世界へと再び旅立っていった太一さんの姿と顔なじみの先輩たちの姿だった。
しかも皆の近くにはパートナーデジモンらしき、デジモンたちもいた。
(やっぱり、太一さん達はデジモンたちの世界に行っていたのか・・・・)
「どうする良介?降りる?」
「いや、ここではまずい。騒ぎを聞きつけ警察や消防が来たみたいだ・・・・それに太一さん達も移動を始めている」
遠くからパトカーと消防車、救急車のサイレンの音が聞こえた。
太一たちもそのサイレンの音を聞き、この場から離れ始めている。
「一度帰ろう。太一さんがここに居るってことは夕方にはお台場の家に戻るだろうし」
「分かった」
コアドラモンはくるりと体を反転し、針路を変更して、お台場へと帰っていった。
「あれ?」
お台場へと帰っていく良介達の姿を太一達と共にデジタルワールドを旅したお台場小学校六年生の城戸丈が目撃していた。
もっとも、目撃といってもコアドラモンは人目を避けるため、すぐに雲の中へとその姿を隠したため、チラッと見えた程度であったが・・・・。
「ん?どうした?丈?」
上空を見ながら唖然としている丈を見た太一が丈に声をかける。
「い、今・・あそこに竜が・・・・」
丈は竜(コアドラモン)が消えた雲の彼方を指さした。
「おいおい、丈。ここはもうデジタルワールドじゃないんだぞ」
ヤマトがからかうように言う。
「ホントなんだってば!!本当にあそこに竜がいたんだってば!!」
ヤマトにからかわれ声をあげる丈。
「どうせ飛行機か鳥を見間違えたんでしょう?丈先輩意外とそそっかしいところあるから」
空までもが、丈をからかった。
「本当なんだってば!!本当にあそこに竜がいたんだってば!!」
顔を赤くし、声をあげる丈。
しかし、デジタルワールドではなく、人間の世界に竜が居るはずも無く、丈の言ったことは誰も信じてくれなかった。それは自分のパートナーデジモンも例外ではなかった。
そんな丈を尻目に太一はデジタルワールドで出会ったゲンナイの言葉を思い出していた。
「選ばれし子供は、実は現実世界に後二人居るんじゃ。ヴァンデモンは、その二人を抹殺する為に現実世界へと向かったんじゃ・・・・」
太一達、皆は光が丘に来てマンモンと戦って数年前のデジモン事件を思い出した。
俺達選ばれし子供達は昔、光が丘に住んでいてデジモンを見ている・・・・
そしてデジモンを知っている・・・・
太一の頭の中にはヒカリの顔が浮かび上がった。
「ヒカリ・・・・」
「太一、何か言った?」
コロモンが太一に尋ねた。
「い、いや何でもない・・・・」
「そう?」
「ああ・・・・」
太一はそう言うが、心の中のモヤモヤは消えなかった。
(ヒカリは選ばれし子供じゃない!!幾らコロモンを知っていたとしても、アイツはキャンプに参加していないし、パートナーデジモンも居なければデジヴァイスも持っていないじゃないか!!)
そう、自分に言い聞かせるが、結局、太一の心の中のモヤモヤは完全に消えることなく、お台場へと向かった。
俺はコアドラモンに乗ってお台場に戻ると、お袋に頼まれていた夕飯のお使いに出かけた。
買い物が終わり、家に帰る際、魔女帽子を被り、マントをつけた妙な奴が道端で手品をしていた。
帽子とマントで顔はよく見えないが、気配が人間とは異なる。
俺はジッとソイツを遠巻きで見ていると、ソイツも俺視線にきがついたのか、その妙なマジシャンと目が合った。
「ヤバッ・・・・」
俺は急ぎマジシャンから目をそらすとその場から立ち去った。
家に戻る最中、後ろから誰かが追ってくる気配がした。俺は敢えてソイツをおびき出すため、人気の無い路地に入った。
そして・・・・。
「こそこそしてないで出てきたらどうなんだ?」
俺は振り向かずに声をかけると、
「ほぉ〜気づいていたのか?」
どこからともなく俺の背後にはあの怪しいマジシャンがいた。
「俺に一体何の用だ?」
「単刀直入に聞くよ。君は八人目か九人目の選ばれし子供かい?」
「選ばれし子供?なんだ?そりゃ?」
突然マジシャンから訳の変わらないことを言われ、良介は困惑する。
「どうやら君は選ばれし子供の意味を知らないようだな?」
「当たり前だ!!いきなり『君は選ばれし子供かい?』って聞かれて『はい、そうです』というほど、俺は厨二病じゃねぇよ!」
「では、説明しよう。『選ばれし子供』の意味を・・・・」
そしてマジシャンは『選ばれし子供』について説明した。
「成程、確かにお前の言う条件を俺は満たしているな・・・・」
デジヴァイスを持っている事
パートナーデジモンがいる事
紋章を持っている事
以上の三点からこのマジシャンが言う『選ばれし子供』の条件を俺は満たしていることになり、こいつらから言わせれば俺はその『選ばれし子供』という事になる。
「それで、俺がその『選ばれし子供』だったらどうする?紋章とデジヴァイスを奪うか?それとも命を奪うか?それとも両方か?」
俺は内に殺気を込めて、マジシャン問う。
「いや、ただ確認したかっただけだ・・・・。手を出すつもりはない」
意外にもマジシャンはあっさりと引き下がる。
「近じかまた会うことになるだろう・・・・すまないね、付き合わせてしまって・・・・」
「そうかい・・・・そう言えばアンタ、何て名前なんだ?俺は宮本良介」
「・・・・ウィザーモン」
ウィザーモン 成熟期 魔人型デジモン 属性 データ
別次元のデジタルワールドからやってきたとされる上級の魔人型デジモン。
人前では決して素顔を見せようとしない。
必殺技は雷雲を呼び出し、強烈な雷撃を繰り出す『サンダークラウド』。
自分の名を名のりウィザーモンはその場から姿を消した。
夕方、太一さんは無事にお台場の家へと戻った。
太一さん曰く、サマーキャンプは突然の雪の影響で中止となったらしい。
そして俺は太一さんに何故か無理矢理呼び出され、今、俺は太一さんの部屋にいる。
「なぁ、良介。お前、お台場に来る前光が丘に住んでいたんだよな?」
「えっ?ええ・・・・でも、なんでそれを?」
「ヒカリから聞いたんだ・・・・それじゃあ、数年前に起こった光が丘の事件の事を何か知っているか?」
「ええ、知っていますよ。オレンジ色の恐竜・・・えっと・・・・確かグレイモン・・・・でしたっけ?それと緑色の大きなオウムがガチバトルをしているのを俺も見ましたから・・・・でも、あれって世間では爆弾テロって事になっているんですよね?・・・・それがどうかしました?」
「い、いや何でもない・・・・態々呼び出したりしてすまなかったな」
太一さんは笑いながら俺に言ってきた。
(太一さん、それだけ動揺していたら説得力がありませんよ・・・・まぁ詳しいことは聞きませんけど・・・・)
「それじゃあ、俺はこれで帰ります」
「あ、ああ。またな・・・・」
俺は太一さんに挨拶をして部屋を出た。
途中、リビングで会ったヒカリと太一さんの母さんと父さんに挨拶をして自分の家に帰った。
太一は良介を見送りつつ頭の中で考え込んでいた。
良介もやっぱり光が丘での事件を覚えていた。
しかもグレイモンの事も知っていた・・・・。
やっぱり八人目と九人目の選ばれし子供は、ヒカリと良介なんじゃあ・・・・。
だけどヒカリに聞いたら、デジヴァイスは持ってないと言っていた。
あっ、いけねぇ良介にデジヴァイスを持っているかどうか聞くのを忘れた。
でも、ヒカリも良介もデジタルワールドに行っていないからパートナーデジモンがいないし・・・・うーん・・・・。
「太一、大丈夫?」
コロモンが考え込んでいる太一の顔を見ながら聞いてきた。
「・・・・なぁ、コロモン」
(一人で考えていてもしょうがない。誰かに聞いてみるのも一つの手だよな・・・・)
そう思い、太一はコロモンに話しかけた。
「どうしたの?太一?」
「俺さぁ、何となくだけど、八人目と九人目の選ばれし子供がヒカリと良介なんじゃないかって思うんだ」
「えええっ!?ヒカリと良介が選ばれし子供!?」
「ば、バカ!!静かにしろ!!」
太一は慌ててコロモンの口を塞ぐ。
「でも、確証は無いんだ・・・・。ヒカリはお前の事を知っていたし、数年前にデジモンを俺と一緒に見ている。それに良介も光が丘に住んでいたし、グレイモンの事も知っていた。幾らなんでもデジモンの名前まで知っているなんておかしい・・・・。だとしたら、俺はアイツ等が選ばれし子供だと思うんだ。・・・・でも。ヒカリはデジヴァイスを持っていないし、パートナーデジモンもいない。良介も同じような状況だ・・・・なぁ、コロモン。お前はどう思う?」
「うーん・・・・ボクに分からない。でも、太一がそう思うんならボクは信じるよ、太一の事」
「ありがとな、コロモン!」
太一はコロモンの頭を撫でた。
俺は八神家から帰ると、夕食を食べ、自分の部屋で目を瞑り、瞑想の状態に入った。
すると、良介の体の周りには薄らと虹色の光が滲み出してきた。
良介はデバイスの無い状態で、魔法を使おうと、訓練しているのだが、あと一歩のところで、決め手にかけている。
目を開けると、体の周りに纏っていた魔力光は呼答するかのように消えた。
「ダメだぁ〜・・・・あともう少しなんだけど、何かがたりねぇ・・・・何か決め手のようなモノが・・・・」
ゴロンと床に寝そべって呟く良介。
ふと、横をみると、以前図書館で借りてきた本は目に入る。
地球は元々、管理局にとっては管理外世界・・・・つまり魔法は存在しない世界と認知されてきたが、前世ではなのはやはやては魔法を使うことの出来る素質を持っていた。おそらくこの後世のなのはやはやても同じだろう。
そして自分も微弱ではあるが今、こうして魔力を使える。
歴史を調べてみると、中世のヨーロッパでは魔法の存在がおぼろげながらも本に書かれており、魔女狩りなんて物騒で血生臭いものも存在していた。
そこで、何かヒントになるものは無いかと図書館へ行ってみると、嘘か本当かは定かではないが、陰陽術や言霊、黒魔術に関する本を見つけ、俺は特に当てにはしていなかったが、参考程度にそれらの本を借りてきた。
起き上がり、本をとってページをめくっていくうちに、魔力の発動に血を媒介にして使う魔術なんてものがあった。
「血を媒介に・・・・ねぇ・・・・」
(やっぱり、大して参考にはならなかったな・・・・)
そう思い、俺は本を閉じ、再び床に寝転がり、これからの事を考えていると、突然、ドラコモンが再び窓の外を睨んだ。
「ん?どうした?ドラコモン?・・・・まさかっ!?また!?」
「うん・・・・デジモンの気配だ・・・・」
「どういうことだ?一日に何度も?」
「わからない?でも、良介がお使いに行っている間にもデジモンの気配をあちこちで感じたし・・・・」
ドラコモンは窓の外を睨みながら言う。
昼間横断歩道であった緑色の鬼に(オーガモン)光が丘で見た鳥人(ガルダモン)とマンモス(マンモン)それにお使いの帰りにあったウィザーモン。そして今のドラコモンの様子から近くにデジモンがいるのに間違いない。
「行くぞ、ドラコモン!」
「おう!」
ドラコモンは再びコアドラモンに進化し、俺を乗せて、夜のお台場の空へ舞い上がった。
デジモンの気配がした東京湾の現場に行くと、ヘドロの塊の様なデジモンと大きな昆虫型のデジモンが戦っていた。
レアモン 成熟期 アンデッド型デジモン 属性 ウィルス
全身の筋肉が腐り落ちたアンデッドデジモン。
体を機械化することで生き長らえようとしたが体が安定せず、体を構成するデータが崩壊し始めている。しかし、機械による生命を与えられているので、死ぬことはなく醜い姿のまま生き長らえている。
体が崩壊しているため攻撃力や知力はなく、本能のまま行動している。
必殺技は口から吐き出す『ヘドロ』。
カブテリモン 成熟期 昆虫型デジモン 属性 ワクチン
かなり特異な昆虫型デジモン。
どのような経緯で昆虫タイプに進化したのかは不明だが、蟻のようなパワーと甲虫が持つ完璧な防御能力を併せ持っている。特に頭部は金属化しており、鉄壁の防御を誇る。
必殺技は青白いエネルギー弾を発生させて相手にぶつける『メガブラスター』。
レアモンとカブテリモンが戦っている中、カブテリモンのテイマーである光子郎は自身のデジヴァイスを見て驚いた。
光子郎のデジヴァイスには自分のモノとは違うもう一つのデジヴァイスの反応があったのだ。
「この近くに、八人目か九人目の子供が居る!!」
光子郎は八人目か九人目の選ばれし子供を探すため、東京湾の倉庫街を走り回った。
上空から二匹のデジモンを見る限り、昆虫型のデジモンは先程チラッと見えた光子郎のパートナーデジモンだと判断した良介はレアモンをカブテリモンに任せ、コアドラモンを成長期のドラコモンに戻し、レアモンの他にまだデジモンが居ないか倉庫街を探索していた。
「こう、広いんじゃあわかりにくいな・・・・」
「それじゃあ二手に別れよう」
「そうするか・・・・」
良介とドラコモンは手分けをしてデジモンの探索に向かった。
ドラコモンと別れ、デジモンを探していた良介は背後から殺気を感じ、咄嗟にその場から跳んだ。
その直後、さっきまで良介が立っていた場所には大きな注射器が突き刺さっている。
「誰だ!?」
「ヒヒヒヒ・・・・見つけたぞ。八人目か九人目の選ばれし子供」
人を小馬鹿にした様な笑い声と共に空からは小さなコウモリのようなデジモンが降りてきた。
ピコデビモン 成長期 小悪魔型デジモン 属性 ウィルス
蝙蝠の姿をした小型の使い魔デジモン。
デビモンやヴァンデモンなどの上級デジモンの使い魔として存在しており、単体で目撃することは稀である。
必殺技は大きな注射器を投げつける『ピコダーツ』
「お前もあのヘドロヤロウの仲間か?あっちこっちで凶暴なデジモンをばら撒きやがって!!」
「どうやら自分の置かれている立場がわからないようだな?それにデジモンを知っていると言うことはやはりお前は八人目か九人目だな?」
「だったら・・どうする?」
「お前はここで死ね!!ピコダーツ!!」
そう言うとピコデビモンは再び大きな注射器を良介に投げつけてきた。
「ちっ」
良介は再び注射器をかわすが、一本の注射器が良介の腕を掠め、そこから血が流れた。
「くっ・・・・」
「ヒヒヒヒ・・・・今度は外さねぇぞ」
ピコデビモンは良介に傷を負わせ、追い詰めて、既に勝ったと思い込んでいる。
「・・・・」
良介は傷口を抑えた手を見ると、そこにはベットリと血が付着していた。
「どうした?恐怖で声も出ないか?」
ピコデビモンはニヤリと口元を歪める。
「普通ならば苦しまずにひとおもいで楽にしてやるが、選ばれし子供には向こうの世界で随分世話になったからな、同じ選ばれし子供のお前も同罪だ!せいぜい苦しませて殺してやる!!その後でデジヴァイスと紋章をいただく・・・・」
ピコデビモンは殺気を再び露わにして注射器を投げつける体制をとる。
「・・・・お前の技と血を見て、懐かしい技を思い出したぜ・・・・・そう、今はまだ会えない・・・・もう一人の相棒の得意技を・・な・・・・」
「何訳のわからないことを言っていやがる!?」
(血を媒介に・・・・か・・・・)
良介が目を閉じ意識を集中させイメージする。
「止めだ!!死ねぇ!!ピコダーツ!!」
ピコデビモンがまた大きな注射器を良介目掛けて投げて来ると、
良介の血が付いた手が突如、虹色に光り出した。
「刃にて血に染めよ・・・・穿て、ブラッディダガー!!」
良介の呪文の言葉と共に良介の手には突如、血の色のナイフが現れると、良介はそれを自分目掛けて近づいてくる注射器に投げつけた。
注射器とナイフはそれぞれ当たると、爆発し、相殺された。
ブラッディダガー・・・・それは前世で良介の相棒を務めていたユニゾンデバイス「ミヤ」の得意とする技だった・・・・。
投げつけられる注射器と自らの血を見て、懐かしくも思いだした技を良介は咄嗟にそれを使用したのだった。
ただし、デバイスの補助なしで使ったため、疲労が体にドッときた。
「な、なんだ!?お前?その技は!?人間がそんな事出来るわけが・・・・・」
一方、ピコデビモンはただの人間の筈の良介の手が突然虹色に光り、そこからナイフを出したことに驚きを隠せなかった。
(意外に役だったな、あの本・・・・)
本番での一発勝負だったが、血を媒介にしたことにより成功した魔法に意外性をかんじる良介。
一方、ピコデビモンはあまりにも動転していたため、自分の背後から近づく影に気がつかなかった。
「テイルスマッシュ!!」
ピコデビモンの背後から迫ったドラコモンはピコデビモンの頭に自らの尻尾を叩きつけた。
「へぶっ!!」
突然の背後からの奇襲によりピコデビモンは一撃でノックアウトとなった。
「大丈夫か!?良介!!」
ピコデビモンをノックアウトしたドラコモンが良介の傍に寄ってくる。
「あ、ああ。カスリ傷程度だ」
「今日はもう帰ろう。あっちもそろそろ決着がつきそうだ・・・・それにここら辺いるのはレアモンとコイツだけのようだ」
ドラコモンの言う「あっち」とはレアモンとカブテリモンの事であり、
勝者は言うまでもなくカブテリモンの方だろう。
「そうだな・・・・帰ろう・・・・少し、疲れた・・・・」
(それにしても太一さん達、向こうの世界で一体何をやらかしたんだ?あのチビコウモリのトバッチリが全部俺に来じゃないか。今度何か奢ってもらうからな・・・・)
良介は心の中でデジタルワールドに行った太一達に愚痴を言う。
そしてドラコモンはコアドラモンに進化すると、良介を乗せ夜空に舞い上がった。
「光子郎はん。こっちは終わったで・・・・」
レアモンを倒したカブテリモンが光子郎の下に戻ってきた。
「ああ、カブテリモン・・・・」
カブテリモンは自分のパートナーである光子郎が額に汗をかき、少々残念そうにしているのを見て、その理由を尋ねた。
「ん?どうしたんでっか?」
「さっき、デジヴァイスに反応があったんです。多分八人目か九人目のデジヴァイスの反応です」
「ほんまでっか!?」
「はい・・・・でも、反応は次第に遠ざかっていきます。恐らくこの場から移動したのでしょう・・・・」
「そうでっか・・・・そらぁ残念や」
「でも、八人目か九人目がお台場の近くに住んでいる事が分かっただけでも収穫ですよ。明日、皆さんに教えないと!!」
その後、光子郎はカブテリモンの背中に乗り、家路についた。
その帰り道・・・・。
光子郎のデジヴァイスが再び光り出した。
「これは!?」
「光子郎はん?どうしたんでっか?」
「デジヴァイスが反応している!?」
「な、なんやて!?ほんまでっか!?」
「この近くに居るんだ!八人目か九人目が!!」
光子郎がキョロキョロと辺りを見回していると、カブテリモンの前方の上空に一匹の竜が飛んでいた。
「あれはっ!?まさかデジモン!?」
「そう言えば、光が丘で丈はんが『竜を見た』って仰っていましたなぁ」
「それじゃあ丈さんが見たのは鳥でもなく飛行機でもない、竜型のデジモンだったんだ!!しかもそのデジモンは・・・・」
「八人目か九人目のパートナーの可能性があるわけやな・・・・」
「カブテリモン。何とかあの竜に追いつけますか?」
光子郎は何とかここで追いついて正体を探りたいと思っていた。
しかし、
「むぅ〜・・・・ちょっと難しいですわ。今もこれで精一杯なんやけど、一向に追いつけませんわ・・・・」
カブテリモンも光子郎の期待に答えようと精一杯にハネを羽ばたかせ追いつこうとするが、竜との距離は一向に縮まず、それどころか次第に離されていく始末。
やがて竜は雲の中にその姿を消し、これ以上の追跡は不可能となった。
登場人物紹介
城戸丈
お台場小学校
6年生で、デジタルワールドを旅した選ばれし子供たちの中では最年長。パートナーデジモンはゴマモン。
気弱なガリ勉タイプで、融通が利かない所や優柔不断な所があったが、デジタルワールドでの旅の中で最年長者としての自覚と、広い視野を持つようになり、立派な保護者役へと成長を遂げた。
デジヴァイスの色 灰色
紋章 誠実の紋章
CV
菊池正美
カブテリモン(テントモン)
泉光子郎のパートナーデジモン。
関西弁を喋り、一人称は「ワテ」。知識の紋章を持つ者のパートナーであるからか物知りだが、割と表面的な事しか知らない事もあり、物事を深く考えるような事は基本的にしない。
相手の名前や苗字の後ろに「はん」をつけて呼ぶ。
成長期であるテントモン時の必殺技はハネで静電気を起こし、相手に飛ばす『プチサンダー』
進化順は以下のとおり
幼年期 バブモン
幼年期
U モチモン成長期 テントモン
成熟期 カブテリモン
完全体 アトラーカブテリモン
CV
櫻井 孝宏
ガルダモン(ピヨモン)
空のパートナーデジモン。甘えん坊な性格でパートナーの空が大好き。しかしいざという時は勇敢になる。空にしかられるとシュンとしてしまうこともある。
性格は女の子的だが、完全体の姿や声はとても逞しい。空を飛ぶことができるが、あまり素早く空を飛ぶことができないのが悩み。
ピヨモン時の必殺技は青い炎を放つ『マジカルファイヤー』
進化順は以下のとおり
幼年期 ニョキモン
幼年期
U ピョコモン成長期 ピヨモン
成熟期 バードラモン
完全体 ガルダモン
CV
重松花鳥
武之内空
お台場小学校
5年生。パートナーデジモンはピヨモンもともと女の子扱いされるのが苦手で、スカートも穿かず、ミミと比べるとボーイッシュだったが、甘えん坊のピヨモンに接するうちに、自分の内にある母性を認めるようになった。
デジヴァイスの色 赤
紋章 愛情の紋章
CV
水谷優子
あとがき
アヌビスさんの作品でも、良介君は自らの血を媒介に魔法を使っていましたし、
fateの登場キャラ、遠坂凛も自らの血を宝石に染み込ませ、媒介にしていたので、デバイスを手に入れるまで、良介君は魔法の使用には自身の血液を使用するという不便をかけます。
ドラコモンにノックアウトされたピコデビモンは小物と判断され、そのまま放置されました。