三十六話 ぼくらのウォーゲーム
突然現れた新種のデジモン。
そいつの存在でネット状況に乱れが生じた・・・・。
しかし、それはまだ序章に過ぎず、そのデジモンを倒すために、挑んだアグモン達であったが、進化の途中で攻撃を受け、退化し、新種デジモンもその隙に逃げられてしまった。
だが、ここで諦めるわけにはいかなかった・・・・。
「大丈夫か、アグモン」
「ごめん、太一ぃ」
「ドラコモン」
「すまない良介」
「テントモン」
「あいつ、とんでもない奴や・・・・」
三人は肩を落とした。
インフェルモンは抜け道を作るとそこへ飛び込み、行方を眩ませ、奴の所在が分かるまで、アグモンたちを休ませることにした。
完全に後手後手だ。
「進化中に手出すなんてキタねぇじゃねぇか!」
太一は床を殴って、声を少し大きくしてインフェルモンに対して文句を言った。
「いや、戦術的には理に適っています。むしろ、今まで無かった方が不思議なんですよ」
「あっ、オーストラリアの男の子からメール来ていますよ」
「え、なんだって?」
「『さっきのデジタルモンスターというんですか?はじめて見ました』」
「見ていたのか、今の戦い」
「あっ、コッチはシンガポールから。『三対一なのに負けるなんて弱過ぎる』」
「ウルセェ」
「全くだ。お前なら、ドラコモン以上のデジモンを育て上げる事が出来るのか?」
太一と良介は失礼なメール文を送りつけたシンガポールの子供に文句を言う。
「他にも何通か・・・・あっ、クラゲからのメールだ!」
光子郎がインフェルモンのメールを開くと、其処には「モシモシ」の文字が永遠に続いている文面が表示された。
「モシモシモシモシ・・・・何だ?こりゃ!?」
「た、大変ですよ!」
太一がインフェルモンのメールに呆れながらそう言うと、光子郎はメールを見ながら驚いた顔をして太一達に言ってきた。
「大変ですよ!アドレスを見て下さい!奴は今、NTTに居るんです!」
「え、NTT?」
光子郎がインフェルモンのメールアドレスを指差しながら、太一と良介の顔を見てそう言った。
「っ!?ヤバい!!太一さん、早く皆に連絡を取らないと、電話が使えなくなるかもしれません!!」
「わ、分かった!」
良介は焦りながら太一にそう言うと、太一は今の事態を理解した様で電話の子機をリビングから取ってきて、急いで皆に電話をかけ始めた。
太一は一番戦いに参加出来そうなヒカリが居る家に電話を入れた。
「ダメよ!私今一番勝っているから抜けられないよ」
ヒカリは誕生日会の会場でなにかゲームをしているようで、途中退室は無理だと言ってきた。
次に空、島根のヤマトとタケルが居る家、ミミ、丈の家にも電話をかけたが、どこも話し中だった。
そこで一度電話を切ると、少し経ってから電話のコール音が鳴り、太一が電話に出てみると、
「モ〜シモ〜シモシモ〜シモシモシモシ(ry」
電話の先からインフェルモンの声が、電話からずっと聞こえてきた。良介も電話口に耳を寄せると、宇宙人の様な声で「もしもし」と言い続けているインフェルモンの声が聞こえてきた。
「こわっ!?」
「何だよ!?これ!?どうなってんだよ!?」
「奴が交換機に潜り込んで、電話をかけまくっているんですよ。回線をパンクさせる気なんです!!」
「そ、そんなことされたら、誰とも連絡が取れなくなる!」
「インターネットだって!」
「あぁ!!」
光子郎が気まずそうに振り向くと、
「切られちゃった・・・・」
等々インフェルモンの手によって電話とインターネット回線がオーバーロードし、使用不能となってしまった。
今、一番起こって欲しくないことが起こってしまった。
インターネット、電話が使えなくなると、光子郎は荷物をそのまま置いて玄関に向かって走り出した。
「あら、光子郎君もう帰るの?」
「直ぐに戻ります!!」
そう言い残し、光子郎は何処かへ向かって行った。
太一と良介は打つ手がなくなり、ただ足の向くままリビングへ向かうのだった。
「母さーん。もうだめかもー」
「はぁ〜」
「なにを言っているの?」
なにが起こっているか知らない裕子はキョトン、としていた。
太一はリビングの机に突っ伏し、良介は何気なくテレビを見た。そして画面を見て大きく目を見開いた。
「た、太一さん!!」
「ん?」
「あ、あれ!!」
良介はテレビを指差し、叫んだ。太一がテレビの方に目をやると、災害伝言ダイヤル
171の文字。「こ、コレだ!」
太一は早速
171に電話をかけ始めた。「もしもし、ヤマト!この伝言聞いたら、すぐ返事くれ!!一大事なんだ!」
太一はその後、他の子どもたちにも同様に電話をかける。
そして、その電話を聞いていた裕子によって、ミミがハワイにいることを知らされたのだった。
「さすがにハワイじゃ・・繋がりませんね・・・・」
「あら、おかえりなさい」
「どうも・・・・」
タイミングがいいのか悪いのか、ちょうど光子郎が何かを持って戻ってきた。
「ハワイ・・ですか・・・・」
今、ミミが日本でなくハワイに居る事に光子郎も落胆の声を漏らす。
「ダメだ、完璧に」
「僕らっていまいち纏まりないですもんねー」
「ところで光子郎さんはどこへ行っていたんです?」
良介は光子郎がどこへ行ったのかを尋ねる。
「衛星携帯ですよ。これなら、NTTの交換機を通さずに外国のアクセスポイントに直結出来ますから」
「なら其れで、ヤマト達に連絡を・・・・」
「ダメですね。国内通話は結局、交換機を通るから」
「何だよ、クソッ」
太一は光子郎の話を聞いて、床に寝転がって無気力モードになった。
「そ、そういえば、そろそろ
171に伝言入っているのでは?」良介が太一に話しかけると、
「そうだ、忘れていた!」
太一はリビングから電話の子機を持ってきて、光子郎と良介に聞こえる様にスピーカーボタンを押して171に伝言が在るかを確認した。
すると、
「もしもしヤマトだけど、急ぎの用ってなんだよ?」
電話から、ヤマトの伝言が聞こえてきた。
「「やった!」」
「やっぱアイツ等、頼りになるぜ!」
ヤマトの伝言を聞き、直ぐに、ヤマトの婆ちゃんの家に171を使って伝言を言った。
「二人とも、デジヴァイス持っていますよね?」
「ちゃんと持って来たよ」
「おい、何があったんだ?」
「すぐパソコンにセットしてください!」
「ネットの中に凶悪なデジモンがいるんです!」
「戦う時が来たんだよ、俺達!」
ヤマトとタケルはメッセージを聞き、大変なことが起きていると瞬時に理解した。
しかし、此処で一つの問題が生じた。
「でも、デジヴァイスはあるけど、ここおばあちゃん家だから、パソコンなんてないよ」
「島根だって、パソコンくらいあるだろー!」
「そうですよ!ヤマトさんもタケルも島根馬鹿にしすぎ!!島根県民に謝れ!!」
太一と良介にそう言われ、ヤマトとタケルは急いで祖母の家を出てパソコンを探しに行った。
「よし、繋がった」
ヤマトとタケルがパソコンを探している中、太一達は光子郎が持ってきた衛生電話でパソコンをインターネットに繋げていた。
しかし、インフェルモンの姿はすでにそこにはなく、
NTTからアメリカのサイトへと移動していた。「この野郎、面白がってやがる!!」
「完全体とはいえ、まだ生まれたての子どもですからね。何をするかわかりませんよ」
「それってピノッキモンよりも性質が悪いですね」
「誰かなんとか止められないのか?」
「このデジモンが原因だなんて、誰も思わないよ」
「なら、どうすりゃいいんだよ!」
「やっぱりアグモンたちに戦ってもらうしか・・・・」
そのとき、パソコンの画面にヤマトとタケルが映った。どうやら無事にパソコンを見つけてデジヴァイスを接続したようだ。
「ヤマトさん!タケル!」
「待たせたな」
「デジヴァイス、接続したよ」
「一時はどうなることかと思ったぜ」
「太一さん、ウーロン茶貰います。」
すると光子郎が、ウーロン茶が入ったコップを持ちながらそう言ってきた。
「お前、さっきから飲み過ぎじゃないのか?」
太一は少し呆れながら、ウーロン茶を飲む光子郎にそう言った。実際光子郎はこの短時間にウーロン茶を三杯以上飲んでいる。
アグモン達の下にガブモンとパタモンが合流した。
「僕たちも来たよー」
「遅くなったな」
「頼むぜ、ガブモン!」
「がんばって、パタモン!」
「みんな、僕が誘導します!」
「「「「「
ok!!」」」」」「今度は絶対に奴を倒してみせる!」
太一はそう言って決意を固めると、インフェルモンが居るサイトの入り口が見えてきた。
インウェルモンが居るサイトにはコッチダヨーとインフェルモンが自分の居場所を示す看板が置いてあった。
「ふざけやがって」
「ヤマト、良介一気に行くぞ!」
「はい!」
「究極体だな!?」
アグモンワープ進化―――――
ウォーグレイモン―――――
ガブモンワープ進化―――――
メタルガルルモン―――――
ドラコモンワープ進化―――――
スレイヤードラモン―――――
「パタモンも進化だよ!」
「うん!」
タケルがパタモンも進化するように言うと、パタモンは頷いて進化をする準備をした。すると、パタモンを見ていたインフェルモンがパタモンに向かって突っ込んだ。そして、インフェルモンは一瞬にして究極体に進化した。
ディアボロモン 究極体 種族不明 属性 不明
ネットワーク上のあらゆるデータを吸収して進化と巨大化を繰り返し、電脳世界(デジタルワールド)で破壊の限りを尽くしている。多くのデータと知識を吸収したディアボロモンは自らを全知全能の存在と思い込み、破壊と殺戮を楽しんでいる。
必殺技は胸部の発射口から強力な破壊エネルギー弾を発射する『カタストロフィーカノン』。
「し、進化した!?」
「な、何て素早い!」
ヤマトと太一は、インフェルモンの余りの進化の早さに驚いた。
ディアボロモンは進化の準備をしていたパタモンに腕をゴムの様に伸ばして攻撃した。
パタモンは進化するのに集中していたので、ディアボロモンの攻撃を避ける事が出来ずに、攻撃をくらいサイト内に存在する鉄骨のようなモノに叩きつけられた。
「パタモン!?」
タケルはパタモンが攻撃されたので、心配した顔をしてパタモンを見た。
「パタモン!うわぁぁあ!!?」
パタモンを助ける為にパタモンに近付いていたテントモンもディアボロモンの腕を避ける事が出来ずに腕に掴まれ、サイト内にある鉄骨の様なモノに叩きつけられた。
「パタモン、大丈夫!?」
「テントモン!?」
タケルはパタモンを、光子郎はテントモンを心配した。
「其れより、パタモンを。」
テントモンは、苦しそうな声で光子郎達にパタモンの事を言ってきた。光子郎達がパタモンを見ると、目を閉じて完全に気絶していた。
「パタモン、パタモーン!僕もソッチに行くよ!パタモン!パタモン、パタモン!!」
「よくも、よくもパタモンを・・・・」
「やりやがったなぁー!」
「許さん!!」
仲間がやられて黙っていられるはずがなく、三体はディアボロモンへと攻撃を再開する。
ようやく戦況が、こちらが有利になり始めている。太一も良介も応援に力が入り、パソコンに釘付けになっていた。そのため、光子郎の異変に気付かなかった。
「太一さん!」
「なんだよ!」
「もうだめです!」
「光子郎さん、どうかしたんですか?」
「トイレ・・・・貸してください!」
そう言うと、光子郎はトイレに向かって走って行った。顔中汗まみれになっていたので、かなり我慢していたのだろう。
「おい!なんでこんな大事な時にぃ!」
「トイレなら仕方ないですよ」
そして、ようやく三対の究極デジモンはディアボロモンを追い詰めた。
「よし、とどめだ!」
パソコンの中から聞こえてきたヤマトの声に反応し、二人してパソコンを強く掴む。
「頼む。当たってくれ!」
「当たれ!!」
二人の願いも虚しく、攻撃はすべて外れてしまった。
「はっ、クソッ!!」
その悔しさから、太一がおもわずパソコンを強く叩くと、パソコンがフリーズしてしまった。
「「ああぁぁぁぁあああー!!」」
「ちょっ、太一さん!どーすんですか!?これ!?」
「どーすんのって言ったって!」
「ちょっとどいて!!」
良介が太一を押しのけ、キーボードを弄るが、パソコンはウンともスンとも言わない。
やむを得ず、一度電源を切り、再起動をかけた。
「すいませんでした」
そこへ、トイレから光子郎が戻ってきた。
「なにやったんですか!?」
再起動かけているパソコンを見て光子郎が怒鳴る。
「なにもしてねぇよ!お前こそなんで肝心な時にトイレ行くんだよ!」
「太一さんがパソコンを叩いてフリーズさせちゃって・・・・」
「やろうと思ってやったんじゃねーよ!」
「そんなんだから空さんとも喧嘩したんじゃないんですか!?」
少しイラっときた良介はそんな性格だから空と喧嘩しているのでは、と指摘する。
すると、太一はバツ悪そうに良介から顔を背け、
「俺は別に・・・・只、プレゼントしただけだよ」
と、喧嘩の理由を話始める。
「プレゼント?」
「もうすぐ空、誕生日だって言うから髪飾り渡してやったんだ。 なのにアイツ、『この帽子が似合わないって事?』なんて言いやがるから・・・・それで喧嘩になって・・・・」
太一が空と喧嘩した理由を光子郎に話すと、光子郎と良介は呆れた顔をして太一を見た。
「そ、そんな事で・・・・」
「くだらない・・・・」
「でも俺はちゃーんと謝ったんだぜ!?」
光子郎と良介が小さい声でそう呟いたので、太一はちゃんと謝った事を光子郎と良介に伝えた。
其れと同時に、パソコンが起動し始めた。
「空さん、意地を張っているだけだと思いますけどね・・・・」
続きの復旧作業を光子郎に任せ、良介は少し落ち込んでいる太一に話しかける。
パソコンの画面が映ると、ウォーグレイモン、メタルガルルモン、スレイヤードラモンが傷ついた姿で宙を漂っていた。
「ウォーグレイモン!ウォーグレイモン!」
「スレイヤードラモン!!」
「太一!良介!光子郎!お前ら何やっていたんだよ、馬鹿野郎!」
ウォーグレイモンたちはわずかに反応するもののダメージが蓄積しており、体を動かせないようだった。
「俺が・・・・俺が傍にいれば、こんなことには・・・・」
「ただ見ているだけかよ・・・・クソッ・・・・」
「『また負けちゃったの?』」
「なに!?」
「今のはキャンベラから。『せっかく勝てそうだったのに。なにしているんだ。』これはベルリン」
「何だっ!?この野郎!」
「届いたメールを読んだだけです!」
「光子郎、てめぇ・・・・!!」
「二人とも、いい加減にして!!喧嘩なんかしてもなんにも解決しないでしょう!!」
光子郎に掴みかかる太一に良介は二人の間に入って仲裁をする。
「良介の言うとおりだ!今は喧嘩している場合じゃねぇだろ!よく考えろ!」
良介とヤマトに宥められ、太一は光子郎から手を離した。
「何がメールだよ!」
太一が不貞腐れるように呟いた。
「でも、さっきのメール内容は少しむかついたので、言い返してやる」
良介は返信のメールを打ち始めた。
「『
IP抜くぞコラァ!!ウィルスに感染させてお前の個人情報漏出させてやろうか!?お前らのようなヒッキ―に言われたくねぇよぉ!!この自作自演やろうがぁ!!』」「お前ら皆逝ってよし!!」
良介は中傷メールを負った連中に返信した。
それから少ししてディアボロモンからまたメールが届いた。
「トケイ
ヲ モッテイル ノハ ダーレダ?」「時計?」
すると、パソコンには
00:10:00:00から始まったカウントダウンと分裂していくディアボロモンの姿が写し出された。「コイツ、自分自身をコピーした・・・・」
「この数字は・・・・?」
「何か嫌な予感がする・・・」
「どうしよう」
光子郎がとても焦った表情で呟く。
「ペンタゴンに潜り込んだ台湾の中学生が知らせてくれたんですが、今から三十分前、アメリカの軍事基地から核ミサイルが発射されたそうです」
「えぇ!!」
「核ミサイル!?」
ミサイルの発射原因はもちろんディアボロモンの仕業であった。
「じゃあこの数字は!?」
「恐らく、其のミサイルが目的地に達する迄の時間・・・・」
「ウソだろ・・・・」
「ど、どうすれば・・・・」
「核ミサイルはどうやら一発。ピースキーパーという名前のようです。射程は
20000キロ、ほぼ地球全体ですね。最高速度は15000マイルアワー」「で、時速何キロだ?」
「
(マッハ23)って書いてありますね」「マッハ・・・・」
「
23・・・・ほぼウィングドラモンの最高速度と同じじゃないですか・・・・」「でも、目的地はどこかわかりません。今、どこを飛んでいるのかもわかりません。ただ、世界中のどこかでは爆発します、九分後に・・・・」
太一、ヤマト、良介、タケルはそのとてつもなく恐ろしい状況にただ、呆然としていた。
運良く海に落ちてくれればいいが、破壊行動を楽しんでいるあのディアボロモンの事だからそんな真似はしないだろう。
必ず何処かの国の何処かの街に落とす筈だ。
光子郎は世界中から届く声援メールをどんどん読みあげていった。
「頑張れって・・・・たった九分でコイツら全部を倒せる訳ないだろ・・・・」
太一はパソコンの画面を一見する。
其処には今も尚、細胞のように次々と増殖していくディアボロモンの姿があり、画面一杯になりそうだ。
「核ミサイルは信管さえ作動させなければ爆発しないそうです。もしコレがゲームなら、時計を持っている奴は一体だけです。そいつを倒せば、信管は作動しないはずです」
「この中から一体どうやって本物を探すんです。偽物も全部アイツと同じ強さなのでしょう?・・・・アポカリモン並みに厄介な相手じゃないですか!!」
相手は究極体で数もどんどん増え続けている上に、こちらのデジモンたちは傷ついている。
それはあまりにも絶望的な状況だった。
仮に今回のミサイルが何処かに着弾すれば奴はまた次のミサイルを発射する。
そしてそれが着弾したらまた・・・・
その繰り返し・・・・
そうなれば地球は・・・・。
「でも・・・・それしか方法は無いでしょう?」
「・・・・」
「・・・・」
太一と良介は光子郎の言葉を聞いて、何も言えず光子郎の顔を黙って見ていた。
「太一、太一。しっかりしろ、太一!」
「大丈夫だ!!良介僕が付いているよ!!」
「任せといて!」
「ウォーグレイモン」
「スレイヤー・・・・ドラモン・・・・」
「奴のいる場所はわかるか?」
「メタルガルルモン」
三体は傷ついた体を起こし、ディアボロモンを倒しに向かおうとする。
「皆・・・・今から奴のアドレスを送ります」
光子郎がディアボロモンのアドレスを打ち込むと、ネットの中にディアボロモンが居るサイトへと通じるであろう入り口が開かれた。
「やるしか・・・・ないな・・・・」
「そうです。皆がやる気なんだ。俺達もやらないと!!」
「ああ・・・・光子郎、さっきはごめん」
「いえ」
ウォーグレイモン、メタルガルルモン、スレイヤードラモンはディアボロモンの居る部屋へと突き進む。
「諦めるもんか・・・・最後まで」
「そうだ、絶対に諦めるもんか」
しばらく進むとディアボロモンの大群のいる部屋に辿り着いた。
しかし、その光景を見て、五人は愕然とする。
四方八方、上下左右、何処を見てもディアボロモンだらけ・・・・・。
ディアボロモンは部屋に入ってきたウォーグレイモン、メタルガルルモン、スレイヤードラモンを見ると、一斉に攻撃をしてきた。
攻撃に集中している為か、増殖だけは止まったが、数は物凄く多く、全方位からの攻撃に避ける術などなく、三体は次々と被弾していく。
「メタルガルルモン!」
「ウォーグレイモン!」
「スレイヤードラモン!!・・・・これじゃあなぶり殺しだ!!」
ディアボロモンの数と世界中から送られてくるメールが原因で三体の動きが鈍くなっているのだ
「世界中のみんな!ウォーグレイモンたちのレスポンスが下がっちゃう!メールを送らないで!頼むから!」
光子郎がそのメールを送り終えるのと同時にディアボロモンの攻撃が止む。
攻撃が止み、黒煙が消えるとそこには傷だらけになった三体の姿があった。
あれだけの攻撃の中、死ななかったのが不思議なくらいだ。
「ウォーグレイモン!」
「スレイヤードラモン」
太一と良介は無意識に手を伸ばす。
ゲートが開いていないし、パソコンの画面に手を伸ばしても無駄なはずなのだが、
どうにかして、パートナーを助けたい。
どうにかして、近くに行ってあげたい。
その一心だった。
すると、太一と良介の体がパソコンの中に入り込んでいき、気付けば目の前にパートナーたちの姿があった。
メタルガルルモンの前にはヤマトもいる。
ヤマトもどうやら太一や良介と同じ考えだったらしい。
「ウォーグレイモン・・・・」
「メタル・・メタルガルルモン・・・俺だ、ヤマトだよ。わかるか?目を覚まして」
「スレイヤードラモン・・・・すまない・・・・無茶をさせちまって・・・・」
「ヤマト・・・・良介・・・・来たよ。俺も来たよ!一緒に戦いに来たんだよ!もうお前だけを戦わせやしない!俺が傍にいる。俺が付いているよ、ウォーグレイモン!」
太一、ヤマト、良介の呼びかけ、そして、世界中の子どもたちからのメールに反応したかのようにフラフラになりながら、立ち上がる。
三体が立ち上がると突然、デジヴァイスが光り始め、太一たちはその光に包まれていく。
「ウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体・・・・した・・・・?」
「それにスレイヤードラモンが・・・・更に進化した・・・・?」
光が消えると、そこには三体いたはずのデジモンが二体になり、その二体とも見た事がないデジモンであった。
オメガモン 究極体 聖騎士型デジモン 属性 ワクチン
ウイルスバスターであるウォーグレイモン・メタルガルルモンが、善を望む人々の強い意志によって融合し誕生した聖騎士型デジモン。
二体の特性を併せもつデジモンで、どんな状況下でも、その能力をいかんなく発揮することのできるマルチタイプの戦士である。
ウォーグレイモンの形をした左腕には盾と剣が、そしてメタルガルルモンの形をした右腕には大砲やミサイルが装備されている。
背中のマントは、敵の攻撃を避ける時や、飛行するときに背中から自動的に装着される。
必殺技は、メタルガルルモンの形をした大砲から打ち出される絶対零度の冷気弾で敵を凍結させる『ガルルキャノン』。また、左腕には無敵の剣『グレイソード』が装備されている。
エグサモン 究極体 聖騎士型デジモン 属性 データ
途方もないデータ質量をもったデジモンであり、同時にすべての竜型デジモンの頂点に立つ存在であり、「竜帝(りゅうてい)」の異名を持つ。意思を持った巨大な翼「カレドヴールフ」と巨大なランス「アンブロジウス」を持っている。
カレドヴールフ」はすべてクロンデジゾイドで構成された特殊な翼であり、「カレドヴールフ」自身の判断により、時には飛翔するための翼になり、また時にはエグザモンを守る盾ともなる。
ランス「アンブロジウス」にはさまざまな効果を持つウィルスの仕込まれた特殊弾が装填されており、エグザモンの攻撃を多彩なものにしている。
必殺技は、「アンブロジウス」を敵に突き刺し、すべての特殊弾を炸裂させ内部から敵を破壊・消滅させる『アヴァロンズゲート』と、大気圏外まで急上昇し、「アンブロジウス」から高出力のレーザー射撃を行う『ペンドラゴンズグローリー』。
また、大気圏外から急降下し、大気との摩擦熱を帯びた状態で体当たりする『ドラゴニックインパクト』は衝撃波を伴うため広範囲の敵を掃討することも可能である。
オメガモンとエグザモンを見たディアボロモン達は、また一斉に二体に向かって攻撃を仕掛けるが、オメガモンのオメガソードによって攻撃が阻止され、それどころか一気に何体ものディアボロモンを倒したのだった。
「エグザモン・・・・俺達も・・・・」
「ああ」
エグザモンも負けじと巨大なランス「アンブロジウス」に装填されている特殊弾でオメガモンと共にディアボロモンを処理していく。
ディアボロモンは攻撃と逃げる事が精一杯で自身をコピーする余裕が無い様子だった。
聖騎士二体の攻撃でディアボロモンは次々と数を減らしていくが、未だに本物は見当たらない。
「い、いました!最後の一匹!!時計を持っている奴です!」
二体で必死に時計を持ったディアボロモンを追うが、世界中の子供達から送られて来たメールの影響でスピードが早くて追いつけない。
「いない!」
「そんな、どこに消えた!?」
「一分を切りました!」
「そんなっ!!もう時間がないのに!」
「お兄ちゃん、早く奴を見つけて!もう時間がないよぅ!」
しかし、ディアボロモンのスピードがあまりにも早く、目で追うことすらままならない。
パワーで勝っていても、スピードが追いつかなければ攻撃も当たらないし、意味が無い。
「そうだ、転送だ!このメール全部、奴のアドレスに転送すれば・・・・」
光子郎はメールアドレスの欄にディアボロモンのアドレスを打ち込み、転送ボタンに指をかける。
「いっけぇー!」
転送ボタンを押し、一斉にメールの転送がディアボロモンに始まった途端、ディアボロモンのスピードが急激に落ちていく。
オメガモンとエグザモンのレスポンスを下げている原因の大量メールがディアボロモンへと転送され、ディアボロモンのレスポンスが下がり始めたのだ。
「残り十秒!!」
「いた!!」
動きが鈍くなったディアボロモンがオメガモンとエグザモンを睨みつける。
奴は動きが鈍くなっているにも関わらず、まだ逃亡しようとしていた。
「逃がすか!!ペンドラゴンズグローリー!!」
エグザモンがアンブロジウスから高出力のレーザー射撃を行いディアボロモンの足を撃ち抜き、完全に動きを封じる。
「今だ!!行くぞ!!オメガモン!!」
「おぅ」
「いっけぇぇええ!」
オメガモンのオメガソード、エグザモンのアンブロジウスはディアボロモンの頭を貫通させた。
その直後、フジテレビ前の海に例の核ミサイルが墜落した。
しかし、爆発はせず、不発だった・・・。
時計が止まったのは、爆発一秒前であった。
「間に合ったぁ・・・・」
「よ、よかったぁ〜」
無事にネット世界から現実世界へと戻ってきた太一と良介は光子郎に抱きつき喜び合った。
ミサイルの着弾点がお台場だったため、デジモン達の活躍がなければ、今頃、自分達は消し飛んでいたかもしれないと思うと、改めて、デジモン達に感謝しなければならなかった。
こうしてディアボロモンと子供達のウォーゲームは子供達の完全勝利で終わった。
ちなみに裕子が焼いていたケーキは失敗した・・・・。
全てが終わり、パソコンを片づけている時、太一が良介に話しかけてきた。
「そういえば良介、お前、何か用があって来たんじゃないのか?」
「あ、そう言えばそうでしたね・・・・」
ディアボロモンの一件で本来の目的をすっかり忘れていた良介。
でも、等々話す時が来てしまった。
「実は・・・・今度、家の親が転勤することになりまして、春休み後半にお台場から引っ越す事になりまして・・・・」
「引っ越す!?」
「それでどこに・・・?」
「近くか?」
太一と光子郎が何処に引っ越すか聞いてきた。
「神奈川県の海鳴って言う所です・・・・」
「神奈川県・・・・」
「遠いな・・・・」
少し重い空気が部屋に漂う。
「あっ、でももう、二度と会えなくなるってわけじゃないし、毎年の八月にはちゃんと帰ってくるつもりですから」
「そうか・・・・」
「元気でね・・・・」
「はい」
その夜、八神家で良介の送別会が開かれ、ヒカリも良介の突然の引越しに驚き、別れが辛いのか、涙を浮かべたが、良介が手紙や電話、メールもするし、休みにはちゃんと帰ってくると伝えた。
送別会が終わり、良介が自分の家に帰り、部屋へ入ると、
「遅い!!何時まで待たせるんだよ!!」
自分の部屋から聞きなれた声がした。
ドアの近くにはドラコモンが立っており、良介を上目で睨んできた。
「・・・・やべぇ幻覚が・・・・」
良介は一度ドアを閉め、もう一度部屋のドアを開けると、
「がぁぁぁぁぁぁ〜」
ガブッ
「いてぇ!!」
頭に何かが噛みついてきた。
「やっぱり、ドラコモン?」
「そうさ!!僕がドラコモン以外でなくてなんなのさ!?」
「でも何でこの世界へ?どうやって来た!?」
「良介が帰る時、こっそりついてきた。やっぱり良介には僕が居ないとね」
「コイツ・・・・」
半年前に感動的な別れをしたのだが、またこうして会えたのは嬉しい様なあの時の感動を返せと言いたい様な妙な気持ちの良介であった。
何はともあれ、良介はまた相棒と再会を果たし、新たな舞台へと進む事となる・・・・。
その先にどんな出会いと運命が待ち受けているのか、まだ分からないが、このコンビならばどんな運命にでもきっと立ち向かえるだろう。
あとがき
僕らのウォーゲーム編も終わり、デジモン編は一旦此処で終了し、いよいよ舞台は海鳴の町、なのは編へと移ります。
では、次回にまたお会い致しましょう。